(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本明細書において、「長手方向」とは、吸収性物品のうち、着用者の腹部側に位置する前身頃と着用者の背部側に位置する後身頃とを結ぶ方向を意味する。また、「幅方向」とは、吸収性物品の長手方向に平面的に直交する方向を意味する。
また、本明細書において、「肌対向面」とは、吸収性物品の着用時において着用者の肌に対向する面を意味する。また、「肌非対向面」とは、吸収性物品の着用時において着用者の肌に対向しない面を意味している。なお、本明細書において、「A〜B」とは、「A以上B以下」であることを意味する。
【0014】
本発明は、長手方向と、長手方向に直交する幅方向とを有し、吸収体と、吸収体よりも肌対向面側に位置するシート状の肌対向面側部材と、吸収体よりも肌非対向面側に位置するシート状の肌非対向面側部材と、を備える吸収性物品に関する。ここで、吸収体は、長手方向に沿って一対の屈曲溝を有し、肌非対向面側部材の少なくとも一部は、幅方向に沿って少なくとも1つのヒダ山を有するヒダ状部を備える。
【0015】
本発明の吸収性物品100は、その形態が特に制限されるものではないが、吸収性物品は、吸収性パッドであってもよく、このような吸収性パッドとしては、例えば、生理用ナプキンや尿とりパッドを挙げることができる。また、本発明の吸収性物品100は、使い捨ておむつに関するものであってもよい。
【0016】
図1は、本発明に係る吸収性物品100の実施形態を示した平面図である。
図1に示されるように、吸収性物品100は、着用者の腹部側に位置する前身頃1と、着用者の背部側に位置する後身頃2と、これらの間に位置する股下部3とに、長手方向に区分することができる。前身頃1、股下部3、後身頃2は、吸収性物品を長手方向に3等分にした際の各領域とすることもできる。また、吸収体31が、幅方向に狭くなった領域を有する場合は、その領域を含む部分を股下部3とし、股下部3の長手方向両隣の領域をそれぞれ前身頃1及び後身頃2とすることもできる。この股下部3を中心として、後身頃2から前身頃1にかけて、尿などの液体を吸収し保持するための吸収体31が配設されている。吸収体31は、吸収体31よりも肌対向面側に位置するシート状の肌対向面側部材32と、吸収体よりも肌非対向面側に位置するシート状の肌非対向面側部材33の間に挟着されている。尿などの排泄液は、肌対向面側部材32を透過して、吸収体31に吸収保持され、肌非対向面側部材33によって外部への漏出が阻止される。
【0017】
なお、
図1においては、吸収性物品100の幅方向は全領域で同一幅として描画したが、吸収性物品100の前身頃1と後身頃2には、幅方向の左右外側に延出する部位であるサイドフラップが設けられていてもよい。例えば、吸収性物品100がテープ型使い捨ておむつである場合は、必要に応じてサイドフラップの形状を変形してもよい。また、吸収性物品100がテープ型使い捨ておむつである場合、後身頃2のサイドフラップの幅方向の左右の側縁から延出するようにファスニングテープを取り付け、さらに、前身頃1にファスニングテープを止め付けるためのフロントパッチを取り付けてもよい。このような構成とすることで、吸収性物品100は、後身頃2を着用者の背部にあてがい、前身頃1を着用者の腹部にあてがった状態で、後身頃2に取り付けられているファスニングテープを、前身頃1に設けられたフロントパッチに止め付けることにより、着用者の身体に装着することができる。
【0018】
図2は、
図1に示したX−X線における吸収性物品100の断面構造を模式的に示した断面図である。
図2に示されるように、吸収性物品100は、基本的に、肌対向面側部材32と、肌非対向面側部材33と、これらの間に挟着されている吸収体31を備える。
図2の断面図に示されるように、吸収性物品100の幅方向の中央領域においては、肌対向面側から、肌対向面側部材32、吸収体31及び肌非対向面側部材33がこの順で積層されている。なお、
図1及び
図2に示されるように、吸収体31の周囲においては、肌対向面側部材32と肌非対向面側部材33の少なくとも一部が互いに接合されている。これにより、吸収体31は、肌対向面側部材32と肌非対向面側部材33の接合部によって周囲を囲われたものとなる。また、肌対向面側部材32と吸収体31の少なくとも一部は接合しており、肌非対向面側部材33と吸収体31の少なくとも一部は接合している。
【0019】
