特許第6972708号(P6972708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972708
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】カード及びカード基材
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/23 20140101AFI20211111BHJP
   B42D 25/40 20140101ALI20211111BHJP
【FI】
   B42D25/23
   B42D25/40 100
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-127618(P2017-127618)
(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公開番号】特開2019-10765(P2019-10765A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝
【審査官】 金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−253963(JP,A)
【文献】 特開平10−058865(JP,A)
【文献】 特開平11−265429(JP,A)
【文献】 特開2011−101960(JP,A)
【文献】 特開2007−083422(JP,A)
【文献】 特開2013−107209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00−25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材と、前記カード基材の一方の面に被着された転写層とを有し、
前記カード基材は、平行な第1及び第3の辺と、前記第1及び第3の辺の一端側同士を結ぶ第2の辺と、前記第1及び第3の辺の他端側同士を結ぶ第4の辺とを有すると共に、前記カード基材の4個のコーナー部は湾曲辺部となっているカードにおいて、
前記第2の辺のうち両端側の前記湾曲辺部同士の間の少なくとも一部が、前記第1及び第3の辺と垂直な垂線方向に対し斜交方向に延在し
前記第2の辺のうち前記湾曲辺部同士の間は、全体が前記斜交方向に延在し、直線状であり、
前記第2の辺のうち前記湾曲辺部同士の間と、前記第1及び第3の辺と垂直な垂線方向との交差角度が0.15°以上1.2°以下であることを特徴とするカード。
【請求項2】
前記カード基材の前記一方の面の周縁部に、前記一方の面側に起立する起立部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカード。
【請求項3】
前記カード基材の前記一方の面のうち前記第2の辺の辺縁部に、前記一方の面側に起立する起立部が設けられており、前記第4の辺の辺縁部は平坦部になっていることを特徴とする請求項1に記載のカード。
【請求項4】
前記起立部の起立高さが80μm未満であることを特徴とする請求項又はに記載のカード。
【請求項5】
前記第4の辺のうち両端側の前記湾曲辺部同士の間の少なくとも一部が、前記第1及び第3の辺と垂直な垂線方向に対し斜交方向に延在していることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のカード。
【請求項6】
一方の面に転写層が形成されるカード基材であって、
前記カード基材は、平行な第1及び第3の辺と、前記第1及び第3の辺の一端側同士を結ぶ第2の辺と、前記第1及び第3の辺の他端側同士を結ぶ第4の辺とを有すると共に、前記カード基材の4個のコーナー部は湾曲辺部となっているカード基材において、
前記第2の辺のうち両端側の前記湾曲辺部同士の間の少なくとも一部が、前記第1及び第3の辺と垂直な垂線方向に対し斜交方向に延在し
前記第2の辺のうち前記湾曲辺部同士の間は、全体が前記斜交方向に延在し、直線状であり、
前記第2の辺のうち前記湾曲辺部同士の間と、前記第1及び第3の辺と垂直な垂線方向との交差角度が0.15°以上1.2°以下であることを特徴とするカード基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身分証明書やIDカード、クレジットカード等のカードに係り、特にカード基材上に転写層を有するカードに関する。また、本発明は、カード基材と、熱転写法によってカード基材上に転写層を形成する工程を有するカードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類においては、カード全面に画像を形成する、いわゆる縁なし画像が主流となってきている。これらカード類への画像形成は、カード類と中間転写記録媒体(熱転写フィルム)とを圧接し、サーマルヘッド等の加熱デバイスによって、熱転写フィルム中の色材をカード類の表面に移行(転写)することにより行われている。また、上記のような熱転写方式により形成された画像の耐摩耗性、耐光性、耐改ざん防止性等の耐久性を向上させるため、画像上に透明な保護層を設けることも行われている。
