特許第6972564号(P6972564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972564
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】シート状物
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/00 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   D06N3/00
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-15173(P2017-15173)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-123444(P2018-123444A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上野 勝
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 知治
(72)【発明者】
【氏名】小出 現
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−087974(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/031694(WO,A1)
【文献】 特開2013−234409(JP,A)
【文献】 特開2015−055023(JP,A)
【文献】 特開平09−067779(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/099951(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均単繊維直径が0.1μm以上8μm以下の極細繊維を含んでなる繊維構造物であって、該繊維構造物の少なくとも一面が立毛を有しており、その立毛面に非連続な樹脂層が形成され、該非連続な樹脂層の前記シート状物表面に占める割合が、10%以上90%以下であり、該樹脂層の総厚みが10μm以上50μm以下であり、該樹脂層の50質量%以上がポリウレタンからなる高分子弾性体であって、かつ前記樹脂層の総厚みの50%以上100%以下が繊維構造物内に存在していることを特徴とするシート状物。
【請求項2】
樹脂層が3層構造であることを特徴とする請求項1に記載のシート状物。
【請求項3】
繊維構造物が不織布であり、内部に高分子弾性体を含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載のシート状物。
【請求項4】
繊維構造物が、内部に織編物からなる補強布を含んでなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシート状物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然のヌバック皮革の触感と、スエード皮革の立毛感および通気性を持ちながら、更には耐摩耗性に優れる皮革様シート状物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
極細繊維と高分子弾性体からなるスエード調の人工皮革は、耐久性や均一性などの点において、天然皮革にはない優れた性質を有している。このような特徴を活かし、スエード調の人工皮革は、衣料、家具および自動車用内装材など、幅広い用途に使用されてきた。また近年では、さらなる多様化のニーズが生まれており、スエード調以外の品位を有する人工皮革の開発が望まれている。
【0003】
それらの例としては、銀付調やヌバック調などの人工皮革が挙げられる。天然のヌバック皮革はスエードとは異なり、皮革の銀面に起毛処理を施して得られるものである。このため、銀付革のような表面の緻密さとフラットさを有しながら、ウェットな触感を有するという特徴がある。しかしながら、既存のヌバックを模した人工皮革や合成皮革の中には、天然ヌバックと皮革して、十分な品位や風合い、または耐摩耗性や通気性などの機能を達成しているものは存在しなかった。
【0004】
ヌバック調人工皮革については、例えば、極細繊維からなる皮革状のシートに対して、立毛面に樹脂液を塗布した後に、さらに化学的および/または機械的に分割し、立毛上繊維を露出せしめる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この提案の方法では、分割後の樹脂層部のダメージが大きく、その後の耐摩耗性が課題であった。
【0005】
また、耐摩耗性に優れるものとして、基材表面に表面研磨されたポリウレタン樹脂を設け、その表面に更にポリウレタン樹脂により皮革模様をプリントする方法が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案の方法では、表面に立毛繊維が存在しないだけでなく通気性にも劣り、品位と快適性が課題であった。
【0006】
また、銀付調人工皮革については、グリップ性に優れるものとして、機材の上に被覆層と、修飾中空ナノシリカ粒子および高分子弾性体からなる表面層からなる銀面部を有する皮革用シート(特許文献3参照。)や、耐摩耗性に優れるものとして、繊維基材の表面に、二層のポリウレタン接着剤層を積層した合成皮革(特許文献4参照。)などが提案されている。しかしながら、これらのいずれの提案においても、表面に立毛繊維が存在しないため、ヌバック皮革特有の短い立毛によるライティング効果もなく、また、通気性にも劣り、品位と快適性が課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3409554号公報
【特許文献2】特許第5415195号公報
【特許文献3】特許第5452477号公報
【特許文献4】特許第3133957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、天然のヌバック皮革の触感と、スエード皮革の立毛感および通気性を持ちながら、更には耐摩耗性に優れる皮革様シート状物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシート状物は、上記の課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、次の構成を有するものである。