肌対向面側部材32は、吸収体31よりも肌対向面側に積層される部材である。肌対向面側部材32は、シート状の部材であることが好ましく、1層のシート状部材であってもよく、2層以上のシート状部材であってもよい。肌対向面側部材32としては、例えば、液透過性のトップシート32aを挙げることができる。トップシートを構成する液透過性材料としては、例えば、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。また、例えばポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル、ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。不織布としては、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布などを挙げることができる。
【0020】
肌非対向面側部材33は、吸収体31よりも肌非対向面側に積層される部材である。肌非対向面側部材33は、シート状の部材であることが好ましく、1層のシート状部材であってもよく、2層以上のシート状部材であってもよい。肌非対向面側部材33としては、例えば、液不透過性のバックシート33a及び/又はカバーシート33bを挙げることができる。
【0021】
バックシート33aは、トップシート32aを透過し吸収体31に吸収された液体が、吸収性物品100の外側へ漏出することを防止するための部材である。このため、バックシート33aは、液不透過性材料によって構成される。バックシート33aは、吸収体31の底面からの液漏れを防止するため、吸収体31を肌非対向面側から被覆する。バックシート33aを構成する不透過性材料の例は、ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。ただし、通気性を確保するために、0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0022】
カバーシート33bは、前身頃1、股下部3、及び後身頃2の外表面を覆うシートであり、バックシート33aを補強し、かつ、その手触りを良くするための部材である。カバーシート33bは、バックシート33aの肌非対向面側に貼り合わせられる。カバーシート33bを構成する材料としては、織布や不織布が用いられる。特に、カバーシート33bを構成する材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルのような熱可塑性樹脂からなる不織布又は湿式不織布を用いることが好ましい。
【0023】
図3(a)及び(b)に示されるように、吸収性物品100は、吸収体31の少なくとも一方の面に直接積層するコアラップシート35を有することが好ましく、吸収体31の少なくとも肌非対向面に直接積層するコアラップシート35を有することが好ましい。コアラップシート35は、吸収体31の両面に直接積層するものであることがより好ましく、吸収体31を被包するものであることがさらに好ましい。コアラップシート35としては、ティシュペーパー、吸収紙、親水化処理を行った不織布等を適宜用いることができる。
【0024】
なお、吸収性物品100がコアラップシート35を有する場合は、コアラップシート35のうち、吸収体31よりも肌対向面側に積層される部分は肌対向面側部材32に含まれることになる。また、コアラップシート35のうち、吸収体31よりも肌非対向面側に積層される部分は肌非対向面側部材33に含まれることになる。例えば、本明細書において、吸収体31が一連のコアラップシート35に被包される場合は、コアラップシート35の一部分は肌対向面側部材32を構成するシート状部材となり、コアラップシート35の一部分は肌非対向面側部材33を構成するシート状部材となり得る。
【0025】
本発明においては、肌非対向面側部材33の少なくとも一部は、幅方向に沿って少なくとも1つのヒダ山を有するヒダ状部を備える。ヒダ状部に形成されるヒダ山の数は1個であっても複数個であってもよいが、複数個であることが好ましい。ヒダ状部を構成するヒダ山は、肌対向面側及び/又は肌非対向面側に凸面を有する構造である。ヒダ山は幅方向に沿って形成されるものであるから、ヒダ山の頂部は、長手方向に延びている。なお、肌非対向面側部材33にはヒダ山によって中空部(線状体の通路)が形成されていてもよい。
【0026】
ヒダ状部を構成するヒダ山の高さは、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、2mm以上であることがさらに好ましい。また、ヒダ山の各々の高さは、5mm以下であることが好ましい。
【0027】
