特許第6972725号(P6972725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972725タイヤ用ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972725
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20211111BHJP
   C08K 5/43 20060101ALI20211111BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20211111BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20211111BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20211111BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   C08J3/20 ZCEQ
   C08K5/43
   C08K5/548
   C08L21/00
   C08L9/06
   B60C1/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-140899(P2017-140899)
(22)【出願日】2017年7月20日
(65)【公開番号】特開2019-19266(P2019-19266A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 健宏
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 隆行
(72)【発明者】
【氏名】池田 啓二
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−019268(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/073206(WO,A1)
【文献】 特開2014−047327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
C08J99/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類のゴム成分を含むゴム成分(A)、下記式(1)または(2)で表されるポリスルフィド化合物(B)、およびメルカプト基を有するシランカップリング剤(C)を含有するタイヤ用ゴム組成物の製造方法であって、
前記ゴム成分(A)のうちの第1のゴム成分と前記ポリスルフィド化合物(B)とを混練りする工程X1、
前記工程X1で得られる混練物に前記シランカップリング剤(C)を加えて混練りする工程X2、ならびに
前記工程X2で得られる混練物に前記ゴム成分(A)のうちの第2のゴム成分を加えて混練りする工程X3
を含み、前記第1のゴム成分のメルカプト基に対する活性化能力が前記第2のゴム成分よりも小さいものであるタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【化1】
(式中、R1は、同一または異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の1価の炭化水素基を表す。nは2〜6の整数を表す。)
【化2】
(式中、R2は、同一または異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の2価の炭化水素基を表す。mは2〜6の整数を表す。)
【請求項2】
前記ゴム成分(A)中、スチレン含有量が25〜50質量%でありビニル結合量が10〜35モル%であるジエン系ゴムを50質量%以上含む請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記スチレン含有量が前記ビニル結合量の2倍以上である請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
メルカプト基を有するシランカップリング剤が、下記式(3)で表される化合物、および/または下記式(4)で表される結合単位Aと下記式(5)で表される結合単位Bとを含む化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【化3】
(式中、R101〜R103は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜12のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜12のアルコキシ基、または−O−(R111−O)z−R112(z個のR111は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。z個のR111は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R112は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、または炭素数7〜30のアラルキル基を表す。zは、1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R101〜R103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R104は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【化4】
【化5】
(式中、xは0以上の整数、yは1以上の整数である。R201は、水素原子、ハロゲン原子、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルキニル基、または該アルキル基の末端の水素原子が水酸基もしくはカルボキシル基で置換されたものを表す。R202は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキレン基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニレン基、または、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルキニレン基を表す。R201とR202とで環構造を形成してもよい。)
【請求項5】
前記ポリスルフィド化合物(B)の含有量が、前記メルカプト基を有するシランカップリング剤(C)100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法で得られるタイヤ用ゴム組成物の加硫前の段階でタイヤ用部材を成形し、他のタイヤ用部材と組み合わせて生タイヤを成形する工程と、前記成形工程で得られた生タイヤを加硫する加硫工程とを含むタイヤの製造方法。
【請求項7】
少なくとも2種のゴム成分を含むゴム成分(A)、下記式(1)または(2)で表されるポリスルフィド化合物(B)、およびメルカプト基を有するシランカップリング剤(C)を含有するタイヤ用ゴム組成物であって、
前記ゴム成分(A)のうちの第1のゴム成分と前記ポリスルフィド化合物(B)とを混練りして得られる混練物に前記シランカップリング剤(C)を加えて混練りし、その後得られる混練物に前記ゴム成分(A)のうちの第2のゴム成分を加えて混練りすることにより得られ、前記第1のゴム成分のメルカプト基に対する活性化能力が前記第2のゴム成分よりも小さいものであるタイヤ用ゴム組成物。
【化6】
(式中、R1は、同一または異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の1価の炭化水素基を表す。nは2〜6の整数を表す。)
【化7】
(式中、R2は、同一または異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の2価の炭化水素基を表す。mは2〜6の整数を表す。)
【請求項8】
請求項記載のタイヤ用ゴム組成物で構成されるタイヤ用部材を備えるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源、省エネルギー、加えて環境保護の立場から、排出炭酸ガスの低減に対する社会的要求が強まっており、自動車に対しても軽量化、電気エネルギーの利用など、様々な対応策が検討されている。そのため、自動車用タイヤの転がり抵抗を低減し、低燃費性を高めることが要求され、また、耐久性などの性能を改善することも望まれている。
【0003】
例えば、転がり抵抗を低下させる方法として、シリカ配合の採用、充填剤の減量、補強性の小さい充填剤の使用などの手法が知られているが、ゴムの機械的強度などが低下し、種々の性能が悪化する傾向がある。
【0004】
また、特許文献1には、低燃費性などの性能の改善を目的として、反応性の高いメルカプト基を有するシランカップリング剤(メルカプト系シランカップリング剤)の使用が検討されている。しかし、メルカプト系シランカップリング剤は、良好な低燃費性能、ウェットグリップ性能、および耐摩耗性が得られる一方で、反応性が高いためゴム成分などとの混練り中にゲル化し、加工性が悪化する懸念がある。
【0005】
そこで、特許文献2には、メルカプト基を有するシランカップリング剤を含有するゴム組成物に所定のポリスルフィド化合物をさらに配合することにより、ゴム組成物の加工性、低燃費性、ゴム強度、耐摩耗性、耐亀裂成長性をバランス良く改善することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−120819号公報
