(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体素子(20)を内蔵するモジュール本体部(21)と、該モジュール本体部から突出した複数のパワー端子(22、22P、22N、22O)及び複数の制御端子(23、23G、23E)と、を備えた半導体モジュール(2)と、
該半導体モジュールを両主面から挟持するように積層配置された複数の冷却管(3)と、を有し、
上記冷却管は、導電性を有すると共に、内部に冷媒(w)を流通させる冷媒流路(30)を備え、
上記複数のパワー端子は、上記モジュール本体部から、上記冷却管と上記半導体モジュールとの積層方向(X)に直交する高さ方向(Z)における、互いに同じ方向に突出しており、
上記複数の制御端子は、上記モジュール本体部から、上記高さ方向における、互いに同じ方向に突出しており、
上記冷却管は、上記モジュール本体部よりも上記高さ方向の少なくとも一方側に突出すると共に内側に上記冷媒流路の一部が形成された拡大流路形成部(32、32a、32b)を備え、
上記拡大流路形成部は、上記複数のパワー端子と上記複数の制御端子との少なくとも一方と、上記積層方向において重なっており、
上記半導体モジュールは、上記複数のパワー端子と上記複数の制御端子とを上記高さ方向における互いに反対方向に突出してなり、
上記冷却管は、上記高さ方向の双方に、上記拡大流路形成部を突出させており、上記パワー端子側に突出した上記拡大流路形成部(32a)は、複数の上記パワー端子と上記積層方向に重なっており、上記制御端子側に突出した上記拡大流路形成部(32b)は、複数の上記制御端子と上記積層方向に重なっており、
上記冷却管は、上記冷媒流路として、上記冷媒と上記モジュール本体部との熱交換を行わせる熱交換部(37)と、該熱交換部に対して上記高さ方向の両側にそれぞれ配置された冷媒供給路(36)及び冷媒排出路(38)とを有し、上記冷媒供給路及び上記冷媒排出路は、それぞれ上記拡大流路形成部に形成されており、上記熱交換部には、上記冷媒供給路から上記冷媒排出路へ向かって、上記冷媒が流れるよう構成されており、
上記積層方向に隣り合う上記冷却管の間には、複数の上記半導体素子が配置されており、該複数の半導体素子は、上記積層方向及び上記高さ方向の双方に直交する横方向(Y)に並んでおり、
上記冷却管は、上記積層方向に隆起した隆起部(311)を有し、上記冷媒供給路及び上記冷媒排出路は、上記積層方向から見て、上記隆起部の外側に形成されている、電力変換装置(1)。
上記パワー端子と該パワー端子に接続されるバスバー(13)との接続部(130)は、上記高さ方向において、上記拡大流路形成部よりも上記モジュール本体部から遠い位置に配されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の電力変換装置においては、以下の観点において改善の余地がある。
上記中間プレートの突出部の一部は、パワー端子又は制御端子と、積層方向に重なっている。かかる構成によって、突出部は、装置内の温度上昇抑制のみならず、上述のパワー端子又は制御端子におけるインダクタンスの低減にも寄与し得る。すなわち、複数のパワー端子に流れる電流の電流ループによって磁束が生じるが、この磁束が突出部を貫くと共に時間変化することで、突出部に渦電流が流れる。この渦電流は磁束を打ち消す方向に流れるため、インダクタンスを低減することが可能となる。また、制御端子に突出部が対向配置された場合も、同様の効果が期待できる。
【0007】
ところが、突出部は、中間プレートの一部によって構成されているため、突出部をパワー端子又は制御端子に近付けにくい。それゆえ、上述のインダクタンス低減効果を大きく得にくい。
【0008】
また、中間プレートは、冷却管の内部に配されるものであるため、一般に、比較的厚みの小さい薄板が用いられる。そのため、中間プレートを突出させて突出部を形成すると、突出部の強度が低いため、電力変換装置の製造時あるいはメンテナンス時等において、変形等のおそれがある。そのため、製造時等の作業性にも影響するおそれがある。すなわち、電力変換装置の生産性を向上させる観点においても、改善の余地がある。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、インダクタンスの低減効果の向上を図ると共に、生産性の向上及び装置の小型化を図ることができる、電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、半導体素子(20)を内蔵するモジュール本体部(21)と、該モジュール本体部から突出した複数のパワー端子(22、22P、22N、22O)及び複数の制御端子(23、23G、23E)と、を備えた半導体モジュール(2)と、
