特許第6972627号(P6972627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972627カーボンナノチューブ複合体の製造方法及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972627
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ複合体の製造方法及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/16 20170101AFI20211111BHJP
   C23C 16/26 20060101ALI20211111BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20211111BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20211111BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20211111BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20211111BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20211111BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20211111BHJP
【FI】
   C01B32/16
   C23C16/26
   C23C16/02
   B32B9/00 A
   H01G11/36
   H01G11/70
   H01G11/68
   H01G11/86
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-75260(P2017-75260)
(22)【出願日】2017年4月5日
(65)【公開番号】特開2018-177557(P2018-177557A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田上 智也
(72)【発明者】
【氏名】謝 剛
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−219343(JP,A)
【文献】 特開2013−133235(JP,A)
【文献】 特開2013−193916(JP,A)
【文献】 特開2007−070137(JP,A)
【文献】 特開2014−076486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00−32/991
C23C 16/02−16/26
B32B 9/00
H01G 11/30−11/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する第1金属で構成された導電性基材上に、前記第1金属と相互拡散可能な第2金属で構成されたバッファ層を形成し、前記バッファ層上にカーボンナノチューブの形成を触媒する種触媒粒子で構成された触媒層を形成する積層体形成工程と、
前記積層体に対して熱処理を行うバッファ層拡散工程と、
化学気相成長法によって、前記積層体の触媒層上に前記カーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ層形成工程と、
を有し、
前記バッファ層拡散工程は、前記導電性基材の表面から850nm以上の深さまで前記第1金属と前記第2金属とが固相拡散されている固相拡散領域を形成するように、前記積層体の温度を500℃以上の所定温度範囲に3分以上保持することを含む前記熱処理を行う工程である、カーボンナノチューブ複合体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカーボンナノチューブ複合体の製造方法において、
前記固相拡散領域の前記第2金属の濃度は、1原子%以上である、カーボンナノチューブ複合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカーボンナノチューブ複合体の製造方法において、
前記第1金属は、銅であり、
前記第2金属は、アルミニウムを含む金属である、カーボンナノチューブ複合体の製造方法。
【請求項4】
導電性を有する第1金属で構成された導電性基材と、
前記導電性基材上の、前記第1金属と相互拡散可能な第2金属で構成されたバッファ層と、
前記バッファ層上の、カーボンナノチューブの形成を触媒する種触媒粒子で構成された触媒層と、
を備え、
前記導電性基材の表面から850nm以上の深さまで前記第1金属と前記第2金属とが固相拡散されている固相拡散領域を含む、積層体。
【請求項5】
