特許第6972686号(P6972686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972686
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20211111BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20211111BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
   H01L23/12 F
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-117719(P2017-117719)
(22)【出願日】2017年6月15日
(65)【公開番号】特開2019-4049(P2019-4049A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】奥村 宣孝
【審査官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−059778(JP,A)
【文献】 特開2004−022844(JP,A)
【文献】 特開2011−250491(JP,A)
【文献】 特開2006−066895(JP,A)
【文献】 特開2013−110190(JP,A)
【文献】 特開2013−229983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02 − 23/50
H01L 25/00 − 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板に配置され、電源に接続される上側スイッチング素子および接地される下側スイッチング素子が直列に接続された複数のハーフブリッジと、を有し、前記複数のハーフブリッジは並列に配置される半導体装置において、
前記基板の第1面には少なくとも1つの前記上側スイッチング素子が配置され、前記基板における前記第1面と反対側の第2面には前記下側スイッチング素子が配置され、
前記基板には、同一の前記ハーフブリッジに属する前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子とを電気的に接続する経路が設けられており、前記経路は前記基板を貫通する部分を有し
前記基板を、前記第1面と前記第2面との対向する方向から見たとき、
同一の前記ハーフブリッジに属する前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子とは、互いに所定のずれ量だけずれた位置に配置されている半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
同一の前記ハーフブリッジに属する前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子とは、前記複数相のハーフブリッジが並ぶ方向と直交する方向において並んで配置されている半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記上側スイッチング素子および前記下側スイッチング素子は、そのソース電極およびドレイン電極の並ぶ方向が、前記ハーフブリッジにおける前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子との間の配線の延びる方向と一致している半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の半導体装置において、
前記基板には、各相を流れる電流を検出するためのシャント抵抗が配置され、
前記基板を、前記第1面と前記第2面との対向する方向から見たとき、
前記シャント抵抗は、同一の前記ハーフブリッジに属する前記上側スイッチング素子および前記下側スイッチング素子の少なくとも一方に対して、前記複数のハーフブリッジが並ぶ方向と直交する方向において、所定のずれ量だけずれた位置に配置されている半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の半導体装置において、
前記ハーフブリッジを介して給電対象である3相のモータに電力を供給するものであって、
電源から前記上側スイッチング素子を介して前記給電対象へと流れる電流の向きは、前記給電対象から前記下側スイッチング素子を介してグランドへ流れる電流の向きと、反対あるいは直交する方向からずれた向きである半導体装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の半導体装置において、
各スイッチング素子には、前記複数のハーフブリッジが並ぶ方向と直交する方向において2つの面を有しており、前記2つの面には、それぞれソース電極に対応した端子およびドレイン電極に対応した端子が延びており、これらの前記端子は、前記基板を前記第1面と前記第2面とが対向する方向から見たとき、前記経路と重なる位置で前記経路と電気的に接続される半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置は、アシスト力の発生源であるモータを有している。モータは、たとえば駆動回路によって駆動される。駆動回路は、基板上に配置された、3相交流電力を生成するスイッチング素子群により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−195219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示される駆動回路では、各相(U相,V相,W相)の駆動回路の構成要素である電界効果トランジスタ(FET)が基板上に配置されている。基板上にFETを配置する場合、通常、基板の片面において、各相の駆動回路が隣り合うように配置される(比較例としての図6参照)。この場合、たとえばバッテリから供給された電力が、U相の駆動回路を通ってモータへと伝達されたのち、W相の駆動回路を通ってグランドに伝達される。このような経路では、電流が流れる経路の長さ(配線ループ)が最も大きくなり、この配線ループに対する鎖交磁束も大きくなってしまう。そして、駆動回路の鎖交磁束が大きくなると、スイッチングにおけるサージ電圧が大きくなってしまう。また、トルクリップルも大きくなってしまう。このため、駆動回路の鎖交磁束を小さくする方法が求められていた。
【0005】
なお、配線ループが最も大きくなるときに限らず、たとえばバッテリから供給された電力が、U相の駆動回路を通ってモータへと伝達されたのち、V相の駆動回路を通ってグランドに伝達されるような場合についても、鎖交磁束を小さくすることには意義がある。この場合でも、スイッチングにおけるサージ電圧を小さくできるためである。
