特許第6972700号(P6972700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972700
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】大判プリンター
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20211111BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20211111BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B41J2/01 301
   B41J2/14 611
   B41J29/00 S
【請求項の数】7
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-122325(P2017-122325)
(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-5961(P2019-5961A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田村 登
【審査官】 小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−182341(JP,A)
【文献】 特開2003−226006(JP,A)
【文献】 特開2014−133359(JP,A)
【文献】 特開2014−144578(JP,A)
【文献】 特開2015−168901(JP,A)
【文献】 特開平07−081182(JP,A)
【文献】 特開2002−019106(JP,A)
【文献】 特開2002−019107(JP,A)
【文献】 特開2014−133358(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0185167(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
B41J 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A3短辺幅以上の媒体に対してシリアル印刷が可能な大判プリンターであって、
第1波形を含む第1駆動信号と第2波形を含む第2駆動信号と基準電圧信号とを出力する駆動信号生成回路を備えた制御回路と、
印加された電圧に応じて印刷する複数の駆動素子を有する印刷ヘッドと、
前記制御回路と前記印刷ヘッドとを接続するケーブルと、
を備え、
前記印刷ヘッドは、前記ケーブルを通じて入力した前記第1駆動信号中の第1波形と前記第2駆動信号中の第2波形とのうちから選択した波形に応じた電圧を前記駆動素子に印加するヘッド駆動回路を備え、
前記ケーブルは、前記第1駆動信号を伝搬する第1配線と、前記第2駆動信号を伝搬する第2配線と、前記基準電圧信号を伝搬する第3配線とを有する第1ケーブル及び第2ケーブルを重ねた状態に含み、
前記第1ケーブル及び第2ケーブルは、前記第1配線と前記第3配線とが隣合うとともに前記第2配線と前記第3配線とが隣合い、かつ重ね方向において、前記第1配線と第3配線とが対向し、前記第2配線と第3配線とが対向しており
前記第1ケーブルの前記第1配線と前記第2ケーブルの前記第1配線とが前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されているか、
及び/又は、前記第1ケーブルの前記第2配線と前記第2ケーブルの前記第2配線とが前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されていることを特徴とする大判プリンター。
【請求項2】
記第1ケーブルと前記第2ケーブルは、複数の前記第1配線と、複数の前記第2配線とを備え、
前記第1ケーブルにおける複数の前記第1配線のうち配線配列方向に一番端部に位置する前記第1配線と、前記第2ケーブルにおける複数の前記第1配線のうち配線配列方向に一番端部に位置する前記第3配線の隣に位置する前記第1配線とが、前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されているか、
及び/又は、前記第1ケーブルにおける複数の前記第2配線のうち配線配列方向に一番端部に位置する前記第3配線の隣に位置する前記第2配線と、前記第2ケーブルにおける複数の前記第2配線のうち配線配列方向に一番端部に位置する前記第2配線とが、前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載の大判プリンター。
【請求項3】
前記印刷ヘッドは、同種の色を印刷するために駆動される複数の駆動素子を含む1つ又は複数の駆動素子群を備え、
前記第1ケーブルと前記第2ケーブルは、前記同種の色を印刷する前記駆動素子群に前記第1駆動信号を伝搬する複数の前記第1配線と、前記第2駆動信号を伝搬する複数の前記第2配線とを備える、ことを特徴とする請求項2記載の大判プリンター。
【請求項4】
異なる色を印刷する複数の駆動素子群を備え、
同種の色を印刷する前記駆動素子群をQ個(但し、Qは2以上の自然数)備え、
前記Q個ずつの前記駆動素子群に供給される前記第1駆動信号を伝搬する前記Q個ずつの前記第1配線が前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続され、
前記Q個ずつの前記駆動素子群に供給される前記第2駆動信号を伝搬する前記Q個ずつの前記第2配線が前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の大判プリンター。
【請求項5】
前記シリアル印刷が可能な最大幅が、24インチ以上75インチ以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の大判プリンター。
【請求項6】
前記シリアル印刷が可能な最大幅が、24インチ、36インチ、44インチ、64イン
チのいずれかに対応していることを特徴とする請求項5に記載の大判プリンター。
【請求項7】
前記印刷ヘッドは、30kHz以上の周波数で液体を吐出して印刷することを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の大判プリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ヘッドが走査方向に往復移動して大判サイズ(例えばA3短辺幅以上のサイズ)の媒体にシリアル印刷を行う大判プリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷装置の筐体に取り付けられた制御基板から制御信号と駆動信号とをフレキシブルケーブル(ケーブルの一例)を介して印刷ヘッドに供給し、往復移動する印刷ヘッドが駆動信号に基づいて液滴を吐出してシリアル印刷を行うインクジェット式のプリンターが開示されている。また、特許文献2には、印刷ヘッドと、駆動パルスを発生させて印字ヘッドに印加する駆動回路(キャリッジ基板)とが搭載されたキャリッジが往復移動し、印刷ヘッドから液滴を吐出することで画像を印刷する印刷装置が開示されている。この印刷装置では、印刷ヘッド側の駆動回路は、本体側の制御回路(制御基板)とフレキシブルケーブルを介して接続されており、制御回路からフレキシブルケーブルを介して受信した駆動信号に基づき印刷ヘッドを駆動させる。
【0003】
ところで、大判(例えばA3短辺幅以上のサイズ)の媒体にシリアル印刷を行う大判プリンター(ラージフォーマットプリンター(LFP:Large Format Printer))では、媒体の想定最大幅に応じて印刷ヘッドの移動距離が長くなり、印刷ヘッドと制御基板(制御回路)とを接続するケーブルが1m以上になり得る。
【0004】
また、例えば特許文献3には、ケーブルが2つのフレキブルなフラットケーブルを重ねて配置して構成され、2つのフラットケーブルには、同じの波形を有する駆動信号COMA〜COMDとグランド信号AGNDA〜AGNDD(基準電圧信号の一例)とが伝搬される複数の配線(芯線)が配列されている。2つのフラットケーブルのそれぞれにおいて、駆動信号が伝搬される駆動信号用の配線と、グランド信号が伝搬されるグランド用の配線とが隣合い、かつ駆動信号用の配線とグランド用の配線とがケーブルの重ね方向において対向している。
【0005】
また、駆動信号として、第1波形を含む第1駆動信号と、第1波形とは異なる第2波形を含む第2駆動信号との2種類の駆動信号を用いて印刷ヘッドを駆動させる構成のプリンターも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−133358号公報
【特許文献2】特開2002−19106号公報
【特許文献3】特開2003−226006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、大判プリンターにおいてケーブルが長くなるほど、配線のインダクタンス及びインピーダンスが大きくなる。このため、ケーブル中の長尺な配線に浮遊するインダクタンスに起因し配線を伝搬される駆動信号間で相互誘導が発生する。したがって、特許文献1、2に開示された印刷装置を大判プリンターに適用した場合、制御回路から駆動信号を長尺なケーブルを介して印刷ヘッドに供給する過程で、駆動信号に相互誘導等に起因する比較的大きなオーバーシュートが発生し易くなる。また、駆動信号として、互いに波形の異なる第1駆動信号と第2駆動信号とを用いる場合、第1ケーブルと第2ケーブル中の各配線を伝搬される同種の駆動信号間(第1駆動信号間/第2駆動信号間)の相互誘導に起因するオーバーシュートの低減効果が得られるケーブル配線構造については、特許文献1〜3に開示も示唆もなされていない。
【0008】
その結果、駆動信号のオーバーシュートによって、印刷ヘッドに搭載されている回路又は駆動素子に耐圧(定格電圧)を超える過電圧が瞬時的に印加され、印刷ヘッドが故障する恐れがある。また、オーバーシュートが発生した駆動信号が印刷ヘッドに印加されると、印字精度や印字安定性の低下又は液滴の誤吐出等の誤動作が生じ易くなり、印刷品質の乱れが発生し得る。なお、この種の課題は、液滴を吐出する液体吐出方式(インクジェット方式)のプリンターに限らず、ドットインパクト方式や熱転写方式等の他の記録方式で印刷する大判プリンターにも概ね共通する。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、波形の異なる複数種の駆動信号をケーブルを介して伝搬する構成において、駆動信号間の相互誘導に起因するオーバーシュートを低減し、印刷ヘッドの故障及び印刷品質の乱れ等の問題の少なくとも1つを低減可能な大判プリンターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する大判プリンターは、A3短辺幅以上の媒体に対してシリアル印刷が可能な大判プリンターであって、第1波形を含む第1駆動信号と第2波形を含む第2駆動信号と基準電圧信号とを出力する駆動信号生成回路を備えた制御回路と、印加された電圧に応じて印刷する複数の駆動素子を有する印刷ヘッドと、前記制御回路と前記印刷ヘッドとを接続するケーブルと、を備え、前記印刷ヘッドは、前記ケーブルを通じて入力した前記第1駆動信号中の第1波形と前記第2駆動信号中の第2波形とのうちから選択した波形に応じた電圧を前記駆動素子に印加するヘッド駆動回路を備え、前記ケーブルは、前記第1駆動信号を伝搬する第1配線と、前記第2駆動信号を伝搬する第2配線と、前記基準電圧信号を伝搬する第3配線とを有する第1ケーブル及び第2ケーブルを重ねた状態に含み、前記第1ケーブル及び第2ケーブルは、前記第1配線と前記第3配線とが隣合うとともに前記第2配線と前記第3配線とが隣合い、かつ重ね方向において、前記第1配線と第3配線とが対向し、前記第2配線と第3配線とが対向している。
【0011】
この構成によれば、第1ケーブルと第2ケーブルでは第1配線と第3配線とが隣合い、第2配線と第3配線とが隣合い、かつ第1ケーブルと第2ケーブルとの重ね方向において、第1配線と第3配線とが対向し、第2配線と第3配線とが対向する。よって、波形の異なる複数種の駆動信号をケーブルを介して伝搬する構成において、駆動信号間の相互誘導に起因するオーバーシュートを効果的に低減することができる。
【0012】
上記大判プリンターにおいて、前記第1ケーブルの前記第1配線と前記第2ケーブルの前記第1配線とが前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されているか、又は前記第1ケーブルの前記第2配線と前記第2ケーブルの前記第2配線とが前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されていることが好ましい。
上記課題を解決する大判プリンターは、A3短辺幅以上の媒体に対してシリアル印刷が可能な大判プリンターであって、第1波形を含む第1駆動信号と第2波形を含む第2駆動信号と基準電圧信号とを出力する駆動信号生成回路を備えた制御回路と、印加された電圧に応じて印刷する複数の駆動素子を有する印刷ヘッドと、前記制御回路と前記印刷ヘッドとを接続するケーブルと、を備え、前記印刷ヘッドは、前記ケーブルを通じて入力した前記第1駆動信号中の第1波形と前記第2駆動信号中の第2波形とのうちから選択した波形に応じた電圧を前記駆動素子に印加するヘッド駆動回路を備え、前記ケーブルは、前記第1駆動信号を伝搬する第1配線と、前記第2駆動信号を伝搬する第2配線と、前記基準電圧信号を伝搬する第3配線とを有する第1ケーブル及び第2ケーブルを重ねた状態に含み、前記第1ケーブル及び第2ケーブルは、前記第1配線と前記第3配線とが隣合うとともに前記第2配線と前記第3配線とが隣合い、かつ重ね方向において、前記第1配線と第3配線とが対向し、前記第2配線と第3配線とが対向しており、前記第1ケーブルの前記第1配線と前記第2ケーブルの前記第1配線とが前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されているか、及び/又は、前記第1ケーブルの前記第2配線と前記第2ケーブルの前記第2配線とが前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されている。
【0013】
この構成によれば、第1ケーブルにおける駆動信号間の相互誘導による磁界の影響度と、第2ケーブルにおける駆動信号間の相互誘導による磁界の影響度とを平均化し緩和することができる。よって、駆動信号の相互誘導に起因するオーバーシュートを一層効果的に低減することができる。
【0014】
