(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガス導入口と、前記ガス導入口の下方に形成されたガス排出口と、前記ガス排出口の下方に形成された砂供給口と、前記砂供給口の下方に形成され、堆積された砂を抜き出す砂抜出口とを有し、鉛直方向に延在した本体と、
前記砂抜出口を開閉するバルブと、
前記バルブが前記砂抜出口を閉じている間、前記砂供給口を通じて前記本体に砂を供給し、前記バルブが前記砂抜出口を開いている間、前記本体への前記砂の供給を停止する砂供給部と、
前記砂抜出口を通じて前記本体内から抜き出された砂、および、前記本体内に収容された砂のうち、いずれか一方または両方の砂から熱を回収する熱回収部と、
を備えるスラグ分離装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
(ガス化ガス生成システム100)
図1は、ガス化ガス生成システム100を説明する図である。
図1中、原料、ガス、水蒸気、空気、酸化剤の流れを実線の矢印で、流動媒体(砂)の流れを一点鎖線の矢印で示す。
図1に示すようにガス化ガス生成システム100は、ガス化ガス生成装置110と、スラグ分離装置120と、精製装置130とを含んで構成される。
【0015】
ガス化ガス生成装置110は、原料をガス化させてガス化ガスSGを生成する。ガス化ガスSGは、スラグ分離装置120に導入される。スラグ分離装置120は、ガス化ガスSGに含まれる可燃性ガス(例えば、水素)の一部を燃焼させる。これにより、ガス化ガスSGに含まれる灰分が溶融されてスラグが生成される。こうして、スラグ分離装置120は、ガス化ガスSGから灰分を除去してガス化ガスPGを生成する。ガス化ガスPGは、精製装置130に送出される。精製装置130は、ガス化ガスPGを精製する。以下、ガス化ガス生成装置110、スラグ分離装置120の具体的な構成について説明する。
【0016】
(ガス化ガス生成装置110)
ガス化ガス生成装置110は、燃焼炉112と、サイクロン114と、ガス化炉116とを含んで構成される。ガス化ガス生成装置110は、循環流動層式ガス化システムである。ガス化ガス生成装置110は、燃焼炉112、サイクロン114、ガス化炉116に、熱媒体としての流動媒体を循環させている。流動媒体は、粒径が300μm程度の珪砂で構成される。
【0017】
燃焼炉112は、筒形状(例えば、円筒形状)である。燃焼炉112には、ガス化炉116から流動媒体および残渣(原料の残渣)が導入される。また、燃焼炉112には、空気が供給される。燃焼炉112では、残渣(燃料)が燃焼されて、流動媒体が900℃〜1000℃程度に加熱される。燃焼炉112で加熱された流動媒体および燃焼排ガスは、サイクロン114に送出される。
【0018】
サイクロン114は、円筒部と、縮径部とで構成される。円筒部は、円筒形状であり、軸が鉛直方向に配された同径の部材である。縮径部は、円筒部の下端に連続した部材である。縮径部は、鉛直上方から鉛直下方に向かうに従って径が漸減する部材である。サイクロン114は、燃焼炉112から導入された流動媒体と燃焼排ガスとの混合物を固気分離する。サイクロン114で分離された高温の流動媒体は、サイクロン114の底部を通じてガス化炉116に導入される。
【0019】
ガス化炉116は、例えば、気泡流動層(バブリング流動層)ガス化炉である。ガス化炉116には、流動媒体と水蒸気とが導入され、内部に流動媒体の流動層が形成される。また、ガス化炉116には、原料が投入される。投入された原料は、流動媒体が有する700℃〜900℃程度の熱と、水蒸気とによってガス化(水蒸気ガス化)され、ガス化ガス(合成ガス)SGが生成される。生成されたガス化ガスSGは、スラグ分離装置120に送出される。一方、ガス化炉116において流動化された流動媒体は、燃焼炉112に戻される。
【0020】
このように、本実施形態のガス化ガス生成装置110において、流動媒体は、燃焼炉112、サイクロン114、ガス化炉116を、この順に移動し、再度燃焼炉112に導入される。つまり、流動媒体は、燃焼炉112、サイクロン114、ガス化炉116を循環することとなる。
【0021】
(スラグ分離装置120)
図2は、スラグ分離装置120を説明する図である。
