(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
薬液の塗布に用いられる薬液チューブであって、薬液を貯留するための液溜部と、薬液を吐出するためのノズル部と、前記ノズル部の先端に設けられた閉塞部と、を有する薬液チューブの製造方法であって、
前記液溜部および前記液溜部から延びる管状部分を一体に形成した連続体を製造する工程と、
前記連続体に薬液を充填する工程と、
前記管状部分に前記閉塞部を設ける工程と、
を有し、
前記管状部分によって前記ノズル部が構成された前記薬液チューブを製造し、
前記ノズル部の端部には、複数の切込みが前記薬液の流れ方向に間隔を空けて設けられ、
前記薬液はレジストであり、
前記薬液の流れる前記ノズル部の端部の内周面の直径が、前記薬液の流れ方向に一定であることを特徴とする薬液チューブの製造方法。
前記管状部分を板材によって挟んだ後、前記板材の中央部付近から加熱を行うことにより前記閉塞部を形成することを特徴とする請求項12記載の薬液チューブの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の塗布システムでは配管の継ぎ目が多く、またポンプ機構やバルブ機構自体が薬液と接触する。そのため、配管の継ぎ目、ポンプ機構やバルブ機構からの発塵により薬液に異物が混入して欠陥が発生する要因となっている。結果、定期的にまたは必要なタイミングで塗布システムの洗浄を行ったり、フィルターの交換を行ったりする必要があり手間やコストが掛かっていた。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、薬液への異物の混入を防止できる薬液チューブ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための第1の発明は、薬液の塗布に用いられる薬液チューブであって、薬液を貯留するための液溜部と、薬液を吐出するためのノズル部と、前記ノズル部の先端に設けられた閉塞部と、を有し、前記液溜部と前記ノズル部が一体に形成され、前記ノズル部の端部に、複数の切込みが前記薬液の流れ方向に間隔を空けて設けられ
、前記薬液はレジストであり、前記薬液の流れる前記ノズル部の端部の内周面の直径が、前記薬液の流れ方向に一定であることを特徴とする薬液チューブである。
【0008】
前記液溜部と前記ノズル部は、樹脂により形成される。
前記液溜部は、例えば側面に蛇腹部分を有する筒体である。
前記ノズル部は、可とう性を有することが望ましい。また、
前記ノズル部は、伸縮部を有
し、前記伸縮部は前記ノズル部が屈曲したものであることも望ましい。
【0009】
前記閉塞部は、例えば前記ノズル部に続く管状部分が溶融圧着されたものである。あるいは、前記ノズル部の先端に設けられた栓であってもよい。
【0010】
また、前記液溜部の側面の厚さが、前記ノズル部の側面の厚さよりも大きいことが望ましい。
前記ノズル部の先端の内周面の直径が4m
m以下であることも望ましい。
【0011】
第2の発明は、薬液の塗布に用いられる薬液チューブであって、薬液を貯留するための液溜部と、薬液を吐出するためのノズル部と、前記ノズル部の先端に設けられた閉塞部と、を有する薬液チューブの製造方法であって、前記液溜部および前記液溜部から延びる管状部分を一体に形成した連続体を製造する工程と、前記連続体に薬液を充填する工程と、前記管状部分に前記閉塞部を設ける工程と、を有し、前記管状部分によって前記ノズル部が構成された前記薬液チューブを製造し、前記ノズル部の端部には、複数の切込みが前記薬液の流れ方向に間隔を空けて設けられ
、前記薬液はレジストであり、前記薬液の流れる前記ノズル部の端部の内周面の直径が、前記薬液の流れ方向に一定であることを特徴とする薬液チューブの製造方法である。
【0012】
前記連続体は、複数の前記液溜部および隣り合う前記液溜部同士を繋ぐ前記管状部分を一体に形成したものであり、前記閉塞部を除く前記管状部分が前記ノズル部となることが望ましい。
【0013】
前記閉塞部は、前記管状部分を溶融圧着することによって設けられ、前記閉塞部を切断することで前記薬液チューブが製造されることが望ましい。前記管状部分を板材によって挟んだ後、前記板材の中央部付近から加熱を行うことにより前記閉塞部を形成することも望ましい。
あるいは、前記閉塞部は、前記管状部分の先端を閉塞する栓であってもよい。
【0014】
本発明の薬液チューブを塗工室まで搬送し、閉塞部を取り除いて液溜部とノズル部が一体となった薬液チューブを塗布システムに用いることにより、塗布システムにおいて配管の継ぎ目をなくすことができる。また液溜部内の薬液を、液溜部と一体となったノズル部内を通して基材上に直接吐出できるので、薬液がポンプ機構やバルブ機構に触れたり、あるいは外気に触れたりすることもない。また薬液チューブは使い捨てとし、使用後の薬液チューブを新たな薬液チューブに交換して常にクリーンな状態で薬液の塗布ができる。そのため、薬液に異物が混入するのを防止できる。
