(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基準信号と被測定信号とのいずれか一方を用いて他方を周波数デルタシグマ変調してアイドルトーンを分散させた周波数デルタシグマ変調信号を出力するアイドルトーン分散装置であって、
n(nは2以上の任意の自然数)個の周波数デルタシグマ変調部と、
前記n個の周波数デルタシグマ変調部の出力信号を加算して前記周波数デルタシグマ変調信号を出力する加算部と、
前記周波数デルタシグマ変調部の出力信号のアイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含むジッターを生成するハードウェアと、を備え、
前記n個の周波数デルタシグマ変調部の各々は、前記基準信号と前記被測定信号とのいずれか一方を用いて他方を周波数デルタシグマ変調し、
前記基準信号と前記被測定信号との少なくとも一方は、前記ジッターを有することを特徴とするアイドルトーン分散装置。
基準信号と被測定信号とのいずれか一方を用いて他方を周波数デルタシグマ変調してアイドルトーンを分散させた周波数デルタシグマ変調信号を出力するアイドルトーン分散装置であって、
n(nは2以上の任意の自然数)個の周波数デルタシグマ変調部と、
前記被測定信号と前記基準信号との位相を調整して、n組の出力被測定信号および出力基準信号を生成して、各組の前記出力被測定信号および前記出力基準信号を前記n個の周波数デルタシグマ変調部の各々に供給する位相調整部と、
前記n個の周波数デルタシグマ変調部の出力信号を加算して前記周波数デルタシグマ変調信号を出力する加算部と、
前記周波数デルタシグマ変調部の出力信号のアイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含むジッターを生成するハードウェアと、を備え、
前記位相調整部は、前記n個の周波数デルタシグマ変調部のうちの少なくとも一部の前記周波数デルタシグマ変調部の出力信号のアイドルトーンの位相が互いに異なるように、前記被測定信号と前記基準信号との位相を調整して、前記n組の出力被測定信号および出力基準信号を生成し、
前記n個の周波数デルタシグマ変調部の各々は、前記位相調整部から供給される前記出力基準信号と前記出力被測定信号とのいずれか一方を用いて他方を周波数デルタシグマ変調し、
前記出力基準信号と前記出力被測定信号とのうちの少なくとも1つは、前記ジッターを有することを特徴とするアイドルトーン分散装置。
所定時間をD、前記被測定信号の1周期または前記基準信号の1周期をT、mをn以下の任意の自然数、mD/nTを整数、mD/nTとmとが互いに素、i(iはn−1以下の任意の自然数)番目の周波数デルタシグマ変調部に供給する出力被測定信号と出力基準信号との位相差をPiとしたとき、
前記位相調整部は、D/n=Pi+1−Piとなるように、前記被測定信号と前記基準信号との位相を調整して、前記n組の出力被測定信号および出力基準信号を生成する請求項2に記載のアイドルトーン分散装置。
前記位相調整部は、前記n個の周波数デルタシグマ変調部のうちの一部の前記周波数デルタシグマ変調部の出力信号のアイドルトーンの位相が互いに異なるように、前記被測定信号と前記基準信号との位相を調整して、前記n組の出力被測定信号および出力基準信号を生成する請求項2に記載のアイドルトーン分散装置。
所定時間をD、前記被測定信号の1周期または前記基準信号の1周期をT、mをn以下の任意の自然数、mD/nTを整数、mD/nTとmとが互いに素、i(iはn−1以下の任意の自然数)番目の周波数デルタシグマ変調部に供給する出力被測定信号と出力基準信号との位相差をPiとしたとき、
D/n≠Pi+1−Piである請求項2に記載のアイドルトーン分散装置。
前記ジッターは、前記アイドルトーンが有する周波数成分のうち、強度の最も大きい成分の周波数よりも高い周波数成分を含む請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアイドルトーン分散装置。
前記ジッターの大きさは、前記基準信号の周波数、前記被測定信号の周波数、前記被測定信号の測定帯域および前記周波数デルタシグマ変調部の個数のうちの少なくとも1つに基づいて決定される請求項1ないし7のいずれか1項に記載のアイドルトーン分散装置。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のアイドルトーン分散装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示すアイドルトーン分散装置のジッター加算器の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示すジッター加算器の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】
図1に示すアイドルトーン分散装置のジッター加算器の構成例を示すブロック図である。
【
図5】本発明のアイドルトーン分散装置の第2実施形態を示すブロック図である。
【
図6】本発明のアイドルトーン分散装置の第3実施形態を示すブロック図である。
【
図7】本発明のアイドルトーン分散装置の第4実施形態を示すブロック図である。
【
図8】本発明のアイドルトーン分散装置の第5実施形態を示すブロック図である。
【
図9】アイドルトーン分散装置の比較例を示すブロック図である。
【
図10】周波数デルタシグマ変調部の構成例を示すブロック図である。
【
図11】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図12】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図13】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図14】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図15】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図16】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図17】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図18】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図19】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図20】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図21】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図22】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図23】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図24】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図25】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図26】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図27】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図28】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図29】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図30】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図31】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図32】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図33】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図34】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図35】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図36】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図37】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図38】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図39】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図40】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図41】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図42】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図43】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図44】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図45】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図46】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図47】