【0003】
縁なし画像が形成されたカード類において、上記のように画像上に保護層を設けるためには、カードと同じ大きさとなるように保護層を設ける必要がある。カード全面に保護層を設ける方法としては、画像が転写されたカードの表面上に、カードよりも少し大きい保護層を転写し、保護層のカードからはみ出した部分を切断する方法や、一次画像が形成された中間転写記録媒体を用いて、画像と保護層とを同時にカードに転写する方法などが提案されている。この中間転写記録媒体を用いた画像形成においては、保護層を兼ねる転写層に予め一次画像を形成(転写)しておき、中間転写記録媒体をカード表面に圧接して転写層をカード上に再転写し、次いで転写層を中間転写記録媒体から剥離させることにより、カード全面に画像と保護層とを同時に形成することができる(例えば、特許文献1および2等)。
【0004】
ところで、近年、セキュリティー性の向上のため、OA機器や情報端末等もIDカード等によって管理がなされることが多くなっており、IDカード等の使用頻度の増加に伴い、従来の保護層を設けたIDカードであっても、摩耗等によって画像が損耗してしまうことが生じるようになってきた。そのため、さらなる画像耐摩耗性の向上のため、保護層を厚くすることが行われている。
【0005】
中間転写記録媒体を用いて被転写体の全面に熱転写層(保護層)を熱転写する場合、上記のように熱転写層(保護層)を厚くすると、基材を中間転写記録媒体から剥離する際に、図11に示すように、IDカード等の被転写体10’の端部に尾引きと呼ばれるバリBが発生することがある。このバリBは、特に被転写体10’の送り方向後端側に発生し易い。
【0006】
カード後端部の保護層由来のバリは、[保護層の破断力]>[保護層と中間転写記録媒体基材との密着力]の場合に発生する。
【0007】
保護層と中間転写記録媒体基材との密着性を上げると、保護層をカードに転写しにくくなり、転写不良が発生するので、保護層の破断力を小さくする必要がある。保護層の破断力を小さくするには、保護層の厚さを小さくするか、保護層の許容破断力を小さくする必要がある。
【0008】
一方、保護層の耐摩耗性を向上させるためには、保護層の厚みを厚くしたり、保護層の許容破断力を大きくしたりする必要があるが、このようにすると、保護層が破断されにくくなる。
【0009】
保護層の耐摩耗性を向上させつつ、保護層由来のバリの発生を防止するには、保護層の幅手長さを小さくすることが考えられるが、転写するカード幅は規定があり、小さくできない。
【0010】
中間転写記録媒体基材を剥離させる際のバリ発生を防止するカード製造方法及び装置として、特許文献3には、中間転写記録媒体の長さ方向の一方側から該基材を途中まで剥離させた後、他方側から該基材を剥離させる方法及び装置が記載されている。しかしながら、この装置は構造が複雑であり、コスト高となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−144754号公報
【特許文献2】特開2006−181732号公報
【特許文献3】特開2011−101960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、転写層のバリの発生が防止されるカードと、その製造方法及びカード基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のカードは、カード基材と、前記カード基材の一方の面に被着された転写層とを有し、前記カード基材は、平行な第1及び第3の辺と、前記第1及び第3の辺の一端側同士を結ぶ第2の辺と、前記第1及び第3の辺の他端側同士を結ぶ第4の辺とを有すると共に、前記カード基材の4個のコーナー部は湾曲辺部となっているカードにおいて、前記第2の辺のうち両端側の前記湾曲辺部同士の間の少なくとも一部が、前記第1及び第3の辺と垂直な垂線方向に対し斜交方向に延在していることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の一態様では、前記第2の辺のうち前記湾曲辺部同士の間は、全体が前記斜交方向に延在している。
【0015】
本発明の一態様では、前記第2の辺のうち前記湾曲辺部同士の間は、直線状である。
【0016】
本発明の一態様では、前記第2の辺のうち前記湾曲辺部同士の間と、前記第1及び第3の辺と垂直な垂線方向との交差角度が0.15°以上1.2°以下である。
【0017】
本発明の一態様では、前記第2の辺のうち前記湾曲辺部同士の間の途中の少なくとも1箇所は前記カードの面外方向に突出した突出部となっている。
【0018】
本発明の一態様では、前記突出部が1箇所にのみ設けられており、前記突出部と前記第1の辺側の湾曲辺部との間は第1斜交辺部となっており、前記突出部と前記第3の辺側の湾曲辺部との間は第2斜交辺部となっている。
【0019】
本発明の一態様では、前記第1斜交辺部及び第2斜交辺部は、それぞれ直線状である。