【0015】
本発明では、液溜部とノズル部を樹脂製のものとすることで、これらを一体として形成するのが容易になる。液溜部は蛇腹部分を有する筒体とすることで、液溜部の押圧による薬液の吐出制御を容易に行うことができる。また、ノズル部が可とう性を有することで様々な態様の塗布システムに薬液チューブを容易にセットでき、ノズル部が伸縮部を有することで、その伸縮により塗布システムの各種動作に容易に追随できる。
【0016】
薬液チューブの閉塞部は、管状部分の溶融圧着によって容易に形成できる。あるいは栓を用いて閉塞を行ってもよく、この場合は溶融圧着時の熱による薬液の変性を回避することができる。
【0017】
また、ノズル部の端部に切込みを設けて適宜カットして用いたり、ノズル部の先端の内径を4mm程度以下の極細のものとすることで、薬液塗布の中断時にノズル部の端部に残留した薬液が乾燥して固化し、異物として薬液に混入するのを防ぐことができる。
【0018】
本発明の薬液チューブは、液溜部と当該液溜部から延びる管状部分を有する連続体から製造することができ、ノズル部となる管状部分に閉塞部を設けて薬液チューブを容易に製造できる。
【0019】
この連続体は、複数の液溜部および隣り合う液溜部同士を繋ぐ管状部分を一体に形成したものとすることで、薬液チューブの大量生産に適したものとなり、管状部分を溶融圧着して閉塞部とし、閉塞部で切断を行うことで個々の薬液チューブを製造できる。溶融圧着時には、管状部分を板材によって挟み薬液を側方に逃がした後、板材の中央部付近から加熱を行うことにより、熱による薬液の変性を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、薬液への異物の混入を防止できる薬液チューブ等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0023】
[第1の実施形態]
(1.薬液チューブ10)
図1は本発明の第1の実施形態に係る薬液チューブ10の概略を示す図である。この薬液チューブ10は、内部に薬液を充填し封入したものであり、薬液の塗布に用いられる。本実施形態において、薬液は基材に塗布するレジストとするが、これに限定されることはない。
【0024】
薬液チューブ10は液溜部101、ノズル部102、閉塞部103が一体となって連続した構成を有し、これらが樹脂により形成されたものである。樹脂には、耐薬品性や異物リスクの少なさを考慮して、例えばPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PFTE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などのフッ素樹脂等を用いることができる。ただし、これらに限定されることはない。
【0025】
液溜部101は、内空部分に薬液を貯留するためのものであり、本実施形態では側面に蛇腹部分を有する筒体である。
【0026】
ノズル部102は、先端から薬液を吐出するためのものであり、液溜部101の下面から延びるように設けられた長尺(例えば500mm〜2000mm程度)の管状部分である。本実施形態ではノズル部102が可とう性を有し変形が可能となっている。
【0027】
閉塞部103は、薬液チューブ10を製造した後、後述する塗布システムにセットするまでの間、薬液が薬液チューブ10の外に漏れないようにするためのものであり、ノズル部102の先端に設けられる。本実施形態では、ノズル部102に続く管状部分を溶融圧着することにより閉塞部103が形成される。
【0028】
(2.塗布システム1)
図2は薬液チューブ10を用いた塗布システム1の概略を示す図である。この塗布システム1は、ナノインプリント用のマスターモールドの製作時などで、薬液チューブ10内の薬液(レジスト)をステージ20上の基材21に塗布するものであり、クリーンルームである塗工室(不図示)内に設けられる。
【0029】
なお、薬液チューブ10を塗布システム1に用いる際は、塗工室まで搬送した薬液チューブ10の閉塞部103をカットして塗布システム1にセットしておく。本実施形態では、薬液を吐出しやすいように薬液チューブ10をステージ20上の基材21よりも上に配置している。薬液の塗布は例えばスピンコート法によって行われるが、これに限ることはない。
【0030】
図2に示すように、塗布システム1は、薬液チューブ10の他、加圧機構11、12等を備える。
【0031】
