(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.加飾シート
本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層と、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる表面保護層とを備える加飾シートであって、表面保護層の基材層側の第1面には、第1凹凸形状が設けられており、表面保護層の第1面とは反対側の第2面には、第2凹凸形状が設けられており、第1凹凸形状と前記第2形状が互いに異なっていることを特徴とする。本発明の加飾シートは、このような特定の構成を備えていることにより、例えば見た目による意匠感と手触り感とが異なるなど、優れた意匠を好適に加飾樹脂成形品に付与することが可能となっている。
【0014】
以下、本発明の加飾シートについて詳述する。なお、本明細書において、数値範囲については、「以上」、「以下」と明記している箇所を除き、「〜」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2〜15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
【0015】
加飾シートの積層構造
図1〜3に示されるように、本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層1と、表面保護層2とが積層された積層構造を有する。後述の通り、表面保護層2は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されている。
【0016】
本発明の加飾シートにおいて、基材層1と表面保護層2の間には、見た目による意匠感を高めることなどを目的として、必要に応じて、装飾層3を設けてもよい。また、表面保護層2とその下に位置する層との密着性を高めること等を目的として、必要に応じて、表面保護層2の直下にプライマー層4を設けてもよい。なお、後述の通り、装飾層3及びプライマー層4は、それぞれ、表面保護層2の基材層1側の第1面2aに設けられた第1凹凸形状11に沿って設けられている。
【0017】
図2に示されるように、本発明の加飾シートにおいて、表面保護層2は複層であってもよい。
図2には、表面保護層2が、第1面2aを構成している第1表面保護層21と、第2面2bを構成している第2表面保護層22の2層構成である例を示している。
【0018】
さらに、
図3に示されるように、本発明の加飾シートは、射出成形時などにおいて、表面保護層2の凹凸形状(特に、第2凹凸形状)を保護することなどを目的として、必要に応じて、表面保護層2の第2面2bの上に、剥離可能なフィルム層5が設けられていてもよい。なお、表面保護層2と剥離可能なフィルム層5との間には、これらの層間の剥離性を高めることなどを目的として、離型層(図示を省略する)を有していてもよい。
【0019】
また、基材層1と表面保護層2の間には、基材層1の色の変化やバラツキを抑制する目的で、必要に応じて、隠蔽層(図示を省略する)が設けられていてもよい。プライマー層4を設ける場合であれば、当該隠蔽層は基材層1とプライマー層4の間に設ければよく、また、装飾層3を設ける場合であれば、当該隠蔽層は、基材層1と装飾層3の間に設ければよい。
【0020】
更に、本発明の加飾シートにおいて、加飾樹脂成形品の成形の際に成形樹脂との密着性を高めることを目的として、基材層1の裏面(表面保護層2とは反対側の面)には、必要に応じて、裏面接着層(図示を省略する)が設けられてもよい。
【0021】
本発明の加飾シートの積層構造の例として、基材層1/表面保護層2が積層された積層構造;基材層1/装飾層3/表面保護層2が順に積層された積層構造;基材層1/プライマー層4/表面保護層2が順に積層された積層構造;基材層1/装飾層3/プライマー層4/表面保護層2が順に積層された積層構造;基材層1/表面保護層2/フィルム層5が順に積層された積層構造;基材層1/表面保護層2/離型層/フィルム層5が順に積層された積層構造;基材層1/装飾層3/表面保護層2/フィルム層5が順に積層された積層構造;基材層1/装飾層3/プライマー層4/表面保護層2/フィルム層5が順に積層された積層構造;基材層1/装飾層3/プライマー層4/表面保護層2/離型層/フィルム層5が順に積層された積層構造;基材層1/装飾層3/プライマー層4/第1表面保護層21/第2表面保護層22/フィルム層5が順に積層された積層構造などが挙げられる。
【0022】
図1に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層1/装飾層3/プライマー層4/表面保護層2が積層された加飾シートの断面図を示す。
図2に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として基材層1/装飾層3/プライマー層4/第1表面保護層21/第2表面保護層22が順に積層された加飾シートの断面図を示す。
図3に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層1/装飾層3/プライマー層4/第1表面保護層21/第2表面保護層22/フィルム層5が順に積層された加飾シートの断面図を示す。
【0023】
加飾シートの各層の組成
[基材層1]
基材層1は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす樹脂シート(樹脂フィルム)である。基材層1に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や成形樹脂との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。当該熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある)、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂(以下「ASA樹脂」と表記することもある)、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂及びアクリル樹脂が三次元成形性の観点から好ましい。また、基材層1は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
