特許第6972558号(P6972558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972558
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】薬剤ボトル
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20211111BHJP
   A61J 1/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   A61M1/16 161
   A61J1/00 370Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-3410(P2017-3410)
(22)【出願日】2017年1月12日
(65)【公開番号】特開2018-110737(P2018-110737A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池ノ上 正紀
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−282335(JP,A)
【文献】 特開2014−188193(JP,A)
【文献】 特開2011−126553(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02845576(EP,A1)
【文献】 特開2001−219948(JP,A)
【文献】 特開2005−343484(JP,A)
【文献】 特開2003−155016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトル本体と、
前記ボトル本体の上端に形成された第一口部と、
前記ボトル本体の下端に形成された第二口部と、を備える、薬剤ボトルであって
前記ボトル本体には、前記ボトル本体の内側に向かって窪む、上下方向に延びる溝が形成され、
前記溝は底部を有し、
前記ボトル本体の前記上下方向に直交する断面は略矩形状であり、前記溝は前記断面の長辺側に形成され、前記断面において、前記底部における前記薬剤ボトルの壁の厚みは、前記断面の重心から最も離れた位置における前記の厚みよりも大きく、前記断面の短辺方向における前記溝の深さは、前記短辺方向における前記溝の縁部と前記第一口部との距離を二分の一した長さよりも大きい、薬剤ボトル。
【請求項2】
前記底部は、前記溝の上端から前記溝の下端に亘って前記上下方向に延びる、請求項1に記載の薬剤ボトル。
【請求項3】
前記断面における前記溝の形状は、円弧状の部分を含む、請求項1または請求項2に記載の薬剤ボトル。
【請求項4】
前記溝は、第一の溝と第二の溝とを有し、
前記第一の溝と前記第二の溝とは、前記断面の重心を挟んで向かい合って形成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の薬剤ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析に用いる透析液の調製に使用される固体透析用剤などの薬剤を収納する薬剤ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
透析用剤には、液体型と固体型との2種類がある。液体型の透析用剤は、その大部分が水で占められており、重量と容量とが大きくなるため、透析医療従事者への運搬作業の負荷が大きく、保管スペースも大きくなってしまう。そのため、近年、透析液を使用する際に、自動溶解装置に投入して、水に溶解させて透析液を調製する固体型の透析用剤(以下、固体透析用剤という)が急速に普及している。
【0003】
固体透析用剤を収納する容器は、現在、袋式とボトル式とがある。固体透析用剤を収納する袋式の容器に関する技術は、たとえば特開2006−136615号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−136615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体透析用剤を収納するボトル式の容器は、袋式の容器に比べて剛性の高い材料で構成されているため、使用後に容器を潰して容器の容積を小さくすることが困難であり、廃棄時に嵩張るという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、剛性を確保しながら、使用後の容積を容易に減らすことができる薬剤ボトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薬剤ボトルは、ボトル本体と、ボトル本体の上端に形成された第一口部と、ボトル本体の下端に形成された第二口部と、を備える。ボトル本体には、ボトル本体の内側に向かって窪み、上下方向に延びる溝が形成される。溝は底部を有する。ボトル本体の上下方向に直交する断面において、底部における断面の厚みは、ボトル本体の上下方向に直交する断面の重心から最も離れた位置における断面の厚みよりも大きい。
