(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、位相差フィルムの1実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、位相差フィルムの1実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、位相差フィルムの1実施形態を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、転写用積層体の1実施形態を示す模式断面図である。
【
図5】
図5は、転写用積層体の1実施形態を示す模式断面図である。
【
図6】
図6は、転写用積層体の1実施形態を示す模式断面図である。
【
図7】
図7は、光学部材の1実施形態を示す模式断面図である。
【
図8】
図8は、表示装置の1実施形態を示す模式断面図である。
【0022】
以下、本開示の実施の形態や実施例などを、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態や実施例等の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定が無い限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0023】
本開示において配向規制力とは、位相差層中の液晶化合物を特定方向に配列させる相互作用を意味する。
本開示において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表す。
また、本明細書において「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではなく、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
【0024】
A.側鎖型液晶ポリマー
本開示の側鎖型液晶ポリマーは、2種以上の下記一般式(I)で表される構成単位と、液晶性部分を含む側鎖を有する液晶性構成単位とを有し、
前記2種以上の下記一般式(I)で表される構成単位は、
下記一般式(I)で表される構成単位(a)と、
下記一般式(I)で表され、前記構成単位(a)とはL
1又はL
1’で表される連結基の炭素原子数が異なる、構成単位(b)とを含む、側鎖型液晶ポリマーである。
すなわち、本開示の側鎖型液晶ポリマーは、下記一般式(I)で表される構成単位であって、少なくともL
1及びL
1’で表される連結基の炭素原子数が異なる2種以上の構成単位と、液晶性構成単位とを有する共重合体を含む、側鎖型液晶ポリマーである。
なお、本開示の側鎖型液晶ポリマーは、下記一般式(I)で表される構成単位として、L
1又はL
1’で表される連結基の炭素原子数が異なる構成単位を3種以上有していても良い。すなわち、本開示の側鎖型液晶ポリマーは、前記構成単位(a)及び前記構成単位(b)の他に、前記構成単位(a)及び前記構成単位(b)とはL
1又はL
1’で表される連結基の炭素原子数が異なる下記一般式(I)で表される構成単位1種以上を、更に有するものであっても良い。
【0025】
【化3】
(一般式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を、R
2は、−L
1−R
3、又は−L
1’−R
4で表される基を、L
1は−(CH
2)
n−で表される連結基を、L
1’は−(C
2H
4O)
n’−で表される連結基を、R
3は、置換基を有してもよいメチル基、アルキル基を有してもよいアリール基、又は−OR
5を、R
4及びR
5はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、n及びn’はそれぞれ独立に1以上18以下の整数である。)
【0026】
上記一般式(I)において、R
2は、−L
1−R
3、又は−L
1’−R
4で表される基を表し、L
1は−(CH
2)
n−で表される連結基を、L
1’は−(C
2H
4O)
n’−で表される連結基を表し、側鎖型液晶ポリマー分子中に、L
1又はL
1’で表される連結基の炭素原子数が異なる2種以上の構成単位を含んでいる。
本開示の実施形態において側鎖型液晶ポリマーは、L
1又はL
1’で表される連結基の炭素原子数が異なる2種以上の構成単位を有していることにより、後述する重合性液晶化合物との相溶性に優れる。また、上記一般式(I)におけるR
2は、液晶性構成単位が側鎖に有する液晶性部分に沿って配置されやすいため、基材乃至配向膜に対して垂直方向に伸びるように配置されて、短い側鎖の上方に長い側鎖に囲まれた空隙が形成される。当該空隙に、重合性液晶化合物が入り込みやすいため、当該重合性液晶化合物が垂直配向しやすくなり、位相差値の面内均一性が高い位相差層を得ることが可能となると推定される。また、本開示の側鎖型液晶ポリマーは、一般式(I)で表される構成単位が有するL
1又はL
1’で表される連結基が柔軟な構造であることと、前記空隙を有することの相乗効果により、曲げに強く割れにくい位相差層を形成可能であると推測される。また、本開示の側鎖型液晶ポリマーは、前記空隙に重合性液晶化合物が入り込んで垂直配向しやすく、一旦垂直配向した重合性液晶化合物を移動しにくくすることができると推定され、それにより、重合性液晶化合物が低温であっても垂直配向しやすくなるため、プロセスマージンが広がるという効果も有する。
【0027】
一般式(I)で表される構成単位のR
2の組合せとしては、例えば、
(A)−(CH
2)
n1−R
3、及び、−(CH
2)
n2−R
3を含み、n1とn2が異なる数である組合せ。
(B)−(C
2H
4O)
n1’−R
4、及び、−(C
2H
4O)
n2’−R
4を含み、n1’とn2’が異なる数である組合せ。
(C)−(CH
2)
n1−R
3、及び、−(C
2H
4O)
n2’−R
4を含み、n1とn2’が異なる数である組合せ。
が挙げられ、上記(A)、(B)、(C)は、更に、別の一般式(I)で表される構成単位を含んでいてもよい。
また、複数あるR
3及び複数あるR
4は、n又はn’の数に依存せず独立であり、当該複数あるR
3及び複数あるR
4は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
R
3におけるメチル基が有してもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
R
3におけるアリール基としては、特に限定されないが、曲げ耐性、及び位相差値の面内均一性の点から、炭素原子数6以上20以下のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、中でもフェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
R
3において、アリール基が有してもよいアルキル基としては、特に限定されないが、曲げ耐性、及び位相差値の面内均一性の点から、炭素原子数1以上12以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数5以上10以下のアルキル基がより好ましい。また、当該アルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐又は環構造を含むアルキル基であってもよい。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。当該アルキル基が有する水素原子は、ハロゲン原子に置換されていてもよい。
【0029】
R
4及びR
5におけるアルキル基は、特に限定されないが、曲げ耐性、及び位相差値の面内均一性の点から、炭素原子数1以上12以下のアルキル基が好ましく、当該アルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐又は環構造を含むアルキル基であってもよい。具体的には、上記R
3においてアリール基が有してもよいアルキル基として例示したものと同様のものが挙げられる。R
4及びR
5において、アルキル基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子が挙げられる。また、R
4及びR
5におけるアリール基はR
3と同様のものが挙げられる。R
4及びR
5において、アリール基が有してもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。当該アルキル基、ハロゲン原子としては、例えば、上記R
3において置換基として有していても良いアルキル基、ハロゲン原子として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0030】
一般式(I)で表される構成単位の具体例としては、以下のもの等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0031】
【化4】
【0032】
一般式(I)で表される構成単位において、n及びn’はそれぞれ独立に1以上18以下の整数であるが、n及びn’はそれぞれ独立に2以上の整数であることが好ましい。また、n’は10以下であることが好ましい。
また、一般式(I)で表される構成単位において、n及びn’の値の組合せは特に限定されないが、曲げ耐性、及び位相差値の面内均一性の点から、L
1又はL
1’で表される連結基を構成する炭素原子数及び酸素原子数の合計の差が3以上となることが好ましく、5以上となることがより好ましい。更に好ましくは、L
1又はL
1’で表される連結基を構成する炭素原子数の差が3以上となることが好ましく、5以上となることがより好ましい。
具体的には例えば、長さの異なる−(CH
2)
n−で表される連結基を有する場合、2種以上のnのうち、最大のものをn
M、最小のものをn
mとしたときに、n
Mとn
mとの差(n
M − n
m)が3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
また、長さの異なる−(C
2H
4O)
n’−で表される連結基を有する場合、2種以上のn’のうち、最大のものをn’
M、最小のものをn’
mとしたときに、n’
Mとn’
mとの差(n’
M − n’
m)が1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがより更に好ましい。
上記の関係を満たすことにより、重合性液晶化合物が入り込むための十分な空隙が形成され、重合性液晶化合物の垂直配向性が向上して位相差値の面内均一性がし、また、位相差層が柔軟性をもち曲げ耐性も向上する。
【0033】
また、一般式(I)で表される構成単位において、L
1又はL
