(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レジストパターンの前記凹部及び前記凸部に対応する凹凸構造を有するレジストパターン形成用モールドを用いて、前記レジストパターンを前記凸構造部の上面の前記パターン領域に形成する、請求項1に記載のインプリントモールドの製造方法。
前記レジストパターン形成用モールドにおいて前記凹凸構造を有する凹凸領域の大きさが、前記凸構造部の上面に物理的に包含される大きさである、請求項2に記載のインプリントモールドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本明細書に添付した図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりしている場合がある。
【0022】
本明細書等において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む範囲であることを意味する。
【0023】
本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
【0024】
〔インプリントモールドの製造方法〕
図1は、本実施形態に係るインプリントモールドの製造方法において用いられるマスターモールドの概略構成を示す切断端面図であり、
図2は、本実施形態に係るインプリントモールドの製造方法において用いられるインプリントモールド用基板の概略構成を示す切断端面図であり、
図3(A)及び
図3(B)は、本実施形態に係るインプリントモールドの製造方法において用いられるマスターモールドのパターン領域とインプリントモールド用基板の凸構造部との大きさの関係を示す平面図であり、
図4は、本実施形態に係るインプリントモールドの製造方法の各工程を切断端面図にて示す工程フロー図であり、
図5は、本実施形態に係るインプリントモールドの製造方法の各工程を切断端面図にて示す、
図4に続く工程フロー図であり、
図6は、本実施形態に係るインプリントモールドの製造方法の各工程を切断端面図にて示す、
図5に続く工程フロー図であり、
図7は、本実施形態に係るインプリントモールドの製造方法の各工程を切断端面図にて示す、
図6に続く工程フロー図であり、
図8は、本実施形態におけるインプリントモールド用基板の凸構造部上にレジストパターン及び反転層が形成された状態を概略的に示す部分拡大断面図である。
【0025】
[基板準備工程]
まず、マスターモールド10(
図1参照)及びインプリントモールド用基板20(
図2参照)を準備する。
図1に示すように、マスターモールド10は、第1面11A及びそれに対向する第2面11Bを有する基部11と、基部11の第1面11A上に設定されたパターン領域13内に形成されている凹凸パターン12とを備える。
図2に示すように、インプリントモールド用基板20は、第1面21A及びそれに対向する第2面21Bを有する基部21と、基部21の第1面21A側における平面視略中央部に位置し、当該第1面21Aから突出する凸構造部22と、基部21の第2面21B側における平面視略中央部に形成されてなる窪み部24とを備える。
【0026】
マスターモールド10の基部11を構成する材料は、特に限定されるものではなく、インプリントモールド用基材として一般的なものである。例えば、当該基部11は、インプリントモールドを製造する際に一般的に用いられている基板(例えば、石英ガラス、ソーダガラス、蛍石、フッ化カルシウム基板、フッ化マグネシウム基板、アクリルガラス等のガラス基板、ポリカーボネート基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板等の樹脂基板、これらのうちから任意に選択された2以上の基板を積層してなる積層基板等の透明基板;ニッケル基板、チタン基板、アルミニウム基板等の金属基板;シリコン基板、窒化ガリウム基板等の半導体基板等)により構成され得る。
【0027】
マスターモールド10の基部11の厚さT
11は、強度や取り扱い適性等を考慮し、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定され得る。なお、本実施形態において「透明」とは、波長300nm〜450nmの光線の透過率が85%以上であることを意味し、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
【0028】
マスターモールド10の基部11の大きさ(平面視における大きさ)も特に限定されるものではないが、当該基部11が石英ガラスにより構成される場合、例えば、当該基部11の大きさは152mm×152mm程度である。
【0029】