図2中、ガス、スラグ、砂等の物質の流れを実線の矢印で示す。
【0022】
図2に示すように、スラグ分離装置120は、ガス処理部210と、砂処理部250とを含んで構成される。ガス処理部210は、本体220と、砂供給部230と、酸化剤導入部240と、熱回収部242とを含んで構成される。
【0023】
本体220は、鉛直方向に延在した部材であり、上部同径部222と、上部縮径部224と、下部同径部226と、下部縮径部228とで構成される。上部同径部222は、筒形状(例えば、円筒形状)であり、軸が鉛直方向に配された同径の部材である。上部同径部222の上部側壁には、ガス導入口222aが形成される。上記ガス化ガス生成装置110で生成されたガス化ガスSGは、ガス導入口222aを通じてガス処理部210内に導入される。
【0024】
上部縮径部224は、上部同径部222の下端に連続した部材である。上部縮径部224は、鉛直上方から鉛直下方に向かうに従って径が漸減する部材である。
【0025】
下部同径部226は、筒形状(例えば、円筒形状)であり、軸が鉛直方向に配された同径の部材である。下部同径部226の上面には開口226aが形成されている。下部同径部226の開口226aは、上部縮径部224の下端に接続される。また、下部同径部226の側壁には、ガス排出口226b、砂供給口226cが形成されている。砂供給口226cは、ガス排出口226bの下方に形成される。
【0026】
下部縮径部228は、下部同径部226の下端に連続した部材である。下部縮径部228は、鉛直上方から鉛直下方に向かうに従って径が漸減する部材である。下部縮径部228の下部には、砂抜出口228aが形成されている。砂抜出口228aには、配管244が接続されている。配管244には、バルブ246が設けられている。
【0027】
砂供給部230は、本体220内に砂を供給する。これにより、本体220(下部縮径部228、下部同径部226)内に、砂層SS(砂の層(堆積された砂))が形成される。砂供給部230は、ホッパ232と、配管234と、バルブ236とを含んで構成される。ホッパ232は、例えば、常温(25℃程度)で砂を貯留する。砂は、例えば、珪砂で構成される。砂は、上記流動媒体と同じであってもよい。ホッパ232は、底面が砂供給口226cより上方に位置するように設けられる。配管234は、ホッパ232と砂供給口226cとを接続する。バルブ236は、配管234に設けられる。
【0028】
酸化剤導入部240は、本体220(上部同径部222)の上部に酸化剤(例えば、酸素)を導入する。酸化剤が導入されると、本体220内において、ガス化ガスSG中の可燃性ガス(例えば、水素)の一部が燃焼する(酸化される)。これにより、ガス化ガスSGが900℃〜1500℃程度に昇温されて、ガス化ガスSGに含まれるタールが改質(酸化改質)される(改質処理)。また、ガス化ガスSGに含まれる灰分は、ガス化ガスSGの燃焼熱によってスラグMSとなり、自重でガス化ガスSGから分離される。スラグMSが分離されたガス化ガスPGは、ガス排出口226bを通じて、後段の精製装置130に送出される。
【0029】
一方、ガス化ガスSGから分離されたスラグMSは、自重で砂層SSに落下する。そうすると、スラグMSは、砂層SS(砂層SSの表面に位置する砂)に接触することで冷却され固形化される。また、砂層SSは、スラグMSの熱によって加熱される。
【0030】
熱回収部242は、下部同径部226に配される。熱回収部242は、下部同径部226に形成された砂層SS(砂およびスラグMS)の熱を回収する。熱回収部242は、例えば、熱交換器で構成される。熱回収部242で回収された熱は、ガス化ガス生成装置110や精製装置130で利用される。
【0031】
砂処理部250は、除去部252と、搬送部254とを含んで構成される。砂処理部250は、砂抜出口228a、配管244を通じて、本体220内から抜き出された砂からスラグMSを取り除く。砂処理部250は、例えば、砂が通過可能であり、スラグMSが通過困難または通過不可能な孔が複数形成されたふるいで構成される。搬送部254は、スラグMSが取り除かれた砂をホッパ232に搬送する。搬送部254は、例えば、コンベヤで構成される。
【0032】