【0006】
本発明は、鎖交磁束をより小さくできる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成しうる半導体装置は、基板と、前記基板に配置され、電源に接続される上側スイッチング素子および接地される下側スイッチング素子が直列に接続された複数のハーフブリッジと、を有し、前記複数のハーフブリッジは並列に配置される半導体装置において、前記基板の第1面には少なくとも1つの前記上側スイッチング素子が配置され、前記基板における前記第1面と反対側の第2面には前記下側スイッチング素子が配置され、前記基板には、同一の前記ハーフブリッジに属する前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子とを電気的に接続する経路が設けられており、前記経路は前記基板を貫通する部分を有している。
【0008】
まず比較例として、基板の同一面に各相の上側スイッチング素子および下側スイッチング素子を配置しようとすると、あるハーフブリッジの上側スイッチング素子と他のハーフブリッジの上側スイッチング素子との間に、あるハーフブリッジの下側スイッチング素子が配置されてしまう。このため、半導体装置における複数のハーフブリッジの並ぶ方向の長さが長くなってしまう。
【0009】
この点、基板を貫通して基板の両面を電気的に接続する経路が設けられることにより、基板の両面に同一のハーフブリッジに属する上側スイッチング素子および下側スイッチング素子を分けて配置することができる。あるハーフブリッジの上側スイッチング素子と他のハーフブリッジの上側スイッチング素子との間に、あるハーフブリッジの下側スイッチング素子を配置しなくてもよくなる。このため、半導体装置における複数のハーフブリッジの並ぶ方向の長さを短くできる。これにより、半導体装置の配線ループ(配線が設けられる面と直交する方向から見たときの面積)を小さくできるので、鎖交磁束をより小さくすることが可能である。
【0010】
上記の半導体装置において、同一の前記ハーフブリッジに属する前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子とは、前記複数相のハーフブリッジが並ぶ方向と直交する方向において並んで配置されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、基板を貫通して基板の両面を電気的に接続する経路が設けられることにより、基板の両面に同一のハーフブリッジに属する上側スイッチング素子および下側スイッチング素子を分けて配置できる。これにより、同一のハーフブリッジに属する上側スイッチング素子および下側スイッチング素子を複数のハーフブリッジが並ぶ方向において同じ位置に設けたとしても、互いが干渉しない。同一のハーフブリッジに属する上側スイッチング素子および下側スイッチング素子が、複数のハーフブリッジが並ぶ方向と直交する方向において並んで配置されることにより、あるハーフブリッジに属する上側スイッチング素子および下側スイッチング素子に隣接して、他のハーフブリッジの上側スイッチング素子および下側スイッチング素子を配置することも可能になる。このため、半導体装置における複数のハーフブリッジの並ぶ方向の長さをより短くできるので、鎖交磁束をより小さくできる。
【0012】
上記の半導体装置において、前記上側スイッチング素子および前記下側スイッチング素子は、そのソース電極およびドレイン電極の並ぶ方向が、前記ハーフブリッジにおける前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子との間の配線の延びる方向と一致していることが好ましい。
【0013】
比較例として、上側スイッチング素子および下側スイッチング素子のソース電極およびドレイン電極の並ぶ方向が、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との間の配線が延びる方向と直交する場合には、半導体装置における複数相のハーフブリッジの並ぶ方向の長さが長くなってしまう。これは、上側スイッチング素子および下側スイッチング素子のソース電極およびドレイン電極の並ぶ方向から出た配線は、最終的に上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との間の配線の方向に向かう必要があるため、余分な部分が生じてしまうためである。
【0014】
これに対して、ソース電極およびドレイン電極の並ぶ方向が、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との間の配線の方向と一致していれば、余分な部分が生じない分、半導体装置における複数相のハーフブリッジの並ぶ方向の長さをより短くできる。このため、鎖交磁束をより小さくできる。
【0015】
上記の半導体装置において、前記基板を、前記第1面と前記第2面との対向する方向から見たとき、同一の前記ハーフブリッジに属する前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子とは、前記複数のハーフブリッジが並ぶ方向と直交する方向において、互いに所定のずれ量だけずれた位置に配置されていることが好ましい。
【0016】
上記の半導体装置において、前記基板には、各相を流れる電流を検出するためのシャント抵抗が配置され、前記基板を、前記第1面と前記第2面との対向する方向から見たとき、前記シャント抵抗は、同一相の前記上側スイッチング素子および前記下側スイッチング素子の少なくとも一方に対して、前記複数のハーフブリッジが並ぶ方向と直交する方向において、所定のずれ量だけずれた位置に配置されていることが好ましい。
【0017】
これらの構成によれば、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との間が所定のずれ量だけずれていることにより、上側スイッチング素子から放射された熱と、下側スイッチング素子から放射された熱とが重複することを抑制できる。また、上側スイッチング素子および下側スイッチング素子の少なくとも一方に対して、シャント抵抗が所定のずれ量だけずれていることにより、上側スイッチング素子および下側スイッチング素子の少なくとも一方から放射された熱と、シャント抵抗から放射された熱とが重複することを抑制できる。
【0018】
