(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(混練機投入用ポリマー)
本発明の混練機投入用ポリマー(混練機に投入する直前のポリマー)は、前記式(I)を満たし、かつ所定の温度範囲を有している天然ゴム以外のポリマーである。
【0010】
混練機に投入して混練に供するゴム等のポリマーについて、本発明では、ポリマー種としてブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等の天然ゴム以外のポリマー種を選択し、かつそのサイズを前記式(I)を満たす大きさに調整する。更に、ポリマー温度、すなわち、混練機投入前のポリマーの温度を所定範囲内に調整されている。これにより、特段、材料を変更しなくても、混練機中において良好なポリマーの粉砕効率(ポリマーが粉砕される効率)が得られる共に、混練り後の組成物において良好な充填剤の分散性も得ることが可能である。
【0011】
前記混練機投入用ポリマーは、下記式(I)を満たす。
【数2】
【0012】
チップクリアランスd(チップクリアランスの距離:単位cm)は、ミキシングチャンバとローターチップ又はディスクチップとの隙間であり、混練機投入用ポリマーの体積V(cm
3)を(混練機のチップクリアランスd)
3(cm
3)以上にすることで、ポリマーのサイズが、チップと壁面やチップ間の距離よりも大きくなるため、混練中にポリマーにせん断が加えられる。よって、良好なポリマーの粉砕や充填剤の分散性が得られる。好ましくはV(cm
3)≧1.5d
3(cm
3)、より好ましくはV(cm
3)≧2.0d
3(cm
3)である。
【0013】
一方、Vを2.0×10
4cm
3以下にすることで、一番力の加わるチップクリアランスに入り込めるサイズになるまでにかかる時間が短縮され、優れた生産性が得られる。
【0014】
なお、具体的な適値やチップクリアランス距離は、練り機によって異なるが、チップクリアランス以下のサイズではせん断を加えられないことは同じ原理であるため、異なる混練り機であっても適値は、上式の範囲に収まる。
【0015】
混練機投入用ポリマーの形状は、前記式(I)を満たすものであれば特に限定されず、例えば、四角柱形状(立方体、直方体等)、三角柱形状等の角柱形状;円柱形状(楕円柱等);球状(真球、楕円球等);等が挙げられる。
【0016】
なかでも、縦a(cm)、横b(cm)及び高さc(cm)の四角柱形状で、a(cm)≧d(cm)、b(cm)≧d(cm)及びc(cm)≧d(cm)(d:チップクリアランス)を満たす形状が好ましい。この場合、良好なポリマーの粉砕や充填剤の分散性が得られる。
【0017】
前記混練機投入用ポリマーは、混練機に投入し、混練りに供されるものである。該混練機としては、従来公知のものを使用でき、例えば、バンバリーミキサーやニーダーなどの密閉型設備やオープンロール等が挙げられる。なかでも、密閉式のバンバリーミキサーが好ましい。ローター形状は、接線式、噛み合い式のいずれの形状でも良い。例えば、236リットル密閉式バンバリーミキサー(F270、神戸製鋼社製、ローター径:560mm、チップクリアランス:8mm)、等を使用できる。
【0018】
前記混練機投入用ポリマーは、温度が−20〜80℃の範囲内である。すなわち、混練機に投入するポリマーの温度を前記範囲に調整することで、混練中に良好なせん断力が得られ、優れたポリマーの粉砕効率、充填剤の分散性を実現できる。特に、低温の方が、よりポリマー投入時の初期せん断力が高くなるため、ポリマーがより細かく砕けて他材料と触れる表面積が拡大し、物性が向上する。好ましくは0〜30℃、より好ましくは0〜10℃であり、5℃前後が特に好適である。
【0019】
前記混練機投入用ポリマーは、天然ゴム(NR)以外のポリマーである。NRについて、低温(結晶化させる)保管で分散良化するとの知見はあるが、NR以外のポリマーは、結晶化しないため、当業者間では、低温にしてもあまり効果はないと考えられていた。本発明はこのような技術常識に反するもので、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等の低温でも結晶化しないポリマーについて、前記温度範囲に調整し、更にサイズも調整することにより、良好なポリマーの粉砕効率、充填剤の分散性が得られるものである。
【0020】
