(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972622
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
H01L23/36 D
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-74069(P2017-74069)
(22)【出願日】2017年4月3日
(65)【公開番号】特開2018-181893(P2018-181893A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】磯 亜紀良
【審査官】
豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−228278(JP,A)
【文献】
特開2013−251473(JP,A)
【文献】
特開2017−017217(JP,A)
【文献】
特開2011−073950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
23/34 −23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
25/00 −25/07
25/10 −25/11
25/16 −25/18
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを搭載した積層基板が接合されたベース板と、
前記ベース板に、サーマルペーストおよび金属リングを介して取り付けられたヒートシンクと、
を備え、
前記金属リングの中穴は、前記半導体チップと対向する部分に設けられ、前記中穴の部分に前記サーマルペーストが充填され、
前記金属リングは、前記ヒートシンクと同程度の硬度の材料、または、より硬度が低い材料で形成され、前記ヒートシンクの表面の凹凸に沿ってつぶれていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記金属リングは、前記ヒートシンクより熱伝導率がよい材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ヒートシンクは、SUS(ステンレス鋼)で形成され、前記金属リングは、銅、アルミニウムもしくはこれらを一つ以上含む合金で形成される、または、
前記ヒートシンクは、銅もしくは銅を含む合金で形成され、前記金属リングは、銅、アルミニウムもしくはこれらを一つ以上含む合金で形成される、または、
前記ヒートシンクは、アルミニウムもしくはアルミニウムを含む合金で形成され、前記金属リングは、アルミニウムもしくはアルミニウムを含む合金で形成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ベース板は、マグネシウム合金に炭化珪素が含まれる複合材からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ベース板は、前記金属リングと接触する部分に、途切れのない突起が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ベース板は、前記金属リングと接触する部分に、途切れのない溝が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記金属リングは、前記ベース板と接触する部分および前記ヒートシンクと接触する部分のいずれか一つまたは両方に、途切れのない突起が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記金属リングは、断面が楕円形であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項9】
半導体チップを搭載した積層基板をベース板に接合する第1工程と、
前記ベース板またはヒートシンクに、サーマルペーストを塗布する第2工程と、
前記ベース板またはヒートシンクに、前記サーマルペーストの厚さ以下の厚さの、前記半導体チップと対向する部分に中穴が設けられた金属リングを、前記中穴の部分に前記サーマルペーストが充填されるように取り付ける第3工程と、
前記ベース板とヒートシンクの間に、前記サーマルペーストおよび前記金属リングを挟んで前記ヒートシンクを取り付ける第4工程と、
を含み、
前記金属リングは、前記ヒートシンクと同程度の硬度の材料、または、より硬度が低い材料で形成され、前記ヒートシンクの表面の凹凸に沿ってつぶれていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記金属リングは、前記ヒートシンクより熱伝導率がよい材料で形成されていることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記ヒートシンクは、SUS(ステンレス鋼)で形成され、前記金属リングは、銅、アルミニウムもしくはこれらを一つ以上含む合金で形成される、または、
