特許第6972693号(P6972693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972693
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】イオン生成装置及びイオン生成方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/08 20060101AFI20211111BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01J27/08
   H01J37/08
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-119688(P2017-119688)
(22)【出願日】2017年6月19日
(65)【公開番号】特開2019-3899(P2019-3899A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】315002243
【氏名又は名称】ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【弁理士】
【氏名又は名称】伊坪 公一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光弘
(72)【発明者】
【氏名】豊福 毅
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−014698(JP,A)
【文献】 特表2007−503691(JP,A)
【文献】 特開平11−007900(JP,A)
【文献】 特開平02−066839(JP,A)
【文献】 特開昭58−158844(JP,A)
【文献】 特開2001−126630(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0151089(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0045834(US,A1)
【文献】 特開平03−149732(JP,A)
【文献】 米国特許第05034612(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/08
H01J 37/08
H05H 1/00−1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを生成するイオン生成部と、
前記イオン生成部により生成されたイオンに対して電場を印加し、イオンに引力を加えて前記イオン生成部からイオンを引き出す引出電極と、
前記イオン生成部から引き出されたイオンが移動する移動経路と前記引出電極との間に配置され、前記移動経路と前記引出電極との間を物理的に分離し、電気絶縁性を有する遮蔽部と、
を備え
前記イオン生成部は、生成したイオンを放出する開口部を有し、
前記遮蔽部は、前記開口部内まで延びているイオン生成装置。
【請求項2】
前記移動経路を規定する前記遮蔽部の厚さは、前記イオン生成部側から前記イオン生成部とは反対側に向かうに従って薄くなっている請求項1に記載のイオン生成装置。
【請求項3】
前記移動経路は、前記遮蔽部に囲まれた空間であり、
前記移動経路の大きさは、前記イオン生成部側から前記イオン生成部とは反対側に向かうに従って小さくなる請求項1又は2に記載のイオン生成装置。
【請求項4】
前記引き出し電極は、
第1電極と、
前記第1電極に対して前記イオン生成部とは反対側に配置される第2電極と、
を有し、
前記第1電極は、前記移動経路が貫通する第1開口部を有し、
前記第2電極は、前記移動経路が貫通する第2開口部を有し、
前記第2開口部の大きさ、前記第1開口部よりも小さい請求項1〜の何れか一項に記載のイオン生成装置。
【請求項5】
前記イオン生成部が生成するイオンとは反対の極性を有する荷電粒子を生成して、当該荷電粒子を前記移動経路内に放出可能な荷電粒子生成部を備える請求項1〜の何れか一項に記載のイオン生成装置。
【請求項6】
所定の電位を有する引出電極を用いて、イオン生成部により生成されたイオンに電場を印加し、イオンに引力を加えて前記イオン生成部の開口部から放出されるイオンを引き出すことと、
イオンが移動する移動経路と前記引出電極との間に前記開口部まで延びるように配置され、前記移動経路と前記引出電極との間を物理的に分離し、電気絶縁性を有する遮蔽部により規定される前記移動経路に沿って、前記イオン生成部から引き出されたイオンを移動させることと、