該半導体モジュールを両主面から挟持するように積層配置された複数の冷却管(3)と、を有し、
上記冷却管は、導電性を有すると共に、内部に冷媒(w)を流通させる冷媒流路(30)を備え、
上記複数のパワー端子は、上記モジュール本体部から、上記冷却管と上記半導体モジュールとの積層方向(X)に直交する高さ方向(Z)における、互いに同じ方向に突出しており、
上記複数の制御端子は、上記モジュール本体部から、上記高さ方向における、互いに同じ方向に突出しており、
上記冷却管は、上記モジュール本体部よりも上記高さ方向の少なくとも一方側に突出すると共に内側に上記冷媒流路の一部が形成された拡大流路形成部(32、32a、32b)を備え、
上記拡大流路形成部は、上記複数のパワー端子と上記複数の制御端子との少なくとも一方と、上記積層方向において重なって
おり、
上記半導体モジュールは、上記複数のパワー端子と上記複数の制御端子とを上記高さ方向における互いに反対方向に突出してなり、
上記冷却管は、上記高さ方向の双方に、上記拡大流路形成部を突出させており、上記パワー端子側に突出した上記拡大流路形成部(32a)は、複数の上記パワー端子と上記積層方向に重なっており、上記制御端子側に突出した上記拡大流路形成部(32b)は、複数の上記制御端子と上記積層方向に重なっており、
上記冷却管は、上記冷媒流路として、上記冷媒と上記モジュール本体部との熱交換を行わせる熱交換部(37)と、該熱交換部に対して上記高さ方向の両側にそれぞれ配置された冷媒供給路(36)及び冷媒排出路(38)とを有し、上記冷媒供給路及び上記冷媒排出路は、それぞれ上記拡大流路形成部に形成されており、上記熱交換部には、上記冷媒供給路から上記冷媒排出路へ向かって、上記冷媒が流れるよう構成されており、
上記積層方向に隣り合う上記冷却管の間には、複数の上記半導体素子が配置されており、該複数の半導体素子は、上記積層方向及び上記高さ方向の双方に直交する横方向(Y)に並んでおり、
上記冷却管は、上記積層方向に隆起した隆起部(311)を有し、上記冷媒供給路及び上記冷媒排出路は、上記積層方向から見て、上記隆起部の外側に形成されている、電力変換装置(1)にある。
【発明の効果】
【0011】
上記電力変換装置において、上記冷却管は上記拡大流路形成部を備えている。そして、拡大流路形成部は、複数のパワー端子と複数の制御端子との少なくとも一方と、積層方向において重なっている。これにより、拡大流路形成部には、複数のパワー端子又は複数の制御端子に電流が流れたとき、その電流ループに起因する磁束を打ち消す方向の渦電流が生じる。そのため、拡大流路形成部に対向する複数のパワー端子又は複数の制御端子におけるインダクタンスを低減することができる。
【0012】
そして、拡大流路形成部は、内部に冷媒流路を備えている。そのため、積層方向において、パワー端子又は制御端子に対して近い位置に、拡大流路形成部を配置することが可能となる。それゆえ、複数のパワー端子又は複数の制御端子におけるインダクタンスを、一層低減することができる。また、パワー端子及び制御端子の近傍に、冷媒流路を備えた拡大流路形成部が配されることにより、パワー端子及び制御端子を冷却することができる。
【0013】
さらに、拡大流路形成部は、内部に冷媒流路を形成するものであるため、比較的厚みの大きい材料にて構成されやすい。それゆえ、拡大流路形成部の強度を確保しやすい。その結果、拡大流路形成部の変形を招きにくく、電力変換装置の生産性の向上にもつながる。
【0014】
以上のごとく、上記態様によれば、インダクタンスの低減効果の向上を図ると共に、生産性の向上及び装置の小型化を図ることができる、電力変換装置を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
電力変換装置に係る実施形態について、
図1〜
図9を参照して説明する。
本実施形態の電力変換装置1は、