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図48】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図49】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図50】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図51】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図52】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図53】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図54】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図55】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図56】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図57】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図58】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図59】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図60】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図61】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図62】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図63】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図64】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図65】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図66】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図67】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図68】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図69】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図70】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図71】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図72】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図73】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図74】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図75】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図76】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図77】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図78】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図79】アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。
【
図80】本発明の周波数比計測装置の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のアイドルトーン分散装置および周波数比計測装置を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明のアイドルトーン分散装置の第1実施形態を示すブロック図である。
図2は、
図1に示すアイドルトーン分散装置のジッター加算器の構成例を示すブロック図である。
図3は、
図2に示すジッター加算器の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4は、
図1に示すアイドルトーン分散装置のジッター加算器の構成例を示すブロック図である。
図10は、周波数デルタシグマ変調部の構成例を示すブロック図である。
【0021】
なお、図面には、被測定信号を「Fx」と記載し、基準信号を「Fc」と記載し、出力被測定信号を「Fx1」、「Fx2」、「Fxj」、「Fxn」と記載し、出力基準信号を「Fc1」、「Fc2」、「Fcj」、「Fcn」と記載し、また、「1」、「2」、「j」、「n」等の添え字を付して互いを区別する。また、本実施形態の説明でも、被測定信号を「Fx」と記載し、基準信号を「Fc」と記載し、出力被測定信号を「Fx1」、「Fx2」、「Fxj」、「Fxn」と記載し、出力基準信号を「Fc1」、「Fc2」、「Fcj」、「Fcn」と記載し、また、「1」、「2」、「j」、「n」等の添え字を付して互いを区別するが、一部では、その記載を省略する。
【0022】
また、以下の説明では、位相調整部10から出力された基準信号(位相調整部10により位相が調整された基準信号)は、「出力基準信号」または「基準信号」と言う。同様に、位相調整部10から出力された被測定信号(位相調整部10により位相が調整された被測定信号)は、「出力被測定信号」または「被測定信号」と言う。
また、信号のレベルが「ロー(Low)」の場合を「0」、信号のレベルが「ハイ(High)」の場合を「1」とも言う。これらは、他の実施形態でも同様である。
【0023】
図1に示すように、アイドルトーン分散装置1は、被測定信号Fxと基準信号Fcとの位相を調整して、n(nは2以上の自然数)組の出力被測定信号Fx1(被測定信号)〜出力被測定信号Fxn(被測定信号)および出力基準信号Fc1(基準信号)〜出力基準信号Fcn(基準信号)を出力する位相調整部10と、n個(複数)の周波数デルタシグマ変調部20(以下、「FDSM(Frequency Delta Sigma Modulator)」と言う)と、加算器30と、ジッター加算器5(ジッター生成部)とを備えている。
また、ジッター加算器5の数は、1つでもよく、また、複数でもよいが、本実施形態では、ジッター加算器5は、複数設けられている。なお、ジッター加算器5については、後に詳述する。
【0024】
また、各FDSM20は、並列に接続されている。また、各FDSM20は、位相調整部10の出力側(後段)に接続され、加算器30は、各FDSM20の出力側に接続されている。また、FDSM20の数は、複数であれば特に限定されないが、その上限は、例えば、5000程度とすることができる。また、位相調整部10には、基準信号および被測定信号が入力される。また、被測定信号とは、測定の対象となる信号である。また、基準信号とは、周波数が既知の信号であり、測定の基準となる信号である。また、図面中の添え字「1」、「2」、「j」、「n」は、それぞれ、「1個目」、「2個目」、「j個目」、「n個目」を示す。また、「j」は、1以上n以下の任意の自然数であり、一般形を示している。
【0025】
各FDSM20は、基準信号(厳密には出力被測定信号Fx1〜Fxn)と被測定信号(厳密には出力基準信号Fc1〜Fcn)との一方を用いて他方を周波数デルタシグマ変調する回路であり、基準信号と被測定信号とを用い、基準信号の周波数と被測定信号の周波数との比(周波数比)を計測する。本実施形態では、代表的に、基準信号を用いて被測定信号を周波数デルタシグマ変調する場合を例に挙げて説明する。そして、被測定信号を用いて基準信号を周波数デルタシグマ変調する場合については、後述する説明において、基準信号と被測定信号とを入れ替えればよいので、その説明は省略する。
【0026】
FDSM20としては、例えば、出力信号をビットストリーム形式で出力するFDSM(以下、「ビットストリーム構成のFDSM(ビットストリーム型FDSM)」とも言う)、出力信号をデータストリーム形式で出力するFDSM(以下、「データストリーム構成のFDSM(データストリーム型FDSM)」とも言う)等を用いることができる。
ビットストリーム構成のFDSMを用いる場合は、信号処理回路を簡素化することができる。また、データストリーム構成のFDSMを用いる場合は、周波数変動が大きい場合にも容易に対応することができる。
【0027】
次に、データストリーム構成のFDSM20と、ビットストリーム構成のFDSM20とを説明するが、まずは、データストリーム構成のFDSM20について説明する。
図1に示すように、データストリーム構成のFDSM20は、被測定信号の立ち上がりエッジをカウントしてカウント値を示すカウントデータDcを出力するアップカウンター21と、基準信号の立ち上がりエッジに同期してカウントデータDcをラッチして第1データD1を出力する第1ラッチ22と、基準信号の立ち上がりエッジに同期して第1データD1をラッチして第2データD2を出力する第2ラッチ23と、第1データD1から第2データD2を減算して出力データOUTを生成する減算器24とを備える。なお、第1ラッチ22および第2ラッチ23は、例えばDフリップフロップ回路等で構成される。
【0028】
