(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法によれば、飛石等による施工機械の損傷を防止できるものの、施工機械を切羽から50m〜100m程度離間して配置する作業が煩雑である。また、構築対象が長距離トンネルである場合に、ズリ出し作業の高速化を図るべく導入される連続ベルトコンベアシステムのクラッシャーも、切羽から50m〜100m程度離間して配置することとなる。すると、切羽近傍からクラッシャーに至るズリの搬送距離が長くなるため、連続ベルトコンベアシステムを導入することの利点を活かすことができない。
【0006】
さらに、特許文献1に開示された方法では、発破掘削により生じる飛石や粉塵のトンネル坑内への拡散を防止することができず、除去作業に多大な時間を要する。
【0007】
これら粉塵対策として一般に、伸縮ダクトによる吸引補修方式にて切羽近傍を換気する方法が知られている。しかし、伸縮ダクトに接続する集塵機も、上記の連続ベルトコンベアシステムのクラッシャーと同様に、切羽から十分な離間距離を確保して設置しなければならず、伸縮ダクトの盛替作業が必要となり作業が煩雑となる。
【0008】
一方、特許文献2の発破防護装置によれば、発破掘削により生じる飛石や粉塵、後ガスを膨張させたバルーンを用いて切羽近傍の空間を封じ込めることができる。しかし、バルーンを支持するための台車やバルーンに空気を送り出すための送風機や発電機等の装置が必要となり装備が過大となる。また、発破防護装置の搬出入やバルーンの膨張および収縮に係る作業等、発破防護に要する作業工程が増えることに伴って施工期間が長期化しやすい。
【0009】
さらに、膨張させたバルーンは、その外周面をトンネルの壁面に密着させることで両者の間に摩擦を発生させておき、バルーンが発破掘削により生じる爆風を受けた際にはこの摩擦で抵抗する。このため、バルーン内に空気を供給する際には、その膨張量を十分に管理する必要があり作業が煩雑となりやすい。
【0010】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、発破掘削方式にてトンネルを掘進する際に良好な作業環境を確保しつつ、生産性の向上を図ることの可能な防護扉および防護扉を用いたトンネル坑内の発破防護方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため本発明の防護扉は、発破掘削方式にてトンネルを掘削する際に用いる防護扉であって、トンネルの切羽と対向する表面側に、発破掘削時に生じる飛散物を受ける飛散物受面を備える防護扉本体と、該防護扉本体の背面側に設置され、
トンネル軸線と直交する断面が門型に形成されトンネル軸線方向に移動自在なガントリーの切羽対向面と、前記防護扉本体とを接続するための接続部材と、を備え、前記防護扉本体は、
その外形が前記ガントリーのトンネル軸線と直交する断面の
外形より大きく、前記トンネルの内空断面より小さく形成されるとともに、
前記飛散物受面を切羽に対向させた状態で前記ガントリーの切羽対向面より前方の切羽側に配置されることを特徴とする。
【0012】
上述する本発明の防護扉によれば、発破掘削時に生じる飛石や粉塵等の飛散物を切羽と防護扉本体にて閉塞された空間内に封じ込めて、トンネル坑内における広い範囲への拡散を防止することができる。これにより、良好な作業環境の確保が可能になるとともに、飛石や粉塵等の飛散物の撤去および坑内換気に係る作業効率を向上することが可能となる。さらに、トンネル坑内の配管や電気設備の破損を防止することもでき、作業空間の安全性を図ることが可能となる。
【0013】
また、発破掘削作業時に、連続ベルトコンベアシステムのクラッシャーを防護扉本体の背面側近傍に待機させておくことができるため、発破掘削終了後に防護扉本体を収納してズリ出し作業を行う際には、クラッシャーを容易に移動させて切羽にほど近い位置に配置できる。これにより、クラッシャーを飛石の到達範囲外まで退避させる場合と比較して、ホイールローダーによる切羽からクラッシャーまでのズリの搬送距離を短縮でき、掘進速度の高速化を図ることが可能となる。