1’で表される連結基の炭素原子数が異なる2種以上の構成単位の比率は特に限定されないが、炭素原子数の最も多い前記連結基を有する構成単位と、炭素原子数の最も少ない前記連結基を有する構成単位との比がモル比で1:9〜9:1であることが好ましく、2:8〜8:2であることがより好ましい。
【0034】
本開示の実施形態において、液晶性構成単位は、液晶性部分、すなわち液晶性を示す部分を含む側鎖を有する。液晶性構成単位は、側鎖に液晶性を示すメソゲンを含む構成単位であることが好ましい。液晶性構成単位は、メソゲン基にスペーサーを介して重合性基が結合した液晶性を示す化合物から誘導される構成単位であることが好ましい。本開示においてメソゲンとは、液晶性を示すような剛直性の高い部位をいい、例えば、2個以上の環構造、好ましくは3個以上の環構造を有し、環構造同士が直接結合により連結しているか、又は、当該環構造が1原子乃至3原子を介して連結している部分構造が挙げられる。側鎖にこのような液晶性を示す部位を有することにより、当該液晶性構成単位が垂直配向しやすくなる。
前記環構造としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香環であってもよく、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状の脂肪族炭化水素であってもよい。
また、当該環構造が1原子乃至3原子を介して連結している場合、当該連結部の構造としては、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−O−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−NR−、−O−NR−、若しくは−NR−O−(Rは水素原子又は炭化水素基)等が挙げられる。
中でも、メソゲンとしては、前記環構造の連結が棒状になるように、ベンゼンであればパラ位、ナフタレンであれば2,6位で接続された、棒状メソゲンであることが好ましい。
【0035】
また、液晶性構成単位が側鎖に液晶性を示すメソゲンを含む構成単位である場合、垂直配向性の点から、当該構成単位の側鎖の末端が極性基であるか、アルキル基を有することが好ましい。このような極性基の具体例としては、−F、−Cl、−CN、−OCF
3、−OCF
2H、−NCO、−NCS、−NO
2、−NHC(=O)−R’、−C(=O)−OR’、−OH、−SH、−CHO、−SO
3H、−NR’
2、−R
”、又は−OR
”(R’は水素原子又は炭化水素基、R
”はアルキル基)等が挙げられる。
本開示の実施形態において液晶性構成単位は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
液晶性構成単位は、前記一般式(I)と重合可能なエチレン性二重結合含有基を有する単量体から誘導される構成単位であることが好ましい。このようなエチレン性二重結合含有基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、又はビニルエステル等の誘導体が挙げられる。液晶性構成単位は、中でも、(メタ)アクリル酸エステル誘導体から誘導される構成単位であることが、垂直配向性の点から、好ましい。
【0037】
本開示の実施形態において液晶性構成単位は、垂直配向性の点から、中でも、下記一般式(II)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0038】
【化5】
(一般式(II)中、R
11は、水素原子又はメチル基を、R
12は、−(CH
2)
m−、又は−(C
2H
4O)
m’−で表される基を表す。L
2は、直接結合、又は、−O−、−O−C(=O)−、若しくは−C(=O)−O−で表される連結基を、Ar
2は、置換基を有していてもよい炭素原子数6以上10以下のアリーレン基を表し、複数あるL
2及びAr
2はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
13は、−F、−Cl、−CN、−OCF
3、−OCF
2H、−NCO、−NCS、−NO
2、−NHC(=O)−R
14、−C(=O)−OR
14、−OH、−SH、−CHO、−SO
3H、−NR
142、−R
15、又は−OR
15を、R
14は、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R
15は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。aは2以上4以下の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2以上10以下の整数である。)
【0039】
R
12のm及びm’は、それぞれ独立に2以上10以下の整数である。垂直配向性の点から、中でも、m及びm’が2以上8以下であることが好ましく、更に2以上6以下であることが好ましい。
【0040】
Ar
2における、置換基を有していてもよい炭素原子数6以上10以下のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基がより好ましい。当該アリーレン基が有してもよいR
13以外の置換基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0041】
R
13における、R
14は、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基であるが、中でも、水素原子又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基であることが好ましい。また、R
13における、R
15は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基であるが、中でも、炭素原子数1以上5以下のアルキル基であることが好ましい。
【0042】
一般式(II)で表される液晶性構成単位の好適な具体例としては、例えば、下記化学式(II−1)、(II−2)及び(II−3)で表されるもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
【化6】
【0044】
本開示の実施形態において、側鎖型液晶ポリマーは、一般式(I)で表される構成単位からなるブロック部と、液晶性構成単位からなるブロック部を有するブロック共重合体であってもよく、一般式(I)で表される構成単位と液晶性構成単位とが不規則に並ぶランダム共重合体であってもよい。本実施形態においては、重合性液晶化合物の垂直配向性や位相差値の面内均一性の向上、また、位相差層を割れにくくする点から、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0045】
側鎖型液晶ポリマー中の一般式(I)で表される構成単位と、液晶性構成単位の存在比は特に限定されないが、一般式(I)で表される構成単位と液晶性構成単位との比がモル比で1:9〜9:1であることが好ましく、2:8〜8:2であることがより好ましい。
【0046】
(3)他の構成単位
本開示の実施形態において、本開示の側鎖型液晶ポリマーは、本実施形態の効果を損なわない範囲で、上記一般式(I)で表される構成単位および上記液晶性構成単位の他に、上記一般式(I)で表される構成単位および上記液晶性構成単位のいずれにも該当しない構成単位を有していてもよい。本開示の側鎖型液晶ポリマーに他の構成単位が含まれることにより、例えば溶剤溶解性、耐熱性、反応性等を高めることができる。
これらの他の構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。当該他の構成単位の含有割合は、側鎖型液晶ポリマー全体を100モル%に対し、0モル%以上30モル%以下の範囲内であることが好ましく、0モル%以上20モル%以下の範囲内であることがより好ましい。上記構成単位の含有割合が多いと、相対的に液晶性構成単位および上記一般式(I)で表される構成単位の含有割合が少なくなり、本実施形態の前記効果を得るのが困難になる場合がある。
【0047】
本開示の実施形態において、側鎖型液晶ポリマーの質量平均分子量Mwは特に限定されないが、500以上60000以下の範囲内であることが好ましく、3000以上55000以下の範囲内であることがより好ましく、4000以上40000以下の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲内であることにより、液晶組成物の安定性に優れ、位相差層形成時の取り扱い性に優れている。
【0048】
なお、上記質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0049】
(側鎖型液晶ポリマーの製造)
本実施形態において、前記側鎖型液晶ポリマーの製造方法は特に限定されず、例えば、前記一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと、液晶性構成単位を誘導するモノマーとを所望の比率で混合し、公知の重合手段により所望の平均分子量となるように重合すればよい。
また、ブロック共重合体とする場合には、例えば、前記一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと、液晶性構成単位を誘導するモノマーをそれぞれ公知の重合手段により重合した後、得られた各重合体を連結してもよく、また、前記一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマー又は液晶性構成単位を誘導するモノマーのうち一方を公知の重合手段により重合した後、他方のモノマーを加えて更に重合する方法などが挙げられる。
上記重合手段としては、ビニル基を有する化合物の重合に一般的に用いられる方法を採用することができ、例えば、アニオン重合やリビングラジカル重合などを用いることができる。本実施形態においては、なかでも、「J.Am.Chem.Soc.」105、5706(1983)に開示されているグループトランスファー重合(GTP)のようにリビング的に重合が進行する方法を用いることが好ましい。この方法によると、分子量、分子量分布などを所望の範囲とすることが容易であるので、得られる側鎖型液晶ポリマーの特性を均一にすることができる。
【0050】
本開示において側鎖型液晶ポリマーの構造は核磁気共鳴分光法(NMR)と、熱分解型ガスクロマトグラフ質量分析法(Py−GC−MS)、及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOFMS)のうちの少なくとも一方と、を組み合わせて解析することができる。Py−GC−MS又はMALDI−TOFMSにより、連結基の炭素原子数が異なる2種以上の構成単位を含むことを確認することができる。
【0051】
B.液晶組成物
