特許第6972556号(P6972556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972556
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】研削加工装置及び研削加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/16 20060101AFI20211111BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20211111BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20211111BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20211111BHJP
   B24B 5/02 20060101ALI20211111BHJP
   B24B 5/35 20060101ALI20211111BHJP
   B23Q 17/12 20060101ALI20211111BHJP
   B23Q 15/12 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B24B49/16
   B24B49/10
   B24B49/04 Z
   B24B41/06 J
   B24B5/02
   B24B5/35
   B23Q17/12
   B23Q15/12 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-2055(P2017-2055)
(22)【出願日】2017年1月10日
(65)【公開番号】特開2018-111149(P2018-111149A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−173014(JP,A)
【文献】 特開2011−143503(JP,A)
【文献】 特開2011−161520(JP,A)
【文献】 特開2013−237127(JP,A)
【文献】 国際公開第03/100374(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/16
B24B 49/10
B24B 49/04
B24B 41/06
B24B 5/02
B24B 5/35
B23Q 17/12
B23Q 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド上に支持される主軸台及び砥石台を備え、前記主軸台の主軸に保持される工作物及び前記砥石台の砥石軸に保持される砥石車をそれぞれ回転させ、前記工作物に対して前記砥石車を相対的に接近離間させることで、前記工作物の研削加工を行う研削加工装置において、
前記砥石車の回転軸線回りのアンバランスに起因する接近離間方向の振動による前記砥石車の振動変位を求める砥石側振動変位演算装置と、
前記砥石車の接近離間方向の振動が前記砥石台から前記ベッドを伝播することによる前記工作物の振動変位を求める主軸側振動変位演算装置と、
求めた前記砥石車の振動変位及び前記工作物の振動変位に基づいて前記砥石車と前記工作物の相対振動変位を求める相対振動変位演算部と、
求めた前記砥石車と前記工作物の相対振動変位に基づいて、前記相対振動変位の逆位相となる指令であって、NCプログラムにおける前記砥石台の位置指令に対して前記砥石台の位置を変更する位置変更指令を作成する位置変更部と、
NCプログラムにおける前記砥石台の位置指令に、前記位置変更部により作成した前記位置変更指令を付加した指令に基づいて前記砥石台の位置を制御して、前記工作物の研削加工を行う加工制御部と、
を備える、研削加工装置。
【請求項2】
前記砥石側振動変位演算装置は、前記砥石台の前記接近離間方向の振動変位を測定し、測定した前記砥石台の前記接近離間方向の振動変位に基づいて前記砥石車の振動変位を求める、請求項1に記載の研削加工装置。
【請求項3】
前記主軸側振動変位演算装置は、前記主軸台の前記接近離間方向の振動変位を測定し、測定した前記主軸台の前記接近離間方向の振動変位に基づいて前記工作物の振動変位を求める、請求項1又は2に記載の研削加工装置。
【請求項4】
前記研削加工装置は、前記砥石車の回転位相を検出する位相検出装置を備え、
前記相対振動変位演算部は、研削加工工程を行う前の空研工程において、検出した前記砥石車の回転位相に対する前記砥石車と前記工作物の相対振動変位を求めて記憶し、
前記位置変更部は、前記空研工程の次に行われる第一研削加工工程において、記憶した前記砥石車の回転位相に対する前記砥石車と前記工作物の相対振動変位に基づいて、前記砥石台の位置を変更する前記位置変更指令を作成し、
前記加工制御部は、前記第一研削加工工程の次に行われる第二研削加工工程以降の工程において、検出した前記砥石車の回転位相に対する前記砥石台の前記位置変更指令を選定して前記砥石台の位置指令に付加する、請求項1−3の何れか一項に記載の研削加工装置。
【請求項5】
前記研削加工装置は、前記砥石車の回転位相を検出する位相検出装置を備え、
