(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の導電性樹脂組成物の製造方法は、密度0.88〜0.94g/cm
3かつ重量平均分子量25000〜130000のポリオレフィンと、カーボンナノチューブとをオープンロールで混練する製造方法であって、
前記ポリオレフィン100質量部に対して、カーボンナノチューブを15〜70質量部含む。
【0013】
本発明で用いるオープンロールは、水平2本以上のロール棹を回転させ、ロール棹間に材料を加え、せん断力により混練する開放系の混練装置である。オープンロールは、ミクシングロールということがある。また、オープンロールに便宜上カバーをかけた場合、および密閉系ロールであっても大気圧で混練する場合もオープンロールである。
【0014】
混練装置が有するロール棹の数は、一般的には二本ロールや三本ロールであるところ、本発明の課題を解決できる範囲内であれば、さらにロールの数を増やしても良い。複数のロールの回転方向は、同方向回転でも、異方向回転でも使用することができるところ、より効率的に大きなせん断力を材料に加えられる、異方向回転が好ましい。
【0015】
本発明での混練は、ポリオレフィンとカーボンナノチューブを十分混合できれば良いため条件は限定されないところ、オープンロールでの混練を50℃以上で行うとポリオレフィン中にカーボンナノチューブをより高度に分散できる。混練温度の上限は、特に限定しないところ、ポリオレフィンの融点より高く、かつポリオレフィンが分解ないし気化しない温度未満であればよい。なお、混練機のトルク負荷と、ロールに対する導電性樹脂組成物の巻き付きや、ロール間のバンク周り等の加工性を考慮すると、混練温度は、ポリオレフィンの融点より10℃以上高い温度が好ましく、20℃以上高い温度がより好ましい。
【0016】
また、オープンロールの複数ロール間のクリアランスは、混合物に強いせん断力を加えるために、可能な限り狭いほうが良く、0.01mm〜1mmが好ましく、0.05mm〜0.5mmであることがさらに好ましい。
【0017】
また、オープンロールを用いた混練回数、混練時間は、材料が著しく劣化しない程度であれば、任意に調整できる。
【0018】
<ポリオレフィン>
本発明で用いるポリオレフィンは、密度0.88〜0.94g/cm
3かつ重量平均分子量25000〜130000のポリオレフィンである。
ポリオレフィンの密度が0.94g/cm
3以下になるカーボンナノチューブを配合した際に、極端に高粘度化し難いため、混練が容易になる。また、密度が0.88g/cm
3以上になると、ポリオレフィンの溶融粘度を適度な範囲に保てるため混練の際、適切なせん断力をカーボンナノチューブに加えることができるので分散性がより向上する。なお、ポリオレフィンの密度は、0.88〜0.92g/cm
3が好ましく、0.88〜0.91g/cm
3がより好ましい。
【0019】
ポリオレフィンの重量平均分子量が25000以上になると成形体の機械物性が向上する。また、成形の際、導電性樹脂組成物がドローダウンし難いなど成形性がより向上する。また、混練の際、適切なせん断力が加わりやすいので、凝集状態にあるカーボンナノチューブを適度に解すことができる。また、重量平均分子量が130000以下になると混練装置への負荷が過剰にならず混練できる。なお、ポリオレフィンの重量平均分子量は40000〜100000が好ましく、50000〜80000がさらに好ましい。
【0020】
ポリオレフィンは上記密度および上記重量平均分子量を満たせば良く特に制限されない。ポリオレフィンは、オレフィンモノマーを単独または2種類以上を併用して重合したポリマーである。ポリオレフィンは、ポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましい。
ポリエチレンは、例えばポリエチレンホモポリマー、エチレン共重合体:エチレンと、炭素数4〜30の不飽和単量体との共重合体;
ポリプロピレンは、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンと炭素数4〜30の不飽和単量体との共重合体;
エチレンとプロピレンとの共重合体;
炭素数4以上のオレフィンモノマー(ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリスチレン等)の重合体;
上記オレフィンモノマーを組合せた多元系共重合体;等が挙げられる。
