(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
用紙にトナー像を転写する転写部と、前記転写部により前記用紙に転写されたトナー像を加熱定着させる定着部と、を備え、前記用紙上に画像を形成する画像形成装置において、
前記用紙を搬送する上流側搬送部材及び下流側搬送部材の間で前記用紙に形成されるループのループ量を検知するループ検知部と、
前記ループ検知部の検知信号に基づいて、前記ループ量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ループ検知部の検知信号に基づいて、前記用紙に片ループが発生したと判断した場合に、前記ループ量を予測制御し、
前記ループ量を予測制御する際、前記下流側搬送部材の搬送速度を第1時間前記上流側搬送部材の搬送速度よりも速い第1搬送速度とする制御と、第2時間前記上流側搬送部材の搬送速度よりも遅い第2搬送速度とする制御と、を繰り返し行うことを特徴とする画像形成装置。
前記制御部は、予測制御する前の通常制御時の前記検知信号のデューティ比に基づいて、前記第1時間及び前記第2時間を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
前記制御部は、前記予測制御の開始後、前記検知信号が第2所定時間以上切り替わらない場合に、前記検知信号が切り替わるまで前記下流側搬送部材の搬送速度を前記第2搬送速度とする制御を行い、前記検知信号が切り替わった場合に、通常制御に復帰することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1記載の構成は、ループ検知部の配置箇所のループしか検知することができないため、片ループの形状によってはループを検知することができないという課題がある。また、搬送される用紙のサイズによりループ検知部の配置間隔が異なるため、用紙サイズによってはループを検知することができないという課題がある。
【0009】
本発明は、隣接する搬送部材の搬送速度に前/奥差が生じた場合であっても、ループ量を一定に保つことが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
用紙にトナー像を転写する転写部と、前記転写部により前記用紙に転写されたトナー像を加熱定着させる定着部と、を備え、前記用紙上に画像を形成する画像形成装置において、
前記用紙を搬送する上流側搬送部材及び下流側搬送部材の間で前記用紙に形成されるループのループ量を検知するループ検知部と、
前記ループ検知部の検知信号に基づいて、前記ループ量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ループ検知部の検知信号に基づいて、前記用紙に片ループが発生したと判断した場合に、前記ループ量を予測制御し、
前記ループ量を予測制御する際、前記下流側搬送部材の搬送速度を第1時間前記上流側搬送部材の搬送速度よりも速い第1搬送速度とする制御と、第2時間前記上流側搬送部材の搬送速度よりも遅い第2搬送速度とする制御と、を繰り返し行うことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記用紙の紙種に基づいて、前記第1時間及び前記第2時間を決定することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記第1時間が前記第2時間よりも長くなるように制御することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、予測制御する前の通常制御時の前記検知信号に基づいて、前記第1時間及び前記第2時間を決定することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、予測制御する前の通常制御時の前記検知信号のデューティ比に基づいて、前記第1時間及び前記第2時間を決定することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、任意の用紙の通常制御時の前記検知信号に基づいて、前記第1時間及び前記第2時間を決定することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記予測制御の開始後、前記検知信号が第2所定時間以上切り替わらない場合に、前記検知信号が切り替わるまで前記下流側搬送部材の搬送速度を前記第2搬送速度とする制御を行い、前記検知信号が切り替わった場合に、通常制御に復帰することを特徴とする
。
請求項
8に記載の発明は、請求項1〜
6のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記予測制御の開始後、前記検知信号が切り替わった場合に、通常制御に復帰することを特徴とする。
【0011】
請求項
9に記載の発明は、請求項1〜
8のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記上流側搬送部材は、前記転写部の転写部材であり、
前記下流側搬送部材は、前記定着部の定着部材であることを特徴とする。
【0012】
請求項1
0に記載の発明は、請求項
9に記載の画像形成装置において、
前記定着部材は、定着ローラー対であることを特徴とする。
【0013】
請求項1
1に記載の発明は、請求項1〜1
0のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記ループ検知部の検知信号が第1所定時間以上切り替わらない場合に、前記片ループが発生したと判断することを特徴とする。
【0014】
請求項1
2に記載の発明は、請求項1〜1
0のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記ループ検知部は、複数配置され、
前記制御部は、複数の前記ループ検知部の検知パターンに基づいて、前記片ループが発生したと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、隣接する搬送部材の搬送速度に前/奥差が生じた場合であっても、ループ量を一定に保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
本実施形態に係る画像形成装置1は、原稿から画像を読み取って得られた画像データ又は外部機器から受信した画像データに基づいて、電子写真方式により用紙上にカラー画像を形成するタンデム型のカラー画像形成装置である。
画像形成装置1は、
図1及び
図2に示すように、自動原稿搬送部2と、スキャナー部3と、画像形成部4と、給紙部5と、記憶部6と、操作表示部7と、制御部10と、を備えて構成されている。
【0027】
自動原稿搬送部2は、原稿Dを載置する載置トレイ、原稿Dを搬送する機構及び搬送ローラー等を備えて構成され、原稿Dを所定の搬送路に搬送する。
スキャナー部3は、光源や反射鏡等の光学系を備えて構成され、所定の搬送路を搬送された原稿D又はプラテンガラスに載置された原稿Dに光源を照射し、反射光を受光する。また、スキャナー部3は、受光した反射光を電気信号に変換して制御部10に出力する。
【0028】
画像形成部4は、イエロー作像部Yと、マゼンタ作像部Mと、シアン作像部Cと、ブラック作像部Kと、中間転写ベルトBと、定着装置Fと、を備えて構成されている。
各作像部YMCKは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を感光体41に形成し、感光体41に形成されたYMCK各色のトナー像を中間転写ベルトBに一次転写する。
なお、各作像部YMCKの構成及び動作は何れも同様であるため、以下、イエロー作像部Yを例に挙げて、画像形成部4が行う一連の画像形成動作について説明する。
【0029】
感光体41は、ドラム状の金属基体の外周面に有機光導電体を含有させた樹脂からなる感光層が形成された有機感光体により構成され、図中反時計回りに回転駆動される。感光層を構成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0030】
帯電装置42は、帯電チャージャーを用いて感光体41を一定の電位に帯電する。
露光装置43は、制御部10からの画像データDyに基づいて感光体41の非画像領域を露光して露光した部分の電荷を除去し、感光体41の画像領域に静電潜像を形成する。
現像装置44は、感光体41に形成された静電潜像上に現像剤であるトナーを供給し、感光体41にイエローのトナー像を形成する。
【0031】
一次転写ローラー45は、感光体41に形成されたイエローのトナー像を中間転写ベルトBに一次転写する。
なお、他の作像部MCKも同様に、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を中間転写ベルトBに一次転写する。これにより、中間転写ベルトB上にYMCK各色のカラーのトナー像が形成される。
【0032】
中間転写ベルトBは、複数のローラーに懸架され回転可能に支持された半導電性エンドレスベルトであり、ローラーの回転に伴って図中時計回りに回転駆動される。この中間転写ベルトBは、一次転写ローラー45により、対向するそれぞれの感光体41に圧着される。一次転写ローラー45のそれぞれには、印加された電圧に応じた転写電流が流れる。これにより、各感光体41の表面に現像された各トナー像は、それぞれ各一次転写ローラー45により順次中間転写ベルトBに一次転写される。