上記の半導体装置において、前記ハーフブリッジを介して給電対象に電力を供給するものであって、電源から前記上側スイッチング素子を介して前記給電対象へと流れる電流の向きは、前記給電対象から前記下側スイッチング素子を介してグランドへ流れる電流の向きと、反対あるいは直交する方向からずれた向きであることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、電源から上側スイッチング素子を介して給電対象へと流れる電流の向きが、給電対象から下側スイッチング素子を介して給電対象へと流れる電流の向きと反対であることにより、両電流により発生する磁束が互いに打ち消しあう。また、電源から上側スイッチング素子を介して給電対象へと流れる電流の向きが、給電対象から下側スイッチング素子を介してグランドへと流れる電流の向きと直交する方向からずれた向きであることにより、両電流により発生する磁束を互いに打ち消しあう成分が発生する。両電流により発生する磁束が互いに打ち消しあう関係にあることにより、鎖交磁束を小さくすることができる。
【0020】
上記の半導体装置において、各スイッチング素子には、前記複数のハーフブリッジが並ぶ方向と直交する方向において2つの面を有しており、前記2つの面には、それぞれソース電極に対応した端子およびドレイン電極に対応した端子が延びており、これらの前記端子は、前記基板を前記第1面と前記第2面とが対向する方向から見たとき、前記経路と重なる位置で前記経路と電気的に接続されることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、半導体装置の配線ループが小さくなるので、鎖交磁束を小さくできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の半導体装置によれば、鎖交磁束をより小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態の駆動回路を用いた車両用駆動装置の概略構成を示す回路図。
図2】(a)は、第1実施形態の駆動回路を基板の上面から見たときの概略構成を示す構造図、(b)は、図2(a)において、W相駆動回路の概略断面を示す断面図。
図3】(a)は、基板に配置された上側MOSと下側MOSとの位置関係について説明する図、(b)は、比較例として、基板に配置された下側MOSとシャント抵抗との位置関係について説明する図。
図4】(a)は、第1実施形態の駆動回路のスイッチング素子の概略構造を示す構造図、(b)は、他の実施形態の駆動回路のスイッチング素子の概略構成を示す構造図、(c)は、他の実施形態の駆動回路のスイッチング素子の概略構成を示す構造図。
図5】(a)は、第1実施形態の駆動回路において、ビア近傍の下側MOSの基板への取り付け構造を示す構造図、(b)は、他の実施形態の駆動回路において、ビア近傍の下側MOSの基板への取り付け構造を示す構造図。
図6】比較例の駆動回路について、駆動回路で発生する鎖交磁束の大きさを説明するための上面図。
図7】(a)は、第1実施形態の駆動回路について、駆動回路で発生する鎖交磁束の大きさを説明する上面図、(b)は、図7(a)の7b−7b断面線に沿ったU相駆動回路およびW相駆動回路を部分的に示した模式断面図。
図8】(a)は、第2実施形態の駆動回路を基板の上面から見たときの概略構成を示す構造図、(b)は、図8(a)において、W相駆動回路の概略断面を示す断面図。
図9】(a)は、他の実施形態の駆動回路を基板の上面から見たときの概略構成を示す構造図、(b)は、図9(a)において、W相駆動回路の概略断面を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
以下、半導体装置としての駆動回路を車両用の駆動装置に適用した第1実施形態について説明する。
【0025】
図1に示す駆動装置1は、車両の操舵系にアシスト力を付与するためのモータ2(給電対象)に電力を供給するためのものである。モータ2としては、3相(U相、V相、W相)のブラシレスモータが採用されている。駆動装置1は、モータ2に電力を供給する駆動回路3と、駆動回路3の動作を制御するマイコン4(マイクロコンピュータ)とを備えている。
【0026】
駆動回路3は、複数のスイッチング素子を有している。駆動回路3は、複数のスイッチング素子をオンまたはオフすることにより、車載されるバッテリ11からの直流電力を3相交流電力に変換する。なお、スイッチング素子としては、MOS−FET(電界効果トランジスタ:metal-oxide-semiconductor field-effect-transistor)が採用される。
【0027】
駆動回路3は、バッテリ側に接続される第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwと、グランド側に接続される第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwとを有している。駆動回路3は、2つのスイッチング素子を1組とする第1〜第3スイッチングアーム13u,13v,13wが並列に接続されることにより形成されている。第1スイッチングアーム13uは、第1上側MOS12Huと第1下側MOS12Luとを直列に接続してなる。第2スイッチングアーム13vは、第2上側MOS12Hvと第2下側MOS12Lvとを直列に接続してなる。第3スイッチングアーム13wは、第3上側MOS12Hwと第3下側MOS12Lwとを直列に接続してなる。
【0028】
第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwのドレイン電極deは、ドレイン配線15u,15v,15wを介してバッテリ11にそれぞれ接続されている。第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwのソース電極seは、ソース配線16u,16v,16wを介してグランドにそれぞれ接続されている。また、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwのソース電極seと、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwのドレイン電極deは、中間配線17u,17v,17wを介して互いに接続されている。そして、中間配線17u,17v,17w(第1〜第3スイッチングアーム13u,13v,13wの中点)は、動力線18u,18v,18wを介してそれぞれ各相のモータコイル2u,2v,2wに接続されている。
【0029】