マスターモールド10の基部11の平面視形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、略矩形状、略円形状等が挙げられる。マスターモールド10が光インプリント用として一般的に用いられている石英ガラスにより構成される場合、通常、当該基部11の平面視形状は略矩形状である。
【0030】
マスターモールド10の基部11の第1面11A側に設定された略矩形状のパターン領域13内に形成されている凹凸パターン12の形状、寸法等は、本実施形態において製造されるインプリントモールド1(
図9,10参照)にて要求される形状、寸法等に応じて適宜設定され得る。例えば、凹凸パターン12の形状としては、ラインアンドスペース状、ピラー状、ホール状、格子状等が挙げられる。図示例において、凹凸パターン12は、第1面11A上に形成された複数の凹部と隣接する凹部間に位置する凸部とを有する凹状パターンである。また、凹凸パターン12の寸法は、例えば、10nm〜200nm程度であればよい。
【0031】
凹凸パターン12が形成されているパターン領域13の大きさは、インプリントモールド用基板20の凸構造部22の上面22Aに物理的に包含され得る大きさであって、当該凸構造部22の上面22Aの大きさよりも小さい。凸構造部22の上面22Aが略矩形状である場合(
図3(A)参照)、パターン領域13の大きさは、凸構造部22の外縁から0.4mm〜20mm程度内側に入る大きさである。一方、凸構造部22の上面22Aが略円形状である場合(
図3(B)参照)、パターン領域13のうち、凸構造部22の外縁から最も近い位置が、凸構造部22の外縁から0.3mm〜2mm程度内側に入る位置であり、凸構造部22の外縁から最も遠い位置が、凸構造部22の外縁から10mm〜30mm程度内側に入る位置である。パターン領域13の大きさは、インプリントモールド用基板20の凸構造部22の上面22Aに設定されるパターン領域231の大きさと略同一であり、凸構造部22の上面22Aには、パターン領域231を取り囲む外縁領域232が設定される。この外縁領域232は、凸構造部22の上面22Aが略矩形状である場合(
図3(A)参照)、凸構造部22の外縁における幅0.4mm〜20mm程度の領域であり、凸構造部22の上面22Aが略円形状である場合(
図3(B)参照)、凸構造部22の外縁における最小幅が0.3mm〜2mm程度、最大幅が10mm〜30mm程度の領域である。この外縁領域232が、後述する工程(
図7(C)参照)においてエッチングされる領域である。
【0032】
凹凸パターン12は、例えば、電子線リソグラフィー法、フォトリソグラフィー法等の公知の方法を用い、ネガ型又はポジ型の電子線反応性レジスト材料、紫外線反応性レジスト材料等により構成されるレジストパターンをマスクとしたエッチング処理を通じて作製され得る。
【0033】
インプリントモールド用基板20の基部21を構成する材料は、特に限定されるものではなく、インプリントモールド用基材として一般的なものである。例えば、当該基部21は、インプリントモールドを製造する際に一般的に用いられている基板(例えば、石英ガラス、ソーダガラス、蛍石、フッ化カルシウム基板、フッ化マグネシウム基板、アクリルガラス等のガラス基板、ポリカーボネート基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板等の樹脂基板、これらのうちから任意に選択された2以上の基板を積層してなる積層基板等の透明基板;ニッケル基板、チタン基板、アルミニウム基板等の金属基板;シリコン基板、窒化ガリウム基板等の半導体基板等)により構成され得る。
【0034】
インプリントモールド用基板20の基部21の厚さT
21は、強度や取り扱い適性等を考慮し、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定され得る。インプリントモールド用基板20の基部21の大きさ(平面視における大きさ)も特に限定されるものではないが、当該基部21が石英ガラスにより構成される場合、例えば、当該基部21の大きさは152mm×152mm程度である。
【0035】
インプリントモールド用基板20の基部21の平面視形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、略矩形状、略円形状等が挙げられる。本実施形態において製造されるインプリントモールド1(
図9、
図10参照)が光インプリント用として一般的に用いられる石英ガラスにより構成される場合、通常、当該基部21の平面視形状は略矩形状である。
【0036】
インプリントモールド用基板20の基部21の第1面21Aから突出する凸構造部22は、平面視において基部21(第1面21A)の略中央に設けられている。かかる凸構造部22の形状は、略矩形状(
図3(A)参照)、略円形状(
図3(B)参照)等を例示することができる。
【0037】
パターン領域231の大きさ(寸法)は、マスターモールド10のパターン領域13の大きさ(寸法)及びインプリントモールド1(