前記ヒートシンクは、銅もしくは銅を含む合金で形成され、前記金属リングは、銅、アルミニウムもしくはこれらを一つ以上含む合金で形成される、または、
前記ヒートシンクは、アルミニウムもしくはアルミニウムを含む合金で形成され、前記金属リングは、アルミニウムもしくはアルミニウムを含む合金で形成されることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記金属リングは突起を有し、
前記突起の高さは、前記金属リングの突起のない部分の厚さの半分以下であり、
前記突起を含む前記金属リングの厚さは、前記サーマルペーストの厚さの1.5倍以下であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を中心として、パワー半導体モジュールが電力変換装置に広く用いられるようになっている。パワー半導体モジュールは1つまたは複数のパワー半導体チップを内蔵して変換接続の一部または全体を構成し、かつ、パワー半導体チップとベース板または冷却面との間が電気的に絶縁された構造を持つパワー半導体デバイスである。
【0003】
図11は、従来構造のパワー半導体モジュールのヒートシンク取り付け前の構成を示す断面図である。
図12は、従来構造のパワー半導体モジュールのヒートシンク取り付け後の構成を示す断面図である。
図11、12に示すように、パワー半導体モジュールは、パワー半導体チップ1と、積層基板2と、ベース板3と、ケース4と、金属端子5と、金属ワイヤ6と、蓋7と、封止材8と、ヒートシンク11と、を備える。
【0004】
パワー半導体チップ1は、IGBTまたはダイオード等のパワー半導体チップであり、積層基板2上に搭載される。なお、積層基板2は、セラミック基板等の絶縁基板21のおもて面および裏面に銅などの導電性板22が備えられたものである。積層基板2は、ベース板3にはんだ接合されている。ベース板3には、ケース4が接着剤で接着されている。ケース4は、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Poly Phenylene Sulfide)等の熱可塑性樹脂で成形されている。金属端子5は、積層基板2上にはんだ付けで固定され、蓋7を貫通して外部に突き出ている。金属ワイヤ6は、パワー半導体チップ1と金属端子5とを電気的に接続している。蓋7は、ケース4と同一の熱可塑性樹脂で構成されている。封止材8は、積層基板2の沿面およびパワーチップを搭載した基板上のパワー半導体チップ1を絶縁保護する封止材として、ケース4内に充填されている。この封止材8は、通常エポキシ樹脂が用いられている。エポキシ封止樹脂は、寸法安定性や、耐水性・耐薬品性および電気絶縁性が高く、封止材として適している。
【0005】
ヒートシンク11は、パワー半導体チップ1で発生した熱を、積層基板2、ベース板3を介して外部に放出するためのものである。従来、電鉄等で使用されるIGBTパワー半導体モジュールは、一般産業用のIGBTパワー半導体モジュールと比較して、高信頼性が要求されている。この要求の一つに、温度変動に対する信頼性評価がある。信頼性評価として、例えば、ΔTcパワーサイクルがある。ΔTcパワーサイクルは、ケース温度(Tc)が任意の温度に到達するまで通電し、ケース温度が任意の温度に到達した時点で通電を止め、ケース温度が通電前の状態に戻るまでの周期を1サイクルとして繰り返す試験である。
【0006】
このため、一般産業用のIGBTパワー半導体モジュールでは、ベース板3は安価で熱伝導性の高い銅(Cu)および銅合金を使用しているが、電鉄用などの高信頼性が要求されているIGBTパワー半導体モジュールでは、ベース板3はAlSiC(アルミニウム合金に炭化珪素が含まれる複合材)を使用している。以下、AlSiCを使用したベース板3をAlSiCベース板と記載する。
【0007】
AlSiCは銅よりも熱膨張係数が低いため、温度変動に対する形状変化に対して良好である。AlSiCベース板はプロセスの制約のために、
図11に示すように、最表面が200μm程度の軟質アルミニウム(Al)金属層10で覆われている。一方、ヒートシンク11は、
図11に示すように、表面粗さに基づく凹凸9が存在している。ヒートシンク11の表面は硬化処理がなされているため、例え、ヒートシンク11がAlで形成されている場合でも、ベース板3の押圧によってもつぶれにくいものである。しかし、AlSiCベース板は、軟質Al金属層10がある。そのため、AlSiCベース板を用いたパワー半導体モジュールにヒートシンク11を取り付けると、
図12に示すように、ベース板3の押圧によって軟質Al金属層10がつぶれることで、凹凸9による隙間を埋めることができる。これにより、ヒートシンク11とパワー半導体モジュールとの密着性がよくなる。
【0008】