前記混練機投入用ポリマーのポリマー種としては、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等が挙げられる。なかでも、BR、SBRが好ましい。SBR、BRとしては特に限定されず、タイヤ分野で公知のものを使用できる。
【0021】
(ゴム組成物)
本発明の混練機投入用ポリマーは、タイヤ用途等に用いるゴム組成物に使用できる。
前記混練機投入用ポリマーを含むゴム組成物は、例えば、混練機投入用ポリマーを素練りする素練り工程と、前記素練り工程で得られた素練りポリマー及び充填剤を混練するベース練り工程とを含む製造方法、等により製造できる。
【0022】
素練り工程では、SBR、BR等のNR以外のポリマーの素練りが行われる。素練り工程は、混練機を用いて、ポリマーのみが練られる。混練り(素練り)は、前記混練機を用いて実施できる。素練り工程では、混練り時間は0〜5分が好ましく、混練り時のポリマー温度(素練りポリマーの温度)は、20〜120℃が好ましい。
【0023】
混練り開始時の温度が−20〜80℃のポリマーを、上記温度範囲まで混練りすることで、ポリマーが細かく粉砕され、他材料と触れる表面積が拡大し、物性が向上する。
また、素練り工程での混練機の回転数は、特に限定されず、分散性・生産性の確保等の観点から、使用する混練機に応じて適宜設定すればよい。
【0024】
ベース練り工程では、前記素練り工程で得られた素練りポリマー及び充填剤が混練される。混練り(ベース練り)は、前記混練機を用いて実施できる。ベース練り工程では、混練り時間は1〜15分が好ましく、混練り時のポリマー温度(混練り物の温度)は、120〜170℃が好ましい。
【0025】
充填剤としては、シリカ、カーボンブラック等、タイヤ分野で公知のものが挙げられる。
シリカを使用する場合、付与する性能により適宜選択すればよく、例えば、窒素吸着比表面積(N
2SA)50〜300m
2/g、好ましくは100〜250m
2/gのもの等、を使用できる。なお、シリカのN
2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0026】
カーボンブラックを使用する場合も付与する性能により適宜選択すればよく、例えば、窒素吸着比表面積(N
2SA)30〜300m
2/g、好ましくは50〜200m
2/gのもの等、を使用できる。なお、カーボンブラックのN
2SAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0027】
シリカをベース練り工程で投入する場合、更にシランカップリング剤を投入することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤等が挙げられる。
【0028】
ベース練り工程では、上述のポリマー、充填剤、シランカップリング剤以外に、他の成分を投入して混練りしてもよい。他の成分としては、オイル、ステアリン酸、老化防止剤等が挙げられる。
【0029】
ベース練り工程の後、通常、該工程で得られた混練り物及び加硫剤を混練する仕上げ練り工程が行われる。混練り(仕上げ練り)は、前記混練機を用いて実施できる。仕上げ練り工程では、混練り時間は、1〜15分が好ましく、混練り時のポリマー温度(混練り物の温度)は、80〜120℃が好ましい。
【0030】
仕上げ練り工程で投入する加硫剤としては、ゴム成分を架橋可能な薬品であれば特に限定されないが、例えば、硫黄等が挙げられる。
【0031】
なお、仕上げ練り工程では、上述の加硫剤以外に、他の成分を投入して混練りしてもよい。他の成分としては、例えば、加硫促進剤等が挙げられる。加硫促進剤としては、スルフェンアミド類、グアニジン類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チオウレア類、キサントゲン酸塩類等、公知のものを使用できる。
【0032】
仕上げ練り工程の後、通常、該工程で得られた混練り物(未加硫ゴム組成物)を加硫する。加硫温度は、150〜200℃が好ましく、加硫時間は、5〜15分が好ましい。
【0033】
前記製造方法等により、前記混練機投入用ポリマーを含む本発明のゴム組成物が得られる。本発明のゴム組成物において、ポリマー、充填剤、シランカップリング剤、加硫剤、加硫促進剤等の材料の配合比は、付与する性能等に応じて適宜設定すればい。
【0034】