本開示の液晶組成物は、前記本開示の側鎖型液晶ポリマーと、重合性液晶化合物と、光重合開始剤とを含有する、液晶組成物である。
【0052】
本開示の液晶組成物は、垂直配向しやすいため、位相差値の面内均一性に優れると共に、また、割れにくく、曲げに強い位相差層が得られる。
【0053】
当該液晶組成物が、このような効果を発揮する作用については、未解明な部分もあるが以下のように推測される。
本開示の液晶組成物は、側鎖型液晶ポリマーとして、液晶性構成単位の他に、上記一般式(I)で表される構成単位のうち、−(CH
2)
n−で表される連結基、又は−(C
2H
4O)
n’−で表される連結基の炭素原子数の異なる、即ち前記連結基の長さが異なる、2種以上の構成単位を有している。
当該側鎖型液晶ポリマーを含む液晶組成物を塗膜とした場合、当該側鎖型液晶ポリマーの側鎖は、塗膜の面内方向に対して直交する方向に配向するものと推定される。本開示の側鎖型液晶ポリマーは前述の通り、一般式(I)で表される構成単位のうち長さの異なる2種以上の構成単位を含んでいるため、短い側鎖の上方には長い側鎖に囲まれた空隙が形成され、当該空隙に、重合性液晶化合物が入り込んで垂直配向しやすく、また、一旦垂直配向した重合性液晶化合物は移動しにくくなるものと推定される。これらのことから、本開示の液晶組成物は、低温であっても垂直配向しやすく、また垂直配向された重合性液晶化合物が均一に配置されるものと推定される。
また、本開示の側鎖型液晶ポリマーは、一般式(I)で表される構成単位が有するL
1又はL
1’で表される連結基が柔軟な構造であり、又、前述の通り長さが異なる2種以上のものを含んでいるため、空隙ができやすくなっている。このような柔軟な構造と適度な空隙の相乗効果により、得られた位相差層は曲げに強く割れにくいものと推測される。
このように、本開示の液晶組成物によれば、曲げ耐性に優れ、位相差値の面内均一性が高い位相差層が得られ、例えば表示部分が柔軟に変形可能なフレキシブル表示装置等においても好適に用いることができる。また、本開示の液晶組成物は、重合性液晶化合物が低温で垂直配向しやすいためプロセスマージンが広がるという効果も得られる。
【0054】
本開示における液晶組成物は、少なくとも、側鎖型液晶ポリマーと、重合性液晶化合物と、光重合開始剤とを含有し、効果を損なわない範囲で更に他の成分を含有してもよいものである。以下、液晶組成物を構成する各成分について順に説明する。
【0055】
<側鎖型液晶ポリマー>
本開示の液晶組成物において側鎖型液晶ポリマーは、前記「A.側鎖型液晶ポリマー」で説明したものと同様であって良いので、ここでの説明は省略する。
本開示における液晶組成物において、前記側鎖型液晶ポリマーは1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態において、液晶の析出が抑制され、液晶が配向する温度範囲を広くできる液晶組成物が得られる点から、上記側鎖型液晶ポリマーの含有割合は、液晶組成物の固形分100質量部に対して3質量部以上80質量部以下であることが好ましく、5質量部以上70質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上60質量部以下であることがより更に好ましい。
なお、本開示において固形分とは溶剤を除く全ての成分をいい、例えば、後述する重合性液晶化合物が液状であっても固形分に含まれるものとする。
【0056】
<重合性液晶化合物>
本開示の実施形態において重合性液晶化合物は、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。本実施形態においては、前記側鎖型液晶ポリマーとの組み合わせにおいて垂直配向性や位相差層の耐久性の観点からメソゲンの少なくとも一方の末端に重合性基を有する重合性液晶化合物であることが好ましく、メソゲンの両末端に重合性基を有する重合性液晶化合物であることがより好ましい。
重合性液晶化合物が有するメソゲンは、前記側鎖型液晶ポリマーにおける液晶性構成単位が有するメソゲンと同様のものとすることができる。
重合性液晶化合物が有する重合性基としては、例えば、オキシラン環、オキセタン環等の環状エーテル含有基、エチレン性二重結合含有基等が挙げられるが、中でも光硬化性を示し、取り扱い性に優れる点から、エチレン性二重結合含有基であることが好ましい。エチレン性二重結合含有基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0057】
本実施形態において、重合性液晶化合物は、垂直配向性の点から、中でも、下記一般式(III)で表される化合物、及び下記一般式(IV)で表される化合物より選択される1種以上の化合物が好ましい。
【0058】
【化7】
(一般式(III)中、R
21は、水素原子又はメチル基を、R
22は、−(CH
2)
p−、又は−(C
2H
4O)
p’−で表される基を表す。L
3は、直接結合、又は、−O−、−O−C(=O)−、若しくは−C(=O)−O−で表される連結基を、Ar
3は、置換基を有していてもよい炭素原子数6以上10以下のアリーレン基を表し、複数あるL
3及びAr
3はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
23は、−F、−Cl、−CN、−OCF
3、−OCF
2H、−NCO、−NCS、−NO
2、−NHC(=O)−R
24、−C(=O)−OR
24、−OH、−SH、−CHO、−SO
3H、−NR
142、−R
25、又は−OR
25を、R
14は、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R
25は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。bは2以上4以下の整数、p及びp’はそれぞれ独立に2以上10以下の整数である。
【0059】
【化8】
(一般式(IV)中、R
31及びR
32は各々独立に、水素原子又はメチル基を、R
33は、−(CH
2)
q−、又は−(C
2H
4O)
q’−で表される基を、R
34は、−(CH
2)
r−、又は−(OC
2H
4)
r’−で表される基を表す。L
4は、直接結合、又は、−O−、−O−C(=O)−、若しくは−C(=O)−O−で表される連結基を、Ar
4は、置換基を有していてもよい炭素原子数6以上10以下のアリーレン基を表し、複数あるL
4及びAr
4はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。cは2以上4以下の整数、q、q’、r及びr’はそれぞれ独立に2以上10以下の整数である。)
【0060】
一般式(III)におけるp、p’、一般式(IV)におけるq、q’、r及びr’は垂直配向性の点から、2以上8以下であることが好ましく、2以上6以下であることがより好ましく、2以上5以下であることがより更に好ましい。
L
3及びL
4は前記一般式(II)におけるL
2と同様のものとすることができる。
また、Ar
3及びAr
4は前記一般式(II)におけるAr
2と同様のものとすることができる。
【0061】
重合性液晶化合物に含まれるメソゲン構造としては、下記化学式(V−1)〜(V−4)で表される部分構造が、好ましく用いられ、中でも、環構造を3つ以上含む下記化学式(V−1)、(V−2)及び(V−4)よりなる群から選択される少なくとも1種で表される部分構造が、好ましく用いられる。下記化学式(V−1)〜(V−4)で表される部分構造におけるフェニレン基やナフチレン基における水素原子は、炭素数1以上3以下のアルキル基や、ハロゲン原子によって置換されていても良い。
【0062】
【化9】
【0063】
一般式(III)で表される化合物、及び一般式(IV)で表される化合物の好適な具体例としては、下記化学式(1)〜(17)に示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
【化10】
【0065】
本実施形態において重合性液晶化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態において重合性液晶化合物の含有割合は、曲げ耐性が向上し、位相差値の面内均一性に優れる点から、液晶組成物の固形分100質量部に対して、20質量部以上95質量部以下であることが好ましく、30質量部以上90質量部以下であることがより好ましく、40質量部以上90質量部以下であることがより更に好ましい。
【0066】
<光重合開始剤>
本実施形態において光重合開始剤は、従来公知の物の中から適宜選択して用いることができる。このような光重合開始剤の具体例としては、例えば、チオキサントン等を含む芳香族ケトン類、α−アミノアルキルフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、オキシムエステル類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が好適に挙げられ、中でも、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、α−アミノアルキルフェノン系重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系重合開始剤、及びオキシムエステル系重合開始剤よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0067】
アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、例えばビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−フォスフィンオキサイド(例えば、商品名:イルガキュア819、BASF社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(商品名:Lucirin TPO:BASF社製等)等が挙げられる。
【0068】
また、α−アミノアルキルフェノン系重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(イルガキュア379EG、BASF社製)等が挙げられる。
【0069】
また、α−ヒドロキシケトン系重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(例えば、商品名:イルガキュア127、BASF社製等)、2−ヒドロキシ−4’−ヒドロキシエトキシ−2−メチルプロピオフェノン(例えば、商品名:イルガキュア2959、BASF社製等)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えば、商品名:イルガキュア184、BASF社製等)、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}(例えば、商品名:ESACURE ONE、Lamberti社製等)等が挙げられる。