【0010】
すなわち、本発明のシート状物は、平均単繊維直径が0.1μm以上8μm以下の極細繊維を含んでなる繊維構造物であって、該繊維構造物の少なくとも一面が立毛を有しており、その立毛面に非連続な樹脂層が形成され、該非連続な樹脂層の前記シート状物表面に占める割合が、10%以上90%以下であり、該樹脂層の総厚みが10μm以上50μm以下であり、該樹脂層の50質量%以上がポリウレタンからなる高分子弾性体であって、かつ前記樹脂層の総厚みの50%以上100%以下が繊維構造物内に存在していることを特徴とするシート状物である。
【0011】
ここで言う、非連続な樹脂層とは、シート状物表面に形成されている樹脂層が表面上に不規則かつ非連続に配置されていることを示し、すなわち、本発明の皮革様シート状物上に、樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、島状で点在している樹脂部分の間に立毛部分が存在する表面層の状態を言う。
【0012】
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記の樹脂層は、3層構造である。
【0013】
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、繊維構造物が不織布であり、内部に高分子弾性体を含んでなるシート状物である。
【0014】
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、繊維構造物が、内部に織編物からなる補強布を含んでなるシート状物である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、天然のヌバック皮革に近い触感と、スエード皮革の立毛感および通気性を持ちながら、更には耐摩耗性に優れるシート状物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のシート状物は、平均単繊維直径が0.1μm以上8μm以下の極細繊維を含んでなる繊維構造物であって、該繊維構造物の少なくとも一面が立毛を有しており、その立毛面に非連続な樹脂層が形成され、該非連続な樹脂層の前記シート状物表面に占める割合が、10%以上90%以下であり、該樹脂層の総厚みが10μm以上50μm以下であり、該樹脂層の50質量%以上がポリウレタンからなる高分子弾性体であって、かつ前記樹脂層の総厚みの50%以上100%以下が繊維構造物内に存在していることを特徴とするシート状物である。

【0017】
本発明のシート状物は、このように平均単繊維直径が0.1μm以上8μm以下の極細繊維を含むものである。極細繊維の平均単繊維直径は、好ましくは0.3μm以上7μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上6μm以下である。極細繊維の平均単繊維直径を0.1μm以上とすることで、実使用に耐えるシート状物の強度を得ることができる。また、平均単繊維直径が8μm以下とすることで、柔軟性と緻密でタッチの柔らかい表面品位に優れたシート状物が得られる。
【0018】
本発明のシート状物を構成する極細繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのポリエステル、6−ナイロン、66−ナイロンなどのポリアミド、アクリルポリエチレンおよびポリプロピレンなどの重合体等からなる各種合成繊維を用いることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリトリメチレンテレフタレート等の重合体等からなるポリエステル繊維は、強度、寸法安定性、耐光性および染色性に優れている点から好ましく用いられる。また、繊維構造物には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、異なる素材の極細繊維を混合させることもできる。
【0019】
繊維構造物を構成する極細繊維には、種々の目的に応じて、酸化チタン粒子等の無機粒子、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱剤および抗菌剤等を添加することができる。
【0020】
繊維構造物を構成する極細繊維の断面形状としては、丸断面の他、楕円、扁平、三角などの多角形、扇形および十字型などの異形断面の断面形状を採用することができる。
【0021】
本発明で用いられる繊維構造物としては、織物、編物、不織布、さらにはこれらの繊維構造の中に高分子弾性体が充填された繊維構造物等が挙げられ、用途や目的毎に要求されるコストおよび特性に応じて適宜使い分けることができる。コストの点では織物と編物が好ましく用いられ、充実感のある風合いや微細な立毛による品位の点では不織布や高分子弾性体が充填された繊維構造物等が好ましく用いられる。
【0022】
繊維構造物として織編物を用いた場合には、織物としては、平織、綾織、朱子織およびそれらの織組織を基本とした各種織物などが挙げられる。また編物としては、経編、トリコット編みで代表される緯編、レース編みおよびそれらの編組織を基本とした各種編物のいずれも採用することができる。
【0023】
繊維構造物として不織布を用いた場合には、一般的な短繊維不織布、長繊維不織布、ニードルパンチ不織布、抄造不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、およびエレクトロスピニング不織布等、種々のカテゴリーで表現される全ての不織布を適用することができる。ここで、充実感のある風合いや微細な立毛による品位の点では不織布が好ましい。
【0024】
これらの繊維構造物の中に高分子弾性体が充填された繊維構造物は、シート状物の耐久性やシート状物表面の耐摩耗性に優れる点で、より好ましく用いられる。
【0025】
さらに本発明のシート状物においては、機械的強度に優れるとの観点から、その構造内部に織編物を含んでいることが好ましい態様である。
【0026】
シート状物が織編物を含む場合には、織編物を構成する糸条は、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、またはポリプロピレン、またはそれらの共重合体類などからなる合成繊維が好適に用いられる。中でも、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの共重合体類からなる合成繊維を単独でまたは複合もしくは混合して用いることができる。また、織編物を構成する糸条としては、フィラメントヤーン、紡績糸、およびフィラメントと短繊維の混紡糸などを用いることができる。
