(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
本明細書中において、記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
本明細書中において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
【0011】
本明細書中において、シート面とは、シート状の部材において、そのシート全体として見たときにおける、シートの平面方向となる面を示すものであるとする。
本明細書中において、板、シート等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の頭部装着型の表示装置1を説明する図である。
図1では、表示装置1を鉛直方向上側から見た様子を示している。
図2は、第1実施形態の表示装置1に用いられる光学シート20の詳細を説明する図である。
図2(a)は、光学シート20の単位形状21aの配列方向及び厚み方向に平行な断面における断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のb部断面図である。
図2(c)は、
図2(a)のc部詳細を示す図であり、
図2(d)は、
図2(b)のd部詳細を示す図である。
図3は、第1実施形態の表示装置1によって表示された画像の例を示す図である。
図4は、比較例の表示装置5を説明する図である。
図4(a)は、比較例の表示装置5の構成を説明する図であり、
図1に対応する図である。
図4(a)では、理解を容易にするために、表示装置5として、映像源51とレンズ52のみを示している。
図4(b)は、比較例の表示装置5によって表示された画像の例を示す図である。
【0013】
なお、
図1を含め以下に示す図中及び以下の説明において、理解を容易にするために、観察者がその頭部に表示装置1を装着した状態において、鉛直方向(上下方向)をZ方向とし、水平方向をX方向及びY方向とする。また、この水平方向のうち、光学シートの厚み方向をY方向とし、その厚み方向に直交する左右方向をX方向とする。このY方向の−Y側を観察者側とし、+Y側を背面側とする。
【0014】
表示装置1は、観察者がその頭部に装着し、観察者の眼前に映像を表示する、いわゆるヘッドマウントディスプレイ(HMD)である。
図1に示すように、本実施形態の頭部装着型の表示装置1は、筐体30の内側に、映像源11と、レンズ12と、光学シート20とを備えており、筐体30が観察者の眼前となるようにその頭部に装着することによって、映像源11に表示された映像を光学シート20、レンズ12を介して観察者の眼Eに視認させることができる。
なお、
図1において、表示装置1は、観察者の両眼E1,E2に対して映像を表示する例を挙げて説明するが、これに限定されるものでなく、例えば、観察者の片側の眼E1に対して配置され、その眼E1に対して映像を表示する形態としてもよい。
【0015】
筐体30は、左右方向に横長の矩形の箱型の筐体であり、その内側に、映像源11を保持する保持部31、光学シート20(20A,20B)を保持する保持部32、レンズ12(12A,12B)を保持する保持部33を備えている。この筐体30は、例えば、不図示のベルト等により、観察者の頭部に装着可能である。
保持部31は、映像源11を保持する部材であり、その映像源11の表示面11a側の面に、観察者の眼E(E1,E2)及びレンズ12(12A,12B)に対応する位置に開口部311(311A,311B)を有している。本実施形態では、映像源11は、この保持部31(すなわち、表示装置1)に着脱可能に保持される。映像源11から出射した映像光Vは、この開口部311(311A,311B)を通って光学シート20(20A,20B)へ入射する。
【0016】
保持部32は、保持部31及び映像源11よりも観察者側(−Y側)に位置し、光学シート20を保持する部材である。保持部32は、開口部311(311A,311B)に対応する位置に設けられた開口部321(321A,321B)内に、光学シート20(20A,20B)が嵌めこまれ、保持されている。
この保持部32と前述の保持部31とは、一体となってY方向に移動可能であり、Y方向において所望の位置で固定可能である。したがって、観察者の視力等に応じて、映像源11及び光学シート20とレンズ12との間の距離(レンズ12に対するY方向における位置)を調節可能(ピント調節可能)である。また、保持部32と保持部31とは、それぞれ独立してY方向に移動可能であり、Y方向において所望の位置で固定可能である。これにより、映像源11と光学シート20との間の距離(映像源11と光学シート20とのY方向における距離)を調整可能である。
なお、これに限らず、保持部31及び保持部32は、Y方向の位置が固定された形態としてもよい。
【0017】
保持部33は、保持部32及び光学シート20よりも観察者側(−Y側)に位置し、レンズ12(12A,12B)を保持する部材である。この保持部33は、光学シート20(20A,20B)に対応する位置に開口部331(331A,331B)を有し、その開口部331(331A,331B)内にレンズ12(12A,12B)が嵌めこまれ、保持されている。
【0018】
映像源11は、映像光Vを出射し、表示面11aに映像を表示するマイクロディスプレイであり、例えば、透過型の液晶表示デバイスや、反射型の液晶表示デバイス、有機EL等を使用することができる。本実施形態の映像源11は、例えば、対角が5インチの有機ELディスプレイが使用される。
映像源11は、その表示面11aが観察者側(−Y側)となるようにして、保持部31に保持されている。
なお、本実施形態では、この表示装置1は、映像源11を1つ備える例を示したが、これに限らず、例えば、後述するレンズ12A,12B及び観察者の眼E1,E2にそれぞれ対応する2台の映像源を備える形態としてもよい。
【0019】
レンズ12(12A,12B)は、映像源11から出射された映像光Vを拡大して観察者側に出射する凸レンズである。本実施形態では、映像源11及び光学シート20(20A,20B)よりも観察者側(−Y側)に配置されている。レンズ12は、透光性の高いガラス製又は樹脂製である。
レンズ12の映像源側(背面側、+Y側)の表面には、反射抑制層12aが形成されている。この反射抑制層12aは、例えば、汎用の反射防止機能を有する材料(例えば、フッ化マグネシウム(MgF
2)、二酸化ケイ素(SiO
2)、フッ素系光学用コーティング剤等)を所定の膜厚でコーティングする等により設けてもよいし、光の波長より小さなピッチで形成された微小な凹凸形状を有するモスアイ構造を光の入射側の面に有することにより反射抑制機能を奏する層をレンズ12の映像源側に一体に積層して設けてもよい。また、反射抑制層12aは、高屈折率層と低屈折率層とが複数積層された多層膜により形成されたものを用いてもよい。
【0020】
このような反射抑制層12aを設けることにより、レンズ12に入射する光がレンズ12の映像源側で反射して光学シート20側へ向かい、光学シート20の表面で再度反射する等により迷光となることを抑制し、映像のコントラストや明るさの向上を図ることができる。