【特許文献2】特開2014−47327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載の製造方法では、天然ゴムおよびブタジエンゴムをゴム成分として用いているが、それらは同じ混練工程においてメルカプト基を有するシランカップリング剤と所定のポリスルフィド化合物とを混練りしており、加工性についてさらに改善の余地がある。
【0008】
本発明は、メルカプト基を有するシランカップリング剤を配合した場合であっても、より良好な加工性が得られるタイヤ用ゴム組成物の製造方法、およびタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、少なくとも2種のゴム成分を含むゴム成分(A)、下記式(1)または(2)で表されるポリスルフィド化合物(B)およびメルカプト基を有するシランカップリング剤(C)を含有するタイヤ用ゴム組成物の製造方法において、ゴム成分(A)のうちのメルカプト基に対する活性化能力がより小さい第1のゴム成分とポリスルフィド化合物(B)とを混練りする工程X1、その後にシランカップリング剤(C)を混練りする工程X2、ならびにその後にゴム成分(A)のうちの第1のゴム成分よりもメルカプト基に対する活性化能力が大きい第2のゴム成分を混練りする工程X3を含む製造方法とすることにより、未加硫ゴムの加工性を改善することができ、前記課題を解決できることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]少なくとも2種類のゴム成分を含むゴム成分(A)、下記式(1)または(2)で表されるポリスルフィド化合物(B)、およびメルカプト基を有するシランカップリング剤(C)を含有するタイヤ用ゴム組成物の製造方法であって、
前記ゴム成分(A)のうちの第1のゴム成分と前記ポリスルフィド化合物(B)とを混練りする工程X1、
前記工程X1で得られる混練物に前記シランカップリング剤(C)を加えて混練りする工程X2、ならびに
前記工程X2で得られる混練物に前記ゴム成分(A)のうちの第2のゴム成分を加えて混練りする工程X3
を含み、前記第1のゴム成分のメルカプト基に対する活性化能力が前記第2のゴム成分よりも小さいものであるタイヤ用ゴム組成物の製造方法
【化1】
(式中、R1は、同一または異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の1価の炭化水素基を表す。nは2〜6の整数を表す。)
【化2】
(式中、R2は、同一または異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の2価の炭化水素基を表す。mは2〜6の整数を表す。)、
[2]前記ゴム成分(A)中、スチレン含有量が25〜50質量%、好ましくは28〜47質量%、より好ましくは31〜44質量%であり、ビニル結合量が10〜35モル%、好ましくは12〜33モル%、より好ましくは14〜31モル%であるジエン系ゴムを50質量%以上、好ましくは60質量%、より好ましくは70質量%含む上記[1]記載の製造方法、
[3]前記スチレン含有量が前記ビニル結合量の2倍以上、好ましくは2.2倍以上である上記[2]記載の製造方法、
[4]メルカプト基を有するシランカップリング剤が、下記式(3)で表される化合物、および/または下記式(4)で表される結合単位Aと下記式(5)で表される結合単位Bとを含む化合物である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法
【化3】
(式中、R101〜R103は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜12のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜12のアルコキシ基、または−O−(R111−O)z−R112(z個のR111は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。z個のR111は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R112は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、または炭素数7〜30のアラルキル基を表す。zは、1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R101〜R103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R104は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【化4】
【化5】
(式中、xは0以上の整数、yは1以上の整数である。R201は、水素原子、ハロゲン原子、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルキニル基、または該アルキル基の末端の水素原子が水酸基もしくはカルボキシル基で置換されたものを表す。R202は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキレン基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニレン基、または、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルキニレン基を表す。R201とR202とで環構造を形成してもよい。)、
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法で得られるタイヤ用ゴム組成物の加硫前の段階でタイヤ用部材を成形し、他のタイヤ用部材と組み合わせて生タイヤを成形する工程と、前記成形工程で得られた生タイヤを加硫する加硫工程とを含むタイヤの製造方法、
[6]少なくとも2種のゴム成分を含むゴム成分(A)、下記式(1)または(2)で表されるポリスルフィド化合物(B)、およびメルカプト基を有するシランカップリング剤(C)を含有するタイヤ用ゴム組成物であって、
前記ゴム成分(A)のうちの第1のゴム成分と前記ポリスルフィド化合物(B)とを混練りして得られる混練物に前記シランカップリング剤(C)を加えて混練りし、その後得られる混練物に前記ゴム成分(A)のうちの第2のゴム成分を加えて混練りすることにより得られ、前記第1のゴム成分のメルカプト基に対する活性化能力が前記第2のゴム成分よりも小さいものであるタイヤ用ゴム組成物
【化6】
(式中、R1は、同一または異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の1価の炭化水素基を表す。nは2〜6の整数を表す。)
【化7】
(式中、R2は、同一または異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の2価の炭化水素基を表す。mは2〜6の整数を表す。)、ならびに
[7]上記[6]記載のタイヤ用ゴム組成物で構成されるタイヤ用部材を備えるタイヤ
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の、少なくとも2種のゴム成分を含むゴム成分(A)、所定のポリスルフィド化合物(B)、およびメルカプト基を有するシランカップリング剤(C)を含有するタイヤ用ゴム組成物の製造方法であって、前記ゴム成分(A)のうちの第1のゴム成分と前記ポリスルフィド化合物(B)とを混練りする工程X1、前記工程X1で得られる混練物に前記シランカップリング剤(C)を加えて混練りする工程X2、および前記工程X2で得られる混練物に前記ゴム成分(A)のうちの第2のゴム成分を加えて混練りする工程X3を含み、前記第1のゴム成分のメルカプト基に対する活性化能力が前記第2のゴム成分よりも小さいものであるタイヤ用ゴム組成物の製造方法によれば、未加硫ゴムの加工性をより改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、少なくとも2種のゴム成分を含むゴム成分(A)、前記式(1)または(2)で表されるポリスルフィド化合物(B)、およびメルカプト基を有するシランカップリング剤(C)を含有するタイヤ用ゴム組成物の製造方法である。そして、この製造方法は、前記ゴム成分(A)のうちの第1のゴム成分と前記ポリスルフィド化合物(B)とを混練りする工程X1、前記工程X1で得られる混練物に前記シランカップリング剤(C)を加えて混練りする工程X2、および前記工程X2で得られる混練物に前記ゴム成分(A)のうちの第2のゴム成分を加えて混練りする工程X3を含み、前記第1のゴム成分のメルカプト基に対する活性化能力が前記第2のゴム成分よりも小さいものである。
【0013】