上記大判プリンターにおいて、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルは、複数の前記第1配線と、複数の前記第2配線とを備え、前記第1ケーブルにおける複数の前記第1配線のうち配線配列方向に一番端部に位置する前記第1配線と、前記第2ケーブルにおける複数の前記第1配線のうち配線配列方向に一番端部に位置する前記第3配線の隣に位置する前記第1配線とが、前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されているか、及び/又は、前記第1ケーブルにおける複数の前記第2配線のうち配線配列方向に一番端部に位置する前記第3配線の隣に位置する前記第2配線と、前記第2ケーブルにおける複数の前記第2配線のうち配線配列方向に一番端部に位置する前記第2配線とが、前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されている。
上記大判プリンターにおいて、前記印刷ヘッドは、同種の色を印刷するために駆動される複数の駆動素子を含む1つ又は複数の駆動素子群を備え、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルは、前記同種の色を印刷する前記駆動素子群に前記第1駆動信号を伝搬する複数の前記第1配線と、前記第2駆動信号を伝搬する複数の前記第2配線とを備える。
上記大判プリンターにおいて、前記印刷ヘッドは、同種の色を印刷するために駆動される複数の駆動素子を含む1つ又は複数の駆動素子群を備え、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルは、前記同種の色を印刷する前記駆動素子群に前記第1駆動信号を伝搬する複数の前記第1配線と、前記第2駆動信号を伝搬する複数の前記第2配線とを備え、前記第1ケーブルにおける複数の前記第1配線のうち配線配列方向に一番端部に位置する前記第1配線と、前記第2ケーブルにおける複数の前記第1配線のうち配線配列方向に一番端部に位置する前記第3配線の隣に位置する前記第1配線とが、前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されているか、前記第1ケーブルにおける複数の前記第2配線のうち配線配列方向に一番端部に位置する前記第3配線の隣に位置する前記第2配線と、前記第2ケーブルにおける複数の前記第2配線のうち配線配列方向に一番端部に位置する前記第2配線とが、前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されている、ことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1ケーブルと第2ケーブルのうち一方において、駆動信号間の相互誘導による磁界の影響度の最大値と、他方において駆動信号間の相互誘導による磁界の影響度の最小値とが、2つの第1配線の導通により平均化される。あるいは、第1ケーブルと第2ケーブルのうち一方において、駆動信号間の相互誘導による磁界の影響度の最大値と、他方において駆動信号間の相互誘導による磁界の影響度の最小値とが、2つの第2配線の導通により平均化される。よって、駆動信号の相互誘導に起因するオーバーシュートを効果的に低減することができる。
【0016】
上記大判プリンターにおいて、異なる色を印刷する複数の駆動素子群を備え、同種の色を印刷する前記駆動素子群をQ個(但し、Qは2以上の自然数)備え、前記Q個ずつの前記駆動素子群に供給される前記第1駆動信号を伝搬する前記Q個ずつの前記第1配線が前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続され、前記Q個ずつの前記駆動素子群に供給される前記第2駆動信号を伝搬する前記Q個ずつの前記第2配線が前記印刷ヘッドにおいて電気的に接続されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、Q個ずつの第1配線間で、相互誘導による磁界の影響度の最大値と最小値とが平均化されるとともに、Q個ずつの第2配線間で、相互誘導による磁界の影響度の最大値と最小値とが平均化される。よって、第1駆動信号と第2駆動信号に発生するオーバーシュートを効果的に低減することができる。
【0018】
上記大判プリンターでは、前記シリアル印刷が可能な最大幅が、24インチ以上75インチ以下であることが好ましい。
この構成によれば、24インチ以上75インチ以下の最大幅でシリアル印刷が可能な程度にケーブルが長くても、ケーブルを伝搬される過程で駆動信号にオーバーシュートが発生することを効果的に抑制できる。
【0019】
上記大判プリンターでは、前記シリアル印刷が可能な最大幅が、24インチ、36インチ、44インチ、64インチのいずれか1つに対応していることが好ましい。
この構成によれば、ケーブルが、24インチ、36インチ、44インチ、64インチのいずれか1つのシリアル印刷に対応する比較的長いものであっても、ケーブルを伝搬される過程で駆動信号にオーバーシュートが発生することを効果的に抑制できる。
【0020】
上記大判プリンターでは、前記印刷ヘッドは、30kHz以上の周波数で液体を吐出して印刷することが好ましい。
この構成によれば、印刷ヘッドが30kHz以上の周波数で液体を吐出する構成の大判プリンターであって、フレキシブルケーブルを伝搬する駆動信号が高周波数であってその伝搬の過程でオーバーシュートが発生し易くても、その発生したオーバーシュートを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態における大判プリンターの概略斜視図。
図2】印刷ヘッドの吐出面と駆動素子とを示す模式図。
図3】制御回路と印刷ヘッドとがケーブルで接続された様子を示す模式正面図。
図4】大判プリンターの電気的構成を示すブロック図。
図5】第1駆動信号、第2駆動信号、ラッチ信号、チェンジ信号及び印刷データ信号を示すタイミングチャート。
図6】デコーダーにおけるデコード内容を示す図。
図7】駆動素子に印加される駆動信号と液滴サイズとの関係を示す信号波形図。
図8】選択部の構成を示す回路図。
図9】ケーブルにおける駆動信号が伝搬される部分を幅方向に沿って切断した模式断面図。
図10】制御回路とヘッド基板との詳細な電気的構成を示すブロック図。
図11】制御回路と印刷ヘッドとを接続するケーブル中の配線に浮遊するインダクタンスを示す等価回路。
図12図11に示された等価回路で各インダクターが受ける相互誘導による磁界の影響度を表で示した図。
図13】比較例における第1フラットケーブルと第2フラットケーブルとを伝搬される駆動信号及び基準電圧信号の配列を示す模式図。
図14】実施例における第1フラットケーブルと第2フラットケーブルとを伝搬される駆動信号及び基準電圧信号の配列を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、大判プリンターに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の大判プリンター11(ラージフォーマットプリンター)は、シリアルスキャン型(シリアル印刷型)のプリンターである。大判プリンター11は、例えば外部のホストコンピューターから供給された画像データに応じて液滴(例えばインク)を吐出させることによって、紙又はフィルム等の媒体M(印刷媒体)にドット群を形成し、これにより画像(文字や図形等を含む)を印刷するインクジェットプリンターである。なお、本実施形態では、大判プリンター11において、後述するキャリッジ24の移動方向を主走査方向X、媒体Mの搬送方向を副走査方向Y、鉛直方向(図1の例では鉛直上向き(高さ方向))をZとして説明する。また、主走査方向Xと、副走査方向Yと、鉛直方向Zとは互いに直交する3軸として図面に記載するが、各構成の配置関係が必ずしも直交するものに限定されるものではない。
【0023】
本実施形態において、大判プリンターとは、A3短辺幅(297mm)以上の媒体Mにシリアル印刷を行うことが可能なプリンターである。そのため、大判プリンター11では、図1に示されるヘッドユニット23が、A3短辺幅以上の印刷幅でシリアル印刷が可能な移動範囲に亘り主走査方向Xに往復移動可能となっている。
【0024】
まず図1を参照して大判プリンター11の概略構成を説明する。図1に示すように、大判プリンター11は、車輪12が下端に取り付けられた支持スタンド13と、支持スタンド13に支持された略直方体状の装置本体14(以下、単に「本体14」ともいう。)とを有する。本体14の後部において上方へ突出する給送部15内には、長尺の用紙又はフィルム等の媒体Mが円筒状に巻き重ねられたロール体16(例えばロール紙等)が装填されている。給送部15から送り出された媒体Mは本体14の筐体17内へ導入され、筐体17内に設けられた不図示の搬送装置(搬送部)により搬送される。そして、搬送装置によって搬送される媒体Mに対してヘッドユニット23が液滴(例えばインク滴)を吐出することにより媒体Mに画像が印刷される。印刷後の媒体Mは、筐体17の前面側に開口する排出口18から排出され、その下方に取り付けられた媒体受けユニット19により受け取られる。
【0025】
また、本体14の上面端部には、ユーザーが大判プリンター11の設定操作及び入力操作を行うための操作パネル20が取り付けられている。さらに、本体14の一端下部には、液体収容ユニット21が設けられている。液体収容ユニット21には、液体の一例としてのインクを収容している液体収容部22(例えばインクカートリッジ又はインクタンク)を着脱可能な状態で複数(図1の例では4つ)取り付けられている。複数の液体収容部22は、それぞれ異なる種類(例えば色)の液体(例えばインク)を収容している。液体収容部22は、液体がインクの例では、例えば黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)を含む複数色のインクがそれぞれ1色ずつ収容された4つ以上の複数設けられている。なお、図1の例では、4色に対応する4つの液体収容部22が図示されているが、例えば、グレー、グリーン、バイオレット等の他の色に対応する液体収容部22を少なくとも1つ含む5つ以上の液体収容部22が備えられてもよい。
【0026】
また、筐体17内には、媒体Mに対し液滴(インク滴)を吐出し、媒体Mに印刷を行うヘッドユニット23が設けられている。ヘッドユニット23は、キャリッジ24と、媒体Mと対向するようにキャリッジ24に搭載された印刷ヘッド25とを有する。キャリッジ24は、本体14内に主走査方向Xに往復移動可能な状態で収容されている。各液体収容部22からヘッドユニット23へは不図示のチューブを通じて各色の液体(インク)が供給される。なお、大判プリンター11は、液体収容ユニット21が本体14に取り付けられたオフキャリッジタイプの構成に限らず、キャリッジ24に複数の液体収容部22が取り付けられたオンキャリッジタイプの構成でもよい。
【0027】
次に、図2を参照して印刷ヘッド25について説明する。図2は、印刷ヘッド25において液滴を吐出可能な多数のノズル31が開口する吐出面25A(ノズル開口面)を示す。図2に示すように、印刷ヘッド25の吐出面25Aには、それぞれ多数のノズル31が副走査方向Yに沿って所定のピッチPy(ノズルピッチ)で並ぶノズル列32を2つ(2列)ずつ有する4つのノズルプレート33が主走査方向Xに沿って並んで設けられている。1ノズル列当たりのノズル31の個数Fは、例えば100〜600個の範囲内の値(例えば400個)である。各ノズルプレート33に設けられている2つのノズル列32は、互いに各ノズル31が副走査方向YにピッチPyの半分だけシフトした関係となっている。本実施形態では吐出面25Aに8つのノズル列32が設けられている。図2に示された例では、同じノズルプレート33に設けられた2つのノズル列32が同一色のインクを吐出し、副走査方向YにノズルピッチPyの1/2の距離に対応する高解像度で、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色の液滴の吐出による印刷が可能である。なお、印刷ヘッド25に5つ以上(例えば6つ又は8つ)のノズルプレート33を設けてもよい。また、ノズルプレート33にノズル列32を1列のみ設け、1色につき1つのノズル列32を対応させ、印刷ヘッド25がノズルピッチPyに対応する解像度で液滴を吐出可能な構成でもよい。
【0028】
また、図2に示すように、印刷ヘッド25には、ノズル31と同数の駆動素子34が内蔵されている。図2では、印刷ヘッド25の外側に一部の駆動素子34を模式的に描いているが、実際には駆動素子34は印刷ヘッド25内のノズル31と対向する位置に配置されている。そして、組をなす1つのノズル31と1つの駆動素子34とにより1つの吐出部35が構成されている。印刷ヘッド25には、例えば1ノズル列当たりのノズル31の数Fと同数の吐出部35からなる吐出部群36(駆動素子群の一例)が、ノズル列32の数と同数(図2の例では8つ)(但し、図2では1つのみ図示)設けられている。
【0029】
なお、吐出部群36の数は1つ又は複数でもよく、複数の場合は例えば2〜30の範囲内の値で適宜変更できる。また、1つの吐出部群36が1つのノズル列32に対応する構成に限らず、1つの吐出部群36が2つのノズル列32分の数の吐出部35により構成されたり、1つのノズル列32が複数の吐出部群と対応する構成であったりしてもよい。
【0030】
図2に示される駆動素子34は、例えば圧電素子(ピエゾ素子)により構成される。駆動素子34は、後述する所定の波形を有する駆動信号(駆動電圧)が印加されると、電歪作用により、ノズル31に連通するキャビティーの内壁部の一部を構成する振動板を振動させ、キャビティーを膨張・圧縮させることによりノズル31から液滴を吐出する。なお、駆動素子34は、駆動信号(駆動電圧)の印加により駆動される限りにおいて、圧電素子以外に、静電作用により駆動される静電駆動素子でもよいし、さらに液体(インク)を加熱して沸騰により発生した気泡の圧力(膨張圧)を利用してノズルから液滴を吐出させるヒーター素子でもよい。このように印刷ヘッド25は、ピエゾ駆動方式、静電駆動方式、サーマル駆動方式のいずれでもよい。
【0031】
図3は、大判プリンター11におけるシリアル印刷が行われる部分を副走査方向Yの下流側から見たときの概略内部構成を示す。図3に示すように、大判プリンター11は、ヘッドユニット23、ガイド軸41、支持台42、キャッピング機構43及びメンテナンス機構44を備えている。
【0032】
ヘッドユニット23は、不図示のキャリッジ移動機構の制御に基づき、ガイド軸41に沿って可動領域Rの範囲内において主走査方向Xに移動(往復動)する。ヘッドユニット23はキャリッジ24に搭載されている印刷ヘッド25の吐出面25Aが、媒体Mと対向する向きに配置される。