【0020】
本発明の一態様では、前記第1斜交辺部と第2斜交辺部とが直に交わっている。
【0021】
本発明の一態様では、前記第1斜交辺部と第2斜交辺部との間に、前記第1及び第3の辺と略垂直方向に延在する略垂直方向辺部が設けられている。
【0022】
本発明の一態様では、前記第2の辺のうち前記湾曲辺部同士の間は、前記カードの面外方向に膨出した形状の湾曲線よりなる。
【0023】
本発明の一態様では、前記カード基材の前記一方の面の周縁部に、前記一方の面側に起立する起立部が設けられている。
【0024】
本発明の一態様では、前記カード基材の前記一方の面のうち前記第2の辺の辺縁部に、前記一方の面側に起立する起立部が設けられており、前記第4の辺の辺縁部は平坦部になっている。
【0025】
本発明の一態様では、前記起立部の起立高さが80μm未満である。
【0026】
本発明の一態様では、前記第4の辺のうち両端側の前記湾曲辺部同士の間の少なくとも一部が、前記第1及び第3の辺と垂直な垂線方向に対し斜交方向に延在している。
【0027】
本発明のカードの製造方法は、媒体基材と、前記媒体基材上に剥離可能に設けられた熱転写層とを有する中間転写記録媒体を用いて前記カード基材上に前記転写層を熱転写法によって形成する工程を有することを特徴とするものである。
【0028】
本発明の一態様では、前記カード基材を、前記第2の辺が送行方向後端側となるように送行させる。
【0029】
本発明の一態様では、前記熱転写層が受容層と保護層を含む。
【0030】
本発明のカード基材は、一方の面に転写層が形成されるカード基材であって、前記カード基材は、平行な第1及び第3の辺と、前記第1及び第3の辺の一端側同士を結ぶ第2の辺と、前記第1及び第3の辺の他端側同士を結ぶ第4の辺とを有すると共に、前記カード基材の4個のコーナー部は湾曲辺部となっているカード基材において、前記第2の辺のうち両端側の前記湾曲辺部同士の間の少なくとも一部が、前記第1及び第3の辺と垂直な垂線方向に対し斜交方向に延在していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、カード基材の第2の辺の少なくとも一部に、第1及び第3の辺と垂直な垂線方向に対し斜交方向に延在した部分(以下、斜交辺部ということがある。)が設けられている。
【0032】
かかる構成を有したカード基材上に、中間転写記録媒体を用いた熱転写法によって転写層を形成する場合、中間転写記録媒体の熱転写層をカード基材上に熱転写した後、媒体基材を剥離させるに際して、カード基材の第2の辺に沿って熱転写層に加えられる剪断力が部分的に集中し、熱転写層が当該部分から速やかに破断開始するようになり、尾引きと称されるバリの発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施の形態に係るカード基材の平面図である。
図2】実施の形態に係るカード基材の平面図である。
図3】実施の形態に係るカード基材の平面図である。
図4】実施の形態に係るカード基材の平面図である。
図5】実施の形態に係るカード基材の平面図である。
図6】実施の形態に係るカード基材の平面図である。
図7図1のVII−VII線に沿う拡大断面図である。
図8】中間転写記録媒体の模式的な拡大断面図である。
図9】熱転写方法を示す概略的な側面図である。
図10】媒体基材の剥離状況を説明する模式的斜視図である。
図11】バリを有したカードの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1〜6を参照して実施の形態に係るカード基材について説明する。
【0035】
図1〜6のカード基材10A〜10Fは、略方形であり、1対の平行な第1の辺31及び第3の辺33を有する。また、カード基材10A〜10Fは、第1及び第3の辺31,33の一端側同士を結ぶ第2の辺32と、他端側同士を結ぶ第4の辺34とを有する。カード基材10A〜10Fの4個のコーナー部は略四分円弧状に湾曲した湾曲辺部R1〜R4となっている。
【0036】
湾曲辺R1には辺31,32が連なり、湾曲辺部R2には辺32,33が連なり、湾曲辺部R3には辺33,34が連なり、湾曲辺部R4には辺34,31が連なっている。
【0037】
第4の辺34は第1及び第3の辺31,33と垂直方向に延在している。
【0038】
各カード基材10A〜10Fは、第2の辺32の構成が以下のように異なっている。
【0039】
図1のカード基材10Aにあっては、第2の辺は、湾曲辺部R1とR2を結ぶ一直線状のものである。第2の辺32は、第1及び第3の辺31,33と垂直な垂線方向Vに対し斜交方向に延在しており、垂線方向Vと第2の辺32の延在方向との交角θは好ましくは0.15°以上0.6°以下、特に0.2°以上0.3°以下程度である。
【0040】
図2に示すカード基材10Bにあっては、第2の辺32は、第1の辺31側の第1斜交辺部32aと、第3の辺33側の第2斜交辺部32bとからなる。第1及び第2斜交辺部32a,32bは直接に交わっており、両者の交点Pは、湾曲辺部R1,R2のいずれよりもカード基材10Bの面外方向に突出している。