図1〜
図3に示すごとく、半導体モジュール2と、半導体モジュール2を両主面から挟持するように積層配置された複数の冷却管3と、を有する。
【0017】
半導体モジュール2は、半導体素子20を内蔵するモジュール本体部21と、モジュール本体部21から突出した複数のパワー端子22及び複数の制御端子23と、を備えている。
冷却管3は、導電性を有すると共に、内部に冷媒を流通させる冷媒流路30を備えている。
【0018】
複数のパワー端子22は、モジュール本体部21から、高さ方向Zにおける、互いに同じ方向に突出している。複数の制御端子23は、モジュール本体部21から、高さ方向Zにおける、互いに同じ方向に突出している。
【0019】
なお、高さ方向Zは、冷却管3と半導体モジュール2との積層方向Xに直交する方向であり、パワー端子22及び制御端子23の突出方向に平行な方向とする。また、積層方向Xと高さ方向Zとの双方に直交する方向を、横方向Yというものとする。これら横方向Y、高さ方向Zは、便宜的な表現であり、特に電力変換装置1の配置姿勢を限定するものではない。
【0020】
図1、
図2に示すごとく、冷却管3は、モジュール本体部21よりも高さ方向Zの少なくとも一方側に突出すると共に内側に冷媒流路30の一部が形成された拡大流路形成部32を備えている。
拡大流路形成部32は、複数のパワー端子22又は複数の制御端子23と、積層方向Xにおいて重なっている。
【0021】
図4に示すごとく、半導体モジュール2は、複数のパワー端子22と複数の制御端子23とを高さ方向Zにおける互いに反対方向に突出してなる。冷却管3は、高さ方向Zの双方に、拡大流路形成部32を突出させている。
図1、
図2に示すごとく、パワー端子22側に突出した拡大流路形成部32aは、複数のパワー端子22と積層方向Xに重なっている。制御端子23側に突出した拡大流路形成部32bは、複数の制御端子23と積層方向Xに重なっている。
【0022】
なお、適宜、高さ方向Zにおいて、パワー端子22が突出した側を上側、その反対側を下側という。ただし、この表現も便宜的なものであり、鉛直方向との関係を限定するものではない。
【0023】
図1、
図4に示すごとく、複数のパワー端子22は、互いに横方向Yに並んで配置されている。また、複数の制御端子23も、互いに横方向Yに並んで配置されている。
また、隣り合うパワー端子22は、互いに横方向Yに離れた状態で配置されている。すなわち、横方向Yに隣り合うパワー端子22の間には、パワー端子22が存在しない領域がある。この領域に対しても、拡大流路形成部32aは、積層方向Xに対向することとなる。すなわち、横方向Yに離れて配置された複数のパワー端子22に対向して、一つの拡大流路形成部32aが連続して形成されている。
また、横方向Yに離れて配置された複数の制御端子23に対向して、一つの拡大流路形成部32bが連続して形成されている。
【0024】
図2、
図6に示すごとく、冷却管3は、冷媒流路30として、熱交換部37と、熱交換部37に対して高さ方向Zの両側にそれぞれ配置された冷媒供給路36及び冷媒排出路38とを有する。熱交換部37は、冷媒とモジュール本体部21との熱交換を行わせる部分である。冷媒供給路36及び冷媒排出路38は、それぞれ拡大流路形成部32に形成されている。熱交換部37には、冷媒供給路36から冷媒排出路38へ向かって、高さ方向Zに冷媒wが流れるよう構成されている。
【0025】
本実施形態において、冷媒供給路36は、積層方向Xにおいて制御端子23と重なっている。冷媒排出路38は、積層方向Xにおいてパワー端子22と重なっている。
冷媒供給路36は、高さ方向Zの一部が制御端子23と積層方向Xに重なり、高さ方向Zの他の一部がモジュール本体部21と積層方向Xに重なっている。つまり、本実施形態においては、冷媒供給路36の一部が、拡大流路形成部32bに形成されていることとなる。ただし、冷媒供給路36の全体が、拡大流路形成部32bに形成された構成とすることもできる。
【0026】
同様に、冷媒排出路38は、高さ方向Zの一部がパワー端子22と積層方向Xに重なり、高さ方向Zの他の一部がモジュール本体部21と積層方向Xに重なっている。つまり、本実施形態においては、冷媒排出路38の一部が、拡大流路形成部32aに形成されていることとなる。ただし、冷媒排出路38の全体が、拡大流路形成部32aに形成された構成とすることもできる。