【0024】
基材層1の曲げ弾性率については、特に制限されない。例えば、本発明の加飾シートをインサート成形法によって成形樹脂と一体化させる場合には、本発明の加飾シートにおける基材層1の25℃における曲げ弾性率が500〜4,000MPa、好ましくは750〜3,000MPaが挙げられる。ここで、25℃における曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定された値である。25℃における曲げ弾性率が500MPa以上であると、加飾シートは十分な剛性を備え、インサート成形法に供しても、表面特性と成形性がより一層良好になる。また、25℃における曲げ弾性率が3,000MPa以下であると、ロール トゥ ロールで製造する場合に十分な張力をかけることができ、たるみが発生し難くなるため、絵柄がずれることなく重ねて印刷することができ、所謂絵柄見当が良好となる。
【0025】
基材層1は、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。基材層1の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、基材層1の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層1を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
【0026】
また、基材層1は公知の接着層を形成する等の処理を施してもよい。
【0027】
更に、基材層1は、着色剤を用いて着色されていてもよく、着色されていなくてもよい。また、基材層1は、無色透明、着色透明、及び半透明のいずれの態様であってもよい。基材層1に用いられる着色剤としては、特に制限されないが、好ましくは150℃以上の温度条件でも変色しない着色剤が挙げられ、具体的には、既存のドライカラー、ペーストカラー、マスターバッチ樹脂組成物等が挙げられる。
【0028】
基材層1の厚みは、加飾シートの用途、成形樹脂と一体化させる成形法等に応じて適宜設定されるが、通常25〜1000μm程度、50〜700μm程度が挙げられる。より具体的には、本発明の加飾シートをインサート成形法に供する場合であれば、基材層1の厚みとして、通常50〜1000μm程度、好ましくは100〜700μm程度、更に好ましくは100〜500μm程度が挙げられる。また、本発明の加飾シートを射出成形同時加飾法に供する場合であれば、基材層1の厚みとして、通常25〜200μm程度、好ましくは50〜200μm程度、更に好ましくは70〜200μm程度が挙げられる。なお、基材層1の厚みは、第1凹凸形状11による凹部が形成されていない位置における厚みである。
【0029】
[表面保護層2]
表面保護層は、加飾樹脂成形品の表面を保護しつつ、凹凸形状によって、加飾樹脂成形品に優れた意匠を付与するために設けられる層である。表面保護層2の基材層1側の第1面2aには、第1凹凸形状11が設けられている。さらに、表面保護層2の第1面2aとは反対側の第2面2bには、第2凹凸形状12が設けられている。本発明において、これらの第1凹凸形状11と第2形状12は、互いに異なっていることを特徴としている。より具体的には、本発明の加飾シートを平面視した場合に、第1凹凸形状11によって表現されている意匠と、第2形状12によって表現されている意匠が異なっていることが好ましい。これにより、例えば、見た目による意匠感と手触り感とが異なるなど、優れた意匠とすることができる。なお、第1凹凸形状11と第2形状11とが互いに異なっていることは、加飾シートの厚み方向の断面形状から確認することができる。
【0030】
<凹凸形状>
第1凹凸形状11と第2形状12の具体的な形状は、互いに異なっていれば、特に制限されず、付与すべき意匠感等に応じて適宜設定すればよい。当該凹凸形状としては、例えば、ヘアライン模様、木目模様、幾何学模様(ドット、ストライプ、織物、カーボン等)等が挙げられる。
【0031】
本発明の加飾シートにおいて、第1凹凸形状11と第2形状12が、例えば同じ柄(例えば、ヘアライン模様、木目模様、幾何学模様(ドット、ストライプ、織物、カーボン等))を有していても、凸部の高さ、凸部の幅、隣接する凸部間のピッチ、凹部の幅、凹部の深さなどが異なっていれば、異なる形状となり、優れた意匠を発揮し得る。
【0032】
例えば見た目による意匠感と手触り感とが異なる意匠を加飾樹脂成形品に好適に付与する観点から、第1凹凸形状11と第2形状12が同じ柄を有しており、かつ、凸部の高さ、凸部の幅、隣接する凸部間のピッチ、凹部の幅、凹部の深さのうちいずれか1つが異なることが好ましい。当該意匠をさらに好適に付与する観点からは、第1凹凸形状11と第2形状12が異なる柄を表現していることがより好ましい。
【0033】
本発明の加飾シートにおいて、上記の第1凹凸形状11及び第2凹凸形状12は、それぞれ、加飾シートに凹凸形状による優れた意匠性を発揮するために、少なくとも一部の領域に形成すればよい。なお、後述の通り、第1凹凸形状11は、例えば、基材層1の表面に第1凹凸形状11を形成した後、基材層1の第1凹凸形状11を形成した表面側に、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層2を形成することによって、設けることができる。よって、基材層1と表面保護層2とが接面している場合には、基材層1と表面保護層2との界面によって第1凹凸形状11が構成される。一方、基材層1の表面に第1凹凸形状11を形成した後、基材層1の第1凹凸形状11を形成した表面側に、装飾層3やプライマー層4を設け、その後に、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層2を形成する場合には、第1凹凸形状11において、基材層1と表面保護層2との間には装飾層3やプライマー層4が位置している。