【0027】
シート状物に含まれる織編物には、2種類以上のポリマーがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に複合された複合繊維(以下、サイドバイサイド型等複合繊維と記載することがある。)を含んでなる織編物を用いることもできる。例えば、固有粘度(IV)差のある2種類以上のポリマーからなるサイドバイサイド型等複合繊維においては、延伸時の高粘度側への応力集中により、2成分間で異なった内部歪みが生じる。この内部歪みのため、延伸後の弾性回復率差および熱処理工程での熱収縮差により高粘度側が大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル型の捲縮を発現する。この3次元コイル型の捲縮により、人工皮革としてのストレッチ性が発現する。
【0028】
シート状物に含まれる織物としては、前述のように平織、綾織、朱子織およびそれらの織組織を基本とした各種織物などが挙げられる。また編物としては、経編、トリコット編みで代表される緯編、レース編みおよびそれらの編組織を基本とした各種編物のいずれも採用することができる。それらの中でも、加工性の観点から織物が好ましく、特にコストの面で平織織物が好ましく用いられる。また、織物の織密度は、糸条の総繊度や後述する不織布と織編物を絡合させる設備や条件により、適宜設定することができる。
【0029】
本発明のシート状物を構成する繊維構造物は、内部に高分子弾性体を含むことが好ましい態様である。内部に高分子弾性体を含むことにより、シート状物の形態安定性や表面の耐摩耗性が向上する。
【0030】
繊維構造物の内部に高分子弾性体を含む場合には、高分子弾性体としては、ポリウレタン、スチレン ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、およびアクリル樹脂等を用いることができ、中でも、ポリウレタンを主成分として用いることが好ましい態様である。ポリウレタンを用いることにより、充実感のある触感、皮革様の外観および実使用に耐える物性を備えた複合シート状物を得ることができる。
【0031】
繊維構造物の内部に含まれる高分子弾性体としてポリウレタンを用いる場合には、有機溶剤に溶解した状態で使用する有機溶剤系ポリウレタンと、水に分散した状態で使用する水分散型ポリウレタンのどちらも採用することができる。また、ポリウレタンとしては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタンが好ましく用いられる。
【0032】
繊維構造物の内部の高分子弾性体として水分散型ポリウレタンを使用する場合には、ポリウレタンを水に分散させるため、内部乳化剤を使用することが好ましい態様である。内部乳化剤としては、例えば、4級アミン塩等のカチオン系の内部乳化剤、スルホン酸塩やカルボン酸塩等のアニオン系の内部乳化剤およびポリエチレングリコール等のノニオン系の内部乳化剤が挙げられ、さらにカチオン系とノニオン系の内部乳化剤の組み合わせ、およびアニオン系とノニオン系の内部乳化剤の組み合わせのいずれも採用することができる。
【0033】
繊維構造物の内部の高分子弾性体には、各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系および無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系およびリン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系およびオキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、耐電防止剤、界面活性剤、凝固調整剤および染料などを含有させることができる。
【0034】
繊維構造物の内部の高分子弾性体の含有量は、使用する高分子弾性体の種類、高分子弾性体の製造方法および風合や物性を考慮し、適宜調整することができる。高分子弾性体の含有量は、シート状物の質量に対して好ましくは5質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上45質量%以下である。高分子弾性体の含有比率を5質量%以上とすることにより、シート強度を得て、かつ繊維をバインドすることで絡合状態を維持することができ、一方、含有比率を80質量%以下とすることにより、風合いが硬くなるのを防ぐことができる。
【0035】
本発明において繊維構造物は、その少なくとも一面に立毛を有することが重要である。立毛面を有することにより、その後の樹脂層との接着性に優れ、さらにはシート状物表面に露出した立毛繊維により、より本革に近い表面触感を得ることができる。
【0036】
また、その立毛面には、非連続な樹脂層が形成されていることが重要である。ここで言う、非連続な樹脂層とは、前述のように、シート状物の表面に、樹脂部分が島状で点在しており、その樹脂部分の間に立毛部分が存在する表面層の状態を言う。
【0037】
また、非連続な樹脂部分のシート状物表面に占める割合は、10%以上90%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以上80%以下である。上記の割合〜10%以上とすることで、耐摩耗性に優れ、ヌバック調の表面感、触感を得ることができる。また、上記の割合を90%以下とすることで、スエード調の通気性および、立毛感を得ることが可能となる。
樹脂層は2層以上で構成されていることが好ましく、3層構造であることがより好ましい態様である。樹脂層が2層以上であることにより、自動車シートやソファーなど、より耐久性が要求される耐摩耗性に優れたシート状物を得ることができる。
【0038】
また、本発明における樹脂層で用いられる樹脂とは、好適には伸び縮みするゴム弾性を有している高分子化合物であり、例えば、ポリウレタン、SBR、NBRおよびアクリル樹脂等を挙げることができる。中でも、風合いと物性のバランスが取れる点で、ポリウレタンを主成分としてなる高分子弾性体、具体的には50質量%以上がポリウレタンからなる高分子弾性体が好ましく用いられる。