【0070】
オキシムエステル系重合開始剤としては、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](商品名:イルガキュアOXE−01、BASF製)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名:イルガキュアOXE−02、BASF製)、メタノン,エタノン,1−[9−エチル−6−(1,3−ジオキソラン,4−(2−メトキシフェノキシ)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名ADEKA OPT−N−1919、ADEKA社製)等が挙げられる。
【0071】
本実施形態において光重合開始剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態において光重合開始剤の含有割合は、前記重合性液晶化合物の硬化を促進する点から、液晶組成物の固形分100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1質量部以上8質量部以下であることがより好ましい。
【0072】
<その他の成分>
本実施形態の液晶組成物は、効果を損なわない範囲で更に他の成分を含有してもよい。具体的には、他の成分として、レベリング剤、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定化剤や、塗工性の観点から溶剤等を含有してもよい。これらは従来公知の材料を適宜選択して用いればよい。
レベリング剤としては、フッ素系又はシリコーン系のレベリング剤を用いることが好ましい。レベリング剤の 具体例としては、例えば、特開2010−122325号公報に記載のDIC(株)製の メガファックシリーズ、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の TSFシリーズ及び(株)ネオス製のフタージェントシリーズ等が挙げられる。本実施形態においてレベリング剤を用いる場合、その含有割合は、液晶組成物の固形分100質量部に対して0.001質量部以上5質量部以下とすることが好ましい。
【0073】
本実施形態の液晶組成物は、塗工性の点から、必要に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、液晶組成物に含まれる各成分を溶解乃至分散し得る従来公知の溶剤の中から適宜選択すればよい。具体的には、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。本実施形態において溶剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて混合溶剤として用いることができる。
【0074】
本実施形態の液晶組成物は、液晶配向膜の製造に適しており、側鎖型液晶ポリマーが垂直配向しやすく、それに伴い、重合性液晶化合物が垂直配向しやすいため、ポジティブC型の位相差層の製造に適している。
【0075】
C.位相差フィルム
本開示の位相差フィルムは、位相差層を有する位相差フィルムであって、前記位相差層が、前記本開示の側鎖型液晶ポリマーと、重合性液晶化合物とを含有する液晶組成物の硬化物を含むものである。
なお、前記位相差層は、典型的には前記液晶組成物の硬化物からなるものであるが、本実施形態の効果を損なわない限りその他の構成を含有していてもよい。
また、前記本開示の側鎖型液晶ポリマーを用いた位相差フィルムとしては、位相差層を有する位相差フィルムであって、前記位相差層が、前記本開示の側鎖型液晶ポリマーを含む、位相差フィルムを挙げることもできる。
本開示の実施形態における位相差フィルムは、位相差層が前記本実施形態の液晶組成物の硬化物を含むもの、又は少なくとも前記本開示の側鎖型液晶ポリマーを含むものであるため、位相差値の面内均一性が高く光学特性に優れていると共に、柔軟で割れにくいという特徴を有している。
以下、このような位相差フィルムの構成について説明する。
【0076】
位相差フィルムの層構成について図を参照して説明する。
図1〜
図3は、各々本開示の位相差フィルムの1実施形態を示す。
図1の例に示される位相差フィルム10の1実施形態は、基材2上に配向膜3と位相差層1がこの順に積層されている位相差フィルムである。
図2の例に示される位相差フィルム10の1実施形態は、位相差層1のみからなる位相差フィルムである。また
図3の例に示される位相差フィルム10の1実施形態は、基材2’上に直接位相差層1が形成されている。
図3の例に示される位相差フィルムには基材2’の位相差層1側表面に配向規制力を発現する手段が付されていてもよい。
なお、前記一般式(I)で表される構成単位と液晶性構成単位とを有する側鎖型液晶ポリマーと、重合性液晶化合物とを含有する、液晶組成物は、前述のように、前記側鎖型液晶ポリマーが垂直配向しやすく、それに伴い、前記重合性液晶化合物が垂直配向しやすいため、配向膜を用いなくても、垂直配向性を示し得るものである。
【0077】
1.位相差層
本開示の実施形態の位相差層1は、前記本開示の側鎖型液晶ポリマーと、重合性液晶化合物とを含有する液晶組成物の硬化物、又は、少なくとも前記本開示の側鎖型液晶ポリマーを含む。
ここで、前記本開示の側鎖型液晶ポリマーと、重合性液晶化合物とは、それぞれ、前記本開示の実施形態の液晶組成物において説明したものと同様であって良いので、ここでの説明は省略する。
【0078】
位相差層は、前記側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性構成単位と、重合性液晶化合物が垂直配向した状態で、硬化しているものであることが好ましい。本開示の実施形態の液晶組成物の硬化物には、前記重合性液晶化合物の重合性基の少なくとも一部が重合した構造が含まれる。このような前記重合性液晶化合物の重合性基の少なくとも一部が重合した構造が含まれることから、本実施形態の位相差層は、耐久性が向上している位相差層である。
【0079】
なお、位相差層に含まれる液晶性構成単位は、核磁気共鳴法(NMR)、赤外分光法(IR)、ガスクロマトグラム質量分析法(GC−MS)、X線光電子分光法(XPS)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)等、分子構造情報が得られる公知の分析方法より1種以上の方法を用いて確認することができる。
また、重合性液晶化合物が垂直配向していることは、自動複屈折測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、商品名:KOBRA−WR)により位相差を測定することにより確認することができる。
【0080】
位相差は、自動複屈折測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、商品名:KOBRA−WR)により測定することができる。測定光を位相差層表面に対して垂直あるいは斜めから入射して、その光学位相差と測定光の入射角度のチャートから位相差層の位相差を増加させる異方性を確認することができる。
【0081】
また、位相差層が前記本開示の実施形態の液晶組成物に含まれる側鎖型液晶ポリマー、及び前記重合性液晶化合物の重合性基の少なくとも一部が重合した構造を含むことは、位相差層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC−MS、XPS、TOF−SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
【0082】
当該位相差層は、光重合開始剤、レベリング剤、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定化剤等のその他の成分を含んでいても良い。光重合開始剤など、前記重合性液晶化合物が有する重合性基を反応させるために光照射した際に、全てが分解する可能性がある成分については、位相差層には含まれていない場合もある。
【0083】
位相差層の厚みは、用途に応じて適宜設定すればよい。中でも、0.1μm以上5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上3μm以下であることがより好ましい。
【0084】
2.配向膜
本明細書において配向膜とは、位相差層に含まれる液晶性成分を一定方向に配列させるための層をいう。
本開示の実施形態に用いられる配向膜としては、前記本開示の実施形態の液晶組成物が垂直配向しやすいことから、垂直配向膜を用いることが好ましい。
垂直配向膜は、塗膜として設けることで、位相差層に含まれる液晶性成分のメソゲンの長軸を垂直配向させる機能を有する配向膜である。
【0085】
垂直配向膜は、垂直方向の配向規制力を備えた配向膜であり、Cプレートの作製に供する各種垂直配向膜、VA液晶表示装置等に適用される各種の垂直配向膜を適用することができ、例えばポリイミド配向膜、LB膜による配向膜等を適用することができる。具体的に、配向膜の構成材料としては、例えば、レシチン、シラン系界面活性剤、チタネート系界面活性剤、ピリジニウム塩系高分子界面活性剤、n−オクタデシルトリエトキシシラン等のシランカップリング系垂直配向膜用組成物、長鎖アルキル基や脂環式構造を側鎖に有する可溶性ポリイミドや長鎖アルキル基や脂環式構造を側鎖に有するポリアミック酸等のポリイミド系垂直配向膜用組成物を適用することができる。
なお、垂直配向膜用組成物として、ジェイエスアール(株)製のポリイミド系垂直配向膜用組成物「JALS−2021」や「JALS−204」、日産化学工業(株)製の「RN−1517」、「SE−1211」、「EXPOA−018」等の市販品を適用することができる。また、特開2015−191143に記載の垂直配向膜であっても良い。
【0086】
配向膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、後述する基材上に、後述する配向膜用組成物を塗布し、配向規制力を付与することにより配向膜とすることができる。配向膜に配向規制力を付与する手段は、従来公知のものとすることができる。
【0087】
配向膜の厚さは、位相差層における液晶性成分を一定方向に配列できればよく、適宜設定すればよい。配向膜の厚さは、通常、1nm以上10μm以下の範囲内であり、60nm以上5μm以下の範囲内が好ましい。
【0088】
3.基材
本実施形態において基材は、ガラス基材、金属箔、樹脂基材等が挙げられる。中でも、基材は透明性を有することが好ましく、従来公知の透明基材の中から適宜選択することができる。透明基材としては、ガラス基材の他、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を用いて形成された透明樹脂基材が挙げられる。