また、反射抑制層12aは、さらに、レンズ12の観察者側(−Y側)の面に設けてもよい。この位置にさらに反射抑制層12aを設けることにより、レンズ12から映像光が出射する際に、レンズ12と空気との界面で反射し、レンズ12内で迷光となることを抑制でき、映像のコントラスト等を向上できる。
【0021】
本実施形態では、光学シート20は、
図1に示すように、映像源11とレンズ12との間に配置されている。光学シート20は、映像源11から出射した映像光Vを微少に拡散する拡散機能を有する光透過性のあるシートである。
本実施形態では、観察者の両眼E1,E2に対応して、それぞれ、レンズ12A,12B及び光学シート20A,20Bが設けられている。しかし、これに限らず、例えば、レンズ12A,12Bの領域をカバーできる程度に大きい1枚の光学シート20を、レンズ12よりも映像源側(背面側、−Y側)に配置する形態としてもよい。
【0022】
図1では、光学シート20と映像源11の表示面11aとが所定の寸法だけ離間している形態を示しているが、これに限らず、光学シート20と映像源11の表示面11aとの間に、中間層が位置する形態とし、映像源11の表示面11aから光学シート20の観察者側の面までの間であって少なくとも映像光Vのうち観察者の眼Eに到達する光(観察者が視認する光)が透過する領域に、空気層が存在していない形態としてもよい。この場合、映像源11の表示面11aから光学シート20の観察者側の面までの間であって少なくとも映像光Vのうち観察者の眼Eに到達する光(観察者が視認する光)が透過する領域における各部材間の界面における屈折率差は、0.3未満とすることが好ましい。このような形態とすることにより、界面反射による映像光Vの光量損失の低減や迷光の抑制等を図ることができる。
このような中間層としては、所望する光学性能等に応じて適宜採用可能であるが、例えば、インデックスマッチング用の樹脂等が挙げられる。
【0023】
従来、主に使用されている頭部装着型の表示装置5(以下、比較例の表示装置5という)は、
図4(a)に示すように、上述の光学シート20を備えていない形態であり、映像源51から出射された映像光Vをレンズ52により拡大して、その映像を観察者に表示していた。
映像源51及び映像源11に用いられる有機EL等のディスプレイは、その表示部に映像を形成する画素領域G1が複数配列されており、また、各画素領域G1間には映像の形成に寄与しない非画素領域G2が設けられている。そのため、比較例の表示装置5では、映像源51から出射する映像光Vにより表示される映像は、レンズ52を介して拡大された場合に、
図4(b)に示すように、画素領域G1による映像F1だけでなく、非画素領域G2が起因となる非映像領域F2も拡大されてしまう。そして、非映像領域F2も明瞭に観察者に視認され、鮮明な映像表示の妨げとなってしまう場合があった。
【0024】
これに対して、本実施形態の表示装置1では、上述の光学シート20を設けることにより、映像源11から出射した映像光を微少に拡散させ、
図3に示すように、その拡散された映像光によって、非画素領域G2が起因となる非映像領域F2が観察者に視認されてしまうことを抑制することができる。
【0025】
本実施形態の光学シート20は、
図2に示すように、映像源側(背面側、+Y側)から順に、第1光学層21、第2光学層22が積層されている。光学シート20は、この第1光学層21及び第2光学層22の界面201と、第2光学層22と空気との界面202とに、それぞれ単位形状21a、単位形状22aが複数形成されている。
この
図2等において、xyz直交座標系を用いて光学シートにおける各方向について説明する。y方向は、上述の光学シート20の厚み方向(Y方向)と平行な方向(光学シート20のシート面の法線方向)であり、x方向及びz方向は、光学シート20のシート面に平行な方向であって、互いに直交している。
このx方向及びz方向が、X方向(左右方向)及びZ方向(鉛直方向)となす角度については、ここでは特に限定しない。
【0026】
第1光学層21は、光学シート20の厚み方向(Y方向)において、第2光学層22よりも映像源側(+Y側、+y側)に位置し、光透過性を有する層である。第1光学層21の映像源側の面は、略平坦に形成されている。第1光学層21の観察者側(−Y側)の面、すなわち、第1光学層21と第2光学層22との界面201には、
図2(a)に示すように、凸状の単位形状21aが複数形成されている。本実施形態では、単位形状21aは、観察者側(−Y側、−y側)に凸となっている。
【0027】
単位形状21aは、第1光学層21の観察者側の面に沿って、第1の方向(z方向)に延在し、この延在方向に直交する第2の方向(x方向)に複数配列されている。また、単位形状21aは、配列方向及び光学シート20の厚み方向に平行な面(xy面)における断面形状が略円弧状に形成されたレンチキュラーレンズ形状である。ここで、略円弧状とは、真円の円弧だけでなく、楕円や長円等の一部を含む曲線状の形状を含むものをいう。なお、本実施形態では、単位形状21aの断面形状を上記のように略円弧状としたが、これは一例であって、これに限定されるものではない。
この単位形状21aの配列ピッチは、P1であり、円弧状の曲率半径はR1である。また、単位形状21aの配列方向における幅W1は、配列ピッチP1に等しい。
【0028】
第2光学層22は、第1光学層21の観察者側(−Y側、−y側)に位置する光透過性を有する層である。第2光学層22の観察者側の面は、光学シート20を透過した映像光が出射する面(空気との界面202)であり、
図2(b)に示すように、凸状の単位形状22aが複数形成されている。本実施形態では、単位形状22aは、観察者側(−Y側,−y側)に凸となっている。
この単位形状22aは、第2光学層22の観察者側の面に沿って、第2の方向(x方向)に延在し、この延在方向に直交する第1の方向(z方向)に複数配列されており、配列方向及び光学シート20の厚み方向に平行な面(yz面)における断面形状が略円弧状に形成されたレンチキュラーレンズ形状である。なお、本実施形態では、単位形状22aの断面形状を上記のように略円弧状としたが、これは一例であって、これに限定されるものではない。
この単位形状22aの配列ピッチは、P2であり、円弧状の曲率半径はR2である。また、単位形状22aの配列方向における幅W2は、配列ピッチP2に等しい。
【0029】
光学シート20の厚み方向(シート面の法線方向、Y方向、y方向)から見て、第1光学層21に設けられた単位形状21aの延在方向(z方向)と第2光学層22に設けられた単位形状22aの延在方向(x方向)とは、直交している。
また、光学シート20の厚み方向から見て、単位形状21aの配列方向(x方向)と単位形状22aの配列方向(z方向)とは、直交している。
なお、光学シート20の厚み方向(シート面の法線方向、Y方向、y方向)から見て、単位形状22aの延在方向(x方向)と単位形状21aの延在方向(z方向)とは、直交に限らず、80〜100°の角度をなすように交差していてもよい。同様に、光学シート20の厚み方向から見て、単位形状21aの配列方向(x方向)と単位形状22aの配列方向(z方向)とは、直交に限らず、80〜100°の角度をなすように交差していてもよい。
【0030】