【0014】
さらに、防護扉をガントリーに設置することから、ガントリーの作業ステージに様々な施工機械を搭載し待機させておくことができる。これにより、集塵機を搭載すれば、発破掘削終了後に粉塵を吸引するための伸縮ダクトの盛替作業を省略でき、吹付けマニピュレータを搭載すれば、切羽上半の発破掘削終了後に二次吹付け作業を実施しつつ、ガントリーの内空部を利用してホイールジャンボを搬入し、切羽下半に対する装薬のための削孔作業を並行して実施できる。
【0015】
このように、トンネル施工に係る作業工程の省略や作業時間の短縮化を図ることができるため、トンネル施工に係る生産性を大幅に向上することが可能となる。また、トンネル坑内における照明設備の設置や風管の延長等の高所作業を、ガントリーの作業ステージを利用して実施できるため、トンネル施工に係る作業効率及び安全性を向上することも可能となる。
【0016】
本発明の防護扉は、前記防護扉本体が、トンネル軸線と直交する方向に隣り合う一対の主扉部材と、該主扉部材の上面およびトンネル壁面と対向する外側面各々から出没自在な複数の副扉部材を備えるとともに、前記接続部材が、一対の前記主扉部材各々を、前記ガントリーのトンネル軸線と直交する方向に隣り合う一対の脚部各々に接続させる位置に対をなして配置され、該主扉部材をトンネル軸線と直交する状態から前記ガントリーの内空側面に沿うトンネル軸線に平行な状態に水平回動させるヒンジ機構と、前記ガントリーの内空側面に沿うトンネル軸線に平行な状態の前記主扉部材を、前記ガントリーの内空部から切羽に向かって出没移動させるスライド機構と、を備えることを特徴とする。
【0017】
上述する本発明の防護扉によれば、発破掘削時には防護扉本体を展開し、その他の作業時には防護扉本体をガントリーの内空部に収納できるため、トンネル坑内の作業スペースを侵すことがなく、トンネル施工に係る作業を妨げることがない。
【0018】
本発明の防護扉を用いたトンネル坑内の発破防護方法は、前記防護扉本体の前記飛散物受面を、切羽に対向させた後、該防護扉本体とトンネル壁面との隙間を覆うように、トンネル軸線方向に連通する複数の孔が備えられた多孔形成部材を設置することを特徴とする。
また、本発明の防護扉を用いたトンネル坑内の発破防護方法は、前記ガントリーの内空側面に沿うトンネル軸線に平行な状態の一対の前記主扉部材を、前記スライド機構を介して前記ガントリーの内空部から切羽に向けて突出させた後、該主扉部材各々を、前記ヒンジ機構を介してトンネル軸線と直交するよう水平回動させ、隣り合う該主扉部材どうしを当接させるとともに該主扉部材各々から複数の前記副扉部材を突出させて前記防護扉本体を展開し、前記飛散物受面を切羽に対向させた後、該防護扉本体とトンネル壁面との隙間
を覆うように、トンネル軸線方向に連通する複数の孔が備えられた多孔形成部材を設置することを特徴とする。
【0019】
本発明の防護扉を用いたトンネル坑内の発破防護方法によれば、防護扉本体とトンネル壁面との間に隙間を設けて多孔形成部材にて覆うことから、発破掘削により生じる飛石や粉塵等の飛散物を切羽と防護扉本体と多孔形成部材とによる閉塞空間内に封じ込めつつ、爆風を逃すことができる。これにより、発破掘削時に防護扉からガントリーに伝達される衝撃が抑制されるため、トンネル掘削に用いる施工機械や仮設備をガントリーに対して安全に搭載することができる。
【0020】