ヒダ状部は、肌非対向面側部材の幅方向に沿って、山折り(凸)と谷折り(凹)を交互に行うことで形成される。本発明の一実施形態においては、肌非対向面側部材の少なくとも一部は、弾性部材を有することが好ましく、ヒダ状部が形成される肌非対向面側部材の幅方向に平行となるように弾性部材を複数本配することで、ヒダ山の繰り返し構造(ヒダ状構造)を形成することもできる。なお、本発明においては、このように形成されるヒダ状構造をギャザーや凹凸構造と呼ぶこともできる。例えば、ヒダ状部を形成したい肌非対向面側部材に弾性部材を伸長した状態で固定し、その後に弾性部材を収縮させることで、ヒダ山の繰り返し構造(ヒダ状構造)を形成することができる。
【0028】
肌非対向面側部材の少なくとも一部が弾性部材を有する場合、該弾性部材は、幅方向に平行となるように複数本配されることが好ましい。この場合、弾性部材は、肌非対向面側部材の長手方向に1〜10mmの間隔となるように配されることが好ましい。これにより、肌非対向面側部材の所定の位置にヒダ状構造を形成しやすくなる。
【0029】
弾性部材としては、糸状の弾性ゴム材又は帯状の弾性ゴム材を適用することが好ましい。このようなゴム材としては、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、又はポリエステル等の素材を用いることができる。
【0030】
また、公知のプリーツ加工やしぼり加工によってもヒダ状部を形成することもできる。また、プレス加工で肌非対向面側部材に凹凸構造を形成してもよく、テンションコントロールで肌非対向面側部材にシワを形成することによってもヒダ状部を形成することができる。このようなヒダ状部は、肌非対向面側部材と吸収体を接合する前に形成される。なお、肌非対向面側部材として伸縮性を有する部材を用いる場合、肌非対向面側部材を伸長させた状態で吸収体に接着し、接着剤が乾く前に縮ませることでヒダ状部を形成してもよい。
【0031】
ヒダ状部は、肌非対向面側部材33に形成されるものであればよい。例えば、ヒダ状部は、肌非対向面側のコアラップシート35、バックシート33a及びカバーシート33bから選択される少なくとも1つに形成されることが好ましい。吸収性物品が、吸収体の少なくとも肌非対向面に直接積層するコアラップシートを有する場合は、コアラップシートが、幅方向にヒダ状部を有することが好ましい。また、肌非対向面側部材33の全てにヒダ状部が形成されてもよく、例えば、ヒダ状部は、肌非対向面側のコアラップシート35、バックシート33a及びカバーシート33bの全てにヒダ状部が形成されてもよい(
図3(a)及び(b))。
【0032】
ヒダ状部は、肌非対向面側部材の幅方向の一部に形成されるものであってもよい。この場合、一部にヒダ状部を有する肌非対向面側部材は、例えば、上述したような加工方法をシートの一部にのみ適用したり、ヒダ状部を有するシートを部分的に貼り合わせたりすることで形成することができる。ヒダ状部が肌非対向面側部材の幅方向の一部に形成されるものである場合、ヒダ状部は、屈曲溝に重畳する領域に形成されることが好ましい。
【0033】
肌非対向面側部材33と吸収体31は、接触箇所の一部で接合していてもよいが、接触箇所の全面で接合していることが好ましい。肌非対向面側部材33と吸収体31の接触箇所の全面を接合することで、肌非対向面側部材33が吸収体31の動きに追従しやすくなり、屈曲形状を形成及び維持しやすくなる。
【0034】
吸収体31は、着用者の尿や体液を吸収し保持するために、吸収性材料によって構成される。吸収性材料としては、例えば、フラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;「SAP」)、親水性シート等を採用することができる。フラッフパルプの例は、木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したものである。高吸水性ポリマーの例は、ポリアクリル酸ナトリウムである。親水性シートとしては、例えば、ティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布を用いることができる。吸収性材料には、フラッフパルプ、高吸水性ポリマー、又は親水性シートのうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組合せて併用することとしてもよい。
【0035】
吸収体31は、長手方向に沿って一対の屈曲溝60を有する。屈曲溝60は、長手方向に沿って延びる一対の溝であればよい。本明細書において、屈曲溝60とは、一部又は全部が凹部で構成されるものをいう。
【0036】
屈曲溝60は、長手方向に平行に配設されることが好ましい。また、屈曲溝60は、吸収体31の幅方向の中心線Cを挟んで対となるように形成されることが好ましく、一対の屈曲溝60は吸収体31の幅方向の中心線Cを対称軸として線対称に配設されることが好ましい。