この例のFDSM20は、一次の周波数デルタシグマ変調器とも呼ばれ、被測定信号のカウント値を基準信号により2回ラッチしており、基準信号の立ち上がりエッジをトリガーとして被測定信号のカウント値を順次保持する。この例では、立ち上がりエッジでラッチ動作を行う場合を想定しているが、立ち下りエッジもしくは立ち上がり立ち下りエッジの両方でラッチ動作を行ってもよい。また、減算器24は保持されている2つのカウント値の差分を演算することで基準信号が1周期推移する間に観測される被測定信号のカウント値の増分を時間経過と共に不感期間無く出力する。被測定信号の周波数をfx、基準信号の周波数をfcとしたとき、周波数の比はfx/fcとなる。FDSM20は、周波数の比をデジタル信号列として出力するものである。
【0029】
このデジタル信号列は、データ列・データストリームと呼ばれる。また、後述する1ビットで表されるデジタル信号列は、ビット列・ビットストリームと呼ばれる。
【0030】
次に、ビットストリーム構成のFDSM20について説明する。
図10に示すように、ビットストリーム構成のFDSM20は、基準信号の立ち上がりエッジに同期して被測定信号をラッチして第1データd1を出力する第1ラッチ22と、基準信号の立ち上がりエッジに同期して第1データd1をラッチして第2データd2を出力する第2ラッチ23と、第1データd1と第2データd2の排他的論理和を演算して出力データOUTを生成する排他的論理和回路25とを備える。なお、第1ラッチ22および第2ラッチ23は、例えばDフリップフロップ回路等で構成される。
【0031】
このFDSM20が前記データストリーム構成のFDSM20と相違するのは、前記データストリーム構成のFDSM20では、第1ラッチ22によってカウントデータDcを保持し、基準信号が1周期推移する間に観測される被測定信号の立ち上がりエッジをカウントして得たカウントデータDcの増分を出力データOUTとして出力するのに対し、このFDSM20では、第1ラッチ22によって被測定信号のHighもしくはLowの状態を保持し、基準信号が1周期推移する間の反転回数の偶奇を出力データOUTとして出力する点である(反転回数が偶数であれば0、奇数であれば1を出力する)。
【0032】
ところで、被測定信号の1周期はHighとLowの反転遷移2回で構成されることから、基準信号に対する被測定信号の変動が、出力データOUTに及ぼす変化の度合いは、前記データストリーム構成のFDSM20においてカウント値を保持する場合に比べ2倍となる。従って、ビットストリーム構成のFDSM20におけるアイドルトーンの振る舞いは、前記データストリーム構成のFDSM20において、2倍の周波数の被測定信号がFDSM20に入力された場合の振る舞いと一致する。ビットストリーム構成のFDSM20の動作については、上記の性質を考慮し、必要に応じて被測定信号の周波数fxを周波数2fxに置き換えて考えればよい。なお、本実施形態では、代表的に、データストリーム構成のFDSM20を例に挙げて説明する。
【0033】
また、位相調整部10は、被測定信号と基準信号との位相を調整する。この位相調整部10は、例えば、複数の遅延素子等を用いて構成することができる。ここで、「被測定信号と基準信号との位相を調整」には、被測定信号のみの位相をずらす態様(被測定信号のみに遅延を施す態様)と、基準信号のみの位相をずらす態様(基準信号にのみ遅延を施す態様)と、被測定信号と基準信号とのそれぞれの位相をずらす態様(被測定信号と基準信号とのそれぞれに遅延を施す態様)とが含まれる。以下、この3つの構成の位相調整部10を説明する。
【0034】
(被測定信号のみの位相をずらす構成の位相調整部10)
位相調整部10は、被測定信号を遅延させずに、出力被測定信号Fx1として出力し、被測定信号(出力被測定信号Fx1)を遅延させて、出力被測定信号Fx2として出力し、以下、同様にして、順次、遅延させて出力被測定信号Fxnまで出力する。
また、位相調整部10は、基準信号を遅延させずに、出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnとして出力する。
【0035】
(基準信号のみの位相をずらす構成の位相調整部10)
位相調整部10は、基準信号を遅延させずに、出力基準信号Fc1として出力し、基準信号(出力基準信号Fc1)を遅延させて、出力基準信号Fc2として出力し、以下、同様にして、順次、遅延させて出力基準信号Fcnまで出力する。
また、位相調整部10は、被測定信号を遅延させずに、出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnとして出力する。
【0036】
(被測定信号と基準信号とのそれぞれの位相をずらす構成の位相調整部10)
位相調整部10は、被測定信号を遅延させずに、出力被測定信号Fx1として出力し、被測定信号(出力被測定信号Fx1)を遅延させて、出力被測定信号Fx2として出力し、以下、同様にして、順次、遅延させて出力被測定信号Fxnまで出力する。
また、位相調整部10は、基準信号を遅延させずに、出力基準信号Fc1として出力し、基準信号(出力基準信号Fc1)を遅延させて、出力基準信号Fc2として出力し、以下、同様にして、順次、遅延させて出力基準信号Fcnまで出力する。この場合、被測定信号についての遅延時間と、基準信号についての遅延時間とは、異なるように設定する。
この位相調整部10により被測定信号と基準信号との少なくとも一方を遅延させることにより、各FDSM20における周波数デルタシグマ変調で発生する周期的な量子化雑音であるアイドルトーンを時間的に分散させ、アイドルトーンの影響を抑制することができる。
【0037】
また、位相調整部10としては、下記の2つの構成が挙げられる。
(構成1)
構成1は、n個のFDSM20の出力信号のアイドルトーンの位相がすべて互いに異なるように、位相調整部10が構成されている。具体的には、下記のように位相調整部10を構成する。
【0038】
所定時間をD、被測定信号の1周期または基準信号の1周期をT、mをn以下の任意の自然数、mD/nTを整数、mD/nTとmとが互いに素、i(iはn−1以下の任意の自然数)番目のFDSM20(周波数デルタシグマ変調部)に供給する出力被測定信号と出力基準信号との位相差をP
iとしたとき、位相調整部10は、D/n=P
i+1−P
iとなるように、被測定信号と基準信号との位相を調整して、n組の出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnおよび出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnを生成する。これにより、n個のFDSM20の出力信号のアイドルトーンの位相が互いに異なるようにすることができる。これによって、アイドルトーンを適確に時間的に分散させることができ、アイドルトーンの影響を抑制することができる。この場合、後述する構成2よりもさらにアイドルトーンを時間的に分散させることができ、アイドルトーンの影響を抑制することができる。
例として、10個のFDSM20と基準信号(周波数:200MHz)を用いて、最大遅延量15000p秒の位相を調整する場合を挙げると、Dは15000p秒、Tは1/200MHz=5000p秒、nは10となる。設計値としてmに10を選べば、mD/nTは3となり、mD/nTとmは互いに素となることから上記条件を満たす。この場合、P
i+1−P
iをD/n、すなわち1500p秒ずつ位相をずらすよう調整すれば良い。
【0039】
(構成2)
構成2は、n個のFDSM20の出力信号のアイドルトーンの位相のうちの一部が互いに異なるように、位相調整部10が構成されている。具体的には、下記のように位相調整部10を構成する。
【0040】
位相調整部10は、n個のFDSM20(周波数デルタシグマ変調部)のうちの一部のFDSM20の出力信号のアイドルトーンの位相が互いに異なるように、被測定信号と基準信号との位相を調整して、n組の出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnおよび出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnを生成する。これにより、アイドルトーンを適確に時間的に分散させることができ、アイドルトーンの影響を抑制することができる。
【0041】
また、n組の出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnおよび出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnは、所定時間をD、被測定信号の1周期または基準信号の1周期をT、mをn以下の任意の自然数、mD/nTを整数、mD/nTとmとが互いに素、i(iはn−1以下の任意の自然数)番目のFDSM20(周波数デルタシグマ変調部)に供給する出力被測定信号と出力基準信号との位相差をP
iとしたとき、D/n≠P
i+1−P
iであってもよい。
この場合でもジッターを付与することで、n個のFDSM20の出力信号のアイドルトーンの位相が互いに異なるようにすることができる。これによって、アイドルトーンを適確に時間的に分散させることができ、アイドルトーンの影響を抑制することができる。
また、遅延量の設定の自由度が高まり、調整が簡易になり、調整が簡易になることから特別な装置を必要とせず、製造コストを低減することができる。
また、一部がD/n=P
i+1−P
iを満足し、他(残り)がD/n≠P
i+1−P
iであってもよい。
また、加算器30は、出力データOUT1〜出力データOUTnを加算して、周波数デルタシグマ変調信号Yを生成し、出力する。この周波数デルタシグマ変調信号Yは、基準信号の周波数と被測定信号の周波数との比(周波数比)に対応している。
【0042】
このようなアイドルトーン分散装置1は、ジッターを生成するジッター生成部の1例であるジッター加算器5を有している。これにより、別途、ジッターを生成する装置を用意する必要がなく、ジッターを付加したい信号に対し、容易かつ適確にジッターを付加することができる。ジッターとは、信号の時間的な揺らぎ(タイミング揺らぎ)を言う。また以下では、ジッターの大きさとは、信号を構成する1つのパルス(信号波形)に着目したとき、最も早く立ち上がる立ち上がりエッジと最も遅く立ち上がる立ち上がりエッジとの間の時間(時間間隔)を言う。
【0043】