【0027】
図2、
図3に示すごとく、冷却管3は、一対の外殻プレート31と、一対の外殻プレート31の間に配された中間プレート34を有する。中間プレート34は、流路外周部312において、一対の外殻プレート31に挟持されている。
【0028】
中間プレート34は、平板状に形成されている。この平板状の中間プレート34を両主面から挟むように、一対の外殻プレート31が接合されている。中間プレート34と外殻プレート31との間に、冷媒流路30が形成されている。また、中間プレート34と外殻プレート31との間には、インナフィン35が配置されている。
【0029】
インナフィン35は、
図6に示すごとく、冷媒流路30における熱交換部37に配置されている。インナフィン35は、
図3に示すごとく、高さ方向Zに直交する断面の形状が波形状となる、波板状の金属板からなる。そして、インナフィン35と外殻プレート31との間、及び、インナフィン35と中間プレート34との間に、高さ方向Zに延びる空間が、冷媒流路30の一部として形成されている。この空間は、高さ方向Zに直線状に形成されている。
【0030】
外殻プレート31、中間プレート34、及びインナフィン35は、いずれもアルミニウム合金等の金属板によって構成されている。中間プレート34は、外殻プレート31よりも厚みが小さい。例えば、中間プレート34の厚みは、外殻プレート31の厚みの半分以下とすることができる。また、インナフィン35の板厚も、外殻プレート31の厚みよりも小さい。また、インナフィン35の板厚は、中間プレート34の厚み以下とすることができる。外殻プレート31と中間プレート34とインナフィン35とは、互いにろう付け、或いは溶接等によって接合されている。
【0031】
冷媒流路30には、例えば、水などの冷媒を流通させることができる。冷媒としては、水に限らず、例えば、アンモニア等の自然冷媒、エチレングリコール系の不凍液を混入した水、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒等、種々の冷媒を用いることができる。
【0032】
また、
図2、
図3に示すごとく、冷却管3と半導体モジュール2との間には、熱伝導性に優れたセラミック板からなる絶縁材11を介在させている。絶縁材11及び冷却管3は、半導体モジュール2の両主面にそれぞれ積層配置されている。半導体モジュール2は、両主面に放熱板24を露出させている。この放熱板24が露出した半導体モジュール2の主面に、グリス(図示略)を介して絶縁材11が接触配置されている。各絶縁材11にグリス(図示略)を介して冷却管3が接触配置されている。
【0033】
冷却管3は、絶縁材11との接触面において、絶縁材11側へ隆起した隆起部311を有する。積層方向Xから見たとき、隆起部311は、半導体モジュール2のモジュール本体部21の主面の輪郭の内側に納まるように形成されている。また、積層方向Xから見たとき、隆起部311の輪郭の内側に、放熱板24が納まるように形成されている。これにより、冷却管3と放熱板24との熱的な接触面積を大きく確保しつつ、絶縁材11の一部に応力が集中することを防ぐことができる。
【0034】
上記のように配置された冷却管3の反対側にも同様の構成で、絶縁材11を介して半導体モジュール2が積層されている。そして、全体としては、
図7に示すごとく、冷却管3と半導体モジュール2とが絶縁材11(図示略)を介して交互に積層配置されている。
【0035】
図3、
図7に示すごとく、積層方向Xに隣り合う冷却管3は、その横方向Yの両端において、それぞれ連結管301によって連結されている。連結管301は、隣り合う冷却管3の内部の冷媒流路30同士を連通させている。積層方向Xにおける一端に配された冷却管3には、冷媒導入管302と冷媒排出管303とが設けてある。
【0036】
図6に示すごとく、各冷却管3の冷媒流路30における横方向Yの両端には、それぞれ、冷媒供給路36と連通する供給部361と、冷媒排出路38と連通する排出部381とが形成されている。連結管301は、供給部361と排出部381とに接続される。また、積層方向Xにおける一端に配された冷却管3の供給部361と排出部381とには、それぞれ、冷媒導入管302と冷媒排出管303とが接続されている。