続いて、バルブ236、246の開閉処理について説明する。まず、スラグ分離装置120による改質処理の開始前のバルブ236、246の開閉処理について説明する。次に、スラグ分離装置120による改質処理中のバルブ236、246の開閉処理について説明する。
【0033】
(改質処理の開始前のバルブ236、246の開閉処理)
改質処理が開始される前、すなわち、ガス化ガスSGの導入が開始される前において、バルブ246が閉弁され、バルブ236が開弁される。そうすると、ホッパ232から、配管234、砂供給口226cを通じて、砂が自重で本体220内に供給される。本体220内に供給された砂は、自重で落下し、下部縮径部228、下部同径部226に充填される。これにより、下部同径部226、下部縮径部228に砂層SSが形成される。なお、砂層SSの高さ(鉛直方向の長さ)が、砂供給口226cの下方の所定の初期高さに到達すると、バルブ236が閉弁される。このように、本体220内に砂層SSが収容された後、スラグ分離装置120にガス化ガスSGおよび酸化剤が導入され、改質処理が開始される。
【0034】
(改質処理中のバルブ236、246の開閉処理)
改質処理中は、所定時間ごとに、砂の一部を交換する交換処理が実行される。ここで、所定時間は、前回交換処理が為されてから(1回目の交換処理を実行する場合には、改質処理が開始されてから)、砂層SSの高さが所定の上限高さに到達するまでの時間である。なお、上限高さは、ガス排出口226bの下端より下方であり、上記初期高さより上方の所定の高さである。
【0035】
交換処理では、まず、バルブ246が開弁される。これにより、本体220内から、砂抜出口228a、配管244を通じて、砂およびスラグMSが抜き出される。そして、砂層SSの高さが所定の下限高さに到達すると、バルブ246が閉弁される。なお、下限高さは、初期高さ未満の高さであり、本体220内と外部とのシール(密閉)が維持できる砂層SSの高さである。つまり、下限高さは、本体220内から外部へのガス化ガスSGの流出、および、外部から本体220への大気の流入を防止できる砂層SSの高さである。続いて、バルブ236が開弁され、ホッパ232から本体220内に砂が供給される。そして、砂層SSの高さが、初期高さに到達すると、バルブ236が閉弁される。こうして、砂の交換処理が実行される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のスラグ分離装置120によれば、砂供給部230を備える構成により、本体220の下部(下部同径部226、下部縮径部228)に砂層SSを充填することができる。これにより、砂層SSでスラグMSを冷却することが可能となる。
【0037】
本体の下端を水封する従来技術では、ガス化ガスSGの熱(輻射熱)で水が蒸発する。したがって、ガス化ガスSGから、蒸発による潜熱が奪われ、ガス化ガスSGの温度が低下してしまうという問題があった。しかし、スラグ分離装置120においてスラグMSを冷却する砂は、水とは異なり、ガス化ガスSGが有する900℃〜1500℃程度の熱で蒸発することはない。このため、蒸発による潜熱が生じない。したがって、従来技術と比較して、ガス化ガスSGの温度低下を抑制することが可能となる。これにより、後段の精製装置130において、ガス化ガスSGから効率よく熱回収を行うことができる。また、従来技術とは異なり、ガス化ガスPGに余計な水蒸気が追加される事態を回避することが可能となる。
【0038】
また、上記交換処理を繰り返し実行することにより、スラグMSを砂の間に介在させることができる。つまり、スラグMSを砂で囲繞することができる。したがって、スラグMSを効率よく冷却することが可能となる。
【0039】
また、除去部252および搬送部254を備える構成により、砂を繰り返し利用することができる。したがって、砂に要するコストを低減することが可能となる。
【0040】
また、熱回収部242を備える構成により、スラグMSの熱(スラグMSによって加熱された砂層SSの熱)を回収することができる。これにより、砂(砂層SS)を冷却することができ、スラグMSの冷却(固形化)を効率よく行うことが可能となる。
【0041】
(変形例)
図3は、変形例のスラグ分離装置320を説明する図である。また、