具体的には、アイドルトーン分散装置1は、n個(複数)の出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnに個別にジッターを付与(加算)するn個(複数)のジッター加算器5と、基準信号Fcにジッターを付与(加算)するジッター加算器5とを備えている。
出力被測定信号Fx1〜出力被側定信号Fxnにジッターを付与する各ジッター加算器5は、各FDSMの入力側に接続されている。
また、基準信号Fcにジッターを付与するジッター加算器5は、位相調整部10の入力側に接続されている。
【0044】
この場合、n個の出力被測定信号Fx1〜出力被側定信号Fxnに個別にジッターを付与するn個のジッター加算器5を設けることにより、被測定信号Fxにジッターを付与するジッター加算器5を設ける場合に比べて、周波数デルタシグマ変調信号に含まれるノイズ成分を低下させることができる。
また、基準信号Fcにジッターを付与するジッター加算器5を設けることにより、n個の出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnに個別にジッターを付与するn個のジッター加算器5を設ける場合に比べて、回路規模を小さくすることができる。
【0045】
次に、ジッター加算器5(ジッター生成部)について説明する。
図2に示すように、ジッター加算器5は、1ビットのリプルカウンター51(バイナリーカウンター)と、複数の遅延素子52と、セレクター53と、マルチプレクサー54と、微分器55とを有している。
また、リプルカウンター51の出力側(後段)に、直列に接続された複数の遅延素子52が接続されている。
また、セレクター53の出力側および各遅延素子52の出力側にマルチプレクサー54が接続され、マルチプレクサー54の出力側に微分器55が接続されている。
【0046】
また、リプルカウンター51は、本実施形態では、DフリップフロップのQバー出力端子とD入力端子とを接続してなるTフリップフロップで構成されている。また、微分器55は、本実施形態では、排他的論理和回路551と、排他的論理和回路551の一方の入力端子に接続された遅延素子552とで構成され、遅延素子552としてバッファーが用いられている。
【0047】
次に、
図2および
図3を参照しつつ、ジッター加算器5の動作について説明する。なお、以下では、ジッターを付与(加算)する信号を「対象信号」と呼んで説明する。
まず、対象信号は、ジッター加算器5のリプルカウンター51に入力され、リプルカウンター51で2分周され、出力される。
【0048】
次に、リプルカウンター51から出力された信号は、初段(1番目)の遅延素子52に入力され、初段の遅延素子52で遅延される。なお、以下では、各遅延素子52から出力される信号を「遅延信号」と呼ぶ。
また、初段の遅延素子52から出力された遅延信号a1は、マルチプレクサー54および2段目(2番目)の遅延素子52に入力され、2段目の遅延素子52で遅延される。
また、2段目の遅延素子52から出力された遅延信号a2は、マルチプレクサー54および3段目(3番目)の遅延素子52に入力され、3段目の遅延素子52で遅延される。
以下、同様にして、3段目から最終段までの各遅延素子52から出力された遅延信号a3、a4・・・anは、マルチプレクサー54に入力される。このようにして、位相(位相差)の異なる複数の遅延信号a1、a2、a3、a4・・・anがマルチプレクサー54に入力される。各遅延素子52における信号の遅延量は、リプルカウンター51に入力される対象信号に対する最終段の遅延素子52から出力される遅延信号anの遅延量(位相差)が対象信号の1周期を超えないように設定されている。
【0049】
また、対象信号は、セレクター53に入力され、セレクター53は、その対象信号の立ち上がりエッジに同期して作動し、マルチプレクサー54を動作させる。これにより、マルチプレクサー54に入力された遅延信号a1〜anのうちからいずれか1つが選択され、マルチプレクサー54から出力される。この場合、セレクター53は、例えば、遅延信号a1〜anの選択の順番が記憶された記憶部(図示せず)を有しており、その記憶部に記憶された順番の通りに選択する。なお、セレクター53の選択方法は、この方法に限定されるものではない。
【0050】
マルチプレクサー54から出力された信号は、微分器55に入力される。微分器55は、入力された信号の1周期間隔で1つのパルスを出力する。すなわち、微分器55は、入力された信号の立ち上がりエッジに同期した立ち上がりエッジを有するパルスおよび入力された信号の立ち下りに同期した立ち上がりエッジを有するパルスを出力する。このパルスは、対象信号に同期しており(同一周期であり)、セレクター53で選択された任意のジッターを含む信号である。
【0051】
また、このジッター加算器5で付与されるジッターは、FDSM20の出力信号のアイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含んでいる。すなわち、ジッターは、測定帯域(計測帯域)の上限値よりも高い周波数成分を含んでいる。これにより、アイドルトーンに起因する量子化雑音の影響を大幅に抑制することができる。前記測定帯域は、ユーザーが任意に設定することが可能な周波数の測定範囲であり、被測定周波数および基準信号の周波数とは別の測定範囲である。なお、ジッターに含まれる周波数成分は、諸条件に応じて適宜設定される。
また、ジッターに含まれる周波数成分のうちの最大周波数をA、FDSM20の出力信号のアイドルトーンの周波数をB、測定帯域の上限周波数をCとしたとき、前述したように、Aは、Bよりも大きければ特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるものであるが、A/Cは、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましい。
【0052】
また、ジッターは、アイドルトーンが有する周波数成分のうち、強度の最も大きい成分の周波数よりも高い周波数成分を含むことが好ましい。これにより、アイドルトーンに起因する量子化雑音の影響を大幅に抑制することができる。
【0053】
また、ジッターは、低周波数成分が除去されていることが好ましい。これにより、ジッターの周波数帯域のうちの除去した周波数帯域において、周波数デルタシグマ変調信号に含まれるノイズ成分を低下させることができる。
また、除去するジッターの周波数成分は、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるものであるが、測定帯域の上限周波数を100MHzとする場合であれば、1MHz以下の低周波数成分を除去することが好ましく、2MHz以下の低周波数成分を除去することがより好ましく、5MHz以下の低周波数成分を除去することがさらに好ましく、10MHz以下の低周波数成分を除去することがさらに好ましく、20MHz以下の低周波数成分を除去することがさらに好ましく、50MHz以下の低周波数成分を除去することがさらに好ましく、100MHz以下の低周波数成分を除去することがさらに好ましい。
【0054】
また、ジッターの大きさは、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるものであるが、基準信号の周波数、被測定信号の周波数、被測定信号の測定帯域およびFDSM20の個数(N)のうちの少なくとも1つに基づいて決定されることが好ましい。これにより、適確にジッターの周波数帯域を設定することができる。なお、具体例は、後述する実験の説明において説明する。
【0055】
ここで、ジッター加算器5は、対象の信号に対してジッターを付与(加算)することが可能なものであれば、前記の構成に限定されるものではない。次に、ジッター加算器5の他の構成例について説明する。
(構成1)
図4に示すように、構成1では、ジッター加算器5は、エミッターフォロア回路50Aと、加算器51Aとを有している。エミッターフォロア回路50Aは、トランジスター52A(npnトランジスター)と、トランジスター52Aのエミッターに接続された抵抗53Aとを有している。また、加算器51Aは、トランジスター52Aのコレクターに接続されている。
加算器51Aには、電源電圧とノイズとが入力される。また、ジッターを加算する信号は、トランジスター52Aのベースに入力される。
【0056】
このジッター加算器5では、供給される電源電圧にノイズを加えることで、トランジスター52Aのスイッチング特性が変化し、トランジスター52Aのベースに入力される信号に対して時間的な揺らぎ(タイミング揺らぎ)を持つ信号、すなわち、ジッターを含む信号を出力する。
【0057】
(構成2)
構成2では、アイドルトーン分散装置1の回路を構成する原子の熱運動により対象の回路に電気的なノイズを付与し、これにより、時間的な揺らぎ持つ信号を出力させる。
このようなアイドルトーン分散装置1は、前述した各部に対応する機能を実現するハードウェアで構成することが可能である。また、アイドルトーン分散装置1は、前述した各部に対応する機能を実現するプログラムやモジュール等により、ソフトウェア的に構成することも可能である。また、アイドルトーン分散装置1は、前述した各部に対応する機能を実現するハードウェアとソフトウェアとを組み合わせて構成することも可能である。
【0058】
以上説明したように、アイドルトーン分散装置1によれば、各FDSM20における周波数デルタシグマ変調で発生する周期的な量子化雑音であるアイドルトーンを時間的に分散させ、アイドルトーンの影響を抑制することができる。そして、基準信号と、各出力被測定信号とがアイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含むジッターを有することにより、アイドルトーンに起因する量子化雑音の影響を大幅に抑制することができる。
なお、本実施形態では、基準信号(各出力基準信号)および各出力被測定信号は、それぞれ、FDSM20の出力信号のアイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含むジッターを有しているが、これに限定されず、各出力基準信号および各出力被測定信号のうちの少なくとも1つが、FDSM20の出力信号のアイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含むジッターを有していればよい。