また、光学シート20と映像源11との距離に応じて、光学シート20が必要とされる拡散作用の強度が変化する。すなわち、光学シート20と映像源11との距離よって、単位形状21a,22aの配列ピッチP1,P2の好ましい範囲は変化する。したがって、配列ピッチP1,P2は、光学シート20と映像源11との距離や所望する拡散作用の強度に応じて適宜設定してよい。
仮に、配列ピッチP1,P2が光学シート20と映像源11との距離や所望する拡散作用の強度等に応じて設定される好ましい範囲よりも小さいと、単位形状21a,22aを製造するのが困難となったり、また、光の回折現象が生じやすくなって回折光の影響によって映像が不鮮明になったりするので好ましくない。配列ピッチP1,P2が光学シート20と映像源11との距離や所望する拡散作用の強度等に応じて設定される好ましい範囲よりも大きいと、隣り合う単位形状間のラインが筋状に視認されてしまう場合があり、好ましくない。
本実施形態では、単位形状21aと単位形状22aとは、その配列ピッチが等しく、P1=P2であるが、曲率半径が異なっており、R1<R2となっている。
【0031】
第1光学層21は、光透過性の高いPC(ポリカーボネート)樹脂、MS(メチルメタクリレート・スチレン)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、アクリル系樹脂等により形成された基材層の片面に、光透過性の高いウレタンアクリレート樹脂やエポキシアクリレート樹脂等の紫外線硬化型樹脂等によって、複数の単位形状21aが賦形されて形成されている。
第2光学層22は、光透過性の高いウレタンアクリレート樹脂や、エポキシアクリレート樹脂等の紫外線硬化型樹脂等により形成されている。
本実施形態では、第1光学層21の単位形状21aは、第2光学層22よりも屈折率が高い材料で形成されている。
【0032】
また、本実施形態の光学シート20では、界面201を介して互いに隣接する領域の屈折率差、すなわち、単位形状21aと第2光学層22との屈折率差Δn1は、0.005≦Δn1≦0.2を満たすように形成されている。
この屈折率差Δn1が0.005未満である場合、界面201での屈折率差が小さくなりすぎ、界面201における映像光の屈折が生じ難くなってしまい、十分な拡散作用が発揮されなくなるため望ましくない。また、屈折率差Δn1が0.005未満である場合、その界面201で隣接する領域の樹脂の屈折率のバラツキが拡散特性に影響が大きくなったり、波長分散の影響が大きくなったりするため好ましくない。
屈折率差Δn1が0.2よりも大きい場合、界面201における光の屈折が大きくなりすぎてしまい、拡散作用が大きくなり過ぎ、映像が不鮮明になるので望ましくない。また、屈折率差Δn1が0.2よりも大きい場合、そのような屈折率差を有する層構成を実現するための材料コストが嵩んだりする。
【0033】
さらに、本実施形態の光学シート20は、第1光学層21の映像源側(+Y側、+y側)及び観察者側(−Y側、−y側)に、不図示の反射抑制層が設けられている。
光学シート20の両面に設けられた反射抑制層は、レンズ12の映像源側に設けられた反射抑制層12aと同様に、例えば、汎用の反射防止機能を有する材料(例えば、フッ化マグネシウム(MgF
2)、二酸化ケイ素(SiO
2)、フッ素系光学用コーティング剤等)を所定の膜厚でコーティングする等により設けてもよい。
また、映像源11が表示装置に固定されて着脱不可能である場合等には、光の波長より小さなピッチで形成された微小な凹凸形状を有するモスアイ構造を光の入射側の面に有することにより反射抑制機能を奏する層を、光学シート20の映像源側に一体に積層して設けてもよい。
【0034】
反射抑制層を光学シート20の映像源側に設けることにより、光学シート20に入射する光が光学シート20の映像源側の面で反射して映像源11側へ向かうことによる映像の明るさの低下を抑制できる。
また、反射抑制層を光学シート20の映像源側に設けることにより、光学シート20に入射する光が光学シート20の映像源側の面で反射して映像源11側へ向かい、映像源11の表示面11aで再度反射する等により迷光となることを抑制し、映像のコントラスト向上を図ることができる。
また、反射抑制層を光学シート20の観察者側の面に設けることにより、光学シート20から映像光が出射する際に、光学シート20と空気との界面で反射し、光学シート20内で迷光となる光を低減でき、映像のコントラストや明るさ等を向上できる。
なお、反射抑制層は、上記の例に限らず、光学シート20のどちらか片面だけ、例えば、映像源側のみに設けられる形態としてもよい。
【0035】
また、光学シート20の映像源側(+Y側、+y側)や観察者側(−Y側、−y側)の面に、ハードコート機能や、防汚機能、帯電防止機能等を有する層を適宜設けてもよい。
このような層を設けることにより、例えば、映像源11が筐体30に着脱可能である場合に、映像源11を筐体30から外したときに、光学シート20が傷ついたり、汚れが付着したりや、埃やごみ等が付着したりして、映像の視認の妨げになることを抑制できる。
【0036】
次に、光学シート20の映像光Vを拡散する作用等について説明する。
光学シート20は、上述したように、映像光Vを拡散する作用によって、非画素領域G2が起因となる非映像領域F2が観察者に視認されてしまうことを抑制する。
光学シート20による拡散作用が強すぎると、映像光Vが必要以上に拡散されてしまい、映像の質が劣化してしまう。一方、光学シート20による拡散作用が弱すぎると、非映像領域F2が観察者に視認されてしまう。したがって、光学シート20は、適切な拡散作用を備えるものとしなければならない。
また、この光学シート20による拡散作用は、その最適な強さは、映像源11やレンズ12との位置関係によっても変化する。
【0037】
映像源11からの映像光Vは、光学シート20により拡散され、さらにレンズ12により拡大して、観察者が観察するので、レンズ12により実際に観察される範囲において拡散される光の成分が重要である。また、光学シート20は、複数の単位形状21aが配列された界面(第1光学層21と第2光学層22との界面201)と、複数の単位形状22aが配列された界面(第2光学層22と空気との界面202)とを備えており、各界面において拡散される。
【0038】
(拡散作用に関する指標1)
図5は、第1実施形態の光学シート20の単位形状による拡散角と輝度との関係の一例を示す図である。
光学シート20の単位形状が複数配列された界面のどちらかを通過した光の輝度と拡散角との関係が、例えば、
図5のようになったとし、このうち、レンズ12を通して観察者に届く成分は、拡散角θが−φから+φの範囲の成分であるとする。この範囲に拡散される光の成分をその界面の拡散度合いの指標として用いれば、単位形状が複数配列された界面として適切な拡散作用を評価できる。
また、映像源11の画素領域G1が配列されている画素配列ピッチPPが変ると、必要な拡散作用の程度も変化するので、この画素配列ピッチPPも重要なパラメータとなる。
さらに、レンズ12と光学シート20の単位形状が複数形成された界面との間の距離が変化すれば、単位形状が複数形成された界面が映像光Vを拡散させる効果も変化する。
【0039】
そこで、単位形状21a,22aが形成された各界面201,202による拡散角θにおける輝度を、それぞれI
1(θ),I