マイコン4は、ゲート配線19u,19v,19w,22u,22v,22wを介して第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hw及び第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwのゲート電極geにそれぞれ接続されている。マイコン4はたとえば車載される各種のセンサにより検出される操舵トルクやモータ2の回転角などの状態量を取り込み、これらの状態量に基づいてモータ制御信号(電圧信号)を生成する。そして、マイコン4は、各ゲート電極geにモータ制御信号を印加することにより、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hw及び第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwのオンオフを制御する。モータ制御信号に応じて第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hw及び第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwがオンオフすることにより、バッテリ11の直流電力が3相交流電力に変換される。当該変換される3相の交流電力は、動力線18u,18v,18wを介してモータ2へと供給される。
【0030】
また、駆動回路3には、第1〜第3モータリレー14u,14v,14wが設けられている。第1〜第3モータリレー14u,14v,14wは、動力線18u,18v,18wの途中に設けられている。第1〜第3モータリレー14u,14v,14wとしては、たとえばMOS−FETが採用されている。なお、第1〜第3モータリレー14u,14v,14wは、通常オン状態に維持される。これら第1〜第3モータリレー14u,14v,14wは、たとえば駆動回路3において断線故障やショート故障などが生じた場合にオフ状態へと切り替えられる。駆動回路3とモータ2との間の給電経路(動力線18u,18v,18w)が遮断されることにより、駆動回路3からモータ2への給電が遮断される。第1〜第3モータリレー14u,14v,14wのゲート電極geは、それぞれゲート配線20u,20v,20wを介して、マイコン4に接続されている。マイコン4は、電圧信号を印加または停止することにより、第1〜第3モータリレー14u,14v,14wのオンオフを制御する。
【0031】
また、モータ2に実際に付与される電流を検出するために、各相の第1〜第3スイッチングアーム13u,13v,13wとグランドとの間に、それぞれ第1〜第3シャント抵抗21u,21v,21wが設けられている。マイコン4は、第1〜第3シャント抵抗21u,21v,21wに電流が流れる際の両端電圧を検出することで、モータ2の各相に流れる実電流値を検出する。
【0032】
つぎに、駆動回路3の概略構成について図2(a),(b)を用いて説明する。なお、図2(a)では便宜上、基板Bの表面(第1面)に設けられる駆動回路3の構成要素である各配線を、基板Bの裏面(第2面)に設けられる駆動回路3の構成要素よりも大きく図示している。また、図2(a)において、基板Bをその表面側から見たとき、駆動回路3の各構成要素のうち表面にあるものを実線で、裏面にあるものを破線で表している。
【0033】
図2(a)に示すように、駆動回路3の構成要素である、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hw、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lw、第1〜第3モータリレー14u,14v,14w、および第1〜第3シャント抵抗21u,21v,21wは、基板Bの両面に分けて配置されている。基板Bとしては、たとえばプリント基板が採用される。なお、駆動回路3におけるU相の部分をU相駆動回路3uとし、V相の部分をV相駆動回路3vとし、W相の部分をW相駆動回路3wとする。
【0034】
U相駆動回路3u、V相駆動回路3v、およびW相駆動回路3wは、基板BのY方向(図2(a)の上下方向)に配置されている。U相駆動回路3u、およびV相駆動回路3v、ならびにV相駆動回路3vおよびW相駆動回路3wは、Y方向に互いに隣り合って配置されている。
【0035】
基板Bを表面側から見たとき、U相駆動回路3uの構成要素である、第1上側MOS12Hu、第1下側MOS12Lu、第1モータリレー14u、および第1シャント抵抗21uは、X方向(図2(a)の左右方向)に並んで配置されており、互いに電気的に接続されている。なお、詳しくは、第1上側MOS12Huおよび第1モータリレー14uは基板Bの表面においてX方向に並んで配置されており、第1下側MOS12Luおよび第1シャント抵抗21uは基板Bの裏面においてX方向に並んで配置されている。また、V相駆動回路3vおよびW相駆動回路3wも同様に、その各構成要素がX方向に並んで配置され、その各構成要素が互いに電気的に接続されている。
【0036】
つぎに、図2(a),(b)を用いて、駆動回路3(3u,3v,3w)について詳細に説明する。なお、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hw、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lw、および第1〜第3モータリレー14u,14v,14wにおいて、それぞれのドレイン電極deおよびソース電極seは基板B側の面に形成されている。なお、図面の簡略化のために、図2(a)においては、ドレイン電極de、ソース電極se、およびゲート電極geの図示を省略し、図2(b)においては、ゲート電極geの図示を省略している。
【0037】
まず、W相駆動回路3wについて詳しく説明する。
図2(a),(b)に示すように、基板Bの表面には、左方から順に配線Wmw,Wpw1,Wpw2が配置されている。配線Wmwは、モータ2のW相に対応するモータ端子Tmへと繋がっている。なお、配線Wmwは、動力線18wの一部を構成する。また、配線Wpw2は、バッテリ11に接続される直流電力の流れる経路である電源端子Tpへと繋がっている。なお、配線Wpw2は、ドレイン配線15wの一部を構成している。配線Wpw2と配線Wpw1との間には、第3上側MOS12Hwが配置されている。第3上側MOS12Hwのドレイン電極deが配線Wpw2に接続され、第3上側MOS12Hwのソース電極seが配線Wpw1に接続されている。また、配線Wpw1と配線Wmwとの間には、第3モータリレー14wが配置されている。第3モータリレー14wのドレイン電極deが配線Wpw1に接続され、第3モータリレー14wのソース電極seが配線Wmwに接続されている。なお、配線Wpw1は、中間配線17wおよび動力線18wの一部を構成している。
【0038】
基板Bの裏面には、左方から順に配線Wgw1,Wgw2,Wgw3が配置されている。配線Wgw3は、グランド端子Tgへと繋がっている。なお、配線Wgw3は、ソース配線16wの一部を構成している。配線Wgw3と配線Wgw2との間には、第3シャント抵抗21wが配置されている。また、配線Wgw2と配線Wgw1との間には、第3下側MOS12Lwが配置されている。第3下側MOS12Lwのドレイン電極deが配線Wgw2に接続され、第3下側MOS12Lwのソース電極seが配線Wgw1に接続されている。なお、配線Wgw2は、ソース配線16wの一部を構成している。