本発明のガントリーは、本発明の防護扉が、切羽対向面に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、防護扉を構成する防護扉本体と切羽との間の閉塞空間内に、発破掘削時に生じる飛石や粉塵等の飛散物を封じ込めることができるため、トンネル坑内に良好な作業環境を確保することが可能になる。また、ガントリーを利用して防護扉本体の背面側近傍にトンネル施工に用いる施工機械や仮設備を配置し待機させることができるため、発破掘削終了後に防護扉本体を収納した際には、これら施工機械や仮設備を切羽にほど近い位置に配置でき、トンネル施工に係る生産性を大幅に向上することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、トンネル施工に用いる施工機械や仮設備を搭載可能なガントリーに対して防護扉を設置し、この防護扉を利用して発破掘削時に生じる飛石や粉塵等の飛散物を封じ込めるものである。以下に、
図1〜
図14を参照して、防護扉および防護扉を用いたトンネル坑内の発破防護方法に係る実施の形態を説明するが、これに先立ち、防護扉が設置されるガントリーの概略を、
図1〜
図2を用いて説明する。
【0024】
図1の側面図および
図2の正面図で示すように、ガントリー11は、トンネル軸線Oと直交する断面が門型形状の門型架台であり、下部に複数の走行車輪114が設置され、両側面の下部近傍には複数のアウトリガー115が装備されている。これにより、トンネル軸線O方向に延在するレールR上を自在に移動できるとともに、アウトリガー115を鉛直下方向に伸長させることで、安全に停止することができる。
【0025】
また、ガントリー11は、切羽Fから坑口に連通する内空部112を備えており、トンネル施工に使用する重機や車両等が通行可能となっている。また、内空部112の上方に作業ステージ113を備えており、作業ステージ113上で高所作業を実施することが可能となっている。そして、これら作業ステージ113上およびガントリー11の周囲には、トンネル施工に用いる施工機械12、及び仮設備13が装備されている。
【0026】
ガントリー11の周囲に装備される施工機械12としては、少なくとも
図2の正面図で示すように、ガントリー11の内空部112を自在に移動し、切羽Fおよびトンネル壁面Tに穿孔を設けるホイールジャンボ等の穿孔機械121、ガントリー11に対して並列配置される連続ベルトコンベアシステムが挙げられる。
【0027】
なお、連続ベルトコンベアシステムは、掘削により発生したズリをトンネル坑外へ搬出するための一連の作業を連続して実施することの可能なシステムとして、長距離トンネルを施工する際に一般に用いられている。本実施の形態では、連続ベルトコンベアシステムに少なくとも、ズリを破砕するクラッシャー122と、これら破砕後のズリをトンネル坑外へ搬送するテールピース台車およびベルトコンベア装置(図示せず)を備えている。
【0028】
また、ガントリー11の作業ステージ113上に搭載される施工機械12として、トンネル壁面Tに対して、コンクリート吹付けを行うためのコンクリート吹付けマニピュレータ123、支保工14を据え付けるための支保工建込み用エレクター装置124、および作業員が高所作業を行う際に使用するマンゲージ125が挙げられ、これらは切羽Fと対向する位置に配置可能なように装備される。
【0029】
一方、仮設備13としては、少なくとも発破掘削時に発生する粉塵を吸引する吸引ダクト131および吸引ダクト131に接続される集塵機(図示せず)、切羽Fの近傍に散水する散水装置132(
図10を参照)、切羽Fの近傍に空気を送風する風管133、その他照明等の電気設備を装備している。そして、吸引ダクト131の吸引口、散水装置132の散水ノズルおよび風管133の排気口は、ガントリー11の作業ステージ113上であって、切羽Fと対向する位置に装備されている。
【0030】
このような構成を有するガントリー11の切羽対向面111には、発破掘削時に生じる飛石や粉塵等の飛散物を封じ込める閉塞空間を切羽Fとの間に形成するための、防護扉1が設置されている。
【0031】
防護扉1は、
図10で示すように、切羽Fと対向する表面側に発破掘削時に生じる爆風や飛石等に飛散物を受ける飛散物受面21を備える防護扉本体2と、防護扉本体2の裏面側に備えられ、ガントリー11の切羽対向面111に接続するための接続部材5と、を備えている。
【0032】
防護扉本体2は、