【0008】
上記の薬剤ボトルにおいて、ボトル本体の内側に向かって窪む溝の底部が、上下方向に延びる柱のような部分を構成する。これにより、薬剤ボトルの上下方向の剛性が大きくなるため、薬剤ボトルの使用中の変形を抑制することができる。重心から離れた肉厚が小さい部分を起点として薬剤ボトルを容易に潰すことができるので、使用後の薬剤ボトルの容積を容易に減らすことができる。
【0009】
上記の底部は、溝の上端から溝の下端に亘って上下方向に延びる。厚みの大きい溝の底部が、第一口部付近と第二口部付近まで延びることにより、第一口部および第二口部に近い部分の剛性が大きくなるので、薬剤ボトルの変形をより抑制することができる。
【0010】
ボトル本体の上下方向に直交する断面における溝の形状は、円弧状の部分を含む。これにより、薬剤ボトルを容易に成形できるため、生産性が向上する。
【0011】
ボトル本体の上下方向に直交する断面は略矩形状である。溝は略矩形状の断面の長辺側に形成される。これにより、厚みの大きい底部を確実に容易に構成することができる。
【0012】
上記の溝は、第一の溝と第二の溝とを有する。第一の溝と第二の溝とは、ボトル本体の上下方向に直交する断面の重心を挟んで向かい合って形成される。これにより薬剤ボトルの上下方向の剛性がより大きくなるため、薬剤ボトルの変形をより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、剛性を確保しながら、使用後の容積を容易に減らすことができる薬剤ボトルを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】薬剤ボトルの概略構成を示す斜視図である。
図2図1に示す薬剤ボトルの正面図である。
図3】ポート部取付前の図1に示す薬剤ボトルの上面図である。
図4】ポート部取付前の図1に示す薬剤ボトルの下面図である。
図5図1に示すV−V線に沿うボトル本体の端面図である。
図6図5に示す領域VIの拡大図である。
図7図5に示す領域VIIとの拡大図である。
図8】薬剤ボトルの自動溶解装置への取付状態を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0016】
<薬剤ボトル1の全体構成>
図1は、薬剤ボトル1の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す薬剤ボトル1の正面図である。本明細書中では、図1、2中の両矢印が示す方向を上下方向DR1と称する。図1、2に示されるように、薬剤ボトル1は、ボトル本体2と、第一口部3と、第二口部4とを備える。第一口部3は、ボトル本体2の上端に形成されている。第一口部3の上端には、フランジ部が形成されている。第二口部4は、ボトル本体2の下端に形成されている。第二口部4の下端には、フランジ部が形成されている。第一口部3のフランジ部と第二口部4のフランジ部とに、ポート部5が固定されている。
【0017】
ボトル本体2は、胴部8と、第一肩部9と、第二肩部10と、を含む。胴部8は、略矩形箱状の形状を有している。胴部8は、上下方向DR1に沿って延びている。第一肩部9は、胴部8の上端につながっている。第一肩部9は、胴部8から第一口部3へ亘って延びている。第一肩部9は、ボトル本体2の一部分であって、ボトル本体2の上方に向かうにつれて、ボトル本体2の上下方向DR1に直交する断面が減少していく部分である。第二肩部10は、胴部8の下端につながっている。第二肩部10は、胴部8から第二口部4へ亘って延びている。第二肩部10は、ボトル本体2の一部分であって、ボトル本体2の下方に向かうにつれて、ボトル本体2の上下方向DR1に直交する断面が減少していく部分である。第一口部3は、第一肩部9の上端につながっている。第二口部4は、第二肩部10の下端につながっている。第一口部3および第二口部4は、ボトル本体2の胴部8よりも小径に形成されている。第一口部3と第二口部4とは、円筒状の外周面を有している。
【0018】