【0039】
ポリウレタンには、有機溶剤に溶解した状態で使用する有機溶剤系ポリウレタンや、水に分散した状態で使用する水分散型ポリウレタンなどがあるが、本発明においてはどちらも採用することができる。
【0040】
本発明で用いられるポリウレタンとしては、ポリオール、ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤を適宜反応させた構造を有するポリウレタンを用いることができる。
【0041】
ポリオールとしては、例えば、ポリカーボネート系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、シリコーン系ジオールおよびフッ素系ジオールや、これらを組み合わせた共重合体を用いることができる。中でも、耐光性の観点から、ポリカーボネート系ジオールおよびポリエステル系ジオールが好ましく用いられる。さらに、耐加水分解性と耐熱性の観点から、ポリカーボネート系ジオールが好ましく用いられるが、本発明における接着層においては、繊維構造物表面との接着性から、ポリエーテル系ジオール、またはポリエステル系ジオールが好ましく用いられる。
【0042】
ポリカーボネート系ジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、または、ホスゲンもしくはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。
【0043】
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、などの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの分岐アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0044】
本発明では、それぞれ単独のアルキレングリコールから得られるポリカーボネートジオールでも、2種類以上のアルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネートジオールのいずれも用いることができる。
【0045】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネートおよびキシリレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートや、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネートが挙げられ、またこれらを組み合わせて用いることができる。中でも、耐久性や耐熱性を重視する場合には、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネートが好ましく、耐光性を重視する場合には、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートが好ましく用いられる。
【0046】
鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミンやメチレンビスアニリン等のアミン系鎖伸長剤、エチレングリコール等のジオール系鎖伸長剤、さらにはポリイソシアネートと水を反応させて得られるポリアミンを用いることができる。
【0047】
本発明における樹脂層で用いられる樹脂は、耐摩耗性や風合いを損なわない範囲で、ポリエステル系、ポリアミド系およびポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂およびエチレン−酢酸ビニル樹脂などを含有させることができる。また、これらの樹脂には、各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系および無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系およびリン系などの酸化防止剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、耐電防止剤、界面活性剤、凝固調整剤、および染料などを含有させることができる。
【0048】
また、本発明の樹脂層は、その総厚みが1μm以上200μm以下であることが好ましい。総厚みを1μm以上とすることで、天然ヌバック皮革のタッチが得られ、また総厚みを200μm以下とすることで、柔軟な風合いのシートとなる。より好ましくは5μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上50μm以下の範囲である。
【0049】
本発明のシート状物は、樹脂層の総厚みの50%以上100%以下が繊維構造物内に存在していることが重要である。本発明のシート状物は、繊維構造物の立毛面に非連続な樹脂層を形成しているため、全面に樹脂層を形成する一般の銀面品と比較し、シート状物表面に立毛と樹脂層の界面が多数存在しているため、摩擦に対し樹脂層が剥がれやすい。そのため、実使用に耐える耐摩耗性を確保するため、樹脂層を繊維構造物内に浸透させ、存在させることにより、高い耐摩耗性が得られる。樹脂層の層厚みを50%以上繊維構造物内に存在させることにより、実使用に耐える耐摩耗性が得られる。
【0050】
次に、本発明のシート状物を製造する方法について説明する。
【0051】
本発明のシート状物を構成する極細繊維は、例えば溶剤に対する溶解性の異なる2種類以上の高分子物質からなる極細繊維発現型繊維を用いて得ることができる。
【0052】
極細繊維発現型繊維としては、溶剤に対する溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分および島成分とし、海成分を、溶剤を用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を、繊維表面を放射状または多層状に交互に配置し、溶剤処理により剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。中でも、海島型複合繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち繊維束内部の極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、基材の柔軟性や風合いの観点からも好ましく用いられる。