図3の正面図で示すように、一対の主扉部材3と、主扉部材3から出没自在な複数の副扉部材4を備えており、副扉部材4は、縦方向副扉部材41と横方向副扉部材42とを備えている。これらはいずれも、発破掘削時に生じる爆風や飛石を受けた場合にも、破壊しない程度の強度を有する鋼材により作製された板状部材により構成されている。
【0033】
一対の主扉部材3は、
図4の平面図で示すように、ガントリー11の切羽対向面111より前方において、トンネル軸線と直交して並ぶように配置され、隣り合う内側面32どうしが互いに接する構成となっている。また、主扉部材3各々の内側面32は、平面視でトンネル軸線Oに対して傾斜して成形されており、発破掘削時に生じる粉塵が目地部に容易に侵入できない構成となっている。
【0034】
副扉部材4を構成する縦方向副扉部材41は、
図4で示すように、主扉部材3の内方に収納されており、油圧シリンダー411を介して主扉部材3の上面34に設けられた開口から、
図3で示すように、トンネルの上方に向けて出没自在となっている。一方、副扉部材4を構成する横方向副扉部材42も、
図4で示すように、主扉部材3の内方に収納されており、
図5で示すように、油圧シリンダー421を介して主扉部材3のトンネル壁面Tと対向する外側面33に設けられた開口から、出没自在となっている。
【0035】
これら縦方向副扉部材41と横方向副扉部材42とを収納した状態の主扉部材3は、
図6で示すように、ガントリー11の中空部112に挿入可能な高さに形成され、各々の裏面側には、
図4で示すように、ガントリー11と接続するための接続部材5が設置されている。これら一対の接続部材5は、一対の主扉部材3をそれぞれ、ガントリー11の切羽対向面111を形成しトンネル軸線と直交する方向に隣り合う一対の脚部1111各々(
図2を参照)に接続している。
【0036】
このように配置される一対の接続部材5はそれぞれ、スライド機構51とヒンジ機構52とを備えている。ヒンジ機構52は、
図4及び
図7(b)の平面図で示すように、主扉部材3を、トンネル軸線Oと直交する状態からガントリー11の内空側面114、115に沿うトンネル軸線Oに平行な状態に水平回動させるものである。また、スライド機構51は、
図7(a)で示すように、トンネル軸線Oに平行な状態の主扉部材3を、ガントリー11の内空部112から切羽Fに向かって出没移動させるものである。
【0037】
具体的には、スライド機構51は、水平方向に延びるガイドレール511と、ガイドレール511上を摺動するスライダー512を備え、ガイドレール511が、主扉部材3の裏面側に設置されている。一方、スライダー512は、ヒンジ機構52の主扉部材側ピン支持部材523に設置されている。
【0038】
ヒンジ機構52は、鉛直方向に延在する棒状のヒンジピン521と、該ヒンジピン521を回転自在に嵌合するヒンジ孔を各々備えたガントリー側ピン支持部材522および主扉部材側ピン支持部材523を備え、ガントリー側ピン支持部材522が、ガントリー11の切羽対向面111を形成する脚部に設置されている。
【0039】
したがって、
図4で示すように、ガントリー11の切羽対向面111の前方においてトンネル軸線と直交した状態で配置された主扉部材3は、ヒンジ機構52を介して
図7(b)で示すように、水平方向に回動する。これにより、一対の主扉部材3は、ガントリー11の内空部112を挟んだ一方の内空側面114および他方の内空側面115にそれぞれに沿うトンネル軸線Oと平行な状態で配置される。
【0040】
なお、主扉部材3の水平回動は、主扉部材3の裏面側とガントリー11の内空側面との間に配置され、水平方向に伸縮する油圧シリンダー35により行われる。油圧シリンダー35は、
図4で示すように、一端がガントリー11の内空側面に対して水平方向の回動を自在に設置され、他端が主扉部材3に設けたスライド機構51のガイドレール511上を摺動するシリンダー用スライダー513に対して水平方向の回動を自在に設置される。
【0041】