2(θ)とし、レンズ12と単位形状21a,22aが形成された各界面201,202と間の距離をK1,K2とし、レンズ12の有効半径をR3としたとき、−φから+φの範囲の成分に関して単位形状21a,22aが形成された各界面201,202の平均拡散角θave1,θave2を、それぞれ、
【0042】
と定義する。単位形状21a,22aが形成された各界面201,202と映像源11の表示層11eとの間の距離をL1,L2とし、画素領域G1が配列されている画素配列ピッチをPPとし、θave1×L1/PP、θave2×L2/PPを単位形状21a,22aによる映像光Vを拡散する作用によって、非画素領域G2の起因となる非映像領域F2が観察者に視認されてしまうことを抑制する程度を示す指標、すなわち、ぼかし度合いの指標として設定する。
なお、表示装置1に用いられる映像源11の画素領域G1の画素配列ピッチPPは、400〜500ppi(pixel per inch)であり、本実施形態では、PP=0.0508mm(500ppi)である。
【0043】
図6は、距離K1,K2と距離L1,L2とレンズ12の有効半径R3を示す図である。
単位形状21a,22aは、いずれも光学シート20の厚み方向(Y方向、y方向)に凸となる形状である。また、レンズ12についても、複数のレンズを用いることが可能である。よって、レンズ12と単位形状21a,22aが複数形成された各界面201,202との間の距離K1,K2については、単位形状21a,22aの平均高さとなる位置から、レンズ12の中央(単一のレンズであれば主点)までの距離とする。
【0044】
また、映像源11は、例えば、有機ELディスプレイである場合には、
図6に例示するように、観察者側から、透明基板11b、透明電極11c、有機正孔輸送層11d、有機発光層(表示層)11e、有機電子輸送層11f、金属電極11gのように、複数の層が積層されている。非画素領域G2は、表示層11eに形成されている。
よって、上述の距離L1,L2は、表示層11eから、単位形状21a,22aの高さの平均高さとなる位置までとするとよい。
【0045】
各種パラメータを変化させて複数種類の光学シート20を作成し、実際の見え方を評価したところ、非映像領域F2が観察者に視認されてしまうことを抑制する程度とθave1×L1/PP、θave2×L2/PPとの間には、よい相関関係があり、
15≦θave1×L1/PP≦60 ・・・(式1)
15≦θave2×L2/PP≦60 ・・・(式2)
上記2式をともに満たす場合、非映像領域F2が観察者に視認されにくく、画素領域G1(画素)が独立して見えず、かつ、映像がぼけ過ぎ
ない、良好な画像を観察することができた。
また、より厳しい条件、すなわち、
23≦θave1×L1/PP≦35 ・・・(式3)
23≦θave2×L2/PP≦35 ・・・(式4)
上記2式をともに満たす場合、最適な画像を観察することが可能であった。
【0046】
θave1×L1/PP、θave2×L2/PPの少なくとも一方が15未満である場合、観察者に画素領域G1(画素)が独立して見え、また、非映像領域F2が目立って見えてしまう。θave1×L1/PP、θave2×L2/PPがともに15以上となると、画素領域G1が拡散作用により独立して見えず、かつ、非映像領域F2が視認し難くなる効果が認められる。θave1×L1/PP、θave2×L2/PPがともに23以上であると、画素領域G1(画素)が最適にぼかされ、観察者が非映像領域F2を殆ど確認できなくなる。
また、θave1×L1/PP、θave2×L2/PPの少なくとも一方が35を超えると、画素領域G1が独立して見えないが、双方が23以上35以下を満たす場合に比べて、映像の鮮明度が若干低下する。そして、θave1×L1/PP、θave2×L2/PPの少なくとも一方が60より大きい場合、観察者に、画素領域G1が目立って見えることはないが、映像の解像度が低下して、その鮮明度が著しく損なわれ、詳細が確認不可となる。
したがって、上記(式1),(式2)をともに満たすことが好ましく、(式3),(式4)をともに満たすことがより好ましい。
【0047】
(拡散作用に関する指標2)
また、光学シート20と映像源11とレンズ12との相対的な位置関係を考慮することにより、光学シート20による映像光Vを拡散する作用によって、非画素領域G2が起因となる非映像領域F2が観察者に視認されてしまうことを抑制する程度を示す指標を設定可能である。
【0048】
ここで、単位形状21aが形成された界面201を介して互いに隣接する領域(単位形状21a及び第2光学層22)の屈折率のうち屈折率が高い方の屈折率をnaとし、屈折率がnaよりも低い方の屈折率をnbとする。また、単位形状22aが形成された界面202を介して互いに隣接する領域(第2光学層22及び空気)の屈折率のうち屈折率が高い方の屈折率をncとし、屈折率がncよりも低い方の屈折率をndとする。このとき、単位形状21a,22aによって映像光Vが拡散される程度を表す指標としての拡散度D1,D2を、
D1=(P1/R1)×(1−(nb/na))×L1
D2=(P2/R2)×(1−(nd/nc))×L2
と定義することができる。
なお、本実施形態では、単位形状21aの屈折率n1は、第2光学層22の屈折率n2よりも大きいので、na=n1、nb=n2であり、nc=n2、nd=1である。
【0049】
この拡散度D1,D2は、単位形状21a,22a形成された界面201,202において光を拡散する程度を表す。画素領域G1が配列されている画素配列ピッチPPとこの拡散度D1,D2との比、すなわち、D1/PP,D2/PPを求めれば、単位形状21a,22aが形成された界面201,202が、非画素領域G2が起因となり非映像領域F2が観察者に視認されてしまうことを抑制する程度を表す指標として用いることが可能である。
【0050】
次に、各種パラメータを変化させて複数種類の光学シート20を作成し実際の見え方を評価したところ、非映像領域F2が観察者に視認されてしまうことを抑制する程度とD1/PP,D2/PPとの間には、よい相関関係があり、
1.0≦D1/PP≦2.0 ・・・(式5)
1.0≦D2/PP≦2.0 ・・・(式6)
上記2式をともに満たす場合に、非映像領域F2が観察者に視認されにくく、画素領域G1(画素)が独立して見えず、かつ、映像がぼけ過ぎ
ない、良好な画像を観察することができるとわかった。
仮に、D1/PP,D2/PPの少なくとも一方が1.0未満である場合、観察者に画素領域G1(画素)が独立して見え、非映像領域F2も観察者に視認されてしまう。また、D1/PP,D2/PPの少なくとも一方が2.0よりも大きい場合、観察者に映像がぼやけて視認される。したがって、上記(式5),(式6)をともに満たすことが好ましい。
【0051】
また、より厳しい条件、すなわち、
1.2≦D1/PP≦1.7 ・・・(式7)
1.2≦D2/PP≦1.7 ・・・(式8)
上記2式をともに満たすならば、非映像領域F2が殆ど視認されず、画素領域G1(画素)が独立して見えず、かつ、映像がぼけ過ぎない、最適な画像を観察することが可能であった。
【0052】
このように、光学シート20に関して、界面201,202におけるD1/PP,D2/PPの値の範囲をそれぞれ規定することによって、本実施形態の表示装置1は、映像源11から出射した映像光Vを単位形状21aの配列方向(x方向)や単位形状22aの配列方向(z方向)に微少に拡散することができる。これにより、表示装置1は、観察者に鮮明な映像を表示するとともに、映像光Vの微少な拡散によって映像源11の非映像領域F2が視認されることを抑制することができる。