【0033】
二次転写装置(転写部)46は、二次転写ローラー対461を含んで構成され、中間転写ベルトBに一次転写されたトナー像を用紙Pに二次転写する。二次転写ローラー対(転写部材;上流側搬送部材)461は、対をなす一方のローラーが中間転写ベルトBに圧接し、他方が中間転写ベルトBを巻き回す複数のローラーのうちの1つを構成している。二次転写ローラー対461は、対をなすローラー間で形成される転写ニップを用紙Pが通過することにより、中間転写ベルトB上のトナー像を、給紙部5の給紙トレイ51〜53から搬送されてきた用紙Pに二次転写する。
【0034】
定着装置(定着部)Fは、定着ローラー対F1を含んで構成され、用紙Pに転写されたトナー像を定着する定着処理を施す。定着ローラー対F1(定着部材;下流側搬送部材)は、対をなすローラー間で形成される定着ニップを用紙Pが通過することにより、トナー像が転写された用紙Pを加熱及び加圧して画像を用紙に定着させる。
画像形成部4は、YMCK各色のトナー像が二次転写された用紙Pを定着装置Fにより加熱及び加圧した後、所定の搬送路に通して機外に排出する。
以上が画像形成部4による一連の画像形成動作である。
なお、定着装置Fは、一対のローラー(定着ローラー対F1)で構成する以外にも、ベルトを用いたベルト方式やパッドを用いたパッド方式といったように、一対の回転部材からなる構成を広く採用することができる。
【0035】
クリーニング装置47は、一次転写後の感光体41表面に残留する残留トナーや紙紛等の残留物を除去する。クリーニング装置47は、弾性体(例えばポリウレタンゴム)からなる平板状(シート状)のクリーニングブレードを感光体41に当接させるブレードクリーニング方式を採用している。
クリーニング装置48は、二次転写後の中間転写ベルトBに残留する残留物を除去する。
【0036】
二次転写ローラー対461と定着ローラー対F1との間には、
図3に示すように、搬送される用紙に対して下方にループを形成可能に構成された搬送ガイドGが設けられている。搬送ガイドG上には、二次転写ローラー対461と定着ローラー対F1との間で用紙に形成されるループのループ量を検知する接触式のループ検知部Lが設けられている。
ループ検知部Lは、用紙のループの程度(ループ量)に応じて変位するアクチュエーターと、アクチュエーターの変位に応じて検知信号(ループ検知のON/OFF)を制御部10に出力するフォトセンサーと、を備えて構成されている。
【0037】
給紙部5は、複数の給紙トレイ51〜53を備えて構成され、各給紙トレイ51〜53に種類の異なる複数の用紙Pを収容する。給紙部5は、所定の搬送路により収容される用紙Pを画像形成部4に給紙する。
【0038】
記憶部6は、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリなどにより構成され、プログラムデータや各種設定データ等のデータを制御部10から読み書き可能に記憶する。
【0039】
操作表示部7は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD)で構成され、表示部71及び操作部72として機能する。
表示部71は、制御部10から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、各機能の動作状況等の表示を行う。また、ユーザーによるタッチ操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。
操作部72は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。ユーザーは、操作表示部7を操作して、画質設定、倍率設定、応用設定、出力設定及び用紙設定等の画像形成に関する設定、用紙搬送指示、並びに装置の停止操作などを行うことができる。
【0040】
制御部10は、CPU、RAM、ROM等を備えて構成され、CPUはROMに記憶されている各種プログラムをRAMに展開し、展開された各種プログラムと協働して、自動原稿搬送部2、スキャナー部3、画像形成部4、給紙部5、記憶部6、操作表示部7、ループ検知部L等の画像形成装置1の各部の動作を統括的に制御する(
図2参照)。例えば、制御部10は、スキャナー部3からの電気信号を入力して各種画像処理を行い、画像処理により生成されたYMCK各色の画像データDy、Dm、Dc、Dkを画像形成部4に出力する。また、制御部10は、画像形成部4の動作を制御して用紙Pに画像を形成する。