【0089】
上記透明基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0090】
また、ロールトゥロール方式で位相差層を形成する場合には、透明基材は、ロール状に巻き取ることができる可撓性を有するフレキシブル材であることが好ましい。
このようなフレキシブル材としては、セルロース誘導体、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類などを例示することができる。なかでも本実施形態においてはセルロース誘導体やポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。セルロース誘導体は特に光学的等方性に優れるため、光学的特性に優れたものとすることができるからである。また、ポリエチレンテレフタレートは、透明性が高く、機械的特性に優れる点から好ましい。
【0091】
本実施形態に用いられる基材の厚みは、位相差フィルムの用途等に応じて、必要な自己支持性を付与できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、10μm以上200μm以下程度の範囲内である。
中でも、基材の厚みは、25μm以上125μm以下の範囲内が好ましく、中でも30μm以上100μm以下の範囲内が好ましい。厚みが上記の範囲よりも厚いと、例えば、長尺状の位相差フィルムを形成した後、裁断加工し、枚葉の位相差フィルムとする際に、加工屑が増加したり、裁断刃の磨耗が早くなってしまう場合があるからである。
【0092】
本実施形態に用いられる基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
例えば、本実施形態に用いられる配向膜が紫外性硬化性樹脂を含有するものである場合、透明基材と当該紫外線硬化性樹脂の接着性を向上させるためのプライマー層を基材上に形成してもよい。このプライマー層は、基材および紫外線硬化性樹脂との双方に接着性を有し、可視光学的に透明であり、紫外線を通過させるものであればよく、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体系、ウレタン系のもの等を適宜選択して使用することができる。
【0093】
また、垂直配向膜が設けられない場合、基材上にアンカーコート層を積層しても良い。当該アンカーコート層によって基材の強度を向上させることができ良好な垂直配向性を確保できる。アンカーコート材料としては、金属アルコキシド、特に金属シリコンアルコキシドゾルを用いることができるされる。金属アルコキシドは、通常アルコール系の溶液として用いられる。アンカーコート層は、均一で、かつ柔軟性のある膜が必要なため、アンカーコート層の厚みは0.04μm以上2μm以下程度が好ましく、0.05μm以上0.2μm以下程度がより好ましい。
前記基材がアンカーコート層を有する場合には、基材とアンカーコート層の間に更にバインダー層を積層したり、アンカーコート層に基材との密着性を強化する材料を含有させることにより、基材とアンカーコート層の密着性を向上させてもよい。前記バインダー層の形成に用いるバインダー材料は、基材とアンカーコート層との密着性を向上できるものを特に制限なく使用することができる。バインダー材料としては、たとえば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等を例示できる。
【0094】
4.用途
本開示の位相差フィルムは、ポジティブC型の位相差層を有する位相差フィルムとして好適に用いられる。本開示の位相差フィルムは、例えば視野角補償フィルムとして好適に用いられ、後述するような各種表示装置用の光学部材に好適に用いられる。
【0095】
D.位相差フィルムの製造方法
本開示の実施形態の位相差フィルムの製造方法としては、例えば、
前記本開示の実施形態の液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記液晶組成物中の前記側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性構成単位と、前記重合性液晶化合物とを配向させる工程と、
前記配向させる工程の後に、前記重合性液晶化合物を重合する工程とを有することにより、位相差層を形成する工程を有する、製造方法が挙げられる。
当該液晶組成物としては、前記「B.液晶組成物」と同様のものを用いることができるので、ここでの説明を省略する。
【0096】
(1)液晶組成物の成膜工程
支持体上に、液晶組成物を均一に塗布して成膜を形成する。
ここでの支持体上としては、前記基材上であっても良いし、前記配向膜を備えた基材の配向膜上であってもよい。
【0097】
塗布方法は、所望の厚みで精度良く成膜できる方法であればよく、適宜選択すればよい。例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などが挙げられる。
【0098】
(2)液晶性成分を配向させる工程
次いで、成膜された液晶組成物中の側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性構成単位と、重合性液晶化合物が垂直配向可能な温度に調整し、加熱する。当該加熱処理により、側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性構成単位と、重合性液晶化合物とを垂直配向させて乾燥することができ、前記配向状態を維持した状態で固定化することができる。
垂直配向可能な温度は、液晶組成物中の各物質に応じて異なるため、適宜調整する必要がある。例えば、40℃以上200℃以下の範囲内で行うことが好ましく、更に40℃以上100℃以下の範囲内で行うことが好ましい。本実施形態の液晶組成物は、前記側鎖型液晶ポリマーを有するため、垂直配向可能な温度範囲が広く、温度管理が容易である。
加熱手段としては、公知の加熱、乾燥手段を適宜選択して用いることができる。
また、加熱時間は、適宜選択されれば良いが、例えば、10秒以上2時間以内、好ましくは20秒以上30分以内の範囲内で選択される。
【0099】
(3)重合性液晶化合物を重合する工程
前記配向工程において、液晶性成分の配向状態を維持した状態で固定化された塗膜に、例えば光照射することにより、重合性液晶化合物を重合することができ、前記液晶組成物の硬化物を含む位相差層を得ることができる。
光照射としては、紫外線照射が好適に用いられる。紫外線照射は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線を使用することができる。エネルギー線源の照射量は、適宜選択されれば良く、紫外線波長365nmでの積算露光量として、例えば10mJ/cm
2以上10000mJ/cm
2以下の範囲内であることが好ましい。
【0100】
E.転写用積層体
本開示の転写用積層体は、位相差層と、前記位相差層を剥離可能に支持した支持体とを備え、
前記位相差層が、前記本開示の側鎖型液晶ポリマーと、重合性液晶化合物とを含有する液晶組成物の硬化物を含む、
前記位相差層の転写に供する転写用積層体である。
なお、前記位相差層は、典型的には前記液晶組成物の硬化物からなるものであるが、本実施形態の効果を損なわない限りその他の構成を含有していてもよい。
また、前記本開示の側鎖型液晶ポリマーを用いた転写用積層体としては、位相差層と、前記位相差層を剥離可能に支持した支持体とを備え、
前記位相差層が、前記本開示の側鎖型液晶ポリマーを含む、
前記位相差層の転写に供する転写用積層体、を挙げることもできる。
【0101】
上記本実施形態の転写用積層体は、位相差層が前記液晶組成物の硬化物を含むもの、又は少なくとも前記本開示の側鎖型液晶ポリマーを含むものであるため、曲げ耐性に優れ、位相差値の面内均一性が高い位相差層を有するものであり、また、重合性液晶化合物が低温であっても垂直配向しやすくなるため、プロセスマージンが広く、量産性が向上したものである。上記本実施形態の転写用積層体によれば、他の任意の光学部材等に、例えば、基材を含まない薄膜の、本開示の位相差層を転写することができる。
本実施形態の転写用積層体によれば、例えば、
図2の例に示される位相差層1のみからなる位相差フィルム10や、
図5の例に示されるような、基材は含まず配向膜23と位相差層21とが積層された積層体26からなる位相差フィルムを、提供することができる。すなわち、前記位相差層を少なくとも剥離可能であれば、転写用積層体の転写に供する位相差層には、配向膜等が積層されていても良い。
以下、このような転写用積層体の構成について説明するが、前記本開示の実施形態の液晶組成物については前述のとおりであるため、ここでの説明は省略する。
【0102】
転写用積層体の層構成について図を参照して説明する。
図4及び
図5は、各々本開示の転写用積層体の1実施形態を示す。
図4の例に示される転写用積層体20の1実施形態は、転写に供する位相差層16と、前記位相差層を剥離可能に支持した支持体15として、第二の基材12上に配向膜13と位相差層11とがこの順に積層されている転写用積層体である。
図4の例に示される転写用積層体においては、第二の基材12と配向膜13との剥離強度が、配向膜13と位相差層11との剥離強度よりも大きくなっていることにより、配向膜と位相差層との界面17で剥離され、位相差層11(16)を転写することができる転写用積層体の例である。
図5の例に示される転写用積層体30の1実施形態は、転写に供する位相差層26と、前記位相差層を剥離可能に支持した支持体25として、第二の基材22上に配向膜23と位相差層21がこの順に積層されている転写用積層体である。
図5の例に示される転写用積層体においては、第二の基材22と配向膜23との剥離強度が、配向膜23と位相差層21との剥離強度よりも小さくなっていることにより、第二の基材22と配向膜23との界面27で剥離され、転写に供する位相差層26としては、位相差層21及び配向膜23を転写することができる転写用積層体の例である。
【0103】
例えば、第二の基材と配向膜との剥離強度が配向膜と位相差層との剥離強度よりも大きいか小さいかは、位相差層の剥離を行って、いずれの界面で剥離しているかで確認することができる。いずれの界面で剥離しているかは、例えば、IR等により分析可能である。
【0104】
また、
図6の例に示される転写用積層体40の1実施形態は、転写に供する位相差層36と、前記位相差層を剥離可能に支持した支持体35として、第二の基材32上に位相差層31がこの順に積層されている転写用積層体である。
【0105】
以下、本実施形態について説明するが、位相差層については前記「C.位相差フィルム」で述べた位相層と同様のものとすることができるのでここでの説明を省略する。