【0053】
なお、単位形状21a,22aの断面形状が楕円形状や長円の一部形状であって、完全な円弧ではない場合には、その形状を円弧で近似して、その円弧形状の半径をR1,R2として演算すればよい。
【0054】
(拡散作用を得るための指標)
次に、単位形状21a,22aが形成された界面201,202において、その単位形状の配列ピッチP1,P2と、各界面と表示層11eとの距離L1,L2との関係について説明する。
光学シート20は、映像源11の表示層11eとの距離L1,L2に応じて、単位形状21a,22aの好ましい配列ピッチP1,P2が異なる。これは、光学シート20が表示層11eに近いと画素(画素領域G1)と単位形状との間でモアレが生じやすくなり、光学シート20が表示層11eから遠いと回折が生じやすくいなるためである。
単位形状21a,22aの配列ピッチP1,P2と距離L1,L2とは、
0.005≦P1/L1≦0.05 ・・・(式9)
0.005≦P2/L2≦0.05 ・・・(式10)
上記2式をともに満たすことが好ましく、
0.01≦P1/L1≦0.03 ・・・(式11)
0.01≦P2/L2≦0.03 ・・・(式12)
上記2式をともに満たすことがより好ましい。
本実施形態では、P1/L1=0.02、P2/L2=0.02であり、上記の好ましい範囲及びより好ましい範囲を満たしている。
【0055】
P1/L1、P2/L2が0.005よりも小さい場合、単位形状21a,22aと画素(表示層11e)との距離が離れすぎて光学シート20に入光する光の平行度が高くなったり、単位形状21a,22aのピッチが小さくなり過ぎたりして、単位形状21a,22aで回折が生じ、十分な拡散度合が得られない場合がある。
また、P1/L1、P2/L2が0.05より大きい場合、単位形状21a,22aと画素(表示層11e)との距離が近すぎて、画素と単位形状21a,22aとの間でモアレが生じやすくなる。
従って、P1/L1、P2/L2が、ともに上記範囲を満たすことが好ましい。
【0056】
(視野角と半値角に関して)
さらに、本実施形態の光学シート20は、映像源側の面から入射角度0°で入射して観察者側に出射した透過光の半値角をαとし、透過光の輝度が最大輝度の1/20となる視野角をβとするとき、β≦5×αを満たすようにして形成されることが好ましい。
ここで、光学シート20の半値角αとは、光の輝度が最大値となる光学シート20のシート面の観察位置から、単位形状の配列方向及び延在方向において、光の輝度が最大値の半分の値になる観察角度のうち絶対値が最も大きい角度をいう。また、視野角βは、光の輝度が最大値となる光学シート20のシート面の観察位置から、単位形状の配列方向及び延在方向において、光の輝度が最大値の1/20の値になる観察角度のうち絶対値が最も大きい角度をいう。
【0057】
仮に、視野角βが5×αよりも大きい場合、輝度の低い映像光の拡散される範囲が広くなりすぎてしまい、映像の鮮明さが低下してしまうので望ましくない。
また、非画素領域G2が起因となる非映像領域F2を目立たなくする効果をより効果的に奏する観点から、この視野角βは、半値角αに略等しいか、それに近い値であることがより望ましい。
【0058】
次に、映像源11から出射された映像光Vが観察者の眼E(E1,E2)に届くまでの動作について説明する。
図1に示すように、映像源11から出射した映像光Vは、光学シート20(20A,20B)の映像源側(+Y側、+y側)の面に入射する。そして、光学シート20に入射した映像光Vは、第1光学層21を透過して、第1光学層21及び第2光学層22との界面201に形成された複数の単位形状21aによって、単位形状21aの配列方向(x方向)に微少に拡散して第2光学層22内を透過する。
第2光学層22を透過した映像光Vは、第2光学層22空気との界面202に複数形成された単位形状22aによって、単位形状22aの配列方向(z方向)に微少に拡散して光学シート20の観察者側(−Y側、−y側)の面から出射する。
光学シート20を透過した映像光Vは、レンズ12(12A,12B)へ入射する。そして、レンズ12により、映像光Vが拡大され、観察者側(−Y側)へ出射する。
【0059】
映像光Vは、光学シート20により単位形状21a,22aの配列方向(x方向、z方向)に微少に拡散させられる。そのため、レンズ12により画像が拡大されても、観察者の眼Eによって視認される画像としては、
図3に示すように、比較例の表示装置5の場合に比して(
図4(b)参照)、映像源11の非画素領域G2が起因となる非映像領域F2が観察者に目立って視認されてしまうことを極力抑制することができ、鮮明な映像を表示することができる。
【0060】
光学シート20が好ましい拡散作用を得るためには、前述の(式9)及び(式10)をともに満たすことが好ましく、(式11)及び(式12)をともに満たすことがより好ましい。これにより、モアレや回折等を生じることなく、光学シート20は、映像光Vを拡散することができる。
また、光学シート20の拡散作用を好ましい範囲とするためには、指標1の(式1)及び(式2)、又は、指標2の(式5)及び(式6)の少なくとも一方の組み合わせを満たすことが好ましく、双方を満たすことがより好ましい。これにより、画素(画素領域G1)が独立して見えずに、かつ、映像がぼけ過ぎずない、良好な画像を観察することができる。
さらに、光学シート20の拡散作用をより最適なものとするためには、より厳しい条件である指標1の(式3)及び(式4)、又は、指標2の(式7)及び(式8)の少なくとも一方の組み合わせを満たすことがより好ましい。
また、光学シート20は、前述の半値角αと視野角βとが、β≦5×αを満たすようにして形成されることが好ましい。
【0061】
次に、本実施形態の表示装置1に用いられる光学シート20の製造方法について説明する。
図7は、光学シート20の製造工程の一例を示す図である。
図7では、光学シート20の製造装置の一部を示している。
光学シート20の製造装置700は、ロール状に巻き取られたシート状の基材21Aを供給するロール70と、第1ロール71、第2ロール72、第3ロール73、第4ロール74、第5ロール75、第6ロール76、ダイ77,78、紫外線照射器79,80を有している。
第1ロール71及び第4ロール74は、押圧ロールである。第2ロール72と第5ロール75とは、その外周面に単位形状21a,22aを賦形する凹形状が複数形成された成形型(ロール版)である。第3ロール73及び第6ロール76は、剥離ロールである。
【0062】
光学シート20の第1光学層21は、シート状の基材21Aの片面に、単位形状21aを形成する紫外線硬化型樹脂をダイ77から塗布し、単位形状21aに対応する凹形状が設けられた成形型である第2ロール72を第1ロールにより押圧し、紫外線照射器79により紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させる。そして、第3ロール73により、第2ロール72から離型し、第1光学層21が形成される。