【0041】
次に、本実施形態に係る画像形成装置1の動作について、
図4のフローチャートを参照して説明する。この動作は、制御部10が、プリントジョブを受信して通紙を開始したことを契機として開始される。
【0042】
まず、制御部10は、用紙の先端がループ検知部Lに到達したか否かを判定する(ステップS101)。具体的には、制御部10は、ループ検知部Lからループ検知ONを示す検知信号が出力された場合に、用紙の先端がループ検知部Lに到達したと判定する。
制御部10は、用紙の先端がループ検知部Lに到達したと判定した場合(ステップS101:YES)、次のステップS102へと移行する。
一方、制御部10は、用紙の先端がループ検知部Lに到達していないと判定した場合(ステップS101:NO)、用紙の先端がループ検知部Lに到達するまでステップS101の処理を繰り返す。
【0043】
次に、制御部10は、ループ検知制御(通常制御)を開始する(ステップS102)。ここで、ループ検知制御とは、制御部10が、ループ検知部Lがループを検知した場合(ループ検知ON)に定着ローラー対F1の搬送速度を二次転写ローラー対461の搬送速度よりも速い速度(第1搬送速度)V1とすることでループ量を減らす制御(以下高速制御)と、ループ検知部Lがループを検知していない場合(ループ検知OFF)に定着ローラー対F1の搬送速度を二次転写ローラー対461の搬送速度よりも遅い速度(第2搬送速度)V2とすることでループ量を増やす制御(以下低速制御)と、を所定間隔で繰り返し行うことで、ループ量を一定に保ったまま用紙を搬送する制御のことである(
図11参照)。
【0044】
次に、制御部10は、ループ検知部Lの検知信号(ループ検知のON/OFF)が所定時間(第1所定時間)T内で切り替わったか否かを判定する(ステップS103)。すなわち、ステップS102で開始されたループ検知制御は、高速制御と低速制御を所定間隔で繰り返し行うことで、所定時間T内に検知信号が切り替わる制御である。したがって、ループ検知制御が正常に行われていれば、検知信号が所定時間T内で切り替わっているはずである。そこで、ステップS103では、ループ検知制御が正常に行われているか否かを判定するために、検知信号が所定時間T内で切り替わったか否かを判定する。
制御部10は、ループ検知部Lの検知信号が所定時間T内で切り替わったと判定した場合(ステップS103:YES)、ループ検知制御が正常に行われていると判定し、ループ検知制御を継続する(ステップS104)。
一方、制御部10は、ループ検知部Lの検知信号が所定時間T内で切り替わっていないと判定した場合(ステップS103:NO)、ループ検知制御が正常に行われていない(すなわち、用紙に片ループが発生している)おそれがあると判定し、ステップS106へと移行する。
【0045】
次に、制御部10は、用紙の後端がループ検知部Lを通過したか否かを判定する(ステップS105)。具体的には、制御部10は、図示しないタイミングセンサーにより、用紙の後端がループ検知部Lを通過したか否かを判定する。
制御部10は、用紙の後端がループ検知部Lを通過したと判定した場合(ステップS105:YES)、処理を終了する。
一方、制御部10は、用紙の後端がループ検知部Lを通過していないと判定した場合(ステップS105:NO)、ステップS103へと移行して、再度、ループ検知部Lの検知信号が所定時間T内で切り替わったか否かを判定する。
【0046】
ステップS106において、制御部10は、予測制御を開始する。ここで、予測制御とは、ループ検知部Lの検知信号が所定時間T内で切り替わらない(所定時間T以上ループ検知OFFが継続している)場合(
図5(A)参照)に、用紙に片ループが発生したと判断し、高速制御と低速制御を所定間隔で繰り返し行うことで、ループ量を制御する制御のことである(
図5(B)参照)。
つまり、ループ検知制御中は、ループ検知部Lの検知信号に応じて定着ローラー対F1の搬送速度が切り替わるが、所定時間T以上ループ検知OFFが継続して予測制御に切り替わると、ループ検知部Lの検知信号はループ検知OFFの状態が継続する(
図5(A)参照)とともに、定着ローラー対F1の搬送速度はループ検知OFFの間、高速制御と低速制御を所定間隔で繰り返すこととなる(
図5(B)参照)。
【0047】
ここで、第1搬送速度V1による高速制御で動作する時間(第1時間)をT1、第2搬送速度V2による低速制御で動作する時間(第2時間)をT2としたとき、第1時間T1及び第2時間T2を決定する方法の一例は、搬送される用紙の紙種に基づいて決定する方法である。用紙の紙種は、用紙が片ループになりやすいか否かに影響する。したがって、片ループになりやすい条件の場合に、片ループになりにくい条件よりも第1時間T1及び第2時間T2を短くして片ループが拡大しないよう細かく切り替える制御を行うとともに、第2時間T2よりも第1時間T1を長くしてループ量を減らす制御を行うことで、片ループの拡大を抑制することができる。