そして、トンネル軸線Oと平行な状態で配置される主扉部材3の裏面側に設置されたスライド機構51のガイドレール511は、トンネル軸線Oと平行になる。また、先にも述べたように、ヒンジ機構52の主扉部材側ピン支持部材523は、スライド機構51のスライダー512に設置されており、主扉部材3に固着されていない。このため、一対の主扉部材3は各々
図7(a)で示すように、ガントリー11の内空部112における一方の内空側面114および他方の内空側面115に沿って、トンネル軸線O方向に出没移動する。
【0042】
これにより、発破掘削時以外のトンネル施工作業時には、縦方向副扉部材41と横方向副扉部材42とを収納した状態の主扉部材3、つまり防護扉本体2を、ガントリー11の内空部112に収納できる。このとき、防護扉本体2によりガントリー11の内空部112が閉塞されることはなく、またトンネル坑内の作業スペースが侵されることもない。
【0043】
一方で、発破掘削時には、主扉部材3をガントリー11の切羽対向面111の前方でトンネル軸線Oと直交して配置するとともに、縦方向副扉部材41と横方向副扉部材42を突出させることで防護扉本体2を展開し、
図10で示すように、発破掘削により生じる飛石や粉塵等の飛散物を封じ込める閉塞空間を切羽Fとの間に形成できる。
【0044】
上述する防護扉本体2の展開方法は、まず、
図7(a)で示すように、ガントリー11の内空部112に収納されている一対の主扉部材3各々を、
図7(b)で示すように、スライド機構51を介してガントリー11の内空部112から切羽Fに向けて突出させる。
【0045】
次に、トンネルの内空部112から突出した状態の一対の主扉部材3各々を、ヒンジ機構52を介して水平方向に回動させてトンネル軸線Oと直交させ、
図4で示すように、隣り合う内側面32どうしを当接させる。
【0046】
最後に、
図5で示すように、主扉部材3の外側面33から横方向副扉部材42を突出させ、
図3で示すように、主扉部材3の上面34から縦方向副扉部材41を突出させる。これにより、主扉部材3と副扉部材4とによりなる防護扉本体2をガントリー11の切羽対向面111の前方で展開することができ、防護扉本体2の飛散物受面21は切羽Fと対向する。
【0047】
ところで、上記の展開方法にて展開された防護扉本体2は、
図3で示すように、飛散物受面21がガントリー11のトンネル軸線Oと直交する断面より大きく、トンネルの内空断面より小さい面積に形成されている。これは、発破掘削により生じる爆風を逃がすことを目的としたものであり、本実施の形態では、これら防護扉本体2とトンネル壁面Tとの間の隙間に、爆風を逃がしつつ発破掘削により生じる飛石や粉塵等の飛散物を受けることの可能な飛散防止部材6が設置されている。
【0048】
こうすると、切羽Fと防護扉本体2と飛散防止部材6にて閉塞された空間内に、発破掘削により生じる飛石や粉塵等の飛散物を封じ込めつつ、爆風を逃がして防護扉1からガントリー11に伝達される衝撃を抑制することができる。これにより、トンネル掘削に用いる施工機械12や仮設備13を、ガントリー11に対して安全に搭載することができる。
【0049】
なお、飛散防止部材6としては、エキスパンドメタルやネット等、トンネル軸線O方向に連通する孔を備え、飛石を受けても破壊することのない部材であれば、いずれを採用してもよい。
【0050】
また、防護扉本体2には、
図3で示すように、ガントリー11の作業ステージ113に配置されている吸引ダクト131の吸引口を開閉する開閉ゲート22が設けられている。開閉ゲート22は、縦方向副扉部材41の吸引ダクト131の吸引口と対向する範囲に設けた開口221と、開口221を覆うことの可能な大きさのゲート部材222と、ゲート部材222を上下動させるための油圧シリンダー223とを備えている。
【0051】
そして、ゲート部材222と油圧シリンダー223は、開口221の下方に位置する主扉部材3に収納されており、主扉部材3の上面34に設けられた開口から油圧シリンダー223を介してゲート部材222出没させることにより、開閉ゲート22の開口221を開閉する。