ゴム成分とシリカとを含む配合においては、メルカプト基を有するシランカップリング剤を使用することにより、低燃費性能およびウェットグリップ性能をバランス良く向上させることができ、かつ耐摩耗性能の向上も期待できるが、その一方で混合時のシート生地悪化などの加工性に課題がある。この理由としてはシランカップリング剤のメルカプト基が、混合時に容易にラジカル化してゴム成分と結合してゲル化するためと考えられている。これに対して、本発明では、シランカップリング剤のラジカル化したメルカプト基が、ゴム成分と反応する前に、所定のポリスルフィド化合物と反応して−S−S−結合を形成することにより(すなわち、所定のポリスルフィド化合物によりメルカプト基由来のラジカルを捕捉することにより)、シランカップリング剤とゴム成分との反応性が低下し、ゲル化を防ぐことができる。ここで、メルカプト基を有するシランカップリング剤の反応性は非常に高いため、本発明においては、所定のポリスルフィド化合物を、メルカプト基を有するシランカップリング剤と同時ではなく、メルカプト基を有するシランカップリング剤がラジカル化し始めるときからラジカルを効率的に捕捉できるよう、メルカプト基を有するシランカップリング剤よりも前に、ゴム成分に混練りするものとしている。また、メルカプト基との反応性が異なる2種以上のゴム成分を用いる場合において、メルカプト基の活性化能力が小さい方のゴム成分からメルカプト基を有するシランカップリング剤と混練りすることで、ポリスルフィド化合物によるラジカルの捕捉に改善の余地があったとしても、メルカプト基を有するシランカップリング剤により生じるゲル化をより確実に低減することができると考えられる。なお、加硫中に高温になると、この所定のポリスルフィド化合物とメルカプト基とによるジスルフィド結合は切断され、ゴム成分と反応し、シランカップリング剤としての機能を果たすことができると考えられる。
【0014】
ここで、本明細書において、ゴム成分のメルカプト基に対する活性化能力とは、ゴム成分のメルカプト基に対する反応性であり、この活性化能力が高いゴム成分ほど、メルカプト基を有するシランカップリング剤と混練りした場合に、上述したようなゲル化が進行し、シート生地の表面状態が悪化する。このため、各ゴム成分のメルカプト基に対する活性化能力は、メルカプト基を有するシランカップリング剤を用いてシート生地とした場合の表面粗さを指標として評価する。表面粗さは、特定のメルカプト基を有するシランカップリング剤を用い、評価対象のゴム成分100質量部に対し、そのシランカップリング剤を特定量加えて混練りし、ゴムシートを作製した際のゴムの生地表面の表面粗さをJIS B 0601の算術平均粗さRaに準拠して、表面粗さ計により測定する。また、得られた結果について、基準となるゴム成分を決定し、そのゴム成分で得られた平均表面粗さ(Ra)を100として各ゴム成分の指数(活性化能力指数)を求め、この指数により、各ゴム成分のメルカプト基に対する活性化能力を比較する。
【0015】
本発明におけるゴム成分(A)としては、メルカプト基に対する活性化能力の異なる少なくとも2種類のゴム成分を含有すること以外、特に限定されず、従来タイヤ用ゴム組成物に用いられるゴム成分を適宜組み合わせて用いることができる。本明細書においては、便宜上、2種類のゴム成分を含む場合、そのうちのメルカプト基に対する活性化能力の小さい方を第1のゴム成分とし、メルカプト基に対する活性化能力の大きい方を第2のゴム成分とする。これら第1および第2のゴム成分のいずれに該当するかは、組み合わせるゴム成分に依存するため、第1および第2のゴム成分として、それぞれどのようなゴム成分が含まれるかは特に限定されるものではない。また、本発明においては、第1および第2のゴム成分以外のその他ゴム成分であって、第1のゴム成分よりもメルカプト基に対する活性化能力が大きく、第2のゴム成分よりもメルカプト基に対する活性化能力が小さいゴム成分を含有させることができる。
【0016】
本発明においては、第1のゴム成分と第2のゴム成分とのメルカプト基に対する活性化能力の違いが大きい方が本発明の効果をより発揮できるため好ましい。例えば、上述のメルカプト基に対する活性化能力指数の第1のゴム成分と第2のゴム成分との差が5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、15以上であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明において、ゴム成分(A)に含まれるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)およびポリイソプレンゴム(IR)を含むイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴム成分や、ブチル系ゴムが挙げられる。これらのゴム成分のメルカプト基の活性化能力は、変性基の存在や種類、含有するモノマー単位の割合などによって変化するため一概に決定することはできないが、非変性の場合、通常、ポリマー中の二重結合の含有率、特に、1,2−ビニル結合のような末端に位置する二重結合の割合などが影響する。本発明のゴム成分(A)は、なかでも、共役ジエン系化合物を含むゴム成分を1種以上含むことが好ましく、低燃費性や耐摩耗性、耐久性、ウェットグリップ性能のバランスの観点からSBRおよびBRを含有することが好ましい。
【0018】
さらに、本発明においては、ジエン系ゴムとして、スチレン含有量が25〜50質量%でありビニル結合量が10〜35モル%であるジエン系ゴムを用いることが、ウェットスキッド性能、ドライグリップ性能および低燃費性がバランス良く得られるという理由から好ましい。スチレンおよびビニルを含有するジエン系ゴムとしては、SBRおよびSIBRなどが挙げられる。
【0019】
ジエン系ゴムのスチレン含量は、グリップ性能の観点から、25質量%以上が好ましく、28質量%以上がより好ましく、31質量%以上がさらに好ましい。スチレン含量が多すぎると、スチレン基が隣接し、ポリマーが硬くなりすぎ、架橋が不均一となりやすく、高温走行時のブロー性が悪化するおそれがあり、また、温度依存性が増大し、温度変化に対する性能変化が大きくなってしまい、走行中および後期の安定したグリップ性能が良好に得られない傾向があることから、ジエン系ゴムのスチレン含有量は、50質量%以下が好ましく、47質量%以下がより好ましく、44質量%以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、ジエン系ゴムのスチレン含有量は、1H−NMR測定により算出される。
【0020】
ジエン系ゴムのビニル結合量は、シリカとの反応性の担保、ゴム強度や耐摩耗性の観点から10モル%以上が好ましく、12モル%以上がより好ましく、14モル%以上がさらに好ましい。また、ジエン系ゴムのビニル結合量は、温度依存性の増大防止、グリップ性能、EB(耐久性)、耐摩耗性の観点から、35モル%以下が好ましく、33モル%以下がより好ましく、31モル%以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRのビニル結合量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
【0021】
スチレン含有量が25〜50質量%でありビニル結合量が10〜35モル%であるジエン系ゴムを含有する場合のゴム成分中の該ジエン系ゴムの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。該ジエン系ゴムの含有量を50質量%以上とすることにより、高温域での性能変化を抑制し、より高いグリップ性能、ブロー性を発揮することができる傾向がある。また、前記ジエン系ゴムの含有量は、耐摩耗性、グリップ性能、低燃費性の観点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0022】
さらに、前記ジエン系ゴムは、ウェットスキッド性能と低燃費性との両立という理由から、スチレン含有量がビニル結合量の2倍以上が好ましく、2.2倍以上がより好ましい。また、上限は特に限定されないが、前記ジエン系ゴムは、スチレン含有量がビニル結合量の3.0倍以下が好ましい。スチレン含有量がビニル結合量の3.0倍を超える場合は、ガラス転移温度が上がり過ぎ、低燃費性や低温性が著しく低下する傾向がある。
【0023】
SBRとしては、特に限定されず、乳化重合SBR(E−SBR)、溶液重合SBR(S−SBR)などが挙げられ、油展されていても、油展されていなくてもよい。また、フィラーとの相互作用力を高めた末端変性S−SBRや、主鎖変性S−SBRも使用可能である。さらに、これらSBRの水素添加物(水素添加SBR)なども使用することができる。これらSBRは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
BRとしては特に限定されず、例えば、シス含有量が95%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BRなどタイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、耐摩耗性に優れるという点から、ハイシスBRを用いることが好ましい。
【0025】
BRを含有する場合のゴム成分中のBRの含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。BRの含有量が、5質量%未満の場合は、耐摩耗性の向上効果が得られ難くなる傾向がある。また、BRの含有量は、35質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。BRの含有量が、35質量%を超える場合は、ドライグリップ性能が著しく低下する傾向、ウェットグリップ性能が著しく低下する傾向がある。
【0026】
本発明における所定のポリスルフィド化合物とは、下記式(1)または(2)で表される化合物である。
【化8】
(式中、R1は、同一または異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の1価の炭化水素基を表す。nは、2〜6の整数を表す。)
【化9】