【0048】
図6に、紙種と所定時間T、第1時間T1及び第2時間T2との対応関係を示すテーブルTB1の一例を示す。
図6に示す例では、紙種条件の例として、用紙の厚さ、コート紙であるか否か、用紙サイズが挙げられている。用紙が薄紙(坪量105gsm以下;コシがない)である場合、用紙がコート紙である場合又は用紙が大サイズ(長さ600mm以上)である場合、用紙が片ループになりやすいため、片ループになりにくい条件よりも第1時間T1及び第2時間T2を短くするとともに、第2時間T2よりも第1時間T1を長くする。一方、用紙が厚紙(坪量177gsm以上;コシがある)である場合、用紙が非コート紙である場合又は用紙が小サイズ(長さ487mm以下)である場合、用紙が片ループになりにくいため、片ループになりやすい条件よりも第1時間T1及び第2時間T2を長くするとともに、ループ量を減らす制御を行う必要がないため第1時間T1と第2時間T2の長さを同じにする。なお、用紙が中間紙(坪量106以上176gsm以下)である場合又は用紙が中サイズ(長さ488以上600mm未満)である場合、両者の中間的な制御を行う。
【0049】
また、第1時間T1及び第2時間T2を決定する方法の他の例は、ループ検知部Lの検知信号がループ検知OFFの間(
図7(A)参照)、第1時間T1が第2時間T2よりも長くなるように制御する方法である(
図7(B)参照)。すなわち、紙種にかかわらず、第1時間T1が第2時間T2よりも長くなるように制御することで、ループ量を減らす制御を容易に行うことができるので、片ループの拡大を容易に抑制することができる。
【0050】
また、第1時間T1及び第2時間T2を決定する方法の他の例は、通常制御開始時から所定時間T経過するまでの通常制御時の検知信号に基づいて、第1時間T1及び第2時間T2を決定する方法である。通常制御時は、ループ検知部Lの検知信号(実測値)に基づいて、定着ローラー対F1の搬送速度を切り替えている。したがって、通常制御時の検知信号のON/OFF周期をそのまま適用することで、ループ量を一定に制御できる可能性を高めることができる。
【0051】
また、第1時間T1及び第2時間T2を決定する方法の他の例は、通常制御時の検知信号のデューティ比に基づいて第1時間T1及び第2時間T2を決定する方法である。すなわち、通常制御時の検知信号のON/OFF周期をそのまま適用するのではなく、通常制御時の検知信号のON/OFF周期と同一の比率となるように、第1時間T1及び第2時間T2を決定するようにしてもよい。例えば、通常制御時の検知信号のON/OFF周期が50msec/30msecであった場合、第1時間T1と第2時間T2の比率が5:3となるように、例えば、第1時間T1を40msec、第2時間T2を24msecと決定するようにしてもよいし、第1時間T1を60msec、第2時間T2を36msecと決定するようにしてもよい。
【0052】
また、第1時間T1及び第2時間T2を決定する方法の他の例は、任意の用紙の通常制御時の検知信号に基づいて、第1時間T1及び第2時間T2を決定する方法である。すなわち、予測制御を行う必要がある場合は、他紙の通常制御時の検知信号に倣った場合であっても、ループ量を一定に制御できる可能性を高めることができる。ここで、片ループや用紙の跳ね上げは、用紙の剛度の影響が大きい。例えば、剛度が低い用紙(例えばOKトップコート128gsm等)の場合、片ループや用紙の跳ね上げが起こりやすく、剛度が高い用紙(例えばPODトップコート128gsm等)の場合、片ループや用紙の跳ね上げが起こりにくい。したがって、例えば、片ループや用紙の跳ね上げが起こりやすいOKトップコート128gsmの予測制御に、片ループや用紙の跳ね上げが起こりにくいPODトップコート128gsmの通常制御時の検知信号のON/OFF周期を適用することで、ループ量を一定に制御できる可能性を高めることができる。
【0053】
次に、制御部10は、ループ検知部Lの検知信号(ループ検知のON/OFF)が切り替わったか否かを判定する(ステップS107)。すなわち、制御部10は、ステップS106で予測制御を開始したことにより、用紙にループが正常に形成されてループ検知部Lによりループが検知されたか否かを判定する。