前記相対振動変位演算部は、粗研削加工工程である第一研削加工工程において、検出した前記砥石車の回転位相に対する前記砥石車と前記工作物の相対振動変位を求めて記憶し、
前記位置変更部は、前記第一研削加工工程において、記憶した前記砥石車の回転位相に対する前記砥石車と前記工作物の相対振動変位に基づいて、前記砥石台の位置を変更する前記位置変更指令を作成し、
前記加工制御部は、前記第一研削加工工程の次に行われる第二研削加工工程以降の工程において、検出した前記砥石車の回転位相に対する前記砥石台の前記位置変更指令を選定して前記砥石台の位置指令に付加する、請求項1−3の何れか一項に記載の研削加工装置。
【請求項6】
前記砥石側振動変位演算装置は、砥石側加速度計を備え、前記砥石側加速度計からの加速度信号に基づいて前記砥石台の振動変位を測定し、
前記主軸側振動変位演算装置は、主軸側加速度計を備え、前記主軸側加速度計からの加速度信号に基づいて前記主軸台の振動変位を測定する、請求項1−5の何れか一項に記載の研削加工装置。
【請求項7】
前記砥石側加速度計及び前記主軸側加速度計は、前記工作物の回転軸線と前記砥石車の回転軸線を含む平面上に配置される、請求項6に記載の研削加工装置。
【請求項8】
前記研削加工装置は、前記砥石台を前記工作物に対して接近離間させるリニアモータを備え、
前記位置変更部は、前記リニアモータで前記砥石台の位置を変更する、請求項1−7の何れか一項に記載の研削加工装置。
【請求項9】
ベッド上に支持される主軸台及び砥石台を備え、前記主軸台の主軸に保持される工作物及び前記砥石台の砥石軸に保持される砥石車をそれぞれ回転させ、前記工作物に対して前記砥石車を相対的に接近離間させることで、前記工作物の研削加工を行う研削加工方法において、
制御装置により、前記砥石車の回転軸線回りのアンバランスに起因する接近離間方向の振動による前記砥石車の振動変位を求める砥石側振動変位演算工程と、
前記制御装置により、前記砥石車の接近離間方向の振動が前記砥石台から前記ベッドを伝播することによる前記工作物の振動変位を求める主軸側振動変位演算工程と、
前記制御装置により、求めた前記砥石車の振動変位及び前記工作物の振動変位に基づいて前記砥石車と前記工作物の相対振動変位を求める相対振動変位演算工程と、
前記制御装置により、求めた前記砥石車と前記工作物の相対振動変位に基づいて、前記相対振動変位の逆位相となる指令であって、NCプログラムにおける前記砥石台の位置指令に対して前記砥石台の位置を変更する位置変更指令を作成する位置変更工程と、
前記制御装置により、NCプログラムにおける前記砥石台の位置指令に、前記位置変更工程にて作成した前記位置変更指令を付加した指令に基づいて前記砥石台の位置を制御して、前記工作物の研削加工を行う加工制御工程と、
を備える、研削加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削加工装置及び研削加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削加工装置では、砥石車は元々、回転方向にアンバランスなため、砥石車のアンバランスによって、研削加工中の工作物の表面にはビビリが発生する。砥石車のバランス取りの方法としては、振動計で相対振動を測定しながら、手動にてバランスピースを砥石車に取り付けて調整する方法があるが、バランス調整に手間と時間が掛かるという欠点がある。また、オートバランサー装置を付設して自動調整する方法があるが、装置コストが嵩むという欠点がある。
【0003】
また、研削加工装置では、ドレッシングによる砥石車の径変化や砥石車への切屑の付着が原因で、砥石車のバランスが崩れたり、バランスが変わってしまう場合があり、砥石車のアンバランスによって、研削加工中の工作物の表面にはビビリが発生する。そこで、例えば、特許文献1には、工作物の研削加工点と180°位相がずれた位置に工作物押付装置を配置した研削加工装置が記載されている。この研削加工装置は、工作物押付装置で工作物を押圧し、工作物と砥石車との相対振動変位の位相と逆位相に工作物を振動変位させることでビビリを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−143503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載の研削加工装置では、工作物の全ての研削加工点と180°位相がずれた位置に工作物押付装置を配置する必要があるが、現実的には配置困難であるため、工作物のビビリを十分に低減できない場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、工作物のビビリを十分に低減できる研削加工装置及び研削加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本手段に係る研削加工装置は、ベッド上に支持される主軸台及び砥石台を備え、主軸台の主軸に保持される工作物及び砥石台の砥石軸に保持される砥石車をそれぞれ回転させ、工作物に対して砥石車を相対的に接近離間させることで、工作物の研削加工を行う研削加工装置において、砥石車の回転軸線回りのアンバランスに起因する接