(式中、R2は、同一または異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の2価の炭化水素基を表す。mは、2〜6の整数を表す。)
【0027】
上記式(1)中のR1は、置換基を有してもよい炭素数3〜15の1価の炭化水素基であるが、該炭素数は、5〜12が好ましく、6〜10がより好ましい。R1の1価の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、また、飽和、不飽和炭化水素基(脂肪族、脂環式、芳香族炭化水素基など)のいずれでもよい。なかでも置換基を有してもよい芳香族炭化水素基が好ましい。
【0028】
1としては、例えば、炭素数3〜15のアルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アラルキル基、置換アラルキル基などが挙げられ、なかでも、アラルキル基、置換アラルキル基が好ましい。ここで、アルキル基としては、ブチル基、オクチル基が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。置換基としては、オキソ基(=O)、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、アセチル基、アミド基、イミド基などの極性基などが挙げられる。
【0029】
上記式(1)中のnは、2〜6の整数であるが、2または3が好ましく、2がより好ましい。
【0030】
上記式(2)中のR2は、置換基を有していてもよい炭素数3〜15の2価の炭化水素基であるが、該炭素数は、3〜10が好ましく、4〜8がより好ましい。R2の2価の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、また、飽和、不飽和炭化水素基(脂肪族、脂環式、芳香族炭化水素基など)のいずれでもよい。なかでも、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0031】
2としては、例えば、炭素数3〜15のアルキレン基、置換アルキレン基などが挙げられる。ここで、アルキレン基としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基などが挙げられ、置換基としては、R1の置換基と同様のものなどが挙げられる。
【0032】
上記式(2)中のmは、2〜6の整数であるが、2または3が好ましく、2がより好ましい。
【0033】
上記式(1)または(2)で表されるポリスルフィド化合物の具体例としては、N,N’−ジ(γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(5−メチル−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(5−エチル−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(5−イソプロピル−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(5−メトキシ−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(5−エトキシ−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(5−クロル−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(5−ニトロ−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(5−アミノ−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(δ−バレロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(δ−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(3−メチル−δ−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(3−エチル−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(3−イソプロピル−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(δ−メトキシ−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(3−エトキシ−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(3−クロル−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(δ−ニトロ−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(3−アミノ−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(ω−ヘプタラクタム)ジスルフィド、N,N’−ジ(ω−オクタラクタム)ジスルフィド、ジチオジカプロラクタム、モルホリン・ジスルフィド、N−ベンジル−N−[(ジベンジルアミノ)ジスルファニル]フェニルメタンアミン(N,N’−ジチオビス(ジベンジルアミン))などが挙げられる。なかでも、ジチオジカプロラクタム(以下、カプロラクタムジスルフィドとも称す。)が好ましい。本発明において上記式(1)または(2)で表されるポリスルフィド化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ポリスルフィド化合物の含有量は、シリカ100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。ポリスルフィド化合物の含有量を0.3質量部以上とすることにより、混練後の未加硫ゴムシートの生地が著しくスムーズになる傾向がある。また、ポリスルフィド化合物の含有量は、シリカ100質量部に対して、8質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましい。ポリスルフィド化合物の含有量を10質量部以下とすることにより、破壊強度の悪化や耐摩耗性の悪化がなくなる傾向がある。
【0035】
ポリスルフィド化合物の含有量は、メルカプト基を有するシランカップリング剤100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。ポリスルフィド化合物の含有量を1質量部以上とすることにより、混練後の未加硫ゴムシートの生地が著しくスムーズになる傾向がある。また、ポリスルフィド化合物の含有量は、メルカプト基を有するシランカップリング剤100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。ポリスルフィド化合物の含有量を100質量部以下とすることにより、破壊強度の悪化や耐摩耗性の悪化がなくなる傾向がある。
【0036】
本発明におけるメルカプト基を有するシランカップリング剤は、下記式(3)で表される化合物、および/または下記式(4)で表される結合単位Aと下記式(5)で表される結合単位Bとを含む化合物であることが好ましい。
【化10】
(式中、R101〜R103は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜12のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜12のアルコキシ基、または−O−(R111−O)z−R112(z個のR111は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。z個のR111は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R112は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、または炭素数7〜30のアラルキル基を表す。zは、1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R101〜R103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R104は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【化11】
【化12】
(式中、xは0以上の整数、yは1以上の整数である。R201は、水素原子、ハロゲン原子、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルキニル基、または該アルキル基の末端の水素原子が水酸基もしくはカルボキシル基で置換されたものを表す。R202は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキレン基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニレン基、または、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルキニレン基を表す。R201とR202とで環構造を形成してもよい。)
【0037】
以下、上記式(3)で表される化合物について説明する。
【0038】