【0041】
交点Pは、第1及び第3の辺31,33同士の中間付近に位置してもよく、いずれか一方に片寄ってもよい。
【0042】
図3のカード基材10Cは、図2のカード基材10Bにおいて、第1斜交辺部32aと第2斜交辺部32bとの間に、前記垂線V方向とほぼ同方向に延在する略垂直方向辺部32cが設けられている。垂直方向辺部32cの長さは、カード基材の幅(第1及び第3の辺31,33間の距離)の44%以下、特に1%以下であることが好ましい。
【0043】
図4に示すカード基材10Dの第2辺32は、第1〜第4斜交辺部32d〜32gよりなる。第1、第2斜交辺部32d,32eが交わる交点P1及び第3、第4斜交辺部32f,32gが交わる交点P2は、いずれも湾曲辺部R1,R2よりもカード基材10Dの面外方向に突出している。第2、第3斜交辺部32e,32fが交わる部分は、前記垂線方向とほぼ同方向に延在していてもよく、凹に湾曲する曲線であってもよい。第2、第3斜交辺部32e,32fは直接に交わってもよい。
【0044】
図4では、交点の数は2個であるが、3個以上であってもよい。
【0045】
図2〜4のカード基材10B〜10Dにおいて、斜交辺部の垂線方向Vとの交角の好ましい範囲は、0.15°以上1.2°以下、特に0.3°以上0.6°以下程度である。
【0046】
図5に示すカード基材10Eの第2の辺32は、カード基材10Eの面外方向に向って膨出した形状の弧状部32hを有している。弧状部32hと湾曲辺部R1,R2との交点部分は、カード基材10Eの面内方向に向って凹となる凹角部Qとなっている。
【0047】
図6のカード基材10Fは、前記図2のカード基材10Bにおける直線状の第1、第2斜交辺部32a,32bを凹に湾曲した曲線辺部32i,32jとしたものである。曲線辺部32i,32jが交わる交点P3は、図2の交点Pに比べて尖った形状となっている。
【0048】
これらのカード基材10A〜10Fは、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂を母材としたものであることが好ましい。なお、ICチップ等が埋め込まれてもよいことは明らかである。
【0049】
合成樹脂製カード基材は、合成樹脂シートをパンチダイやトムソン刃等で加工することにより上記の各形状とされることが好ましい。この加工を施すと、図7のように、一方の面10sの端縁から打ち抜きバリよりなる起立部10tが形成される。この起立部10tの起立高さは、通常80μm未満、例えば5μm以上50μm以下程度である。このような起立部10tを有するカード基材に熱転写法により装飾を施す場合、一方の面10sに転写層が形成されるようにすることが好ましい。これにより、中間転写記録媒体に起立部10tが食い込み、中間転写記録媒体がカード基材10A〜10Fの端縁に沿って剪断され易くなる(膜切れ性が良好となる。)。
【0050】
なお、カード基材10A〜10Fの寸法は、特に限定されるものではないが、運転免許証等のICカードには国際規格があるので、本発明のカードをICカードに適用する場合には、カード基材の寸法を国際規格に従わせる必要がある。この国際規格では、カードの長手方向の長さLは85.47mm以上85.72mm以下、短手方向の幅Wは53.92mm以上54.03mm以下である。
【0051】
次に、本発明によるカードの製造方法に適用される熱転写法に用いられる中間転写記録媒体について図8を参照して説明する。図8は、熱転写法に用いられる中間転写記録媒体の層構成を示した模式的な拡大断面図である。この中間転写記録媒体1は、媒体基材2上に、少なくとも1層以上の熱転写層3を剥離可能に設けた層構成を有している。この熱転写層3は、後記するように、被転写体(カード基材)へ熱転写されるものであり、媒体基材2から剥離可能に設けられている。
【0052】
熱転写層3は、媒体基材2側から順に、保護層4および受容層5を備えており、必要に応じて保護層4と受容層5との間にプライマー層6を設けてもよい。受容層5は、熱転写層3が被転写体に転写される前に画像7を形成しておくためのものである。保護層4は、熱転写層3がカード基材へ熱転写された際に、カード基材の画像7(受容層5)を保護するためのものである。また、必要に応じて設けられるプライマー層6は、保護層4と受容層5との接着性を高めるものである。
【0053】
また、本発明においては、媒体基材2と熱転写層3との間に離型層8を設けてもよい。離型層8は、後記するように、カード基材へ熱転写層3を熱転写した後に、媒体基材2を中間転写記録媒体1から剥離し易くするためのものである。この離型層8は、媒体基材2とともに剥離される。
【0054】
次に、上記した中間転写記録媒体を構成する各層の材料について説明する。
【0055】