【0033】
支持台42は、媒体Mに対しインク滴が吐出されたときに、媒体Mを印刷ヘッド25の吐出面25Aから液滴の吐出方向(本例では鉛直方向Z)に所定の距離(ギャップ)を隔てた位置に保持する。大判プリンター11に設けられた搬送部は、支持台42に保持された媒体Mを副走査方向Yに搬送する複数のローラー対(いずれも図示略)を有する。大判プリンター11は、印刷ヘッド25が主走査方向Xに移動する過程でインク滴を吐出して媒体Mに対して1パス(例えば1行)分の印刷をする印字動作と、搬送部の駆動により媒体Mを複数のローラー対により次行の印刷位置まで搬送する搬送動作とを交互に繰り返すことにより、媒体Mに対するシリアル印刷を行う。なお、搬送部は、複数のローラー対に加え又は替えて、搬送ベルトを備えた構成でもよい。
【0034】
図3に示すヘッドユニット23によるシリアル印刷が可能な最大幅(以下、「最大印刷幅」という)は、支持台42の主走査方向Xの幅である支持幅PWと同等である。支持幅PWは、媒体Mを安定して保持・搬送するために主走査方向Xにおける媒体Mの幅である媒体幅Wの規格寸法Ws(想定される最大規格サイズの媒体の幅寸法)よりも広く設定される。本実施形態では、支持幅PW(すなわち最大印刷幅)は、規格寸法Wsの115%以下となっている。
【0035】
本実施形態の大判プリンター11は、シリアル印刷が可能な最大幅(最大印刷幅)が、24インチ以上75インチ以下となっている。例えば、媒体幅Wの規格寸法Wsが24インチである大判プリンター11は、最大印刷幅が24インチに対応するプリンター(「24インチ対応プリンター」と呼ばれる)であり、具体的には、最大印刷幅が24インチよりも大きく27.6インチ以下のプリンターである。また、媒体幅Wの規格寸法Wsが36インチである大判プリンター11は、最大印刷幅が36インチに対応するプリンター(「36インチ対応プリンター」と呼ばれる)であり、具体的には、最大印刷幅が36インチよりも大きく41.4インチ以下のプリンターである。また、媒体幅Wの規格寸法Wsが44インチである大判プリンター11は、最大印刷幅が44インチに対応するプリンター(「44インチ対応プリンター」と呼ばれる)であり、具体的には、最大印刷幅が44インチよりも大きく50.6インチ以下のプリンターである。また、媒体幅Wの規格寸法Wsが64インチである大判プリンター11は、最大印刷幅が64インチに対応するプリンター(「64インチ対応プリンター」と呼ばれる)であり、具体的には、最大印刷幅が64インチよりも大きく73.6インチ以下のプリンターである。なお、上記の最大印刷幅であることに限定されず、ケーブル45が1メートル以上の長さを有する大判プリンター11であればよい。
【0036】
図3に示すヘッドユニット23の移動(往復動)の起点であるホームポジションHPには、印刷ヘッド25の吐出面25Aを封止するキャッピング機構43が設けられている。ホームポジションHPは、大判プリンター11が、印刷を実行していないときに、ヘッドユニット23を待機させる位置でもある。
【0037】
また、ヘッドユニット23の可動領域Rにおいて、ホームポジションHPから最も遠い場所には、メンテナンス機構44が設けられている。メンテナンス機構44は、メンテナンス処理として、吐出面25Aを不図示のキャップで塞ぐ状態の下で、キャップを通じてノズル31内の増粘したインクや気泡等をチューブポンプ(図示省略)により吸引するクリーニング処理、及び吐出面25Aにおけるノズル近傍に付着した紙粉等の異物をワイパーにより拭き取るワイピング処理を行う。
【0038】
また、図3に示す大判プリンター11は、その全体の制御を司る制御回路50(コントローラー)を備えている。制御回路50は、本体14(図1を参照)内の所定の場所に固定されている。そして、本体側の制御回路50と印刷ヘッド25は、フレキシブルなケーブル45を介して電気的に接続されている。ケーブル45は、例えばフレキシブルフラットケーブル(FFC:Flexible Flat Cable)からなる。制御回路50と印刷ヘッド25との間を接続するケーブル45の長さは、シリアル印刷が可能な最大幅の長い大判プリンター11ほど長くなっている。制御回路50と印刷ヘッド25との間を接続するケーブル45は、ヘッドユニット23(つまり印刷ヘッド25)の往復動に伴って変形する。
【0039】
本実施形態の制御回路50は、制御基板51と駆動回路基板52とを備えている。制御基板51と駆動回路基板52との間はケーブル46を介して接続されている。また、ケーブル45は、制御基板51から印刷ヘッド25へ制御信号及び電源電圧信号VHV(図4を参照)を含む複数の信号を伝達するケーブル47と、駆動回路基板52から印刷ヘッド25へ駆動信号COMA,COMB(図4を参照)を含む複数の信号を伝達するケーブル48とを含む。また、図3に示す印刷ヘッド25にはヘッド基板60が搭載されている。そして、制御回路50とヘッド基板60との間はケーブル45(47,48)を介して接続されている。
【0040】
ヘッド基板60には、制御回路50からケーブル45を伝搬した駆動信号COMA,COMBと印刷データ信号SIn(いずれも図4図5を参照)とが供給される。詳しくは、ヘッド基板60には、制御基板51からケーブル47を伝搬した印刷データ信号SIn及び電源電圧信号VHVが供給されるとともに、駆動回路基板52からケーブル48を伝搬した駆動信号COMA,COMBが供給される。ヘッド基板60は、駆動信号COMA,COMBと印刷データ信号SInとに基づいて各吐出部35(図2を参照)を駆動させる。印刷ヘッド25は、駆動素子34(図2を参照)に印加される駆動信号COMA,COMBの変化に伴い各ノズル31から液体(インク)を吐出することにより印刷する。なお、制御回路50を、制御基板51と駆動回路基板52とをまとめて1つの基板により構成してもよい。また、ケーブル45の一端をキャリッジ24上の端子に接続し、この端子とヘッド基板60との間を別のケーブルを介して接続してもよい。要するに、本体側の制御回路50と印刷ヘッド25との間がケーブル45で接続されていれば足りる。
【0041】
図4は、大判プリンターにおける印刷ヘッドの制御系の電気的構成を示す。図4に示すように、大判プリンター11は、前述のとおり、ケーブル45を通じて互いに接続された制御回路50と印刷ヘッド25とを備えている。制御回路50は、前述の制御基板51と駆動回路基板52とを含んでいる。制御基板51には、制御部53と制御信号送信部54と電源回路55とが実装されている。また、駆動回路基板52には、複数(図4の例では4つ)の駆動信号生成回路56が実装されている。
【0042】
制御部53は、例えばマイクロコントローラー等のプロセッサーで実現される。制御部53は、ホストコンピューターからの画像データ等の各種の信号に基づき、吐出部35からの液体の吐出を制御する複数種の制御信号を生成する。制御部53は、制御信号として、複数(例えば8つ)の印刷データ信号SI1〜SI8、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH及びクロック信号SCKを生成し、制御信号送信部54に出力する。印刷データ信号SI1〜SI8は、複数色(例えば4色)のインクの吐出制御に用いられる制御信号であり、色ごとに2つずつ計8つの吐出部群36をそれぞれ制御対象とする。つまり、印刷データ信号SIn(但し、添字nはn=1,2,…,iであり、iはノズル列数)は、吐出部群36ごとに生成される。
【0043】
制御信号送信部54は、制御部53から出力される複数の印刷データ信号SI1〜SI8、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH及びクロック信号SCKを、ケーブル45を通じて印刷ヘッド25のヘッド基板60に供給する。制御信号送信部54は、例えば、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)転送方式の差動信号を生成する。LVDS転送方式の差動信号はその振幅が350mV程度であるため高速データ転送を実現することができる。なお、制御信号送信部54は、LVDS以外のLVPECL(Low Voltage Positive Emitter Coupled Logic)やCML(Current Mode Logic)等の各種の高速転送方式の差動信号を生成してもよい。また、差動信号を用いない高速転送方式を採用してもよい。
【0044】
図4に示す電源回路55は、電源電圧(例えば42V)の電源電圧信号VHV及びグランド電圧(0V)のグランド信号GNDを生成する。電源電圧信号VHVは、駆動回路基板52上の各駆動信号生成回路56へ伝送されるとともに、ケーブル45を介してヘッド基板60上の各ヘッド駆動回路61を含む各回路に供給される。また、グランド信号GNDは、駆動回路基板52上の各駆動信号生成回路56へ伝送されるとともに、ケーブル45を介してヘッド基板60上の各ヘッド駆動回路61を含む各回路に供給される。
【0045】
また、図4に示す制御部53は、ホストコンピューターから供給される各種の信号に基づいて、印刷ヘッド25の各吐出部35を駆動させる駆動信号COMA,COMBの元となるデジタルデータからなる所定ビットの波形データCOMA−D,COMB−Dを生成する。制御部53は、波形データCOMA−D,COMB−Dを、駆動回路基板52上の駆動信号生成回路56に与える。
【0046】
図4に示す駆動信号生成回路56は、制御部53からの所定ビットの波形データCOMA−Dを基に第1駆動信号COMAを生成するとともに、波形データCOMB−Dを基に第2駆動信号COMBを生成する。詳しくは、駆動信号生成回路56は、波形データCOMA−Dに基づいて生成したデジタルの波形信号をD/A変換して増幅することにより少なくとも1つの波形を含む第1駆動信号COMAを生成する。また、駆動信号生成回路56は、波形データCOMB−Dに基づいて生成したデジタルの波形信号をD/A変換して増幅することにより少なくとも1つの波形を含む第2駆動信号COMBを生成する。
【0047】
また、駆動回路基板52には、電源回路55からの電源電圧信号VHVを、一定電圧(例えば7.5V)の電源電圧信号GVDD、及び一定電圧(例えば3.3V)の低電源電圧信号VDDに変換する不図示の電圧変換回路が実装されている。電圧変換回路は、例えば電源電圧信号VHVを駆動信号生成回路56に供給するとともにケーブル45を通じてヘッド基板60に低電源電圧信号VDDを供給する。各駆動信号生成回路56は、電圧変換回路から出力される電源電圧信号GVDDから一定電圧(例えば6V)の基準電圧信号VBSを生成する。なお、各駆動信号生成回路56は、入力される波形データ、及び、出力する駆動信号が異なるのみであって、回路的な構成は同一であり、その詳細については後述する。
【0048】
図4に示す各駆動信号生成回路56が生成した第1駆動信号COMA、第2駆動信号COMB及び基準電圧信号VBSは、ケーブル45を通じてヘッド基板60に供給される。図4に示す例では、4つの駆動信号生成回路56は、それぞれ印刷ヘッド25における4種(4色)のうち同一種(同一色)のインクを吐出可能なノズル列32に対応する吐出部群36を構成する各吐出部35を駆動するための第1駆動信号COMA、第2駆動信号COMB及び基準電圧信号VBSを生成する。
【0049】
すなわち、1つめの駆動信号生成回路56は、第1色のインクを吐出可能な2つのノズル列32に対応する2つの吐出部群36を駆動するための第1駆動信号COMA1、第2駆動信号COMB1及び基準電圧信号VBS1を生成する。また、2つめの駆動信号生成回路56は、第2色のインクを吐出可能な2つのノズル列32に対応する2つの吐出部群36を駆動するための第1駆動信号COMA2、第2駆動信号COMB2及び基準電圧信号VBS2を生成する。さらに、3つめの駆動信号生成回路56は、第3色のインクを吐出可能な2つのノズル列32に対応する2つずつの吐出部群36を駆動するための第1駆動信号COMA3、第2駆動信号COMB3及び基準電圧信号VBS3を生成する。そして、4つめの駆動信号生成回路56は、第4色のインクを吐出可能な2つのノズル列32に対応する2つずつの吐出部群36を駆動するための第1駆動信号COMA4、第2駆動信号COMB4及び基準電圧信号VBS4を生成する。
【0050】
各駆動信号生成回路56が生成する第1駆動信号COMA1〜COMA4、第2駆動信号COMB1〜COMB4及び基準電圧信号VBS1〜VBS4は、ケーブル45を通じて印刷ヘッド25内のヘッド基板60に供給される。図4に示す印刷ヘッド25では、インク色ごとに2つずつ設けられた吐出部群36及びヘッド駆動回路61を半数の1つずつのみ図示している。第1駆動信号COMA1〜COMA4は、図4に示されたケーブル45中の配線(芯線)の数(4本)の2倍の数(8本)の配線を通じて印刷ヘッド25へ伝搬される。第2駆動信号COMB1〜COMB4は、図4に示されたケーブル45中の配線(芯線)の数(4本)の2倍の数(8本)の配線を通じて印刷ヘッド25へ伝搬される。また、基準電圧信号VBS1〜VBS4は、図4に示されたケーブル45中の配線の数(4本)の4倍の数(16本)の配線を通じて印刷ヘッド25へ伝搬される(図9図14を参照)。各駆動信号生成回路56から出力される駆動信号COMA1〜COMA4はすべて同じ波形の信号であり、駆動信号COMB1〜COMB4はすべて同じ波形の信号である。また、基準電圧信号VBS1〜VBS4はすべて同じ一定電位の信号である。
【0051】
制御回路50が、例えばi個(本例では8つ)の吐出部群36を吐出制御する構成において、駆動信号がj種(本例では2種)の駆動信号COMA,COMBを含むマルチ駆動方式である場合、ケーブル45中のi×j本(例えば16本)の配線が駆動信号COMA,COMBの伝搬に使用される。つまり、第1駆動信号COMA1〜COMA4の伝搬に2本ずつ(1色当たりのノズル列数ずつ)の配線が使用され、計i本(例えば8本)の配線が使用される。第2駆動信号COMB1〜COMB4の伝搬に2本ずつの配線が使用され、計i本(例えば8本)の配線が使用される。また、基準電圧信号VBS1〜VBS4の伝搬に4本ずつの配線が使用され、計i×j本(例えば16本)の配線が使用される。なお、制御回路50は、例えば1種類の駆動信号COMを用いて吐出制御するシングル駆動方式でもよく、この場合、ケーブル45中のi本の配線が駆動信号COMの伝搬に使用され、i本の配線が基準電圧信号VBSの伝搬に使用される。なお、以下の説明において、インク色ごとの4種の信号を特に区別しない場合は、単に第1駆動信号COMA、第2駆動信号COMB、基準電圧信号VBSと記す。
【0052】