また、パワー半導体モジュールにおいて、ネジ止めによってそりを生じた放熱板とヒートシンクの間隙に、金属箔を挿入するとともに高熱伝導性のグリースを充填し、Si(シリコン)チップにより生じた熱の流路に金属箔が配置されるようにすることで、放熱板とヒートシンク間での熱抵抗を低減する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−86745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、AlSiCベース板は温度変動による形状変化に対して良好である。しかし、AlSiCベース板は熱伝導率が銅に比べ大幅に低下する欠点がある。近年、この欠点を改良した材料として、MgSiC(マグネシウム合金に炭化珪素が含まれる複合材)が提案されている。以下、MgSiCを使用したベース板3をMgSiCベース板と記載する。MgSiCベース板は、熱膨張係数等の機械的特性がAlSiCベース板と同程度であり、熱電導率がAlSiCベース板よりも20%程度向上した材料である。
【0011】
図13は、MgSiCベース板を用いた従来構造のパワー半導体モジュールのヒートシンク取り付け前の構成を示す断面図である。
図14はMgSiCベース板を用いた従来構造のパワー半導体モジュールのヒートシンク取り付け後の構成を示す断面図である。
図13に示すように、MgSiCベース板は、MgSiC材のみで構成され、表面には軟質金属層は存在しない。さらに、MgSiCベース板は、SiCの粉末が表面に露出するため、最表面が硬質であり、
図14に示すように、MgSiCベース板はつぶれることがない。
【0012】
このため、ヒートシンク11の凹凸9による隙間を埋めることができず、MgSiCベースを使用すると、AlSiCベースよりベース板3とヒートシンク11との間に隙間が多くできる。隙間が多くできると、パワー半導体チップ1の発熱により、サーマルペースト(不図示)が熱膨張して、隙間からサーマルペーストが外側に押し出される(ポンプアウト)。そのため、パワー半導体チップ1の発熱の繰り返しにより、サーマルペーストが枯渇するおそれがある。サーマルペーストは、グリースのような高粘度の液体に、熱伝導性の高い粒子を混ぜ込んだサーマルグリースである。サーマルペーストは、発熱体、例えば、ベース板3と放熱器、例えば、ヒートシンク11間の微細な隙間を埋め、伝熱性を向上させるためのものである。このため、サーマルペーストが枯渇するとベース板3からヒートシンク11への熱伝導が十分に行われず、パワー半導体チップ1が熱により故障する場合がある。
【0013】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、ポンプアウトによるサーマルペーストの枯渇を抑制し、熱によるパワー半導体チップの故障を抑制できる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。半導体チップを搭載した積層基板が接合されたベース板と、前記ベース板に、サーマルペーストおよび金属リングを介して取り付けられたヒートシンクと、を備える。
前記金属リングの中穴は、前記半導体チップと対向する部分に設けられ、前記中穴の部分に前記サーマルペーストが充填される。前記金属リングは、前記ヒートシンクと同程度の硬度の材料、または、より硬度が低い材料で形成され、前記ヒートシンクの表面の凹凸に沿ってつぶれている。
【0015】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、
前記金属リングは、前記ヒートシンクより熱伝導率がよい材料で形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、
前記ヒートシンクは、SUS(ステンレス鋼)で形成され、前記金属リングは、銅、アルミニウムもしくはこれらを一つ以上含む合金で形成される、または、前記ヒートシンクは、銅もしくは銅を含む合金で形成され、前記金属リングは、銅、アルミニウムもしくはこれらを一つ以上含む合金で形成される、または、前記ヒートシンクは、アルミニウムもしくはアルミニウムを含む合金で形成され、前記金属リングは、アルミニウムもしくはアルミニウムを含む合金で形成されることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記ベース板は、マグネシウム合金に炭化珪素が含まれる複合材からなることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記ベース板は、前記金属リングと接触する部分に、途切れのない突起が設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記ベース板は、前記金属リングと接触する部分に、途切れのない溝が設けられていることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記金属リングは、前記ベース板と接触する部分および前記ヒートシンクと接触する部分のいずれか一つまたは両方に、途切れのない突起が設けられていることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記金属リングは、断面が楕円形であることを特徴とする。