続いて、第1光学層21の単位形状21aの上に、ダイ78から第2光学層22を形成する紫外線硬化型樹脂を塗布し、単位形状22aに対応する凹形状を有する成形型である第5ロール75を第4ロール74により押圧し、紫外線照射器80により紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させる。そして、第6ロール76により、第5ロール75から離型し、複数の単位形状22aが賦型された第2光学層22が形成される。
【0063】
このとき、第2光学層22は、単位形状22aの延在方向が、第1光学層21の単位形状21aの延在方向と互いに直交するように、その成形型が配置される。すなわち、上述の第2ロール72と第5ロール75とは、各単位形状を賦形する凹形状の配列方向(延在方向)が、流方向から見て直交するように形成されている。
これにより、第1光学層21、第2光学層22が積層された状態となり、さらに、不図示の反射抑制層等を適宜設けたのち、所定の形状及び大きさに裁断することにより、光学シート20が完成する。
【0064】
このような製法を採用することにより、例えば、片面に単位形状21aが形成されたシート状の部材と、片面に単位形状22aが形成されたシート状とを、各単位形状の延在方向が直交するように配置して、光透過性を有する接着剤等を貼合する場合に比べて、部材数が少なく、光学シートの製造が容易である。また、このような製法を採用することにより、光学シート20の層数も低減でき、層間での不要な反射損失等を低減できる。
【0065】
以上のことから、本実施形態によれば、表示装置1は、映像源11から出射した映像光Vを微少に拡散することができ、観察者に鮮明な映像を表示するとともに、画素領域G1が独立して見えず、かつ、映像源11の非画素領域G2が起因となる非映像領域F2が観察者に視認されてしまうことを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態の表示装置1は、光学シート20の厚み方向(シート面の法線方向、Y方向、y方向)から見て、単位形状21aの延在方向(z方向)と単位形状22aの延在方向(x方向)とが直交し、単位形状21aの配列方向(x方向)と単位形状22aの配列方向(z方向)とが直交しているので、映像源11から出射した映像光を複数の方向(単位形状21a,22aの配列方向であるx方向,z方向)に拡散させることができ、非映像領域F2をより効果的に目立たなくすることができる。
【0067】
また、本実施形態の表示装置1は、上述のように、レンズ12よりも映像源側(+Y側)に光学シート20が位置するので、映像源11が表示装置1(筐体30)から外された状態であったとしても、侵入した埃やごみ等の異物からレンズ12を保護することができ、異物によってレンズ12が破損したり汚れたりするがなく、光学シート20の映像源側表面が汚れたり曇ったりした場合等も、単位形状を傷つけることなく、ふき取ることが可能である。
また、本実施形態の表示装置1は、光学シート20の両面に反射抑制層を備え、レンズ12の映像源側の面に反射抑制層12aを備えているので、迷光を抑制し、映像の明るさやコントラストを向上できる。
【0068】
特に、モスアイ構造を有する反射抑制層については、高い反射抑制効果を有しているが、破損しやすいために観察者の指等が触れない位置に設けることが重要となる。本実施形態の表示装置1では、レンズ12よりも映像源側(+Y側)に光学シート20が位置するので、そのような反射抑制層を光学シート20の観察者側やレンズ12の映像源側等に設けることができ、より高い反射抑制効果が得られ、映像のコントラストや明るさの向上を図ることができる。
【0069】
(第2実施形態)
第2実施形態に示す光学シート40は、第3光学層43を第2光学層22の観察者側(−Y側、−y側)に備え、単位形状42aが、第2光学層42と第3光学層43との界面402に形成されている点が、第1実施形態の光学シート20とは異なる。したがって、以下の第2実施形態に関する説明において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図8は、第2実施形態の光学シート40を説明する図である。
図8(a)は、光学シート40の単位形状41aの配列方向及び厚み方向に平行な断面における断面図であり、
図8(b)は、
図8(a)のb部断面図である。
図8(c)は、
図8(a)のc部詳細を示す図であり、
図8(d)は、
図8(b)のd部詳細を示す図である。
【0070】
第2実施形態の光学シート40は、
図8に示すように、映像源側(背面側、+Y側、+y側)から順に、第1光学層41、第2光学層42、第3光学層43が積層されている。また、光学シート40は、その両面に不図示の反射抑制層を有している。
この光学シート40は、第1光学層41及び第2光学層42の界面401と、第2光学層42及び第3光学層43の界面402とに、それぞれ単位形状41a、単位形状42aが複数形成されている。また、光学シート40は、第1実施形態に示した表示装置1に適用可能である。
【0071】
第1光学層41は、前述の第1実施形態の第1光学層21に相当する層である。第1光学層41は、観察者側(−Y側、−y側)の面(第1光学層41及び第2光学層42の界面401)に、
図8(a)に示すように、観察者側に凸となる凸状の単位形状41aが複数形成されている。
単位形状41aは、第1光学層41の観察者側の面に沿って、第1の方向(z方向)に延在し、延在方向に直交する第2の方向(x方向)に複数配列されている。また、単位形状41aは、配列方向及び厚み方向に平行な面(xy面)における断面形状が略円弧状に形成されたレンチキュラーレンズ形状である。
【0072】
第2光学層42は、第1光学層21の観察者側(−Y側)に設けられた光透過性を有する層である。第2光学層42は、観察者側(−Y側、−y側)の面(第2光学層42及び第3光学層43の界面402)に、
図7(b)に示すように、観察者側に凸となる凸状の単位形状42aが複数形成されている。
この単位形状42aは、第2光学層42の観察者側の面に沿うようにして、第2の方向(x方向)に延在し、延在方向に直交する第1の方向(z方向)に複数配列されており、配列方向及び厚み方向に平行な面(yz面)における断面形状が略円弧状に形成されたレンチキュラーレンズ形状である。
【0073】
第3光学層43は、第2光学層42の観察者側(−Y側、−y側)に設けられた光透過性を有する層である。第3光学層43の観察者側の面は、光学シート40を透過した映像光が出射する面であり、略平坦に形成されている。
【0074】
第1実施形態の光学シート20と同様に、光学シート40の厚み方向(シート面の法線方向、Y方向、y方向)から見て、第2光学層42に設けられた単位形状42aの延在方向(x方向)と第1光学層41に設けられた単位形状41aの延在方向(z方向)とは、直交している。また、光学シート40の厚み方向から見て、単位形状41aの配列方向(x方向)と単位形状42aの配列方向(z方向)とは、直交している。
本実施形態では、単位形状41aと単位形状42aとは、その配列ピッチ及び曲率半径が等しく、P1=P2であり、R1=R2である。
【0075】
本実施形態において、第1光学層41の屈折率n1及び第3光学層43の屈折率n3は、第2光学層42の屈折率n2よりも高い。