【0039】
また、駆動回路3を基板Bの表面に直交するZ方向(図2(a)の紙面方向)から見たとき、第3下側MOS12Lwは、配線Wpw1と重なる(基板Bを介して対向する)ように配置されている。また、駆動回路3をZ方向から見たとき、第3上側MOS12Hwは、配線Wgw2と重なるように配置されている。また、駆動回路3をZ方向から見たとき、第3シャント抵抗21wは、配線Wpw2と重なるように配置されている。また、第3上側MOS12Hw、第3下側MOS12Lw、および第3モータリレー14wは、そのソース電極seおよびドレイン電極deの向きがX方向において互いに一致している。
【0040】
基板Bには、配線Wpw1と配線Wgw1とを電気的に接続するビアVwが設けられている。これにより、第3上側MOS12Hwのソース電極seおよび第3モータリレー14wのドレイン電極deと、第3下側MOS12Lwのソース電極seとの間は、ビアVwによって電気的に接続されている。ビアVwとしては、たとえばスルーホール式のビアが採用される。ビアVwは、基板BをZ方向に貫通する円形の孔であり、当該孔の内壁面に銅でめっき処理が施されることにより、配線Wpw1と配線Wgw1との間が電気的に接続される。また、ビアVwは、配線Wpw1と配線Wgw1との間の導電性を高めるために、複数設けられている。
【0041】
つぎに、U相駆動回路3uについて説明する。ただし、W相と同様の構成については、その詳細な説明を割愛する。
基板Bの表面には、左方から順に配線Wmu,Wpu1,Wpu2が配置されている。配線Wmuは、モータ端子Tm(U相)へと繋がっている。また、配線Wpu2は、電源端子Tpへと繋がっている。配線Wpu2と配線Wpu1との間には、第1上側MOS12Huが配置されている。また、配線Wpu1と配線Wmuとの間には、第1モータリレー14uが配置されている。基板Bの裏面には、左方から順に配線Wgu1,Wgu2,Wgu3が配置されている。配線Wgu3は、グランド端子Tgへと繋がっている。また、配線Wgu3と配線Wgu2との間には、第1シャント抵抗21uが配置されている。
【0042】
また、基板Bには、配線Wpu1と配線Wgu1とを電気的に接続するビアVuが設けられている。すなわち、第1上側MOS12Huのソース電極seおよび第1モータリレー14uのドレイン電極deと、第1下側MOS12Luのソース電極seとの間は、ビアVuによって電気的に接続されている。
【0043】
つぎに、V相駆動回路3vについて説明する。
基板Bの表面には、左方から順に配線Wmv,Wpv1,Wpv2が配置されている。配線Wmvは、モータ端子Tm(V相)へと繋がっている。また、配線Wpv2は、電源端子Tpへと繋がっている。配線Wpv2と配線Wpv1との間には、第2上側MOS12Hvが配置されている。また、配線Wpv1と配線Wmvとの間には、第2モータリレー14vが配置されている。基板Bの裏面には、左方から順に配線Wgv1,Wgv2,Wgv3が配置されている。配線Wgv3は、グランド端子Tgへと繋がっている。また、配線Wgv3と配線Wgv2との間には、第2シャント抵抗21vが配置されている。
【0044】
また、基板Bには、配線Wpv1と配線Wgv1とを電気的に接続するビアVvが設けられている。すなわち、第2上側MOS12Hvのソース電極seおよび第2モータリレー14vのドレイン電極deと、第2下側MOS12Lvのソース電極seとの間は、ビアVvによって電気的に接続されている。
【0045】
また、図3(a)に示すように、第3上側MOS12Hwと第3下側MOS12Lwとは、Y方向から見たとき、X方向において互いにずれた位置に配置されている。第3上側MOS12Hwと第3下側MOS12Lwとのずれ幅は、基板Bの厚さ以上(所定のずれ量)に設定されている。これは、図3(a)に破線で示されるように、第3上側MOS12Hwおよび第3下側MOS12Lwから基板Bに伝わる熱は、基板の表面および裏面に対して、およそ45度で拡散すると考えられるためである。第3上側MOS12Hwで発生した熱は基板Bの表面から裏面に伝わる際に基板Bの厚さ分拡がるものの、第3上側MOS12Hwと第3下側MOS12Lwとが基板厚さ以上ずれた位置に設けられることにより、第3上側MOS12Hwで発生した熱が第3下側MOS12Lwに伝達されないと考えられる。また、第3下側MOS12Lwで発生した熱も、基板Bの裏面から表面に伝わる際に基板Bの厚さ分拡がるものの、第3上側MOS12Hwには伝達されないと考えられる。また、基板Bにおいて、第3上側MOS12Hwから拡散した熱と、第3下側MOS12Lwから拡散した熱とが、重複する(ともに伝達される)場所も生じないと考えられる。このため、第3上側MOS12Hwと第3下側MOS12Lwとのずれ幅を基板の厚さ以上に設定することにより、第3上側MOS12Hwから拡散した熱と第3下側MOS12Lwから拡散した熱が重複する部分を抑制できる。
【0046】
なお、図2(b)に示すように、第3シャント抵抗21wについても、Y方向から見たとき、第3上側MOS12Hwに対してX方向へずれた位置に配置されている。第3シャント抵抗21wと第3上側MOS12Hwとのずれ幅は、基板の厚さ以上に設定されている。
【0047】
つぎに、第3下側MOS12Lwについて詳しく説明する。
図4(a)には、第3下側MOS12Lwの裏面(基板B側の面)が示されている。第3下側MOS12Lwは、半導体素子(MOS−FET)などを含む本体部30と、本体部30から延びる複数の端子31,32とを有している。本体部30は、半導体素子を絶縁性の樹脂により覆うことにより、パッケージ化されている。一例としては、端子31はドレイン電極deに対応し、端子32はソース電極seに対応している。なお、複数の端子31のうちの一部がゲート電極geで、複数の端子31のうちの残りがドレイン電極deであってもよいし、複数の端子32のうちの一部がゲート電極geで、複数の端子32のうちの残りがソース電極seであってもよい。また本体部30の基板B側の面あるいは基板Bと反対側の面に設けてもよい。なお、第3下側MOS12Lwに限らず、第3上側MOS12Hwなどの他のスイッチング素子についても同様の構造を有している。
【0048】
図5(a)に示すように、第3下側MOS12Lwは、その端子32(ソース電極se)が配線Wgw1およびビアVwに接触するように、基板Bに取り付けられている。第3下側MOS12Lwは、基板BをZ方向から見たとき、各端子32の少なくとも一部分がビアVwに重なるように、基板Bに配置されている。また、第3下側MOS12Lwに限らず、ビアVu,Vv,Vwの近傍に設けられる他のスイッチング素子についても同様に、基板BをZ方向から見たとき、各スイッチング素子の端子がビアVu,Vv,Vwに重なるように設けられている。