【0021】
炭素数4〜30の不飽和単量体は、プテン(例えば1−ブテン等)、炭素数5〜30のα−オレフィン(例えば1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−デセン、1−ドデセン等)、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
これらのポリオレフィンの中で低温物性を重視する場合、ポリエチレンが好ましい。なお、ポリエチレンは、メタロセン系触媒を用いて合成すると重量平均分子量を所定の範囲に調整し易い。
【0022】
<カーボンナノチューブ>
本発明で用いるカーボンナノチューブは、グラフェンシートを丸めて円筒状にしたような構造のチューブ状物質である。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)があり電子顕微鏡等で1本1本のカーボンナノチューブ(一次粒子)を観察することができる。カーボンナノチューブは、コスト面および強度面から多層カーボンナノチューブであることが好ましい。また、カーボンナノチューブの側壁がグラファイト構造ではなく、アモルファス構造をもったカーボンナノチューブであっても構わない。一般的に全てが均一なグラファイト構造のカーボンナノチューブの合成は困難であり、一部アモルファス構造を側面に有するものが汎用的に使用される。
また、カーボンナノチューブは、一次粒子同士が、凝集して絡み合い一次凝集体を形成するが、一次凝集体がさらに凝集して二次凝集体を形成することもある。
【0023】
カーボンナノチューブは、平均繊維径が0.5〜50nmであることが好ましく、1〜40nmがより好ましく、5〜20nmがより好ましい。平均繊維径を適度な範囲
にすると混練の際、カーボンナノチューブがオレフィンを内部に取り込み難くなるため、導電性樹脂組成物の粘度を適度な範囲に保ち易くなりカーボンナノチューブが分散し易くなる。なお、平均繊維径とは、カーボンナノチューブの直径であり、電子顕微鏡での拡大画像から求めた約20本程度を平均した値である。
【0024】
カーボンナノチューブは、一般にレーザーアブレーション法、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、燃焼法などで製造できるところ、本発明の課題が解決できれば製造方法にはこだわらない。これらの製造法の中でもCVD法は、通常、400〜1000℃の高温下において、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、珪酸塩、珪藻土、アルミナシリカ、シリカチタニア、およびゼオライトなどの担体に鉄やニッケルなどの金属触媒を担持した触媒微粒子と、原料の炭素含有ガスとを接触させることにより、カーボンナノチューブを安価に、かつ大量に生産することができるため好ましい。
【0025】
カーボンナノチューブは、ポリオレフィン100質量部に対して、カーボンナノチューブを15〜70質量部含むことが好ましく、20〜60質量部がより好ましく、25〜50質量部がさらに好ましい。カーボンナノチューブを15質量部以上含有することにで、導電性樹脂組成物は、粉砕性が容易になるため微細に加工し易くなる。また、70質量部以下含有することでカーボンナノチューブの分散性がより向上し、成形体表面にカーボンナノチューブ由来の異物が生じ難くなる。
【0026】
<導電性樹脂組成物>
本発明の導電性樹脂組成物は、必要に応じて、耐酸化安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤、結晶造核剤、樹脂充填材等の添加剤を含んでもよい。
本発明の導電性樹脂組成物は、引張り伸び率が30%以下であり、20%以下がより好ましい。前記数値にすることで、各種粉砕機でも粉砕容易になること所望の形状に成形し易い。なお、引張り伸び率の下限は0%程度である。
【0027】
本発明の導電性樹脂組成物は、密度0.88〜0.94g/cm
3かつ重量平均分子量25000〜130000のポリオレフィンと、カーボンナノチューブとをオープンロールで混練したのち、ハンマーミル粉砕機にて粉末とし、成形時の取扱いを容易にするため混練機で溶融混練(希釈工程)を行い、所望の形状に成形することが好ましい。この形状は、ペレット状、粉体状、顆粒状あるいはビーズ状等が好ましく、粉末およびペレット状がより好ましく、ペレット状がさらに好ましい。ペレット化は、通常ペレタイザーを使用する。