また、本実施形態では、界面401,402を介して互いに隣接する領域の屈折率差、すなわち、第1光学層41の単位形状41aと第2光学層42との屈折率差Δn1と、第2光学層42と第3光学層43との屈折率差Δn2とは、それぞれ0.005≦Δn1≦0.2、0.005≦Δn2≦0.2を満たすように形成されている。
屈折率差Δn1,Δn2が0.005未満である場合、界面401,402での屈折率差が小さくなりすぎ、界面401.402における映像光の屈折が生じ難くなってしまい、十分な拡散作用が発揮されなくなるため望ましくない。また、屈折率差Δn1,Δn2が0.005未満である場合、界面401,402で隣接する領域の樹脂の屈折率のバラツキが拡散特性に影響が大きくなったり、波長分散の影響が大きくなったりするため好ましくない。
屈折率差Δn1,Δn2が0.2よりも大きい場合、界面401,402における光の屈折が大きくなりすぎてしまい、拡散作用が大きくなりすぎ、映像が不鮮明になるので望ましくない。また、屈折率差Δn1,Δn2が0.2よりも大きい場合、そのような屈折率差を有する層構成を実現するための材料コストが嵩んだりする。
【0076】
第1光学層41は、第1実施形態の第1光学層21と同様に、光透過性の高いPC樹脂、MS樹脂、PET樹脂、アクリル系樹脂等により形成された基材層の片面に、光透過性の高いウレタンアクリレート樹脂や、エポキシアクリレート樹脂等の紫外線硬化型樹脂等によって単位形状41aが賦形されて形成されている。
第2光学層42は、第1実施形態の第2光学層22と同様に、光透過性の高いウレタンアクリレート樹脂や、エポキシアクリレート樹脂等の紫外線硬化型樹脂等により形成されている。
第3光学層43は、光透過性が高く、第2光学層42よりも屈折率が高い樹脂により形成されている。本実施形態の第3光学層43は、光透過性の高いウレタンアクリレート樹脂や、エポキシアクリレート樹脂等の紫外線硬化型樹脂等であって、第2光学層42よりも屈折率が高い樹脂により形成されている。
本実施形態では、第2光学層42の屈折率n2は、単位形状41a及び第3光学層43の屈折n1,n3よりも低い屈折率となっている。
【0077】
本実施形態の光学シート40は、前述の第1実施形態の光学シート20と同様に、その両面に、不図示の反射抑制層を有している。
また、光学シート40の映像源側(+Y側、+y側)や観察者側(−Y側、−y側)の面に、ハードコート機能、防汚機能、帯電防止機能等を有する層を適宜設けてもよいし、第3光学層43が、ハードコート機能や防汚機能、帯電防止機能等を有していてもよい。
【0078】
また、表示装置1において、映像光Vを十分拡散し、回折やモアレを抑制するという観点から、本実施形態においても、(式9)及び(式10)をともに満たすことが好ましく、(式11)及び(式12)をともに満たすことがより好ましい。これにより、モアレや回折等を生じることなく、光学シート40は、映像光Vを良好に拡散することができる。
また、本実施形態においても、表示装置1において、非映像領域F2が視認されにくく、画素領域G1(画素)が独立して見えず、かつ、映像がぼけ過ぎず、良好な画像を提供するという観点から、前述の指標1の(式1)及び(式2)、又は、指標2の(式5)及び(式6)の少なくとも一方の組み合わせを満たすことが好ましく、双方を満たすことがより好ましい。
さらに、光学シート40の拡散作用をより最適なものとするためには、より厳しい条件である指標1の(式3)及び(式4)、又は、指標2の(式7)及び(式8)の少なくとも一方の組み合わせを満たすことがより好ましい。
さらにまた、光学シート40は、前述の半値角α及び視野角βが、β≦5×αを満たすようにして形成されることが好ましい。
【0079】
本実施形態の光学シート40の製造方法としては、例えば、以下の例が挙げられる。
前述の第1実施形態の光学シート20の製造方法と同様に、第1光学層41上に第2光学層42が積層された積層体を形成する。そして、第2光学層42の単位形状42aによる凹凸を埋めて平面となるように、第2光学層42の単位形状42a側の面に、第3光学層43を形成する樹脂を塗布し硬化する。そして、反射抑制層をこの積層体の両面に適宜設け、所定の形状及び大きさに裁断することにより、光学シート40を製造することができる。
なお、光学シート40の製造方法は、上記の例に限らず、適宜選択して採用してよい。
【0080】
以上のことから、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、表示装置1は、映像源11から出射した映像光Vを微少に拡散することができ、観察者に鮮明な映像を表示するとともに、画素領域G1が独立して見えず、映像源11の非画素領域G2が起因となる非映像領域F2が観察者に視認されてしまうことを抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、光学シート40の両面が平面となるので、ハンドリングがしやすく、表示装置1の製造が容易となる。
また、本実施形態によれば、第3光学層43を第2光学層42の観察者側に備えるので、第3光学層43を、反射抑制機能や、ハードコート機能、帯電防止機能等を備えた層とすることができ、層数を低減することができる。
【0082】
(変形形態)
以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)各実施形態において、例えば、単位形状の配列ピッチP1、P2とその配列方向における形状幅W1,W2とが等しく、単位形状が互いに隣接して配列される例を示したが、これに限らず、単位形状の配列ピッチP1、P2が形状幅W1,W2より大きく、単位形状間に平面部が位置する形態としてもよい。
図9は、光学シート20の変形形態を説明する図である。
図9(a)は、変形形態の光学シート20の単位形状21aの配列方向及び厚み方向に平行な断面を示し、
図9(b)は、
図9(a)のb部断面図である。
図9(c)は、
図9(a)のc部詳細を示す図であり、
図9(d)は、
図9(b)のd部詳細を示す図である。
【0083】
図9に示す光学シート20の変形形態では、第1光学層21の観察者側(−Y側、−y側)の面には、
図9(a)に示すように、単位形状21aと平坦部21bとが交互に設けられている。この単位形状21a及び平坦部21bは、第1光学層21の観察者側の面に沿うようにして、第1の方向(z方向)に延在し、第2の方向(x方向)に複数配列されている。
また、第2光学層22の観察者側の面は、
図9(b)に示すように、単位形状22aと平坦部22bとが交互に複数形成されている。この単位形状22a及び平坦部22bは、第2光学層22の観察者側の面に沿うようにして、第2の方向(x方向)に延在し、第1の方向(z方向)に複数配列されている。
【0084】
図9では、第1光学層21及び第2光学層22に設けられた各単位形状及び各平坦部は、それぞれ同等の寸法に形成されており、W1=W2、W3=W4、P1=P2であるが、曲率半径に関してのみ、R1<R2である例を示している。
この
図9に示す光学シート20の変形形態は、単位形状21aの配列ピッチP1及び単位形状22aの配列ピッチP2、及び、界面201で隣接する単位形状21aと第2光学層22との屈折率差Δn1は、前述の第1実施形態と同じ範囲である。
【0085】
また、