このように、
図7に示すごとく、複数の冷却管3を並列配置してなる冷却器300が構成されている。隣り合う冷却管3の間に、半導体モジュール2が配置されている。
【0037】
冷媒導入管302から冷却器300内に導入された冷媒wは、
図6に示すごとく、供給部361から各冷却管3の冷媒流路30に導入される。各冷却管3に導入された冷媒wは、まず冷媒供給路36に導入され、そこから熱交換部37に供給される。このとき、冷媒wは、横方向Yに分配されながら、インナフィン35に沿って、高さ方向Zに流れる。そして、冷媒wは、熱交換部37から冷媒排出路38に排出される。すなわち、横方向Yに分配されて熱交換部37を通過した冷媒wは、冷媒排出路38において再び合流する。合流後の冷媒wは、冷媒排出路38から排出部381を通じて、冷却管3から排出される。このようにして、各冷却管3を冷媒wが流れることにより、半導体モジュール2を冷却する。そして、各冷却管3から排出された冷媒wは、
図7に示すごとく、冷媒排出管303を介して冷却器300から排出される。
【0038】
図1、
図2に示すごとく、半導体モジュール2のパワー端子22は、高さ方向Zにおいて、冷却管3よりも上側に突出している。そして、
図2に示すごとく、パワー端子22は、冷却管3の上方に配置されたバスバー13に接続されている。すなわち、パワー端子22とバスバー13との接続部130は、高さ方向Zにおいて、拡大流路形成部32よりもモジュール本体部21から遠い位置に配されている。
また、パワー端子22と、パワー端子22に対して積層方向Xにおける両側に配された拡大流路形成部32との間のそれぞれの距離dは、互いに同等である。
【0039】
制御端子23は、高さ方向Zにおいて、冷却管3よりも下方へ突出している。そして、制御端子23は、冷却管3の下方に配置された制御回路基板(図示略)に接続されている。
【0040】
図3に示すごとく、積層方向Xに隣り合う冷却管3の間には、複数の半導体素子20が配置されている。複数の半導体素子20は、横方向Yに並んでいる。これら複数の半導体素子20は、
図3、
図4に示すごとく、一つの半導体モジュール2に内蔵されている。
【0041】
電力変換装置1は、例えば、直流電源と三相交流の回転電機との間において、電力変換を行うインバータとすることができる。
本実施形態においては、半導体モジュール2は、半導体素子20として、4つのスイッチング素子を内蔵している。4つのスイッチング素子は、
図8に示すごとく、互いに並列接続された2つの上アームスイッチング素子2uと、これらに直列接続されると共に互いに並列接続された2つの下アームスイッチング素子2dとすることができる。
【0042】
図8は、高電位バスバー13Pと低電位バスバー13Nとの間に接続された平滑コンデンサ14と、一つの半導体モジュール2と、これに接続された回転電機の一相分のコイル15と、を抜き出した回路図である。なお、同図に示した容量Cgeは、スイッチング素
子に寄生する寄生容量を表す。
【0043】
各スイッチング素子は、IGBT、すなわち絶縁ゲートバイポーラトランジスタからなる。また、上アームスイッチング素子2u及び下アームスイッチング素子2dには、それぞれフライホイールダイオードが逆並列接続されている。上アームスイッチング素子2uと下アームスイッチング素子2dとの接続点が、回転電機の電極の一つに接続される。なお、スイッチング素子としては、IGBTに限らず、例えば、MOSFET、すなわちMOS型電界効果トランジスタを用いることもできる。
【0044】
図4に示すごとく、半導体モジュール2は、3つのパワー端子22P、22N、22Oを有する。パワー端子22Pは、
図8に示すごとく、上アームスイッチング素子2uのコレクタに電気的に接続された端子である。パワー端子22Nは、下アームスイッチング素子2dのエミッタに電気的に接続された端子である。パワー端子22Oは、上アームスイッチング素子2uのエミッタと下アームスイッチング素子2dのコレクタとに電気的に接続された端子である。そして、パワー端子22Pは、直流電源の正極に繋がる高電位バスバー13Pに接続される。パワー端子22Nは、直流電源の負極に繋がる低電位バスバー13Nに接続される。パワー端子22Oは、回転電機に繋がる出力バスバー13Oに接続される。
【0045】