を含むイオン生成方法。
【請求項7】
更に、
前記イオン生成部がイオンの生成を停止した状態で、前記遮蔽部に対して、前記イオン生成部が生成するイオンとは反対の極性を有する荷電粒子を、前記前記移動経路内へ放射すること、を含む請求項に記載のイオン生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン生成装置及びイオン生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造工程において、イオンを生成するイオン生成装置が使用されている。
【0003】
イオン生成装置は、原料となるガスをイオン化して、イオンを生成する(例えば、特許文献1参照)。イオン生成装置により生成されたイオンは、例えば、所定の入射エネルギーに加速されて基板に注入される。また、イオン生成装置により生成されたイオンは、集束イオンビームに成形されて、微細加工に使用される(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
イオン生成装置では、イオンを生成するチャンバ内で生成されたイオンに対して、所定の電位を有する引出電極により生成された電場を用いて引力を加え、チャンバ内からイオンが引き出される。チャンバ内から引き出されたイオンは、軌道調整及び加速等の処理がなされて、基板等へ照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−219161号公報
【特許文献2】特開平7−320670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引出電極には、チャンバ内で生成されたイオンに対して引力を加えるために、イオンが有する極性に対して、反対の極性の電圧が印加される。例えば、正電荷を有するイオン(正イオン)に対して引力を加えるために、引出電極には負の電圧が印加される。
【0007】
引出電極と正イオンとの間には引力が働くので、引出電極は、正イオンが付着して帯電する場合がある。また、イオンの原料ガス又は分解物が、引出電極に付着する場合もある。
【0008】
このように、引出電極に、正イオンが付着して帯電すると、チャンバ内と引出電極の付着物との間に放電が生じて、引出電極の電圧を所定の電圧に保つことが困難になる場合がある。また、引出電極に対して放電が生じると、電極が損傷したり、付着物が引出電極に固着する場合もある。
【0009】
引出電極の電圧が不安定になると、チャンバ内からイオンを引き出す制御に影響を与えるので、場合によっては、イオン生成装置を停止して、装置の保守作業を行うことが生じ得る。
【0010】
本明細書では、引出電極へのイオン等の付着を防止するイオン生成装置及びイオン生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に開示するイオン生成装置の一形態によれば、イオンを生成するイオン生成部と、イオン生成部により生成されたイオンに対して電場を印加し、イオンに引力を加えてイオン生成部からイオンを引き出す引出電極と、イオン生成部から引き出されたイオンが移動する移動経路と引出電極との間に配置され、移動経路と引出電極との間を物理的に分離し、電気絶縁性を有する遮蔽部と、を備える。
【0012】
また、本明細書に開示するイオン生成方法の一形態によれば、所定の電位を有する引出電極を用いて、イオン生成部により生成されたイオンに電場を印加し、イオンに引力を加えてイオン生成部からイオンを引き出すことと、イオンが移動する移動経路と引出電極との間に配置され、移動経路と引出電極との間を物理的に分離し、電気絶縁性を有する遮蔽部により規定される移動経路に沿って、イオン生成部から引き出されたイオンを移動させることと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
上述した本明細書に開示するイオン生成装置の一形態によれば、引出電極へのイオン等の付着を防止できる。
【0014】
また、上述した本明細書に開示するイオン生成方法の一形態によれば、引出電極へのイオン等の付着を防止できる。
【0015】
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるだろう。
【0016】