制御部10は、ループ検知部Lの検知信号が切り替わったと判定した場合(ステップS107:YES)、用紙にループが正常に形成されたと判定し、通常制御であるループ検知制御に復帰する(ステップS108)。その後、ステップS103へと移行して、再度、ループ検知部Lの検知信号が所定時間T内で切り替わったか否かを判定する。
一方、制御部10は、ループ検知部Lの検知信号が切り替わっていないと判定した場合(ステップS107:NO)、用紙にループが正常に形成されていないと判定し、予測制御を継続する(ステップS109)。
【0054】
次に、制御部10は、用紙の後端がループ検知部Lを通過したか否かを判定する(ステップS110)。
制御部10は、用紙の後端がループ検知部Lを通過したと判定した場合(ステップS110:YES)、処理を終了する。
一方、制御部10は、用紙の後端がループ検知部Lを通過していないと判定した場合(ステップS110:NO)、ステップS107へと移行して、再度、ループ検知部Lの検知信号が切り替わったか否かを判定する。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置1は、用紙を搬送する上流側搬送部材(二次転写ローラー対461)及び下流側搬送部材(定着ローラー対F1)の間で用紙に形成されるループのループ量を検知するループ検知部Lと、ループ検知部Lの検知信号に基づいて、ループ量を制御する制御部10と、を備える。また、制御部10は、ループ検知部Lの検知信号に基づいて、用紙に片ループが発生したと判断した場合に、ループ量を予測制御する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、片ループの発生を予測してループ量を制御することができるので、上流側搬送部材及び下流側搬送部材の搬送速度に前/奥差が生じた場合であっても、ループ量を一定に保つことができる。よって、片ループや用紙の跳ね上げを抑制することが可能となり、転写ずれや倍率不良等の発生を抑制することができる。また、上ループの発生を抑制することができるので、画像擦れの発生を抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、制御部10は、ループ検知部Lの検知信号が第1所定時間(所定時間T)以上切り替わらない場合に、片ループが発生したと判断する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、片ループの発生をより正確に予測することができるので、より確実にループ量を一定に保つことができる。
【0057】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、制御部10は、ループ量を予測制御する際、下流側搬送部材の搬送速度を第1時間T1上流側搬送部材の搬送速度よりも速い第1搬送速度V1とする制御と、第2時間T2上流側搬送部材の搬送速度よりも遅い第2搬送速度V2とする制御と、を繰り返し行う。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、予測制御の際に、用紙を引っ張る力と用紙を撓ませる力とを用紙に対して交互に与えることができるので、片ループの拡大を抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、制御部10は、用紙の紙種に基づいて、第1時間T1及び第2時間T2を決定する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、搬送される用紙が片ループになりやすいか否かを考慮して予測制御を行うことができるので、片ループの拡大を精度よく抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、制御部10は、第1時間T1が第2時間T2よりも長くなるように制御する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、ループ量を減らす制御を容易に行うことができるので、片ループの拡大を容易に抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、制御部10は、予測制御する前の通常制御時の検知信号に基づいて、第1時間T1及び第2時間T2を決定する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、ループ量を一定に制御できていたときの検知信号のON/OFF周期を利用することができるので、ループ量を一定に制御できる可能性を高めることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、制御部10は、予測制御する前の通常制御時の検知信号のデューティ比に基づいて、第1時間T1及び第2時間T2を決定する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、ループ量を一定に制御できていたときの検知信号のON/OFF周期の比率に基づいて予測制御を行うことができるので、ループ量を一定に制御できる可能性を高めることができる。