図4に示すごとく、半導体モジュール2は、上アームスイッチング素子2uに対応した複数の制御端子23と、下アームスイッチング素子2dに対応した複数の制御端子23とを有する。そして、複数の制御端子23には、各スイッチング素子のゲートに接続される制御端子23Gと、各スイッチング素子のエミッタに接続される制御端子23Eとが含まれる。
【0046】
電力変換装置1は、各スイッチング素子を適宜オンオフさせることで、電力変換を行う。その際、
図8に示すごとく、互いに直列接続された上アームスイッチング素子2uと下アームスイッチング素子2dと、平滑コンデンサ14とによって構成される閉回路において、被制御電流の電流変化が生じる。それゆえ、この閉回路におけるインダクタンスを低減することが求められる。
【0047】
つまり、この閉回路において変動する被制御電流の交流成分I1は、パワー端子22Pとパワー端子22Nとにおいて、互いに逆向きとなる。そして、
図9に示すごとく、互いに隣り合うパワー端子22Pとパワー端子22Nとを含む部分に、電流ループi1が形成されることとなる。
【0048】
このとき、電流ループi1によって生じる磁束が積層方向Xに形成される。ところが、パワー端子22Pとパワー端子22Pとには、拡大流路形成部32が対向配置されている。それゆえ、この拡大流路形成部32に、上記の磁束を打ち消すような渦電流が発生する。これにより、パワー端子22におけるインダクタンスが低減される。
【0049】
制御端子23においても、
図8に示すごとく、スイッチング素子2u、2dのゲートからエミッタに流れる電流I2が生じる。すなわち、制御端子23Gから半導体モジュール2に入って制御端子23Eから抜ける電流I2が、生じる。これにより、複数の制御端子23においても、
図9に示すごとく、電流ループi2が形成される。これらの制御端子23に対しても、拡大流路形成部32が対向配置されている。それゆえ、制御端子23に生じた電流ループi2に起因する磁束も、拡大流路形成部32に生じる渦電流によって打ち消すことができる。その結果、制御端子23におけるインダクタンスを低減することができる。
【0050】
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
上記電力変換装置1において、冷却管3は拡大流路形成部32を備えている。そして、拡大流路形成部32は、複数のパワー端子22及び複数の制御端子23と、積層方向Xにおいて重なっている。これにより、拡大流路形成部32には、複数のパワー端子22又は複数の制御端子23に電流が流れたとき、その電流ループi1、i2に起因する磁束を打ち消す方向の渦電流が生じる。そのため、拡大流路形成部32に対向する複数のパワー端子22及び複数の制御端子23におけるインダクタンスを低減することができる。
【0051】
そして、拡大流路形成部32は、内部に冷媒流路30を備えている。そのため、積層方向Xにおいて、パワー端子22及び制御端子23に対して近い位置に、拡大流路形成部32を配置することが可能となる。それゆえ、複数のパワー端子22及び複数の制御端子23におけるインダクタンスを、一層低減することができる。また、パワー端子22及び制御端子23の近傍に、冷媒流路
30を備えた拡大流路形成部32が配されることにより、パワー端子22及び制御端子23を冷却することができる。
【0052】
さらに、拡大流路形成部32は、比較的厚みの大きい材料である外殻プレート31にて構成されている。それゆえ、拡大流路形成部32の強度を確保しやすい。その結果、拡大流路形成部32の変形を招きにくく、電力変換装置1の生産性の向上にもつながる。
【0053】
本実施形態においては、冷却管3は、高さ方向Zの双方に、拡大流路形成部32を突出させている。そして、上側に突出した拡大流路形成部32aは、複数のパワー端子22と積層方向Xに重なっており、下側に突出した拡大流路形成部32bは、複数の制御端子23と積層方向Xに重なっている。これにより、複数のパワー端子22におけるインダクタンスと、複数の制御端子23におけるインダクタンスとの双方を、低減することができる。
【0054】
冷却管3は、冷媒流路30として、熱交換部37と、冷媒供給路36及び冷媒排出路38とを有する。冷媒供給路36及び冷媒排出路38は、それぞれ拡大流路形成部32に形成されている。