また、配向膜及び基材も前記「C.位相差フィルム」で述べた配向膜及び基材と同様のものを用いることができるが、剥離強度を調整する方法としては、例えば下記の方法を挙げることができる。
【0106】
図4の例に示される転写用積層体20を得るために、第二の基材12と配向膜13との剥離強度が、配向膜13と位相差層11との剥離強度よりも大きくするには、例えば、配向膜形成用組成物に含まれる溶剤を、第二の基材を溶解可能なものとする方法を用いることができる。当該第二の基材としては樹脂基材を用いることが好ましく、また、基材表面に接着性が向上するための表面処理を行っても良い。このような場合、樹脂基材および配向膜の密着性を向上させることができる。
また、基材と配向膜との剥離強度が配向膜と位相差層との剥離強度よりも大きくなるよう、配向膜と位相差層との剥離強度を小さくするために、配向膜の耐溶剤性を比較的高くすることも好ましい。配向膜の耐溶剤性が比較的高い場合には、配向膜上に液晶組成物を塗布して位相差層を形成する際に、液晶組成物中の溶剤に配向膜が溶解しにくくなるため、配向膜および位相差層の密着性を低くすることができる。
【0107】
一方、
図5の例に示される転写用積層体30を得るために、第二の基材22と配向膜23との剥離強度が、配向膜23と位相差層21との剥離強度よりも小さくするためには、例えば、基材の表面に離型処理が施されていてもよく、あるいは離型層が形成されていてもよい。これにより、基材の剥離性を高めることができ、基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくすることができる。
離型処理としては、例えばフッ素処理、シリコーン処理等の表面処理が挙げられる。
離型層の材料としては、例えばフッ素系離型剤、シリコーン系離型剤、ワックス系離型剤等が挙げられる。離型層の形成方法としては、例えば離型剤をディップコート、スプレーコート、ロールコート等の塗布法により塗布する方法が挙げられる。
また、
図6の例に示される転写用積層体40を得るためにも、必要に応じて、基材の表面に離型処理が施されていてもよく、あるいは離型層が形成されていてもよい。
【0108】
転写用積層体に用いられる基材は、可撓性を有していてもよく有さなくてもよいが、基材を剥離しやすいことから、可撓性を有することが好ましい。
転写用積層体に用いられる基材の厚みは、充分な自己支持強度と、本実施形態の転写用積層体の製造および転写工程に適応出来るだけの可撓性との兼合いから、通常、上記材料のシートの場合、20μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0109】
本開示の転写用積層体から提供できる位相差層は、前記位相差フィルムと同様の用途に好適に用いられ、ポジティブC型の位相差層を各種表示装置用の光学部材に転写することができ、薄膜の光学部材を提供するために好適に用いられる。
【0110】
F.光学部材
本開示の光学部材は、前記本開示の位相差フィルム上に、偏光板を備えるものである。
【0111】
本実施形態の光学部材を、図を参照して説明する。
図7は、光学部材の1実施形態を示す模式断面図である。
図7の光学部材60の例では、前記本開示の位相差フィルム10上に、偏光板50が配置されている。位相差フィルム10と偏光板50との間には、必要に応じて粘着層(接着層)を有していてもよい(図示せず)。
【0112】
本実施形態において偏光板は、特定方向に振動する光のみを通過させる板状ものであり、従来公知の偏光板の中から適宜選択して用いることができる。例えば、沃素又は染料により染色し、延伸してなるポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を用いることができる。
また、本実施形態において粘着層(接着層)用の粘着剤又は接着剤としては、従来公知のものの中から適宜選択すればよく、感圧接着剤(粘着剤)、2液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱溶融型接着剤等、いずれの接着形態のもの好適に用いることができる。
【0113】
本実施形態の光学部材には、偏光板の他にも、公知の光学部材が備える他の層を更に有していても良い。当該他の層としては、例えば、前記本実施形態の位相差層とは異なる他の位相差層の他、反射防止層、拡散層、防眩層、帯電防止層、保護フィルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
本実施形態の光学部材は、例えば、外光反射を抑制する光学部材として用いることができる。前記本開示の位相差フィルムと円偏光板とが積層されている本開示の光学部材は、例えば、発光表示装置用の外光反射を抑制するための光学部材として好適に用いられ、また、各種表示装置用の広視野角偏光板として好適に用いることができる。
【0115】
G.光学部材の製造方法
本開示の光学部材の製造方法は、特に限定されることなく、前記本開示の位相差フィルム上に、偏光板を積層する方法を適宜選択して用いることができる。例えば、前記本開示の位相差フィルム上に、偏光板を、粘着層乃至接着層を介して積層する製造方法等が挙げられる。
【0116】
また、本開示の1実施形態の光学部材の製造方法としては、
前記本開示の転写用積層体を準備する転写用積層体準備工程と、
少なくとも偏光板を含む被転写体と、前記転写用積層体の前記位相差層とを対向させ、前記被転写体上に前記転写用積層体を転写する転写工程と、
前記被転写体上に転写された前記転写用積層体から、前記支持体を剥離する剥離工程とを有する、光学部材の製造方法が挙げられる。
【0117】
前記転写用積層体を用いた本開示の1実施形態の光学部材の製造方法によれば、偏光板と、前記本開示の位相差フィルムのうち前記位相差層のみを備えた光学部材を得ることができる。
本開示の1実施形態の光学部材の製造方法に用いる転写用積層体は、前記「E.転写用積層体」で説明したものと同様のものとすることができるので、ここでの説明を省略する。
また、本開示の1実施形態の光学部材の製造方法に用いる被転写体は、典型的には、接着層と偏光板とを有する被転写体が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、前述した本開示の1実施形態における光学部材が有していても良い他の層と同様の層を、更に有していても良い。
【0118】
H.表示装置
本開示の表示装置は、前記本開示の位相差フィルム、又は当該位相差フィルム上に偏光板を備える光学部材、を備えることを特徴とする。
すなわち、本開示の表示装置は、前記本開示の位相差フィルム又は前記本開示の光学部材、を備えることを特徴とする。
表示装置としては、例えば、発光表示装置、液晶表示装置等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0119】
中でも、前記本開示の位相差フィルム又は前記本開示の光学部材を備えるため、特に、透明電極層と、発光層と、電極層とをこの順に有する有機発光表示装置等の発光表示装置において外光反射を抑制しながら、視野角が向上するという効果を有する。
【0120】
1実施形態である発光表示装置の例を、図を参照して説明する。
図8は、有機発光表示装置の1実施形態を示す模式断面図である。
図8の有機発光表示装置100の例では、前記位相差フィルム10の出光面側に、偏光板50が配置され、反対側の面には、透明電極層71と、発光層72と、電極層73とをこの順に有している。
発光層72としては、例えば、透明電極層71側から順に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注F入層の順に積層する構成等が挙げられる。本実施形態において、透明電極層、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、電極層、及びその他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された発光表示装置は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本開示の表示装置は、上記構成に限定されるものではなく、適宜選択した公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0121】
(合成例1:液晶モノマー1の合成)
まず下記スキーム1に従い、4−[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]安息香酸を合成した。
【0122】
【化11】
【0123】
次に、下記スキーム2に従って、下記化学式(1)で表される液晶モノマー1を得た。具体的には、上記で得られた4−[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]安息香酸(179.4g,759.4mmol)、4’−シアノ−4−ヒドロキシビフェニル(148.3g,759.4mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(2.7g、22.8mmol)のジクロロメタン(DCM)(950mL)懸濁液に、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(170.8g,827.8mmol)のジクロロメタン(130mL)溶液を滴下した。滴下終了後、12時間撹拌し、沈殿物をろ過した後、溶媒を留去した。得られた粗体にメタノール(1.8L)を加え、室温で1時間撹拌し懸濁精製した。沈殿物をろ過し、得られた結晶を乾燥させることにより、4’−シアノ−4−{4−[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾアート}(下記化学式(1))を収率92.9%(301.1g,728.3mmol)で得た。
【0124】
【化12】
【0125】
(合成例2:液晶モノマー2の合成)
上記合成例1において、2−ブロモエタノールの代わりに6−クロロ−1−n−ヘキサノールを用いた以外は、合成例1と同様にして、下記化学式(2)で表される液晶モノマー2を得た。
【0126】
【化13】
【0127】
(合成例3:液晶モノマー3の合成)