また、屈曲溝60は、吸収体31の長手方向中心線よりも前身頃1側に屈曲溝60の中点がくるように配設されてもよいが、吸収体31の長手方向中心線上に屈曲溝60の長手方向の中点がくるように配設されることが好ましい。すなわち、屈曲溝60は、股下部3を中心とした領域に配設されることが好ましい。
【0037】
屈曲溝60の長手方向長さは、吸収体の長手方向の全長に対して10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。また、屈曲溝60の長手方向長さは、吸収体の長手方向の全長に対して70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
屈曲溝60の幅は、1〜10mmであることが好ましく、1〜5mmであることがより好ましい。なお、屈曲溝60の幅は、屈曲溝60の深さ方向において同一幅であってもよく、屈曲溝60の深さ方向に沿って幅が狭くなっていてもよい。なお、屈曲溝60の深さ方向に沿って幅が狭くなっている場合は、上記の屈曲溝60の幅は、屈曲溝60の最大幅である。
【0039】
屈曲溝60は、1本ずつ対となった合計2本の屈曲溝であることが好ましいが、複数本ずつ配置された一対の屈曲溝であってもよい。例えば、屈曲溝60は、2本が一組となり、該組が対となった合計4本の屈曲溝60であってもよい。屈曲溝の本数は、2本以上6本以下であることが好ましい。
【0040】
吸収体31において、屈曲溝60が形成される領域の幅方向最短距離をLmmとした場合、対を構成する屈曲溝60間の幅方向の距離は、0.2×Lmm〜0.8×Lmmであることが好ましく、0.2×Lmm〜0.5×Lmmであることがより好ましい。なお、対の各々が複数の屈曲溝60で構成される場合、屈曲溝60間の幅方向の距離は、吸収体31の幅方向の最も外側に位置する屈曲溝60間の距離である。屈曲溝60間の幅方向の距離を上記範囲内とすることにより、屈曲形状が形成されやすくなり、装着感をより高めることができる。
【0041】
屈曲溝60は長手方向に延びる直線状の溝であることが好ましい。但し、屈曲溝60に沿って、吸収性物品100が屈曲できるようであれば、弓形状であってもよく、蛇行していてもよい。
【0042】
屈曲溝60は、吸収体31にのみ形成されるものであってもよく、吸収体31と肌対向面側部材32の両方に形成されるものであってもよい。例えば、屈曲溝60は、
図3(a)に示されるように、吸収体31と、吸収体31よりも肌対向面側に積層されるコアラップシート35に凹部を形成することで得られるものであってもよい。また、屈曲溝60は、
図3(b)に示されるように、吸収体31と、吸収体31よりも肌対向面側に積層されるコアラップシート35、及びトップシート32aに凹部を形成することで得られるものであってもよい。
【0043】
屈曲溝60は、該屈曲溝部分の吸収体の坪量を減らすことや、吸収体31にエンボス加工(圧搾)を施すことで形成することができる。屈曲溝60部分の吸収体の坪量を減らす場合は、吸収体31を構成する吸収性材料を所定形状のシート状にする工程で用いられるフォーミングドラムが、屈曲溝60の形状に応じた凹凸面をドラム外周に備えていることが好ましい。フォーミングドラムでは、ドラム内部に向かって吸引を行うため、ドラム外周の凹凸面に沿った屈曲溝60が形成された吸収体31が得られる。その後、吸収体31は肌対向面側部材32及び肌非対向面側部材33で挟着される。
【0044】
吸収体31にエンボス加工(圧搾)を施すことで屈曲溝60が形成される場合は、吸収体31の肌対向面側、肌非対向面側、又は両面側からエンボス加工を施してもよい。エンボスロールには、屈曲溝60の形状に応じた凹凸が形成されており、肌対向面側からエンボスロールを回転しながら押し当てることにより、吸収体31に屈曲溝60を形成することができる。なお、エンボス加工は、肌対向面側部材32(トップシート32a)を積層した状態で施されてもよく、エンボス加工工程において、肌対向面側部材32と吸収体31の接着を同時に行ってもよい。また、エンボス加工工程においては、肌非対向面側部材33と吸収体31の接着を同時に行ってもよい。
【0045】
なお、本発明においては、屈曲溝60は、エンボス加工により形成することが好ましい。このように形成された屈曲溝60においては、屈曲溝60の肌非対向面側の吸収性材料の密度が高くなるため、屈曲溝60に沿って、吸収性物品100が屈曲しやすくなる。すなわち、所定の位置で精度よく屈曲することが可能となる。また、このようなエンボス加工は、吸収体31の肌対向面側から施されることが好ましい。すなわち、屈曲溝60は、肌対向面側に存在するものであることが好ましい。