101〜R103は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜12のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜12のアルコキシ基、または−O−(R111−O)z−R112で表される基を表す。本発明の効果が良好に得られるという点から、R101〜R103は、少なくとも1つが−O−(R111−O)z−R112で表される基であることが好ましく、2つが−O−(R111−O)z−R112で表される基であり、かつ、1つが直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜12のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0039】
101〜R103の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基などが挙げられる。
【0040】
101〜R103の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基などが挙げられる。
【0041】
101〜R103の−O−(R111−O)z−R112において、R111は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基を表す。該炭化水素基としては、例えば、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキレン基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニレン基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルキニレン基、炭素数6〜30のアリーレン基などが挙げられる。なかでも直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキレン基が好ましい。
【0042】
111の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などが挙げられる。
【0043】
111の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2または3)のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基などが挙げられる。
【0044】
111の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2または3)のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などが挙げられる。
【0045】
111の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜15)のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
【0046】
zは、1〜30の整数であり、2〜20が好ましく、3〜7がより好ましく、5または6がさらに好ましい。
【0047】
112は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基または炭素数7〜30のアラルキル基を表す。なかでも直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。
【0048】
112の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。
【0049】
112の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基などが挙げられる。
【0050】
112の炭素数6〜30(好ましくは炭素数10〜20)のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる。
【0051】
112の炭素数7〜30(好ましくは炭素数10〜20)のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
【0052】
−O−(R111−O)z−R112で表される基の具体例としては、例えば、−O−(C24−O)5−C1123、−O−(C24−O)5−C1225、−O−(C24−O)5−C1327、−O−(C24−O)5−C1429、−O−(C24−O)5−C1531、−O−(C24−O)3−C1327、−O−(C24−O)4−C1327、−O−(C24−O)6−C1327、−O−(C24−O)7−C1327、などが挙げられる。なかでも−O−(C24−O)5−C1123、−O−(C24−O)5−C1327、−O−(C24−O)5−C1531、−O−(C24−O)6−C1327が好ましい。
【0053】
104の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜5)のアルキレン基としては、例えば、R111の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基を挙げることができる。
【0054】
上記式(3)で表される化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランや、下記式で表される化合物(エボニック・デグザ(Evonik Degussa)社製のSi363)などが挙げられ、下記式で表される化合物を好適に使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化13】
【0055】
次に、上記式(4)で示される結合単位Aと上記式(5)で示される結合単位Bとを含む化合物について説明する。
【0056】
上記式(4)で示される結合単位Aと上記式(5)で示される結合単位Bとを含む化合物は、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC−S−C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
【0057】
また、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは、結合単位Bはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの−C715部分が結合単位Bの−SH基を覆うため、ポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
【0058】
上述した加工中の粘度上昇を抑制する効果や、スコーチ時間の短縮を抑制する効果を高めることができるという点から、上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、99モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましい。また、結合単位Bの含有量は、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましく、70モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、55モル%以下がさらに好ましい。また、結合単位AおよびBの合計含有量は、95モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましく、100モル%が特に好ましい。なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(4)、(5)と対応するユニットを形成していればよい。
【0059】
201のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子などが挙げられる。
【0060】
201の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。該アルキル基の炭素数は1〜12が好ましい。
【0061】
201の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基などが挙げられる。該アルケニル基の炭素数は2〜12が好ましい。
【0062】
201の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基などが挙げられる。該アルキニル基の炭素数は2〜12が好ましい。
【0063】
202の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などが挙げられる。該アルキレン基の炭素数は1〜12が好ましい。
【0064】
202の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基などが挙げられる。該アルケニレン基の炭素数は2〜12が好ましい。
【0065】
202の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2〜30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などが挙げられる。該アルキニレン基の炭素数は2〜12が好ましい。
【0066】
上記式(4)で示される結合単位Aと上記式(5)で示される結合単位Bとを含む化合物において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの−C715が覆うため、スコーチ時間が短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