【0023】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、半導体チップを搭載した積層基板をベース板に接合する第1工程を行う。次に、前記ベース板またはヒートシンクに、サーマルペーストを塗布する第2工程を行う。次に、前記ベース板またはヒートシンクに、前記サーマルペーストの厚さ以下の厚さの
、前記半導体チップと対向する部分に中穴が設けられた金属リングを
、前記中穴の部分に前記サーマルペーストが充填されるように取り付ける第3工程を行う。次に、前記ベース板とヒートシンクの間に、前記サーマルペーストおよび前記金属リングを挟んで前記ヒートシンクを取り付ける第4工程を行う。
前記金属リングは、前記ヒートシンクと同程度の硬度の材料、または、より硬度が低い材料で形成され、前記ヒートシンクの表面の凹凸に沿ってつぶれている。
【0024】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、
前記金属リングは、前記ヒートシンクより熱伝導率がよい材料で形成されていることを特徴とする。また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記ヒートシンクは、SUS(ステンレス鋼)で形成され、前記金属リングは、銅、アルミニウムもしくはこれらを一つ以上含む合金で形成される、または、前記ヒートシンクは、銅もしくは銅を含む合金で形成され、前記金属リングは、銅、アルミニウムもしくはこれらを一つ以上含む合金で形成される、または、前記ヒートシンクは、アルミニウムもしくはアルミニウムを含む合金で形成され、前記金属リングは、アルミニウムもしくはアルミニウムを含む合金で形成されることを特徴とする。また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記金属リングは突起を有し、前記突起の高さは、前記金属リングの突起のない部分の厚さの半分以下であり、前記突起を含む前記金属リングの厚さは、前記サーマルペーストの厚さの1.5倍以下であることを特徴とする。
【0025】
上述した発明によれば、ヒートシンクは、ベース板にサーマルペーストおよび金属リングを介して取り付けられる。金属リングが、ヒートシンクの表面の凹凸によりつぶれることで、凹凸による隙間を埋め、ヒートシンクとベース板の密着性がよくなる。このため、サーマルペーストがポンプアウトにより枯渇することを抑制し、熱によるパワー半導体チップの故障を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法によれば、ポンプアウトによるサーマルペーストの枯渇を抑制し、熱によるパワー半導体チップの故障を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの構成を示す断面図である。
【
図2】実施の形態にかかるパワー半導体モジュールのベース板と金属リングを示す斜視図である。
【
図3】実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの金属リングの
図2のA−A’部分の断面図である。
【
図4】実施の形態にかかるパワー半導体モジュールのベース板の裏面を示す斜視図である。
【
図5】実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの
図4にB−B’部分の断面図である(その1)。
【
図6】実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの
図4にB−B’部分の断面図である(その2)。
【
図7】実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの金属リングの
図2のA−A’部分の他の断面図である。
【
図8】実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図9】実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図10】実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図11】従来構造のパワー半導体モジュールのヒートシンク取り付け前の構成を示す断面図である。
【
図12】従来構造のパワー半導体モジュールのヒートシンク取り付け後の構成を示す断面図である。
【
図13】MgSiCベース板を用いた従来構造のパワー半導体モジュールのヒートシンク取り付け前の構成を示す断面図である。
【
図14】MgSiCベース板を用いた従来構造のパワー半導体モジュールのヒートシンク取り付け後の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの構成を示す断面図である。