【0034】
また、例えば
図2及び
図3に示すように、表面保護層2は、複層により構成されていてもよい。前述の通り、
図2には、表面保護層2が、第1面2aを構成している第1表面保護層21と、第2面2bを構成している第2表面保護層22の2層構成である例を示しているが、第1表面保護層21及び第2表面保護層22との間には、さらに他の表面保護層が設けられた3層以上の構成としてもよい。
【0035】
表面保護層2は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されている。すなわち、本発明の加飾シートにおいては、第1凹凸形状11及び第2凹凸形状12が、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる表面保護層2によって構成されているため、射出成形時の熱圧による凹凸形状の変化が効果的に抑制されており、加飾樹脂成形品に対して優れた意匠を付与することができる。以下、表面保護層2の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂について詳述する。なお、表面保護層2が複層により構成されている場合、各層を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
(電離放射線硬化性樹脂)
表面保護層2の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面保護層2の形成において好適に使用される。
【0037】
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能性(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
上記した電離放射線硬化性樹脂の中でも、優れた三次元成形性を得る観点からは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。また、ポリカーボネート(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートを組み合わせて使用することも好ましい。
【0040】
(他の添加成分)
表面保護層2には、表面保護層2に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0041】
(表面保護層2の厚み)
表面保護層2の厚み(複層の場合は、総厚み)としては、好ましくは0.01〜20μm程度、より好ましくは0.01〜15μm程度、さらに好ましくは0.01〜12μm程度が挙げられる。また、表面保護層2が複層である場合、各層の厚みとしては、好ましくは0.01〜15μm程度、より好ましくは0.01〜12μm程度、さらに好ましくは0.01〜10μm程度が挙げられる。なお、本発明において、表面保護層の厚みは、第1凹凸形状11の凸部(基材層1側に突き出していない部分、以下同様)と、第2凹凸形状12の凹部(基材層1側に突き出している部分、以下同様)との間に位置している部分の厚みをいう。
【0042】
(表面保護層2の形成)
表面保護層2の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
【0043】
本発明においては、調製された塗布液を、前記厚みとなるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
【0044】
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層2を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が挙げられる。
【0045】
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、表面保護層2の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと表面保護層2の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、表面保護層2の下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。
【0046】
また、照射線量は、表面保護層2の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
【0047】
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
【0048】
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が挙げられる。
【0049】
かくして形成された表面保護層2には、各種の添加剤を添加することにより、ハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能等の機能を付与する処理を行ってもよい。
【0050】
[装飾層3]
装飾層3は、加飾シートに装飾性を付与する目的で、基材層1と表面保護層2の間、プライマー層4を設ける場合は、基材層1とプライマー層4の間、又は隠蔽層を設ける場合は隠蔽層と表面保護層2の間等に、必要に応じて設けられる層である。装飾層3は、表面保護層2の第1凹凸形状11に沿って設けられている、
【0051】
装飾層3は、例えば、インキ組成物を用いて所望の絵柄を形成した層とすることができる。装飾層3の形成に用いられるインキ組成物としては、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
【0052】
インキ組成物に使用されるバインダーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