【0059】
以上説明したように、アイドルトーン分散装置1は、基準信号Fcと被測定信号Fxとのいずれか一方を用いて他方を周波数デルタシグマ変調してアイドルトーンを分散させた周波数デルタシグマ変調信号Yを出力する装置である。
このアイドルトーン分散装置1は、n(nは2以上の任意の自然数)個のFDSM20(周波数デルタシグマ変調部)と、被測定信号Fxと基準信号Fcとの位相を調整して、n組の出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnおよび出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnを生成して、各組の出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnおよび出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnをn個のFDSM20(周波数デルタシグマ変調部)の各々に供給する位相調整部10と、n個のFDSM20(周波数デルタシグマ変調部)の出力信号を加算して周波数デルタシグマ変調信号Yを出力する加算器30(加算部)とを備えている。
また、位相調整部10は、n個のFDSM20(周波数デルタシグマ変調部)のうちの少なくとも一部のFDSM20(周波数デルタシグマ変調部)の出力信号のアイドルトーンの位相が互いに異なるように、被測定信号Fxと基準信号Fcとの位相を調整して、n組の出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnおよび出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnを生成する。
また、n個のFDSM20(周波数デルタシグマ変調部)の各々は、位相調整部10から供給される出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnと、出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnとのいずれか一方を用いて他方を周波数デルタシグマ変調する。
また、出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnと、出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnとのうちの少なくとも1つは、アイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含むジッターを有する。
【0060】
このようなアイドルトーン分散装置1によれば、FDSM20で発生する周期的な量子化雑音であるアイドルトーンを時間的に分散させ、アイドルトーンの影響を抑制することができる。特に、基準信号Fcと、被測定信号Fxと、出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnと、出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnとのうちの少なくとも1つがアイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含むジッターを有することにより、アイドルトーンに起因する量子化雑音の影響を大幅に抑制することができる。
【0061】
<第2実施形態>
図5は、本発明のアイドルトーン分散装置の第2実施形態を示すブロック図である。
以下、第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0062】
図5に示すように、第2実施形態のアイドルトーン分散装置1は、被測定信号Fxにジッターを付与(加算)するジッター加算器5と、n個(複数)の出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnに個別にジッターを付与(加算)するn個(複数)のジッター加算器5とを備えている。
被測定信号Fxにジッターを付与するジッター加算器5は、位相調整部10の入力側に接続されている。
また、出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnにジッターを付与する各ジッター加算器5は、各FDSMの入力側に接続されている。
【0063】
この場合、被測定信号Fxにジッターを付与するジッター加算器5を設けることにより、n個の出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnに個別にジッターを付与するn個のジッター加算器5を設ける場合に比べて、回路規模を小さくすることができる。
また、n個の出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnに個別にジッターを付与するn個のジッター加算器5を設けることにより、基準信号Fcにジッターを付与するジッター加算器5を設ける場合に比べて、周波数デルタシグマ変調信号に含まれるノイズ成分を低下させることができる。
以上のような第2実施形態によっても、前述した実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0064】
<第3実施形態>
図6は、本発明のアイドルトーン分散装置の第3実施形態を示すブロック図である。
以下、第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0065】
図6に示すように、第3実施形態のアイドルトーン分散装置1は、n個(複数)の出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnに個別にジッターを付与(加算)するn個(複数)のジッター加算器5と、n個(複数)の出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnに個別にジッターを付与(加算)するn個(複数)のジッター加算器5とを備えている。
被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnにジッターを付与する各ジッター加算器5は、位相調整部10の入力側に接続されている。
また、出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnにジッターを付与する各ジッター加算器5は、各FDSMの入力側に接続されている。
【0066】
この場合、n個の出力被測定信号Fx1〜出力被側定信号Fxnに個別にジッターを付与するn個のジッター加算器5を設けることにより、被測定信号Fxにジッターを付与するジッター加算器5を設ける場合に比べて、周波数デルタシグマ変調信号に含まれるノイズ成分を低下させることができる。
同様に、n個の出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnに個別にジッターを付与するn個のジッター加算器5を設けることにより、基準信号Fcにジッターを付与するジッター加算器5を設ける場合に比べて、周波数デルタシグマ変調信号に含まれるノイズ成分を低下させることができる。
以上のような第3実施形態によっても、前述した実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0067】
<第4実施形態>
図7は、本発明のアイドルトーン分散装置の第4実施形態を示すブロック図である。
以下、第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0068】
図7に示すように、第4実施形態のアイドルトーン分散装置1は、被測定信号Fxにジッターを付与(加算)するジッター加算器5と、基準信号Fcにジッターを付与(加算)するジッター加算器5とを備えている。各ジッター加算器5は、各FDSMの入力側に接続されている。
【0069】
この場合、被測定信号Fxにジッターを付与するジッター加算器5を設けることにより、n個の出力被測定信号Fx1〜出力被測定信号Fxnに個別にジッターを付与するn個のジッター加算器5を設ける場合に比べて、回路規模を小さくすることができる。
同様に、基準信号Fcにジッターを付与するジッター加算器5を設けることにより、n個の出力基準信号Fc1〜出力基準信号Fcnに個別にジッターを付与するn個のジッター加算器5を設ける場合に比べて、回路規模を小さくすることができる。
以上のような第4実施形態によっても、前述した実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0070】
<第5実施形態>
図8は、本発明のアイドルトーン分散装置の第5実施形態を示すブロック図である。
以下、第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0071】
図8に示すように、第5実施形態のアイドルトーン分散装置1は、位相調整部10が省略されている以外は、第1実施形態と同様である。これにより、各FDSM20には、同相の被測定信号および同相の基準信号が入力される。
【0072】
このアイドルトーン分散装置1は、被測定信号の経路については、各FDSM20に入力される被測定信号に個別にジッターを付与(加算)する複数個(本実施形態では8個)のジッター加算器5を備え、基準信号の経路については、基準信号Fcにジッターを付与(加算)する1個の(共通の)ジッター加算器5とを備えている。各ジッター加算器5は、各FDSMの入力側に接続されている。
以上のような第5実施形態によっても、前述した実施形態と同様の効果を発揮することができる。
また、第5実施形態は、第2〜第4実施形態にも適用することができる。
【0073】
以上説明したように、アイドルトーン分散装置1は、基準信号Fcと被測定信号Fxとのいずれか一方を用いて他方を周波数デルタシグマ変調してアイドルトーンを分散させた周波数デルタシグマ変調信号Yを出力する装置である。