図9、
図10参照)を用いたインプリント処理を経て製造される製品等に応じて適宜設定される。また、外縁領域232の大きさ(幅)は、後述する工程において反転層形成材料をスピンコート法により塗布したときに反転層41の膜厚が増大する部分の幅等に応じて適宜設定される。したがって、凸構造部22の上面22Aの大きさは、パターン領域231及び外縁領域232の大きさによって適宜設定され得る。例えば、30mm×37mmの略矩形状の上面22A、直径42mm程度の略円形状の上面22Aを有する凸構造部22を挙げることができる。
【0038】
凸構造部22の高さT
22は、インプリントモールド1(
図9、
図10参照)が凸構造部22を備える目的を果たし得る限り、特に制限されるものではなく、例えば、10μm〜100μm程度に設定され得る。なお、本実施形態において、「凸構造部22の高さT
22」とは、基部21の第1面21Aを基準とした高さ、すなわち第1面21Aから凸構造部22の上面22Aまでの長さ(第1面21Aに対する垂直方向の長さ)を意味するものとする。
【0039】
本実施形態におけるインプリントモールド用基板20の基部21の第2面21B側には、凸構造部22に対向する窪み部24が形成されている。窪み部24が形成されていることで、凸構造部22の上面22Aを容易に湾曲させることができる。
【0040】
レプリカモールド用基板20の第2面21B側からの平面視における窪み部24の形状は、略円形であるのが好ましい。窪み部24の平面視形状が略円形であることで、凸構造部22の上面22Aを、略均一に湾曲させることができる。
【0041】
レプリカモールド用基板20の窪み部24は、当該窪み部24の外形を第1面21A側に投影した領域が、平面視における凸構造部22の外形を物理的に包含するように、第2面21B側に形成されている。
【0042】
レプリカモールド用基板20の窪み部24の深さT
24は、特に限定されるものではない。凸構造部22の上面22Aを効果的に湾曲させることができるように、窪み部24の深さT
24が設定される。
【0043】
本実施形態において、インプリントモールド用基板20の基部21の第1面21A及び凸構造部22の上面22Aには、ハードマスク層25が形成されている。ハードマスク層25を構成する材料としては、例えば、クロム、チタン、タンタル、珪素、アルミニウム等の金属;窒化クロム、酸化クロム、酸窒化クロム等のクロム系化合物、酸化タンタル、酸窒化タンタル、酸化硼化タンタル、酸窒化硼化タンタル等のタンタル化合物、窒化チタン、窒化珪素、酸窒化珪素等を単独で、又は任意に選択した2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
ハードマスク層25は、後述する工程(
図5(D)参照)にてパターニングされ、インプリントモールド用基板20をエッチングする際のマスクとして用いられるものである。そのため、インプリントモールド用基板20の種類に応じ、エッチング選択比等を考慮して、ハードマスク層25の構成材料を選択するのが好ましい。例えば、インプリントモールド用基板20が石英ガラス基板である場合、ハードマスク層25として金属クロム膜等が好適に選択され得る。
【0045】
ハードマスク層25の厚さは、インプリントモールド用基板20の種類に応じたエッチング選択比、製造されるインプリントモールド1における凹凸パターン4のアスペクト比等を考慮して適宜設定される。例えば、インプリントモールド用基板20が石英ガラス基板であって、ハードマスク層25が金属クロム膜である場合、ハードマスク層25の厚さは、1nm〜20nm程度に設定され得る。
【0046】
インプリントモールド用基板20の基部21の第1面21A及び凸構造部22の上面22Aにハードマスク層25を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スパッタリング、PVD(Physical Vapor Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)等の公知の成膜方法が挙げられる。
【0047】
[レジストパターン形成工程]
次に、インプリントモールド用基板20の凸構造部22(ハードマスク層25)上に、インクジェット法によりインプリント樹脂30の液滴を離散的に供給する(
図4(A)参照)。インプリント樹脂30の液滴は、マスターモールド10の凹凸パターン12のパターン密度等に応じて凸構造部22(ハードマスク層25)上に配置される。
【0048】
インプリント樹脂30にマスターモールド10の第1面11Aに形成されている凹凸パターン12を接触させる(
図4(B)参照)。そして、第1面11A及び凸構造部22の上面22A(ハードマスク層25)間にインプリント樹脂30を展開させ、インプリント樹脂30を硬化させることで、インプリント樹脂30にマスターモールド10の凹凸パターン12を転写する(