中間転写記録媒体に用いられる媒体基材2としては、従来の熱転写シートや中間転写記録媒体に使用されているものと同じ基材を、そのまま用いることができる。また、媒体基材表面に易接着処理を施したものやその他のものも使用することができ、特に制限はされない。好ましい媒体基材の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、アイオノマー等のプラスチックフィルム、および、グラシン紙、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類、セロファン等が挙げられ、また、これらの2種以上を積層した複合フィルムなどを使用してもよい。媒体基材の厚さは、その強度および耐熱性が適切になるように材料に応じて適宜変更してよいが、通常は、10μm以上50μm以下程度である。
【0056】
保護層4としては、耐摩擦性、透明性、硬度等に優れた樹脂を適宜用いることができる。具体的には、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、これらの樹脂のシリコーン変性樹脂、及びこれらの樹脂の混合物が挙げられる。また、アクリル系モノマー等を電離放射線照射により架橋硬化した樹脂等も用いることができる。アクリルモノマーの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラグリシジルエーテルテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、電離放射線で硬化される物質は上記モノマーに限らず、オリゴマーとして使用してもよい。更に、上記物質の重合体又はその誘導体からなるポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系等のアクリル反応性重合体も使用可能である。更に、その他のアクリル系樹脂と混合して用いてもよい。
【0057】
また、これらの樹脂の熱転写時の膜切れ性を考慮して、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、プラスチックピグメント等の透明性の高い微粒子やワックス等を、透明性を害さない程度に含有させてもよいし、画像の耐摩擦性、光沢等を向上させるために、滑剤等を含有させてもよい。
【0058】
上記した樹脂は、主成分としてガラス転移点50℃以上120℃以下の熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、熱転写層がカード基材に転写された後に、保護層となった時の耐摩耗性、耐光性等の耐久性に優れたものとなる。そのような熱可塑性樹脂として、数平均分子量2000以上30000以下のポリエステル樹脂、平均重合度150以上500以下の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、または重量平均分子量20000以上60000以下のメタクリレート系モノマーの単独重合体または共重合体を使用することが好ましく、それにより被転写体への転写性、定着性が良好となる。
【0059】
上記のポリエステル樹脂は、その酸成分として、例えば、芳香族としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、脂肪族又は脂環族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、ヘキサハイドロイソフタル酸、ヘキサハイドロテレフタル酸等が挙げられる。又、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3官能以上のポリカルボン酸を使用することができる。
【0060】
ポリエステル樹脂の中でも、酸成分として、特にテレフタル酸、イソフタル酸、及びトリメリット酸を構成モノマーとして使用したものが、保護層となった時の耐摩耗性、耐光性等の耐久性に優れたものとなり、好ましい。
【0061】
また、ポリエステル樹脂の他の原料であるアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジジメタノール及びトリシクロデカングリコール等が挙げられ、保護層となった時の耐摩耗性、耐光性等の耐久性や、転写性、定着性等から、特にエチレングリコール、ネオペンチルグリコール及びトリシクロデカングリコールから選ばれる少なくとも2種以上を構成モノマーとして使用したものが、ガラス転移点が50℃以上120℃以下、数平均分子量が2000以上30000以下の範囲に調整しやすく、好ましい。
【0062】
保護層形成用の樹脂として好ましい熱可塑性樹脂は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。この塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、ガラス転移点が50℃以上120℃以下、平均重合度が150以上500以下の範囲のものを使用することが好ましい。また、このような塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を得るに際しては、酢酸ビニルモノマーを5重量%以上40重量%以下配合することが好ましい。酢酸ビニルの配合量が多すぎるとブロッキング現象が生じやすく、反対に酢酸ビニルの配合量が少なすぎると基材上にコーティングするときに使用する溶媒に対する溶解性が低くなり、コーティングしにくくなる。