【0053】
海島型複合繊維の製造には、海島型複合用口金を用い、海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体方式と、海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などを用いることができるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点で高分子配列体方式による海島型複合繊維の製造方法がより好ましく用いられる。
【0054】
極細繊維は、繊維構造物において不織布(極細繊維ウエブ)の形態をなしていることが好ましい態様である。不織布とすることにより、均一で優美な外観や風合いを得ることができる。不織布(極細繊維ウェブ)の形態としては、短繊維不織布および長繊維不織布のいずれでもよい。
【0055】
短繊維不織布とする場合の極細繊維の繊維長は、不織布の形態により適宜選択することが可能である。通常の短繊維不織布の場合の繊維長は、25mm以上90mm以下であることが好ましい。極細繊維の繊維長を90mm以下とすることにより、良好な品位および風合いとなり、繊維長を25mm以上とすることにより、耐摩耗性が良好なシート状物とすることができる。また、抄造法による不織布の場合の繊維長は0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。繊維長を10mm以下とすることで、安定した懸濁液が得られ、不織布の目付や厚みのムラを抑制することが可能となる。また、繊維長を0.1mm以上とすることで不織布からの毛羽落ちを抑制することが可能となる。
【0056】
また、本発明の極細繊維発生型繊維は繊維同士の絡合を促進するため、捲縮加工を施すことが好ましい。捲縮加工やカット加工は、公知の方法を用いることができる。
【0057】
次に、得られた原綿を、クロスラッパー等により繊維ウェブとし、絡合させることにより不織布を得る。繊維ウェブを絡合させ不織布を得る方法としては、ニードルパンチやウォータージェットパンチ等を用いることができる。また、繊維ウェブの目付は、最終製品の設計、後工程での寸法変化および加工マシンの特性等を考慮して、適宜設定することができる。
【0058】
また、織編物と極細繊維発生型繊維からなる繊維構造物を絡合一体化させ、極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物との積層シートを得ることも好ましい態様である。両者を絡合一体化させる方法としては、ニードルパンチやウォータージェットパンチ等の方法を用いることができる。中でも、ニードルパンチによる交絡処理が貼り合せ性と製品の品位の観点から好ましい態様である。このようにして得られた極細繊維発生型繊維からなる繊維構造物と織編物の積層シートは、緻密化の観点から、高分子弾性体を付与する前の段階において、乾熱もしくは湿熱またはその両者によって収縮させ、さらに高密度化させることが好ましい態様である。この収縮処理は、極細繊維を発現させる前に行うこともでき、発現させた後に行うこともできるが、収縮に極細繊維発生型繊維の海成分ポリマーの特性を利用できる点において、極細繊維発生前に収縮処理を行うことが好ましい態様である。
【0059】
また、この収縮工程における積層シートの面積収縮率の範囲は、15%以上35%以下であることが好ましい。面積収縮率を15%以上とすることにより、収縮による品位の向上効果を好ましく得ることができる。また、面積収縮率を35%以下とすることにより、不織布と一体化した織編物に収縮の余地を残すことができるため、後に高分子弾性体を付与した後に効率的に収縮させることが可能となる。より好ましい面積収縮率の範囲は13%以上30%以下であり、さらに好ましくは15%以上25%以下である。
面積収縮率の測定方法は、収縮工程での加工前後の長さ、および幅から長さ方向の収縮率、および方向の収縮率を算出し、下記の計算式にて算出する。
【0060】
長さ収縮率=収縮加工後の長さ/収縮加工前の長さ
幅収縮率=収縮加工後の幅/収縮加工前の長さ
面積収縮率(%)=(1−(1−長さ収縮率)×(1−幅収縮率))×100
収縮の方法としては、熱水収縮、スチーム収縮、乾熱収縮など公知の方法を採用することができる。収縮処理の時間や温度は、採用する収縮の方法や、繊維構造物の繊維の種類等により、前述の面積収縮率となるよう調整すればよい。
【0061】
本発明のシート状物の製造方法は、前記の極細繊維発生型繊維からなる繊維構造物と織編物との積層シートを処理して平均単繊維直径が0.1μm以上8μm以下の極細繊維を発現させる工程を含む。極細繊維の発生処理方法としては、極細繊維発生型繊維を構成する樹脂の一方を、溶剤によって溶解させる方法が挙げられる。特に、海成分が易溶解性ポリマーからなり、島成分が難溶解性ポリマーからなる極細繊維発生型海島複合繊維について、海成分を溶解させる方法が好ましい。
【0062】
海成分を溶解する溶剤としては、海成分がポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィンの場合は、トルエンやトリクロロエチレン等の有機溶媒が用いられる。また、海成分がポリ乳酸や共重合ポリエステルの場合は、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いることができる。また、この極細繊維発生加工(脱海処理)は、溶剤中に極細繊維発生型繊維からなる繊維絡合体を浸漬し、窄液することによって行うことができる。
【0063】
次いで、得られた極細繊維を含む繊維構造物に、高分子弾性体を付与する処理を行う。前記の極細繊維発現型繊維から極細繊維を発現させる処理と、高分子弾性体を付与する処理とは、いずれを先に行う方法も採用することができる。極細繊維の発現処理を先に行う場合には、高分子弾性体が極細繊維を把持するため、極細繊維の脱落等が無く、より長期の使用に耐え得るものとなる。また、高分子弾性体の付与を先に行う場合には、高分子弾性体が極細繊維を把持していない構造となるため、良好な風合いの人工皮革が得られる。いずれを先に行うかは、使用するポリウレタンの種類等により適宜選択することができる。
【0064】