図4(B)参照)。
【0049】
インプリント樹脂30(レジスト材料)としては、特に限定されるものではなく、インプリント処理に一般的に用いられる樹脂材料(例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等)を用いることができる。インプリント樹脂30には、マスターモールド10を容易に引き離すための離型剤、インプリントモールド用基板20の凸構造部22の上面22A(ハードマスク層25)への密着性を向上させるための密着剤等が含まれていてもよい。
【0050】
続いて、硬化したインプリント樹脂30からマスターモールド10を引き離す(
図4(C)参照)。これにより、インプリントモールド用基板20の凸構造部22(ハードマスク層25)上に、マスターモールド10の凹凸パターン12が転写されてなり、複数の凹部311及び凸部312を有するレジストパターン31を形成することができる。レジストパターン31が有する凹部311及び凸部312は、マスターモールド10の凹凸パターン12が反転した形状を有する。図示例において、レジストパターン31は、複数の凸部312及び隣接する凸部312間に位置する凹部311を有する凸状パターンである。
【0051】
凸構造部22(ハードマスク層25)上に形成されたレジストパターン31の最も外側に位置する凹部311又は凸部312と、凸構造部22の外縁との間の距離D(第1面21Aに平行な方向における距離,
図4(C)参照)は、400μm〜20mm程度である。
【0052】
[反転層形成工程]
次に、インプリントモールド用基板20の凸構造部22(ハードマスク層25)上に形成されたレジストパターン31上に、当該レジストパターン31を被覆するように反転層形成材料をスピンコート法により塗布し、反転層41を形成する(
図5(A)参照)。スピンコート法により反転層41を形成すると、凸構造部22上に形成される反転層41の外周縁の膜厚TO
41がその内側の膜厚TI
41よりも増大する(
図8参照)。特に、凸構造部22の上面22Aが略矩形状である場合(
図3(A)参照)、反転層41の外周縁の膜厚TO
41のうち、当該凸構造部22の上面22Aの4つの角部の近傍における反転層41の膜厚は、当該上面22Aの4つの辺上に位置する反転層41の膜厚よりもさらに増大しやすい。同様に、第1面21A(凸構造部22の外側)上に形成される反転層41の外周縁の膜厚は、その内側の膜厚よりも増大する。この反転層41の膜厚のバラツキ(凸構造部22の上面22A、基部21の第1面21A上に形成される反転層41の外周縁の膜厚の増大)は、スピンコート法における塗布条件(例えば、回転数等)や、反転層形成材料の粘度等を調整することにより改善することはできるものの、凸構造部22の上面22A及び基部21の第1面21A上に均一な膜厚の反転層41を形成することは極めて困難である。なお、凸構造部22の上面22Aが略円形状である場合であっても同様に(
図3(B)参照)、反転層41の外周縁の膜厚TO
41がその内側の膜厚TI
41よりも増大するものの、反転層41の外周縁の膜厚TO
41は略一定である。
【0053】
反転層41を構成する反転層形成材料は、後述する工程において形成される反転層パターン42を構成する材料であり、当該反転層パターン42は、反転層41をマスクとしたレジストパターン31のエッチング処理により形成される(
図5(C)参照)。そのため、反転層形成材料としては、レジストパターン31を構成するインプリント樹脂30との間で十分なエッチング選択比を有する材料が用いられ得る。例えば、反転層形成材料としては、Si、SiO
2、SiN等のシリコン系化合物を含有する硬化性樹脂(例えば、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等)等が挙げられる。
【0054】
反転層41を構成する反転層形成材料としては、1mPa・s〜30mPa・s程度の粘度(25℃)を有するものが用いられ得る。反転層形成材料の粘度(25℃)が1mPa・s未満であると、レジストパターン31を被覆可能な程度の所定の膜厚で反転層41を形成することが困難になるおそれがあり、30mPa・sを超えると、スピンコート法により反転層41を形成することが困難になるおそれがある。
【0055】
反転層形成材料が電子線硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂を含む場合、レジストパターン31上に形成された反転層41を、所望により上方から平板が押し当てられた状態で硬化させてもよい。
図8に示すように、レジストパターン31上にスピンコート法により反転層形成材料を塗布すると、反転層41のうちのレジストパターン31の直上に形成される部分は相対的に均一な膜厚TI