【0063】
また、保護層を構成する熱可塑性樹脂としては、メタクリレート系モノマーの単独重合体または共重合体も好ましい。メタクリレート系モノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクレリレート、sec−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0064】
印画物に耐光性を付与するために、保護層4には紫外線吸収剤が添加されていてもよい。例えば、反応性紫外線吸収剤を上記の熱可塑性樹脂に反応ないし結合させて得た樹脂を使用することができる。より具体的には、サリシレート系、フェニルアクリレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、クマリン系、トリアジン系、ニッケルキレート系のような従来公却の非反応性の有機系紫外線吸収剤に、付加重合性二重結合(例えばビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基など)、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したもの等を挙げることができる。非反応性の有機系紫外線吸収剤としては、サリシレート系、フェニルアクリレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、クマリン系、トリアジン系、ニッケルキレート系が挙げられる。紫外線吸収剤の添加量としては、樹脂に対して概ね1重量%以上30重量%以下、好ましくは5重量%以上20重量%以下程度である。
【0065】
保護層4は、上記の樹脂に必要な添加剤を加えたものを、適当な有機溶剤に溶解したり、有機溶剤や水に分散した分散体を、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の形成手段により、基材上に塗布及び乾燥することにより形成される。熱転写層は任意の厚みに形成することができるが、好ましくは、乾燥後の厚みで5μm以上100μm以下であり、更に好ましくは10μm以上50μm以下である。
【0066】
後記するように、熱転写層3がカード基材へ熱転写された後に続いて媒体基材2を剥離する。媒体基材2と熱転写層3との材質の組合せによっては、熱転写の際の離型性が十分でない場合がある。このような場合、媒体基材2上に予め離型層8を設けることが好ましい。離型層8としては、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ウレタン樹脂、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等を使用することができる。
【0067】
離型層は、上記した樹脂を主成分とする塗布液を、グラビアコート、グラビアリバースコート等の方法で、媒体基材上に塗布、乾燥することにより形成できる。塗膜の厚さは0.01μm以上2μm以下程度である。なお、離型層に使用する材料を選択する際には、熱転写層と適切な離型性を有することは勿論のこと、熱転写層との接着力よりも媒体基材との接着力を高くすることが大切であり、もし媒体基材との接着力が十分でない場合には、離型層ごと熱転写層が転写される等の異常転写の原因となる。
【0068】
熱転写層3を構成する受容層5は、上記した保護層4上に直接または、プライマー層6を介して、形成される。熱転写層3は、熱溶融転写記録と昇華転写記録の各記録方式の違いにより、構成が異なる。熱溶融転写記録では受容層を設けずに、保護層に直接、熱転写シート等から着色転写層を熱転写することもできる。熱溶融転写記録方法や昇華転写記録方法による受容層は、加熱により熱転写シートから転写される色材を受容する働きを有するもので、特に昇華性染料の場合には、それを受容し、発色させると同時に、一旦受容した染料を再昇華させないことが望まれる。本発明による画像形成方法は、後記するように、中間転写記録媒体の受容層に、一担、転写画像を形成しておき、その画像を含めて保護層とともに被転写体へ再転写して画像を形成するものであり、受容層には透明性をもたせて、被転写体に転写された画像を上から鮮明に観察できるようにすることが一般的である。但し、作為的に受容層を濁らせたり、薄く着色させたりして、再転写画像を特徴づけることも可能である。
【0069】
受容層5は、熱可塑性樹脂を主体として構成される。受容層を形成する材料としては、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられ、中でも特に好ましいものはポリエステル系樹脂及び塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体及びそれらの混合物である。
【0070】