【0046】
装着時には、吸収性物品100は、一対の屈曲溝60に沿って屈曲する。その際、吸収性物品100の幅方向の断面形状がW字状となるように変形してもよく、吸収性物品100の幅方向の断面形状が凹字状となるように変形してもよい。吸収性物品100の幅方向の断面形状が凹字状となる場合、屈曲溝60に挟まれた領域が直線状になる。本発明においては、吸収性物品100が一対の屈曲溝60を有し、かつ肌非対向面側部材33の少なくとも一部は、幅方向にヒダ状部を有することにより、上述したような屈曲形状が形成されやすく、かつ形成された屈曲形状が維持されやすい。肌非対向面側部材33が幅方向にヒダ状部を有することにより、吸収性物品100の着用時に肌非対向面側部材33が吸収体31の形状変化に容易に追従することができるため、吸収体31は屈曲形状を形成しやすくなり、かつ形成された屈曲形状は解消されにくくなる。また、肌非対向面側部材33が幅方向にヒダ状部を有することにより、屈曲形状を解消する方向に働く肌非対向面側部材33の張力を弱めることもできるため、より、屈曲形状は維持されやすくなる。
以上のように、吸収性物品100の着用時に吸収体31の形状が容易に屈曲し、かつ屈曲形状が維持されることにより排泄液の漏れを効果的に防ぐことができる。また、屈曲形状が維持されることにより、排泄液を複数回吸収する場合であっても、排泄液を確実に吸収することができる。さらに、屈曲形状が維持されることにより、着用時の装着感が損なわれることもない。
【0047】
中でも、吸収性物品100は、
図4に示されるように、一対の屈曲溝60に沿って屈曲し、吸収性物品100の幅方向の断面形状がW字状となるように変形することが好ましい。この場合、吸収性物品100が一対の屈曲溝60を有することにより、各屈曲溝60の周辺部分がそれぞれ肌非対向面側に向けて凸状となるように屈曲し、これにより、吸収性物品100の幅方向の中央領域は着用者の排泄口に向けて凸状となる。このように、吸収性物品100がW字状に屈曲することにより中央領域が着用者の排泄口に密着しやすくなり、排泄液の漏れをより効果的に防ぐことができる。さらに、W字状の屈曲形状が維持されることにより、着用時の装着感やフィット性をより高めることができる。なお、本明細書において、吸収性物品100の幅方向の中央領域とは、一対の屈曲溝60に挟まれた領域である。
【0048】
吸収体31の周囲においては、肌対向面側部材32と肌非対向面側部材33の少なくとも一部は互いに接合している。また、吸収体31と肌対向面側部材32の接触面は少なくとも一部で接合しており、吸収体31と肌非対向面側部材33の接触面は少なくとも一部で接合している。吸収体31にコアラップシート35が積層している場合は、吸収体31とコアラップシート35の接触面は、少なくとも一部で接合している。接合方法は、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着であってもよいし、ヒートシールのような熱や超音波等による溶着であってもよい。
【0049】
肌対向面側部材32と吸収体31は、接触する全領域において接合されていることが好ましい。一方で、屈曲溝60の肌非対向面側には部材間に非接合領域が存在することが好ましい。例えば、吸収体31の屈曲溝60の肌非対向面側に、吸収体31とコアラップシート35が接合していない非接合領域や、コアラップシート35とバックシート33aが接合していない非接合領域を設けることも好ましい態様である。なお、屈曲溝60の肌非対向面側とは、
図2等の断面図における屈曲溝60の下部に位置する領域であり、屈曲溝60の断面積と厚み方向で重なる部分である。屈曲溝60の断面積とは、屈曲溝の幅が最大となる断面積をいう。
【0050】
屈曲溝60の肌非対向面側の部材間に非接合領域が存在する場合は、非接合領域は、屈曲溝60の下部の少なくとも一部に存在していればよい。すなわち、非接合領域の面積は屈曲溝60の断面積よりも小さくてもよい。一方で、屈曲溝60の下部の全領域が非接合領域であってもよい。例えば、非接合領域の面積は、屈曲溝60の断面積と同じ面積であってもよく、非接合領域と屈曲溝は厚み方向において重なり合うものであってもよい。また、非接合領域の面積は、屈曲溝60の断面積よりも大きくてもよい。
なお、本明細書においては、非接合領域とは隣り合う部材間が接合していない領域をいう。非接合領域において、隣接する部材間が接触している場合であっても、部材間に接着等の物理的接合がない場合、該領域は非接合領域と呼ぶ。
【0051】