前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本明細書に開示する第1実施形態のイオン生成装置を示す図である。
図2】遮蔽部及び引出電極を示す図である。
図3】イオン生成装置の中和工程を説明する図である。
図4】本明細書に開示する第1実施形態のイオン生成装置の変形例1を示す図である。
図5】本明細書に開示する第1実施形態のイオン生成装置の変形例2を示す図である。
図6】本明細書に開示する第2実施形態のイオン生成装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本明細書で開示するイオン生成装置の好ましい第1実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0019】
図1は、本明細書に開示する第1実施形態のイオン生成装置を示す図である。図2は、遮蔽部及び引出電極を示す図である。
【0020】
イオン生成装置(以下、単に装置ともいう)10は、原料に応じて各種のイオンを生成する。生成されたイオンは、例えば、質量分析器(図示せず)により選別された後、軌道を調整され、加速部(図示せず)により所定の入射エネルギーに加速されて基板等に照射される。
【0021】
装置10は、アークチャンバ11と、ガス供給部12と、第1フィラメント13と、第1磁力線生成部14と、リフレクタ15と、サプレッション電極16と、引出電極17と、遮蔽部18と、第2フィラメント19と、第2磁力線生成部20を備える。
【0022】
アークチャンバ11は、内部が所定の圧力に減圧され、原料ガスがアーク放電によりイオン化されてイオンが生成される空間を提供する。アークチャンバ11は、第1開口部11aと、第1開口部11aと内部空間を介して対向する第2開口部11bを有する。アークチャンバ11は、電気導電性を有する。
【0023】
装置10は、アークチャンバ11に対して正の電圧を印加する直流電源P1と、アークチャンバ11に対する電圧の印加を制御するスイッチS1を有する。スイッチS1は、図示しない制御部により制御される。
【0024】
ガス供給部12は、イオンの原料となる原料ガスの分子30を生成して、アークチャンバ11の第1開口部11aからアークチャンバ11内に供給する。装置10は、ガス供給部12に電力を供給する直流電源P2と、ガス供給部12の作動を制御するスイッチS2を有する。スイッチS2は、図示しない制御部により制御される。原料ガスとして、例えばBFを用いることができる。
【0025】
第1フィラメント13は、直流電源P3から電力が供給されて加熱することにより電子31をアークチャンバ11内に放出する。装置10は、第1フィラメント13の動作を制御するスイッチS3を有する。スイッチS3は、図示しない制御部により制御される。また、直流電源P3は、直流電源P1と直列に接続しており、アークチャンバ11に正の電圧を印加する。
【0026】
第1磁力線生成部14は、磁力線を生成して、アークチャンバ11内に向けて磁力線を放射する。装置10は、第1磁力線生成部14に電力を供給する直流電源P6と、第1磁力線生成部14の動作を制御するスイッチS6を有する。スイッチS6は、図示しない制御部により制御される。
【0027】
第1磁力線生成部14から放射された磁力線は、第1フィラメント13が放出した電子31にローレンツ力を加えて、アークチャンバ11内で電子31に回転運動を生じさせる。これにより、アークチャンバ11内における電子31の飛行距離を増大させて、電子31が原料ガスの分子30と衝突する確率を向上して、アークチャンバ11内で正イオン32を効率良く生成する。アークチャンバ11内には、原料ガスの分子30が電子を失って生成された正イオン32と、原料ガスの分子30から放出された電子等とを含むプラズマが生成される。原料ガスとしてBFを用いた場合、装置10により、Bの正イオン及びFの正イオンが生成される。
【0028】
リフレクタ15は、第1フィラメント13が放出した電子31が衝突することにより二次電子を放出する。リフレクタ15が放出した電子も、アークチャンバ11内で原料ガスの分子30と衝突することにより、正イオン32を生成する。
【0029】
装置10では、上述したアークチャンバ11と、ガス供給部12と、第1フィラメント13と、第1磁力線生成部14と、リフレクタ15とが協働して、イオンを生成する。
【0030】
サプレッション電極16は、平面視して矩形の板形状を有し、内部に開口部16aを有する。開口部16aは、アークチャンバ11内から引き出された正イオン32が移動する移動経路Mの一部を形成する。サプレッション電極16は、開口部16aが、正イオン32の引き出し方向から見て、アークチャンバ11の第2開口部11bと重なるように配置される。