中間転写記録媒体への画像形成時において、受容層と、着色転写層を有する熱転写シートとの融着や印画感度低下等を防ぐ目的で、昇華転写記録方式では、受容層に離型剤を混合することができる。混合して使用する好ましい離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられるが、中でもシリコーンオイルが望ましい。そのシリコーンオイルとしては、エポキシ変性、ビニル変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシ・ポリエーテル変性、ポリエーテル変性等の変性シリコーンオイルが望ましい。
【0071】
離型剤は1種若しくは2種以上のものが使用される。また、離型剤の添加量は受容層形成用樹脂100重量部に対し、0.5重量部以上30重量部以下が好ましい。この添加量の範囲を満たさない場合は、昇華型熱転写シートと中間転写記録媒体の受容層との融着や印画感度低下等の問題が生じる場合がある。このような離型剤を受容層に添加することによって、転写後の受容層の表面に離型剤がブリードアウトして離型層が形成される。また、これらの離型剤は受容層に添加せず、受容層上に別途塗工してもよい。
【0072】
受容層は、必要に応じて離型剤等の添加剤を加えたものを適当な有機溶剤に溶解したり、有機溶剤や水に分散した分散体を、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の形成手段により、保護層上に塗布し、乾燥して、形成される。受容層の形成に際しては、受容層は任意の厚さでよいが、一般的には乾燥状態で1μm以上10μm以下の厚さである。また、このような受容層は連続被覆であるのが好ましいが、樹脂エマルジョンまたは水溶性樹脂や樹脂分散液を使用して、不連続の被覆として形成してもよい。更に、熱転写プリンターの搬送安定化を図るために受容層の上に帯電防止剤を塗工してもよい。
【0073】
保護層4と受容層5との間に必要に応じて設けられるプライマー層6は、保護層と受容層との間の接着性を向上させるものであり、従来の中間転写記録媒体に用いられるものと同様のものを使用できる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等を溶剤に溶解ないし分散させた塗工液を用意し、前記受容層の形成手段と同様な方法で形成することができる。プライマー層の厚さは、乾燥状態で0.1μm以上5μm以下程度である。
【0074】
本発明に用いられる中間転写記録媒体は、必要に応じて、媒体基材の裏面、すなわち熱転写層を設ける側と反対側の面に、サーマルヘッドやヒートロール等の熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止するため、耐熱滑性層を設けてもよい。
【0075】
上記した中間転写記録媒体は、フィルム等の長尺状の媒体基材2上に複数の熱転写層3を連続して形成したものであってよい。また、所定の大きさの複数の熱転写層3が媒体基材2上に一定間隔で設けられているようなものであってもよい。
【0076】
次に、上記した長尺状の中間転写記録媒体を用いてカード基材へ画像を形成する方法について、図9を参照しながら説明する。
【0077】
図9は、熱転写法の一例を示した模式的な側面図であり、中間転写記録媒体1への画像形成と、熱転写層3のカード基材10への熱転写とを連続して行う工程の概略を示したものである。カード基材10は、上記カード基材10A〜10Fのいずれでもよい。
【0078】
所定幅の中間転写記録媒体1は、供給ロール11から送り出され、プラテンローラー12に至り、その後、緩衝ローラー13を通過して、中間転写記録媒体1の供給搬送方向下流側に送られる。サーマルヘッド16とガイドローラー18との間に配設された緩衝ローラー13は、中間転写記録媒体1の媒体基材2が熱エネルギーの付与により形状が変形してテンションが変動するのを吸収して、安定したテンション状態とするための部材である。
【0079】
中間記録転写媒体1は、図8に示す、熱転写層3を媒体基材2上に一定間隔で設けたものである。
【0080】
中間転写記録媒体1上に画像7を形成するための熱転写フィルム14は、供給ロール15から送り出され、サーマルヘッド16を通過して巻取ロール17に巻き取られる。サーマルヘッド16とプラテンローラー12とは、搬送された熱転写フィルム14と中間転写記録媒体1とを、熱転写フィルム14の色材層(図示せず)と中間転写記録媒体1の熱転写層3(受容層)とが重なるように圧接可能に配設されている。そして、画像データに応じてサーマルヘッド16を発熱させて、熱転写フィルム14中の色材層に含まれる色材を、熱転写層3に移行させることにより、熱転写層3上に画像7が連続して形成される。
【0081】
熱転写層3に画像7が形成された中間転写記録媒体1は、中間転写記録媒体1の供給搬送方向下流側に送られる。中間転写記録媒体1はガイドローラー18に案内されてヒートローラー19に達し、その後、ガイドローラー20に案内されて巻取ロール21に巻き取られる。また、ヒートローラー19に対向する位置に支持ローラー22が配設されている。
【0082】