近離間方向の振動による砥石車の振動変位を求める砥石側振動変位演算装置と、砥石車の接近離間方向の振動が砥石台からベッドを伝播することによる工作物の振動変位を求める主軸側振動変位演算装置と、求めた砥石車の振動変位及び工作物の振動変位に基づいて砥石車と工作物の相対振動変位を求める相対振動変位演算部と、求めた前記砥石車と前記工作物の相対振動変位に基づいて、前記相対振動変位の逆位相となる指令であって、NCプログラムにおける前記砥石台の位置指令に対して前記砥石台の位置を変更する位置変更指令を作成する位置変更部と、NCプログラムにおける前記砥石台の位置指令に、前記位置変更部により作成した前記位置変更指令を付加した指令に基づいて前記砥石台の位置を制御して、前記工作物の研削加工を行う加工制御部と、を備える。
【0008】
これによれば、砥石側振動変位演算装置は、砥石台の振動変位から砥石車の振動変位を求め、主軸側振動変位演算装置は、主軸台の振動変位から工作物の振動変位を求めているので、砥石車と工作物の相対振動変位を簡易に求めることができる。よって、砥石車と工作物の相対振動変位を相殺するように砥石車を移動させることで、砥石車と工作物の接触を略一定にすることができるので、従来のように工作物の全ての研削加工点と180°位相がずれた位置に工作物押付装置を配置する必要はなく、工作物のビビリを十分に低減でき、工作物の研削加工精度を向上できる。
【0009】
本手段に係る研削加工方法は、ベッド上に支持される主軸台及び砥石台を備え、主軸台の主軸に保持される工作物及び砥石台の砥石軸に保持される砥石車をそれぞれ回転させ、工作物に対して砥石車を相対的に接近離間させることで、工作物の研削加工を行う研削加工方法において、制御装置により、前記砥石車の回転軸線回りのアンバランスに起因する接近離間方向の振動による前記砥石車の振動変位を求める砥石側振動変位演算工程と、前記制御装置により、前記砥石車の接近離間方向の振動が前記砥石台から前記ベッドを伝播することによる前記工作物の振動変位を求める主軸側振動変位演算工程と、前記制御装置により、求めた前記砥石車の振動変位及び前記工作物の振動変位に基づいて前記砥石車と前記工作物の相対振動変位を求める相対振動変位演算工程と、前記制御装置により、求めた前記砥石車と前記工作物の相対振動変位に基づいて、前記相対振動変位の逆位相となる指令であって、NCプログラムにおける前記砥石台の位置指令に対して前記砥石台の位置を変更する位置変更指令を作成する位置変更工程と、前記制御装置により、NCプログラムにおける前記砥石台の位置指令に、前記位置変更工程にて作成した前記位置変更指令を付加した指令に基づいて前記砥石台の位置を制御して、前記工作物の研削加工を行う加工制御工程と、を備える。本発明の研削加工方法によれば、上述した研削加工装置における効果と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の研削加工装置をY軸方向から見た平面図である。
図2】研削加工装置における砥石側加速度計及び主軸側加速度計の配置をZ軸方向から見た図である。
図3A】研削加工装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図3B】位置変更指令の作成処理を説明するためのフローチャートである。
図3C】位置変更指令の使用処理を説明するためのフローチャートである。
図3D】位置変更指令の作成処理の別例を説明するためのフローチャートである。
図4】砥石車の振動変位及び工作物の振動変位と砥石車の回転位相との関係を示す図である。
図5】砥石車と工作物の相対振動変位及び砥石台の位置変更指令となる振動変位と砥石車の回転位相との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.研削加工装置の構成)
本実施形態の研削加工装置の一例として、テーブルトラバース型円筒研削加工装置を例に挙げて説明する。図1に示すように、研削加工装置1は、ベッド10、テーブル11、主軸台13、心押台17、砥石台21及び制御装置30等を備える。
ベッド10上には、テーブル11がZ軸サーボモータ12によってZ軸方向(図1の左右方向)に移動可能に案内支持される。テーブル11上には、マスタ主軸Cmを回転可能に軸支する主軸台13が設置され、マスタ主軸Cmの先端に工作物Wの一端を支持するセンタ14が取付けられる。マスタ主軸Cmは、進退駆動装置15によって軸線方向に所定量進退されるとともに、マスタサーボモータ16によって回転駆動される。
【0012】
さらに、テーブル11上には、主軸台13と対向する位置に心押台17が設置される。この心押台17には、マスタ主軸Cmと同軸上にスレーブ主軸Csが回転可能に軸支され、スレーブ主軸Csの先端に工作物Wの他端を支持するセンタ18が取付けられる。スレーブ主軸Csは、センタ加圧制御用のサーボモータ19によって軸線方向に進退されるとともに、スレーブサーボモータ20によってマスタ主軸Cmと同期して回転駆動される。
【0013】
また、ベッド10上のテーブル11の後方位置には、砥石台21がリニアモータ22によってZ軸方向と直交するX軸方向(図1の上下方向)に移動可能に案内支持される。リニアモータ22は、砥石台21に取付けられた電磁コイルユニット22a及びベッド10に設置された永久磁石板ユニット22bを備え、図略の読取ヘッドで読み取るリニアスケールの目盛情報に基づいて動作制御される。