なお、制御部53は、印刷ヘッド25(ヘッド基板60)からケーブル45を通じて伝搬される不図示の温度信号THに応じて、駆動信号COMA,COMBの波形が補正されるように波形データCOMA−D,COMB−Dを生成する。また、制御部53は、印刷ヘッド25(ヘッド基板60)からケーブル45を通じて伝搬される異常信号XHOTが異常を示す信号値(例えばハイレベル)である場合、駆動信号生成回路56への波形データCOMA−D,COMB−Dの供給を停止し、印刷ヘッド25からの液滴の吐出を停止させる。
【0053】
また、制御部53は、上記の処理以外にも、ヘッドユニット23(つまりキャリッジ24)の走査位置(現在位置)を把握し、ヘッドユニット23の走査位置に基づき不図示のキャリッジモーターを駆動制御することにより、ヘッドユニット23の主走査方向Xへの移動を制御する。また、制御部53は、搬送部の動力源である不図示の搬送モーターを駆動制御することにより、媒体Mの副走査方向Yへの移動を制御する。さらに、制御部53は、メンテナンス機構44(図3を参照)に、メンテナンス処理(クリーニング処理及びワイピング処理)を実行させる。
【0054】
図4に示すように、ヘッド基板60には、8つの吐出部群36に対応して8つ(但し、図4では4つのみ図示)のヘッド駆動回路61が実装されている。また、ヘッド基板60には、ケーブル45を通じて伝搬された差動信号をそれぞれ差動増幅して、シングルエンドの印刷データ信号SI1〜SI8、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH及びクロック信号SCKに変換する不図示の制御信号受信部が設けられている。そして、印刷データ信号SI1〜SI8は、それぞれ対応するヘッド駆動回路61に供給され、8つの吐出部群36の吐出制御に用いられる。また、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH及びクロック信号SCKは、各ヘッド駆動回路61に共通に供給される。
【0055】
各ヘッド駆動回路61は、印刷データ信号SI1〜SI8のうち対応するいずれか1つ、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、クロック信号SCK及び駆動信号COMA,COMBに基づき、対応する吐出部群36を構成する吐出部35ごとに与える駆動信号VOUT(図7を参照)を生成し、各吐出部35へ出力する。駆動信号VOUTは吐出部35を構成する駆動素子34の一端に印加され、その他端には基準電圧信号VBSが印加される。各駆動素子34は、印加された駆動信号VOUTと基準電圧信号VBSとの電位差に応じて変位して液体を吐出させる。
【0056】
図4に示す各ヘッド駆動回路61の回路構成は基本的に同じであるため、同図では、印刷データ信号SI1が入力される1つのヘッド駆動回路61のみその詳細な回路構成を示している。図4に示すように、ヘッド駆動回路61は、シフトレジスター62、ラッチ回路63、制御ロジック64、デコーダー65、レベルシフター66及びスイッチ回路67を備えている。
【0057】
以下、ヘッド駆動回路61の構成及びその動作を説明するに当たり、まず図5を参照し、ヘッド駆動回路61に入力される、第1駆動信号COMA、第2駆動信号COMB、印刷データ信号SI1〜SI8、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH及びクロック信号SCKについて詳しく説明する。
【0058】
図5は、1ドット(1印刷画素)を形成するための液滴の吐出周期である印刷周期TAにおける、第1駆動信号COMA、第2駆動信号COMB、印刷データ信号SI1〜SI8、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH及びクロック信号SCKを示す。図5に示す例では、印刷周期TAは、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間T1と、チェンジ信号CHが立ち上がってから次にラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間T2とに分割される。
【0059】
図5に示すように、第1駆動信号COMAは、期間T1に配置された第1波形の一例としての波形Ap1(駆動パルス)と、期間T2に配置された第1波形の一例としての波形Ap2(駆動パルス)とを連続させたアナログ信号である。本例では、2つの波形Ap1,Ap2は、互いにほぼ同一の波形である。詳しくは、波形Ap1,Ap2は、所定の中心電位Vcを基準とする山形の台形波(山部)と谷形の台形波(谷部)とを時系列に連続させた波形となっている。
【0060】
また、図5に示すように、第2駆動信号COMBは、期間T1に配置された第2波形の一例としての台形波形Bp1(駆動パルス)と、期間T2に配置された第2波形の一例としての波形Bp2(駆動パルス)とを時系列に連続させたアナログ信号である。本例では、2つの波形Bp1,Bp2は、互いに異なる波形である。このうち、台形波形Bp1は、ノズル31の開孔部付近のインクを微振動させてインクの粘度の増大を抑制するための波形である。このため、仮に台形波形Bp1が駆動素子34の一端に供給されても、この駆動素子34に対応するノズル31からインク滴は吐出されない。また、波形Bp2は、波形Ap1(Ap2)とは形状の異なる波形であり、中心電位Vcを基準とする山形の台形波(山部)と谷形の台形波(谷部)とを時系列に連続させた波形である。波形Bp2が駆動素子34の一端に供給された場合、波形Ap1又はAp2が駆動素子34の一端に供給されたときにその駆動素子34に対応するノズル31から吐出される所定量よりも少ない量のインク滴の吐出が可能である。なお、波形Ap1,Ap2,Bp1,Bp2の開始タイミングの電圧と終了タイミングの電圧は、いずれも中心電位Vcで共通である。すなわち、波形Ap1,Ap2,Bp1,Bp2は、いずれも中心電位Vcから立ち上がり、中心電位Vcへ復帰する波形となっている。
【0061】
ところで、媒体Mにドットを形成する方法としては、インク滴を1回吐出させて、1つのドットを形成する方法(第1方法)があるが、これ以外の他の方法もある。例えば、単位期間(印刷周期TA)にインク滴を2回以上吐出可能として、単位期間において吐出された2以上のインク滴を着弾させ、当該着弾した2以上のインク滴を結合させることで、1つのドットを形成する方法(第2方法)や、これら2以上のインク滴を結合させることなく、2以上のドットを形成する方法(第3方法)がある。
【0062】
本実施形態では、第2方法によって、1つのドットについては、インクを最多で2回吐出させることで、「大ドット」、「中ドット」、「小ドット」及び「非記録(ドットなし)」の4階調を表現させる。この4階調を表現するために、本実施形態では、2種類の駆動信号COMA,COMBを用意して、それぞれにおいて、1周期TAに前半の波形パターンと後半の波形パターンとを持たせている。1周期のうち前半・後半の各期間T1,T2において、駆動信号COMA,COMBを、表現すべき階調に応じて選択又は非選択とし、その選択又は非選択により決まる波形を含む駆動信号VOUTを駆動素子34に供給する構成となっている。
【0063】
図5に示すように、印刷データ信号SI1〜SI8(SIn)は、それぞれ吐出データSIと波形選択用の定義データSPとを含む。詳しくは、印刷データ信号SI1〜SI8は、吐出部35に1画素(ドット)を形成させるための2ビットのドットデータを1ノズル列分のノズル数(例えば400)と同じ数だけ含む吐出データSIと、デコーダー65(図4)がドットデータをスイッチ回路67にオンオフを行わせる駆動信号VOUTに変換するための定義データSPとを含む。吐出データSIは、1画素当たり2ビットで表されるドットデータ(SIH,SIL)のうち上位ビットSIHのみを1ノズル列当たりのノズル数分集めた上位ビットデータSIHnと、下位ビットSILのみをノズル数分集めた下位ビットデータSILnとにより構成される。定義データSPは、吐出データSI中の2ビットのドットデータ(SIH,SIL)と、駆動信号COMA,COMB中の波形Ap1,Ap2,Bp1,Bp2(駆動パルス)のうち選択される波形との対応関係を定義付けた所定ビット数(例えば4ビット)のデータである。また、クロック信号SCKは、印刷データ信号SI1〜SI8と同じ出力期間に出力される。
【0064】
次に、図4に示すヘッド駆動回路61の構成及びその動作を説明する。印刷データ信号SInは、ヘッド駆動回路61における各シフトレジスター62に入力される。シフトレジスター62は不図示の第1シフトレジスター(第1SR)、第2シフトレジスター(第2SR)及び第3シフトレジスター(第3SR)を備える。第1SRには印刷データ信号SIn中の上位ビットデータSIHnが格納され、第2SRには下位ビットデータSILnが格納される。また、第3SRには印刷データ信号SIn中の定義データSPが格納される。
【0065】
図4に示すラッチ回路63は、ラッチ信号LATを入力し、シフトレジスター62(第1SRと第2SR)からの吐出データSI(SIHn,SILn)をラッチ信号LATに基づき保持し、印刷周期TAのタイミングごとにそれまで保持していた吐出データSIをデコーダー65へ出力する。
【0066】
図4に示す制御ロジック64には、制御回路50からのチェンジ信号CHと、シフトレジスター62からの定義データSPとが入力される。制御ロジック64は、定義データSPを翻訳して、チェンジ信号CHのタイミングで図6に示す真理値表データRDをデコーダー65へ送る。
【0067】
図4に示すデコーダー65は、ラッチ回路63から入力する吐出データSI中の2ビットのドットデータ(SIH,SIL)を、図6に示す真理値表データRDを参照して期間T1,T2ごとにデコードし、2ビットの選択信号Sa,Sbを期間T1,T2ごとに出力する。デコーダー65は、入力したドットデータ(SIH,SIL)が例えば(1,1)(大ドット)であれば、選択信号Sa,Sbの論理レベルを、期間T1では(H,L)レベルとし、期間T2では(H,L)レベルとして出力する。また、デコーダー65は、ドットデータ(SIH,SIL)が(1,0)(中ドット)であれば、選択信号Sa,Sbの論理レベルを、期間T1では(H,L)レベルとし、期間T2では(L,H)レベルとして出力する。さらにデコーダー65は、ドットデータ(SIH,SIL)が(0,1)(小ドット)であれば、選択信号Sa,Sbの論理レベルを、期間T1では(L,L)レベルとし、期間T2では(L,H)レベルとして出力する。また、デコーダー65は、ドットデータ(SIH,SIL)が(0,0)(非記録)であれば、選択信号Sa,Sbの論理レベルを、期間T1では(L,H)レベルとし、期間T2では(L,L)レベルとして出力する。デコーダー65が期間T1,T2ごとに出力した2ビットの選択信号Sa,Sbは、レベルシフター66を介してスイッチ回路67へ順次入力される。
【0068】
レベルシフター66は、電圧増幅器として機能し、選択信号Sa,Sbの電圧レベルを昇圧して出力する。レベルシフター66は、選択信号Sa,Sbが「H」レベルにある場合に、スイッチ回路67を駆動可能な例えば数十ボルト程度(例えば最大40V程度)の電圧に昇圧された電気信号を出力し、選択信号Sa,Sbが「L」レベルである場合は同様にLレベルの電気信号を出力する。つまり、レベルシフター66は、デコーダー65から入力した選択信号Sa,Sbを、より高振幅の論理レベルにレベルシフトする。そして、レベルシフター66から出力された各選択信号Sa,Sbは、スイッチ回路67に入力される。
【0069】
図4に示すスイッチ回路67には、駆動信号生成回路56からケーブル45を通じて伝搬された駆動信号COMA,COMBと、デコーダー65からレベルシフター66を介して昇圧された選択信号Sa,Sbとが入力される。ここで、期間T1の選択信号Sa,Sbのうちの選択信号Saは、図5に示される第1駆動信号COMA中の期間T1における駆動パルスAp1の選択/非選択を規定する信号であり、選択信号Sbは、第2駆動信号COMB中の期間T1における駆動パルスBp1の選択/非選択を規定する信号である。また、期間T2の選択信号Sa,Sbのうちの選択信号Saは、第1駆動信号COMA中の期間T2における駆動パルスAp2の選択/非選択を規定する信号であり、選択信号Sbは、第2駆動信号COMB中の期間T2における駆動パルスBp2の選択/非選択を規定する信号である。
【0070】
さらに図4に示すスイッチ回路67は、1ノズル列当たりの駆動素子34(つまりノズル31)の総数mと同数個(m個)の図8に示す選択部80を備えている。m個の選択部80は、選択信号Sa,Sbに基づき、期間T1,T2ごとに、駆動信号COMA,COMBのうち駆動素子34に印加すべき駆動パルスを選択する。
【0071】
図8は、選択部80の構成を示す。図8に示すように、選択部80は、インバーター(NOT回路)81a,81bと、トランスファーゲート82a,82bとを有する。デコーダー65からの選択信号Saは、トランスファーゲート82aにおいて丸印が付されていない正制御端に供給される一方で、インバーター81aによって論理反転されて、トランスファーゲート82aにおいて丸印が付された負制御端に供給される。同様に、選択信号Sbは、トランスファーゲート82bの正制御端に供給される一方で、インバーター81bによって論理反転されて、トランスファーゲート82bの負制御端に供給される。
【0072】
トランスファーゲート82aの入力端には、第1駆動信号COMAが供給され、トランスファーゲート82bの入力端には、第2駆動信号COMBが供給される。トランスファーゲート82a,82bの出力端同士は共通に接続され、この共通接続端子を介して駆動信号VOUTが吐出部35に出力される。
【0073】
トランスファーゲート82aは、選択信号SaがHレベルであれば、入力端及び出力端の間を導通(オン)させ、選択信号SaがLレベルであれば、入力端と出力端との間を非導通(オフ)にする。トランスファーゲート82bについても同様に選択信号Sbに応じて、入力端及び出力端の間をオンオフさせる。
【0074】
図7は、選択部80が出力する駆動信号VOUTの波形を示す図である。図6に示すように、選択部80が、期間T1で第1駆動信号COMA中の駆動パルスAp1を選択し、期間T2で第1駆動信号COMA中の駆動パルスAp2を選択することにより、「大トッド」に対応する駆動信号VOUTが生成される。この駆動信号VOUTが駆動素子34の一端に供給されると、印刷周期TAの間にノズル31から中程度の量の液滴(インク滴)が2回に分けて吐出される。このため、媒体Mにはそれぞれの液滴が着弾し合体して大ドットが形成される。
【0075】
また、選択部80が、期間T1で第1駆動信号COMA中の駆動パルスAp1を選択し、期間T2で第2駆動信号COMB中の駆動パルスBp2を選択することにより、「中ドット」に対応する駆動信号VOUTが生成される。この駆動信号VOUTが駆動素子34の一端に供給されると、印刷周期TAの間にノズル31から中程度及び小程度の量の液滴(インク滴)が2回に分けて吐出される。このため、媒体Mにはそれぞれの液滴が着弾し合体して中ドットが形成される。