カード基材10は、供給装置(図示せず)にストックされており、この供給装置から複数の搬送ローラー23により支持ローラー22上に搬送される。支持ローラー22および複数の搬送ローラー23は、搬送されてきたカード基材10が、ガイドローラー18に案内されて搬送されてきた中間転写記録媒体1と平行な状態で、かつ、カード基材10の矩形長と熱転写層3の幅とが揃うように、圧接可能に配設されている。また、ガイドローラー18,20も、中間転写記録媒体1が、カード基材10と平行状態で、かつカード基材10の矩形長と熱転写層3の幅とが揃うように、圧接可能に配設されている。これは、中間転写記録媒体1の媒体基材2とヒートローラー19との接触を線接触に近づけて、ヒートローラー19からの熱により中間転写記録媒体1の媒体基材2に発生する変形を最小限に抑えるためである。
【0083】
画像7が形成された熱転写層3が、ヒートローラー19による圧接位置に到達したとき、ヒートローラー19により媒体基材2側から中間転写記録媒体1に熱エネルギーが付与されて、画像7が熱転写層3とともにカード基材10に転写され、カード基材10に画像7が形成される。
【0084】
ヒートローラー19は、金属ローラー、表面をゴム等の弾性被膜で被覆したローラー等よりなる。
【0085】
カード基材10へ熱転写層3が熱転写されて画像形成された後、ガイドローラー20に沿って媒体基材2が湾曲することにより、カード基材10上の熱転写層3の一端(カード基材10の送行方向前端)から徐々に媒体基材2が剥離していく。カード基材10がさらに送行されることにより、熱転写層3と媒体基材2とが完全に分離する。
【0086】
本発明によると、熱転写層3がカード基材10A〜10Fの第2の辺に沿って綺麗に切断され、バリBの発生が防止される。この理由の詳細は、必ずしも明確ではないが、次の通りであると推察される。
【0087】
図10は、媒体基材2が剥がれる際にバリB(図11)が発生することが防止されるようになる理由を説明する、ガイドローラー20付近の模式的な斜視図である。
【0088】
図10では、カード基材10A上に熱転写層3が形成され、このカード基材10Aの走行方向後端付近(第2の辺32付近)がガイドローラー20の下側を通過している。
【0089】
前述の通り、第2の辺32は、前記垂直線V方向と角度θにて交差している。従って、図10では、第2の辺32がガイドローラー20の軸心線方向と斜交方向に延在している。
【0090】
図10では、第2の辺32のうち進行方向左側(第3の辺33側)の湾曲辺部R2のみがガイドローラー20を通過している。この状態では、第2の辺32と湾曲辺部R2とが交わる点32Xがガイドローラー20の軸心線の真下に位置している。このとき、ガイドローラー20の最下点(軸心線の真下部分)は、カード基材10Aの点32X付近の熱転写層3に剪断力を集中的に加えることになり、点32X付近で熱転写層3の剪断が開始する。その後、カード基材10Aが進行すると、剪断力の集中箇所が徐々に湾曲辺部R1側に移動し、熱転写層3がカード基材10Aの第2の辺32に沿って綺麗に剪断され、バリBが発生しない。第2の辺32が垂線方向Vと斜交している他のカード基材10B〜10Dの場合も同様である。
【0091】
図10は、ガイドローラー20によって熱転写層3に剪断力を加えて第2の辺32に沿って綺麗に剪断するメカニズムを説明するものであるが、ヒートローラー19によっても同様に熱転写層3に局部的に集中して剪断力が加えられ、綺麗な破断が進行するものと考えられる。
【0092】
上記説明は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。例えば、上記実施形態では、第4の辺34が第1及び第3の辺31,33と垂直方向に延在している例について説明したが、第4の辺34が、第1及び第3の辺31,33と垂直な垂線方向Vに対し斜交方向に延在していてもよい。このような構成とすることで、カード基材10に中間転写記録媒体1の熱転写層3を熱転写する際に、第2の辺32、第4の辺34のどちらを送行方向後端側としても、後端側の辺32又は34に沿って熱転写層3が綺麗に切断され、バリの発生を防止できる。
【0093】
カード基材10に中間転写記録媒体1の熱転写層3を熱転写する際に送行方向先頭側となる第4の辺34の辺縁部は、起立部10t(図7参照)を除去する加工を行い、平坦部としておくことが好ましい。これにより、ヒートローラー19からの熱伝達効率が良くなり、カスレ発生を防止できる。
【符号の説明】
【0094】
1 中間転写記録媒体
2 媒体基材
3 熱転写層
4 保護層
5 受容層
6 プライマー層
7 画像
8 離型層
10 被転写体
11、15 供給ロール
12 プラテンローラー
13 緩衝ローラー
14 熱転写フィルム
16 サーマルヘッド
17、21 巻取ロール
19 ヒートローラー
20 ガイドローラー
22 支持ローラー
23 搬送ローラー
B 尾引き(バリ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11