【0014】
砥石台21には、砥石車23がZ軸方向と平行な軸線の回りに回転可能な砥石軸24を介して軸支され、ビルトイン型の砥石軸駆動モータ25によって回転駆動される。砥石軸駆動モータ25には、ロータリーエンコーダ25a(位相検出装置)が備えられる。砥石台21には、回転中の砥石車23の送り方向(接近離間方向、X軸方向)の振動により生じる砥石台21の送り方向(接近離間方向、X軸方向)の振動変位を測定する砥石側加速度計26(砥石側振動変位演算装置)が設けられる。主軸台13には、上述の回転中の砥石車23の送り方向の振動が、ベッド10及びテーブル11を伝播することにより生じる主軸台13の振動変位(砥石車23の送り方向の振動変位、X軸方向)を測定する主軸側加速度計27(主軸側振動変位演算装置)が設けられる。
【0015】
砥石側加速度計26及び主軸側加速度計27は、静電容量型、電気抵抗型等の加速度計が用いられる。図2に示すように、砥石側加速度計26及び主軸側加速度計27は、工作物Wの回転軸線Rwと砥石車23の回転軸線Rgを含む平面S上に配置される。そして、砥石側加速度計26は、例えば砥石台21の工作物W側の側面21aに加速度検出方向を砥石台21の送り方向Xに合わせて配置され、主軸側加速度計27は、例えば主軸台13の砥石車23側の側面13aに加速度検出方向を砥石台21の送り方向Xに合わせて配置される。砥石側加速度計26及び主軸側加速度計27は、取付け高さが変わると測定振動変位の大きさが変わってしまうが、同一高さに取り付けるため、砥石台21の送り方向Xの振動変位及び主軸台13のX軸方向の振動変位を高精度に測定できる。
【0016】
制御装置30は、位相検出部31(位相検出装置)、砥石側振動変位演算部32(砥石側振動変位演算装置)、主軸側振動変位演算部33(主軸側振動変位演算装置)、相対振動変位演算部34、位置変更部35及び加工制御部36を備える。
位相検出部31は、砥石軸駆動モータ25に備えられているロータリーエンコーダ25aからの位相検出信号により砥石車23の回転位相(角度)を検出する。
【0017】
砥石側振動変位演算部32は、砥石側加速度計26からの加速度信号を2回積分することで、回転中の砥石車23の送り方向Xの振動により生じる砥石台21の送り方向Xの振動変位を求める。砥石側振動変位演算部32には、測定した砥石台21の送り方向Xの振動変位と砥石車23の送り方向Xの振動変位との関係を示すテーブルが記憶される。図4の破線で示すように、砥石側振動変位演算部32は、テーブルを参照して、求めた砥石台21の送り方向Xの振動変位から砥石車23の送り方向Xの振動変位を求め、位相検出部31からの砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23の送り方向Xの振動変位を関連付ける。
【0018】
主軸側振動変位演算部33は、主軸側加速度計27からの加速度信号を2回積分することで、回転中の砥石車23の送り方向Xの振動が、ベッド10及びテーブル11を伝播することにより生じる主軸台13のX軸方向の振動変位を求める。主軸側振動変位演算部33には、測定した主軸台13のX軸方向の振動変位と工作物WのX軸方向の振動変位との関係を示すテーブルが記憶される。図4の一点鎖線で示すように、主軸側振動変位演算部33は、テーブルを参照して、求めた主軸台13のX軸方向の振動変位から工作物WのX軸方向の振動変位を求め、位相検出部31からの砥石車23の回転位相(角度)に対する工作物WのX軸方向の振動変位を関連付ける。
【0019】
相対振動変位演算部34は、砥石側振動変位演算部32で求めた砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23の送り方向Xの振動変位と主軸側振動変位演算部33で求めた砥石車23の回転位相(角度)に対する工作物WのX軸方向の振動変位を加算することで、図5の実線で示すように、砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位を求める。
【0020】
位置変更部35は、相対振動変位演算部34からの砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位を抑制するための砥石台21の位置変更指令のテーブルデータを作成する。この位置変更指令は、図5の一点鎖線で示すように、砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位の逆位相となる指令である。リニアモータ22の変位可能な周波数(例えば320Hz)は、砥石車23の振動変位の周波数(例えば60Hz)よりも十分に高いため、砥石台21の高精度な位置変更ができる。
【0021】