請求項に記載の積層体において、
前記固相拡散領域の前記第2金属の濃度は、1原子%以上である、積層体。
【請求項6】
請求項又は請求項に記載の積層体において、
前記第1金属は、銅であり、
前記第2金属は、アルミニウムを含む金属である、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ複合体の製造方法及びその製造方法に使用されるカーボンナノチューブ複合体製造用の積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、従来のグラファイトやダイヤモンド等の材料にない特異な性質から、種々の技術分野に利用することが検討されている。例えば、カーボンナノチューブを、蓄電デバイスの電極に利用することが検討されている。例えば、積層体にカーボンナノチューブが形成されたカーボンナノチューブ複合体は、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスの電極(特に負極)に利用され得る。
【0003】
従来のカーボンナノチューブ複合体の一つとして、「不活性支持体に接着層と界面層と触媒層とを積層した構造を有する多層基板(積層体)」にカーボンナノチューブアレイが形成されたカーボンナノチューブ複合体が知られている(特許文献1を参照。)。
【0004】
特許文献1の記載によれば、次のようにして、カーボンナノチューブ複合体を製造している。即ち、多層基板(アルミニウム箔の両面のそれぞれに鉄接着層/アルミニウム界面層/鉄触媒層が形成された積層体)を不活性ガス流のもとで、550℃でアニールした後、550℃で炭素原料ガスを導入する。その後、多層基板を630℃の成長温度まで加熱して、その成長温度で5分間保持してカーボンナノチューブを多層基板上に成長させる。以上により、カーボンナノチューブ複合体を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2015−530961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のカーボンナノチューブ複合体の製造方法に使用される多層基板は、鉄接着層を設けることにより、アルミニウム界面層の不活性支持体(アルミニウム箔)への接着力を向上させている。
【0007】
これに対して、本願発明者は、導電性基材にバッファ層及び種触媒粒子で構成された触媒層が形成された積層体(特許文献1のような鉄接着層を有さない積層体)にカーボンナノチューブを形成することを検討した。更に、この場合に、種触媒粒子の凝集を抑制するために炭素原料ガスの導入温度を低くすることを検討したところ、次のようなことを見出した。
【0008】
即ち、炭素原料ガスの導入温度を低くすると、バッファ層と導電性基材との密着性が悪い状態であるときに、カーボンナノチューブの成長が生じる。このため、カーボンナノチューブが成長するときにバッファ層と導電性基材との界面に生じる界面応力によって、バッファ層が導電性基材から剥がれてしまうことを見出した。具体的に述べると、バッファ層と導電性基材との熱膨張の違いによる界面応力、及び、カーボンナノチューブの成長に伴いバッファ層がカーボンナノチューブの成長方向に引っ張られることによる界面応力が大きくなることによって、バッファ層が導電性基材から剥がれてしまうことを見出した。この場合、カーボンナノチューブ複合体において、導電性基材の表面が露出されたカーボンナノチューブが形成されてない領域が、生じてしまうため好ましくない。
【0009】
本発明は上述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、化学気相成長法によって積層体にカーボンナノチューブを形成するときに、導電性基材と導電性基材上のバッファ層との密着性を向上することができるカーボンナノチューブ複合体の製造方法(以下、「本発明製造方法」と称呼される場合がある。)、及び、その製造方法に使用される積層体(以下、「本発明積層体」と称呼される場合がある。)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、
本発明製造方法は、導電性を有する第1金属で構成された導電性基材上に、前記第1金属と相互拡散可能な第2金属で構成されたバッファ層を形成し、前記バッファ層上にカーボンナノチューブの形成を触媒する種触媒粒子で構成された触媒層を形成する積層体形成工程と、
前記積層体に対して熱処理を行うバッファ層拡散工程と、
化学気相成長法によって、前記積層体の触媒層上に前記カーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ層形成工程と、
を有し、
前記バッファ層拡散工程は、前記導電性基材の表面から850nm以上の深さまで前記第1金属と前記第2金属とが固相拡散されている固相拡散領域を形成するように、前記積層体の温度を500℃以上の所定温度範囲に3分以上保持することを含む前記熱処理を行う工程である。