インキ組成物に使用される着色剤としては、特に制限されないが、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
【0054】
装飾層3によって形成される絵柄についても、特に制限されないが、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等が挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様であってもよく、あるいは単色無地(いわゆる全面ベタ)であってもよい。これらの絵柄は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成されるが、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成することができる。
【0055】
装飾層の厚みは、特に制限されないが、例えば1〜30μm、好ましくは1〜20μmが挙げられる。なお、装飾層の厚みは、基材層1に第1凹凸形状11による凹部が形成されてない位置における厚みである。
【0056】
また、装飾層3は金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。金属薄膜層の形成方法は特に制限されず、例えば上記の金属を用いた、真空蒸着法などの蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。金属薄膜層は全面に設けられても、部分的に設けられてもよい。
【0057】
装飾層3が金属薄膜層である場合、その厚みとしては、特に限定されないが、加飾シートの意匠性を高める観点などからは、光学濃度(OD値)が好ましくは0.6〜1.8程度、より好ましくは0.8〜1.4程度が挙げられる。なお、金属薄膜層の厚みは、基材層1に第1凹凸形状11による凹部が形成されてない位置における厚みである。
【0058】
[プライマー層4]
プライマー層4は、表面保護層2とその下に位置する層との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、表面保護層2の直下に設けられる層である。プライマー層4は、表面保護層2の第1凹凸形状11に沿って設けられている。
【0059】
プライマー層4を構成するプライマー組成物としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等をバインダー樹脂とするものが好ましく用いられ、これらの樹脂は一種又は二種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂が好ましい。
【0060】
ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が使用される。前記イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが用いられる。また、ウレタン樹脂とブチラール樹脂を混ぜて構成することも可能である。
【0061】
架橋後の表面保護層2との密着性、表面保護層2を積層後の相互作用の生じ難さ、物性、成形性の面から、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせることが好ましく、特にアクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
【0063】
(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂としては、例えばアクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が好ましい。硬化剤としては、上記の各種イソシアネートが用いられる。アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂は所望により、アクリル/ウレタン比(質量比)を好ましくは9/1〜1/9、より好ましくは8/2〜2/8の範囲で調整することが好ましい。
【0064】
プライマー層4の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.5〜20μm程度であり、好ましくは、1〜5μmが挙げられる。なお、プライマー層の厚みは、基材層1に第1凹凸形状11による凹部が形成されてない位置における厚みである。
【0065】
プライマー層4は、プライマー組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法は、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に加飾シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
【0066】
[剥離可能なフィルム層5]
本発明において、フィルム層5は、加飾シートの真空成形や射出成形時に表面保護層2の凹凸形状(特に第2凹凸形状12)の変形や消失を抑制するために、必要に応じて設けられる層である。フィルム層5は、表面保護層2の基材層1側とは反対側の表面に設けられる。フィルム層5は、加飾シート(表面保護層2)から剥離可能な状態で積層されており、成形樹脂と一体成形された後に、加飾樹脂成形品から剥離される層である。
【0067】
フィルム層5と表面保護層2とは、直接積層されていてもよいし、これらの層の間に他の層が積層されていてもよい。
【0068】
表面保護層2とフィルム層5とが直接積層されている場合、フィルム層5が表面保護層2の第2凹凸形状12の凹部の少なくとも一部を埋めていることが好ましい。フィルム層5が表面保護層2の第2凹凸形状12の凹部を埋めていることにより、フィルム層5による表面保護層2の第2凹凸形状12の保護機能をより一層高めることができる。
【0069】