【0029】
(実施の形態)
図1に示すように、パワー半導体モジュールは、パワー半導体チップ1と、積層基板2と、ベース板3と、ケース4と、金属端子5と、金属ワイヤ6と、蓋7と、封止材8と、ヒートシンク11と、金属リング12と、を備える。
【0030】
パワー半導体チップ1は、IGBT、MOS−FETあるいはダイオード等である。積層基板2は、絶縁性を確保するセラミック基板等の絶縁基板21と、そのおもて面(パワー半導体チップ1側)や裏面(ベース板3側)に形成された銅(Cu)板などからなる導電性板22と、からなる。なお、積層基板2の少なくとも片面に導電性板22が設けられた基板を積層基板2とする。導電性板22上には、はんだ等の接合材(不図示)によりパワー半導体チップ1が接合される。裏面の導電性板22上には、はんだ等の接合材(不図示)によりベース板3が接合される。ベース板3は、MgSiCベースからなる放熱用の冷却体である。
【0031】
また、パワー半導体チップ1の上面(導電性板22と接する面と反対側の面)には、電気接続用の配線として金属ワイヤ6の一端が接合される。金属ワイヤ6の他端は、金属端子5が固定された導電性板22と接合される。
図1では、金属ワイヤ6を用いて、パワー半導体チップ1と導電性板22とを接続しているが、リードフレームを用いて、接続してもよい。
【0032】
ベース板3には、ケース4が接着剤で接着されている。ケース4は、PPS等の熱可塑性樹脂で形成された樹脂ケースであり、接着剤は、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等が用いられている。また、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等からなる封止材8がケース4内に充填されている。そして、封止材8を保護する蓋7が設けられている。
【0033】
ヒートシンク11は、パワー半導体チップ1で発生した熱を外部に放出するためのものである。ヒートシンク11は、熱を多く放出できるように、フィンと呼ばれる板や棒の生えた剣山状や蛇腹状により、表面積が広くなるような形状とすることができる。ヒートシンク11は、例えば、SUS(Steel Use Stainless:ステンレス鋼)、アルミニウム(Al)、Al合金、銅またはCu合金により形成される。ヒートシンク11には、表面粗さに基づく凹凸9が存在している。
【0034】
実施の形態では、ヒートシンク11は、ベース板3に、サーマルペースト(不図示)および金属リング12を介して取り付けられる。サーマルペーストは、ベース板3とヒートシンク11間にぬれ広がり微細な隙間を埋め、伝熱性を向上させるために設けられる。サーマルペーストは、シリコーンオイル等の高粘度の液体に、銀(Ag)、銅(Cu)または酸化アルミニウム等の熱伝導性の高い粒子を混ぜ込んだグリースである。金属リング12は、ベース板3とヒートシンク11の押圧によってヒートシンク11の表面の凹凸9に沿ってつぶれることで、凹凸9による隙間を埋め、密着性をよくするために設けられる。このように、硬度が高く、変形の少ないMgSiCベースのベース板3では埋めることのできないヒートシンク11の表面粗さに基ずく凹凸9による隙間を、金属リング12により埋めることができる。隙間を埋めることでサーマルペーストがベース板3とヒートシンク11間に密封され、ポンプアウトによるサーマルペーストの枯渇を防止できる。
【0035】
金属リング12は、ヒートシンク11の表面粗さに基ずく凹凸9によりつぶれるようにするため、ヒートシンク11と同程度の硬度の材料、または、より硬度が低い材料で形成されている。ここで、同程度の硬度とは、ヒートシンク11のビッカース硬度の1.0倍以上、1.5倍以下の硬度である。これより硬いと、金属リング12が、ヒートシンク11の表面粗さに基ずく凹凸9に沿ってつぶれることができずに、サーマルペーストのポンプアウトが発生する。また、金属リング12は、熱を伝導するために熱伝導率のよい金属が好ましい。例えば、ヒートシンク11がビッカース硬度150Hv程度のSUSで形成されている場合、金属リング12は、それより柔らかく熱伝導率のよい、ビッカース硬度46Hv程度のCuまたはCu合金、ビッカース硬度25Hv程度のAl、またはAl合金により形成されることが好ましい。ヒートシンク11がCuまたはCu合金で形成されている場合、金属リング12は、同程度の硬度またはそれより柔らかく熱伝導率のよいCu、Cu合金、AlまたはAl合金により形成されることが好ましい。また、ヒートシンク11がAlまたはAl合金で形成されている場合、金属リング12は、同程度の硬度またはそれより柔らかく熱伝導率のよいAl、またはAl合金により形成されることが好ましい。金属リング12は、ヒートシンク11より硬度が低く、熱伝導率がよければ他の金属、例えば銀(Ag)や金(Au)、またはこれらを一つ以上含む合金であってもかまわない。