加工制御部36は、Z軸サーボモータ12、進退駆動装置15、マスタサーボモータ16、サーボモータ19、スレーブサーボモータ20、リニアモータ22及び砥石軸駆動モータ25の各動作を制御して、工作物Wの研削加工を行う。このとき、砥石車23の回転位相(角度)を検出し、位置変更部35からの砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石台21の位置変更指令のデータテーブルを参照して砥石台21の位置変更指令を選定し、NCプログラムにおける砥石台21の位置指令(絶対位置)に付加する。なお、砥石台21が移動量指令(相対位置)で制御されている場合は、選定した砥石台21の移動量変更指令を、NCプログラムにおける砥石台21の移動量指令(相対位置)に付加する。
【0022】
(2.工作物のビビリの低減方法)
本発明者は、以下の事項を見出した。すなわち、研削加工装置1では、砥石車23は元々、回転方向にアンバランスなため、回転中の砥石車23には、砥石車23の送り方向に振動が発生するが、この砥石車23の振動が、ベッド10及びテーブル11を伝わって工作物Wに砥石車23の送り方向の振動を発生させる。そして、工作物Wの表面には、砥石車23の振動と工作物Wの振動との相対振動によってビビリが発生する。
【0023】
このビビリは、工作物Wの回転は低速回転、例えば毎分50回転であるが、砥石車23の回転は工作物Wの回転と比較して遥かに高速回転、例えば毎分3500回転であるため、工作物Wの回転による影響はあまりなく、砥石車23の回転による影響の方が大きい。本実施形態の研削加工装置1では、砥石台21及び主軸台13の振動により生じる砥石車23と工作物Wの相対振動変位の逆位相となる位置変更指令をリニアモータ22の動作指令に付加する。これにより、砥石車23と工作物Wの相対振動変位を打ち消すことができ、工作物Wのビビリを低減できる。
【0024】
本実施形態の研削加工装置1では、砥石車23の交換後又は砥石車23のツルーイング後であって、粗研削加工工程(第一研削加工工程)前の砥石車23が工作物Wに最も接近した時(空研時)に、砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位を求め、データテーブルを作成し記憶する。砥石車23と工作物Wの相対振動変位の逆位相となる砥石台21の位置変更指令を、NCプログラムの粗研削加工工程における砥石台21の位置指令(絶対位置)に付加する。砥石台21の位置変更指令を、NCプログラムの粗研削加工工程における砥石台21の位置指令(絶対位置)に付加することで、粗研削加工時に砥石車23の回転位相(角度)に応じた砥石台21の位置変更指令をデータテーブルから呼び出し、砥石台21に位置変更指令が砥石台21の位置指令(絶対位置)に付加されることがNCプログラムで自動的に行われるので、砥石車23と工作物Wの相対振動変位を打ち消すことができ、工作物Wのビビリを低減して工作物Wの加工精度を向上できる。
【0025】
また、砥石車23の交換後又は砥石車23のツルーイング後であって、精研削加工工程(第二研削加工工程)前の粗研削加工時に、砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位を求め、データテーブルを作成し記憶する。砥石車23と工作物Wの相対振動変位の逆位相となる砥石台21の位置変更指令を、NCプログラムの粗研削加工工程における砥石台21の位置指令(絶対位置)に付加する。砥石台21の位置変更指令を、NCプログラムの粗研削加工工程における砥石台21の位置指令(絶対位置)に付加することで、粗研削加工時には位置変更指令を出さず、精研削加工時に砥石車23の回転位相(角度)を検出し、砥石車23の回転位相(角度)に応じた砥石台21の位置変更指令をデータテーブルから呼び出し、砥石台21に位置変更指令が砥石台21の位置指令(絶対位置)に付加されることがNCプログラムで自動的に行われるので、の砥石車23と工作物Wの相対振動変位を打ち消して粗研削加工で生じたビビリを精研削加工で除去できる。以下では、各処理の動作について説明する。
【0026】
(3.研削加工装置の動作)
先ず、空研時に砥石車23と工作物Wの相対振動変位を求めるときの本実施形態における研削加工装置1の動作について、図を参照して説明する。制御装置30は、工作物W及び砥石車23を回転開始し(図3AのステップS1)、工作物Wに対して砥石車23をX軸方向に前進させて空研を開始する(図3AのステップS2)。
【0027】
具体的には、加工制御部36は、マスタサーボモータ16、スレーブサーボモータ20及び砥石軸駆動モータ25の各動作を制御して、工作物W及び砥石車23を回転開始し、リニアモータ22の動作を制御して、工作物Wに対して砥石車23をX軸方向に前進開始する。
【0028】
制御装置30は、空研中であるか否かを判断し(図3BのステップS11)、空研中である場合は、砥石台21の位置を検出して砥石車23が空研時において工作物Wに最も接近したか否かを判断する(図3BのステップS12)。制御装置30は、砥石車23が空研時において工作物Wに最も接近したと判断したら、砥石車23の回転位相(角度)を検出するとともに、砥石台21の振動変位及び主軸台13の振動変位を測定して砥石車23の振動変位及び工作物Wの振動変位を求める(図3BのステップS13、砥石側振動変位演算工程、主軸側振動変位演算工程)。
【0029】