【0049】
本実施形態の作用および効果を説明する。
(1)まず、比較例として図6に示すように、U相、V相、およびW相の駆動回路を基板Bの同一平面上に、互いに隣り合うように配置した場合について検討する。ここでは、最も配線ループが大きくなると考えられる場合、すなわちバッテリ11から電源端子Tpを介して供給された電力が、U相上側MOSおよびU相モータリレーを通ってモータ2へと伝達されたのち、W相モータリレー、W相下側MOS、およびW相シャント抵抗を通ってグランド端子からグランドに伝達される場合の鎖交磁束について説明する。
【0050】
この場合、U相上側MOSおよびU相モータリレーを介してU相電源端子からU相モータ端子へと流れる電流I1は、W相モータリレー、W相下側MOS、およびW相シャント抵抗を介してW相モータ端子からW相グランド端子へと流れる電流I2と反対向きとなる。電流I1が流れる経路と、電流I2が流れる経路とは、距離L2だけ離れているものとする。なお、距離L2は比較的長い距離である。なぜなら、基板Bの同一平面上で、図1の中間配線17u,17v,17wと動力線18u,18v,18wとの接続点を作る必要がある分、たとえばU相上側MOSとY方向においてずれた位置にU相下側MOSを配置することになる。このため、本実施形態ではU相駆動回路のY方向における長さはMOS−FET1つ分程度になると考えられるところ、比較例ではMOS−FET2つ分程度になると考えられるため、U相駆動回路がY方向に大きくなってしまう。また、V相駆動回路およびW相駆動回路についても同様にY方向に大きくなると考えられるので、距離L2は長くなる。
【0051】
ところで、電流I1,I2が流れることによって磁場M1,M2が発生する。磁場M1,M2は、電流I1,I2の向きに対応して、互いに反対向きとなるため、互いに打ち消しあう関係にある。しかし、磁場の大きさは距離の2乗に反比例する関係をもつため、磁場M1,M2の大きさが同じであっても、互いを完全に打ち消すことはできない。磁場M1,M2が十分に打ち消せない分、鎖交磁束は大きくなり、鎖交磁束と駆動回路3に流れた電流との比例係数であるインダクタンスも大きくなってしまう。なお、鎖交磁束の大きさは、配線ループ長やZ方向から見たときの駆動回路3の面積の大きさとも関係する。駆動回路3のZ方向から見たときの面積は、鎖交磁束が駆動回路3を鎖交する際の面積と見ることができるためである。配線ループが大きいほど、すなわち基板BをZ方向から見たときの配線ループの面積が大きいほど、鎖交磁束が大きくなる。鎖交磁束とは、駆動回路3に電力が供給されることにより発生する磁束のうち、各配線に鎖交する磁束のことである。鎖交磁束が大きいほど、スイッチングにおけるサージ電圧が大きくなる。また、鎖交磁束が大きい場合、リンギングが発生しやすくなる。また、鎖交磁束が大きい場合には、モータ2の回転に際してモータトルクが変動するトルクリップルが大きくなってしまう。
【0052】
これに対し、本実施形態では、U相駆動回路3u、V相駆動回路3v、およびW相駆動回路3wの各構成要素を基板Bの両面に分けて配置している。図6の場合と同様に、ここでは、最も配線ループが大きくなると考えられる場合の鎖交磁束について説明する。
【0053】
図7(a),(b)に示すように、バッテリ11から電源端子Tpを介して供給された電力は、第1上側MOS12Huおよび第1モータリレー14uを介してモータ2へと伝達される。その後、モータ2へと供給された電力は、第3モータリレー14w、第3下側MOS12Lw、および第3シャント抵抗21wを介してグランドに至る。
【0054】
この場合、第1上側MOS12Huおよび第1モータリレー14uを介して電源端子Tpからモータ端子Tmへと流れる電流I3は、第3モータリレー14w、第3下側MOS12Lw、および第3シャント抵抗21wを介してモータ端子Tmからグランド端子Tgへと流れる電流I4と反対向きとなる。ここで、電流I3の経路と電流I4の経路とは、距離L1だけ離れている。距離L1は、距離L2よりも短い。なぜなら、図1の中間配線17u,17v,17wと動力線18u,18v,18wとの接続点を作る必要があるとしても、第1上側MOS12Huを基板Bの表面に配置した場合には、第1下側MOS12Luを基板Bの裏面に配置すれば、第1上側MOS12HuとY方向においてほとんど同じ位置に第1下側MOS12Luを配置できる。このため、本実施形態ではU相駆動回路3uのY方向における長さはMOS−FET1つ分程度になるので、U相駆動回路3uがY方向に大きくなることが抑制されている。また、V相駆動回路3vおよびW相駆動回路3wについても同様にY方向に大きくなることが抑制されている。このため、距離L1は距離L2よりも小さくなる。
【0055】
電流I3,I4が流れることによって磁場M3,M4が発生する。磁場M3,M4は、電流I3,I4の向きに対応して、互いに反対向きとなるため、互いに打ち消しあう関係にある。ここでも、磁場M3,M4は互いに完全に打ち消しあうことはできないものの、電流I3が流れる経路と電流I4が流れる経路との間の距離L1が、距離L2よりも短くなる分、磁場M3,M4は、より打ち消しあう。このため、駆動回路3のインダクタンスをより小さくすることができるので、鎖交磁束もより小さくすることが可能となる。
【0056】
ところで、本実施形態では、駆動回路3のY方向の長さは短くなることが期待できるものの、U相駆動回路3u、V相駆動回路3v、およびW相駆動回路3wの各構成要素を基板Bの両面に配置する分、駆動回路3のZ方向の長さは長くなってしまう。この場合であっても、MOS−FETの体格および基板Bの厚さの関係によっては、駆動回路3の配線ループ長は短くなるので、鎖交磁束がより小さくなる。また、MOS−FETの体格および基板Bの厚さの関係で、駆動回路3の配線ループが大きくなる場合であっても、鎖交磁束がより小さくなることが期待できる。なぜなら、ビアVu,Vv,Vwによって基板Bの表面と裏面が導通しているが、駆動回路3の配線のうちZ方向の成分は、鎖交磁束にあまり影響しないからである。ビアVu,Vv,Vwは物理的な長さがあるものの、Z方向に導通するものである以上、Z方向から見たときの駆動回路3の面積には寄与しないからである。
【0057】
以上のように、基板Bの両面に駆動回路3の各構成要素を分けて配置することにより、鎖交磁束を小さくすることが可能である。
(2)図4(a)に示すように、各MOS−FETには、そのソース電極seおよびドレイン電極deに対応した端子31,32が設けられている。ビアVu,Vv,Vwを設けた場合、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwを、ビアVu,Vv,VwとX方向において重なるように配置することにより、ビアVu,Vv,Vwの近傍に配置することが可能である。
【0058】