【0076】
また、選択部80が、期間T1で駆動信号COMA,COMB中のいずれの波形も選択せず、駆動素子34が有する容量性によって保持された直前の電圧Vcとなり、期間T2で第2駆動信号COMB中の駆動パルスBp2を選択することにより、「小ドット」に対応する駆動信号VOUTが生成される。この駆動信号VOUTが駆動素子34の一端に供給されると、印刷周期TAの間にノズル31から期間T2においてのみ小程度の量の液滴(インク滴)が吐出される。このため、媒体Mにはこの液滴が着弾して小ドットが形成される。
【0077】
さらに、選択部80が、期間T1で第2駆動信号COMB中の台形波形の駆動パルスBp1を選択し、期間T2で駆動信号COMA,COMB中のいずれの波形も選択せず、駆動素子34が有する容量性によって保持された直前の電圧Vcとなることで、「非記録」に対応する駆動信号VOUTが生成される。この駆動信号VOUTが駆動素子34の一端に供給されると、印刷周期TAの間にノズル31が期間T1において微振動するのみで、液滴は吐出されない。このため、媒体Mにはドットは形成されない。
【0078】
本実施形態の大判プリンター11は、1色当たり400個又は800個の駆動素子34を用いて規定の印刷解像度(例えば5760×1440dpi)のA3短辺幅サイズ(例えばA3判)の印刷物を毎分規定枚数(例えば2枚)以上印刷することを想定して設計されている。この印刷条件を満たすために、印刷ヘッド25の各吐出部35は、30kHz以上の周波数で液体を吐出して印刷することが可能である。
【0079】
本実施形態における駆動信号生成回路56は、入力したデジタル信号である波形データCOMA−D,COMB−Dを基にデジタルの波形信号を生成する。駆動信号生成回路56は、そのデジタルの波形信号をアナログ信号に変換して増幅することにより駆動信号COMA,COMBを出力する不図示のデジタルアンプを備える。デジタルアンプは、例えばDAC(Digital Analog Converter)と増幅回路(いずれも図示略)を備える。
【0080】
ところで、波形データCOMA−D,COMB−Dは、周波数スペクトル解析すると、例えば約60kHzにピークを有し、約10kHz〜400kHz程度の周波数が含まれている。ここで、駆動信号COMA,COMBは、波形データCOMA−D,COMB−Dの波形を、ジャギーを抑えて略忠実に再現される必要がある。駆動信号COMA,COMBをデジタルアンプで増幅するためには最低でも増幅前の駆動信号に含まれる周波数成分の10倍以上のスイッチング周波数でデジタルアンプを駆動させる必要がある。多くの成分が100kHz未満にあるゆえ、駆動信号生成回路56のDACには最低でも100kHzの10倍である1MHz程度のスイッチング周波数で駆動可能なデジタルアンプを用いることが望ましい。また、電源電圧VHVを例えば42Vとしたときに、駆動信号COMA,COMBの振動幅は約2〜37Vと広いレンジが必要となる。波形品質を確保してパルス変調を行うためには、メガヘルツオーダーの高周波の変調信号で駆動することが求められる。そのため、本実施形態では、パルス幅変調方式よりも、高周波駆動に適しているパルス密度変調方式のDACを採用している。なお、DACは、パルス密度変調方式に限定されず、メガヘルツオーダーの高周波駆動に対応可能な変調方式であればよい。
【0081】
次に、図9を参照して駆動信号COMA,COMB等の伝搬に使用されるケーブル48の構成について説明する。図9では、第1駆動信号COMA、第2駆動信号COMB及び基準電圧信号VBSが伝搬される配線CW1〜CW3の部分(駆動信号配線領域WA(図14))の一部のみ示しており、各配線CW1〜CW3には、図9に括弧( )内に示す信号が伝搬される。
【0082】
図9に示すように、ケーブル45を構成するケーブル48は、1m以上の長さを有し、各種の信号を伝搬するために、配線CW1,CW2,CW3を含む複数の配線(芯線)を有している。本例のケーブル48は、図9に示す第1ケーブルの一例としての第1フラットケーブル481と、第2ケーブルの一例としての第2フラットケーブル482とを有する。2つのフラットケーブル481,482は重ねられた状態にある。第1フラットケーブル481には、第1駆動信号COMA1〜COMA4が伝搬される第1配線CW1と、第2駆動信号COMB1〜COMB4が伝搬される第2配線CW2と、基準電圧信号VBS1〜VBS4が伝搬される第3配線CW3とを含む複数の配線(芯線)がケーブル長手方向(図9の紙面と直交する方向)に沿って互いに平行に延びている。また、第2フラットケーブル482には、第1駆動信号COMA1〜COMA4が伝搬される第1配線CW1と、第2駆動信号COMB1〜COMB4が伝搬される第2配線CW2と、基準電圧信号VBS1〜VBS4が伝搬される第3配線CW3とを含む複数の配線(芯線)が長手方向(図9の紙面と直交する方向)に沿って互いに平行に延びている。複数の配線CW1,CW2,CW3は、各ケーブル481,482の幅方向(配線配列方向)に一定の間隔で配置されている。
【0083】
第1フラットケーブル481と第2フラットケーブル482では、それぞれ幅方向において、第1配線CW1と第3配線CW3とが隣合い、かつ第2配線CW2と第3配線CW3とが隣合っている。すなわち、第1フラットケーブル481と第2フラットケーブル482には、幅方向に第1配線CW1と第2配線CW2とが1つおきの位置に配置され、両配線CW1,CW2間に第3配線CW3が配置されている。換言すれば、第3配線CW3が1つおきの位置に配置され、第3配線CW3の両側に第1配線CW1と第2配線CW2とが配置されている。
【0084】
図9及び図14に示すように、第1フラットケーブル481には、第1駆動信号COMA1〜COMA4が伝搬される4つの第1配線CW1と、第2駆動信号COMB1〜COMB4が伝播される4つの第2配線CW2と、基準電圧信号VBS1〜VBS4が2つずつ伝搬される8つの配線CW3とが含まれている。第2フラットケーブル482も、第1フラットケーブル481と同様に、第1駆動信号COMA1〜COMA4が伝搬される4つの第1配線CW1と、第2駆動信号COMB1〜COMB4が伝播される4つの第2配線CW2と、基準電圧信号VBS1〜VBS4が2つずつ伝搬される8つの配線CW3とが含まれている。つまり、第1フラットケーブル481と第2フラットケーブル482には、駆動信号伝搬用に合計32本の配線CW1〜CW3が用意されている。
【0085】
ここで、使用されるインクがk色(本例ではk=4)で1色当たりQ個(本例では2つ)のノズル列32が使用されるとする。第1駆動信号と第2駆動信号とのj種(本例では2種)の駆動信号が用いられるマルチ駆動方式である場合、全ノズル列数(全吐出部群36の数)がk×Q(=i)であり、1つの吐出部群36の駆動制御に、1つの第1駆動信号COMAと、1つの第2駆動信号COMBと、1つの基準電圧信号VBSとが最低必要になる。そして、ケーブル48において、図9及び図14に示す信号配列を採用するためには、第3配線CW3は、第1配線CW1の数(i本)と第2配線CW2の数(i本)との合計と同じ数(2×i本)だけ必要になり、合計で4×i本の配線が必要になる。
【0086】
図9図14に示すように、本実施形態では、2つのフラットケーブル481,482において、互いに対向する位置領域に2×i本ずつの配線を含む図14に示す駆動信号配線領域WA(以下、単に「配線領域WA」ともいう。)を確保している。図9に示す例では、k色(本例では4色)のうち第1色用として、2つ(Q個)の第1駆動信号COMA1、2つ(Q個)の第2駆動信号COMB1、4つ(2×Q個)の基準電圧信号VBS1が伝搬される。同様に第2色用として、2つの第1駆動信号COMA2、2つの第2駆動信号COMB2、4つの基準電圧信号VBS2が伝搬される。また、第3色用として、2つの第1駆動信号COMA3、2つの第2駆動信号COMB3、4つの基準電圧信号VBS3が伝搬される。さらに第4色用として、2つの第1駆動信号COMA4、2つの第2駆動信号COMB4、4つの基準電圧信号VBS4が伝搬される。このように第α色用(但し、α=1,2,…,k)として、2つの第1駆動信号COMAα、2つの第2駆動信号COMBα、4つの基準電圧信号VBSαが伝搬される。
【0087】
そして、図9図14に示すように、第1フラットケーブル481における配線領域WA(図14を参照)には、一端側(図9では左側)から順番に信号COMA1,VBS1,COMB1,VBS1,COMA2,VBS2,COMB2,VBS2,…,COMAk,VBSk,COMBk,VBSkの伝搬用の2×i本の配線が含まれる。このため、第1フラットケーブル481には、2×i本(本例では16本)の配線が、図9における一端側(左側)から、配線CW1,CW3,CW2,CW3,…,CW1,CW3,CW2,CW3の順番に配列されている。また、第2フラットケーブル482における配線領域WA(図14を参照)には、一端側(図9では左側)から順番に信号VBS1,COMA1,VBS1,COMB1,VBS1,COMA2,VBS2,COMB2,VBS2,…,VBSk,COMAk,VBSk,COMBkの伝搬用の2×i本の配線が含まれる。このため、第2フラットケーブル482には、2×i本(本例では16本)の配線が、図9における一端側(左側)から、配線CW3,CW1,CW3,CW2,CW3,…,CW2,CW3,CW1,CW3,CW2の順番に配列されている。これにより、図9図14に示すように、2つのフラットケーブル481,482は、互いに第1配線CW1が相手側の第3配線CW3と対向し、第2配線CW2が相手側の第3配線CW3と対向する状態に重ねられている。
【0088】
このように複数のフラットケーブル481,482を用いてマルチ駆動方式で信号を転送する本例では、各フラットケーブル481,482内で駆動信号COM(COMA,COMB)と基準電圧信号VBSとを交互に配列する。そして、第1駆動信号COMAと第2駆動信号COMBのそれぞれは、複数のフラットケーブル481,482のいずれにも存在する。複数のフラットケーブル481,482を重ねた状態では、駆動信号COM(COMA,COMB)と基準電圧信号VBSとが対向する(重なる)。インク種の同じ信号、つまり、信号COMAα,VBSα,COMBαの添字のα(数字)が同じ信号は、フラットケーブル481,482内で隣合うように配置している。
【0089】
本例では、第1色用の2つの吐出部群36は、それぞれ印刷データ信号SI1,SI2と、それぞれに共通の信号COMA1,COMB1,VBS1とにより駆動される。第2色用の2つの吐出部群36は、それぞれ印刷データ信号SI3,SI4と、それぞれに共通の信号COMA2,COMB2,VBS2とにより駆動される。第3色用の2つの吐出部群36は、それぞれ印刷データ信号SI5,SI6と、それぞれに共通の信号COMA3,COMB3,VBS3とにより駆動される。第4色用の2つの吐出部群36は、それぞれ印刷データ信号SI7,SI8と、それぞれに共通の信号COMA4,COMB4,VBS4とにより駆動される。
【0090】
駆動信号COMA1〜COMA4,COMB1〜COMB4は、印刷周期TAの半分の期間T1,T2ごとに波形を含む高周波の信号であるため、それらが伝搬される配線間の距離が近いと相互誘導によりオーバーシュートが発生し易い。特に第2駆動信号COMB1〜COMB4に含まれる第2波形よりも振幅の大きな第1波形を含む第1駆動信号COMA1〜COMA4同士が比較的近い位置を伝搬されると、オーバーシュートが発生し易い。
【0091】
そのため、本例では、図9に示すように、第1駆動信号COMA1〜COMA4用の第1配線CW1と第2駆動信号COMB1〜COMB4用の第2配線CW2とを、ケーブル幅方向に添字の数字(色種の番号)の若い方から順に交互に配列する。さらに、第1配線CW1と第2配線CW2との間に、添字の数字が同じ基準電圧信号VBS1〜VBS4用の第3配線CW3を配置する。これにより、第1駆動信号COMA1〜COMA4と第2駆動信号COMB1〜COMB4は、ケーブル幅方向に配線ピッチの2倍のピッチに応じた距離を隔てた位置を伝搬される。そして、第1駆動信号COMA同士、及び第2駆動信号COMB同士は、配線ピッチの4倍に応じた距離を隔てた位置を伝搬される。また、駆動信号COMA,COMBの間の位置を一定電圧の基準電圧信号VBS1〜VBS4が伝搬される。
【0092】
図9に示すように、本実施形態では、フラットケーブル481,482にはそれぞれの幅方向に、第1配線CW1と第2配線CW2との間に第3配線CW3が配置されている。そして、2つのフラットケーブル481,482を重ねた状態において、互いに第1配線CW1が相手側の第3配線CW3と対向し、第2配線CW2が相手側の第3配線CW3と対向している。このため、第1駆動信号COMA1〜COMA4と、第2駆動信号COMB1〜COMB4とは、ケーブル厚さ方向(重ね方向)に、基準電圧信号VBS1〜VBS4と対向する。
【0093】
このような信号配列を採用するため、図9図14に示すように、第1フラットケーブル481の配線領域WAにおける幅方向の一端(図14では上端)が第1駆動信号COMA1であれば、第2フラットケーブル482の配線領域WAにおける幅方向の一端は基準電圧信号VBS1でその他端側の隣の位置が第1駆動信号COMA1となっている。また、第1フラットケーブル481の配線領域WA内における幅方向の他端(図14では下端)は基準電圧信号VBS4でその一端側の隣(図14では下から2番目)の位置が第2駆動信号COMB4となっており、第2フラットケーブル482の配線領域WAにおける幅方向の他端が第2駆動信号COMB4となっている。
【0094】
そして、図14に示すように、ケーブル48の一端(上段)側の配線8本分(図14では4段分)の領域が、第1色の印刷に使用される信号COMA1,COMB1,VBS1の配置ブロックとなっている。さらに、この配置ブロック内の一端側半分(図14では上側2段分)が、信号COMA1,VBS1の配置ブロック、他端側半分(図14では下側2段分)が、信号COMB1,VBS1の配置ブロックとなっている。さらにその他端側の隣に位置する次の配線8本分(図14では4段分)の領域が、第2色の印刷に使用される信号COMA2,COMB2,VBS2の配置ブロックとなっており、さらにその他端側の隣に位置する配線8本分(図14では4段分)の領域が、第3色の印刷に使用される信号COMA3,COMB3,VBS3の配置ブロックとなっている。そして、一番他端側に位置する配線8本分(図14では下端から4段分)の領域が、第4色の印刷に使用される信号COMA4,COMB4,VBS4の配置ブロックとなっている。第2色、第3色及び第4色用の各配置ブロックについても、ケーブル幅方向に一端側半分(図14では上側2段分)が、信号COMAα,VBSα(但し、α=2,3,4)の配置ブロック、他端側半分(図14では下側2段分)が、信号COMBα,VBSαの配置ブロックとなっている。