具体的には、空研時において、位相検出部31は、砥石軸駆動モータ25のロータリーエンコーダ25aからの位相検出信号により砥石車23の回転位相(角度)を検出する。砥石側振動変位演算部32は、砥石側加速度計26からの加速度信号に基づいて砥石台21の送り方向Xの振動変位を求め、砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23の送り方向Xの振動変位を求める。主軸側振動変位演算部33は、主軸側加速度計27からの加速度信号に基づいて主軸台13のX軸方向の振動変位を求め、砥石車23の回転位相(角度)に対する工作物WのX軸方向の振動変位を求める。
【0030】
制御装置30は、求めた砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23の送り方向Xの振動変位及び砥石車23の回転位相(角度)に対する工作物WのX軸方向の振動変位に基づいて、砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位を求める(図3BのステップS14、相対振動変位演算工程)。そして、求めた砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位を抑制するための砥石台21の位置変更指令を作成する(図3BのステップS15、位置変更工程)。
【0031】
具体的には、相対振動変位演算部34は、砥石側振動変位演算部32で求めた砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23の送り方向Xの振動変位と主軸側振動変位演算部33で求めた砥石車23の回転位相(角度)に対する工作物WのX軸方向の振動変位を加算することで、砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位を求める。位置変更部35は、相対振動変位演算部34からの砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位を抑制するため、砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位の逆位相となる砥石台21の位置変更指令を作成する。
【0032】
制御装置30は、工作物Wの1回転分(回転位相(角度0°〜360°))の位置変更指令のデータテーブルを作成したか否かを判断し(図3BのステップS16、位置変更工程)、位置変更指令のデータテーブルを作成していない場合はステップS13に戻って上述の処理を繰り返し、位置変更指令のデータテーブルを作成した場合は処理を終了する。制御装置30は、作成した砥石台21の位置変更指令のデータテーブルを粗研削加工工程、精研削加工工程及び微研削加工工程に使用して各研削加工を順次実行する(図3AのステップS3〜S5、加工制御工程)。
【0033】
具体的には、加工制御部36は、砥石車23の回転位相(角度)を検出し(図3CのステップS21)、位置変更部35からの砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石台21の位置変更指令のデータテーブルを参照して砥石台21の位置変更指令を選定し(図3CのステップS22)、NCプログラムにおける砥石台21の位置指令(絶対位置)に付加してリニアモータ22の動作を制御するとともに(図3CのステップS23)、マスタサーボモータ16、スレーブサーボモータ20及び砥石軸駆動モータ25の各動作を制御して、工作物Wの研削加工を行う。そして、研削加工工程が完了したか否かを判断し(図3CのステップS24)、研削加工工程が完了していない場合はステップS21に戻って上述の処理を繰り返し、研削加工工程が完了した場合は処理を終了する。
【0034】
制御装置30は、全ての研削加工工程が完了したら、スパークアウトを行い(図3AのステップS6)、工作物Wに対して砥石車23をX軸方向に後退開始し(図3AのステップS7)、工作物W及び砥石車23を回転停止し(図3AのステップS8)、全ての処理を終了する。
具体的には、加工制御部36は、工作物Wの研削加工完了後、リニアモータ22の動作を制御して、工作物Wに対して砥石車23をX軸方向に後退開始し、マスタサーボモータ16、スレーブサーボモータ20及び砥石軸駆動モータ25の各動作を制御して、工作物W及び砥石車23を回転停止する。
【0035】
(4.研削加工装置の動作の別例)
次に、粗研削加工時に相対振動変位を求めるときの本実施形態における研削加工装置1の動作について、図を参照して説明する。なお、具体的な動作は図3A図3Cで説明した動作に準じるため省略する。制御装置30は、工作物W及び砥石車23を回転開始し(図3AのステップS1)、工作物Wに対して砥石車23をX軸方向に前進させて空研を開始し(図3AのステップS2)、空研を行った後に粗研削加工工程を開始する(図3AのステップS3)。
【0036】