【0011】
本発明製造方法の一態様において、
前記固相拡散領域の前記第2金属の濃度は、1原子%以上である。
【0015】
本発明製造方法の一態様において、
前記第1金属は、銅であり、
前記第2金属は、アルミニウムを含む金属である。
【0016】
本発明積層体は、導電性を有する第1金属で構成された導電性基材と、
前記導電性基材上の、前記第1金属と相互拡散可能な第2金属で構成されたバッファ層と、
前記バッファ層上の、カーボンナノチューブの形成を触媒する種触媒粒子で構成された触媒層と、
を備え、
前記導電性基材の表面から850nm以上の深さまで前記第1金属と前記第2金属とが固相拡散されている固相拡散領域を含む。
【0017】
本発明積層体の一態様において、
前記固相拡散領域の前記第2金属の濃度は、1原子%以上である。
【0018】
本発明積層体の一態様において、
前記第1金属は、銅であり、
前記第2金属は、アルミニウムを含む金属である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、化学気相成長法により積層体にカーボンナノチューブを形成するときに、導電性基材と導電性基材上のバッファ層との密着性を向上することができる。その結果、カーボンナノチューブを形成するときに、バッファ層が導電性基材から剥がれることを抑制することができ、以て、カーボンナノチューブ複合体において、導電性基材の表面が露出されたカーボンナノチューブが形成されていない領域が生じてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(A)は、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ複合体の構成例を示す平面図である。図1(B)は、図1(A)の線I−I’に沿った概略断面図である。
図2図2(A)は、実施例1の積層体の断面分析の結果を示すグラフである。図2(B)は、実施例2の積層体の断面分析の結果を示すグラフである。図2(C)は、実施例3の積層体の断面分析の結果を示すグラフである。
図3図3(A)は、比較例1の積層体の断面分析の結果を示すグラフである。図3(B)は、比較例2の積層体の断面分析の結果を示すグラフである。
図4図4(A)は、実施例1のカーボンナノチューブ複合体の外観を示す写真である。図4(B)は、実施例2のカーボンナノチューブ複合体の外観を示す写真である。図4(C)は、実施例3のカーボンナノチューブ複合体の外観を示す写真である。
図5図5(A)は、比較例1のカーボンナノチューブ複合体の外観を示す写真である。図5(B)は、比較例2のカーボンナノチューブ複合体の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ複合体について図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ複合体は、例えば、蓄電デバイス(例えば、リチウムイオンキャパシタ等)の電極(例えば、負極等)等に好適に用いることができる。
【0022】
図1(A)及び図1(B)は、カーボンナノチューブ複合体を電極に適用した構成例を示す。図1(A)に示されたように、電極10は、端子部10aと電極部10bとを有する。端子部10aは、カーボンナノチューブ層14(以下、「CNT層14」と称呼される。)が形成されていない導電性基材11が露出された露出部で構成されており、外部に電流を取り出すために設けられている。
【0023】
電極部10bは、例えば、矩形状の平面形状を有し、カーボンナノチューブ複合体で構成されている。図1(B)に示されたように、電極部10bを構成するカーボンナノチューブ複合体は、導電性基材11の一主面及び他主面のそれぞれに、バッファ層12と、触媒層13と、CNT層14と、を有する。尚、図示は省略するが、カーボンナノチューブ複合体は、導電性基材11の一主面のみに、バッファ層12、触媒層13及びCNT層14を有するようにしてもよい。
【0024】
(導電性基材)
導電性基材11は、導電性を有する第1金属で構成され、例えば、箔状の第1金属(第1金属箔)である。第1金属としては、例えば、リチウムイオンキャパシタの電極(集電体)に好適な銅(Cu)等を用いることが好ましい。尚、図示は省略するが、導電性基材11中には、バッファ層12を構成する第2金属が固相拡散されている。
【0025】
バッファ層12は、種触媒を導電性基材11上に直接形成すると触媒活性を失うことがあり得るため、これを避けるために設けられている。バッファ層12は、種触媒と導電性基材11との相互拡散を抑制し、種触媒の触媒活性が失われない下地層として機能する材料であって、第1金属と相互拡散可能な第2金属で構成され、例えば、薄膜状の第2金属(第2金属膜)である。尚、薄膜とは、典型的には、厚さが例えば数μm以下であり、表面積に比べて体積が著しく小さい材料等をいう。バッファ層12の厚さは、典型的には、カーボンナノチューブの成長性がより優れている観点から、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