図5(a)に示すように、第3下側MOS12Lwは、その端子32がビアVwに接触するように固定している。これにより、X方向において、MOS−FET間(たとえば、駆動回路3をZ方向から見たときの第3下側MOS12Lwと第3モータリレー14wとの間)の隙間を小さくすることができる。したがって、Z方向から見たときの駆動回路3の面積を小さくでき、鎖交磁束も小さくなることが期待できる。
【0059】
(3)第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwおよび第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwから基板Bに伝わる熱は、基板Bの表面および裏面に対しておよそ45度で拡散すると考えられる。第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwと第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwとのずれ幅を基板Bの厚さ以上に設定することにより、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwから拡散した熱と第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwから拡散した熱が重複する部分をなくすことができる。
【0060】
また、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwは、第1〜第3シャント抵抗21u,21v,21wに対して、基板Bの厚さ以上にずれた位置に配置されている。これにより、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwから拡散した熱と第1〜第3シャント抵抗21u,21v,21wから拡散した熱とが重複する部分をなくすことができる。
【0061】
これらにより、駆動回路3の各構成要素からの発熱が特定箇所に集中することが抑制され、より的確に放熱を行うことができる。
(4)各MOS−FET(第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hw、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lw、および第1〜第3モータリレー14u,14v,14w)のソース電極seおよびドレイン電極deの方向は、各配線の方向と一致している。これにより、駆動回路3の配線長をより短くすることが可能となるので、鎖交磁束をより小さくすることが可能である。たとえば、各配線の方向と各FETのソース電極seおよびドレイン電極deの方向とが直交していると、駆動回路3の配線長が長くなってしまうので、鎖交磁束が大きくなる。
【0062】
(5)U相駆動回路3u、V相駆動回路3v、およびW相駆動回路3wを互いに並行に配置している。これにより、U相駆動回路3u、V相駆動回路3v、およびW相駆動回路3wのY方向における長さを短くできる分、駆動回路3の配線長を短くすることができ、鎖交磁束をより小さくできる。
【0063】
(6)駆動回路3の鎖交磁束が小さくなることによって、スイッチング時のサージ電圧を小さくすることができるほか、リンギングの発生を減らすことができる。モータ2のトルクリップルが抑えられるので、追従性および安定性の良いモータ制御を行うことができ、より良好な操舵フィーリングを確保できる。
【0064】
<第2実施形態>
以下、半導体装置としての駆動回路を車両用の駆動装置に適用した第2実施形態について説明する。
【0065】
図8(a),(b)に示すように、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwは基板Bの表面に配置され、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwは基板Bの裏面に配置されている。第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwは、基板Bを介して第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwと対向して設けられている。すなわち、駆動回路3をZ方向から見たとき、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwは、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwと同じ位置に設けられている。なお、駆動回路3をZ方向から見たとき、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwを、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwとわずかに重なるように設けてもよい。
【0066】
第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwと第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12LwとをX方向においてずらさない分、配線Wpu2,Wpv2,Wpw2,Wgu2,Wgv2,Wgw2のX方向の長さを短くできる。また、駆動回路3のX方向の長さを短くすることができ、Z方向から見たときの駆動回路3の各構成要素の実装面積は小さくなる。すなわち、Z方向から見たときの駆動回路3の面積を小さくできるので、鎖交磁束も小さくなる。
【0067】
なお、各実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・各実施形態では、駆動回路3において、U相駆動回路3u、V相駆動回路3v、W相駆動回路3wの順で配置したが、この順番は入れ替えてもよい。
【0068】
・第1〜第3モータリレー14u,14v,14wは設けなくてもよい。
・各実施形態では、第1〜第3シャント抵抗21u,21v,21wを用いた3シャント方式を採用したが、これに限らない。たとえば、シャント抵抗を1つだけ設けた1シャント方式であってもよい。また、シャント抵抗を用いた電流検出手段に限らない。すなわち、第1〜第3シャント抵抗21u,21v,21wは設けなくてもよい。
【0069】
・各実施形態では、スイッチング素子として、MOS−FETが用いられたが、これに限らない。たとえば、スイッチング素子として、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いてもよい。
【0070】
・各実施形態では、駆動回路3は3相の駆動回路が採用されたが、2相以上の駆動回路であればよい。