このアイドルトーン分散装置1は、n(nは2以上の任意の自然数)個のFDSM20(周波数デルタシグマ変調部)と、n個のFDSM20(周波数デルタシグマ変調部)の出力信号を加算して周波数デルタシグマ変調信号Yを出力する加算器30(加算部)とを備えている。
また、n個のFDSM20(周波数デルタシグマ変調部)の各々は、基準信号Fcと被測定信号Fxとのいずれか一方を用いて他方を周波数デルタシグマ変調する。
また、基準信号Fcと被測定信号Fxとの少なくとも一方は、FDSM20(周波数デルタシグマ変調部)の出力信号のアイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含むジッターを有する。
【0074】
このようなアイドルトーン分散装置1によれば、FDSM20で発生する周期的な量子化雑音であるアイドルトーンを時間的に分散させ、アイドルトーンの影響を抑制することができる。特に、基準信Fc号と被測定信号Fxとの少なくとも一方がアイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含むジッターを有することにより、アイドルトーンに起因する量子化雑音の影響を大幅に抑制することができる。
【0075】
次に、アイドルトーン分散装置1の効果等を確認するために行った実験について説明する。
【0076】
図9は、アイドルトーン分散装置の比較例を示すブロック図である。
図11〜
図79は、それぞれ、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルを示すグラフである。なお、以下の説明では、位相調整部10から出力される出力基準信号および出力被測定信号をそれぞれ基準信号および被測定信号と言う。
【0077】
まず、各実験に共通な事項としては、基準信号として、周波数が260MHzの矩形波(パルス)を用いた。
また、被測定信号として、周波数を変動させた矩形波を用いた。この場合、搬送周波数を261.24MHzとし、1秒間に2M回(変調周波数:2MHz)、±500kHzの範囲で搬送周波数を変更し、これを矩形波に変換したものを被測定信号とした。すなわち、各実験では、2MHzの周波数成分を検出対象(測定対象)の周波数とした。
【0078】
<装置>
アイドルトーン分散装置として、下記の装置a、装置b、装置c、装置dおよび装置eを用意した。
(装置a)
図1に示す第1実施形態のアイドルトーン分散装置1を用いた。また、FDSM20の並列数は、8個とした。また、8個のFDSM20にすべて位相の異なる被測定信号を入力した。また、8個のFDSM20に入力する被測定信号は、1/260M×1/8[秒]ずつ遅延させた。この装置aを用いる場合、グラフの説明には、「等分8並列」と記載する。
【0079】
(装置b)
図1に示す第1実施形態のアイドルトーン分散装置1を用いた。また、FDSM20の並列数は、8個とした。また、2個のFDSM20に同相の被測定信号を入力し、その2個のFDSM20を1組とし、4組のFDSM20にすべて位相の異なる被測定信号を入力した。また、4組のFDSM20に入力する被測定信号は、1/260M×1/4[秒]ずつ遅延させた。この装置bを用いる場合、グラフの説明には、「重複2×4並列」と記載する。
【0080】
(装置c)
図8に示す位相調整部10を有していない第5実施形態のアイドルトーン分散装置1を用いた。また、FDSM20の並列数は、8個とした。すなわち、8個のFDSM20にすべて同一の位相の被測定信号を入力した。この装置cを用いる場合、グラフの説明には、「同相8並列」と記載する。
【0081】
(装置d)
図9に示すアイドルトーン分散装置200(比較例)を用いた。このアイドルトーン分散装置200は、1個のFDSM20を有している。また、アイドルトーン分散装置200は、被測定にジッターを付与するジッター加算器5と、基準信号Fcにジッターを付与するジッター加算器5とを備えている。この装置dを用いる場合、グラフの説明には、「シングル」と記載する。
【0082】
(装置e)
図7に示す第4実施形態のアイドルトーン分散装置1を用いた。また、FDSM20の並列数は、8個とした。また、8個のFDSM20にすべて位相の異なる被測定信号を入力した。また、8個のFDSM20に入力する被測定信号は、1/260M×1/8[秒]ずつ遅延させた。この装置eを用いる場合、グラフの説明には、「等分8並列」および「共通」と記載する。
【0083】
<実験1>
装置aを用い、基準信号には、共通のジッターを付与し、被測定信号には、FDSM20毎に独立してジッターを付与した。
また、基準信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」とし、被測定信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」とした(実施例)。
また、基準信号に付与するジッターおよび被測定信号に付与するジッターは、それぞれ、最大の周波数成分が130MHzで、130MHz以下の周波数成分を含んでいる。
【0084】
この場合、測定帯域(計測帯域)の上限値は、130MHz未満に設定する。これにより、装置aから出力される周波数デルタシグマ変調信号のアイドルトーンのうち、対象となるアイドルトーンの周波数は、130MHz未満となる。すなわち、基準信号に付与するジッターおよび被測定信号に付与するジッターは、それぞれ、アイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含むこととなる。
アイドルトーン分散装置から出力される周波数デルタシグマ変調信号について、含まれる周波数成分の強度を求め、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図12に示す。
【0085】
また、他の実施例として、基準信号に付与するジッターの大きさ、被測定信号に付与するジッターの大きさを「20p秒(基準信号)、20p秒(被測定信号)」、「50p秒、50p秒」、「100p秒、100p秒」、「200p秒、200p秒」、「500p秒、500p秒」、「1000p秒、1000p秒」、「2000p秒、2000p秒」とし、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図13〜
図19に示す。
【0086】
また、比較例として、装置aにおいて、基準信号および被測定信号にそれぞれジッターが含まれていない場合(ジッターの大きさが0p秒)について、シミュレーションを行って、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図11に示す。
各グラフの横軸は、高速フーリエ変換(FFT)を行って求めた周波数成分(周波数)であり、縦軸は、強度(FFTスペクトル)である(
図20〜
図78も同様)。
【0087】
また、グラフにおいて、2MHzの周波数成分が、検出対象の周波数であり、その2MHzのピークは、他の部分、すなわち、2MHz以外のピークおよびベース部分(ベースノイズ)に対して高いほど好ましい。この2MHzのピークと他の部分との差、例えば、2MHzのピークと、測定帯域内の2MHz以外のピークのうちの最大のピークとの差が、SN比に対応している。一方、2MHz以外のピークは、それぞれ、アイドルトーン(ノイズ)となり得るものであるが、測定帯域内の2MHz以外のピークのみがアイドルトーンであり、測定帯域外のピークは、対象としていない。
本実験の結果から、基準信号および被測定信号がジッターを含む場合は、基準信号および被測定信号がジッターを含まない場合に比べて、アイドルトーンの影響が抑制されることが判る。また、ジッターの大きさに応じて、アイドルトーンの影響を抑制する効果(アイドルトーン抑制効果)が異なることも判る。
【0088】
例えば、基準信号および被測定信号が100p秒のジッターを含む
図15に示すグラフと、基準信号および被測定信号がジッターを含まない
図11に示すグラフとを比べると、100p秒のジッターを含む場合は、アイドルトーンを示すピークが低くなり、特に周波数が3MHz以下においてアイドルトーンの影響が抑制されることが判る。
【0089】
また、各実施例のうち、基準信号および被測定信号が10p秒のジッターを含む場合が最も効果が低いものであるが、その10p秒のジッターを含む
図12に示すグラフと、基準信号および被測定信号がジッターを含まない
図11に示すグラフとを比べても、10p秒のジッターを含む場合は、特に周波数が1MHz以下においてアイドルトーンの影響が抑制されることが判る。
【0090】
また、本実験では、例えば、測定帯域の上限値を3MHz程度に設定する場合は、
図15および
図16に示すように、ジッターの大きさは、100p秒以上、200p秒以下程度が好ましいことが判る。その理由は、ジッターの大きさが100p秒および200p秒の場合は、周波数が3MHz以下において、アイドルトーンを示すピークが低く、かつ、ベース部分の強度も抑えられているためである。また、測定帯域の上限値を10MHzに設定する場合は、
図17に示すように、ジッターの大きさは、500p秒程度が好ましいことが判る。その理由は、ジッターの大きさが500p秒の場合は、周波数が10MHz以下において、アイドルトーンを示すピークが低く、かつ、ベース部分の強度も抑えられているためである。
【0091】
<実験2>
実験1の実施例において、被測定信号に付与するジッターの大きさを「1p秒」に固定し、基準信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」、「20p秒」、「50p秒」、「100p秒」、「200p秒」、「500p秒」、「1000p秒」、「2000p秒」(実施例)とし、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図20〜
図27に示す。
【0092】
この結果から、基準信号のみのジッターの大きさを調整することでもアイドルトーンは抑制されることが判る。