【0028】
本発明の導電性樹脂組成物の使用方法は、そのまま成形して所望の成形体を作製できる。または、導電性樹脂組成物に希釈樹脂として熱可塑性樹脂を配合し混練した後、所望の形状(例えば、、ペレット状、粉体状、顆粒状あるいはビーズ状等)に形成することもできる。
導電性樹脂組成物は、希釈樹脂100質量部に対して、1〜1400質量部含むことが好ましく、2〜900質量部がより好ましく、10〜500質量部がさらに好ましい。前記範囲を満たすと導電性樹脂組成物を成形体中に分配しやすくなる。
希釈樹脂を用いることで、カーボンナノチューブの分散時に使用したポリオレフィンよりも熱劣化していない樹脂を加えることとなり、成形体の弾性や引っ張り物性がより向上する。
前記希釈樹脂は、ポリオレフィンが好ましいところ、所定のポリオレフィンと相溶可能であれば、ポリエステルやポリカーボネート等ポリオレフィン以外の樹脂を用いても良い。ポリオレフィンは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
前記混練は、オープンロールや、他の公知の混合装置を適宜選択して行うことができる。
【0029】
<成形体>
本発明の成形体は、導電性樹脂組成物を溶融混練して、成形することで製造できる。前記溶融混練の際、さらに希釈用の熱可塑性樹脂を添加して導電性樹脂組成物と共に混合することが好ましい。希釈用の熱可塑性樹脂の添加量により成形体の導電性を調整できる。
成形体中のカーボンナノチューブ含有量は、所望に導電性の程度により適宜調整すればよい。カーボンナノチューブは、例えば、帯電防止用フィルム用途であれば成形体100質量%中1〜6質量%であることが好ましく、2〜5質量%がより好ましい。
【0030】
成形は、溶融混練後の組成物を通常50℃〜350℃に設定した成形機に投入し所望の形状の成形体を作製し、冷却することで行う。
成形方法は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファー成形、T−ダイ成形やインフレーション成形等のフィルム成形、カレンダー成形、紡糸等が挙げられる。
【0031】
本発明の成形体は、用いる導電性樹脂組成物中のカーボンナノチューブが高度に分散され、かつ特定のポリオレフィンを使用しているため、フィルムやシート成形時に問題となるドローダウンを抑制している。そのため、成形方法は、各種方法を使用できるところT−ダイ成形、インフレーション成形が好ましく、インフレーション成形がより好ましい。なお、希釈用の熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンであることが好ましいが、必ずしも密度0.88〜0.94g/cm
3かつ重量平均分子量25000〜130000を満たす必要はない。また、所定のポリオレフィンと相溶可能であれば、ポリエステルやポリカーボネート等ポリオレフィン以外の樹脂を用いても良い。
【0032】
成形体の形状は、例えばプレート、棒状、繊維、チューブ、パイプ、ボトル、シート、フィルム等が挙げられる。これらの中でもカーボンナノチューブの凝集物が無く、表面が平滑な成形体の製造が可能であることから、シート、フィルムが好ましい。
本発明の成形体は、カーボンナノチューブが高度に分散されているため、帯電防止用途に使用することが好ましい。より具体的にいうと半導体等を搬送するトレイ、半導体等の梱包に用いる保護シート、保護袋等に使用することが好ましい。また、静電気による異物の付着を防止したい各種用途に使用できる。
なお、本発明では、成形体の厚さが250μm未満のシートをフィルムとする。また、厚さが250μm〜1000μmのシートをシートという、また、厚さが1000μmを超えるシートをプレートという
本発明の成形体の他の用途は、黒色意匠フィルムや電磁波シールド用シートや遮光フィルム等が好ましい。
【実施例】
【0033】
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は、本発明を何ら制限するものではない。なお、実施例中、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0034】
表1と表2に、実施例および比較例で使用したポリオレフィン、およびカーボンナノチューブ物性値を示す。
【0035】
実施例で使用した原料は、以下のとおりである。
<ポリオレフィン(A)>