加圧機構11は、薬液の吐出量を制御するものであり、薬液チューブ10の外部に設けられる。加圧機構11は、液溜部101を上側から押圧して液溜部101内の薬液を送り出す。
【0032】
加圧機構12は、薬液の吐出タイミングの制御を行うものであり、薬液チューブ10の外部に設けられる。加圧機構12は、ノズル部102を両側から押圧して閉じること、および押圧を解除してノズル部102を開くことが可能である。
【0033】
加圧機構11、12には例えばモーター等を用いることができるが、これに限ることはない。特に図示しないが、塗布システム1には液溜部101やノズル部102を保持するホルダーやアームなども設けられる。
【0034】
(3.塗布システム1による塗布方法)
本実施形態では、
図3(a)に示すように加圧機構12によるノズル部102の押圧が解除された状態で、矢印aに示すように加圧機構11を下降させて液溜部101を上側から押圧する。すると液溜部101の蛇腹部分が縮んで液溜部101内の薬液40が送り出され、ノズル部102を通ってその先端から基材21へと吐出される。吐出量は加圧機構11の下降幅によって制御できる。
【0035】
基材21への薬液40の吐出を終えると、矢印bに示すように加圧機構12をノズル部102側に移動させ、加圧機構12によってノズル部102を両側から押圧して閉じる。
【0036】
前記した加圧機構11は下降後の位置でそのまま待機させておき、基材21を交換して再び薬液40を吐出するタイミングとなれば、加圧機構12によるノズル部102の押圧を解除した後、加圧機構11による液溜部101の押圧を上記と同様に行う。
【0037】
以上の手順を繰り返し、
図3(b)に示すように所定枚数(例えば10枚程度)の基材21への薬液塗布を終えると、新しい薬液チューブ10と交換する。
【0038】
(4.ノズル部102の端部)
図4はノズル部102の端部の詳細を示す図である。
図1、
図2等ではノズル部102を簡略化して記載しているが、ノズル部102の端部は、実際には
図4(a)のように所定長さの極細径(例えば内周面の直径が4mm程度以下)の部分が先端まで連続するものとしたり、
図4(b)のようにテーパー状に窄ませてその先端を極細径(例えば内周面の直径が4mm程度以下)としたりすることが可能である。
【0039】
図4(c)のように端部を逆テーパー状に拡げて先端の径を大きくすることも可能であり、薬液40を吐出しやすいが、この場合、前記のように薬液40の吐出を終えると端部の薬液40がほぼ吐出しきってしまい、薬液塗布を中断している間に
図5(a)に示すように内周面に残留した薬液40が乾燥して固化し、次に薬液40を吐出する際に異物となる恐れがある。
【0040】
これに対し、
図4(a)の場合、薬液40の吐出を終えて再び吐出するまでの間、表面張力等の効果によって
図5(b)に示すように薬液40を端部に留めて薬液40の乾燥を抑制でき、上記のような異物の発生を防ぐことができる。これは
図4(b)の場合でも同様である。
【0041】
薬液40への異物の混入を防ぐためには、ノズル部102の端部を都度カットすることも有効である。すなわち、前記のように薬液40の吐出を終えた後、再び薬液40を吐出する際に、
図6(a)の点線に示すようにノズル部102の端部をカットして用いる。これによりノズル部102の端部を常にフレッシュな状態で使用し、前記のような異物の薬液40への混入を防ぐことができる。
【0042】
ノズル部102のカットにはカッターなどの工具を用いることも可能であるが、異物の原因となる発塵を避けるためには塗工室内に工具などを極力持ち込まないことが望ましい。そのため、
図6(b)に示すようにノズル部102の端部の側面に切込み1021を設けておき、手で切離せるようにしておくことも可能である。
【0043】
(5.薬液チューブ10の製造方法)
図7は薬液チューブ10の製造方法について説明する図である。
図7(a)に示すように、本実施形態では、まず、複数の液溜部101と、液溜部101から延びて隣り合う液溜部101同士を繋ぐ複数の管状部分104とを一体に形成して連続体50を製造する。連続体50において液溜部101および管状部分104の内部は連通している。
【0044】
連続体50の製造方法は特に限定されない。例えばモールドを用いて連続体50を一体成型することもできるし、個別に形成した液溜部101と管状部分104を接着してもよい。
【0045】
連続体50を製造した後は、連続体50の内部に洗浄液を流して洗浄し、薬液40を連続体50の内部に通すことでフラッシング(共洗い)を行っておく。
【0046】
そして、
図7(b)に示すように工業用の注射針60等を用いて連続体50の内部に薬液40を充填する。