なお、被測定信号がジッターを含まず(ジッターの大きさが0p秒)、基準信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」、「20p秒」、「50p秒」、「100p秒」、「200p秒」、「500p秒」、「1000p秒」、「2000p秒」(実施例)とし、シミュレーションを行って、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成したところ、被測定信号のジッターの大きさが1p秒の場合と、ほぼ同様の結果が得られた。これにより、基準信号のみがジッターを含む場合でもアイドルトーンは抑制されることが判る。
【0093】
<実験3>
実験1の実施例において、基準信号に付与するジッターの大きさを「1p秒」に固定し、被測定信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」、「20p秒」、「50p秒」、「100p秒」、「200p秒」、「500p秒」、「1000p秒」、「2000p秒」(実施例)とし、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図28〜
図35に示す。
【0094】
この結果から、被測定信号のみのジッターの大きさを調整することでもアイドルトーンは抑制されることが判る。
なお、基準信号がジッターを含まず(ジッターの大きさが0p秒)、被測定信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」、「20p秒」、「50p秒」、「100p秒」、「200p秒」、「500p秒」、「1000p秒」、「2000p秒」(実施例)とし、シミュレーションを行って、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成したところ、基準信号のジッターの大きさが1p秒の場合と、ほぼ同様の結果が得られた。これにより、被測定信号のみがジッターを含む場合でもアイドルトーンは抑制されることが判る。
また、実験3の
図28〜
図35に示すグラフと、実験1の
図12〜
図19に示すグラフとの対応するグラフ同士を比べると、実験1の実施例の方がベース部分の強度は高いことが判る。同様に、実験2についても実験1の実施例の方がベース部分の強度は高いことが判る。
これは、ジッターの大きさが同じ場合、基準信号と被測定信号とのいずれか一方のみにジッターを付与する場合に比べ、両方にジッターを付与する方が系に投入されるノイズのエネルギーが大きくなることに対応している。
【0095】
<実験4>
装置bを用い、基準信号には、共通のジッターを付与し、被測定信号には、FDSM20毎に独立してジッターを付与した。
また、基準信号に付与するジッターの大きさを「1p秒」とし、被測定信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」とした(実施例)。
【0096】
また、実験1の実施例と同様に、基準信号に付与するジッターおよび被測定信号に付与するジッターは、それぞれ、最大の周波数成分が130MHzで、130MHz以下の周波数成分を含んでいる、すなわち、アイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含んでいる。
アイドルトーン分散装置から出力される周波数デルタシグマ変調信号について、含まれる周波数成分の強度を求め、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図37に示す。
【0097】
また、他の実施例として、基準信号に付与するジッターの大きさを「1p秒」に固定し、被測定信号に付与するジッターの大きさを「20p秒」、「50p秒」、「100p秒」、「200p秒」、「500p秒」、「1000p秒」、「2000p秒」とし、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図38〜
図44に示す。
また、比較例として、装置bにおいて、基準信号および被測定信号にそれぞれジッターが含まれていない場合(ジッターの大きさが0p秒)について、シミュレーションを行って、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図36に示す。
【0098】
本実験の結果から、同相の被測定信号が入力されるFDSM20の組がある場合でも、基準信号および被測定信号がジッターを含む場合は、基準信号および被測定信号がジッターを含まない場合に比べて、アイドルトーンの影響が抑制されることが判る。
なお、基準信号がジッターを含まず(ジッターの大きさが0p秒)、被測定信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」、「20p秒」、「50p秒」、「100p秒」、「200p秒」、「500p秒」、「1000p秒」、「2000p秒」(実施例)とし、シミュレーションを行って、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成したところ、基準信号のジッターの大きさが1p秒の場合と、ほぼ同様の結果が得られた。これにより、被測定信号のみがジッターを含む場合でもアイドルトーンは抑制されることが判る。
また、測定帯域の上限値を10MHzに設定する場合、実験1の実施例では、前述したように、ジッターの大きさの最適値は、500p秒程度であるが、実験4の実施例では、
図43に示すように、ジッターの大きさの最適値は、1000p秒程度であり、実験1の実施例の2倍程度となっている。
【0099】
<実験5>
装置cを用い、基準信号には、共通のジッターを付与し、被測定信号には、FDSM20毎に独立してジッターを付与した。
また、基準信号に付与するジッターの大きさを「1p秒」とし、被測定信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」とした(実施例)。
【0100】
また、実験1の実施例と同様に、基準信号に付与するジッターおよび被測定信号に付与するジッターは、それぞれ、最大の周波数成分が130MHzで、130MHz以下の周波数成分を含んでいる、すなわち、アイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含んでいる。
アイドルトーン分散装置から出力される周波数デルタシグマ変調信号について、含まれる周波数成分の強度を求め、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図46に示す。
【0101】
また、他の実施例として、基準信号に付与するジッターの大きさを「1p秒」に固定し、被測定信号に付与するジッターの大きさを「20p秒」、「50p秒」、「100p秒」、「200p秒」、「500p秒」、「1000p秒」、「2000p秒」、「3600p秒」とし、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図47〜
図54に示す。
また、比較例として、装置cにおいて、基準信号および被測定信号にそれぞれジッターが含まれていない場合(ジッターの大きさが0p秒)について、シミュレーションを行って、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図45に示す。
【0102】
本実験の結果から、すべてのFDSM20に同一の位相の被測定信号を入力する場合でも、基準信号および被測定信号がジッターを含む場合は、基準信号および被測定信号がジッターを含まない場合に比べて、アイドルトーンの影響が抑制されることが判る。
なお、基準信号がジッターを含まず(ジッターの大きさが0p秒)、被測定信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」、「20p秒」、「50p秒」、「100p秒」、「200p秒」、「500p秒」、「1000p秒」、「2000p秒」、「3600p秒」(実施例)とし、シミュレーションを行って、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成したところ、基準信号のジッターの大きさが1p秒の場合と、ほぼ同様の結果が得られた。これにより、被測定信号のみがジッターを含む場合でもアイドルトーンは抑制されることが判る。
また、本実験では、
図53に示すように、ジッターの大きさを「2000p秒」にした場合でも、2MHz未満の周波数のアイドルトーンを示すピーク(強度)が、検出対象の周波数である2MHzのピーク(強度)を上回った。
【0103】
そこで、
図54に示すように、ジッターの大きさを「3600p秒」まで増やしたところ、2MHzのピークが、2MHz未満の周波数のアイドルトーンを示すピークを上回った。
なお、被検出信号の周波数は、261.24MHz±0.5MHzであることから、ジッターの大きさの理論限界は、その周波数の逆数である約3820秒である。
【0104】
<実験6>
装置dを用い、基準信号および被測定信号に、独立してジッターを付与した。
また、基準信号に付与するジッターの大きさを「1p秒」とし、被測定信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」とした(比較例)。
また、実験1の実施例と同様に、基準信号に付与するジッターおよび被測定信号に付与するジッターは、それぞれ、最大の周波数成分が130MHzで、130MHz以下の周波数成分を含んでいる、すなわち、アイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含んでいる。
アイドルトーン分散装置から出力される周波数デルタシグマ変調信号について、含まれる周波数成分の強度を求め、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図56に示す。
【0105】
また、他の比較例として、装置dにおいて、基準信号および被測定信号にそれぞれジッターが含まれていない場合(ジッターの大きさが0p秒)について、シミュレーションを行って、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図55に示す。