【0026】
第2金属としては、例えば、アルミニウム(Al)又はアルミニウムを含む合金(これらを「アルミニウムを含む金属」と総称する。)、チタン(Ti)等を用いることができ、アルミニウムを用いることが好ましい。
【0027】
触媒層13は、カーボンナノチューブを形成するための種触媒で構成され、例えば、バッファ層12に担持された、カーボンナノチューブの形成を触媒することが可能な材料(例えば、遷移金属粒子等)で構成されている。触媒層13を構成する材料としては、例えば、鉄(Fe)又は鉄−チタン合金(FeTi)粒子等のFe系種触媒粒子、コバルト(Co)粒子、ニッケル(Ni)粒子等を用いることができる。
【0028】
種触媒粒子は、典型的には、一次粒子径がナノサイズの粒子(ナノ粒子)が使用され得る。ナノサイズとは、典型的には、数nm以上数十nm以下程度の大きさのことをいう。ナノサイズの大きさを有する材料を、例えばナノ粒子というように、接頭辞「ナノ」を付して称する。種触媒粒子の一次粒子径の平均粒子径は、カーボンナノチューブの成長性がより優れている観点から、20nm以下であることが好ましい。
【0029】
CNT層14は、触媒層13に形成されたカーボンナノチューブで構成されている。具体的に述べると、CNT層14は、例えば、バッファ層12に担持された種触媒粒子(触媒層13)から成長した配向性を有するカーボンナノチューブで構成されている。
【0030】
(カーボンナノチューブ複合体の製造方法)
次に、上述した本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ複合体(電極部10b)の製造方法について説明する。上述したカーボンナノチューブ複合体は、例えば以下のようにして製造する。即ち、まず、導電性基材11を用意する。次に、導電性基材11の一主面及び他主面のそれぞれに、バッファ層12及び触媒層13をこの順で形成することによって、導電性基材11の一主面及び他主面のそれぞれに、バッファ層12及び触媒層13を形成した積層体を得る。
【0031】
次に、この積層体に対して、バッファ層12を構成する第2金属を、導電性基材11を構成する第1金属に固相拡散させる(相互拡散させる)ために、熱処理(加熱処理)を行うバッファ層拡散工程を行う。これにより、本発明のカーボンナノチューブ複合体製造用の積層体を得る。
【0032】
次に、この積層体の触媒層13にカーボンナノチューブを化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法にて形成するCNT層形成工程を行う。これにより、図1(A)及び図1(B)に示されたカーボンナノチューブ複合体(電極部10b)を得ることができる。
【0033】
以下、各工程の詳細について説明する。以下では、導電性基材11として銅箔を用いて、バッファ層12としてアルミニウム薄膜(以下、「アルミニウム膜」と称呼される。)を用いた例について説明する。
【0034】
(バッファ層形成工程)
まず、例えば、導電性基材11として、矩形の一辺が凸部を有する形状の平面形状を有する銅箔を用意する。次に、銅箔上に周知の薄膜形成方法(例えば、スパッタリング法等)により、バッファ層12としてアルミニウム膜を形成する。
【0035】
(触媒層形成工程)
次に、アルミニウム膜上に、例えば、ディップコーティング法によって、カーボンナノチューブを形成させるための種触媒粒子を担持することにより、触媒層13を形成する。具体的に述べると、まず、種触媒粒子を含む触媒混合液を、用意する。次に、ディップコーター(ディップコーティング装置)を用いて、アルミニウム膜が形成された銅箔を、触媒混合液に浸漬し、その後、アルミニウム膜が形成された銅箔を、一定の速度で触媒混合液から引き上げる。これにより、アルミニウム膜上に種触媒粒子が担持され、銅箔の一主面及び他主面のそれぞれにアルミニウム膜及びアルミニウム膜に担持された種触媒粒子を有する積層体を得る。
【0036】
(バッファ層拡散工程)
次に、積層体に対して熱処理を行うことによって、アルミニウム膜を構成するアルミニウム(第2金属)を銅箔(第1金属)に固相拡散させる。これにより、本発明のカーボンナノチューブ複合体製造用の積層体を得る。
【0037】