まず下記スキーム3に従って、下記化学式(A)で表される4−プロポキシカルボニルフェニル=4−ヒドロキシベンゾアートを得た。具体的には、4−アセトキシ安息香酸(524.8g、2.9mol)、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル(500g,2.8mol)、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(20.3g,0.2mmol)のジクロロメタン(2.5L)懸濁液に、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(601.3g,2.9mol)のジクロロメタン(450mL)溶液を滴下した。滴下終了後、12時間撹拌し、沈殿物をろ過したのち、溶媒を留去した。得られた油状物にメタノール(3.4L)を加え、溶解させたのち、冷却下に炭酸カリウム(446.1g,3.2mol)の水(1.7L)溶液をゆっくりと滴下した。反応混合物を1時間撹拌したのち、35%塩酸(325mL)で中和し、析出した結晶をろ過し、粗体を乾燥させることにより、4−プロポキシカルボニルフェニル−4−ヒドロキシベンゾアートを2段階72.9%(602.2g,2.0mol)の収率で得た。上述した方法による4−プロポキシカルボニルフェニル−4−ヒドロキシベンゾアートの合成を2回繰り返し行った。
【0128】
【化14】
【0129】
次に下記スキーム4に従って、下記化学式(3)で表される液晶モノマー3を得た。具体的には、4−プロポキシカルボニルフェニル−4−ヒドロキシベンゾアート(664g,2.3mol)、4−[6−(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]安息香酸(650g,2.2mol)、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(7.9g,0.1mol)のジクロロメタン(2.8L)懸濁液に、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(489.0g,2.4mol)のジクロロメタン(400mL)溶液を滴下した。滴下終了後、1夜撹拌し、沈殿物をろ過したのち、溶媒を留去した。得られた粗体にメタノール(5.0L)を加え溶解させたのち、冷却下、5時間撹拌した。析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥させることにより、4−[(4−プロポキシカルボニルフェニルオキシカルボニル)フェニル−4−[6−(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]ベンゾアートを収率87.7%(1091g,2.0mol)で得た。
【0130】
【化15】
【0131】
(合成例4:モノマーAの合成)
遮光した2Lの四つフラスコに4−アミルフェノール(82.5g、502mmol)、3−クロロ−1−プロパノール(49.8g、527mmol)、炭酸カリウム(83.3g、603mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(210mL)を入れ、100℃に昇温し37時間撹拌した。その後、この反応液を室温まで放冷し、水(413mL)を添加し10分間撹拌した。その後さらに酢酸エチル(350mL)を加え5分間撹拌した後、分液を行った。分離した水槽を酢酸エチル(350mL)で再抽出し、合わせた有機層を水(413mL)で洗浄した。その後有機層を水(413mL)と飽和食塩水(150mL)で洗浄し、分液で水槽を除去した後溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、溶媒を留去することでエーテル体Aを113.0g得た。上述した方法によるエーテル体Aの合成を2回繰り返し行った。
次に、遮光した2Lの四つフラスコに前記エーテル体A(114.5g、392mmol)、N,N−ジメチルアニリン(52.3g、432mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド(26.2g)、テトラヒドロフラン(375mL)を入れ、内温15℃以下まで冷却した。その混合液に、テトラヒドロフラン(13mL)でアクリル酸クロリド(56.8g、628mmol)を溶解した溶液を滴下し、25℃にて5時間攪拌した。その後、反応液を水(1.2L)中に滴下した後、酢酸エチル(1.0L)を加え抽出し、その後有機層の溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、溶媒を留去することで下記化学式(A)で表されるモノマーAを114g得た。
【0132】
【化16】
【0133】
(合成例5:モノマーBの合成)
前記合成例4において、3−クロロ−1−プロパノールの代わりに8−クロロ−1−n−オクタノールを用いた以外は合成例4と同様にして、下記化学式(B)で表されるモノマーBを得た。
【0134】
【化17】
【0135】
(合成例6:モノマーCの合成)
前記合成例4において、4−アミルフェノールの代わりに、4−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)フェノールを用いた以外は合成例4と同様にして、下記化学式(C)で表されるモノマーCを得た。
【0136】
【化18】
【0137】
(合成例7:モノマーDの合成)
前記合成例5において、4−アミルフェノールの代わりに、4−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)フェノールを用いた以外は合成例5と同様にして、下記化学式(D)で表されるモノマーDを得た。
【0138】
【化19】
【0139】
モノマーEとしてアクリル酸エチル(下記化学式(E))を、モノマーFとしてアクリル酸ヘキシル(下記化学式(F))を、モノマーGとしてアクリル酸ステアリル(下記化学式(G)をそれぞれ用いた(いずれも東京化成社製)。
【0140】
【化20】
【0141】
また、モノマーHとして、日立化成社製ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート(下記化学式(H))を用いた。当該モノマーHは、下記化学式(H)におけるn'が1〜8の混合物であって、少なくともn'が4のモノマーと、n'が8のモノマーとを含むものであり、n’の平均が4である。
【0142】
【化21】
【0143】
また、モノマーIとして、日立化成社製ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート(下記化学式(I))を用いた。当該モノマーIは、下記化学式(I)におけるn'が1〜12の混合物であって、少なくともn'が8のモノマーと、n'が12のモノマーとを含むものであり、n’の平均が8である。
【0144】
【化22】
【0145】
また、モノマーJとして、日立化成社製ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート(下記化学式(J))を用いた。当該モノマーJは、少なくとも下記化学式(J)におけるn'が16のモノマーと、n'が17のモノマーとを含むものである。
【0146】
【化23】
【0147】
また、モノマーKとして、アクリル酸ドデシル(下記化学式(K))を、モノマーLとしてアクリル酸ヘキサデシル(下記化学式(L))をそれぞれ用いた(いずれも東京化成社製)。
【0148】
【化24】
【0149】
(製造例1:側鎖型液晶ポリマーの合成)
前記液晶モノマー1〜3、及び、前記モノマーA〜Lを表1に従って組み合わせ、側鎖型液晶ポリマーを合成した。以下では、モノマーA〜モノマーLを非液晶モノマーということがある。
側鎖型液晶ポリマーA−06の合成例を具体的に説明する。
モノマーAとモノマーBとをモル比で50:50として組み合わせ、これら非液晶モノマーの合計と、液晶モノマー2とをモル比で35:65となるように組み合わせて混合し、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を加え、40℃で撹拌し溶解させた。溶解後24℃まで冷却し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え同温にて溶解させた。80℃に加温したDMAcに上記反応溶液を30分かけて滴下し、滴下終了後、80℃で6時間撹拌した。反応終了後室温まで冷却した後、メタノールを撹拌している別の容器に滴下し20分撹拌した。上澄み液を除去後スラリーをろ過し、得られた粗体を再びメタノール中で20分撹拌、上澄み液の除去、ろ過をした。得られた結晶を乾燥させることにより側鎖型液晶ポリマーA−06を収率76.5%で得た。
得られた側鎖型液晶ポリマーA−06について、前述のGPCにより質量平均分子量Mwを測定し、
1H−NMRにより構造解析を行った。また、前述のPy−GC−MS、及びMALDI−TOFMSにより、側鎖型液晶ポリマーA−06が、モノマーA由来の構成単位と、モノマーB由来の構成単位とを含むことを確認した。
<鎖型液晶ポリマーA−06>
質量平均分子量Mw:7400
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.60〜1.81(m,Alkyl−H),2.33(bs benzyl−H),3.57〜4.32(m,−O−CH2−),6.80〜7.73(m,Aromatic−H),8.12(bs,CN−C=CH−)
【0150】
(製造例2〜18:側鎖型液晶ポリマーの合成)
前記側鎖型液晶ポリマーA−06の合成例において、非液晶モノマーの組合せと配合比を表1のように変更し、液晶モノマーを表1に従って選択した以外は、前記側鎖型液晶ポリマーA−06の合成例と同様にし、側鎖型液晶ポリマーA−01〜A−05、及び、側鎖型液晶ポリマーA−07〜A−18を得た。なお、前記側鎖型液晶ポリマーA−01〜A−18は、いずれも非液晶モノマーと液晶モノマーの比率はモル比で35:65であった。
得られた側鎖型液晶ポリマーについて、上記側鎖型液晶ポリマーA−06と同様に、質量平均分子量を測定し、構造解析を行った。また、Py−GC−MS、乃至、MALDI−TOFMSにより、用いた2種又は3種の非液晶モノマー由来の構成単位を含むことを確認した。以下、測定結果を示す。
【0151】
<側鎖型液晶ポリマーA−01>
質量平均分子量Mw:8000
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.60〜1.88(m,Alkyl−H),3.63〜4.32(m,−O−CH2−),6.80〜7.73(m,Aromatic−H),8.17(bs,CN−C=CH−)
【0152】
<側鎖型液晶ポリマーA−02>
質量平均分子量Mw:4200
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.58〜1.89(m,Alkyl−H),3.63〜4.20(m,−O−CH2−),6.80〜7.73(m,Aromatic−H),8.17(bs,CN−C=CH−)
【0153】
<側鎖型液晶ポリマーA−03>
質量平均分子量Mw:7800
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.60〜1.82(m,Alkyl−H),3.63〜4.20(m,−O−CH2−),6.80〜7.73(m,Aromatic−H),8.17(bs,CN−C=CH−)