また、他の比較例として、基準信号に付与するジッターの大きさを「1p秒」に固定し、被測定信号に付与するジッターの大きさを「20p秒」、「50p秒」、「100p秒」、「200p秒」、「500p秒」、「1000p秒」、「2000p秒」、「3600p秒」とし、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図57〜
図64に示す。
【0106】
本実験では、
図63に示すように、ジッターの大きさを「2000p秒」にした場合でも、2MHz未満の周波数のアイドルトーンを示すピーク(強度)が、検出対象の周波数である2MHzのピーク(強度)を上回った。
そこで、
図64に示すように、ジッターの大きさを「3600p秒」まで増やしたところ、2MHzのピークが、2MHz未満の周波数のアイドルトーンを示すピークを上回った。
また、実験6の
図56〜
図64に示すグラフと、実験5の
図46〜
図54に示すグラフとの対応するグラフ同士を比べると、実験6の比較例と実験5の実施例とでは、ジッターの大きさに対応するアイドルトーン抑制効果についてはほぼ同じであるが、実験5の実施例では、ベース部分の強度が低下する効果が得られ、ジッターの大きさが増大するほどその効果は顕著となる。
【0107】
<実験7>
装置eを用い、基準信号に共通のジッターを付与し、また、被測定信号に共通のジッターを付与した。
また、基準信号に付与するジッターの大きさを「1p秒」とし、被測定信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」とした(実施例)。
また、実験1の実施例と同様に、基準信号に付与するジッターおよび被測定信号に付与するジッターは、それぞれ、最大の周波数成分が130MHzで、130MHz以下の周波数成分を含んでいる、すなわち、アイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含んでいる。
【0108】
アイドルトーン分散装置から出力される周波数デルタシグマ変調信号について、含まれる周波数成分の強度を求め、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図65に示す。
また、他の実施例として、基準信号に付与するジッターの大きさを「1p秒」に固定し、被測定信号に付与するジッターの大きさを「20p秒」、「50p秒」、「100p秒」、「200p秒」、「500p秒」、「1000p秒」、「2000p秒」とし、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図66〜
図72に示す。
【0109】
本実験の結果から、基準信号に共通のジッターを付与し、被測定信号に共通のジッターを付与する場合でも、基準信号および被測定信号がジッターを含まない場合に比べて、アイドルトーンの影響が抑制されることが判る。
なお、基準信号がジッターを含まず(ジッターの大きさが0p秒)、被測定信号に付与するジッターの大きさを「10p秒」、「20p秒」、「50p秒」、「100p秒」、「200p秒」、「500p秒」、「1000p秒」、「2000p秒」(実施例)とし、シミュレーションを行って、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成したところ、基準信号のジッターの大きさが1p秒の場合と、ほぼ同様の結果が得られた。これにより、被測定信号のみがジッターを含む場合でもアイドルトーンは抑制されることが判る。
また、実験7の
図65〜
図72に示すグラフと、実験3の
図28〜
図35に示すグラフとの対応するグラフ同士を比べると、実験7の実施例と実験3の実施例とでは、実験7の実施例の方がベース部分の強度は高いことが判る。これは、被検出信号に付与されるジッターが独立している場合には、合算したジッターの分布を表す分散はそれぞれの分散の和に近づくのに対し、被検出信号に付与されるジッターが共通である場合には、合算したジッターの分布を表す分散はそれぞれの分散の和よりも大きくなることに対応している。
【0110】
<実験8>
装置aを用い、基準信号には、共通のジッターを付与し、被測定信号には、FDSM20毎に独立してジッターを付与した。
また、基準信号に付与するジッターの大きさを「1p秒」とし、被測定信号に付与するジッターの大きさを「500p秒」とした(実施例)。
また、実験1の実施例と同様に、基準信号に付与するジッターおよび被測定信号に付与するジッターは、それぞれ、最大の周波数成分が130MHzで、130MHz以下の周波数成分を含んでいる、すなわち、アイドルトーンの周波数よりも高い周波数成分を含んでいる。また、ジッターに含まれる1MHz以下の周波数成分を除去するために、セレクター53において、1MHz以下の変動成分を除去した選択パターンを用いた。
【0111】
アイドルトーン分散装置から出力される周波数デルタシグマ変調信号について、含まれる周波数成分の強度を求め、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図73に示す。
【0112】
また、他の実施例として、付与するジッターを2MHz以下の低周波数成分を除去したジッター、5MHz以下の低周波数成分を除去したジッター、10MHz以下の低周波数成分を除去したジッター、20MHz以下の低周波数成分を除去したジッター、50MHz以下の低周波数成分を除去したジッター、100MHz以下の低周波数成分を除去したジッターとし、アイドルトーン分散装置の出力スペクトルのグラフを作成した。この結果を
図74〜
図79に示す。なお、グラフの説明には、それぞれ、「1MHz〜」、「2MHz〜」、「5MHz〜」、「10MHz〜」、「20MHz〜」、「50MHz〜」、「100MHz〜」と記載する。
【0113】
実験8の
図73〜
図79に示すグラフと、実験3の
図33に示すグラフとを比べると、ジッターの高周波数成分がアイドルトーンの影響を抑制する機能を有することが判る。
また、ジッターに含まれる低周波数成分を除去することで、除去した周波数帯域において、ベース部分の強度が低下することが判る。
【0114】
<周波数比計測装置の実施形態>
図80は、本発明の周波数比計測装置の実施形態を示すブロック図である。
以下、周波数比計測装置の実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0115】
図80に示すように、周波数比計測装置100は、アイドルトーン分散装置1を備え、被測定信号Fxと基準信号Fcとの周波数比を測定(計測)する。このような周波数比計測装置100によれば、アイドルトーンに起因する量子化雑音の影響を抑制することができ、これにより、測定精度を向上させることができる。以下、具体的に説明する。なお、本実施形態では、周波数比計測装置100として、被測定信号Fxと基準信号Fcとの周波数比を測定した後、被測定信号Fxの周波数を示す周波数データDfを生成する装置を説明する。
周波数比計測装置100は、アイドルトーン分散装置1と、アイドルトーン分散装置1から出力された周波数デルタシグマ変調信号Yに基づいて被測定信号Fxの周波数を示す周波数データDfを生成する周波数データ生成部40とを備えている。また、周波数データ生成部40は、アイドルトーン分散装置1の出力側(後段)に接続されている。また、周波数データ生成部40は、ローパスフィルター41と、ローパスフィルター41の出力側に接続されたスケーリング部42とを備えている。
【0116】
まず、周波数デルタシグマ変調信号Yが、データストリーム構成のアイドルトーン分散装置1からの出力である場合、周波数デルタシグマ変調信号Yは、被測定信号Fxの周波数fxと基準信号Fcの周波数fcとの比(fx/fc)を、量子化誤差を含んだ形で時間経過と共にデジタル信号列として出力されるものである。
また、周波数デルタシグマ変調信号Yが、ビットストリーム構成のアイドルトーン分散装置1からの出力であって、2fx<fcである場合、周波数デルタシグマ変調信号Yは、被測定信号Fxの2倍の周波数2fxと基準信号Fcの周波数fcとの比(2fx/fc)を、量子化誤差を含んだ形で時間経過と共にデジタル信号列として出力されるものである。
【0117】
また、周波数計測(周波数比計測)における時間分解能および周波数分解能は、ローパスフィルター41の特性により定まる。ローパスフィルター41としては、特に限定されず、例えば、直近の複数のサンプルの単純平均を行う移動平均フィルターを複数個配した複数段の移動平均フィルターや、FIRフィルタやIIRフィルタ等で実現される通常のローパスフィルター等を用いることができる。
また、スケーリング部42は、ローパスフィルター41の出力データ41aに補正係数を乗算して周波数データDfを生成する。例えば、周波数データ生成部40の入力側(前段)にビットストリーム構成のアイドルトーン分散装置1が設けられており、例えば、被測定信号Fxの周波数fxが0.1MHz、基準信号Fcの周波数fcが2MHzとすると、2fx/fc=0.1となる。また、周波数デルタシグマ変調信号Yは、被測定信号Fxの周波数fxに比例するので、補正係数は1Mとすればよい。
なお、周波数比計測装置100は、例えば、スケーリング部42が省略され、被測定信号Fxと基準信号Fcとの周波数比を示す周波数比データを生成するようになっていてもよく、また、ローパスフィルター41が省略されていてもよい。
【0118】
以上、本発明のアイドルトーン分散装置および周波数比計測装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0119】
また、ジッター加算器(ジッター生成部)を設置する箇所は、前記実施形態には限定されず、例えば、基準信号(出力基準信号)にジッターを付与する場合は、出力基準信号毎に独立に設けられたジッター加算器と、複数の出力基準信号に共通のジッター加算器とが混在していてもよい。また、被測定信号((出力被測定信号))にジッターを付与する場合は、出力被測定信号毎に独立に設けられたジッター加算器と、複数の出力被測定信号に共通のジッター加算器とが混在していてもよい。