具体的に述べると、積層体を、例えば、CVD装置のチャンバー内に投入して、チャンバー内にキャリアガス(窒素ガス等の不活性ガス)を導入して、窒素ガス雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で、所定温度範囲まで昇温して、所定温度範囲内で所定保持時間保持を行うことを含む熱処理を行う。より具体的には、例えば、積層体を、所定保持温度より低い室温等から上記の所定温度範囲内から選ばれた所定保持温度まで昇温した後、その所定保持温度で所定保持時間保持することを含む熱処理を行う。尚、上記の所定温度範囲内から選ばれた所定保持温度まで昇温した後、所定温度範囲内であれば、所定保持温度で一定に保持することに限られず、所定保持温度から昇温又は降温を行ってもよく、昇温又は降温を行った後、更に、一定温度で保持、昇温、及び、降温の少なくとも一つを、1回以上行ってもよい。
【0038】
これにより、銅箔に、「銅箔の表面(銅箔とアルミニウムとの界面)」から「850nm以上から選ばれた所定深さ」まで、アルミニウム(第2金属)が銅箔(第1金属)中に固相拡散された領域(以下、「固相拡散領域」と称呼される。)が形成された積層体を得る。固相拡散領域には、1原子(atomic)%以上のアルミニウム(第2金属)が含まれている。
【0039】
このような固相拡散領域が形成されることにより、銅箔(導電性基材11)とアルミニウム膜(バッファ層12)との界面の密着性を向上することができる。その結果、低温(例えば、500℃等)で炭素原料ガスを導入してカーボンナノチューブを形成するときに、銅箔とアルミニウム膜とが剥がれることを抑制することができ、以て、カーボンナノチューブ複合体において、銅箔の表面が露出されたカーボンナノチューブが形成されていない領域が生じてしまうことを抑制することができる。
【0040】
上述の熱処理を行うときの所定温度範囲、及び、所定温度時間は、導電性基材11の表面から850nm以上から選ばれた所定深さまで第1金属と第2金属とが固相拡散されている固相拡散領域を形成できるような条件に適宜設定される。
【0041】
所定温度範囲は、典型的には、銅箔(導電性基材11)とアルミニウム膜(バッファ層12)との界面の密着性を向上することができる観点から、500℃以上であることが好ましい。更に、種触媒粒子の凝集を抑制して、カーボンナノチューブの目付け量(即ち、単位面積当たりのカーボンナノチューブの質量(mg/cm))を増大できる観点も考慮すると、500℃以上700℃未満の温度範囲であることが好ましく、500℃以上600℃以下の温度範囲であることがより好ましく、500℃以上550℃未満の温度範囲であることがより好ましい。
【0042】
所定温度範囲が、500℃以上700℃未満の温度範囲である場合、銅箔(導電性基材11)とアルミニウム膜(バッファ層12)との界面の密着性を向上できると共に、種触媒粒子が凝集して種触媒粒子が粗大化しすぎてしまうことを抑制することができる。
【0043】
一般的に、種触媒粒子が凝集して粗大化しすぎた場合、カーボンナノチューブの成長性が悪くなることが知られている(尚、種触媒粒子にカーボンナノチューブがある程度成長した状態であれば、種触媒粒子の凝集は抑制される。)。従って、所定温度範囲が、上記温度範囲である場合、種触媒粒子の凝集によってカーボンナノチューブの成長が妨げられることを抑制することができる。
【0044】
所定保持時間は、例えば、所定保持温度範囲から選ばれた所定保持温度が500℃である場合、銅箔(導電性基材11)とアルミニウム膜(バッファ層12)との界面の密着性を向上することができる観点から、1分超であることが好ましい。尚、所定保持温度(所定保持温度範囲)が高くなるに従い所定保持時間の下限値は短くなり、所定保持温度が低くなるに従い所定保持時間の下限値は長くなる傾向にある。
【0045】
(CNT層形成工程)
次に、CVD装置(CVD炉)のチャンバー内に投入されている積層体に対して、CVD法(例えば、熱CVD法等)により触媒層表面にカーボンナノチューブを生成する。この場合において、まずチャンバー内にキャリアガスと反応ガス(アセチレン等の炭化水素ガス等の炭素原料ガス)を導入して、ガス導入と同時にチャンバー内の雰囲気を加熱してアルミニウム膜の表面を、炭素原料ガス導入温度からカーボンナノチューブ合成温度(典型的には、500℃以上900℃以下の範囲の温度)まで昇温させ、そのカーボンナノチューブ合成温度でカーボンナノチューブが生成するまで保持する。
【0046】
炭素原料ガス導入温度は、典型的には、バッファ層拡散工程の熱処理終了時点の温度と同じ温度である。例えば、当該熱処理が、所定温度範囲内から選ばれた所定保持温度まで昇温し、その所定保持温度で所定保持時間保持する熱処理である場合、炭素原料ガス導入温度は、当該熱処理終了時点のその所定保持温度と同じである。
【0047】
尚、炭素原料ガス導入温度は、カーボンナノチューブの合成温度の範囲内であれば任意の温度に設定しても良いが、その温度が高いと触媒層13を構成するカーボンナノチューブの種触媒粒子が凝集を起こして、粒子径が粗大化しすぎてしまう傾向にある。粒子径が粗大化しすぎてしまうと、カーボンナノチューブの成長性が低下してしまう傾向にある。従って、その温度は、700℃未満であることが好ましく、550℃未満であることがより好ましい。