【0031】
サプレッション電極16は、直流電源P5により、基準電位(イオンが照射される基板の電位であり、0〜1E−2V程度:レッドボック電位)よりも低い負の電圧が印加されて電場を生成する。サプレッション電極16により生成される電場が、アークチャンバ11内の電子31に対して斥力を加えることにより、電子31が、アークチャンバ11内から第2開口部11bを通って引き出されることを抑制する。装置10は、サプレッション電極16への電圧の印加を制御するスイッチS5を有する。スイッチS5は、図示しない制御部により制御される。また、直流電源P5は、図示しない制御部により制御されて、印加する電圧の極性を反転可能である。
【0032】
引出電極17は、図2に示すように、平面視して矩形の板形状を有しており、内部に矩形の開口部17aを有する。開口部17aは、アークチャンバ11内から引き出された正イオン32が移動する移動経路Mの一部を形成する。上述したサプレッション電極16の開口部16aを平面視した形状は、開口部17aと同じである。引出電極17は、開口部17aが、サプレッション電極16の開口部16a及びアークチャンバ11の第2開口部11bと重なるように配置される。
【0033】
引出電極17は、基準電位が印加されて電場を生成する。引出電極17は、スイッチS4及び直流電源P4を介して、アークチャンバ11と電気的に接続する。アークチャンバ11の電位は、直流電源P4により印加される電圧の分だけ、基準電位にある引出電極17よりも高くなる。引出電極17により生成された電場は、アークチャンバ11内の正イオン32に対して引力を加えて、正イオン32を第2開口部11bから移動経路Mへ引き出す。また、アークチャンバ11により生成される電場は、アークチャンバ11内の正イオン32に対して斥力を加えて、正イオン32が第2開口部11bから移動経路Mへ引き出されることを支援する。スイッチS4は、図示しない制御部により制御される。また、直流電源P4は、図示しない制御部により制御されて、印加する電圧の極性を反転可能である。
【0034】
遮蔽部18は、図2に示すように、断面が四角形の角筒の形状を有しており、電気絶縁性を有する。遮蔽部18は、サプレッション電極16の開口部16a及び引出電極17の開口部17a内を貫通して、アークチャンバ11の第2開口部11b内まで延びている。遮蔽部18の内部は、イオンが生成されたアークチャンバ11から引き出されたイオンが移動する移動経路Mを規定する。移動経路Mは、遮蔽部18に囲まれた四角柱状の空間であり、アークチャンバ11内の空間と、引出電極17の外側の空間とを接続する。
【0035】
遮蔽部18は、アークチャンバ11から引き出されたイオンが移動する移動経路Mと引出電極17との間に配置され、移動経路Mと引出電極17との間を物理的に分離する。
【0036】
引出電極17は、アークチャンバ11で生成されたイオンを、遮蔽部18により規定される移動経路M内を移動させて、アークチャンバ11内から引き出す。アークチャンバ11のイオンは、遮蔽部18のアークチャンバ11側の開口部から引き込まれて、引出電極17側の開口部から外部へ放出される。
【0037】
遮蔽部18が、アークチャンバ11の第2開口部11b内まで延びていることにより、アークチャンバ11で生成されたイオンが、サプレッション電極16又は引出電極17に付着することが防止される。
【0038】
遮蔽部18を形成する材料は、サプレッション電極16及び引出電極17が生成する電場を減衰させない観点から、誘電率は低いことが好ましい。
【0039】
遮蔽部18を形成する材料の比誘電率として、例えば、4〜7程度のものが使用できる。また、遮蔽部18を形成する材料の抵抗率として、例えば、1E13〜1E15オームcmのものが使用できる。
【0040】
遮蔽部18を形成する材料として、例えば、酸化アルミニウム又は窒化硼素等のセラミックス、SiSiC等の高比剛性セラミックス、又は石英(二酸化ケイ素)等を用いることができる。
【0041】
第2フィラメント19は、直流電源P7から電力が供給されて加熱することにより電子を生成して、第1開口部11aからアークチャンバ11内に電子を放出する。装置10は、第2フィラメント19の動作を制御するスイッチS7を有する。スイッチS7は、図示しない制御部により制御される。
【0042】