フィルム層5によって表面保護層2の第2凹凸形状12の凹部を埋める方法としては、例えば、押出成形または熱ラミネートにより、第2凹凸形状12の凹部を埋めるようにして、フィルム層5を積層する方法が挙げられる。
【0070】
本発明の加飾シートにおいては、表面保護層2が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されている。このため、熱ラミネートや押出成形によってフィルム層5を積層した場合の加熱による凹凸形状の変形が抑制されている。さらに、本発明の加飾シートにおいて、フィルム層5が設けられている場合、フィルム層5によって表面保護層2の第2凹凸形状12が保護されているため、射出成形やそれに先立つ予備成形(真空成形)の際の成形性に特に優れている。また、凹凸形状の変形を十分に抑制するとともに剥離時の作業性を良好にするため、フィルム層5の厚みを大きくした場合においても、成形性を損ないにくい。このため、本発明の加飾シートは、高い三次元性形成が求められる加飾シートとしても好適に使用することができる。
【0071】
フィルム層5と表面保護層2とを加飾シートの状態では密着させ、成形樹脂と一体成形した後には容易に剥離できるよう、接着強度を調整する観点からは、フィルム層5は、押出成形により積層されたものであることが好ましい。
【0072】
フィルム層5を構成する熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある);アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタラート(PBT)樹脂等のポリエステル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
【0073】
加飾シートの成形性を効果的に高めつつ、加飾樹脂成形品に対して優れた耐薬品性、耐摩耗性、さらには凹凸形状に基づく優れた意匠感等を付与する観点から、これらの中でも、フィルム層5が、ポリオレフィン樹脂またはポリエステル樹脂により構成されていることが好ましい。ポリエステル樹脂としては、非結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが好ましい。非結晶性PETとしては、一般にA−PETまたはPET−Gとして知られている樹脂を用いることができる。
【0074】
フィルム層5の厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは5〜300μm程度、より好ましくは5〜100μm程度が挙げられる。フィルム層5は複層からなっていてもよい。なお、フィルム層5の厚みは、表面保護層2の第2凹凸形状12の凹部を埋めていない位置における厚みである。
【0075】
(離型層)
離型層は、フィルム層5と表面保護層2との剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて設けられる層である。離型層は、表面保護層2と接するようにしても設けられる。
【0076】
離型層を形成する素材としては、表面保護層2の第2凹凸形状12を埋めるようにして塗布することができ、かつ、フィルム層5と共に表面保護層2の表面から剥離できるものであれば、特に制限されないが、離型層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されていることが好ましい。これにより、真空成形や射出成形時に表面保護層2の凹凸形状の変形や消失をより一層効果的に抑制し、加飾樹脂成形品に優れた意匠感等を付与することが可能になる。
【0077】
<離型層における電離放射線硬化性樹脂>
離型層の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂の種類、好ましいもの等については、前記表面保護層2の形成に使用されるものと同様である。離型層の形成に使用する電離放射線硬化性樹脂と、前記表面保護層2の形成に使用する電離放射線硬化性樹脂とは同一の種類であってもよく、異なる種類であってもよい。
【0078】
<他の添加成分>
離型層の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物には、電離放射線硬化性樹脂以外に、成形性の向上等のために、必要に応じて、他の樹脂成分が含まれていてもよい。このような電離放射線硬化性樹脂以外の樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂;ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂);ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;塩化ビニル樹脂;ウレタン樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系樹脂;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂;エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂;ポリイミド;ポリ乳酸;ポリビニルアセタール樹脂;液晶性ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
離型層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の他、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル−メラミン系樹脂が含まれる。)、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリル酸やウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用いて形成することができる。なかでも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、及びこれらをウレタン変性したものが好ましく、より具体的には、アクリル−メラミン系樹脂単独、アクリル−メラミン系樹脂含有組成物、ポリエステル系樹脂とエチレン及びアクリル酸の共重合体をウレタン変性したものとを混合した樹脂組成物、アクリル系樹脂とスチレン及びアクリルとの共重合体のエマルションとを混合した樹脂組成物などが挙げられる。これらの内、アクリル−メラミン系樹脂単独又はアクリル−メラミン系樹脂を50質量%以上含有する組成物で離型層を構成することが特に好ましい。