本発明においては、屈曲溝60の肌対向面側では、吸収体31と肌対向面側部材32が接合していることが好ましい。ここで、屈曲溝60の肌対向面とは、屈曲溝60の側壁及び底壁から構成される面である。なお、屈曲溝60の厚み方向の断面形状は∨字形状であってもよく、この場合、吸収体31において屈曲溝60の肌対向面は、側壁からなる面である。すなわち、屈曲溝60の凹部の内側(内壁)では、吸収体31と肌対向面側部材32が接合していることが好ましい。
【0052】
吸収体31の肌対向面にコアラップシート35が直接積層している場合、
図3(a)に示されるように、屈曲溝60の肌対向面側では、吸収体31とコアラップシート35が接合していることが好ましい。なお、
図3(a)に示されるように、肌対向面側部材32であるトップシート32aは、屈曲溝60の肌対向面側でコアラップシート35に接合しておらず、屈曲溝60の凹部内壁とトップシート32aの間には隙間があってもよい。また、吸収体31の肌対向面にコアラップシート35が直接積層している場合、
図3(b)に示されるように、屈曲溝60の肌対向面側では、全ての肌対向面側部材32が吸収体31と直接又は間接的に接合していることが好ましい。具体的には、屈曲溝60の肌対向面側では、吸収体31とコアラップシート35が接合しており、さらに、該接合領域のコアラップシート35上にトップシート32aが接合している。
図3(b)に示されるように、屈曲溝60の肌対向面側で、全ての肌対向面側部材32が吸収体31と直接又は間接的に接合することで、吸収体31の屈曲性をより効果的に高めることができ、屈曲位置の精度を高めることができる。また、屈曲溝60の肌対向面側で、全ての肌対向面側部材32が吸収体31と直接又は間接的に接合することで、肌対向面側部材32に意図しないシワ等が発生することを抑制することができる。
【0053】
本発明においては、一対の屈曲溝60に挟まれた吸収体31の中央領域と、吸収体31の中央領域に積層する肌対向面側部材32及び肌非対向面側部材33、の各接触面が少なくとも一部で接合していることが好ましく、吸収体の幅方向の中心線Cを含む領域で接合していることがより好ましい。一対の屈曲溝60に挟まれた吸収体31の中央領域は、吸収体の幅方向の中心線Cを含む領域であり、着用者の排泄口に向けて凸状となる部分である。この中央領域では、少なくとも一部で、肌対向面側部材32、吸収体31、及び肌非対向面側部材33の全てが互いに接合していることが好ましい。なお、一対の屈曲溝60に挟まれた中央領域の全ての領域で、肌対向面側部材32、吸収体31、及び肌非対向面側部材33が互いに接合していてもよいが、中央領域の一部の領域で肌対向面側部材32、吸収体31、及び肌非対向面側部材33が互いに接合していてもよい。例えば、一対の屈曲溝60に挟まれた中央領域のうち、幅方向の中心線の周辺領域のみにおいて、肌対向面側部材32、吸収体31、及び肌非対向面側部材33が互いに接合していてもよく、一対の屈曲溝60に挟まれた中央領域の長手方向に間欠的に肌対向面側部材32、吸収体31、及び肌非対向面側部材33の接合部位が設けられてもよい。
【0054】
本発明においては、吸収性物品100は、吸収性物品100の幅方向の中央領域に、上述した屈曲溝とは異なる別の溝構造を有していてもよい。
【0055】
本発明の吸収性物品100は、長手方向に延びる一対のサポート弾性部材50を有していてもよい。サポート弾性部材50は、例えば、天然ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性材からなるゴム、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)を採用することができる。サポート弾性部材は、吸収性物品100の他の構成部材に対して、接着剤やその他の手段により固定される。固定方法としては、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着であってもよいし、ヒートシールのような熱や超音波等による溶着であってもよい。また、サポート弾性部材50は縫合によって吸収性物品100の他の構成部材に固定されてもよい。
【0056】
図5は、サポート弾性部材50を有する吸収性物品100の実施形態を示す展開図である。
図5においては、本来視認されないサポート弾性部材50を二点鎖線で示している。サポート弾性部材50の少なくとも一部は、吸収体31と重畳していることが好ましい。サポート弾性部材50の少なくとも一部が吸収体31と重畳している状態とは、吸収性物品100を
図5のように展開し、平面視した際、厚み方向においてサポート弾性部材50の少なくとも一部が吸収体31の領域内に存在することをいう。なお、
図5に示されるように、サポート弾性部材50の全部が吸収体31と重畳していることがより好ましい。また、