(A1)ポリエチレン(カーネルKJ−640T、日本ポリエチレン社製)融点:58℃、密度:0.88g/mL、重量平均分子量:43300:、分子量分布:2.2
(A2)ポリエチレン(ノバテックUF−420、日本ポリエチレン社製)融点:123℃、密度:0.90g/mL、重量平均分子量:113000、分子量分布:3.9
(A3)ポリエチレン(サンテックLD M2270、日本ポリエチレン社製)融点:92℃、密度:0.92g/mL、重量平均分子量:53300:、分子量分布:6.8
(A4)下記製造例1のポリプロピレン、融点110℃、密度:0.90g/mL、重量平均分子量55000:、分子量分布:7
(A5)ポリエチレン(サンテックHD B770、日本ポリエチレン社製)軟化点:127℃、密度:0.96g/mL、重量平均分子量:203000:、分子量分布:28
(A6)下記製造例2のポリプロピレン、融点161℃、密度:0.93g/mL、重量平均分子量301000:、分子量分布:22
なお、分子量分布とは、重量平均分子量を数平均分子量で除算した数値である。
【0036】
<カーボンナノチューブ(B)>
(B1)製造例1のカーボンナノチューブ
(B2)製造例2のカーボンナノチューブ
(B3)昭和電工社製カーボンナノチューブ(製品名:VGCF−H)
【0037】
(ポリプロピレンの製造例1)
攪拌機付きの内容積5Lのステンレス製反応器に、トルエンを1L/h、トリイソブチルアルミニウムを5mmol/h、さらに、ツィーグラー・ナッタ触媒を6μmol/h配合し、反応温度を70℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が0.8モル%、反応器内の全圧が0.75MPa・Gに保たれるように、プロピレンを連続供給し、重合反応を行った。溶媒であるトルエンを除去、テトラヒドロフラン溶液で重合体を洗浄することにより、ポリプロピレンを得た。反応温度を110℃、反応器内の全圧を0.9MPa・Gにすることにより、ポリオレフィン(A4)を得た。
【0038】
(ポリプロピレンの製造例2)
ポリプロピレンの製造例1に示す配合で、反応温度を110℃、反応器内の全圧を0.9MPa・Gにすることにより、ポリプロピレンポリオレフィン(A5)を得た。
【0039】
以下に、カーボンナノチューブの製造例について説明する。
【0040】
(カーボンナノチューブ(B1)の製造例3)
水酸化コバルト・四水和物72g、酢酸マグネシウム・四水和物172g、アスコルビン酸125gをビーカーに秤取り、精製水を1000g加えて、完全に溶解するまで撹拌した。耐熱性容器に移し替え、電気オーブンを用いて、雰囲気温度170±5℃の温度で120分乾燥させ水分を蒸発させた後、乳鉢で粉砕して触媒(c)の前駆体を得た。得られた触媒(c)前駆体400gを耐熱容器に秤取り、マッフル炉にて、空気中500℃±5℃雰囲気下で30分焼成した後、乳鉢で粉砕して触媒(c)を得た。次いで、加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10リットルの横型反応管の中央部に、触媒(c)1.0gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。アルゴンガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気をアルゴンガスで置換し、横型反応管中の酸素濃度を1体積%以下とした。外部ヒーターにて加熱し、横型反応管の中心部が750℃まで加熱した。引き続き、水素を導入し、毎分0.1リットルで1分導入し触媒を活性化処理し、その後アセチレンガスを毎分1リットルの速度で注入し、4時間反応させてカーボンナノチューブを製造した。反応終了後、反応管内のガスをアルゴンガスで置換し、100℃以下の温度で取り出し、カーボンナノチューブ凝集体を得た。得られたカーボンナノチューブ凝集体を80メッシュの金網で粉砕ろ過して、カーボンナノチューブ(B1)を得た。
【0041】
(カーボンナノチューブ(B2)の製造例4)