【0036】
図2は、実施の形態にかかるパワー半導体モジュールのベース板と金属リングを示す斜視図である。
図2に示すように、金属リング12は、外周がベース板3と同じ程度である。外周がベース板3と同じ程度であることより、金属リング12の外で、ポンプアウトによるサーマルペーストの枯渇が発生し、この部分で放熱性が悪化することを防ぐことができる。また、金属リング12の外周を広く取ることで、以下に示すサーマルペースト塗布エリア13を広く取ることができる。
【0037】
また、金属リング12の中穴は、パワー半導体チップ1の直下(パワー半導体チップ1のまっすぐ下側、つまりヒートシンク11側)に設けられ、この中穴は、サーマルペーストが塗布されるサーマルペースト塗布エリア13となっている。つまり、パワー半導体チップ1と対向する部分は、サーマルペースト塗布エリア13となっている。このため、パワー半導体チップ1からの熱をサーマルペーストを通して効率的にヒートシンク11に逃すことができる。なお、
図2では、金属リング12の中穴は1つであるが複数あってもかまわない。また、
図2では、金属リング12の中穴は四角形状であるが、円形や楕円形であってもかまわない。いずれの場合でも、少なくともパワー半導体チップ1の直下に金属リング12の中穴が設けられていれば良い。
【0038】
図3は、実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの金属リングの
図2のA−A’部分の断面図である。金属リングの断面は、四角形、円形だけでなく様々な形状でよい。
図3に示すように、金属リング12の断面は、楕円形であることがより好ましい。楕円形とすることで、金属リング12がつぶれやすくなり、サーマルペーストのシールド性が高くなる。
【0039】
また、金属リング12の厚さwは、塗布するサーマルペーストの厚さと同じまたはそれより薄いことが好ましい。例えば、サーマルペーストの厚さは、50〜100μmであるため、金属リング12の厚さwは、50〜100μm以下となる。金属リング12の厚さwが厚すぎると、塗布するサーマルペーストの量が多くなり、熱伝導性が低下するためである。金属リング12の厚さwが薄すぎると、ヒートシンク11の凹凸9を吸収できず、ヒートシンク11との間に隙間ができるため、金属リング12の厚さwは、ヒートシンク11の凹凸9より大きいことが好ましい。
【0040】
図4は、実施の形態にかかるパワー半導体モジュールのベース板3の裏面を示す斜視図である。
図4に示すように、ベース板3の裏面に、途切れのない突起31または溝32が設けられてもよい。ここで、途切れのない突起31とは、突起31が途中で隙間がないように設けられていることである。途切れのない溝32も同様である。これらの突起31または溝32は、金属リング12が設けられる箇所に設けられる。突起31または溝32が、金属リング12に噛み込むことで金属リング12とベース板3との隙間を埋め込み、隙間をさらに少なくすることができ、シールド性がさらに向上する。突起31または溝32に途切れがないため、突起31または溝32からサーマルペーストが外側に押し出されることを防止できる。なお、
図4では、突起31または溝32は1つであるが、複数あってもかまわない。また、1つが突起31で、もう一つが溝32等の組合せであってもかまわない。
【0041】
図5、6は、実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの
図4にB−B’部分の断面図である。
図5は突起31の場合の断面図であり、
図6は溝32の場合の断面図である。突起31の高さhは、塗布するサーマルペーストの厚さより低い高さであり、金属リング12の厚さの半分以下であることが好ましい。また、溝32の深さdは、金属リング12の厚さの半分以上、金属リング12の厚さ以下であることが好ましい。上記の突起31または溝32を形成することで、金属リング12の千切れ等の破損を防ぎつつ、サーマルペーストのシールド性がさらに向上する。
【0042】
また、
図5では突起31は三角形状であるが、金属リング12と噛みやすい形状であれば他の形状でもかまわない。例えば、逆U字形状でもかまわない。同様に、
図6では、溝32はV字形状であるが、金属リング12と噛みやすい形状であれば他の形状でもかまわない。例えば、U字形状でもかまわない。
【0043】
図7は、実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの金属リングの
図2のA−A’部分の他の断面図である。
図7に示すように、金属リング12においても、ベース板3と同様に途切れのない突起121が設けられてもよい。例えば、
図7に示すように、ベース板3と接触する部分およびヒートシンク11と接触する部分の両方に、途切れのない突起121が設けられてもよい。図示しないが、金属リング12において、ベース板3と接触する部分およびヒートシンク11と接触する部分のいずれかに、途切れのない突起121が設けられてもよい。なお、