【0067】
上記式(4)で示される結合単位Aと上記式(5)で示される結合単位Bとを含む化合物としては、例えば、モメンティブ社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60などを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
上記メルカプト基を有するシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、特に好ましくは4質量部以上である。0.5質量部未満では、低燃費性などの改善効果が十分に得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは12質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは9質量部以下である。20質量部を超えると、ゴム強度、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0069】
本発明においては、ゴム組成物は、上記メルカプト基を有するシランカップリング剤に加えてさらにその他のシランカップリング剤を含有していてもよい。その他のシランカップリング剤としては、例えば、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどが挙げられる。
【0070】
本発明では、シリカが使用される。シリカを配合することにより、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能を向上できる。シリカとしては、特に限定されるものではなく、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)など、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。シリカは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
シリカのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、20m2/g以上が好ましく、30m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上がさらに好ましい。また、N2SAは、400m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、280m2/g以下がさらに好ましい。上記範囲内であれば、低燃費性および加工性がよりバランス良く得られる傾向がある。なお、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0072】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましい。シリカの含有量を20質量部以上とすることにより、シリカを配合することによる低燃費性の向上効果が十分に得られる傾向、耐摩耗性能の向上効果が十分に得られる傾向がある。シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、120質量部以下が好ましく、110質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。シリカの含有量を120質量部以下とすることにより、シリカのゴムへの分散性の悪化を抑制し、より良好な低燃費性および加工性が得られる傾向、より良好な耐摩耗性能が得られる傾向がある。
【0073】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物には、前記成分以外にも、従来ゴム工業で一般に使用される配合剤、例えば、シリカ以外の補強用充填剤、加工助剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、粘着樹脂などの軟化剤、オイル、ワックス、硫黄などの加硫剤、各種加硫促進剤などを適宜含有することができる。
【0074】
シリカ以外の補強用充填剤としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルクなど、従来からタイヤ用ゴム組成物において用いられているものを配合することができる。なかでも、カーボンブラックが補強性および耐摩耗性に優れるという理由から好ましい。
【0075】
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなど、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、三菱ケミカル(株)により製造販売されている微粒子カーボンブラックなどを好ましく用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0076】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐候性や補強性の観点から50m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのN2SAは、低燃費性、分散性、破壊特性および耐久性の観点から250m2/g以下が好ましく、220m2/g以下がより好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217のA法に準じて測定される値である。
【0077】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐候性の観点から、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、低燃費性や加工性の観点から40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0078】
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、脂肪酸金属塩、アミドエステル、脂肪酸金属塩とアミドエステル若しくは脂肪酸アミドとの混合物が好ましく、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物が特に好ましい。
【0079】
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、特に限定されるものではないが、飽和または不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数6〜28(より好ましくは炭素数10〜25、さらに好ましくは炭素数14〜20)の飽和または不飽和脂肪酸)が挙げられ、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ネルボン酸などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、飽和脂肪酸が好ましく、炭素数14〜20の飽和脂肪酸がより好ましい。
【0080】
脂肪酸金属塩を構成する金属としては、例えば、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛、ニッケル、モリブデンなどが挙げられる。なかでも、亜鉛、カルシウムが好ましく、亜鉛がより好ましい。
【0081】
脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミドでも不飽和脂肪酸アミドでもよい。飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、N−(1−オキソオクタデシル)サルコシン、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。
【0082】
脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物の具体例としては、脂肪酸カルシウムと脂肪酸アミドとの混合物であるストラクトール社製のWB16などが挙げられる。また脂肪酸亜鉛塩の具体例としては、パフォーマンスアディティブス社製のUltra−Flow440などが挙げられる。
【0083】
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.8質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましい。0.8質量部未満であると、添加による効果が十分に得られないおそれがある。また、加工助剤の含有量は、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下がさらに好ましい。10質量部を超えると、ポリマー相間の滑りが生じ、ポリマー相が相互に入り組んだ構造となりにくくなり、耐摩耗性が悪化する傾向、破壊強度が低下する傾向がある。
【0084】
粘着付与樹脂としては、芳香族系石油樹脂などの従来タイヤ用ゴム組成物で慣用される樹脂が挙げられる。芳香族石油樹脂としては例えば、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)などが挙げられる。フェノール系樹脂としては例えばコレシン(BASF社製)、タッキロール(田岡化学工業(株)製)などが挙げられる。クマロンインデン樹脂としては例えばクマロン(日塗化学(株)製)、エスクロン(新日鐡化学(株)製)、ネオポリマー(新日本石油化学(株)製)などが挙げられる。スチレン樹脂としては例えばSylvatraxx(登録商標)4401(アリゾナケミカル社製)などが挙げられる。テルペン樹脂としては例えばTR7125(アリゾナケミカル社製)、TO125(ヤスハラケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0085】