【0080】
離型層を形成する樹脂組成物には、離型層に備えさせる所望の物性を考慮して、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0081】
離型層の厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは1〜40μm程度、より好ましくは5〜15μm程度が挙げられる。なお、離型層の厚みは、基材層1に第2凹凸形状12による凹部が形成されてない位置における厚みである。
【0082】
離型層は、表面保護層2の上に、前述の樹脂組成物を塗布することによって形成することができる。具体的には、当該樹脂組成物を、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の方法で、表面保護層2の表面に塗布すればよい。
【0083】
[隠蔽層]
隠蔽層は、基材層1の色の変化やバラツキを抑制する目的で、基材層1と表面保護層2の間、プライマー層4を設ける場合であれば基材層1とプライマー層4の間、又は装飾層3を設ける場合であれば基材層1と装飾層3の間に、必要に応じて設けられる層である。
【0084】
隠蔽層は、基材層が加飾シートの色調や絵柄に悪影響を及ぼすのを抑制するために設けられるため、一般的には、不透明色の層として形成される。
【0085】
隠蔽層は、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したインキ組成物を用いて形成される。隠蔽層を形成するインキ組成物は、前述した装飾層に使用されるものから適宜選択して使用される。
【0086】
隠蔽層は、通常、厚みが1〜20μm程度に設定され、所謂ベタ印刷層として形成されることが望ましい。なお、隠蔽層の厚みは、表面保護層2の第2凹凸形状12の凹部を埋めていない位置における厚みである。
【0087】
隠蔽層は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写による印刷、インクジェット印刷等の通常の印刷方法;グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート等の通常の塗布方法等によって形成される。
【0088】
[裏面接着層]
裏面接着層(図示しない)は、加飾樹脂成形品の成形の際に成形樹脂との密着性を高めることを目的として、基材層1の裏面(表面保護層2とは反対側の面)に、必要に応じて設けられる層である。
【0089】
裏面接着層には、加飾樹脂成形品に使用される成形樹脂に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。
【0090】
裏面接着層の形成に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0091】
また、裏面接着層の形成に使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0092】
加飾シートの製造方法
本発明の加飾シートは、例えば、以下の工程1〜工程3を備える方法により製造することができる。
工程1:基材層1の表面に第1凹凸形状11を形成する工程
工程2:基材層1の第1凹凸形状11を形成した表面側に、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層2を形成する工程
工程3:表面保護層2の基材層1とは反対側の面に、第1凹凸形状11とは異なる第2凹凸形状12を形成する工程
【0093】
上記本発明の加飾シートの製造方法によれば、表面保護層2が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されていることにより、例えばエンボス加工により第2凹凸形状12を形成する際の熱や圧力によって第1凹凸形状11が消失することが抑制されるため、得られた加飾シートにおいて第1凹凸形状11を視認しやすくなる。
【0094】
本発明の加飾シートの製造方法において、基材層1、表面保護層2、第1凹凸形状11、第2凹凸形状12の詳細については、前述の通りである。
【0095】
工程1において、基材層1の表面に第1凹凸形状11を設ける前に、必要に応じて、前述の装飾層3、プライマー層4などを積層したのち、基材層1の表面に第1凹凸形状11を形成してもよい。装飾層3、プライマー層4などを積層する場合には、これらの層を積層した側から、エンボス加工を施すことにより、基材層1の表面に第1凹凸形状11を形成することができ、かつ、第1凹凸形状11に沿った装飾層3、プライマー層4を形成することができる。
【0096】
また、工程1において、前述の装飾層3、プライマー層4などを積層する前に、基材層1の表面に第1凹凸形状11を設け、その後に、前述の装飾層3、プライマー層4などを積層してもよい。この場合にも、第1凹凸形状11の凹部が全て埋められないように、装飾層3、プライマー層4を積層することによって、基材層1の表面に第1凹凸形状11を形成することができ、かつ、第1凹凸形状11に沿った装飾層3、プライマー層4を形成することができる。
【0097】
また、工程2及び工程3において、第1凹凸形状11、第2凹凸形状12を設ける方法としては、特に制限されないが、好ましくは、それぞれ、エンボス加工が挙げられる。エンボス加工は、公知の方法であり、エンボス加工対象物の表面を加熱軟化させた後、エンボス版で加圧して、エンボス版に形成された凹凸形状をエンボス加工対象物の表面に賦形し、冷却し、固定する方法である。エンボス加工には、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機を用いることができる。第1凹凸形状11及び第2凹凸形状12に対応するエンボス版を用いることにより、第1凹凸形状11及び第2凹凸形状12を形成することができる。