【0095】
こうして共通の吐出部群36を駆動させる複数(例えば2つ)の第1駆動信号COMAと複数(例えば2つ)の第2駆動信号COMBと複数(例えば4つ)の基準電圧信号VBSとを伝搬する、第1配線CW1、第2配線CW2及び第3配線CW3が、ケーブル幅方向に色ごとに対応するブロック単位で配列されている。このため、2つのフラットケーブル481,482の配線領域WAの幅方向における一端側と他端側とに配線され、共通の吐出部群36に繋がる第1配線CW1同士、及び共通の吐出部群36に繋がる第2配線CW2同士を、印刷ヘッド25内で電気的に接続することが可能になる。また、駆動信号COMA1〜COMA4,COMB1〜COMB4は、ケーブル幅方向と重ね方向との両方向で互いに隣合わない。この構成によって、駆動信号COMA1〜COMA4,COMB1〜COMB4の配線が、フラットケーブル481,482の幅方向と重ね方向との少なくとも一方で互いに隣に位置する構成に比べ、相互誘導による影響を小さく低減し、オーバーシュートを小さく抑制できるようにしている。
【0096】
また、ケーブル45において、第1配線CW1及び第2配線CW2と、印刷データ信号SIn、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH及びクロック信号SCK等の制御信号用の配線との距離を相対的に離している。このため、制御信号に高電圧の駆動信号COMA1〜COMA4,COMB1〜COMB4の影響によるノイズが乗りにくい。なお、ケーブル48において、基準電圧信号VBS1〜VBS4の配線CW3の全て又は一部を、グランド信号GNDの配線に置き換えてもよい。
【0097】
次に、図10を参照して、駆動信号生成回路56の詳細を説明する。図10に示すように、制御部53は、波形データCOMA−D,COMB−Dを保存している波形データ保存部53Aを有している。制御部53は、例えば印刷モード情報を基に、波形データ保存部53Aから読み出した波形データCOMA−D,COMB−Dを駆動信号生成回路56へ送る。駆動信号生成回路56は、制御部53から送られた波形データCOMA−Dを基に駆動信号COMA1〜COMA4を2つずつ生成するとともに、波形データCOMB−Dを基に駆動信号COMB1〜COMB4を2つずつ生成する。駆動信号生成回路56は、生成した駆動信号COMA1〜COMA4,COMB1〜COMB4(図4を参照)を1m以上の長尺なケーブル45(48)を通じて印刷ヘッド25へ伝送する。なお、図10では、駆動信号COMA1,COMB1及び基準電圧信号VBS1を生成する駆動信号生成回路56のみ詳細な内部構成を示している。各駆動信号生成回路56の構成は、基本的に同じなので、以下では、駆動信号COMA1,COMB1等を生成する駆動信号生成回路56を例とし、その内部構成及び動作について説明する。
【0098】
図10に示すように、駆動信号生成回路56は、制御部53からの波形データCOMA−Dを基に第1駆動信号COMA1を生成する第1信号生成回路56Aと、波形データCOMB−Dを基に第2駆動信号COMB1を生成する第2信号生成回路56Bとを備える。第1信号生成回路56Aは、波形データCOMA−Dを基に生成したデジタルの第1駆動信号を、アナログの第1駆動信号に変換して増幅する波形生成回路57を備えている。波形生成回路57は、前述のDACと増幅回路(いずれも図示略)とを備える。波形生成回路57が出力した第1駆動信号COMA1は2つに分かれ、ケーブル48を構成する2つの第1配線CW1を通じて印刷ヘッド25内のヘッド基板60へ伝搬される。また、第2信号生成回路56Bは、波形データCOMB−Dを基に生成したデジタルの第2駆動信号を、アナログの第2駆動信号に変換して増幅する波形生成回路57を備えている。この波形生成回路57は、前述のDACと増幅回路(いずれも図示略)とを備える。波形生成回路57が出力した第2駆動信号COMB1は2つに分かれ、ケーブル48を構成する2つの第2配線CW2を通じて印刷ヘッド25内のヘッド基板60へ伝搬される。なお、各波形生成回路57からは、ローパスフィルターにより高調波成分が除去された駆動信号COMA1,COMB1が出力される。
【0099】
また、図10に示す他の複数(3つ)の駆動信号生成回路56も、同様の第1信号生成回路56Aと第2信号生成回路56Bとを備えている。他の3つの駆動信号生成回路56からは、第1駆動信号COMA2〜COMA4、第2駆動信号COMB2〜COMB4が2つずつ出力されるとともに、基準電圧信号VBS2〜VBS4が4つずつ出力される。そして、2つずつの第1駆動信号COMA1〜COMA4、2つずつの第2駆動信号COMB1〜COMB4、及び4つずつの基準電圧信号VBS1〜VBS4は、ケーブル48内に図9に示すレイアウトで配列された各配線CW1〜CW3を通って印刷ヘッド25へ伝搬される。
【0100】
図10に示すように、印刷ヘッド25内のヘッド基板60上には、同一色(同種の色)の液滴(インク滴)を吐出する第1吐出部群36Aと第2吐出部群36Bとをそれぞれ駆動させるQ個(2つ)のヘッド駆動回路61が実装されている。第1色用のQ個(2つ)のヘッド駆動回路61には、それぞれ第1駆動信号COMA1と第2駆動信号COMB1とが入力される。そして、一方のヘッド駆動回路61は、駆動信号COMA1,COMB1と基準電圧信号VBS1との電圧差に応じて駆動素子34を駆動させることにより、第1吐出部群36Aの各吐出部35から液滴を吐出させる。また、他方のヘッド駆動回路61は、駆動信号COMA1,COMB1と基準電圧信号VBS1との電圧差に応じて駆動素子34を駆動させることにより、第2吐出部群36Bの各吐出部35から液滴を吐出させる。
【0101】
図10に示すように、同一色の液滴を吐出可能なQ個(2つ)の吐出部群36A,36Bを駆動させるQ個(2つ)のヘッド駆動回路61には2つの第1駆動信号COMA1,COMA1が入力される。これら2つの第1駆動信号COMA1,COMA1が伝搬される2つの第1配線CW1,CW1は、印刷ヘッド25内のヘッド基板60上で電気的に接続(導通)されている。同様に、同一色の液滴を吐出可能なQ個(2つ)の吐出部群36A,36Bを駆動させるQ個(2つ)のヘッド駆動回路61には2つの第2駆動信号COMB1,COMB1が入力される。これら2つの第2駆動信号COMB1,COMB1が伝搬される2つの第2配線CW2,CW2は、印刷ヘッド25内のヘッド基板60上で電気的に接続(導通)されている。また、ヘッド基板60には、図示を省略しているが、他の色(第2色〜第4色)についても同一色の液滴(インク滴)を吐出する第1吐出部群36Aと第2吐出部群36Bとをそれぞれ駆動可能な色ごとにQ個(2つ)ずつ(計6つ)のヘッド駆動回路61が実装されている。そして、同一色に対応する2つずつのヘッド駆動回路61に入力される2つずつの第1駆動信号COMA1,COMA1が伝搬される2つずつの第1配線CW1,CW1が印刷ヘッド25において電気的に接続(導通)されている。同様に、同一色に対応する2つずつのヘッド駆動回路61に入力される2つずつの第2駆動信号COMB1,COMB1が伝搬される2つずつの第2配線CW2,CW2が印刷ヘッド25において電気的に接続(導通)されている。
【0102】
電源電圧VHVは、ヘッド駆動回路61において駆動信号C0MA,C0MBが印加される各種電子部品のうち定格電圧の最も低い電子部品(例えばトランスファーゲート82a,82b及び駆動素子34等)の定格電圧未満の値(例えば42V)に設定されている。駆動信号C0MA,C0MBの振幅幅は、その最大電圧が電源電圧VHV未満となる、例えば約2〜37Vの範囲に設定されている。また、A3判短辺幅以上のシリアル印刷に対応できる1m以上の長尺なケーブル48を構成する配線CW1〜CW3は、その長さに起因してインダクタンスが大きくなる。また、ヘッドユニット23の移動等に伴ってケーブル45が変動や摺動するとインダクタンスの変化幅が大きくなる。例えば配線CW1〜CW3の大きなインダクタンスに起因し、駆動信号COMA,COMBには相互誘導等によるオーバーシュートが発生する場合がある。このときオーバーシュートによる電圧が電源電圧VHVを超えると、例えばトランスファーゲート82a,82b及び駆動素子34等の電子部品に定格電圧を超える過大な電圧が印加され、その電子部品の動作ミスや故障等を誘発する。そのため、本実施形態では、2種類の駆動信号COMA,COMBを用いるマルチ駆動方式(マルチコモン方式)の構成において、図9及び図14に示すケーブル48の配線レイアウト等の採用により、駆動信号間の相互誘導等に起因するオーバーシュートを低減する。
【0103】
図11は、制御回路50と印刷ヘッド25とがケーブル45で接続された大判プリンター11において、ケーブル45(48)中の複数の配線CW(芯線)が長いこと等を原因として配線CWに浮遊するインダクタンスを示す等価回路図である。図11では、ヘッド基板60上のヘッド駆動回路61を省略し、吐出部35の両端が2つの配線CW(CW,CW3)に接続され、吐出部35の正端子に駆動信号COM(COMA,COMB)が印加された状態における等価回路で示している。図11における等価回路において、ノズル列番号nのノズル列32に対応する吐出部群36に繋がる配線CWには、浮遊(寄生)のインダクタンスLn(但し、添字nは、n=1,2,…,8)が存在する。
【0104】
図11に示す例では、説明の便宜上、吐出部群36を3つとし、3つの吐出部群36を構成する吐出部35の両端に接続されるケーブル48中の配線CW(芯線)の数を6つとしている。6つの配線CWに浮遊するインダクタンスをそれぞれL1〜L6とする。図11の等価回路は、ケーブル48を構成する2つのフラットケーブル481,482のうち1つを模式化したものである。ケーブル48の幅方向に第1端部側(図11における一番上)からの配線CWの並び順で、配線CWにW1〜W6の符番をするとともに、配線W1〜W6に浮遊するインダクタンスにL1〜L6の符番をしている。ここで、配線CWの幅方向(図11では上下方向)のピッチ(隣の芯線と芯線との中心間の距離)を、単位距離Lp=1とする。複数の配線CWが平行に延びているフラットケーブル481,482では、配線CWから距離rの位置にある他の配線CWへの相互誘導による磁界の強さを表わす影響度(以下、「相互誘導による磁界の影響度」ともいう。)は、その配線CWからの距離rに反比例する。また、相互誘導による磁界の影響度を、図11における矢印の方向に電流が増加しながら流れたときに、制御回路50側が印刷ヘッド25側より電圧が高くなる効果がある場合を正(プラス)、その反対に、制御回路50側が印刷ヘッド25側より電圧が低くなる効果がある場合を負(マイナス)とする。
【0105】
例えば配線W2と配線W5の距離rは、r=5Lp−2Lpで示され、単位距離Lp=1とすると、r=3となる。配線W2から距離rの位置にある配線W5への相互誘導による磁界の強さは、距離rに反比例する。このため、配線W2が配線W5に与える磁界の強さは、比例定数を「1」とすると、1/rとみなすことができる。この場合、距離r=3であるため、配線W2が配線W5に与える磁界の強さの影響は、1/rの0.33となる。
【0106】
また、平行に並んだ配線では、同じ方向に電流を流すもの同士が、インダクタンスを大きくし合うように働く。そのため、奇数番号の配線同士は磁界の強さの影響を互いに強め合う。そして、奇数番号の配線W1,W3,W5の自己インダクタンスは正(プラス)である。よって、奇数番号の配線W1,W3,W5の自己インダクタンスは、他の奇数番号の配線からの磁界によって強められる。このため、奇数番号の配線W1,W3,W5からの磁界の強さが、他の奇数番号の配線に与える影響は正(プラス)である。一方、偶数番号の配線W2,W4,W6同士は磁界の強さの影響を互いに強め合う。そして、偶数番号の配線W2,W4,W6の自己インダクタンスは負(マイナス)である。よって、偶数番号の配線W2,W4,W6の自己インダクタンスは、他の偶数番号の配線からの磁界によって強められる。このため、偶数番号の配線W2,W4,W6からの磁界の強さが、他の偶数番号の配線に与える影響は負(マイナス)である。ここでは、正負を考慮した1/rの値を、相互誘導による磁界の影響度とする。
【0107】
図12に示す表は、図11に示す等価回路において、フラットケーブル481,482内の配線W1〜W6に浮遊するインダクタンスを有する等価回路上のインダクターL1〜L6が、他の配線(インダクターL1〜L6)の個々から受ける磁界の影響度と、その個々の磁界の影響度の合計とを示す。図12は、1行目のインダクターL1〜L6が、一番左列のインダクターL1〜L6から自己誘導又は相互誘導により受ける磁界の影響度を正負の符号を付けて示した表である。
【0108】
図12に示す表中の値の計算方法について以下に説明する。例えば表の第1列2段目は、インダクターL1へインダクターL2が与える影響が「−1」であることを示す。第1列1段目のプラス「+」は、自己インダクタンスで、プラスで「1」より大きい値(例えば2以上)であることを示している。例えばインダクターL1へインダクターL2が与える影響は、マイナス「−」で符号が違うため、オーバーシュートを小さくしている。図12の表において、インダクターL1が受ける他の列のインダクターL2〜L6からの磁界の影響度を全て足すと、合計の「−0.78」になる。これがプラスの自己インダクタンス(>1)と加算される。したがって、L1,L3,L5については、合計がマイナスの絶対値が大きいほど、オーバーシュートを小さくすることに寄与する。例えばL1,L3,L5の合計の値を表より比べ、L1がマイナスの絶対値が一番小さく、ケーブル48の配線領域WAの端に位置する配線W1(CW1,CW2)の相互誘導による磁界の影響度が最大で、相互誘導に起因するオーバーシュートが最大になる。また、L5がマイナスの絶対値が一番大きく、ケーブル48の端から2番目の配線W5(CW1,CW2)の相互誘導による磁界の影響度が最小で、相互誘導に起因するオーバーシュートが最小になる。
【0109】
つまり、ケーブル48の配線領域WAにおいて、配線CW3に挟まれることなく端に位置する配線W1(CW1,CW2)の相互誘導による磁界の影響度が最大となる。また、配線領域WAにおいて、両側を配線CW3に挟まれた状態で端から2番目に位置する配線W5(CW1,CW2)の相互誘導による磁界の影響度が最小となる。
【0110】