図6に示すごとく、熱交換部37には、冷媒供給路36から冷媒排出路38へ向かって、高さ方向Zに冷媒wが流れる。これにより、冷媒流路30における冷媒の圧力損失を低減しつつ、冷媒を横方向Yに分配して熱交換部37に供給することができる。
【0055】
積層方向Xに隣り合う冷却管3の間において、複数の半導体素子20が、横方向Yに並んでいる。それゆえ、上述のように冷媒が横方向Yに分配して熱交換部37に供給されることにより、複数の半導体素子20の冷却バラツキを低減することができる。すなわち、熱交換部37において、複数の半導体素子20が冷媒の上流側と下流側とに並ぶことを防ぐことができる。
【0056】
また、パワー端子22とバスバー13との接続部130は、高さ方向Zにおいて、拡大流路形成部32よりもモジュール本体部21から遠い位置に配されている。これにより、パワー端子22とバスバー13との接続を容易に行うことができる。
また、パワー端子22と、パワー端子22に対して積層方向Xにおける両側に配された拡大流路形成部32との間のそれぞれの距離dは、互いに同等である。これにより、パワー端子22を積層方向Xの双方から効率的に冷却することができる。
【0057】
以上のごとく、本実施形態によれば、インダクタンスの低減効果の向上を図ると共に、生産性の向上及び装置の小型化を図ることができる、電力変換装置を提供することができる。
【0058】
(実施形態2)
本実施形態の電力変換装置1においては、
図10に示すごとく、冷媒供給路36が、積層方向Xにおいてパワー端子22と重なっており、冷媒排出路38が、積層方向Xにおいて制御端子23と重なっている。
その他の構成は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0059】
本実施形態においては、各冷却管3に導入された冷媒wは、熱交換部37においてモジュール本体部21と熱交換する前に、パワー端子22に対向配置される拡大流路形成部32内の冷媒供給路36に導かれる。それゆえ、比較的低温の冷媒wが、パワー端子
22に対向配置される拡大流路形成部32を流れるため、パワー端子22を効率的に冷却することができる。通常、制御端子23よりもパワー端子22の方が高温となりやすく、冷却の必要性が高い。それゆえ、上記のようにパワー端子22をより効率的に冷却できる構成とすることで、半導体モジュール2の全体を効果的に冷却することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0060】
(実施形態3)
本実施形態の電力変換装置1においては、
図11に示すごとく、積層方向Xに隣り合う冷却管3の間に、複数の半導体モジュール2が、横方向Yに並んで配置されている。
本実施形態の電力変換装置1は、1つの半導体モジュール2に1つのスイッチング素子を内蔵させつつ、2つの半導体モジュール2を横方向Yに隣接配置している。そして、横方向Yに隣接配置された2つの半導体モジュール2を、積層方向Xから一対の冷却管3が挟持した状態となっている。
【0061】
横方向Yに隣接配置された2つの半導体モジュール2に内蔵されるスイッチング素子は、
図12に示すごとく、互いに直列接続された上アームスイッチング素子2uと下アームスイッチング素子2dとなる。そして、
図11に示すごとく、出力バスバー13Oに接続される、2つの半導体モジュール2のパワー端子22Oが、横方向Yに互いに隣接するように、半導体モジュール2が配置されている。そして、高電位バスバー13Pに接続されるパワー端子22Pと、低電位バスバー13Nに接続されるパワー端子22Nとは、横方向Yにおける両端に配置されることとなる。
【0062】
かかる状態において、実施形態1と同様に、
図12に示すごとく、互いに直列接続された上アームスイッチング素子2uと下アームスイッチング素子2dと、平滑コンデンサ14とによって構成される閉回路において変動する被制御電流の交流成分I1を考える。交流成分I1は、上アーム側の半導体モジュール2のパワー端子22Pから、パワー端子22Oへ抜け、下アーム側の半導体モジュール2のパワー端子22Oから、パワー端子22Nへ抜ける。それゆえ、上アーム側の半導体モジュール2のパワー端子22Pとパワー端子22Oとにおいては、交流成分I1は互いに逆向きとなる。また、上アーム側の半導体モジュール2のパワー端子22Oと下アーム側の半導体モジュール2のパワー端子22Oとにおいても、交流成分I1は互いに逆向きとなる。下アーム側の半導体モジュール2のパワー端子22Oとパワー端子22Nとにおいても、交流成分I1は互いに逆向きとなる。その結果、