酢酸コバルト・四水和物200g、酢酸マグネシウム・四水和物172g、アスコルビン酸125gをビーカーに秤取り、精製水を1000g加えて、完全に溶解するまで撹拌した。耐熱性容器に移し替え、電気オーブンを用いて、雰囲気温度170±5℃の温度で120分乾燥させ水分を蒸発させた後、乳鉢で粉砕して触媒(a)の前駆体を得た。得られた触媒(a)前駆体400gを耐熱容器に秤取り、マッフル炉にて、空気中500℃±5℃雰囲気下で30分焼成した後、乳鉢で粉砕して触媒(a)を得た。次いで、加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10リットルの横型反応管の中央部に、触媒(a)1.0gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。アルゴンガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気をアルゴンガスで置換し、横型反応管中の酸素濃度を1体積%以下とした。外部ヒーターにて加熱し、横型反応管の中心部が750℃まで加熱した。引き続き、水素を毎分0.1リットルで1分導入し触媒を活性化処理し、その後、アセチレンガスを毎分1リットルの速度で注入し、4時間反応させてカーボンナノチューブを製造した。反応終了後、反応管内のガスをアルゴンガスで置換し、100℃以下の温度で取り出し、カーボンナノチューブ凝集体を得た。得られたカーボンナノチューブ凝集体を80メッシュの金網で粉砕ろ過して、カーボンナノチューブ(B2)を得た。
【0042】
以下、各原料の物性値の測定方法を示す。
【0043】
(密度測定)
ポリオレフィンの密度測定には、JIS7112−1999のA法で行った。測定する試験片は、樹脂組成物中の気泡を極力除くために、160℃に加熱されたプレス機にて、厚さ1cmのシートに加工してから測定した。
【0044】
(重量平均分子量)
島津製作所製ProminenceGPCシステムを用いて、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)法により、分子量分布曲線を測定し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を、ポリスチレン換算の値から算出した。分子量分布(Mw/Mn)は、得られた重量平均分子量及び数平均分子量の値から算出した。ポリスチレン換算に使用した標準ポリスチレンには、VARIAN社製ポリスチレンを用い、カラムは東ソー社製TSKgelGMH−HTを用い、測定時のキャリアにはオルトジクロロベンゼンを用いた。カラム温度は140℃、キャリア流速は1.0mLでおこなった。
【0045】
(体積抵抗率)
粉体抵抗システムMCP−PD51(三菱化学アナリテック社製)を用いて体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。具体的にはカーボンナノチューブ粉末を1.2g量り取り、20kNの荷重時の値を体積抵抗率とした。
【0046】
(平均繊維径)
走査型電子顕微鏡(日本電子(JEOL)社製、JSM−6700M))を用いて加速電圧5kVにてカーボンナノチューブを観察し、5万倍の画像(画素数1024×1280)を撮影した。次いで、撮影された画像にて任意のカーボンナノチューブ20個について、各々の短軸長を測定し、それら短軸長の数平均値をカーボンナノチューブの平均直径とした。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
以下、導電性樹脂組成物の製造例を示す。
【0050】
[実施例1]
(導電性樹脂組成物C1の製造)
ポリオレフィン(A1)75%およびカーボンナノチューブ(B1)25%を加圧式ニーダーで混合し塊状の樹脂混合物を得た。次いで前記混合物をオープンロール混練機(三本ロール、アイメックス社製)に投入し、130℃で3回繰り返し混練することで混練物を得た。次に、得られた混練物を、ハンマーミルで粉砕し、直径1mm程度の粉状の導電性樹脂組成物(C1)を得た。次いで、粉状のポリオレフィン(A3)75%と粉状の導電性樹脂組成物(C1)25%と混合し、二軸押出機へ投入、180℃で溶融混練し、ペレタイザーでカットすることでペレットを得た。
【0051】
<引張り伸び率>
得られた導電性樹脂組成物(C1)を熱プレスシート成形機に投入し200℃に加熱して、縦200mm・横200mm・厚み1.5mmのプレスシートを作製後、2号ダンベル型に打抜いて試験片とした。次いで、引張り速度100mm/分の条件で、JIS K−7127に準じて、引張破壊点伸び率を測定した。また引張破壊点伸び率は、試験前のダンベル片を100%とし、その状態から120%の長さになった場合、伸び率20%という表記方法をとる。引張破壊点伸び率が低い程、伸長性に欠け、粉砕性が良好となる。引張り伸び率は、30%以下であることが好ましい、30%より高くなると粉砕時に導電性樹脂組成物が延伸し、粉砕が困難であったり、作製した粉砕物の形状が不均一となる不具合を生じる。