粘着付与樹脂の軟化点は、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。軟化点を40℃以上とすることにより、十分なグリップ性能が得られる傾向がある。また、該軟化点は120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。軟化点を120℃以下とすることにより、十分なグリップ性能が得られる傾向がある。なお、本発明における樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0086】
粘着付与樹脂のゴム成分100質量部に対する含有量は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。粘着付与樹脂の含有量を3質量部以上とすることにより、十分なグリップ性能が得られる傾向がある。また、粘着付与樹脂の含有量は、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。粘着付与樹脂の含有量を30質量部以下とすることにより、十分な耐摩耗性能が得られる傾向、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0087】
その他、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、オイル、ワックスは、従来ゴム工業で使用されるものを用いることができる。
【0088】
加硫剤は特に限定されるものではなく、ゴム工業において一般的なものを使用することができるが、硫黄原子を含むものが好ましく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などが挙げられる。
【0089】
加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系もしくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤が挙げられ、なかでも、本発明の効果がより好適に得られる点から、スルフェンアミド系、チウラム系、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0090】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどが挙げられる。チアゾール系加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾリルジスルフィドなどが挙げられる。チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)などが挙げられる。グアニジン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られる点からTBBS、TBzTD、DPGが好ましく、これら3種を併用することがより好ましい。
【0091】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法においては、上述したように、メルカプト基を有するシランカップリング剤をゴム成分に混練りする前に、ゴム成分と上記所定のポリスルフィド化合物とを混練りするものであり、さらに使用するゴム成分のうち、メルカプト基の活性化能力が小さい方のゴム成分からシランカップリング剤と混練りするものであれば、特にその方法に制限はない。例えば、ゴム成分と主にシリカなどの補強用充填剤などを混練りするX練り工程(工程X)を、第1のゴム成分とポリスルフィド化合物とを混練りする工程X1、その後混練物を排出することなくメルカプト基を有するシランカップリング剤を加えて混練りする工程X2、さらにその後混練物を排出することなく第2のゴム成分を加えて混練りする工程X3を含むものとし、その後、得られた混練物に加硫剤や加硫促進剤以外のその他の薬品を混練りするY練り工程(工程Y)および、加硫剤や加硫促進剤を混練りするF練り工程(工程F)を行うことにより実施することができる。また、もちろん工程X1で得られた混練物は、一度排出し、次工程X2に用いてもよく、同様に工程X2で得られた混練物も一度排出し、次工程X3に用いることもできる。このメルカプト基を有するシランカップリング剤をゴム成分に混練りする前に、ゴム成分と上記所定のポリスルフィド化合物とを混練りするものであり、さらに使用するゴム成分のうち、メルカプト基の活性化能力が小さい方のゴム成分からカップリング剤と混練りするという本発明の特徴により、メルカプト基を有するシランカップリング剤を用いても、未加硫ゴムのシート生地悪化を防ぐことができ、工程通過性を飛躍的に向上させることができる。
【0092】
また、シリカのゴム成分への混練は、加硫剤や加硫促進剤を混練りするF練り工程(工程F)以外であれば、いずれの工程において行ってもよく、またシリカの全含有量を分割してそれぞれの工程において混練りすることが好ましい。
【0093】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法の一態様では、例えば、第1のゴム成分と所定のポリスルフィド化合物およびシリカやカーボンブラックなどの補強剤とを混練りし(工程X1)、そこにメルカプト基を有するシランカップリング剤およびシリカを添加して混練りし(工程X2)、そこに第2のゴム成分およびシリカを添加して混練りし(工程X3)、排出して混練物Xを得る。その後、得られた混練物Xにその他の種々の薬品を加えて混練りし(工程Y)、排出して混練物Yを得る。次に、得られた混練物Yに加硫剤および加硫促進剤を加えて混練りし(工程F)、これにより未加硫ゴム組成物を得ることができる。
【0094】
工程Xにおける混練は、全体として排出温度140〜170℃で1〜5分間行うことが好ましい。工程Xで得られた混練物は、通常80℃以下、好ましくは25〜45℃となるまで冷却してから後の工程に使用することが好ましい。
【0095】
工程Yにおける混練は、排出温度130〜160℃で1〜5分間行うことが好ましい。工程Yで得られた混練物は、通常80℃以下、好ましくは25〜45℃となるまで冷却してから後の工程に使用することが好ましい。
【0096】
工程Fにおける混練は、排出温度90〜130℃で1〜5分間行うことが好ましい。
【0097】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法における各混練は、公知の混練機を用いることができ、例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどの機械的なせん断力を材料に加え、混練・混合を行う装置が挙げられる。
【0098】
本発明の別の実施態様であるタイヤ用ゴム組成物は、少なくとも2種のゴム成分を含むゴム成分(A)、上記式(1)または(2)で表されるポリスルフィド化合物(B)、およびメルカプト基を有するシランカップリング剤(C)を含有するタイヤ用ゴム組成物であって、前記ゴム成分(A)のうちの第1のゴム成分と前記ポリスルフィド化合物(B)とを混練りし、その後前記シランカップリング剤(C)を混練りし、その後前記ゴム成分(A)のうちの第2のゴム成分を混練りすることにより得られ、前記第1のゴム成分のメルカプト基に対する活性化能力が前記第2のゴム成分よりも小さいものである。この本発明のタイヤ用ゴム組成物は、改善された加工性を有する。これは、上述したように、ゴム成分に混練りされたポリスルフィド化合物が、投入されるメルカプト基を有するシランカップリング剤のメルカプト基と−S−S−結合を形成することにより、シランカップリング剤によるゴム成分のゲル化を防止することができ、さらにメルカプト基の活性化能力が小さい方のゴム成分からメルカプト基を有するシランカップリング剤と混練りすることで、ポリスルフィド化合物によるラジカルの捕捉に改善の余地があったとしても、メルカプト基を有するシランカップリング剤により生じるゲル化をより確実に低減することができると考えられる。
【0099】
上記本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述の本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法により製造することができ、本明細書中のタイヤ用ゴム組成物の製造方法に関する説明は、上記本発明のタイヤ用ゴム組成物にも適用されるものとし、本明細書中の本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法の説明においてした、各種材料や配合比、得られるタイヤ用ゴム組成物の性質などに関わる記載は、上記本発明のタイヤ用ゴム組成物にも適用されるものとする。
【0100】
本発明のタイヤの製造方法は、本発明の製造方法にて製造されるタイヤ用ゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッドなどのタイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成形することにより、未加硫タイヤ(生タイヤ)を形成する成形工程、この未加硫タイヤ(生タイヤ)を加硫機中で加熱加圧する加硫工程を含むタイヤの製造方法である。加硫温度は、例えば120℃以上200℃以下である。