図9に示す変形形態の光学シート20は、前述の第1実施形態に示したように、好ましい拡散作用を得るために、(式9)及び(式10)をともに満たすことが好ましく、(式11)及び(式12)をともに満たすことがより好ましい。これにより、モアレや回折等を生じることなく、光学シート20は、映像光Vを拡散することができる。
また、
図9に示す変形形態の光学シート20の拡散作用を好ましい範囲とするためには、指標1の(式1)及び(式2)、又は、指標2の(式5)及び(式6)の少なくとも一方の組み合わせを満たすことが好ましく、双方を満たすことがより好ましい。これにより、非映像領域F2が視認されにくく、画素領域G1が独立して見えず、かつ、映像がぼけ過ぎずない、良好な画像を観察することができる。
さらに、
図9に示す変形形態の光学シート20の拡散作用をより最適なものとするためには、より厳しい条件である指標1の(式3)及び(式4)、又は、指標2の(式7)及び(式8)の少なくとも一方の組み合わせを満たすことがより好ましい。
さらにまた、
図9に示す変形形態の光学シート20は、前述の半値角α及び視野角βが、β≦5×αを満たすようにして形成されることが好ましい。
【0086】
図9に示す光学シート20の変形形態は、映像源11から出射され、光学シート20の映像源側の面から入射した光のうち、平坦部21b、平坦部22bを透過した光を直接観察者側に出射させるとともに、単位形状21aに入射した光を単位形状21aの配列方向(x方向)へ拡散させ、また、単位形状22aに入射した光を単位形状22aの配列方向(z方向)へ拡散させて、レンズ12側へ出射させることができる。さらに、平坦部21b、平坦部22bを透過した光は、殆ど拡散されないため、観察者に届く映像光をより鮮明に表示することができる。
【0087】
このような形態とすることにより、前述の第1実施形態に示した非映像領域F2が観察者に視認されてしまうことを抑制する効果に加えて、表示装置1は、観察者にぼやけの少ない鮮明な映像を表示することができる。また、表示装置1の仕様(画素配列ピッチPPや、観察者の眼Eと映像源11との距離)に合わせて、平坦部21b,22bの寸法等を調節することによって、適宜、特定の拡散角の範囲を規定することができるので、より効率よく鮮明な映像の表示と、非映像領域F2の視認の抑制とを実現することができる。
なお、第1実施形態の光学シート20の変形形態を例に挙げて説明したが、これに限らず、この変形形態は、第2実施形態の光学シート40にも適用できる。
【0088】
(2)各実施形態において、光学シート20,40は、映像源11とレンズ12との間に配置される例を示したが、これに限らず、レンズ12の観察者側(−Y側、−y側)に配置してもよい。
図10は、表示装置1の変形形態を説明する図である。
図10に示すように、光学シート20をレンズ12よりも観察者側(−Y側)に配置してもよい。このような配置を採用しても、表示装置1は、観察者に、画素領域G1が独立して見えず、非映像領域F2が視認されにくく、ぼやけの少ない鮮明な映像を表示することができる。
このような位置に光学シート20を配置した場合にも、屈折率差Δn1の範囲や、各指標に示す各式の数値範囲等は、第1実施形態に示した範囲を満たすとよい。
なお、
図10に示す表示装置1の変形形態では、第1実施形態の光学シート20を用いる例を示したが、これに限らず、第2実施形態の光学シート40を用いてもよい。
【0089】
(3)第1実施形態において、第1光学層21の単位形状21aの屈折率は、第2光学層22の屈折率よりも高く、第2実施形態において、第1光学層41の単位形状41a及び第3光学層43の屈折率が、第2光学層42の屈折率よりも高い例を示したが、これに限定されるものでなく、例えば、第1実施形態において、第1光学層21の屈折率が第2光学層22の屈折率よりも低い形態や、第2実施形態において、第1光学層41及び第3光学層43の屈折率が、第2光学層42の屈折率よりも低くなる形態としてもよい。
また、各実施形態において、第1光学層21,41は、基材層の片面に複数の単位形状が賦形される形態を示したが、これに限らず、単層である形態としてもよい。
【0090】
(4)各実施形態において、各単位形状は、いずれも観察者側に凸となる形態を示したが、これに限らず、いずれも映像源側に凸となる形態としてもよいし、一方が観察者側に凸であって他方が映像源側に凸となる形態としてもよい。
なお、より好ましくは、単位形状が複数形成された界面において、単位形状は、屈折率が低い光学層側へ凸となるように形成されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0091】
(5)各実施形態において、光学シート20,40と表示面11aとの間であって少なくとも映像光Vのうち観察者の眼Eに到達する光(観察者が視認する光)が透過する領域には空気層が存在しない形態としてもよい。
このような形態としては、例えば、表示面11a上に光学シート20,40が一体に積層された形態や、映像源11の表示面11aと光学シート20,40との間に、インデックスマッチング用の樹脂層等が充填された形態等が挙げられる。なお、このインデックスマッチング用の樹脂は、光学シート20,40の位置を決め、その位置を支持する機能を有してもよい。
このような形態とする場合、映像源11の表示面11aから光学シート20,40の観察者側の面までの間であって少なくとも映像光Vのうち観察者の眼Eに到達する光(観察者が視認する光)が透過する領域における部材間の界面における屈折率差は、0.3未満とすることが好ましい。このような形態とすることにより、映像光が透過する界面が減少し、界面での反射による光量損失等を低減できる。
【0092】
(6)各実施形態において、光学シート20の厚み方向(シート面の法線方向、Y方向、y方向)から見て、単位形状21aの延在方向(z方向)は、上下方向(鉛直方向)に対して、10°以上80°以下の角度をなす形態としてもよい。このような角度をなすように配置することにより、例えば、
図4に示すように上下方向及び左右方向に配列された画素領域G1(画素)と、単位形状21a,22aの延在方向(z方向、x方向)とが10°以上80°以下の角度をなす。これにより、画素とのモアレを低減したり、色ムラを効果的に抑制したりすることができる。
【0093】
(7)第2実施形態において、光学シート40は、第1光学層41、第2光学層42、第3光学層43の3つの光学層が順次積層された形態を示したが、これに限定されるものでなく、所望する光学性能等に応じて、4層以上の光学層を備える形態としてもよい。
【0094】
(8)各実施形態において、光学シート20,40は、保持部32に保持される形態を示したがこれに限らず、例えば、映像源11を保持する保持部31の開口部311の観察者側等に開口部311を塞ぐように接合される形態等としてもよいし、レンズ12を保持する保持部33の開口部331の映像源側に開口部331を塞ぐように貼り付けられる形態としてもよい。
【0095】
(10)各実施形態において、映像源11は、表示装置1に予め固定され、着脱不可能である形態としてもよい。
【0096】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は、以上説明した各実施形態等によって限定されることはない。