図13は、比較例のケーブルにおける配線(芯線)の配列を、伝搬される信号で示す。図13に示す比較例では、第1フラットケーブル481には、第1駆動信号COMA1〜COMA4と基準電圧信号VBS1〜VBS4とがケーブル幅方向(図13では上下方向)に交互に配列されている。すなわち、第1フラットケーブル481の配線領域WAは、COMA1,VBS1,COMA1,VBS1,COMA2,VBS2,…,COMA4,VBS4の並び順で信号が伝搬される配線レイアウトとなっている。
【0111】
また、第2フラットケーブル482には、第1駆動信号COMA1〜COMA4と基準電圧信号VBS1〜VBS4とがケーブル幅方向(図13では上下方向)に交互に配列されている。すなわち、第2フラットケーブル482の配線領域WAは、VBS1,COMB1,VBS1,COMB1,VBS2,COMB2,…,VBS4,COMB4の並び順で信号が伝搬される配線レイアウトとなっている。そして、第1フラットケーブル481と第2フラットケーブル482は、第1駆動信号COMAの配線が基準電圧信号VBSの配線と対向し、第2駆動信号COMBの配線が基準電圧信号VBSの配線と対向する状態で重ねられている。
【0112】
図13に示す比較例における配線レイアウトでは、相互誘導に起因する磁界の影響度が、駆動信号COMA1において他の駆動信号COMA2〜COMA4よりも大きく最大となり、駆動信号COMB4において他の駆動信号COMB1〜COMB3よりも大きく最大となる。この比較例の構成では、オーバーシュートがトランスファーゲート(TG)の定格電圧を超えて破壊を起こさないように駆動信号COMA,COMBの振幅を小さくする対策が必要になる。この対策を施すと、十分な液体吐出特性が得られにくくなる。
【0113】
一方、図14に示す実施例における第1フラットケーブル481には、第1駆動信号COMA1〜COMA4と第2駆動信号COMB1〜COMB4がケーブル幅方向(図14では上下方向)に交互に配列され、その間に基準電圧信号VBS1〜VBS4が介在している。すなわち、第1フラットケーブル481の配線領域WAは、COMA1,VBS1,COMB1,VBS1,COMA2,VBS2,COMB2,…,COMA4,VBS4,COMB4,VBS4の並び順で信号が伝搬される配線レイアウトとなっている。
【0114】
また、第2フラットケーブル482も同様に、第1駆動信号COMA1〜COMA4と第2駆動信号COMB1〜COMB4がケーブル幅方向(図14では上下方向)に交互に配列され、その間に基準電圧信号VBS1〜VBS4が介在している。すなわち、第1フラットケーブル481の配線領域WAは、VBS1,COMA1,VBS1,COMB1,VBS2,COMA2,VBS2,COMB2,…,VBS4,COMA4,VBS4,COMB4の並び順で信号が伝搬される配線レイアウトとなっている。そして、第1フラットケーブル481と第2フラットケーブル482は、第1駆動信号COMAの配線が基準電圧信号VBSの配線と対向し、第2駆動信号COMBの配線が基準電圧信号VBSの配線と対向する状態で重ねられている。
【0115】
図14に示す実施例における配線レイアウトでは、第1フラットケーブル481において駆動信号COMA1の相互誘導に起因する磁界の影響度が、他の駆動信号COMA2〜COMA4のそれよりも大きく最大となる。また、第2フラットケーブル482において駆動信号COMA1の相互誘導に起因する磁界の影響度が、他の駆動信号COMA2〜COMA4のそれよりも小さく最小となる。また、第1フラットケーブル481において駆動信号COMB4の相互誘導に起因する磁界の影響度が、他の駆動信号COMB1〜COMB3のそれよりも小さく最小となり、第2フラットケーブル482において第2駆動信号COMB4の相互誘導に起因する磁界の影響度が、他の駆動信号COMB1〜COMB3のそれよりも大きく最大となる。
【0116】
そして、この実施例の構成では、第1フラットケーブル481における磁界の影響度が最大となる第1駆動信号COMA1の配線と、第2フラットケーブル482における磁界の影響度が最小となる第1駆動信号COMA1の配線とが、印刷ヘッド25において電気的に接続(導通)されている。そのため、2つの第1駆動信号COMA1間で磁界の影響度の最大値と最小値とが平均化され、第1駆動信号COMA1〜COMA4における磁界の影響度の最大値が小さく抑制されるようになっている。
【0117】
また、第1フラットケーブル481における磁界の影響度が最小となる第2駆動信号COMB4の配線CW2と、第2フラットケーブル482における磁界の影響度が最大となる第2駆動信号COMB4の配線CW2とが、印刷ヘッド25において電気的に接続(導通)されている。そのため、2つの第2駆動信号COMB4間で磁界の影響度の最大値と最小値とが平均化され、第2駆動信号COMB1〜COMB4における磁界の影響度の最大値が小さく抑制される。このため、比較例に比べ、駆動信号COMA,COMBの振幅を相対的に大きく設定することが可能になり、十分な液体吐出特性が得られ易い。
【0118】
次に、大判プリンター11の作用を説明する。大判プリンター11は、例えばホストコンピューターから印刷データを受信すると、印刷制御を開始する。
図10に示す制御部53は、印刷データに含まれる印刷モード情報に応じた波形データCOMA−D,COMB−Dを波形データ保存部53Aから読み出し、各駆動信号生成回路56へ送る。各駆動信号生成回路56では、波形データCOMA−Dを基に第1駆動信号COMA1〜COMA4を生成し、波形データCOMB−Dを基に第2駆動信号COMB1〜COMB4を生成する。生成された第1駆動信号COMA1〜COMA4は、制御回路50(駆動回路基板52)から図9に示すケーブル45(48)中の第1配線CW1を通って印刷ヘッド25内のヘッド基板60へ伝搬される。また、生成された第2駆動信号COMB1〜COMB4は、制御回路50(駆動回路基板52)から図9に示すケーブル45(48)中の第2配線CW2を通って印刷ヘッド25内のヘッド基板60へ伝搬される。また、駆動信号生成回路56が生成した基準電圧信号VBS1〜VBS4が、図9に示すケーブル45(48)中の第3配線CW3を通って印刷ヘッド25内のヘッド基板60へ伝搬される。
【0119】
こうして制御回路50(駆動信号生成回路56)から、第1駆動信号COMA1〜COMA4、第2駆動信号COMB1〜COMB4及び基準電圧信号VBS1〜VBS4が、1m以上の図9に示すケーブル45(48)中の各配線CW1〜CW3を通って印刷ヘッド25へ伝搬される。
【0120】
また、図4に示すように、制御部53からは制御信号送信部54を介して印刷データ信号SI1〜SI8、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、クロック信号SCK等が、ケーブル47中の配線を通じて印刷ヘッド25内のヘッド基板60へ伝搬される。ヘッド駆動回路61では、これらの入力した信号SI1〜SI8,LAT,CH,SCKを基に選択信号Sa,Sb(図6図8を参照)を生成し、スイッチ回路67内の選択部80(図8に示す)に送られる。選択部80は、入力した選択信号Sa,Sbの値に応じて第1駆動信号COMA及び第2駆動信号COMB中の波形を期間T1,T2ごとに選択し、その選択した結果の駆動信号VOUT(図7)を吐出部35に印加する。吐出部35は、その駆動素子34が一方の端子に印加された駆動信号VOUTと他方の端子に印加される基準電圧信号VBSとの電圧差に応じて駆動され、ノズル31から液滴を吐出する。こうして色ごとにQ個(2つ)ずつ設けられた各吐出部群36を構成する各吐出部35から印刷データに応じて液滴が吐出されることにより、媒体Mに印刷データに基づく画像が印刷される。
【0121】
さて、本実施形態では、制御回路50で生成された、第1駆動信号COMA1〜COMA4、第2駆動信号COMB1〜COMB4及び基準電圧信号VBS1〜VBS4は、1m以上の長尺な図9に示すケーブル48中の各配線CW1〜CW3を通じて伝搬される。このとき、図9に示すように、2つのフラットケーブル481,482の配線領域WAにおいて幅方向に1つおきに配置された第1配線CW1と第2配線CW2を第1駆動信号COMA1〜COMA4と第2駆動信号COMB1〜COMB4とが伝搬される。また、2つのフラットケーブル481,482の配線領域WAにおいて幅方向に配線CW1,CW2間に位置する第3配線CW3(あるいは第1配線CW1又は第2配線CW2を幅方向に挟む第3配線CW3)を通って基準電圧信号VBS1〜VBS4が伝搬される。
【0122】
図9に示すように、駆動信号COMA1〜COMA4,COMB1〜COMB4の各配線CW1,CW2を、ケーブル幅方向に配線ピッチの2倍のピッチに対応する比較的長い距離だけ離すことができる。このため、駆動信号COMA1〜COMA4,COMB1〜COMB4間の相互誘導による磁界の影響度を低減し、オーバーシュートの低減が図られる。また、2つのフラットケーブル481,482の重ね方向において、第1配線CW1と第2配線CW2は、それぞれ相手側のフラットケーブルの第3配線CW3と対向している。このため、ケーブル重ね方向において、第1配線CW1と第2配線CW2とが第3配線と対向していない構成に比べ、駆動信号COMA1〜COMA4,COMB1〜COMB4間の相互誘導に起因するオーバーシュートを低減できる。
【0123】
図13に示す比較例のケーブル配線構造でも、第1駆動信号COMA1〜COMA4が伝搬される配線と、第2駆動信号COMB1〜COMB4が伝搬される配線との間に、基準電圧信号VBS1〜VBS4が伝搬される配線が配置されている。また、比較例のケーブル配線構造では、2つのフラットケーブル481,482の重ね方向に、第1駆動信号COMA1〜COMA4が伝搬される第1配線CW1と、第2駆動信号COMB1〜COMB4が伝搬される第2配線CW2とが、それぞれ相手側のフラットケーブルの基準電圧信号VBS1〜VBS4が伝搬される第3配線CW3と対向する。このため、比較例のケーブル配線構造でも、オーバーシュートを低減するうえにおいて一定の効果が得られる。
【0124】
図13に示す比較例では、第1フラットケーブル481の一端側(図13では上から1段目)の第1駆動信号COMA1が受ける相互誘導による磁界の影響度が最大になり、同様に、第2フラットケーブル482の他端側(図13では下から1段目)の第2駆動信号COMB4において相互誘導による磁界の影響度が最大になる。このため、この相互誘導による磁界の影響度が最大の駆動信号においてオーバーシュートが発生しても、そのオーバーシュートに起因する最大電圧が定格電圧を超えないように駆動信号の振幅を小さめに設定しておく必要がある。この場合、例えば駆動電圧の振幅が小さく抑えたために吐出ミスが発生し印刷品質の低下に繋がる。
【0125】
一方、図14に示す実施例では、第1フラットケーブル481の配線領域WAにおいて一端側(図14では上から1段目)の第1駆動信号COMA1が受ける相互誘導による磁界の影響度が最大になり、他端から2番目(図13では下から2段目)の第2駆動信号COMB4が受ける相互誘導による磁界の影響度が最小になる。また、同様に、第2フラットケーブル482の配線領域WAにおいて一端から2番目(図14では上から2段目)の第1駆動信号COMA1が受ける相互誘導による磁界の影響度が最小になり、他端側(図14では下から1段目)の第2駆動信号COMB4が受ける相互誘導による磁界の影響度が最大になる。
【0126】
そして、図9図14に示す実施例では、第1フラットケーブル481において相互誘導による磁界の影響度が最大である第1駆動信号COMA1の第1配線CW1と、第2フラットケーブル482において相互誘導による磁界の影響度が最小である第1駆動信号COMA1の第1配線CW1とが、印刷ヘッド25内で電気的に接続されている。この結果、第1フラットケーブル481における第1駆動信号COMA1が相互誘導により受ける磁界の影響度の最大値と、第2フラットケーブル482における第1駆動信号COMA1が相互誘導により受ける磁界の影響度の最小値とが平均化される。よって、第1駆動信号COMA1〜COMA4が相互誘導により受ける磁界の影響度の最大値を小さく抑えることができる。
【0127】
また、図9図14に示す実施例では、第1フラットケーブル481において相互誘導による磁界の影響度が最小である第2駆動信号COMB4の第2配線CW2と、第2フラットケーブル482において相互誘導による磁界の影響度が最大である第2駆動信号COMB4の第2配線CW2とが、印刷ヘッド25内で電気的に接続されている。この結果、第1フラットケーブル481における第2駆動信号COMB4が相互誘導により受ける磁界の影響度の最小値と、第2フラットケーブル482における第2駆動信号COMB4が相互誘導により受ける磁界の影響度の最大値とが平均化される。よって、第2駆動信号COMB1〜COMB4が相互誘導により受ける磁界の影響度の最大値を小さく抑えることができる。
【0128】
このため、図9図14に示す実施例のケーブル48によれば、相互誘導による磁界の影響度の最大値を、図13に示す比較例に比べ相対的に小さく抑えることができる。よって、駆動信号に発生するオーバーシュートを相対的に小さく抑えることができる。この結果、そのオーバーシュートに起因する最大電圧が定格電圧以下に収まるように駆動信号の振幅を、比較例ほど小さめに設定する必要がない。このため、実施例では、駆動信号の振幅を比較例に比べ相対的に大きく設定できる。この結果、吐出ミスが発生しにくくなり、大判プリンター11によって比較的高い印刷品質で印刷することができる。
【0129】
また、仮にオーバーシュートが発生しても、ヘッド駆動回路61内に入力される駆動信号COMA,COMBの最大電圧が電源電圧VHV以下に収まり、定格電圧を超えることが防止される。よって、定格電圧を超える電圧がトランスファーゲート82a,82bや駆動素子34に印加されることはない。この結果、この種のオーバーシュートに起因し、定格電圧を超える電圧が印加されることに起因するトランスファーゲート82a,82b及び駆動素子34等の故障を防止できる。例えば、印刷ヘッド25を長期に亘り安定に駆動させることができる。よって、ケーブル45(48)の長尺化及び第1駆動信号COMAと第2駆動信号COMBとの間の相互誘導等に起因し駆動信号COMA,COMBに発生するオーバーシュートを効果的に低減し、駆動信号COMA1,COMA2に印刷ヘッド25の故障や印刷品質の乱れなどの問題の少なくとも1つを低減させることができる。
【0130】