【0048】
チャンバー内に供給された炭素原料ガスは、触媒表面で熱分解する。炭素原料ガスの熱分解反応により炭素が生成され、生成された炭素によりアルミニウム膜の表面上に炭素被膜が形成される。この場合、アルミニウム膜の表面に生成した炭素は、アルミニウム膜の表面に担持された種触媒(種触媒粒子)に固溶する。種触媒内に固溶した炭素の濃度が所定濃度以上にまで上昇すると、種触媒からカーボンナノチューブが析出する。析出したカーボンナノチューブが種触媒から成長することにより、触媒層13から成長した配向性のカーボンナノチューブが形成される(即ち、触媒層13上にCNT層14が形成される。)。以上により図1(A)及び図1(B)に示されたカーボンナノチューブ複合体が製造される。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。
【0050】
<実施例1>
図1(A)及び図1(B)に示されたように、矩形の一辺が凸部を有する形状の平面形状に切り出された銅箔の一主面及び他主面上に、矩形状にバッファ層12(アルミニウム膜)/触媒層13(FeTi種触媒粒子)/CNT層14を形成することによって、実施例1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0051】
まず、以下の「アルミニウム膜形成工程」及び「触媒層形成工程」を順次行うことによって、銅箔上に、アルミニウム膜及び触媒層をこの順で形成した積層体を得た。
【0052】
(アルミニウム膜形成工程)
スパッタリング法により、銅箔の一主面及び他主面上のそれぞれにアルミニウム膜(厚さ50nm)を形成した。
【0053】
(触媒層形成工程)
次に、アルミニウム膜上にFeTi(鉄−チタン合金)種触媒粒子(平均粒径5nm)を担持することにより、触媒層を形成した。まず、アルミニウム膜が形成された銅箔を、ディップコータによって、コーティング液に浸漬させた。コーティング液は、へプタン中にFeTi種触媒粒子を分散させることにより、調製した。次に、コーティング液からアルミニウム膜が形成された銅箔を引き上げた。これにより、銅箔上のアルミニウム膜の表面に担持されたFeTi種触媒で構成された触媒層(厚さ20nm)が形成された積層体を得た。即ち、アルミニウム膜の表面にFeTi種触媒粒子が担持された積層体を得た。
【0054】
(バッファ層拡散工程)
次に、この積層体を、CVD装置のチャンバー内の所定位置にセットした後、蓋をして、10Paまで真空引きを行った。次に、CVD装置のチャンバー内にキャリアガスとして、窒素ガスを5SML導入し、圧力を90kPaになるまで調整した。
【0055】
その後、室温から昇温速度1.5℃/分にて積層体の温度(表面温度)が500℃(保持温度)になるまでチャンバー内の雰囲気を加熱して昇温させ、積層体の温度が500℃に到達した後、同じ温度で5分間(保持時間)保持した。
【0056】
(CNT層(カーボンナノチューブ)形成工程)
温度保持が終了した後、その温度(500℃(炭素原料ガス導入温度))にてアセチレンガス(Cガス)及びキャリアガス(窒素ガス)を、Cガス:キャリアガス=4.0SML:17SLMで、チャンバー内に導入した。ガス導入と同時に、500℃から昇温速度1.5℃/分にて積層体を850℃になるまでチャンバー内の雰囲気を加熱して昇温させた。
【0057】
その後、積層体の温度が850℃に到達した後、同じ温度で2300秒間保持することにより、積層体のアルミニウム膜の表面の種触媒粒子からカーボンナノチューブを成長させて、カーボンナノチューブを形成した。以上により、実施例1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0058】
<実施例2>
バッファ層拡散工程における熱処理の保持時間を20分間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0059】
<実施例3>
バッファ層拡散工程における熱処理の保持時間を3分間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0060】
<実施例4>
バッファ層拡散工程における熱処理の保持温度を700℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0061】
<比較例1>
バッファ層拡散工程における熱処理の保持温度を350℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0062】
<比較例2>
バッファ層拡散工程における熱処理の保持時間を1分間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0063】
<比較例3>
バッファ層拡散工程における熱処理の保持温度を400℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0064】