そして、制御装置30は、粗研削加工中であるか否かを判断し(図3DのステップS31)、粗研削加工中である場合は、砥石車23の回転位相(角度)を検出するとともに、砥石台21の振動変位及び主軸台13の振動変位を測定して砥石車23の振動変位及び工作物Wの振動変位を求める(図3DのステップS32、砥石側振動変位演算工程、主軸側振動変位演算工程)。制御装置30は、求めた砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23の送り方向Xの振動変位及び砥石車23の回転位相(角度)に対する工作物WのX軸方向の振動変位に基づいて、砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位を求める(図3DのステップS33、相対振動変位演算工程)。そして、求めた砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位を抑制するための砥石台21の位置変更指令を作成する(図3DのステップS34、位置変更工程)。
【0037】
そして、工作物Wの1回転分(回転位相(角度0°〜360°))の位置変更指令のデータテーブルを作成したか否かを判断し(図3DのステップS35、位置変更工程)、位置変更指令のデータテーブルを作成していない場合はステップS32に戻って上述の処理を繰り返し、位置変更指令のデータテーブルを作成した場合は処理を終了する。制御装置30は、粗研削加工工程が完了したら、作成した砥石台21の位置変更指令のテーブルデータを精研削加工工程及び微研削加工工程に使用して各研削加工を順次実行する(図3AのステップS4,S5、位置変更工程)。なお、粗研削加工工程から精研削加工工程に移行する際、及び精研削加工工程から微研削加工工程に移行する際、検出した砥石車23の回転位相(角度)を合わせて、砥石台21の位置変更指令のテーブルデータを使用する。
【0038】
そして、制御装置30は、全ての研削加工工程が完了したら、スパークアウトを行い(図3AのステップS6)、工作物Wに対して砥石車23をX軸方向に後退開始し(図3AのステップS7)、工作物W及び砥石車23を回転停止し(図3AのステップS8)、全ての処理を終了する。
【0039】
(5.その他)
上述した実施形態では、砥石軸駆動モータ25は、ビルトインタイプであるため、ロータリーエンコーダ25aからの位相検出信号により砥石車23の回転位相(角度)を高精度に検出できる。
【0040】
また、本実施形態における研削加工装置1の動作では、砥石車23の回転位相(角度)を検出し、砥石車23の回転位相(角度)に対する砥石台21の位置変更指令のデータテーブルを参照して砥石台21の位置変更指令を選定し、NCプログラムにおける砥石台21の位置指令(絶対位置)に付加する構成としたが、求めた砥石台21と主軸台13の相対振動変位をリアルタイムでフィードバックして砥石台21の位置変更指令を指令することで、砥石車23の回転位相(角度)を検出しなくても砥石台21と主軸台13の相対振動変位を打ち消すことができる。
【0041】
また、上述した実施形態では、砥石台21は、リニアモータ22で位置変更させる構成としたが、例えば圧電振動子等を砥石台21と砥石台21の搬送レールの間において砥石台21の送り方向に変位するように設けることで砥石台21を位置変更させる構成としてもよい。
【0042】
(6.実施形態の効果)
本実施形態の研削加工装置1は、ベッド10上に支持される主軸台13及び砥石台21を備え、主軸台13の主軸Cm,Csに保持される工作物W及び砥石台21の砥石軸24に保持される砥石車23をそれぞれ回転させ、工作物Wに対して砥石車23を相対的に接近離間させることで、工作物Wの研削加工を行う研削加工装置1において、砥石車23の回転軸線回りのアンバランスに起因する接近離間方向の振動による砥石車23の振動変位を求める砥石側振動変位演算装置26,32と、砥石車23の接近離間方向の振動が砥石台21からベッド10を伝播することによる工作物Wの振動変位を求める主軸側振動変位演算装置27,33と、求めた砥石車23の振動変位及び工作物Wの振動変位に基づいて砥石車23と工作物Wの相対振動変位を求める相対振動変位演算部34と、求めた砥石車23と工作物Wの相対振動変位に基づいて、砥石台21の位置を変更する位置変更指令を作成する位置変更部35と、作成した位置変更指令に基づいて工作物Wの研削加工を行う加工制御部36と、を備える。
【0043】
これによれば、砥石側振動変位演算装置26,32は、砥石台21の振動変位から砥石車23の振動変位を求め、主軸側振動変位演算装置27,33は、主軸台13の振動変位から工作物Wの振動変位を求めているので、砥石車23と工作物Wの相対振動変位を簡易に求めることができる。よって、砥石車23と工作物Wの相対振動変位を相殺するように砥石車23を移動させることで、砥石車23と工作物Wの接触を略一定にすることができるので、従来のように工作物Wの全ての研削加工点と180°位相がずれた位置に工作物押付装置を配置する必要はなく、工作物Wのビビリを十分に低減でき、工作物Wの研削加工精度を向上できる。
【0044】
また、砥石側振動変位演算装置26,32は、砥石台21の接近離間方向の振動変位を測定し、測定した砥石台21の接近離間方向の振動変位に基づいて砥石車23の振動変位を求めるので、砥石車23の振動変位の精度を向上できる。
また、主軸側振動変位演算装置27,33は、主軸台13の接近離間方向の振動変位を測定し、測定した主軸台13の接近離間方向の振動変位に基づいて工作物Wの振動変位を求めるので、工作物Wの振動変位の精度を向上できる。