41で形成される一方、凸構造部22の外縁近傍における反転層41の膜厚TO
41は、その内側の膜厚TI
41よりも増大してしまう。レジストパターン31上に塗布された反転層形成材料に平板を接触させることで、反転層41の上面を可能な限り平滑化することはできるものの、凸構造部22の外縁近傍における反転層41の膜厚TO
41の増大を抑制することは困難である。
【0056】
なお、反転層形成材料に押し当てる(接触させる)平板としては、特に限定されるものではなく、例えば、石英ガラス等の透明基板を用いてもよいし、金属基板等を用いてもよい。平板における反転層形成材料に押し当てられる(接触させる)側の面の表面粗さ(Ra)は0.1nm〜1.0nmであるのが好ましく、0.2nm〜0.5nmであるのがより好ましい。当該表面粗さ(Ra)が0.1nm未満の面を有する平板は、そもそも作製困難なものである。一方、上記表面粗さ(Ra)が1.0nmを超えると、製造されるインプリントモールド1の凹凸パターン4の寸法精度等が低下するおそれがある。平板における反転層形成材料に押し当てられる(接触させる)側の面には、硬化した反転層41からの引き離しを容易にするための離型層等が形成されていてもよい。
【0057】
[エッチング工程]
上述のようにして形成された反転層41は、レジストパターン31の凹部311に充填されているとともに、凸部312上にも存在する。この凸部312上に存在する反転層41を除去して凸部312の頂部を露出させるとともに、凹部311に充填されている反転層41を残存させるように、反転層41をエッチングする(
図5(B)参照)。
【0058】
反転層41をエッチングする方法としては、反転層41を構成する反転層形成材料の種類に応じて適宜選択され得るエッチングガスを用いたドライエッチング法を採用することができる。エッチングガスとしては、例えば、フッ素系ガス、酸素、アルゴン、酸素とアルゴンとの混合ガス等を用いることができる。
【0059】
続いて、凹部311に充填されている反転層41をマスクとしたドライエッチング法により、露出するレジストパターン31(凸部312)を除去する(
図5(C)参照)。上述したように、反転層41を構成する反転層形成材料は、レジストパターン31を構成するインプリント樹脂との間で十分なエッチング選択比を有する材料であるため、レジストパターン31(凸部312)の除去により、反転層パターン42を凸構造部22(ハードマスク層25)上に形成することができる。反転層パターン42は、レジストパターン31の凹凸構造が反転し、マスターモールド10の凹凸パターン12と同一の凹凸構造を有するパターンである。図示例において、反転層パターン42は凹状パターンである。
【0060】
レジストパターン31をエッチングするためのエッチングガスとしては、レジストパターン31を構成するインプリント樹脂30の種類に応じて適宜選択され得るが、例えば、塩素系ガス、酸素、アルゴン、酸素とアルゴンとの混合ガスを用いることができる。なお、レジストパターン31をエッチングするためのエッチングガスとして、反転層41をエッチングするためのエッチングガスと異なるガスを用いてもよいが、反転層41の構成材料(例えば、Si系化合物含有熱硬化性樹脂等)とレジストパターン31の構成材料(例えば、紫外線硬化性樹脂)との間におけるエッチング選択比が十分に大きいため、両者のエッチングガスとして同一のガスを用いてもよい。両者のエッチングガスとして同一のガスを用いることで、
図5(B)及び
図5(C)に示す工程を同一工程として実施することができる。
【0061】
[ハードマスクパターン形成工程]
上記反転層パターン42をマスクとして用い、例えば、塩素系(Cl
2+O
2)のエッチングガスを用いるドライエッチング処理によりインプリントモールド用基板20の凸構造部22の上面22Aに形成されているハードマスク層25をエッチングして、ハードマスクパターン26を形成する(
図5(D)参照)。
【0062】
続いて、ハードマスクパターン26上の反転層パターン42及びレジストパターン31をエッチング(ウェットエッチング等)により除去する(
図6(A)参照)。当該反転層パターン42を除去すると、凸構造部22の外縁近傍及び第1面21Aの外縁近傍に反転層41が残存する。ここからさらにエッチングを進め、残存する反転層41を除去しようとすると、ハードマスクパターン26の開口から露出するインプリントモールド用基板20(凸構造部22の上面22Aの一部)にダメージが入ってしまい、インプリントモールド1に形成される凹凸パターン4の寸法精度が低下してしまう。
【0063】
[インプリントモールド用基板のエッチング工程]
ハードマスクパターン26をマスクとしてインプリントモールド用基板20にドライエッチング処理を施し、凸構造部22の上面22Aに凹凸パターン4を形成する(