図3中、ガス、スラグ、砂等の物質の流れを実線の矢印で示す。
図3に示すように、スラグ分離装置320は、ガス処理部330と、砂処理部250とを含んで構成される。ガス処理部330は、本体340と、ガス供給部350と、砂供給部230と、酸化剤導入部240と、熱回収部242とを含んで構成される。本体340は、上部同径部222と、上部縮径部224と、下部同径部346とで構成される。なお、上述したスラグ分離装置120と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0042】
下部同径部346は、筒形状(例えば、円筒形状)であり、軸が鉛直方向に配された同径の部材である。下部同径部346の上面には開口226aが形成されている。下部同径部346の開口226aは、上部縮径部224の下端に接続される。また、下部同径部346の側壁には、ガス排出口226b、砂供給口226cが形成されている。砂供給口226cは、ガス排出口226bの下方に形成される。
【0043】
下部同径部346の下部は、分散板348が設けられる。分散板348は、砂が通過不可能であり、流動化ガスが通過可能な孔が複数形成されている。また、分散板348には、砂抜出口348aが形成されている。砂抜出口348aには、配管244が接続されている。
【0044】
ガス供給部350は、分散板348を通じて、本体340の下部に流動化ガスを供給する。ガス供給部350は、風箱352と、ポンプ354とを含んで構成される。風箱352は、下部同径部346の下方に設けられる。風箱352の上部は、分散板348で覆われる。配管244は、風箱352を貫通する。
【0045】
ポンプ354は、風箱352に流動化ガスを供給する。流動化ガスは、例えば、精製装置130によって精製されたガス化ガスである。ポンプ354によって風箱352に流動化ガスが供給されると、流動化ガスは、分散板348を通過して、下部同径部346に供給される。そうすると、下部同径部346に収容された砂が流動化し、砂の流動層RSが形成される。
【0046】
したがって、スラグMSは、流動層RSに落下した後、砂とともに流動化される。つまり、下部同径部346において、砂とスラグMSとが混合される。これにより、変形例のスラグ分離装置320では、上記スラグ分離装置120と比較して、砂とスラグMSとが効率よく接触することになる。このため、スラグMSを効率よく冷却することが可能となる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0048】
例えば、上記実施形態および変形例において、スラグ分離装置120、320が砂処理部250を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、砂処理部250は必須の構成ではない。
【0049】
また、上記実施形態において、所定時間ごとに交換処理を実行する構成を例に挙げて説明した。しかし、交換処理を連続して実行してもよい。交換処理を連続して実行する場合、砂層SS(または、流動層RS)の高さが、初期高さに維持されるように、バルブ236、246の開度が調整される。
【0050】
また、上記実施形態および変形例において、熱回収部242が本体220、340内に収容された砂から熱を回収する構成について説明した。しかし、熱回収部242は、本体220、340から抜き出された砂およびスラグのうち、いずれか一方または両方から熱を回収してもよい。
【0051】
また、上記実施形態および変形例において、スラグ分離装置120、320が熱回収部242を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、熱回収部242は、必須の構成ではない。
【0052】
また、ガス供給部を、複数の管と、ポンプとで構成してもよい。管は、複数の孔が形成されており、例えば、上記スラグ分離装置120の下部縮径部228に挿入される。ポンプは、管に流動化ガスを供給する。これにより、本体220において、砂の流動層を形成することができる。なお、管に形成された孔は、上記分散板348の孔と同様に、砂が通過不可能であり、流動化ガスが通過可能な大きさである。また、管は、孔が下方に開口されるように、下部縮径部228内に挿入されるとよい。