第2磁力線生成部20は、磁力線を生成して、アークチャンバ11内に向けて磁力線を放射する。装置10は、第2磁力線生成部20に電力を供給する直流電源P8と、第2磁力線生成部20の動作を制御するスイッチS8を有する。スイッチS8は、図示しない制御部により制御される。
【0043】
第2磁力線生成部20により生成された磁力線は、第2フィラメント19が放出した電子にローレンツ力を加えて、アークチャンバ11内で電子に回転運動を生じさせる。これにより、アークチャンバ11内における電子の飛行距離を増大させて、遮蔽部18の内部まで、電子を移動可能にする。
【0044】
次に、上述した装置10の動作を以下に説明する。装置10は、イオンを生成するイオン生成工程と、遮蔽部18内に付着した正イオンを電子で中和する中和工程を有する。
【0045】
まず、イオン生成工程について説明する。
【0046】
イオン生成工程では、図1に示すように、スイッチS1〜6は、図示しない制御部に制御されて閉じられる。一方、スイッチS7、S8は、図示しない制御部に制御されて開かれる。
【0047】
ガス供給部12は、イオンの原料となる原料ガスの分子30を生成して、アークチャンバ11の第1開口部11aからアークチャンバ11に供給する。また、第1フィラメント13は、直流電源P3から電力が供給されて加熱することにより電子31をアークチャンバ11内に放出する。第1磁力線生成部14により生成された磁力線は、第1フィラメント13が放出した電子31に回転運動を生じさせる。リフレクタ15は、第1フィラメント13が放出した電子31が衝突することにより二次電子を放出する。アークチャンバ11内において、電子31が原料ガスの分子30と衝突することにより、正イオン32が生成される。アークチャンバ11内には、原料ガスの分子30が電子を失って生成された正イオン32と、原料ガスの分子30から放出された電子等とを含むプラズマが生成される。
【0048】
引出電極17により生成された電場は、アークチャンバ11内の正イオン32に対して引力を加えて、正イオン32を第2開口部11bから移動経路Mへ引き出す。アークチャンバ11のイオンは、遮蔽部18のアークチャンバ11側の開口部から引き込まれ移動経路Mを移動して、引出電極17側の開口部から外部へ放出される。また、アークチャンバ11内の電子31は、サプレッション電極16により生成される電場により斥力を受けるので、移動経路Mへ移動することが規制される。サプレッション電極16及び引出電極17は、移動経路Mとの間に遮蔽部18が配置されることにより、正イオン32が付着することが防止される。
【0049】
次に、中和工程について説明する。
【0050】
図3は、イオン生成装置の中和工程を説明する図である。
【0051】
上述したイオン生成工程では、移動経路Mを規定する遮蔽部18の内面は、正イオン32が付着して帯電することがある。遮蔽部18の内面の正に帯電した付着物に対して、アークチャンバ11内の電子が放電する放電経路が形成されるおそれがある。そこで、装置10では、中和工程において、正に帯電した付着物に電子を供給して電気的に中和する。
【0052】
中和工程では、図3に示すように、スイッチS4、S5、S7、S8は、図示しない制御部に制御されて閉じられる。一方、スイッチS1〜S3、S6は、図示しない制御部に制御されて開かれる。即ち、アークチャンバ11内において、正イオンの生成は停止する。
【0053】
また、直流電源P4、P5は、図示しない制御部に制御されて、印加する電圧の極性がイオン生成工程の時に対して反転する。即ち、アークチャンバ11に負の電圧が印加される。また、サプレッション電極16に正の電圧が印加される。
【0054】
第2フィラメント19は、直流電源P7から電力が供給されて加熱することにより電子を生成して、第1開口部11aからアークチャンバ11内に電子を放出する。第2磁力線生成部20により生成された磁力線は、第2フィラメント19が放出した電子に回転運動を生じさせ、アークチャンバ11内における電子の飛行距離を増大させて、第2フィラメント19と対向する遮蔽部18の内部まで到達させる。サプレッション電極16により生成された電場は、アークチャンバ11内の電子に対して引力を加えて、電子を第2開口部11bから移動経路Mへ引き出す。また、また、アークチャンバ11により生成される電場は、アークチャンバ11内の電子に対して斥力を加えて、電子を第2開口部11bから移動経路Mへ引き出されることを支援する。遮蔽部18の内部に到達した電子は、遮蔽部18の内面に付着した付着物に吸着して電荷を中和する。これにより、アークチャンバ11内と遮蔽部18の内面の正に帯電した付着物との間に放電が生じることが抑制される。