図6(B)参照)。図示例において、凹凸パターン4は凹状パターンである。インプリントモールド用基板20のドライエッチングは、当該インプリントモールド用基板20の構成材料の種類に応じて適宜エッチングガスを選択して行われ得る。エッチングガスとしては、例えば、フッ素系ガス等を用いることができる。なお、本実施形態において、反転層パターン42及びレジストパターン31を除去することなく、インプリントモールド用基板20にドライエッチング処理を施し、凸構造部22の上面22Aに凹凸パターン4を形成してもよい。すなわち、
図6(A)に示す工程は省略されてもよい。
【0064】
続いて、インプリントモールド用基板20の第1面21A及び凸構造部22を被覆するようにしてポジ型又はネガ型のフォトレジスト材料を塗布又はドライフィルムを貼付することでフォトレジスト膜50を形成し(
図6(C)参照)、当該フォトレジスト膜50の露光・現像処理を経て、凸構造部22の上面22Aに形成された凹凸パターン4及び第1面21Aの外縁近傍を被覆し、凸構造部22の外縁近傍を露出させるようにレジストパターン51を形成する(
図7(A))。なお、フォトレジスト膜50を形成する前に、インプリントモールド用基板20の第1面21A及び凸構造部22を被覆するハードマスク層(図示省略)を形成してもよい。
【0065】
本実施形態におけるインプリントモールド1において凹凸パターン4が形成されるパターン部3A(
図9、
図10参照)の寸法は、当該インプリントモールド1を用いたインプリント処理を経て製造される製品の仕様等に応じて適宜設定される。後述するように、当該パターン部3Aは、凹凸パターン4を被覆するレジストパターン51をマスクとしたエッチングにより形成される。すなわち、本実施形態におけるインプリントモールド1におけるパターン部3Aの大きさは、凹凸パターン4を被覆するレジストパターン51の寸法により決定される。したがって、凹凸パターン4を被覆するレジストパターン51の寸法は、本実施形態において製造されるインプリントモールド1において要求されるパターン部3Aの設計寸法に応じて適宜設定され得る。
【0066】
なお、本実施形態においては、凹凸パターン4及び第1面21Aの外縁近傍を被覆するレジストパターン51を形成しているが、この態様に限定されるものではない。レジストパターン51は、少なくとも凹凸パターン4を被覆し、凸構造部22の外縁近傍を露出させていればよく、第1面21Aの外縁近傍を被覆していなくてもよい。
【0067】
そして、レジストパターン51をマスクとして凸構造部22の外縁近傍において露出する反転層41、レジストパターン31及びハードマスク層25をエッチングして除去する。その後、レジストパターン51の開口から露出するインプリントモールド用基板20に、例えばフッ素系ガス等を用いたドライエッチング処理を施す(
図7(C))。これにより、第1面2A及びそれに対向する第2面2Bを有する基部2と、第1面2Aから突出する凸構造部3と、凸構造部3の上面に形成されてなる複数の凸部4A及び凹部4Bを有する凹凸パターン4とを備えるインプリントモールド1が製造される(
図9参照)。
【0068】
本実施形態に係るインプリントモールドの製造方法によれば、インプリントモールド用基板20の凸構造部22上のレジストパターン31を被覆する反転層41をスピンコート法により形成することで、少なくとも凹凸パターン4が形成されるパターン領域231上においては均一性の高い膜厚の反転層41を形成することができる。よって、当該反転層41から得られる反転層パターン42をマスクとしたエッチング処理により、高精度な凹凸パターン4を有するインプリントモールド1を製造することができる。
【0069】
一方で、反転層41をスピンコート法により形成することで、凸構造部22の外縁近傍においては、反転層41の膜厚が厚くなってしまうが、本実施形態に係るインプリントモールドの製造方法においては、凸構造部22の外縁近傍に残存する反転層41を除去し(
図7(B)参照)、当該反転層41が除去されることで露出する凸構造部22の外縁領域232には、凹凸パターン4が形成されることなく、当該外縁領域232はエッチングされる(
図7(C)参照)。よって、インプリントモールド1において必要とされる凸構造部(パターン部3A)を形成することができる。
【0070】
さらに、本実施形態に係るインプリントモールドの製造方法によれば、いわゆる反転プロセスを利用することで、凹凸パターン12としての凹状パターンを有するマスターモールド10を用いて、凹凸パターン4としての凹状パターンを有するインプリントモールド1を製造することができる。よって、マスターモールド10やインプリントモールド1をインプリント処理に繰り返し利用しても、凹凸パターン12,4の欠損等が生じ難く、マスターモールド10やインプリントモールド1の寿命を延ばすことができる。
【0071】
〔インプリントモールド〕
本実施形態において製造されるインプリントモールド1について説明する。