また、極細繊維の発現処理の後に高分子弾性体の付与を行う場合は、両工程の間に水溶性樹脂を付与する工程を設けることが好ましい。この水溶性樹脂を付与する工程を設けることにより、極細繊維の繊維束や織編物を構成する繊維の表面が水溶性樹脂により保護され、極細繊維の繊維束や織編物を構成する繊維の表面において、高分子弾性体と直接接合している箇所が連続的ではなく断続的に存在することとなり、接着面積を適度に抑えることができる。その結果、高分子弾性体による良好な手持ち感を有しつつも、ソフトな風合いや、サイドバイサイド型等複合繊維からなる織編物を用いた場合は、高いストレッチ性を有する人工皮革を得ることができる。
【0065】
このような水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、糖類および澱粉などを用いることができる。その中でも、鹸化度が80%以上のポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
【0066】
水溶性樹脂を繊維絡合体に付与する方法としては、繊維構造物に水溶性樹脂の水溶液を含浸し乾燥する方法などが挙げられる。乾燥温度や乾燥時間等の乾燥条件は、織編物の収縮を抑えるという観点からは、水溶性樹脂を付与した繊維絡合体自体の温度を110℃以下に抑えるようにすることが好ましい態様である。
【0067】
水溶性樹脂の付与量は、付与直前の繊維絡合体の質量に対し、1〜30質量%であることが好ましい。付与量を1質量%以上とすることにより、良好な風合いやサイドバイサイド型等複合繊維からなる織編物を用いたシート状物の場合は、良好なストレッチ性が得られる。また、付与量を30質量%以下とすることにより、加工性が良く耐摩耗性等の物性が良好なシート状が得られる。また、後の工程において繊維絡合体への高分子弾性体付与可能量が増加するため、シート状物の高密度化および触感の緻密化が可能となる。
【0068】
本発明のシート状物の製造方法においては、高分子弾性体を付与した繊維構造体(人工皮革の前駆体シート)を平面方向に半裁する工程を経ることができる。半裁工程を含むことによって、人工皮革の生産性を向上させることができる。例えば、織編物の積層方法として、極細繊維発生型繊維からなる不織布層を織編物層で挟む方法を採用している場合には、前駆体シートを半裁し、内側の面を立毛面とすることが、緻密な品位を達成する方法として好ましい態様である。
【0069】
本発明シート状物は、少なくとも片面に立毛を有することが重要である。立毛処理は、繊維構造物の表面をサンドペーパーやロールサンダーなどを用いてバフすることによって行うことができる。特に、サンドペーパーを用いることにより、均一かつ緻密な立毛を形成することができる。さらに、繊維構造物の表面に均一な立毛を形成させるためには、研削負荷を小さくすることが好ましい。
【0070】
本発明のシート状物は、好適に染色される。染色は、分散染料、カチオン染料やその他反応性染料を用い、染色されるシート状物の風合いを柔軟にするためにも高温高圧染色機により行うことが好ましい。
【0071】
さらに、必要に応じて、シリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤および耐光剤等の仕上げ処理を施すことができ、仕上げ処理は染色後でも染色と同浴でも行うことができる。難燃処理は、公知の臭素や塩素などのハロゲン系の難燃剤やリンなどの非ハロゲン系の難燃剤を用いることができ、染色後の浸漬による付与でも、ナイフコーティングやロータリースクリーン法などのバックコーティングによる付与でも行うことができる。
【0072】
本発明のシート状物は、その立毛面に非連続な樹脂層が形成されていることが重要である。本発明における樹脂層の形成方法としては、シート状物となる繊維構造物の表面に非連続状に塗布できる方法であれば特に限定はされないが、フラットスクリーンやロータリースクリーン等のスクリーン法やグラビアコーティング法等での塗布後に乾燥して樹脂層を形成する方法や、離型紙等の支持基材繊維上に非連続状の樹脂膜を形成した後、その樹脂膜の表面に接着剤を塗布し、繊維構造物となる表面に貼り合わせて接着し、離型紙を剥離することによって樹脂層を形成する方法等が挙げられる。
本発明のシート状物の樹脂層は2層以上の層構造であることが好ましい。さらには、前記の樹脂層が、接着層、中間層および表面層からなる3層構造からなることがより好ましい態様である。ここで、接着層は、シート状物と中間層および表面層の樹脂層の接着機能を有する。中間層は樹脂層のベースとなり、表面層は品位やタッチを形成する役割を有する。樹脂層を2層や3層にするためには、上記の方法を2度または3度と繰り返すことにより形成することができる。また、上記の方法については、同じ方法を繰り返しても良く、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0073】
本発明のシート状物は、樹脂層の総厚みの50%以上100%以下が繊維構造物内に存在していることが重要である。その方法としては、塗布液の粘度の調整や、繊維構造物へ塗布後の乾燥し樹脂層形成までの時間、すなわち浸透時間による調整、およびニップ等による圧力による方法などにより調整することができる。
【0074】
以上から得られる本発明のシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感と通気性を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れており、従来スエード調人工皮革が用いられた用途である家具、椅子および車両内装材から衣料用途まで幅広く好適に用いることができる。
【実施例】
【0075】
次に、実施例を挙げて、本発明のシート状物についてさらに詳しく説明する。
【0076】
[測定方法および評価用加工方法]
(1)極細繊維の平均単繊維直径:
シート状物の表皮シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、単繊維直径を測定して100本の平均値を計算することにより算出した。異型断面の極細繊維を採用した場合には、極細繊維の外接円の直径を単繊維直径とし、同様に算出した。
【0077】
(2)樹脂層の繊維構造物内の存在比:
シート状物の平面方向および機械方向に垂直な断面を切り出し、断面が歪まないように試料台に設置した。続いて、走査型電子顕微鏡(SEM、キーエンス社製VE−7800)を用いて、シート状物の試料片の断面を300倍または500倍の倍率で異なる箇所について10枚撮影した。これらの各撮影像から、断面に並行な方向を水平とし、断面の立毛層側を上とし、他方の面を下としたときの、樹脂層の最高位置z1と、樹脂層の最低位置z2の2点間距離Z1を取得し、樹脂層の総厚みを算出した。さらに、樹脂層内部に存在する繊維の最高位置z3と樹脂層の最低位置z2の2点間距離Z2を算出し、下記の式により算出した。得られた10個の値の平均値を、樹脂層の繊維構造物内の存在比とした。
【0078】
樹脂層の繊維構造物内の存在比=(Z2/Z1)×100
(3)シート状物の表面触感評価:
シート状物の表面触感を、対象者10名の官能検査により評価した。天然ヌバックの緻密でウェットな触感と比較し、8名以上が、緻密でウェットな触感を有すると判定したものを(二重丸:◎)、5〜7名が判断したものを(一重丸:〇)、3〜4名が判定したものを(三角:△)、2名以下が判断したものを(×)と各々区分した。二重丸と一重丸を合格とした。この判定では、天然ヌバック調の触感を有するものが高い判定となる。
【0079】
(4)シート状物の表面立毛感評価:
シート状物の表面立毛感を、対象者10名の官能検査により評価した。天然スエードの立毛感と比較し、8名以上が、スエード調の立毛感を有すると判定したものを(二重丸:◎)、5〜7名が判断したものを(一重丸:〇)、3〜4名が判定したものを(三角:△)、2名以下が判断したものを(×)と各々区分した。二重丸と一重丸を合格とした。この判定では、天然スエード調の触感を有するものが高い判定となる。
【0080】
(5)シート状物表面の耐摩耗性評価:
評価するシート状物について、任意の1か所から直径120mmの大きさで円形状の試験片を1枚採取し、ASTM D3884の6.1項のテーバ摩耗試験法によって試験を行った。試験は、CS#10摩耗輪により、4.9Nで1000回転摩耗を行った後、シート状物表面の摩耗状態を観察し、試験前の表面状態と比較して、異常の程度を、次の評価に従い等級を判定した。本発明の評価においては、3級〜5級を合格とした。
・5級…試験前の状態と差が認められない。
・4級…わずかに表面樹脂層部の割れ、剥がれが認められるが、殆ど目立たない。
・3級…明らかに表面樹脂層部の割れ、剥がれが認められるが、目立たない。
・2級…やや著しい表面樹脂層部の割れ、剥がれがある。
・1級…著しく表面樹脂層部の割れ、剥がれがある。
【0081】
[実施例1]
<原綿>
島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が16島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率80/20で溶融紡糸した後、延伸し捲縮加工し、その後、51mmの長さにカットして海島型複合繊維の原綿を得た。
【0082】
<積層ウェブ(不織布)および織編物との積層シート>
上記の海島型複合繊維の原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層ウェブ(不織布)を形成し、織物貼り合わせ後の急激な幅変化による織物しわを抑えるために100本/cmのパンチ本数でニードルパンチした。別に、固有粘度(IV)が0.65の単成分からなる単糸で、撚数が2500T/mからなるマルチフィラメント(84dtex、72フィラメント)を緯糸に用い、固有粘度(IV)が0.65の単成分からなる単糸で、撚数が2500T/mからなるマルチフィラメント(84dtex、72フィラメント)を経糸として用い、織密度が経97本/2.54cmで、緯76本/2.54cmである平織物を製織した。得られた平織物を、前記の積層ウェブ(不織布)の上下に積層した。
【0083】
その後、2500本/cmのパンチ本数(密度)でニードルパンチを施し、目付が740g/mで、厚みが3.4mmの極細繊維発生型繊維からなる不織布と熱収縮性の織物からなる積層シートを得た。
【0084】
<繊維構造物>
前記の工程で得られた積層シートを、96℃の温度の熱水で処理して収縮させた後、PVA(ポリビニルアルコール)水溶液を含浸し、温度110℃の熱風で10分間乾燥することにより、積層シートの質量に対するPVA質量が7.6質量%のシート基体を得た。このようにして得られたシート基体を、トリクロロエチレン中に浸漬して海成分のポリスチレンを溶解除去し、平均単繊維繊度が4.4μmからなる極細繊維と平織物が絡合してなる脱海シートを得た。このようにして得られた極細繊維からなる不織布と平織物とからなる脱海シートを、固形分濃度を12%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に浸漬し、次いで、DMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを凝固させた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の温度の熱風で10分間乾燥することにより、島成分からなる極細繊維と前記の平織物の合計質量に対するポリウレタン質量が27質量%の繊維構造物の前駆体シートを得た。
【0085】
このようにして得られた繊維構造物の前駆体シートを厚さ方向に、その前駆体シート内部の不織布層を厚さ方向に対し垂直に半裁し、半裁したシート面をサンドペーパー番手320番のエンドレスサンドペーパーで研削して、表層部に立毛面を形成させ、厚み0.90mmの繊維構造物を得た。このようにして得られた繊維構造物を、液流染色機を用いて、120℃の温度の条件下で、収縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機で乾燥を行い、繊維構造物を得た。
【0086】
<樹脂層形成>
固形分濃度25%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液を、前記の工程で得られた繊維構造の立毛面にロータリーコーティング手法を1度、加工速度8m/minにて、樹脂層が40μmとなるよう塗布し、乾燥した後にシート状物を得た。得られたシート状物の表面は樹脂層部分が島状に点在しており、樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、樹脂部分の繊維構造物表面に占める割合は60%であった。また、樹脂層の総厚みに対し70%が繊維構造物内に存在していた。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、耐摩耗性に優れていた。結果を表1に示す。