図5に示されるように、サポート弾性部材50は、一対の屈曲溝60の幅方向外側の吸収体31の側端領域に重畳していることが好ましい。サポート弾性部材50を吸収体31の側端領域に重畳させることにより、屈曲形状をより維持しやすくなる。
【0057】
サポート弾性部材50は、吸収性物品100において長手方向に延びる部材であり、サポート弾性部材50が固定される構成部材は特に限定されない。例えば、サポート弾性部材50は、吸収体31とトップシート32aの間に設けられてもよく、吸収体31とバックシート33aの間に設けられてもよい。また、サポート弾性部材50は、バックシート33aとカバーシート33bの間に設けられてもよい。中でも、サポート弾性部材50は、吸収体31よりも肌非対向面側に設けられることが好ましい。但し、サポート弾性部材50は、外表面に露出していないことが好ましい。すなわち、サポート弾性部材50は、カバーシート33bと、吸収体31の間に配設されることが好ましく、カバーシート33bとバックシート33aの間に配設されることが特に好ましい。これにより、サポート弾性部材50は、装着状態において、吸収体31を肌面側に持ち上げて、吸収体31の屈曲形状を支持しやすくなる。
【0058】
図6は、本発明の吸収性物品100を展開した状態で分解した分解図である。
図6に示されるように、本実施形態における吸収性物品100は外側から順にカバーシート33bと、バックシート33aと、コアラップシート35を有する吸収体31と、着用者の肌に触れるトップシート32aとを順に重ねて接合したものである。各構成部材を重ねて接合する際には、
図6において一点鎖線で表されている中心線(C
11〜C
16)がそれぞれ重なるように積層して接合する。
図6においては、サポート弾性部材50は、バックシート33aとカバーシート33bの間に設けられており、サポート弾性部材50は、カバーシート33bに固定されている。なお、
図6においては、吸収体31は、その両面に直接積層するコアラップシート35を有しており、肌非対向面に積層するコアラップシート35は、ヒダ状構造(ヒダ状部)を有している。また、
図6では、バックシート33a及びカバーシート33bもヒダ状構造(ヒダ状部)を有している例を描画している。
【0059】
本発明においては、サポート弾性部材50の固定領域では、肌対向面側部材32、吸収体31及び肌非対向面側部材33の各接触面が接合していることが好ましい。ここで、サポート弾性部材50の固定領域とは、サポート弾性部材50が吸収性物品100の他の構成部材に固定されている領域の最大範囲をいう。例えば、サポート弾性部材50がカバーシート33bに固定されている場合、サポート弾性部材50の固定領域とは、サポート弾性部材50がカバーシート33bに固定されている領域の最大範囲をいう。なお、サポート弾性部材50とカバーシート33bが間欠的に固定されている場合には、両末端の固定部の最末端間に位置する領域を固定領域という。また、サポート弾性部材50の対の各々が2本以上の弾性部材で構成されている場合は、2本以上の弾性部材のうち、最も外側と最も内側に存在する弾性部材間の領域を固定領域という。本発明においては、サポート弾性部材50の固定領域では、肌対向面側部材32、吸収体31及び肌非対向面側部材33の各接触面が接合していることにより、サポート弾性部材50は、吸収体31の屈曲形状をより支持しやすくなる。
【0060】
サポート弾性部材50を他の構成部材に固定する際には、サポート弾性部材50を伸長した状態で他の構成部材に固定する。この際、サポート弾性部材50の少なくとも一部が固定される。固定された後には、サポート弾性部材50は収縮し、その際に皺(ギャザー)が形成される。本明細書においては、サポート弾性部材50が収縮した際に形成される皺(ギャザー)をサポートギャザーと呼ぶ。サポートギャザーは、吸収体31を長手方向に収縮させる方向に力をかけることで、吸収体31を着用者の肌面側に持ち上げて、吸収体31を支持する。
【0061】
サポート弾性部材50の固定領域の長手方向長さは、吸収体の長手方向の全長に対して30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。また、サポート弾性部材50の固定領域の長手方向長さは、吸収体の長手方向の全長に対して99%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましく、75%以下であることが特に好ましい。
【0062】