【0101】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤのトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビードなどの各タイヤ部材に用いることができる。特に、耐摩耗性に優れることから、本発明のゴム組成物により構成されたトレッドを有するタイヤとすることが好ましい。
【0102】
本発明のタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて、上述の本発明のタイヤの製造方法により製造することができ、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤを問わない。また、空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤなどが挙げられる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0104】
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
SBR1:トリンセオ社製のSLR6430(メルカプト基の活性化能力指数:90、S−SBR、スチレン含有量:40質量%、ビニル結合量:18モル%、ゴム成分100質量部に対しオイル分37.5質量部を含む油展品)
SBR2:メルカプト基の活性化能力指数:100、スチレン含有量:25質量%、およびビニル結合量:44モル%の溶液重合SBR
BR1:宇部興産(株)製のBR150B(メルカプト基の活性化能力指数:95、ビニル結合量:1.5モル%、シス1,4−含有率97%)
BR2:メルカプト基の活性化能力指数:105、ビニル結合量:13モル%、およびシス1,4−含有率36%のBR
ポリスルフィド化合物:ラインケミー社製のレノグランCLD80(カプロラクタムジスルフィド)(80%マスターバッチ品)
微粒子カーボンブラック:窒素吸着比表面積(N2SA)が180m2/gのカーボンブラック
シリカ:エボニック・デグザ(Evonik Degussa)社製のULTRASIL(登録商標)VN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤A:モメンティブ社製のNXT−Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
シランカップリング剤B:エボニック・デグザ社製のSi363
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355(パラフィン系)
オイル:H&R(株)製のVivaTec400(TDAEオイル)
スチレン樹脂:アリゾナケミカル社製のSylvatraxx(登録商標)4401(軟化点:85℃)
老化防止剤(1):住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクラック224(TMQ、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
加工助剤(1):パフォーマンスアディティブス社製のUltra−Flow(登録商標)440(天然脂肪酸亜鉛/金属石鹸)
加工助剤(2):Schill&Seilacher社製のストラクトールWB16(脂肪酸エステルと脂肪酸金属塩の混合物)
硫黄:細井化学工業(株)製のHK−200−5(5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤(1):三新化学工業(株)製のサンセラーNS−G(N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS))
加硫促進剤(2):三新化学工業(株)製のサンセラーTBZTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD))
加硫促進剤(3):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0105】
メルカプト基の活性化能力判定試験
実施例および比較例において用いた各ゴム成分のメルカプト基に対する反応性(メルカプト基の活性化能力指数)を次の手順により調べた。ゴム成分100質量部に対し、シリカ80質量部、シランカップリング剤A6.4質量部、オイル35質量部を、16LのB/Bミキサーにて3分間混練りし、排出温度160℃で混練物を排出した。得られた混練物1kgを8インチのオープンロールに幅30cm、厚み2mmで巻きつけ、ゴム温度が95±5℃になるまで練り、ゴムシートを得た。その後、得られたゴムシートをカットし、ゴムの生地肌の表面粗さRaをJIS B 0601の算術平均粗さRaに準拠して、表面粗さ計により測定した。得られた表面粗さの値について、次の式のようにSBR1の場合を基準として指数表示した。値が大きいほど、メルカプト基の活性化能力に優れる。
(メルカプト基の活性化能力指数)
=100×各ゴム成分の表面粗さRa/基準SBR1の表面粗さRa
【0106】
実施例1〜9および比較例1〜12
表1、2または3に示す配合内容に従い、工程X1に示す各種薬品を、1.7Lバンバリーミキサーにて20秒間混練りした。その後、表1、2または3の工程X2に示す各種薬品を加えて、80秒間混練りし、表1、2または3の工程X3に示す各種薬品を加えてさらに80秒間混練りし、排出温度160℃で混練物を排出した。得られた混練物は、約30℃に冷却してから次工程に用いた。
【0107】
次に、得られた混練物に、表1、2または3の工程Yに示す配合内容に従い、その他の各種薬品を添加し、排出温度150℃で2分間混練りした。得られた混練物は、約30℃に冷却してから次工程に用いた。その後、工程Yで得られた混練物に対して、表1、2または3の工程Fに示す配合内容に従い、硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて排出温度125℃の条件下で3分間混練りして、未加硫ゴム組成物を得た。
【0108】
得られた各未加硫ゴム組成物を170℃で12分間、2mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0109】
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材と共に貼り合せて未加硫タイヤ(生タイヤ)を形成し、165℃で15分間加硫することにより、タイヤ(タイヤサイズ:205/55R16)を製造した。
【0110】
実施例1〜9および比較例1〜12において得られた未加硫状態のゴム組成物について下記試験により加工性の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0111】
<加工性(平均表面粗さRa)>
8インチのオープンロールに1kgの未加硫ゴム組成物を幅30cm、厚み2mmで巻きつけ、ゴム温度が95±5℃になるまで練り、ゴムシートを得た。その後、得られたゴムシートをカットし、ゴムの生地肌の表面粗さRaをJIS B 0601の算術平均粗さRaに準拠して、表面粗さ計により測定した。得られた表面粗さの逆数の値について、次のように、実施例1〜8および比較例2〜7および比較例10〜12については比較例1を基準比較例とし、実施例9および比較例9については比較例8を基準比較例として指数表示した。値が大きいほど表面粗さが小さく、加工性に優れる。
【0112】
(加工性指数)=100×基準比較例の表面粗さRa/各実施例の表面粗さRa
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
表1、2および3の結果より、ゴム成分(A)のうちのメルカプト基に対する活性化能力がより小さい第1のゴム成分とポリスルフィド化合物とを混練りし、その後にメルカプト基を有するシランカップリング剤を混練りし、さらにその後にゴム成分(A)のうちの第1のゴム成分よりもメルカプト基に対する活性化能力が大きい第2のゴム成分を混練りした実施例1〜9では、2種類のゴムを含むゴム成分(A)と、メルカプト基を有するシランカップリング剤を用い、ゴム成分(A)を一度に同時に混練りしている比較例1、2および5〜8と比べて、いずれも加工性が顕著に向上したことが分かる。また、ゴム成分(A)のうちのメルカプト基に対する活性化能力がより大きい第2のゴム成分を、メルカプト基に対する活性化能力がより小さい第1のゴム成分より先にメルカプト基を有するシランカップリング剤と混練りしている比較例3、4および9では、比較例1や比較例8よりも加工性がさらに低下している。そして、メルカプト基に対する活性化能力がより小さい第1のゴム成分をメルカプト基を有するシランカップリング剤と混練りした後、ポリスルフィド化合物を混練りし、その後メルカプト基に対する活性化能力がより大きい第2のゴム成分を混練りした比較例10では、比較例1に比べて加工性がやや悪化する傾向となっていることが分かる。そして、メルカプト基に対する活性化能力がより大きいゴム成分とポリスルフィド化合物とを混練りし、その後、メルカプト基に対する活性化能力がより小さいゴム成分をメルカプト基を有するシランカップリング剤と同時に、あるいはメルカプト基を有するシランカップリング剤より先に混練りした比較例11および12では、比較例1に対してはやや加工性が向上しているものの実施例1のような顕著な加工性の向上は見られないことが分かる。