【0045】
また、研削加工装置1は、砥石車23の回転位相を検出する位相検出装置25a,31を備え、相対振動変位演算部34は、研削加工工程を行う前の空研工程において、検出した砥石車23の回転位相に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位を求めて記憶し、位置変更部35は、空研工程の次に行われる第一研削加工工程において、記憶した砥石車23の回転位相に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位に基づいて、砥石台21の位置を変更する位置変更指令を作成し、加工制御部36は、空研工程の次に行われる第一研削加工工程以降の工程において、検出した砥石車23の回転位相に対する砥石台21の位置変更指令を選定して砥石台21の位置指令に付加する。空研時に砥石台21の位置変更指令を、NCプログラムの第一研削加工工程における砥石台21の位置指令(絶対位置)に付加することで、第一研削加工時の砥石車23と工作物Wの相対振動変位を打ち消すことができ、工作物Wのビビリを低減して工作物Wの加工精度を向上できる。
【0046】
また、研削加工装置1は、砥石車23の回転位相を検出する位相検出装置25a,31を備え、相対振動変位演算部34は、第一研削加工工程において、検出した砥石車23の回転位相に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位を求めて記憶し、位置変更部35は、第一研削加工工程において記憶した砥石車23の回転位相に対する砥石車23と工作物Wの相対振動変位に基づいて、砥石台21の位置を変更する位置変更指令を作成し、加工制御部36は、第一研削加工工程の次に行われる第二研削加工工程において、検出した砥石車23の回転位相に対する砥石台21の位置変更指令を選定して砥石台21の位置指令に付加する。第一研削加工時に砥石車23と工作物Wの相対振動変位の演算処理を行うことで、第一研削加工時には位置変更指令を出さず、第二研削加工時の砥石車23と工作物Wの相対振動変位を打ち消して粗研削加工で生じたビビリを精研削加工で除去できる。
【0047】
また、砥石側振動変位演算装置26,32は、砥石側加速度計26を備え、砥石側加速度計26からの加速度信号に基づいて砥石台21の振動変位を測定し、主軸側振動変位演算装置27,33は、主軸側加速度計27を備え、主軸側加速度計27からの加速度信号に基づいて主軸台13の振動変位を測定する。これにより、それぞれ1つの砥石側加速度計26及び主軸側加速度計27を備える構成でよく、装置コストの低減化を図ることができる。
【0048】
また、砥石側加速度計26及び主軸側加速度計27は、工作物Wの回転軸線Rwと砥石車23の回転軸線Rgを含む平面S上に配置される。砥石側加速度計26及び主軸側加速度計27は、取付け高さが変わると測定振動変位の大きさが変わってしまうが、同一高さに取り付けるため、砥石台21の送り方向Xの振動変位及び主軸台13のX軸方向の振動変位を高精度に測定できる。
【0049】
また、研削加工装置1は、砥石台21を工作物Wに対して接近離間させるリニアモータ22を備え、位置変更部35は、リニアモータ22で砥石台21の位置を変更する。リニアモータ22の変位可能な周波数は、砥石車23の振動変位の周波数よりも十分に高く、十分に追従できるため、砥石台21の高精度な位置変更ができる。
【0050】
また、本実施形態の研削加工方法は、ベッド10上に支持される主軸台13及び砥石台21を備え、主軸台13の主軸Cm,Csに保持される工作物W及び砥石台21の砥石軸24に保持される砥石車23をそれぞれ回転させ、工作物Wに対して砥石車23を相対的に接近離間させることで、工作物Wの研削加工を行う研削加工方法において、砥石車23の回転軸線回りのアンバランスに起因する接近離間方向の振動による砥石車23の振動変位を求める砥石側振動変位演算工程と、砥石車23の接近離間方向の振動が砥石台21からベッド10を伝播することによる工作物Wの振動変位を求める主軸側振動変位演算工程と、求めた砥石車23の振動変位及び工作物Wの振動変位に基づいて砥石車23と工作物Wの相対振動変位を求める相対振動変位演算工程と、求めた砥石車23と工作物Wの相対振動変位に基づいて、砥石台21の位置を変更する位置変更指令を作成する位置変更工程と、作成した位置変更指令に基づいて工作物Wの研削加工を行う加工制御工程と、を備える。本発明の研削加工方法によれば、上述した研削加工装置における効果と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0051】
1:研削加工装置、 22:リニアモータ、 23:砥石車、 25:砥石軸駆動モータ、 25a:ロータリーエンコーダ、 26:砥石側加速度計、 27:主軸側加速度計、 30:制御装置、 31:位相検出部、 32:砥石側振動変位演算部、 33:主軸側振動変位演算部、 34:相対振動変位演算部、 35:位置変更部、 36:加工制御部、 W:工作物
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5