【0055】
また、中和工程は、アークチャンバ11及び遮蔽部18の内面に付着した付着物をドライエッチングするエッチングガスを、アークチャンバ11及び遮蔽部18に供給して、付着物を除去する工程を有していてもよい。
【0056】
上述した本実施形態の装置によれば、サプレッション電極及び引出電極と移動経路との間に遮蔽部が配置されることにより、サプレッション電極及び引出電極へのイオン等の付着を防止できる。これにより、アークチャンバ内から引出電極への放電が生じることが防止されるので、サプレッション電極及び引出電極の電圧を安定に保つことができる。また、サプレッション電極及び引出電極が放電により損傷することも防止できる。
【0057】
従って、本実施形態の装置によれば、装置を保守するために装置を停止する期間を短縮して、装置の稼働時間を長くすることができる。
【0058】
次に、上述した第1実施形態の装置10の変形例1及び変形例2を、図4及び図5を参照しながら、以下に説明する。
【0059】
図4は、本明細書に開示する第1実施形態のイオン生成装置の変形例1を示す図である。
【0060】
本変型例では、移動経路Mを規定する遮蔽部18の厚さは、アークチャンバ11側から引出電極17側に向かうに従って薄くなっている。具体的には、四角形の角筒を形成する遮蔽部18の壁面の厚さは、アークチャンバ11側から引出電極17側に向かうに従って薄くなっている。
【0061】
引出電極17により生成される電場の強度は、遮蔽部18が配置されることにより、遮蔽部18が配置されない場合よりも弱まる。
【0062】
そこで、本変型例では、引出電極17側の遮蔽部18の厚さを薄くすることにより、引出電極17側の移動経路M内を移動するイオンに印加される電場の強度を増大して、イオンに与えられる引力を強めている。
【0063】
図4に示す例では、遮蔽部18の厚さは、アークチャンバ11側から引出電極17側に向かうに従って、連続して薄くなっているが、遮蔽部18の厚さは、階段状に薄くなっていてもよい。
【0064】
図5は、本明細書に開示する第1実施形態のイオン生成装置の変形例2を示す図である。
【0065】
本変型例では、遮蔽部18により規定される移動経路Mの大きさは、アークチャンバ11側から引出電極17側に向かうに従って小さくなる。遮蔽部18は、全体として、テーパ状の形状を有する角筒である。移動経路Mの大きさは、移動経路Mを移動するイオンの進行方向と直交する向きにおける移動経路Mの断面積といってもよい。
【0066】
上述したように、引出電極17により生成される電場の強度は、遮蔽部18が配置されることにより、遮蔽部18が配置されない場合よりも弱まるので、イオンに対する引力が低下し且つイオンの集束度が低下して拡がる傾向にある。
【0067】
そこで、本変型例では、遮蔽部18により規定される移動経路Mの断面積が、イオンの進行方向に向かってテーパ状に狭まるようにして、イオンに対する引力を増加すると共に、引き出されるイオンの集束度を高めている。
【0068】
図5に示す例では、移動経路Mの大きさは、アークチャンバ11側から引出電極17側に向かうに従って、連続して小さくなっているが、移動経路Mの大きさは、階段状に小さくなっていてもよい。
【0069】
次に、上述したイオン生成装置の第2実施形態を、図6を参照しながら以下に説明する。第2実施形態について特に説明しない点については、上述の第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0070】
図6は、本明細書に開示する第2実施形態のイオン生成装置を示す図である。
【0071】
本実施形態の装置10は、引出電極として、アークチャンバ11側に配置される第1の引出電極17(第1実施形態の引出電極に対応する)と、第1の引出電極17に対してアークチャンバ11とは反対側に配置される第2の引出電極21を有する。
【0072】
第2の引出電極21は、直流電源P9により、基準電位(イオンが照射される基板の電位であり、0〜1E−2V程度)よりも低い負の電圧が印加されて電場を生成する。装置10は、第2の引出電極21への電圧の印加を制御するスイッチS9を有する。スイッチS9は、図示しない制御部により制御される。
【0073】
第2の引出電極21により生成された電場は、アークチャンバ11内の正イオン32に対して引力を加えて、正イオン32を第2開口部11bから移動経路Mへ引き出す。
【0074】