図11に示すごとく、隣り合うパワー端子22を含む電流ループi11、i12、i13が、それぞれ形成される。
【0063】
このように、本実施形態においても、4本のパワー端子22に対して、積層方向Xに対向するように、
拡大流路形成部32が配設されている。それゆえ、上述の電流ループi11、i12、i13によって生じる磁束を打ち消すように、
拡大流路形成部32に渦電流が流れる。そのため、パワー端子22におけるインダクタンスが低減される。
制御端子23については、実施形態1と同様に、インダクタンスの低減効果が得られる。
【0064】
また、本実施形態において、
図13に示すごとく、冷却管3の冷媒流路30は、熱交換部37が横方向Yの2か所に分かれて形成されている。つまり、熱交換部37における横方向Yの中央部に、仕切部371が形成されている。仕切部371は、外殻プレート31の一部を中間プレート34に向かって突出させることにより、形成されている。また、仕切部371は、高さ方向Zに沿って形成されている。仕切部371は、熱交換部37の高さ方向Zの全域にわたって形成されている。
【0065】
そして、仕切部371によって分けられた2つの熱交換部37のそれぞれに、個別にインナフィン35が配置されている。
また、冷媒供給路36は、横方向Yにおいて、供給部361から遠ざかるにつれて高さ方向Zの寸法が徐々に小さくなる除変部362を有する。冷媒供給路36における除変部362は、横方向Yにおいて、仕切部371よりも供給部361に近い側から、排出部381側の端部までにわたり、形成されている。
【0066】
このように、冷媒供給路36が除変部362を有することにより、冷媒供給路36から熱交換部37への冷媒の供給を円滑に行うことができる。それゆえ、横方向Yにおいて分配される冷媒のばらつきをより低減することができる。
【0067】
また、冷媒排出路38は、横方向Yにおいて、供給部361側の端部382が、熱交換部37の端部よりも、供給部361から遠い位置にずれて形成されている。
その他の構成および作用効果は、実施形態1と同様である。
【0068】
(実施形態4)
本実施形態においては、
図14に示すごとく、積層方向Xから見たインナフィン35の形状を、波形状とした。
これにより、熱交換部37において、インナフィン35と外殻プレート31との間の冷媒流路30、及び、インナフィン35と中間プレート34との間の冷媒流路30は、波形状に蛇行した流路となる。特に、本実施形態においては、熱交換部37における冷媒流路30の形状が、いわゆるジグザグ形状となっている。
その他の構成は、実施形態3と同様である。
【0069】
本実施形態においては、上述のように、熱交換部37における冷媒流路30が波形状となっているため、冷媒とインナフィン35との接触面積を大きくすることができる。それゆえ、熱交換部37における半導体モジュール2の冷却効率を高めることができる。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0070】
(実施形態5)
本実施形態においては、
図15に示すごとく、インナフィン35の形状を、ピン形状とした。
このピン状のインナフィン35は、例えば、外殻プレート31もしくは中間プレート34から、積層方向Xに多数のピン状突出部351を突出させてなる。
その他の構成は、実施形態3と同様である。
【0071】
本実施形態においては、熱交換部37において、冷媒が多数のピン状突出部351に衝突しながら、冷媒供給路36側から冷媒排出路38側へ流れる。これにより、効率的に、半導体モジュール2の冷却を行うことができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0072】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【0073】
また、上記実施形態においては、冷却管が中間プレートを備えた形態を示したが、中間プレートのない冷却管を用いた形態とすることもできる。