【0052】
<ロール加工性>
導電性樹脂組成物(C1)製造でのオープンロール混練時における操作性を次の基準で評価した。なお、加工性不良とは、混練中に樹脂組成物がロールに巻きつかずに剥離して混練できないこと又は一部剥離がみられることを指す。また、加工性良好とは、ロールから樹脂組成物が剥離せずに十分に混練できることを指す。
○:加工性良好
×:加工性不良
【0053】
<粉砕性>
得られた導電性樹脂組成物(C1)の樹脂塊を立方体(一辺:1cm)に切り出し、小型ハンマーミル(ラボネクスト社製)へ10個投入し、1分間でスクリーン(メッシュ開き:1mm)を通った粉砕物を評価した。粉砕物の観察には、ビデオマイクロスコープ「VHX−900」(キーエンス社製)を用いて倍率300倍にて表面観察を行なった。下記に評価の基準を示した。粉砕性良好とは、作製された粉砕物の粉の寸法が概ね一様であることを示す。粉の寸法(W×D×H)が一様であるほど、粉砕時に樹脂組成物の延伸がせずに粉砕されていることを示す。なお、一様とは、三方の寸法のいずれか高い数値と低い数値の倍率が5倍未満であることを指す。粉砕性不良とは、粉砕時に樹脂組成物が延伸され、三方の寸法のいずれか高い数値と低い数値の倍率が5倍以上の粉砕物となること、または投入して1分経過後、粉砕されずにミル内に残った樹脂塊の質量が投入した質量の20%以上であることを指す。
○:寸法が一様な粉(良好)
×:粉砕不可(使用不可)
【0054】
(成形体E1の製造)
得られたペレットを、インフレーション成形機(プラコー社製)を用いて200℃で加熱してインフレーション成形を行い、長さ100cm、幅15cm、厚み30μmの筒状の成形体(E1)を得た。
(成形体F1の製造)
得られたペレットを、Tダイシート成形機(東洋精機社製)を用いて200℃で加熱してシート成形を行うことで、長さ300cm、幅15cm、厚み100μmのシート状の成形体(F1)を得た。
【0055】
得られた成形体(E1)および成形体(F1)についてそれぞれ下記の評価を行った。
【0056】
<表面抵抗値>
抵抗率計「ロレスタGP」(ロレスタGP MCP−T610型抵抗率計、JIS−K7194準拠、4端子4探針法定電流印加方式、三菱化学アナリテック社製)(0.5cm間隔の4端子プローブ)を用い、成形体の表面抵抗値(Ω/□)を測定した。
【0057】
<外観評価>
ビデオマイクロスコープ「VHX−900」(キーエンス社製)を倍率500倍にて、成形体の表面観察を行い、長さ50cm、幅15cmに切り出した成形体表面上に縦横の一方が30μm以上ある異物の数を計測し、下記の基準にて評価した。異物の数が少ないほど良好である。
○:異物が10個未満(良好)
×:異物が10個以上(不良)
【0058】
[実施例2〜9]および[比較例10〜19]
実施例1のポリオレフィン(A)およびカーボンナノチューブ(B)を表2および表3に記載された原料および配合量に変更した以外は、実施例1と同様に行うことでそれぞれ導電性樹脂組成物(C2)〜(C15)を作製した。なお、導電性樹脂組成物(C15)のみオープンロールの混練温度は170℃に設定して混練をおこなった。
【0059】
得られた導電性樹脂組成物(C2)〜(C15)を使用して、表5および表6に記載した原料の配合量を変更した以外は実施例1と同様に行うことでそれぞれ成形体E2〜F15および成形体F2〜F15を作製し、実施例1と同様に評価した。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】
【表8】
【0066】
表3および表4の結果から、実施例1〜9は、比較例10〜11と比較して導電性樹脂組成物のロール加工性と粉砕性が良好である。また、比較例12〜13と比較すると、カーボンナノチューブが所定の平均繊維径が特定の範囲内であると粉砕性が良好である。また、比較例14〜15と比較すると、ポリオレフィンの分子量と密度が本発明の範囲内であると、ロール加工性が優れることが分かる。
【0067】
また、表7および表8の結果から、実施例1〜9の成形体E1〜E9ならびに成形体F1〜F9は、比較例11〜15の成形体E11〜15ならびに成形体F11〜15よりも、明らかに低い表面抵抗値を示すとともにブツが少なく外観が良好であることから、カーボンナノチューブが樹脂中に高度に分散されていることが分かる。