サポート弾性部材50の長手方向長さは、屈曲溝60の長手方向長さよりも長いことが好ましい。また、サポート弾性部材50の固定領域の長手方向長さは、屈曲溝60の長手方向長さよりも長いことがより好ましい。例えば、サポート弾性部材50の固定領域の長手方向長さをSとし、屈曲溝60の長手方向長さをTとした場合、S/Tの値は、1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。
【0063】
サポート弾性部材50は長手方向に延びる一対の部材であり、長手方向に平行に配設されることが好ましい。但し、サポート弾性部材50は上述したようなサポートギャザーを形成し得るように収縮力を発揮できれば、必ずしも長手方向に平行に配設される必要はなく、蛇行していてもよく、また弓形状であってもよい。
【0064】
サポート弾性部材50は、1本ずつ対となった合計2本の弾性部材であってもよいが、複数本ずつ配置された一対の弾性部材であることが好ましい。例えば、サポート弾性部材50は、2本が一組となり、該組が対となった合計4本の弾性部材であってもよく、3本が一組となり、該組が対となった合計6本の弾性部材であってもよい。合計の弾性部材の本数は、2本以上20本以下であることが好ましく、2本以上10本以下であることがより好ましい。
【0065】
本発明の吸収性物品100は、拡散溝65をさらに有していてもよく、吸収体31の非屈曲領域に拡散溝65をさらに有することが好ましい。ここで、吸収体31の長手方向における非屈曲領域とは、吸収体31が有する屈曲溝60の長手方向端部から吸収体31の長手方向端部までの領域であり、非屈曲領域は吸収体31に2領域存在している。なお、非屈曲領域は、屈曲溝60が延在していない領域であるが、非屈曲領域においても屈曲溝60に沿って形成される屈曲形状が形成されていてもよい。
【0066】
吸収体31の長手方向における非屈曲領域では、拡散溝65以外の領域を平坦部と呼ぶことができる。拡散溝とは、一部又は全部が凹部で構成されるものをいう。
【0067】
拡散溝65は、吸収体31において、排泄液の流路として機能する。すなわち、拡散溝65は液体流路と呼ぶこともできる。吸収体31にこのような拡散溝65を設けることにより、拡散溝65は毛管力を発揮することができる。ここで、毛管力とは、排泄液を拡散溝65に沿って流通され得る力である。これにより、吸収体31は排泄液を流路に沿って拡散させることができ、大量に排泄される排泄液を吸収体31の広範な領域で素早く吸収することができる。また、吸収体31を構成する吸収性材料の一部にのみ排泄液の吸収が偏ることなく、吸収性材料による排泄液の吸収を効率よく行うことができる。
【0068】
また、吸収体31の非屈曲領域に拡散溝を設けることにより、吸収体自体の剛性に起因する違和感を低減することもできる。特に、吸収体31の非屈曲領域に溝部を設けることで、腹部や背部における吸収体の違和感を低減することができる。また、腹部や背部において、吸収体31と肌の接触面積を少なくすることができるため、べたつき感やそれに伴う違和感を解消することができる。さらに、拡散溝が通気溝としても作用するため、吸収体装着時のムレを低減することができる。
【0069】
図7は、吸収体31が有する拡散溝65の構成パターンの一例を説明する平面図である。拡散溝65は吸収体31の長手方向に間欠的または連結的に形成されるものである。
図7では、直線状の拡散溝65が複数本設けられており、拡散溝65に外周を囲われた格子状の平坦部が形成されている。また、
図7では、拡散溝65は吸収体31の長手方向に連結的に形成されている。
【0070】
吸収性物品100は、吸収性パッドであってもよく、このような吸収性パッドとしては、例えば、生理用ナプキンや尿とりパッドを挙げることができる。また、本発明の吸収性物品100は、使い捨ておむつに関するものであってもよい。また、吸収性パッドをパンツ型やテープ型の使い捨ておむつの内面側に重ねて使用することも可能である。
【0071】
使い捨ておむつは、パンツ型の使い捨ておむつとテープ型の使い捨ておむつに大別される。パンツ型の使い捨ておむつは、前身頃と後身頃の両側部が予め接合された構成の使い捨ておむつである。パンツ型の使い捨ておむつは、それぞれ別体として形成された前身頃外装体と後身頃外装体の間を、吸収部本体が架橋する構成を有する架橋タイプのものであってもよい。また、パンツ型の使い捨ておむつは、前身頃から股下部を通って後身頃に掛けて一体的に形成された外装体に、股下部を中心として吸収部本体を固定した一体タイプのものであってもよい。テープ型の使い捨ておむつは、前身頃又は後身頃の両側部に接合テープが取り付けられているもので、着用時に接合テープを利用して前身頃と後身頃を接合させるタイプの使い捨ておむつである。
吸収性物品100が使い捨ておむつ等である場合、他の構成部材は公知の構成を適宜採用することができる。