ボトル本体2には、溝14が形成されている。溝14は、ボトル本体2の外表面が、ボトル本体2の内側に向かって窪む形状を有している。溝14は、第一肩部9、胴部8および第二肩部10に亘って上下方向DR1に延びている。溝14は、上端縁部15と、下端縁部16とを有している。上端縁部15は、溝14の上端を構成している。上端縁部15は、第一肩部9に形成されている。下端縁部16は、溝14の下端を構成している。下端縁部16は、第二肩部10に形成されている。溝14は、上端縁部15から下端縁部16に亘って上下方向DR1に延びている。
【0019】
図3は、ポート部5取付前の図1に示す薬剤ボトル1の上面図である。第一口部3の上端には、液体が流入する液体流入口6が形成されている。上下方向DR1に沿って見た液体流入口6は、円形状である。液体流入口6の半径をr1とする。ポート部5は、第一口部3の上端のフランジ部に溶着されて、第一口部3に固定されている。液体流入口6は、ポート部5によって覆われている。
【0020】
図4は、ポート部5取付前の図1に示す薬剤ボトル1の下面図である。第二口部4の下端には、液体が排出される液体排出口7が形成されている。上下方向DR1に沿って見た液体排出口7は、円形状である。液体排出口7の半径をr2とする。ポート部5は、第二口部4の下端のフランジ部に溶着されて、第二口部4に固定されている。液体排出口7は、ポート部5によって覆われている。
【0021】
図3、4中の両矢印が示す方向を短辺方向DR2と称する。短辺方向DR2は、上下方向DR1と直交している。
【0022】
ポート部5が、ボトル本体2の一端(第一口部3の上端または第二口部4の下端)に溶着された後に、固体型の薬剤(例えば重曹などの固体透析用剤)が薬剤ボトル1内に入れられる。その後、一端とは反対の他端にもうひとつのポート部5が溶着される。ポート部5は、フィルターを有している。フィルターは、薬剤ボトル1内の薬剤の漏洩を防止できるとともに、後述する溶解液(例えばRO水)および薬剤が溶解液に溶解した透析液がフィルタを通過できるように、構成されている。
【0023】
図5は、図1に示すV−V線に沿う胴部8の端面図である。胴部8の上下方向に直交する断面は略矩形である。胴部8は、一対の第一壁面11と、一対の第二壁面12とを有する。第一壁面11と第二壁面12とは、上下方向DR1に延びている。第一壁面11は、胴部8の上下方向DR1に直交する略矩形の断面の長辺を構成する壁面である。胴部8の上下方向DR1に直交する断面における重心をGとする。一対の第一壁面11は、重心Gを挟んで向かい合って形成されている。第二壁面12は、胴部8の上下方向DR1に直交する略矩形の断面の短辺を構成する壁面である。一対の第二壁面12は、重心Gを挟んで向かい合って形成されている。
【0024】
溝14の上下方向DR1に直交する断面は、円弧状である。溝14は、第一壁面11に形成されている。溝14は、重心Gを挟んで向かい合って一対で形成されている。溝14は、底部17を有する。底部17は、ボトル本体2において、重心Gから最も近い部分を構成している。図1に示すように、底部17は、上端縁部15から下端縁部16に亘って上下方向DR1に延びている。図5に示す底部17と重心Gとの距離aは、図3に示す液体流入口6の半径r1よりも大きい。図5に示す距離aは、図4に示す液体排出口7の半径r2よりも大きい。
【0025】
図3,4に示す短辺方向DR2における溝14の深さは、短辺方向DR2における胴部8の第一壁面11と第一口部3の外周面3aまたは第二口部4の外周面4aとの間の距離を二分の一した長さよりも大きい。短辺方向DR2における、溝14の深さをb、胴部8の上下方向DR1に直交する略矩形の断面の長辺から第一口部3の外周面3aまでの距離をc1とすると、2×b>c1となる。胴部8の上下方向DR1に直交する略矩形の断面の長辺から第二口部4の外周面4aまでの距離をc2とすると、2×b>c2となる。
【0026】
図6は、図5に示す領域VIの拡大図である。図7は、図5に示す領域VIIの拡大図である。図6には、底部17における上下方向DR1に直交する断面が図示されている。図7には、重心Gから最も離れた位置における上下方向DR1に直交する断面が図示されている。図6,7に示すように、底部17における上下方向DR1に直交する断面の厚みは、重心Gから最も離れた位置における上下方向に直交する断面の厚みよりも大きい。底部17における上下方向DR1に直交する断面の厚みをt1、重心から最も離れた位置における上下方向DR1に直交する断面の厚みをt2とすると、t1>t2となる。
【0027】
<薬剤ボトル1の成形方法>