図9は、本実施形態におけるインプリントモールドの概略構成を示す切断端面図であり、
図10は、本実施形態におけるインプリントモールドの他の態様の概略構成を示す切断端面図である。
【0072】
本実施形態におけるインプリントモールド1は、第1面2A及びそれに対向する第2面2Bを有する基部2と、第1面2Aから突出する凸構造部3と、凸構造部3の上面に形成されてなる複数の凸部4A及び凹部4Bを有する凹凸パターン4とを備える。
【0073】
凸構造部3は、凹凸パターン4が形成されているパターン部3Aと、パターン部3Aよりも基部2の第2面2B側に位置し、第1面2A側からの平面視においてパターン部3Aを取り囲む外縁部3Bとを有する。基部2の第1面2Aには、凸構造部3を取り囲む第1領域5Aと、第1領域5Aを取り囲む第2領域5Bとが設定され、第1領域5Aは、第2領域5Bよりも基部2の第2面2B側に位置する。
【0074】
なお、
図9に示す態様においては、基部2の第1面2Aのうちの第2領域5Bにハードマスク層31及び反転層41の一部が残存しているが、
図10に示すように、本実施形態におけるインプリントモールド1は、それらのハードマスク層31及び反転層41が除去されてなるものであってもよい。
【0075】
このような構成を有するインプリントモールド1は、上述した本実施形態に係る製造方法(
図4〜
図7参照)によって製造されるため、高精度の凹凸パターン4を備えることができる。また、上記構成を有するインプリントモールド1によれば、パターン部3A(
図3(A)及び
図3(B)に示すパターン領域231に相当)サイズの精度が良好であることで、インプリントモールド1を用いたインプリント処理において高精度で凹凸パターン4を転写することができる。さらに、上記構成を有するインプリントモールド1によれば、パターン部3Aがドライエッチング処理により形成されることで、当該パターン部3Aの外縁部3Bからの立ち上がり角度がより鋭角(例えば80°〜92°程度)になり、その結果、パターン部3A(
図3(A)及び
図3(B)に示すパターン領域231に相当)の寸法精度が良好になり、使用する過程でインプリント性能を向上させ得る。
【0076】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0077】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら制限されるものではない。
【0078】
〔実施例1〕
第1面11A及びそれに対向する第2面11Bを有する基部11と、第1面11Aに形成された凹凸パターン12とを有するマスターモールド10と、第1面21A及びそれに対向する第2面21Bを有する基部21と、第1面21Aから突出する凸構造部22と、略矩形状の凸構造部22(
図3(A)参照)上に設けられた金属クロムからなるハードマスク層25とを具備する、石英ガラスからなるインプリントモールド用基板20とを準備した。インプリントモールド用基板20の凸構造部22(ハードマスク層25)上に紫外線硬化性樹脂30の液滴をインクジェット法により供給し、当該紫外線硬化性樹脂30の液滴にマスターモールド10を押し当てて凹凸パターン12を転写した。
【0079】
凸構造部22(ハードマスク層25)上に形成されたレジストパターン31上に、Siを含有する熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)からなる反転層形成材料をスピンコート法(塗布条件:1500rpm,15秒間)により塗布した後、110℃で10分間加熱して、塗布膜を硬化させて反転層41を形成した。凸構造部22上の反転層41の膜厚分布を確認したところ、凸構造部22の外周縁から内側0.5mmの範囲の膜厚TO
41が、その範囲よりも内側における膜厚TI
41に比べて100nm〜300nm程度厚く、凸構造部22の上面22Aの4つの角部近傍における反転層41の膜厚が、膜厚TI
41に比べて200nm〜500nm程度厚いことが確認された。これは、スピンコート法により反転層形成材料が塗布されると、凸構造部22上の外周縁において反転層41の盛り上がりが生じているためである。
【0080】
硬化した反転層41をマスクとしてレジストパターン31をエッチングにより除去し、インプリントモールド用基板20の凸構造部22上に反転層パターン42を形成した。このようにして形成された反転層パターン42の寸法精度を、寸法測定装置(アドバンテスト社製,LWM9000)を用いて計測・評価した。その結果、寸法精度(3σ)は、X方向で1nm、Y方向で2nmであった。
【0081】
〔比較例1〕
反転層形成材料をスリットコート法により塗布した以外は、実施例1と同様にして反転層パターン42を形成し、当該反転層パターン42の寸法精度を計測・評価した。その結果、寸法精度(3σ)は、X方向で3nm、Y方向で4nmであった。