例えば、シリカ、カーボンブラック等の充填剤の合計含有量は、ゴム100質量部に対して10〜200質量部が好ましい。シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましい。また、ゴム成分100質量部に対して、加硫剤の含有量は0.1〜8質量部、加硫促進剤の含有量は0.5〜10質量部が好ましい。
【0035】
(空気入りタイヤ)
本発明の混練機投入用ポリマーは、空気入りタイヤに使用できる。
例えば、仕上げ練り工程で得られた混練り物(未加硫ゴム組成物)を、トレッド等のタイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧することで、タイヤを製造できる。
【実施例】
【0036】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0037】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
BR:宇部興産(株)製のBR−150B
シリカ:シリカ:エボニック社製のUltrasil VN3(N
2SA:175m
2/g)
オイル:H&R社製のVivatec500(TDAEオイル)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミン)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0038】
<ゴム組成物の製法>
表1の配合、表2のポリマー投入サイズ(四角柱形状)及び投入時ポリマー温度に従い、(1)〜(3)の各工程を経て混練りを行い、未加硫ゴム組成物を作製した。(1)、(2)では、236リットル密閉式バンバリーミキサー(F270、神戸製鋼社製、ローター径:560mm、チップクリアランス:8mm)、(3)では、オープンロールを使用した。
(1)ポリマーの素練り工程(100℃で5分混練り後排出)
(2)残りの材料のうち、加硫薬品(硫黄、加硫促進剤)以外のすべての材料を投入・混練するベース練り工程(165℃で10分混練り後排出)
(3)ベース練りで得られた混練り物に、硫黄及び加硫促進剤を添加・混練りし、未加硫ゴム組成物を得た(80℃、5分)。
なお、(1)、(2)は所定回転数で混練りを行い、所定時間経過後、ゴムを排出した。
【0039】
〔評価〕
各実施例、比較例について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0040】
(トルク値(ポリマーの粉砕効率))
混練り時に加わる剪断力としてトルク(瞬間電力)値が考えられ、トルク値が高いほど、チャンバー内の材料に力が加わっていることになるので、材料が十分粉砕し、分散していくと必然的にトルク値も低下していく。従って、下記式で示される混練りでの材料変化をみるパラメータ(Δトルク)を測定した。
Δトルク=素練り工程後のトルク(kW/kg)/素練り工程における材料投入時のトルク(kW/kg)
Δトルクが小さい方が投入時から素練りによって粉砕が進んだことを示し、他材料(特にフィラー)との表面積が増加するため、物性向上が見込まれる。
【0041】
(フィラー分散性)
未加硫ゴム組成物について、アルファテクノロジーズ社製のRPA2000型試験機を用いて100℃、1Hzの条件下にて、歪0.5、1、2、4、8、16、32、64%のG*を測定し、G*の最大値とG*の最小値の差から、下記式によりペイン効果を求めた。
ΔG*=(G*の最大値−G*の最小値)/G*の最大値
混練りが効果的に実施されるとフィラーの分散が進み、ΔG*が小さい方がフィラーの分散性が良好である。なお、G*は純粋にフィラーの分散の影響を抽出するために、未加硫状態で測定した。
【0042】
なお、ポリマーの粉砕効率、フィラー分散性の性能バランスを評価するため、「Δトルク+ΔG*」の項目を追加した。数値が小さい方が性能バランスに良好であることを示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表2から、混練機への投入時のポリマー温度が5℃、50℃のいずれの場合にも、所定のサイズのポリマーを投入して素練した実施例では、Δトルク、ΔG*、Δトルク+ΔG*の数値が小さく、ポリマーの粉砕効率、フィラー分散性に優れていた。
【0046】
なお、表1〜2では、本発明の原理がより理解し易いことを目的とし、最低限の材料を用いている。タイヤの性能は、フィラーを投入する場合、フィラーの分散が性能に寄与するため、投入材料を増やしたケースでも表1〜2とほぼ同様の結果が得られた。