本発明の薬剤ボトル1は、ブロー成形により成形される。ブロー成形は、金型でパリソン(チューブ状の熱可塑性樹脂)を挟み、パリソンの上下を閉じて、空気を吹き込み、パリソンを金型の内面に押し付けることで中空の樹脂製品を成形する方法である。ブロー成形では、パリソンを軸心として、パリソンが風船のように膨らんでいく。軸心により近い位置で金型と接したパリソンは、より早く硬化が始まる。そのため、ボトル本体2における軸心により近い位置の肉厚は、ボトル本体2における軸心から離れた位置の肉厚に比べて大きくなる。その結果、本実施の形態の薬剤ボトル1において、重心Gから近い位置にある底部17の肉厚が大きくなり、重心Gから離れた位置の肉厚は小さくなる。
【0028】
上述したように、図5に示す距離aは、図3に示す液体流入口6の半径r1よりも大きい。図5に示す距離aは、図4に示す液体排出口7の半径r2よりも大きい。このようにボトル本体2の寸法を定めることで、膨張前のパリソンが金型に接触することを抑制できる。
【0029】
<薬剤ボトル1の使用方法>
図8は、薬剤ボトル1の自動溶解装置100への取付状態を表す概略図である。自動溶解装置100は、透析装置に取り付けられる。自動溶解装置100は、薬剤ボトル1を上下より挟み込む。薬剤ボトル1は、内部に薬剤(例えば重曹)を有している。自動溶解装置100は、溶解液(例えばRO水)を薬剤ボトル1内に供給する。溶解液は、フィルターを通過して液体流入口6を通り、薬剤ボトル1に供給される。薬剤ボトル1内において、薬剤と溶解液との飽和溶液が調製される。飽和溶液は、液体排出口7を通ってフィルターを通過し、透析装置へ排出される。
【0030】
薬剤ボトル1は、自動溶解装置100使用中の変形を抑制し、使用中に薬剤ボトル1が自動溶解装置100から外れるのを防ぐ。使用後に薬剤ボトル1を廃棄するにあたっては、ボトル本体2が容易に変形するため嵩張らない。ボトル本体2には小溝13が形成されている。小溝13は、ボトル本体2の内側に向かって窪む形状を有する。小溝13により、ボトル本体2がより容易に変形できる。
【0031】
<作用効果>
実施の形態の薬剤ボトル1の作用効果についてまとめて説明すると、以下の通りである。なお、実施の形態の構成に参照番号を付すが、これは一例である。
【0032】
本実施の形態の薬剤ボトル1は、図1図2に示すようにボトル本体2と、第一口部3と、第二口部4とを備える。ボトル本体2には、ボトル本体2の内側に向かって窪む上下方向DR1に延びる溝14が形成される。溝14は、底部17を有する。底部17における上下方向DR1に直交する断面の厚みは、重心Gから最も離れた位置における上下方向DR1に直交する断面の厚みよりも大きい。
【0033】
溝14が形成されていない薬剤ボトルは、自動溶解装置100を使用中の変形、特に自動溶解装置100の使用直後の変形によって、自動溶解装置100から外れる可能性がある。本実施の形態の溝14が形成されている薬剤ボトル1では、内側に向かって窪む溝14の底部17が、上下方向DR1に延びる柱のような部分を構成する。底部17における上下方向DR1に直交する断面の厚みが大きいため、柱のような部分は剛性が大きい。これにより、薬剤ボトル1の上下方向DR1の剛性が大きくなるため、自動溶解装置100使用中の薬剤ボトル1の変形が抑制され、薬剤ボトル1が自動溶解装置100から外れることが抑制される。
【0034】
重心Gから近い位置にある底部17の肉厚が大きくなる一方で、ボトル本体2における重心Gから離れた位置では、ボトル本体2の肉厚が小さくなり、剛性が小さくなる。このため、肉厚が小さい部分を起点としてボトル本体2を容易に変形することができるので、使用後に薬剤ボトル1を廃棄する際には薬剤ボトル1を容易に潰すことができ、嵩張ることがない。
【0035】
このように、ボトル本体2の肉厚に差を設けることにより、剛性を確保しながら、使用後の容積を容易に減らすことができる薬剤ボトル1を実現することができる。
【0036】
図1に示すように、底部17は、上端縁部15から下端縁部16に亘って上下方向DR1に延びる。厚みの大きい溝14の底部17が、第一口部3付近と第二口部4付近まで延びることにより、第一口部3および第二口部4に近い部分の剛性が大きくなるので、薬剤ボトル1の変形をより抑制することができる。
【0037】
図5に示すように、ボトル本体2の上下方向DR1に直交する断面における溝14は円弧状である。溝14の形状は任意でもよく、例えばV字状でもよい。しかし、溝14を円弧状にすることで、製造が容易になり、生産性が向上される。
【0038】