図7では、突起121は接触する1面に1つずつであるが、接触する1面に対して複数の突起121があってもかまわない。突起121が金属リング12とベース板3との隙間、または、金属リング12とヒートシンク11との隙間を埋め込み、隙間をさらに少なくすることができ、シールド性がさらに向上する。同様に、突起の形状は金属リング12と噛みやすい形状であればよい。例えば、三角形状や逆U字形状でかまわない。
【0044】
また、金属リング12の突起121の高さhは、金属リング12の突起121のない部分の厚さwの半分以下であることが好ましい。また、突起121を含む金属リング12の厚さ(w+h)は、サーマルペーストの厚さの1.5倍以下であることが好ましい。このような突起121を形成することで、金属リング12の千切れ等の破損を防ぎつつ、サーマルペーストのシールド性がさらに向上する。
【0045】
次に、実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの製造方法について説明する。
図8〜10は、実施の形態にかかるパワー半導体モジュールの製造途中の状態を示す断面図である。まず、はんだ等の接合材を用いて、パワー半導体チップ1を積層基板2の導電性板22に接合することで、積層基板2にパワー半導体チップ1を実装する。次に、パワー半導体チップ1と、積層基板2の導電性板22とを、金属ワイヤ6で電気的に接続する。次に、金属ワイヤ6が接続された導電性板22に金属端子5を取り付ける。次に、はんだ等の接合材を用いて、これらを実装した積層基板2をベース板3に接合して、パワー半導体チップ1、積層基板2およびベース板3からなる積層組立体を組み立てる。また、金属ワイヤ6の代わりに、リードフレームを接合してもよい。
【0046】
次に、この積層組立体にケース4をシリコーン接着剤などの接着剤で接着する。次に、ケース4内にエポキシなどの硬質樹脂等の封止材8を充填する。この後、所定の条件で熱処理を行って硬化させる。次に、封止材8が外に漏れないようにするため、蓋7を取り付ける。ここまでの状態が
図8に記載される。
【0047】
次に、ベース板3の裏面のサーマルペースト塗布エリア13にサーマルペースト16を所定の厚さで塗布する。ここまでの状態が
図9に記載される。次に、ベース板3の裏面の金属リング12を取り付ける。ここまでの状態が
図10に記載される。なお、金属リング12を取り付けた後に、サーマルペースト16を塗布してもかまわない。
【0048】
次に、ベース板3に、サーマルペースト16および金属リング12を挟んでヒートシンク11を取り付ける。ヒートシンク11は、例えば、ベース板3にネジで固定してもよい。以上のようにして、本発明の実施の形態にかかるパワー半導体モジュールを製造することができる。
【0049】
なお、上記製造方法では、ベース板3の裏面のサーマルペースト塗布エリア13にサーマルペースト16を塗布したが、ヒートシンク11にサーマルペースト16を塗布してもよい。この場合、ヒートシンク11のサーマルペースト塗布エリア13と対向する領域にサーマルペースト16を所定の厚さで塗布する。次に、ベース板3の裏面に金属リング12を取り付ける。この場合も、金属リング12を取り付けた後に、サーマルペースト16を塗布してもかまわない。次に、ベース板3に、サーマルペースト16および金属リング12を挟んでヒートシンク11を取り付ける。
【0050】
以上、説明したように、実施の形態にかかるパワー半導体モジュールによれば、ヒートシンクは、ベース板にサーマルペーストおよび金属リングを介して取り付けられる。金属リングが、ヒートシンクの表面の凹凸によりつぶれることで、凹凸による隙間を埋め、ヒートシンクとベース板の密着性がよくなる。このため、サーマルペーストがポンプアウトにより枯渇することを抑制し、熱によるパワー半導体チップの故障を抑制できる。
【0051】
また、金属リングは、外周がベース板と同じ程度である。これにより、金属リングの外で、ポンプアウトによるサーマルペーストの枯渇が発生し、この部分で放熱性が悪化することを防ぐことができる。また、パワー半導体チップの直下は、サーマルペーストが塗布された領域となっている。このため、パワー半導体チップからの熱をサーマルペーストを通して効率的にヒートシンクに逃すことができる。
【0052】
また、金属リングの裏面に、途切れのない突起または溝が設けられてもよい。突起または溝が、金属リングに噛み込むことで金属リングとベース板との隙間を埋め込み、隙間をさらに少なくし、シールド性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 パワー半導体チップ
2 積層基板
21 絶縁基板
22 導電性板
3 ベース板
31 突起
32 溝
4 ケース
5 金属端子
6 金属ワイヤ
7 蓋
8 封止材
9 凹凸
10 軟質Al金属層
11 ヒートシンク
12 金属リング
121 突起
13 サーマルペースト塗布エリア
16 サーマルペースト