図7(b)の例では管状部分104の端部から薬液40を充填しているが、液溜部101や管状部分104の側面に針を刺して薬液40を充填することも可能である。
【0047】
連続体50の内部に薬液40を充填した後、管状部分104の端部を溶融圧着して
図7(c)に示すように閉塞部103を設ける。閉塞部103を除いた管状部分104の残りの部分は前記したノズル部102を構成する。
【0048】
図8は管状部分104の溶融圧着について説明する図である。本実施形態では、
図8(a)に示すように金属板等の板材30で管状部分104の端部を両側から挟んで塞ぎ、当該端部に充填されていた薬液40を側方に逃がす。
【0049】
その後、
図8(b)に示すようにヒーター31を板材30の中央部付近に配置し、これにより管状部分104を加熱して溶融圧着させ、
図8(c)に示すように管状部分104の端部を閉塞部103とする。以上の手順によって、薬液40から遠い位置でヒーター31による熱を加えることができ、ヒーター31の熱によって薬液40が変性するのを防止できる。
【0050】
この後、
図7(d)に示すように閉塞部103の途中を切断すると、個々の薬液チューブ10が製造される。ノズル部102に前記した切込み1021を設ける場合は、例えば連続体50の製造時に、管状部分104においてノズル部102の端部に当たる箇所をカッター等により切込めばよい。
【0051】
また、液溜部101にある程度の硬さを持たせて薬液40の吐出制御を容易とするため、液溜部101の側面の厚さを管状部分104の側面の厚さより大きくしておくことも可能である。同様に、ノズル部102の端部にある程度の硬さを持たせ、塗布システム1への薬液チューブ10のセット時にノズル部102の先端の配置を安定させるため、管状部分104においてノズル部102の端部に対応する部分の側面の厚さをそれ以外の部分より大きくしておくことも可能である。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、薬液チューブ10を塗工室まで搬送し、閉塞部103を取り除いて液溜部101とノズル部102が一体となった薬液チューブ10を塗布システム1に用いることにより、塗布システム1において配管の継ぎ目をなくすことができる。また外部に設けた加圧機構11、12により吐出制御を行って液溜部101内の薬液40を液溜部101と一体となったノズル部102内を通して基材21上に直接吐出できるので、薬液40がこれらの加圧機構11、12に触れたり、外気に触れたりすることもない。また薬液チューブ10は使い捨てとし、使用後の薬液チューブ10を新たな薬液チューブ10に交換して常にクリーンな状態で薬液40の塗布ができる。そのため、薬液40に異物が混入するのを防止できる。使用後の薬液チューブ10は工場等で洗浄して再利用することも可能であり、この場合の洗浄も容易である。
【0053】
また、本実施形態では、液溜部101とノズル部102を樹脂製のものとすることで、これらを一体として形成するのが容易になる。また、ノズル部102が可とう性を有することで様々な態様の塗布システム1に薬液チューブ10を容易にセットできる。
【0054】
薬液チューブ10の閉塞部103は、前記したように管状部分104の溶融圧着によって容易に形成できる。溶融圧着時には、管状部分104を板材30によって挟み薬液40を側方に逃がした後、板材30の中央部付近から加熱を行うことにより、熱による薬液40の変性を防ぐことができる。
【0055】
また、ノズル部102の端部に切込み1021を設けて適宜カットして用いたり、ノズル部102の先端の内径を4mm程度以下の極細のものとすることで、薬液塗布の中断時にノズル部102の端部に残留した薬液40が乾燥して固化し、異物として薬液40に混入するのを防ぐことができる。
【0056】
また、薬液チューブ10は、液溜部101と当該液溜部101から延びる管状部分104を有する連続体50から製造することができ、ノズル部102となる管状部分104に閉塞部103を設けて薬液チューブ10を容易に製造できる。この連続体50は、複数の液溜部101および隣り合う液溜部101同士を繋ぐ管状部分104を一体に形成したものとすることで、薬液チューブ10の大量生産に適したものとなり、管状部分104を溶融圧着して閉塞部103とし、閉塞部103で切断を行うことで個々の薬液チューブ10を製造できる。
【0057】
しかしながら、本発明がこれに限ることはない。例えば
図9(a)の薬液チューブ10’に示すように、ノズル部102の一部をばね状に屈曲した伸縮部105としてもよい。この場合、