<比較例4>
バッファ層拡散工程における熱処理の保持時間を20分間に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、比較例1のカーボンナノチューブ複合体を作製した。
【0065】
(評価)
(剥がれ確認(密着性の評価))
作製した実施例1乃至実施例4及び比較例1乃至比較例4の各カーボンナノチューブ複合体について、CNT層の剥がれ面積及び剥がれ割合を測定することによって、アルミニウム膜(バッファ層)と銅箔(導電性基材)との密着性を評価した。
【0066】
具体的には、CNT層の剥がれた領域(CNT層が形成されていない銅箔が露出されている領域(端子部を除く))の平面視の面積S1(両面の合計)を測定し、更に、CNT層形成を実施した領域の平面視の全体面積S2(両面の合計)に対するCNT層の剥がれた領域の平面視の面積(両面の合計)の割合(=(S1÷S2)×100)(%)を求めた。そして、下記評価基準に基づき、評価した。評価結果を表1に示す。
剥がれ割合0%(剥がれなし):◎
剥がれ割合10%以下:〇
剥がれ割合10%超:×
剥がれ割合は、10%を基準値として判定した。この基準値は、リチウムイオンキャパシタの電極の製造において、典型的に要求される最終的な重さのばらつきが、10%以下であることに基づいて定められた値である。
尚、実施例1乃至実施例3並びに比較例1及び比較例2については、カーボンナノチューブ複合体のCNT層の状態が確認できる写真を、図2(A)乃至図2(C)、並びに、図3(A)及び図3(B)に示す。
【0067】
(アルミニウム拡散距離の測定)
実施例1、実施例2及び実施例4、並びに、比較例1及び比較例2のそれぞれについて、バッファ層拡散工程を行った直後の積層体(触媒層及びアルミニウム膜が形成された銅箔)をCVD装置のチャンバーから取り出して、イオンミリング法にて断面出しを行った。
【0068】
その後、SEM/EDX(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法:Scanning Electron Microscope / Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)による断面分析観察を行った。即ち、銅箔の表面の深さ方向にポイント分析を実施した。
【0069】
そして、アルミニウムが検出された箇所のアルミニウムの原子濃度(原子%)、及び、銅箔の表面(銅箔と触媒粒子との界面)から深さ方向の距離を、グラフ(縦軸:Al濃度(原子%)、横軸:銅箔の表面から深さ方向の距離(nm))にプロットした。このグラフを図4(A)乃至図4(C)、並びに、図5(A)及び図5(B)に示す。更に、Al拡散距離(即ち、Alが1.0原子%以上存在する領域の最深部(即ち、固相拡散領域の深さ))を表1に示す。
【0070】
(目付け量の測定)
作製した実施例1、実施例2及び実施例4の各カーボンナノチューブ複合体について、CNT層の目付け量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示したように、実施例1乃至実施例4によれば、剥がれ評価が比較例1乃至比較例4に比べて良好であった。即ち、実施例1乃至実施例4は、積層体のAl拡散距離が850nm以上であるため、アルミニウム膜と銅箔との密着性が向上できることが確認できた。尚、実施例4は、Al拡散距離を求めていないが、同じ保持時間(5分)の実施例1の保持温度(500℃)より高い保持温度(700℃)であることから、実施例4のAl拡散距離は、少なくとも実施例1の拡散距離(1240nm)に比べて大きくなっていることが容易に推測できる。実施例4は、保持温度が実施例1乃至実施例3より高いため、種触媒粒子の凝集によって種触媒粒子が粗大化してしまうためカーボンナノチューブの成長性が実施例1乃至実施例3に比べて低下する傾向にあり、目付け量が実施例1乃至実施例3に比べて減少する傾向にあった。尚、更に、保持温度が700℃超であると、種触媒粒子の凝集によって種触媒粒子が粗大化してしまうため、カーボンナノチューブの成長性が更に低下してしまい、目付け量が更に減少してしまうことが推測される。
【0073】
<変形例>
以上、本発明の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0074】
例えば、上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態及び実施例の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
10…電極、10a…端子部、10b…電極部、11…導電性基材、12…バッファ層、13…触媒層、14…CNT(カーボンナノチューブ)層
図1
図2
図3
図4
図5