【0154】
<側鎖型液晶ポリマーA−04>
質量平均分子量Mw:55000
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.55〜1.89(m,Alkyl−H),3.61〜4.27(m,−O−CH2−),6.80〜7.73(m,Aromatic−H),8.18(bs,CN−C=CH−)
【0155】
<側鎖型液晶ポリマーA−05>
質量平均分子量Mw:8200
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.61〜1.82(m,Alkyl−H),3.63〜4.34(m,−O−CH2−),6.80〜7.73(m,Aromatic−H),8.18(bs,CN−C=CH−)
【0156】
<側鎖型液晶ポリマーA−07>
質量平均分子量Mw:8200
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.58〜1.89(m,Alkyl−H),2.45(bs benzyl−H),3.61〜4.21(m,−O−CH2−),6.67〜7.73(m,Aromatic−H),8.17(bs,CN−C=CH−)
【0157】
<側鎖型液晶ポリマーA−08>
質量平均分子量Mw:8100
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.59〜1.84(m,Alkyl−H),3.63〜4.32(m,−O−CH2−),6.80〜7.72(m,Aromatic−H),8.17(bs,CN−C=CH−)
【0158】
<側鎖型液晶ポリマーA−09>
質量平均分子量Mw:8100
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.60〜1.88(m,Alkyl−H),3.63〜4.32(m,−O−CH2−),6.80〜7.73(m,Aromatic−H),8.17(bs,CN−C=CH−)
【0159】
<側鎖型液晶ポリマーA−10>
質量平均分子量Mw:7800
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.60〜1.88(m,Alkyl−H),3.63〜4.32(m,−O−CH2−),6.98〜7.72(m,Aromatic−H)
【0160】
<側鎖型液晶ポリマーA−11>
質量平均分子量Mw:7300
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.55〜1.66(m,Alkyl−H),2.49(bs benzyl−H),3.77〜4.17(m,−O−CH2−),6.80〜7.73(m,Aromatic−H),8.11(bs,CN−C=CH−)
【0161】
<側鎖型液晶ポリマーA−12>
質量平均分子量Mw:8200
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.60〜1.72(m,Alkyl−H),2.50(bs benzyl−H),3.78〜4.17(m,−O−CH2−),6.76〜7.73(m,Aromatic−H),8.15(bs,CN−C=CH−)
【0162】
<側鎖型液晶ポリマーA−13>
質量平均分子量Mw:7600
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.55〜1.88(m,Alkyl−H),2.32(bs benzyl−H),3.77〜4.17(m,−O−CH2−),6.80〜7.70(m,Aromatic−H),8.11(bs,CN−C=CH−)
【0163】
<側鎖型液晶ポリマーA−14>
質量平均分子量Mw:7600
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.57〜1.74(m,Alkyl−H),2.44(bs benzyl−H),3.63〜4.20(m,−O−CH2−),6.80〜7.73(m,Aromatic−H),8.11(bs,CN−C=CH−)
【0164】
<側鎖型液晶ポリマーA−15>
質量平均分子量Mw:9600
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.61〜1.71(m,Alkyl−H),2.51(bs benzyl−H),3.60〜4.31(m,−O−CH2−),6.81〜7.70(m,Aromatic−H),8.15(bs,CN−C=CH−)
【0165】
<側鎖型液晶ポリマーA−16>
質量平均分子量Mw:8900
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.53〜1.74(m,Alkyl−H),2.29(bs benzyl−H),3.13〜4.59(m,−O−CH2−),6.72〜7.75(m,Aromatic−H),8.12(bs,CN−C=CH−)
【0166】
<側鎖型液晶ポリマーA−17>
質量平均分子量Mw:7800
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.60〜1.88(m,Alkyl−H),3.63〜4.32(m,−O−CH2−),6.80〜7.73(m,Aromatic−H),8.17(bs,CN−C=CH−)
【0167】
<側鎖型液晶ポリマーA−18>
質量平均分子量Mw:7600
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.55〜1.84(m,Alkyl−H),3.63〜4.32(m,−O−CH2−),6.80〜7.73(m,Aromatic−H),8.17(bs,CN−C=CH−)
【0168】
(比較製造例1:側鎖型液晶ポリマーA−X1の合成)
前記側鎖型液晶ポリマーA−06の合成例において、非液晶モノマーを表1に示されるように変更した以外は、前記側鎖型液晶ポリマーA−06の合成例と同様にして、側鎖型液晶ポリマーA−X1を得た。
得られた側鎖型液晶ポリマーA−X1について、上記側鎖型液晶ポリマーA−06と同様に、質量平均分子量を測定し、構造解析を行った。
<側鎖型液晶ポリマーA−X1>
質量平均分子量Mw:8600
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS):0.55〜1.89(m,Alkyl−H),3.65〜4.23(m,−O−CH2−),6.79〜7.73(m,Aromatic−H),8.17(bs,CN−C=CH−)
【0169】
【表1】
【0170】
重合性液晶化合物として、下記化学式B−01、及び下記化学式B−02の化合物を準備した。
【0171】
【化25】
【0172】
光重合開始剤として、下記C−01、及び下記C−02を準備した(いずれもBASF社製)。
C−01:IRGACURE 907
C−02:IRGACURE 184
【0173】
また、レベリング剤として、D−01:フッ素含有界面活性剤(DIC社製,メガファックF−554)を準備した。
【0174】
(実施例1:液晶組成物の調製)
側鎖型液晶ポリマー(A−01)50質量部、光重合性液晶化合物(B−01)50質量部および光重合開始剤(C−01:チバスペシャリフィケミカルズ社製,イルガキュア907)4質量部をシクロヘキサノン400質量部に溶解させ液晶組成物1を調製した。
【0175】
(実施例2〜23:液晶組成物2〜23の調製)
実施例1において、各成分の組成を表2に従って変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶組成物2〜23を得た。
【0176】
(比較例1〜2:比較液晶組成物X1〜X2の調製)
実施例1において、各成分の組成を表2に従って変更した以外は、実施例1と同様にして、比較液晶組成物X1〜X2を得た。
【0177】
[評価]
(位相差フィルム乃至転写用積層体の作製)
垂直配向膜用組成物として、2−フェノキシエチルアクリレートと、テトラヒドロフルフリルアクリレートと、ジペンタエリスリトールトリアクリレートと、ビス(2−ビニルオキシエチル)エーテルとを、1:1:4:5の質量比で混合し、更に、重合開始剤としてLucirin TPO(BASF社製)を4質量%の割合で添加した混合物を調製した。
厚み38μmのPET基材を用い、その片面に前記垂直配向膜用組成物を膜厚3μmになるようにコーティングし、20mJ/cm
2の紫外線を照射して配向膜を作製した。
続いて、形成した配向膜上に、前記実施例及び比較例の液晶組成物をそれぞれ、測定波長550nmでの厚み位相差Rth(550)が−100nmになるように塗工時に流量調整してダイヘッドコーティング方式で配向膜上に塗布し、液晶組成物を成膜した。その後、表2に示す乾燥温度で120秒乾燥させた後に紫外線(UV)を照射して位相差層を形成して位相差フィルム乃至転写用積層体を得た。
厚み位相差値の測定は、位相差層を粘着付きガラスに転写して、王子計測機器(株)社製 KOBRA−WRを用いて測定した。
【0178】
<面内均一性評価>
上記で得られた位相差フィルム乃至転写用積層体の位相差層を粘着付きガラスに転写して、王子計測機器(株)社製 KOBRA−WRを用い、波長550nmの光の位相差値Rthを測定した。位相差層の表面に10cm角の範囲を設定し、当該範囲内で10点ずつ測定を行い、得られた位相差値の最大値と最小値との差(ΔRth)により、面内均一性を評価した。結果を表2に示す。
(評価基準)
A:ΔRthが2nm以下であった。
B:ΔRthが2nm超過3nm以下であった。
C:ΔRthが3nm超過であった。
上記面内均一性評価が、A又はBであれば、位相差値の面内均一性に優れている。
【0179】
<折り曲げ評価>
上記で得られた位相差フィルム乃至転写用積層体をそれぞれ50mm×100mmの試験片とし、マンドレル屈曲試験器に当該試験片を塗膜面が外側になるようにセットし、直径2mmのマンドレルを用いて折り曲げ、割れが生じるまでに折り曲げた回数で折り曲げ耐性を評価した。結果を表2に示す。
(評価基準)
A:10万回以上折り曲げても割れが生じなかった。
B:5万回以上10万回未満の折り曲げで割れが生じた。
C:5万回未満の折り曲げで割れが生じた。
上記折り曲げ評価が、A又はBであれば、曲げ耐性に優れている。
【0180】
【表2】
【0181】
[結果のまとめ]
表2の結果から、L
1又はL
1’で表される連結基の炭素原子数が異なる、2種以上の前記一般式(I)で表される構成単位と、液晶性部分を含む側鎖を有する液晶性構成単位とを有する本開示の側鎖型液晶ポリマーを含む、実施例1〜23の位相差フィルムは、位相差値の面内均一性に優れ、曲げ耐性にも優れていることが明らかとなった。