【0087】
[実施例2]
<原綿>
島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が100島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率80/20で溶融紡糸した後、延伸し捲縮加工し、その後、51mmの長さにカットして海島型複合繊維の原綿を得た。
【0088】
<積層ウェブ(不織布)および織編物との積層シート〜繊維構造物>
上記の海島型複合繊維の原綿を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が0.3μmの繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
固形分濃度15%に調整したポリウレタンのDMF溶液を用いたことと、グラビアコーティング手法を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の表面は樹脂層部分が島状に点在しており、樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、樹脂部分の繊維構造物表面に占める割合は50%であった。また、樹脂層の総厚みに対し90%が繊維構造物内に存在していた。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、耐摩耗性に優れていた。結果を表1に示す。
【0089】
[実施例3]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様のものを用いた。
【0090】
<樹脂層形成>
固形分濃度25%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液を、前記の工程で得られた繊維構造の立毛面にロータリーコーティング手法を3度繰り返し、加工速度10m/minにて、樹脂層が3層構造で160μmとなるよう塗布し、乾燥した後にシート状物を得た。樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、樹脂部分の繊維構造物表面に占める割合は80%であった。また、樹脂層の総厚みに対し57%が繊維構造物内に存在していた。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、耐摩耗性に優れていた。結果を表1に示す。
【0091】
[実施例4]
<原綿>
島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が8島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率80/20で溶融紡糸した後、延伸し捲縮加工し、その後、51mmの長さにカットして海島型複合繊維の原綿を得た。
【0092】
<積層ウェブ(不織布)および織編物との積層シート〜繊維構造物>
上記の海島型複合繊維の原綿を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が7.0μmの繊維構造物を得た。
【0093】
<樹脂層形成>
固形分濃度25%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液を、前記の工程で得られた繊維構造の立毛面にロータリーコーティング手法を2度繰り返し、加工速度10m/minにて、樹脂層が2層構造で90μmとなるよう塗布し、乾燥した後にシート状物を得た。樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、樹脂部分の繊維構造物表面に占める割合は70%であった。また、樹脂層の総厚みに対し55%が繊維構造物内に存在していた。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、耐摩耗性に優れていた。結果を表1に示す。
【0094】
[比較例1]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様のものを用いた。
【0095】
<樹脂層形成>
固形分濃度30%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液を、前記の工程で得られた繊維構造の立毛面にロータリーコーティング手法を1度、加工速度15m/minにて、樹脂層が70μmとなるよう塗布し、乾燥した後にシート状物を得た。得られたシート状物の表面は樹脂層部分が島状に点在しており、樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、樹脂部分の繊維構造物表面に占める割合は50%であった。また、樹脂層の総厚みに対し34%が繊維構造物内に存在していた。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感であったものの、耐摩耗性が低いものであった。結果を表1に示す。
【0096】
[比較例2]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様のものを用いた。
【0097】
<樹脂層形成>
ロータリーコーティング手法で立毛面全体に、加工速度8m/minにて樹脂層が40μmとなるよう塗布し、乾燥した後にシート状物を得た。得られたシート状物の表面は樹脂層のみであり、樹脂部分の繊維構造物表面に占める割合は100%であった。また、樹脂層の総厚みに対し66%が繊維構造物内に存在していた。このようにして得られたシート状物は立毛感が感じられないものであったが、耐摩耗性は優れていた。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のシート状物は、家具や椅子の表皮材や壁材に、また、自動車、電車、航空機などの車輛室内における座席や天井、ピラー、ドアなどの表皮材として好適に用いることができる。さらにはシャツ、ジャケット、ズボン、鞄、ベルト、財布等、及びそれらの一部に使用した衣料用資材、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴、婦人靴等の靴のアッパー、トリム、また、アクセサリーケースやディスプレー用途として好適に用いることができる。