以上詳述した実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)A3短辺幅以上の媒体Mに対してシリアル印刷が可能な大判プリンター11は、第1波形を含む第1駆動信号COMAと第2波形を含む第2駆動信号COMBと基準電圧信号VBSとを出力する駆動信号生成回路56を備えた制御回路50と、印加された電圧に応じて駆動し印刷する複数の駆動素子34を有する印刷ヘッド25とを備える。制御回路50と印刷ヘッド25とを接続するケーブル45は、第1駆動信号COMAを伝搬する第1配線CW1と、第2駆動信号COMBを伝搬する第2配線CW2と、基準電圧信号VBS1〜VBS4を伝搬する第3配線CW3とをそれぞれ有する第1フラットケーブル481と第2フラットケーブル482とを重ねた状態で含む。第1フラットケーブル481と第2フラットケーブル482は、第1配線CW1と第3配線CW3とが隣合うとともに第2配線CW2と第3配線CW3とが隣合い、かつ重ね方向において、第1配線CW1と第3配線CW3とが対向し、第2配線CW2と第3配線CW3とが対向する状態にある。よって、第1駆動信号COMAと第2駆動信号COMBとが第1フラットケーブル481と第2フラットケーブル482とに分けて別々に伝搬される比較例(図13)の構成に比べ、駆動信号間の相互誘導に起因するオーバーシュートを効果的に低減できる。
【0131】
(2)第1フラットケーブル481の第1配線CW1と第2フラットケーブル482の第1配線CW1とが印刷ヘッド25において電気的に接続されている。また、第1フラットケーブル481の第2配線CW2と第2フラットケーブル482の第2配線CW2とが印刷ヘッド25において電気的に接続されている。このため、第1フラットケーブル481における駆動信号間の相互誘導による影響度と、第2フラットケーブル482における駆動信号間の相互誘導による影響度とを平均化し緩和させることができる。よって、駆動信号の相互誘導に起因するオーバーシュートを一層効果的に低減できる。
【0132】
(3)印刷ヘッド25は、同種の色を印刷するために駆動される複数の駆動素子34を含む吐出部群36(駆動素子群の一例)を備える。2つのフラットケーブル481,482は、同種の色を印刷する複数の吐出部群36のそれぞれに第1駆動信号COMAを伝搬する複数の第1配線CW1と、第2駆動信号COMBを伝搬する複数の第2配線CW2とを備える。第1フラットケーブル481における複数の第1配線CW1のうち一番端部に位置する第1配線CW1と、第2フラットケーブル482における複数の第1配線CW1のうち一番端部に位置する第3配線CW3の隣に位置する第1配線CW1とが、印刷ヘッド25において電気的に接続されている。また、第1フラットケーブル481における複数の第2配線CW2のうち一番端部に位置する第3配線CW3の隣に位置する第2配線CW2と、第2フラットケーブル482における複数の第2配線CW2のうち一番端部に位置する第2配線CW2とが、印刷ヘッド25において電気的に接続されている。このため、2つのフラットケーブル481,482のうち一方における駆動信号間の相互誘導による磁界の影響度の最大値と、他方における駆動信号間の相互誘導による磁界の影響度の最小値とを平均化できる。よって、駆動信号の相互誘導に起因するオーバーシュートを一層効果的に低減することができる。
【0133】
(4)2つのフラットケーブル481,482には、共通の吐出部群36を駆動させる複数(例えば2つ)の第1駆動信号COMAと複数(例えば2つ)の第2駆動信号COMBと複数(例えば4つ)の基準電圧信号VBSとを伝搬する、第1配線CW1、第2配線CW2及び第3配線CW3が、ケーブル幅方向に色ごとに対応するブロック単位で配列されている。よって、2つのフラットケーブル481,482の配線領域WAの幅方向における一端側と他端側とに配線されるとともに、共通の吐出部群36に繋がる第1配線CW1同士、及び共通の吐出部群36に繋がる第2配線CW2同士を、印刷ヘッド25内で電気的に接続することが可能になる。したがって、駆動信号間の相互誘導による磁界の影響度の最大値と最小値とを平均化し、相互誘導に起因するオーバーシュートを一層効果的に低減できる。
【0134】
(5)異なる色を印刷する複数の吐出部群36(駆動素子群の一例)を備える。同種の色を印刷する吐出部群36をQ個(但し、Qは2以上の自然数)備える。Q個ずつの吐出部群36に供給される第1駆動信号COMAを伝搬するQ個ずつの第1配線CW1が印刷ヘッド25において電気的に接続されている。また、Q個ずつの吐出部群36に供給される第2駆動信号COMBを伝搬するQ個ずつの第2配線CW2が印刷ヘッド25において電気的に接続されている。よって、Q個ずつの第1配線CW1間で、相互誘導による磁界の影響度の最大値と最小値とが平均化されるとともに、Q個ずつの第2配線CW2間で、相互誘導による磁界の影響度の最大値と最小値とが平均化される。したがって、第1駆動信号COMAと第2駆動信号COMBに発生するオーバーシュートを一層効果的に低減できる。
【0135】
(6)大判プリンター11は、シリアル印刷が可能な最大幅が、24インチ以上75インチ以下である。よって、24インチ以上75インチ以下の最大幅でシリアル印刷が可能な程度にケーブル45が長くても、ケーブル45を伝搬される過程で駆動信号COMA,COMBにオーバーシュートが発生することをより効果的に抑制することができる。
【0136】
(7)大判プリンター11は、シリアル印刷が可能な最大幅が、24インチ、36インチ、44インチ、64インチのいずれか1つに対応している。よって、ケーブル45が24インチ、36インチ、44インチ、64インチのいずれか1つのシリアル印刷に対応する比較的長いものであっても、ケーブル45を伝搬される過程で駆動信号COMA,COMBにオーバーシュートが発生することを効果的に抑制することができる。
【0137】
(8)印刷ヘッド25は、30kHz以上の周波数で液体を吐出する。印刷ヘッド25を駆動するためにケーブル45を伝搬される駆動信号COMA(COMA1〜COMA8),COMB(COMB1〜COMB8)は、30kHzよりも更に大きな値の高周波数の信号である。そのため、駆動信号COMA,COMBがケーブル45を伝搬される過程で発生し易いオーバーシュートを効果的に除去することができる。
【0138】
なお、上記実施形態は以下の形態に変更することもできる。
・第1ケーブルの第1配線と第2ケーブルの第1配線とが印刷ヘッド25において電気的に接続されているか、又は第1ケーブルの第2配線と第2ケーブルの第2配線とが印刷ヘッド25において電気的に接続されていればよい。
【0139】
・第1ケーブルにおける複数の第1配線CW1のうち一番端部に位置する第1配線CW1と、第2ケーブルにおける複数の第1配線CW1のうち一番端部に位置する第3配線CW3の隣に位置する第1配線CW1とが、印刷ヘッド25において電気的に接続されるだけでもよい。また、第1ケーブルにおける複数の第2配線CW2のうち一番端部に位置する第2配線CW2と、第2ケーブルにおける複数の第2配線CW2のうち一番端部に位置する第3配線CW3の隣に位置する第2配線CW2とが、印刷ヘッド25において電気的に接続されているだけでもよい。
【0140】
・2つのフラットケーブル481,482の配線領域WAにおいて、ケーブル幅方向の一端側の配線4本分の配置ブロック内の2つの駆動信号COMAαと、他端側の配線4本分の配置ブロック内の2つの駆動信号COMBαとのうち一方について、その信号伝搬用の配線CW同士を印刷ヘッド25において電気的に接続すれば足りる。例えば、第1駆動信号COMAと第2駆動信号COMBとのうち波形の振幅のより大きな一方についてのみその信号伝搬用の配線同士を印刷ヘッド25内で電気的に接続してもよい。また、色種の同じ2つの第1駆動信号COMAと色種の同じ2つの第2駆動信号COMBとのうち少なくとも一方について、その信号伝搬用の配線同士が電気的に接続されていれば、各配置ブロックに割り当てる色種は適宜変更してもよい。
【0141】
・2つのフラットケーブル481,482における配線領域WAの幅方向両端部のうち一方の端部で同じ第1駆動信号COMAが伝搬される2つの第1配線CW1、又は同じ第2駆動信号COMBが伝搬される2つの第2配線CW2が、印刷ヘッド25において電気的に接続されていれば足りる。配線領域WAの端部で同じ第1駆動信号COMAが伝搬される2つの第1配線CW1、又は同じ第2駆動信号COMBが伝搬される2つの第2配線CW2が電気的に接続されていれば、相互誘導による磁界の影響度の最大値と最小値とを平均化しその影響度を小さく緩和することができる。例えば第1駆動信号COMAと第2駆動信号COMBとのうちそれぞれが有する第1波形と第2波形とのうち振幅がより大きい一方の駆動信号を伝搬する2つの配線を印刷ヘッドにおいて電気的に接続する構成でもよい。
【0142】
・前記実施形態では、1色につき複数(例えば2つ)のノズル列32を備えたが、1色につき1つのノズル列32を備えた構成の印刷ヘッド25であってもよい。この場合、図9図14における信号COMAα,COMBα,VBSα(但し、α=1,2,…,k)は、1つのノズル列32に対応する1つの吐出部群36の駆動制御に用いられてもよい。また、1つのノズル列32を複数の吐出部群36で駆動させる構成とし、信号COMAα,COMBα,VBSαを、ノズル列32を共通とする複数の吐出部群36の駆動制御に使用する構成でもよい。これらの構成でも、同一色(又は同一ノズル列)の印刷に使用される複数の吐出部群36のそれぞれに供給(印加)される信号の伝送路である各配線CW1を、印刷ヘッド25において電気的に接続(導通)させればよい。
【0143】
・前記実施形態では、2つのフラットケーブル481,482における配線領域WAを、ケーブル幅方向に配線1つ分ずらしたが、配線3つ分ずらしたり、配線5つ分ずらしたりしてもよい。
【0144】
・制御回路50と印刷ヘッド25とを接続するケーブルは、重ねて配置された複数のフレキシブルケーブルからなる構成に限定されず、第1フラットケーブルと第2フラットケーブルとが重ねた状態に一体成形されている構成でもよい。また、ケーブル幅方向に複数のフラットケーブルを並べて配置することにより第1ケーブルと第2ケーブルのうち少なくとも一方を構成してもよい。
【0145】
・ケーブルは、フレキシブルフラットケーブルに限定されず、フレキシブルなケーブルであればよい。例えば同軸状の多芯ケーブルでもよい。この場合、ケーブルは、同心円状の第1層(第1円筒状層)からなる第1ケーブル部と、第2層(第2円筒状層)からなる第2ケーブル部とを有する。ケーブルを構成する第1ケーブル部と第2ケーブル部のそれぞれは、第1駆動信号を伝搬する第1配線と、第2駆動信号を伝搬する第2配線と、基準電圧信号を伝搬する第3配線とを含む。2つのケーブル部のそれぞれは、第1配線と第3配線とが隣合い、かつ第2配線と第3配線とが隣合う配線構造を有し、かつ2つのケーブル部は、重ね方向(径方向)において、第1配線と第3配線とが対向し、第2配線と第3配線とが対向する状態で重ねられていればよい。このような同軸状の多芯ケーブルであっても、前記実施形態と同様に、駆動信号間の相互誘導に起因するオーバーシュートを効果的に低減することができる。
【0146】
・第1駆動信号及び第2駆動信号の転送方式として、差動信号を用いる転送方式を採用してもよい。
・媒体Mは、ロール体16から繰り出される長尺状の媒体に限定されず、A3短辺幅以上の幅を有する単票紙等の枚葉タイプの媒体でもよい。
【0147】
・制御回路50は、プログラムを実行するコンピューターによるソフトウェアとASIC(Application Specific IC)等の電子回路によるハードウェアとの協働により実現してもよいし、ソフトウェアだけで実現してもよいし、さらにハードウェアだけで実現してもよい。
【0148】
・大判プリンターは、駆動素子に印加される駆動信号の変化に伴い液体を吐出するシリアルスキャン方式のインクジェットプリンターであれば、例えば捺染印刷装置でもよい。また、大判プリンターは、インクジェットプリンターに限らず、駆動素子に印加される駆動信号の変化に伴い印刷する印刷ヘッドを備えたプリンターであればよく、例えばドットインパクトプリンター及び熱転写式プリンターでもよい。
【0149】
・大判プリンターは、用紙やフィルム等の媒体にインクを吐出して画像を印刷する印刷装置に限らず、印刷技術(インクジェット技術)を用いて電子部品等の製造に使用される工業用の大判プリンターでもよい。例えば、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を吐出する工業用の大判プリンターでもよい。この種の工業用の大判プリンターとしては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液状体を吐出する液体吐出装置でもよい。さらにバイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する液体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置であってもよい。また、大判プリンターは、樹脂液等の液体を吐出して3次元造形物を製造する3次元用インクジェットプリンター(液体吐出装置)でもよい。
【0150】
・シリアル印刷を行う大判プリンターには、シリアルスキャン方式に限らず、印刷ヘッド(キャリッジ)が主走査方向Xと副走査方向Yとの2方向に移動可能なラテラルスキャン方式のものも含まれる。要するに、大判プリンターは、印刷ヘッドが主走査方向に移動して印刷し、印刷ヘッドの主走査方向への移動を可能にするために、印刷ヘッドと制御回路とがケーブルで接続されている構成であれば足りる。
【符号の説明】
【0151】
11…大判プリンター(ラージフォーマットプリンター)、23…ヘッドユニット、25…印刷ヘッド、31…ノズル、32…ノズル列、34…駆動素子、35…吐出部、36…吐出部群(駆動素子群の一例)、45…ケーブル(フレキシブルケーブル)、48…ケーブル、481…第1ケーブルの一例としての第1フラットケーブル、482…第2ケーブルの一例としての第2フラットケーブル、50…制御回路、51…制御基板、52…駆動回路基板、53…制御部、53A…波形データ保存部、54…制御信号送信部、55…電源回路、56…駆動信号生成回路、56A…第1信号生成回路、56B…第2信号生成回路、57…波形生成回路、60…ヘッド基板、61…ヘッド駆動回路、80…選択部、82a,82b…トランスファーゲート、CW…配線(芯線)、CW1…第1配線、CW2…第2配線、CW3…第3配線、COMA−D,COMB−D…波形データ、COMA1〜COMA4…第1駆動信号、COMB1〜COMB4…第2駆動信号、VBS1〜VBS4…基準電圧信号、SI1〜SI8…印刷データ信号、LAT…ラッチ信号、CH…チェンジ信号、VHV…電源電圧信号(電源電圧)、GND…グランド(信号)、Ap1,Ap2…第1波形の一例としての波形(駆動パルス)、Bp1,Bp2…第2波形の一例としての波形(駆動パルス)、WA…駆動信号配線領域、M…媒体、X…走査方向(主走査方向)、Y…搬送方向(副走査方向)、Z…鉛直方向。
図1
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