【0062】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、制御部10は、任意の用紙の通常制御時の検知信号に基づいて、第1時間T1及び第2時間T2を決定する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、片ループや用紙の跳ね上げが起こりにくい用紙の通常制御時の検知信号のON/OFF周期を利用することができるので、ループ量を一定に制御できる可能性を高めることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、制御部10は、予測制御の開始後、検知信号が切り替わった場合に、通常制御に復帰する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、用紙にループが正常に形成されたと判定した場合に通常制御に復帰することができるので、不必要に予測制御を行うことがなくなり、より安定したループ量制御を実施することができる。
【0064】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0065】
例えば、上記実施形態では、接触式のループ検知部Lを用いた構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、接触式のループ検知部Lを用いる代わりに、
図8に示すように、レーザー変位計等の非接触式のループ検知部L1を用いるようにしてもよい。なお、非接触式のループ検知部L1を用いる場合、用紙の裏面側に設けるようにしてもよい(
図8参照)し、用紙の表面側に設けるようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、1つのループ検知部Lを用いた構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、
図9に示すように、複数(
図9では3つ)のループ検知部L(
図9ではLF、LM、LR)を幅方向に並べる構成を用いるようにしてもよい。
図9に示す例では、中央のループ検知部LMと、両端のループ検知部LF、LRのうちいずれか一方と、の検知信号がONからOFFに切り替わった場合(又はOFFからONに切り替わった場合)に、用紙に片ループが発生したと判断し、通常制御から予測制御へと切り替えるようにする。また、ループ検知部Lを2つ用いる場合は、2つのループ検知部Lのうちいずれか1つの検知信号がONからOFFに切り替わった場合(又はOFFからONに切り替わった場合)に、用紙に片ループが発生したと判断し、通常制御から予測制御へと切り替えるようにする。また、ループ検知部Lを4つ以上用いる場合は、隣り合う2つ以上のループ検知部Lの検知信号がONからOFFに切り替わった場合(ただし、全てのループ検知部Lの検知信号がOFFに切り替わるケースは除く)に、用紙に片ループが発生したと判断し、通常制御から予測制御へと切り替えるようにする。この判断方法を用いることで、単なる用紙のばたつきを片ループと誤って判定することがなくなるので、適切なループ量制御を実施することができる。
【0067】
以上のように、複数のループ検知部Lの検知パターン(隣り合う2つ以上のループ検知部Lの検知信号が切り替わるパターン)に基づいて、片ループが発生したと判断することで、より短時間で片ループの発生を予測することができるので、より確実に片ループの拡大を抑制することができる。
なお、上記変形例では、複数のループ検知部Lを幅方向に並べる構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、複数のループ検知部Lを搬送方向に並べる構成を用いるようにしてもよい。
【0068】
また、その他の変形例として、予測制御の開始後、ループ検知部Lの検知信号が所定時間(第2所定時間)T3以上切り替わらない場合に、検知信号が切り替わるまで定着ローラー対F1の搬送速度を第2搬送速度V2とする制御を行い、検知信号が切り替わった場合に、通常制御に復帰するようにしてもよい。
以下、
図10のフローチャートを参照して、変形例に係る画像形成装置1の動作を説明する。
【0069】