・駆動回路3を2つ並べることにより、冗長化してもよい。
【0071】
図4(b)に示すように、第3下側MOS12Lw(各MOS−FET)は、その端子32が本体部30の裏面(基板B側の面)を覆うように設けてもよい。この場合、図5(b)に示すように、第3下側MOS12Lwは、端子32がビアVwを全体的に覆うように基板Bに配置される。これにより、さらにMOS−FET間(たとえば、駆動回路3をZ方向から見たときの第3下側MOS12Lwと第3モータリレー14wとの間)の距離を短くすることができるので、Z方向から見たときの駆動回路3の面積を小さくできる。
【0072】
・基板BをZ方向から見たとき、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwの端子が、ビアVu,Vv,Vwに重ならないように配置されてもよい。
図4(c)に示すように、第3下側MOS12Lw(各MOS−FET)の本体部30の表面(基板Bと反対側の面)に放熱パットを設けてもよい。この場合、第3下側MOS12Lwで発生した熱は、基板B側だけでなく、放熱パットからも放熱される。
【0073】
・各実施形態では、U相駆動回路3uにおいて、基板Bの表面に第1上側MOS12Huおよび第1モータリレー14uを設け、裏面に第1下側MOS12Luおよび第1シャント抵抗21uを設けた。この場合、W相駆動回路3wも、U相駆動回路3uと同様の配置をしていた。このとき、図7(a),(b)を参照すると、電流I3は基板Bの表面を通るのに対し、電流I4は基板Bの裏面を通る。
【0074】
U相駆動回路3uはその各構成要素を前述と同様に配置するのに対し、W相駆動回路3wにおいては、基板Bの表面に第3下側MOS12Lwおよび第3シャント抵抗21wを設け、裏面に第3上側MOS12Hwおよび第3モータリレー14wを設けるようにしてもよい。この場合、第1上側MOS12Huおよび第1モータリレー14uを介して電源端子Tpからモータ端子Tmへと流れる電流I3は基板Bの表面を通り、第3モータリレー14w、第3下側MOS12Lw、および第3シャント抵抗21wを介してモータ端子Tmからグランド端子Tgへと流れる電流I4も基板Bの表面を通る。これにより、U相駆動回路3uに対して最も離れて位置するW相駆動回路3wについては、電流I3,I4が基板Bの同一面を通るため、さらに基板Bの厚さ分だけ、配線ループを短くすることができ、鎖交磁束をより小さくすることができる。
【0075】
・第1実施形態では、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hw、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lw、第1〜第3モータリレー14u,14v,14w、および第1〜第3シャント抵抗21u,21v,21wを、Z方向から見たとき、互いにずれた位置に配置されたが、これに限らない。熱が特に問題とならないのであれば、Z方向からみたとき、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwと、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwとをわずかに重なる位置に配置してもよい。また、たとえば図3(b)に示すように、第3下側MOS12Lwと第3シャント抵抗21wとがともに基板Bの裏面に配置すると、第3下側MOS12Lwから拡散する熱と第3シャント抵抗21wから拡散した熱とが重複しやすくなる。この場合であっても、熱が特に問題とならないのであれば、第3下側MOS12Lwと第3シャント抵抗21wとを近接した位置に配置してもよい。
【0076】
・第1実施形態では、Z方向から見たとき、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwと第1〜第3シャント抵抗21u,21v,21wとの間に、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwが配置されたが、これに限らない。
【0077】
図9(a),(b)に示すように、熱が特に問題とならないのであれば、第1〜第3上側MOS12Hu,12Hv,12Hwと第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwとの位置を、配置される基板Bの面はそのままで、X方向に入れ替えてもよい。この場合、第1〜第3下側MOS12Lu,12Lv,12Lwが第1〜第3シャント抵抗21u,21v,21wと隣接する。
【0078】
・各実施形態では、U相駆動回路3u、V相駆動回路3v、およびW相駆動回路3wのいずれについても、各構成要素を基板Bの両面に配置したが、駆動回路3のうちいずれか1相のみ各構成要素を基板Bの両面に配置するようにしてもよい。
【0079】
・基板Bには、樹脂などの絶縁性のある材料であれば、どのようなものが採用されてもよい。
・ビアVu,Vv,Vwは、孔の内面をめっき加工したスルーホールであってもよいし、孔に導電体のペーストを充填したものであってもよい。すなわち、基板Bの両面の導電性を確保できる経路であればどのようなものであってもよい。
【0080】
・各実施形態の駆動回路3は、3相のブラシレスモータに対応した3相の駆動回路であったが、これに限らない。たとえば、上側スイッチング素子および下側スイッチング素子からなるハーフブリッジを複数相有していればよい。また、駆動回路3が電力を供給する対象は、モータ2に限らず、どのような対象であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…駆動装置、2…モータ(給電対象)、2u,2v,2w…モータコイル、3…駆動回路(半導体装置)、3u…U相駆動回路、3v…V相駆動回路、3w…W相駆動回路、4…マイコン、11…バッテリ、12Hu,12Hv,12Hw…第1〜第3上側MOS、12Lu,12Lv,12Lw…第1〜第3下側MOS、13u,13v,13w…第1〜第3スイッチングアーム、14u,14v,14w…第1〜第3モータリレー、15u,15v,15w…ドレイン配線、16u,16v,16w…ソース配線、17u,17v,17w…中間配線、18u,18v,18w…動力線、19u,19v,19w,20u,20v,20w…ゲート配線、21u,21v,21w…第1〜第3シャント抵抗、30…本体部、31,32…端子、B…基板、de…ドレイン電極、ge…ゲート電極、se…ソース電極、I1〜I4…電流、M1〜M4…磁場、Vu,Vv,Vw…ビア(経路、基板を貫通する部分)、Wmu,Wmv,Wmw,Wpu1〜2,Wpv1〜2,Wpw1〜2,Wgu1〜3,Wgv1〜3,Wgw1〜3…配線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9