【0052】
上述する構成の防護扉1を用いたトンネル坑内の発破防護方法を、発破掘削方式にてトンネルを掘進するトンネル施工方法と併せて、以下に詳述する。
【0053】
まず、
図8で示すように、防護扉1を収納した状態のガントリー11を、切羽Fから30mの位置に配置する。そして、ガントリー11の内空部112を経由して穿孔機械121を切羽Fの前面に据え付け、切羽Fの上半に対して装薬のための削孔を行う。なお、ガントリー11には、トンネル施工に用いる施工機械12及び仮設備13が搭載されている。
【0054】
この後、ガントリー11の内空部112を経由して穿孔機械121を退避させるとともに、ガントリー11を切羽Fから20mの位置に前進させる。併せて、ガントリー11とトンネル壁面Tとの間に、クラッシャー122が防護扉本体2の背面近傍に位置するようにして、連続ベルトコンベアシステムをガントリー11と並列配置させておく。
【0055】
次に、防護扉本体2を用いたトンネル坑内の発破防護方法として、まず、
図9で示すように、先に述べた手順で防護扉本体2を展開し、飛散物受面21を切羽Fに対向させる。次に、防護扉本体2とトンネル壁面Tとの隙間に飛散防止部材6を設置するとともに、吸引ダクト131の吸引口を覆う開閉ゲート22の開口221を閉じる。この後、切羽Fに対して発破掘削を実施する。
【0056】
切羽Fに発破をかけたのち、直ちに開閉ゲート22の開口221を開いて吸引ダクト131の吸引口を切羽Fに対向させ、切羽Fと防護扉本体2および飛散防止部材6との間の閉塞空間に封じ込めた粉塵を、吸引ダクト131を介して集塵機にて除去する。
【0057】
また、
図10で示すように、防護扉本体2とトンネル壁面Tとの間から散水装置132の散水ノズルを臨ませて、上記の閉塞空間に向けて散水して除塵作業を行う。この後、防護扉1をガントリー11に収納したうえで、このガントリー11を切羽から30mまで後退させる。こうして、防護扉本体2を用いたトンネル坑内の発破防護方法を終了する。
【0058】
これにより、トンネル坑内に設置されている配管や電気設備やトンネル施工に用いる施工機械12等の損傷が、防護扉1を用いて確実に防止される。また、飛石や粉塵等の飛散物の撤去および坑内換気に係る作業効率を向上でき、さらには、ガントリー11に吸引ダクト131を搭載しているため、吸引ダクト131の盛替作業をも不要にできる。
【0059】
この後、
図11で示すように、ズリを運搬するホイルローダ15と、ホイルローダ15からズリが供給される連続ベルトコンベアシステムのクラッシャー122を、ガントリー11を後退させたことにより切羽Fとガントリー11の切羽対向面111との間に形成された空間に移動させる。併せて、クラッシャー122から排出される破砕済みのズリがベルトコンベア装置に投下されるようテールピース台車を適宜移動させ、連続ベルトコンベアシステムの位置調整を行い、ズリ出しを開始する。
【0060】
このように、連続ベルトコンベアシステムのクラッシャー122を、防護扉1の背面近傍に待機させておくことで、発破掘削終了後にズリ出し作業を行う際には、切羽Fにほど近い位置に配置できる。これにより、ホイルローダー15による切羽Fからクラッシャー122までのズリの搬送距離を大幅に短縮でき、掘進速度の高速化を図ることが可能となる。
【0061】
なお、本実施の形態では、本砕き用のクラッシャー122の前方に粗砕き用クラッシャー1221を配置し、ズリを連続コンベアベルトにて搬送可能な大きさに粉砕しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、本砕き用のクラッシャー122のみを採用してもよい。
【0062】
ズリ出しの終了後、ホイルローダ―15をガントリー11の内空部112を経由して退避させるとともに、本砕き用のクラッシャー122および粗砕き用クラッシャー1221をガントリー11の側面とトンネル壁面Tとの間に移動させる。また、ガントリー11を切羽Fから10mの距離まで前進させる。