【0098】
さらに、本発明の加飾シートに剥離可能なフィルム層5を形成する場合には、工程3の後に、次の工程を設ける。
工程3で得られた積層体の表面保護層2の第2凹凸形状12の上に、剥離可能なフィルム層5を形成する工程。
【0099】
なお、剥離可能なフィルム層5の詳細は、前述の通りである。
【0100】
2.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに成形樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、基材層1と、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる表面保護層2とを備える加飾樹脂成形品であって、表面保護層2の基材層1側の第1面2aには、第1凹凸形状11が設けられており、表面保護層2の第1面2aとは反対側の第2面2bには、第2凹凸形状12が設けられており、第1凹凸形状11と第2形状12が互いに異なっていることを特徴とする。
図4に、本発明の加飾樹脂成形品の一態様について、その断面構造を示す。なお、
図4は、
図1に示される積層構成を備える加飾シートと成形樹脂層6とを一体化させた加飾樹脂成形品の略図的断面図である。
【0101】
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートの基材層側に、樹脂を射出することにより成形樹脂層を形成する工程を備える方法により製造することができる。具体的には、本発明の加飾シートを用いて、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。
【0102】
本発明の加飾シートがフィルム層を備えている場合、本発明の加飾シートを各種射出成形法に供してフィルム層付き加飾樹脂成形品を作製することによって、射出成形の際に凹凸形状が損なわれることを抑制するという効果を好適に発揮することができる。本発明の加飾樹脂成形品を構成する成形樹脂層6の好適な一例として、射出成形で形成された射出樹脂層が挙げられる。これらの射出成形法の中でも、好ましくはインサート成形法及び射出成形同時加飾法が挙げられる。すなわち、本発明の加飾シートは、インサート成形法または射出成形同時加飾法に好適に用いられる。
【0103】
インサート成形法では、先ず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートの基材層1側を一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
【0104】
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の加飾樹脂成形品(またはフィルム層付き加飾樹脂成形品)が製造される。
【0105】
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、及び
前記工程で得られた成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程。
【0106】
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、例えば基材層としてABS樹脂フィルムを用いる場合であれば、通常100〜250℃程度、好ましくは130〜200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度、好ましくは220〜280℃程度とすることができる。
【0107】
また、射出成形同時加飾法では、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本発明の加飾シートの基材層1側を一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
【0108】
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本発明の加飾樹脂成形品(またはフィルム層付き加飾樹脂成形品)が製造される。
【0109】
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程。
【0110】
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常70〜130℃程度とすることができる。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度、好ましくは220〜280℃程度とすることができる。
【0111】
また、本発明の加飾樹脂成形品は、真空圧着法等の、予め用意された立体的な樹脂成形体(成形樹脂層)上に、本発明の加飾シートを貼着する加飾方法によっても作製することができる。
【0112】
真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本発明の加飾シート及び樹脂成形体を、加飾シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ加飾シートの基材層1側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を加飾シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、加飾シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、必要に応じて加飾シートの余分な部分をトリミングすることにより、本発明の加飾樹脂成形品を得ることができる。
【0113】