上述したように、第1の引出電極17により生成される電場の強度は、遮蔽部18が配置されることにより、遮蔽部18が配置されない場合よりも弱まるので、イオンに対する引力が低下し且つイオンの集束度が低下して拡がる傾向にある。
【0075】
そこで、本実施形態では、第1の引出電極17に加えて第2の引出電極21を配置することにより、イオンに対する引力を増加すると共に、引き出されるイオンの集束度を高めている。
【0076】
第2の引出電極21を平面視した輪郭は、第1の引出電極17と同じ形状を有する。
【0077】
第1の引出電極17は、上述したように、移動経路Mを規定する遮蔽部18が貫通する開口部17aを有する。第2の引出電極21も、移動経路Mを規定する遮蔽部18が貫通する開口部21aを有する。
【0078】
第2の引出電極21の開口部21aの大きさは、第1の引出電極17の開口部17aよりも小さい。即ち、第2の引出電極21の開口部21aの径は、第1の引出電極17の開口部17aよりも小さい。
【0079】
第2の引出電極21の開口部21aは、その中心の位置が、第1の引出電極17の開口部17aの中心と一致するように配置される。
【0080】
そのため、遮蔽部18の表面と、第2の引出電極21の開口部21aの縁との距離は、遮蔽部18の表面と、第1の引出電極17の開口部17aの縁との距離よりも短くなる。
【0081】
従って、第2の引出電極21により生成された電場が、アークチャンバ11内の正イオン32に対して働く引力は、第1の引出電極17よりも大きい。これにより、装置10では、イオンに対する引力を更に増加すると共に、引き出されるイオンの集束度を一層高めている。
【0082】
上述した本実施形態の装置10によれば、イオンをアークチャンバ内から引き出す引力を増加すると共に、引き出されるイオンの集束度が高められている。また、上述した第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0083】
本発明では、上述した実施形態のイオン生成装置及びイオン生成方法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、一の実施形態が有する構成要件は、他の実施形態にも適宜適用することができる。
【0084】
例えば、上述した各実施形態では、装置は、正イオンを生成していたが、負イオンを生成してもよい。装置が負イオンを生成する場合には、サプレッション電極及び接地電極に印加される電圧の極性は反対の極性となる。また、負イオンを生成する場合には、第2フィラメントは、負イオンとは反対の正の極性を有する荷電粒子(正イオン)を生成して、当該荷電粒子を移動経路内に放出可能な荷電粒子生成部を用いることが好ましい。
【0085】
また、上述した各実施形態では、遮蔽部が、アークチャンバの第2開口部内まで延びていたが、遮蔽部は、第2開口部内まで延びていなくてもよい。
【0086】
ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、読者が、発明者によって寄与された発明及び概念を深く理解することを助けるための教育的な目的を意図する。ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、そのような具体的に述べられた例及び条件に限定されることなく解釈されるべきである。また、明細書のそのような例示の機構は、本発明の優越性及び劣等性を示すこととは関係しない。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、その様々な変更、置き換え又は修正が本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り行われ得ることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0087】
10 イオン生成装置
11 アークチャンバ
11a 第1開口部
11b 第2開口部
12 ガス供給部
13 第1フィラメント
14 第1磁力線生成部
15 リフレクタ
16 サプレッション電極
16a 開口部
17 引出電極
17a 開口部
18 遮蔽部
19 第2フィラメント(荷電粒子生成部)
20 第2磁力線生成部
21 第2の引出電極
S1〜S9 スイッチ
P1〜P9 直流電源
30 ガス分子
31 電子
32 イオン
M 移動経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6