【0063】
そして、
図12で示すように、ガントリー11の作業デッキ113に搭載したコンクリート吹付けマニピュレータ123を用いてトンネル壁面Tに対するコンクリートの一次吹付けを行う。この作業の一方で、穿孔機械121をガントリー11の内空部112における切羽Fの近傍に待機させておく。一次吹付けが終了したところで、
図13で示すように、支保工建込み用エレクター装置124を用いて支保工14の建込みを行う。
【0064】
この後、
図14で示すように、コンクリート吹付けマニピュレータ123を用いてコンクリートの二次吹付けを行うが、二次吹付けに係る作業と並行して、ガントリー11の内空部112に待機させていた穿孔機械121を切羽Fの前面に設置し、切羽Fの下半に対して装薬のための削孔を行う。これにより、トンネル施工に係る作業時間の短縮化を図ることができる。
【0065】
穿孔作業が終了したところで、穿孔機械121を利用してトンネル壁面Tにロックボルトを打設するとともに、ガントリー11を切羽から30mの距離まで後退させておく。ロックボルトの設置作業終了後、再度、穿孔機械121を利用して切羽Fの上半に対して装薬のための削孔を行う。
【0066】
以降、上述した作業を繰り返しながら、発破掘削方式によるトンネルの掘進作業を順次継続し、所望の延長距離を有するトンネルを完成させる。
【0067】
上述する防護扉1および防護扉1を用いたトンネル坑内の発破防護方法によれば、発破掘削方式にてトンネルを掘進する場合であっても、防護扉1を構成する防護扉本体2と切羽Fとの間の閉塞空間内に、発破掘削時に生じる飛石や粉塵等の飛散物を封じ込めることができるため、トンネル坑内に良好な作業環境を確保することが可能となる。
【0068】
また、ガントリー11を利用して防護扉本体2の背面側近傍にトンネル施工に用いる施工機械12や仮設備13を配置して待機させておくことができる。これにより、発破掘削終了後に防護扉本体2を収納した際には、これら施工機械12や仮設備13を、切羽Fにほど近い位置に配置でき、これらを飛石の到達範囲外まで退避させる場合と比較して、トンネル施工に係る生産性を大幅に向上することが可能となる。
【0069】
本発明の防護扉1および防護扉1を用いたトンネル坑内の発破防護方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0070】
例えば、本実施の形態では、防護扉1の防護扉本体2を、一対の主扉部材3と2体の縦方向副扉部材41および2体の横方向副扉部材42よりなる副扉部材4とを備える構造とした。しかし、主扉部材3及び副扉部材4を構成する縦方向副扉部材41と横方向副扉部材42は、いずれも上記の数量に限定されるものではなく、例えば、縦方向副扉部材41の数量を増加させてもよい。また、主扉部材3から副扉部材4を、油圧シリンダー411、412を介して出没させる構造としたが、出没させる構造もこれに限定されるものではない。
【0071】
本実施の形態では、防護扉1に防護扉本体2と接続部材5を備え、接続部材5を介して防護扉本体2をガントリー11に接続させたが、接続部材5に加えてダンパー等の衝撃吸収部材を防護扉本体2とガントリー11との間に介装してもよい。こうすると、発破切削時に発生する爆風により、防護扉1からガントリー11に伝達される衝撃をさらに抑制することが可能となる。
【0072】
なお、衝撃吸収部材は、発破切削時に発生する爆風に起因する衝撃を抑制できる部材であればいずれを採用してもよく、また、接続部材5と一体でも別体でもよく、さらには、設置位置もなんら限定されるものではない。
【0073】
さらに、防護扉1が設置されるガントリー11は、上記の構成に限定されるものではなく、トンネル施工に用いられている門型架台であればいずれを採用してもよく、施工機械12および仮設備13についても、上記の構成に限定されることなく、いずれの機器を備えていてもよい。