真空圧着法においては、上記の成形体を加飾シートに押し当てる工程の前に、加飾シートを軟化させて成形性を高めるため、加飾シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常60〜200℃程度とすることができる。
【0114】
本発明の加飾樹脂成形品において、成形樹脂層は、用途に応じた成形樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
【0115】
成形樹脂として使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0116】
また、成形樹脂として使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0117】
本発明の加飾シートがフィルム層を備えている場合には、本発明のフィルム層付き加飾樹脂成形品からフィルム層を剥離除去することにより、加飾樹脂成形品を得ることができる。また、フィルム層付き加飾樹脂成形品において、フィルム層は、加飾樹脂成形品の保護シートとしての役割を果たすので、製造後に剥離させずにそのまま保管しておき、用時にフィルム層を剥がしてもよい。このような態様で使用することにより、輸送時の擦れ等によって加飾樹脂成形品に傷付きが生じるのを防止することができる。
【0118】
本発明の加飾樹脂成形品は、優れた意匠を有しているので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;幅木、回縁等の造作部材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
【実施例】
【0119】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0120】
[実施例1]
基材層として、ABS樹脂フィルム(厚み400μm)を用いた。当該基材層上に、アクリル樹脂を含むインキ組成物を用いて、木目柄の装飾層(厚さ5μm)をグラビア印刷により形成した。装飾層上に、主剤(アクリルポリオール/ウレタン、質量比9/1)100質量部と硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート)7質量部を含む2液硬化型樹脂からなるバインダー樹脂を含むプライマー層用樹脂組成物を塗布し、乾燥させて厚みが2μmのプライマー層を形成し、基材層/装飾層/プライマー層が順に積層された積層体を得た。次に、プライマー層上に、版深が20μmのエンボス版(カーボン網目模様が形成される凹凸形状を備えている)を用いてエンボス加工を行い、第1凹凸形状を形成した。次に、第1凹凸形状の上から、下記の組成を有する電子線硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚みが10μmとなるようにバーコートにより塗工し、電子線硬化性樹脂組成物によって第1凹凸形状を埋めた未硬化樹脂層を形成した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、表面保護層を設けた。さらに、表面保護層の上から、版深が20μmのエンボス版(ヘアライン模様が形成される凹凸形状を備えている)を用いてエンボス加工を行い、表面保護層の第2凹凸形状を形成し、
図1に示されるような積層構成を備える加飾シートを得た。
【0121】
(電離放射線硬化性樹脂組成物)
3官能ペンタエリスリトールアクリレート(分子量300):30質量部
アクリルポリマー(重量平均分子量12万):70質量部
【0122】
[実施例2]
実施例1において、表面保護層(ここでは、第1表面保護層)の第2凹凸形状を形成した後、下記の組成を有する電子線硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚みが10μmとなるようにバーコートにより塗工し、この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、第2表面保護層を設けたこと以外は、実施例1と同様にして、
図2に示されるような積層構成を備える加飾シートを得た。
【0123】
[実施例3]
実施例2と同様にして、
図2示されるような積層体を形成した後、第2表面保護層の上に、押出成形によりポリエチレンフィルム(厚み40μm)を積層することによって、剥離可能なフィルム層を設けて、
図3に示されるような積層構成を備える加飾シートを得た。
【0124】
[比較例1]
第1表面保護層を設けなかったこと以外は、実施例2と同様にして、加飾シートを得た。
【0125】
<加飾シートの真空成形及び加飾樹脂成形品の製造>
上記で得られた各加飾シートを赤外線ヒーターで加熱し、シート温度が160℃になるまで軟化させた。次いで、真空成形用型を用いて真空成形を行い(最大延伸倍率100%)、金型の内部形状に成形した。真空成形後の加飾シートを冷却後、金型から離型した。次に、真空成形した加飾シートを金型に入れ、射出樹脂を金型のキャビティ内に射出し、該加飾シートと射出樹脂とを一体化成形し、金型から取り出すと同時に加飾樹脂成形品を得た。
【0126】
<凹凸形状による意匠感及び手触り感の評価>
上記で得られた各加飾シート、これらの加飾シートを上記のように真空成形した各加飾シート、さらに、真空成形した加飾シートから得られた上記各加飾樹脂成形品について、表面を目視で観察し、さらに手で触り、以下の基準により、目視による意匠感、手触り感を評価した。結果を表1に示す。
【0127】
(目視による意匠感の評価)
◎:第1凹凸形状が明瞭に視認でき、目視による意匠感に優れていた
〇:第1凹凸形状が十分に視認でき、目視により意匠として感じられた
△:視認し辛いが、第1凹凸形状により意匠が表現されていることは確認できた
×:第1凹凸形状が視認できなかった
【0128】
(手触り感)
◎:第2凹凸形状を明瞭に感じることができ、手触り感に優れた意匠であった
〇:第2凹凸形状による手触り感を十分に感じることができた
△:やや判り辛いが、第2凹凸形状による手触り感を感じることができた
×:第2凹凸形状を手で感じることが出来なかった
【0129】
【表1】