まず、制御部10は、ステップS201〜ステップS209の処理を行う。なお、ステップS201〜ステップS209の処理は、実施形態における
図4のステップS101〜ステップS109の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0070】
次に、制御部10は、所定時間T3内に用紙の後端がループ検知部Lを通過したか否かを判定する(ステップS210)。
制御部10は、所定時間T3内に用紙の後端がループ検知部Lを通過したと判定した場合(ステップS210:YES)、処理を終了する。
一方、制御部10は、所定時間T3内に用紙の後端がループ検知部Lを通過していないと判定した場合(ステップS210:NO)、定着ローラー対F1の搬送速度を第2搬送速度V2で制御する(ステップS211)。これは、予測制御の開始後、ループ検知部Lの検知信号が所定時間(第2所定時間)T3以上切り替わらない場合、定着ローラー対F1が用紙を引っ張り過ぎて、二次転写ローラー対461と定着ローラー対F1との間で用紙が伸び切った状態となり、画像ずれ等が発生するおそれがあるからである。そこで、定着ローラー対F1の搬送速度を第2搬送速度V2とすることで、定着ローラー対F1が用紙を引っ張り過ぎる状況を抑制することができる。
【0071】
次に、制御部10は、ループ検知部Lの検知信号(ループ検知のON/OFF)が切り替わったか否かを判定する(ステップS212)。すなわち、制御部10は、ステップS211で定着ローラー対F1の搬送速度を第2搬送速度V2で制御したことにより、定着ローラー対F1による用紙の引っ張り過ぎが解消されてループ検知部Lによりループが検知されたか否かを判定する。
制御部10は、ループ検知部Lの検知信号が切り替わったと判定した場合(ステップS212:YES)、定着ローラー対F1による用紙の引っ張り過ぎが解消されたと判定し、ステップS208へと移行して、再度、通常制御であるループ検知制御に復帰する。その後、ステップS203へと移行して、再度、ループ検知部Lの検知信号が所定時間T内で切り替わったか否かを判定する。
一方、制御部10は、ループ検知部Lの検知信号が切り替わっていないと判定した場合(ステップS212:NO)、定着ローラー対F1による用紙の引っ張り過ぎが解消されていないと判定し、次のステップS213へと移行する。
【0072】
次に、制御部10は、用紙の後端がループ検知部Lを通過したか否かを判定する(ステップS213)。
制御部10は、用紙の後端がループ検知部Lを通過したと判定した場合(ステップS213:YES)、処理を終了する。
一方、制御部10は、用紙の後端がループ検知部Lを通過していないと判定した場合(ステップS213:NO)、定着ローラー対F1の搬送速度を第2搬送速度V2で制御したままステップS212へと移行して、再度、ループ検知部Lの検知信号が切り替わったか否かを判定する。
【0073】
以上のように、制御部10は、予測制御の開始後、検知信号が第2所定時間(所定時間T3)以上切り替わらない場合に、検知信号が切り替わるまで下流側搬送部材(定着ローラー対F1)の搬送速度を第2搬送速度V2とする制御を行い、検知信号が切り替わった場合に、通常制御に復帰することで、定着ローラー対F1が用紙を引っ張り過ぎる状況を抑制することができるので、転写ずれや倍率不良等の発生を抑制することができる。
【0074】
また、所定時間T、第1時間T1、第2時間T2及び所定時間T3は、時間を計測して制御する方法に限らず、その他の方法により制御するようにしてもよい。例えば、用紙の搬送量を測定する手段を備え、搬送量に基づいて制御する方法や、定着ローラー対F1の駆動モーター、二次転写ローラー対461の駆動モーター及び用紙搬送ローラーの回転数や回転角を測定するエンコーダー等の手段を備え、回転数や回転角に基づいて制御する方法を用いるようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、二次転写ローラー対461及び定着ローラー対F1の間で用紙に形成されるループのループ量を制御する構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。すなわち、用紙を搬送する上流側搬送部材及び下流側搬送部材の間で用紙に形成されるループのループ量を制御する構成であれば、いかなる構成であってもよく、例えば、二次転写ローラー対461と二次転写ローラー対461の上流側に設けられたタイミングローラー対との間で用紙に形成されるループのループ量を制御する構成であってもよい。
【0076】
その他、画像形成装置を構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。