ボトル本体2の上下方向DR1に直交する断面は略矩形状であり、略矩形状の断面の長辺側に溝14が形成されている。ボトル本体2の上下方向DR1に直交する断面における重心Gと、底部17とが近くなっている。上述したブロー成形では、ボトル本体2において、軸心に近い部分の肉厚は大きくなる。そのため、重心Gから近い位置にある底部17における上下方向DR1に直交する断面の厚みt1を大きくできるので、厚みの大きい底部17を確実に容易に構成することができる。
【0039】
溝14は、重心Gを挟んで向かい合って一対で形成されている。溝14が一か所のみに形成されている場合、溝14と重心Gを挟んで向かい合う部分が変形し易くなる。溝14が重心Gを挟んで向かいあって一対で形成されることで、薬剤ボトル1の上下方向DR1の剛性がより大きくなるため、薬剤ボトル1の変形をより確実に抑制することができる。
【実施例】
【0040】
(ボトル本体2の肉厚差)
実施の形態の薬剤ボトル1を作製し、ボトル本体2において、重心Gから近い位置にある底部17における肉厚t1(図6)と、重心Gから最も離れた位置における肉厚t2(図7)とを測定した。計測にはダイヤルゲージを使用した。2つの薬剤ボトル1(No.1、No.2)のボトル本体2における肉厚測定結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
比較例として、ボトル本体に溝が形成されていない薬剤ボトルを作製し、ボトル本体において、重心から近い部分の肉厚と、重心から離れた部分の肉厚とを測定した。計測にはダイヤルゲージを使用した。溝が形成されていない2つの薬剤ボトル(No.1、No.2)のボトル本体における肉厚測定結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表1および表2より、実施の形態の溝14が形成されているボトル本体2の方が、重心から近い部分の肉厚と、重心から離れた部分の肉厚との差が大きいことがわかる。
【0045】
(薬剤ボトルの長さの変化)
実施の形態の薬剤ボトル1と、比較例の溝が形成されていない薬剤ボトルとをそれぞれ自動溶解装置100に取付けて、自動溶解装置100の使用前と使用直後とにおける薬剤ボトルを挟む上下の治具の間隔を測定した。表3に、2つの実施の形態の薬剤ボトル1(No.1、No.2)を自動溶解装置100に用いた場合における自動溶解装置100の使用前と使用直後との治具の間隔の変化量を示す。表4に、2つの比較例の薬剤ボトル(No.1、No.2)を自動溶解装置100に用いた場合における自動溶解装置100の使用前と使用直後との治具の間隔の変化量を示す。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
表4に示すように、溝が形成されていない比較例の薬剤ボトルを自動溶解装置100に用いた場合、使用直後に治具の間隔が小さくなった、すなわち、溝が形成されていない比較例の薬剤ボトルは、使用直後に収縮していた。溝が形成されていない薬剤ボトルは上下方向DR1の剛性が小さいためである。
【0049】
一方、表3に示すように、溝14が形成されている実施の形態の薬剤ボトル1を自動溶解装置100に用いた場合、自動溶解装置100の使用直後に収縮しなかった。
【0050】
このように、ボトル本体2の肉厚に差を設けることにより、薬剤ボトル1の上下方向DR1における剛性を大きくして、薬剤ボトル1の変形を抑制でき、その結果薬剤ボトル1が自動溶解装置100の使用中に自動溶解装置100から外れる事態を回避できることが示された。
【0051】
変形例として、薬剤ボトル1の形状は、円筒状、楕円筒状、または多角柱状等であってもよい。小溝13は、ボトル本体2に形成されていなくてもよい。溝14の底部17が上端縁部15と下端縁部16とに亘って延びない形状としてもよく、たとえば、ボトル本体2の胴部8のみに溝14を形成してもよい。
【0052】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 薬剤ボトル、2 ボトル本体、3 第一口部、3a 第一口部の外周面、4 第二口部、4a 第二口部の外周面、5 ポート部、6 液体流入口、7 液体排出口、8 胴部、9 第一肩部、10 第二肩部、11 第一壁面、12 第二壁面、13 小溝、14 溝、15 上端縁部、16 下端縁部、17 底部、DR1 上下方向、DR2 短辺方向、G 重心、a 底部と重心との距離、b 溝の深さ、c1 略矩形の断面の長辺から第一口部の外周面までの距離、c2 略矩形の断面の長辺から第二口部の外周面までの距離、r1 液体流入口の半径、r2 液体排出口の半径、t1 底部の肉厚、t2 重心から最も離れた位置の肉厚。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8