図9(b)に示すように伸縮部105を伸縮可能とすることができ、塗布システム1においてノズル部102をセットしたアームが移動する場合など、塗布システム1の様々な動作に追随できる。例えば液溜部101は別室に配置するが、ノズル部102は塗工室内でアーム等の動作に追随する、といった構成も可能である。なお、伸縮部105の屈曲形状はばね状のものに限らない。
【0058】
次に、本発明の第2、第3の実施形態について説明する。これらの実施形態は第1の実施形態と異なる点について主に説明し、同様の点については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。
【0059】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、薬液チューブの構成が第1の実施形態と異なる例である。
【0060】
図10(a)は本発明の第2の実施形態に係る薬液チューブ10aの概略を示す図である。図に示すように、薬液チューブ10aは、液溜部101aの形状において第1の実施形態と異なっている。
【0061】
すなわち、液溜部101aは前記のように蛇腹状の側面を有する筒体ではなく、袋状のものとなっている。また液溜部101aの内空部分はノズル部102に向かってテーパー状に窄まっており、液溜部101aの薬液がノズル部102に送り出し易く、薬液40の滞留を防止できる構成となっている。
【0062】
図10(b)は薬液チューブ10aを用いた塗布システム1aの概略を示す図である。塗布システム1aは、薬液40の吐出量を制御する加圧機構11aの構成において前記した塗布システム1と異なる。
【0063】
すなわち、加圧機構11aは、薬液チューブ10aの外部に設けられ、液溜部101aを両側から押圧し液溜部101a内の薬液40を送り出すようになっている。加圧機構11aには、前記と同様モーター等を用いることができるが、これに限ることはない。
【0064】
塗布システム1aにおける薬液40の塗布方法については前記と略同様である。ただし、薬液40の吐出時には、加圧機構12によるノズル部102の押圧が解除された状態で、加圧機構11aを矢印dに示すように液溜部101a側に移動させ、液溜部101aを両側から押圧する。すると液溜部101a内の薬液40が送り出され、ノズル部102を通ってその先端から基材21へと吐出される。吐出量は加圧機構11aの移動幅によって制御できる。
【0065】
第2の実施形態でも第1の実施形態と同様の効果が得られる。また液溜部101aが袋状なので、スペースを取らず薬液チューブ10aの運搬等がしやすい利点がある。一方、第1の実施形態では、液溜部101を側面に蛇腹部分を有する筒体とし、蛇腹部分を縮めるように押圧することで、薬液40の吐出量の制御が容易になる利点がある。
【0066】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、薬液チューブの製造方法において第1の実施形態と異なる。
【0067】
すなわち、本実施形態では、まず、
図11(a)に示すように液溜部101と当該液溜部101から延びる管状部分104を一体に形成した連続体50aを製造する。連続体50aは、前記と同様、例えばモールドを用いて一体成型することもできるし、個別に形成した液溜部101と管状部分104を接着してもよい。
【0068】
連続体50aの洗浄やフラッシングを前記と同様に行った後、
図11(b)に示すように注射針60等を用いて連続体50aに薬液40を充填する。そして、管状部分104の先端に
図11(c)に示すように栓70(閉塞部)を設け、栓70によって当該先端を塞ぐことで薬液チューブ10bが製造される。上記の管状部分104はそのままノズル部102を構成する。
【0069】
栓70の形状等は特に限定されず、この種の栓として通常用いられるもの、例えばテーパー状の部材の先端部分を管状部分104(ノズル部102)の先端に挿入し、当該管状部分104の周囲に配置したネジ部とカバーキャップを螺合させるタイプのもの等を用いることができる。
【0070】
本実施形態では、管状部分104の先端を栓70によって塞ぐので、前記のように溶融圧着する必要が無く熱により薬液40が変性することもない。
【0071】
ただし、
図12(a)に示すように管状部分104の端部を溶融圧着して閉塞部103とし、管状部分104の残りの部分をノズル部102としてもよい。この場合は
図12(b)に示すように管状部分104の端部を金属板等の板材30で両側から挟んで薬液40を側方に逃がし、管状部分104の先端に当たる位置でヒーター31から熱を加えればよい。これにより、薬液40から遠い位置でヒーター31による熱を管状部分104に加え、ヒーター31の熱によって薬液40が変性するのを防止できる。
【0072】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。