(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0032】
1.捺染用インクジェットインク組成物
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物(以下、捺染用インクジェットインク組成物、インク組成物等ともいう)は、後述する本実施形態の前処理組成物を布帛に付着させ、その後に当該捺染用インクジェットインク組成物をインクジェット法により布帛に付着させて使用される。まず、捺染用インクジェットインク組成物について説明する。
【0033】
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、染料と、常温で液体であって、標準沸点が190℃以上260℃以下である環状アミドを5質量%以上30質量%以下と、を含み、記録媒体上でのCIELAB色空間で定義される色相角∠h°が15°以上80°以下の範囲となる。
【0034】
1.1.染料
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、染料を含む。
【0035】
1.1.1.染料の種類
捺染用インクジェットインク組成物とした場合に、記録媒体上でのCIELAB色空間で定義される色相角∠h°が15°以上80°以下の範囲としやすい染料の具体例としては、C.I.リアクティブオレンジ35、C.I.リアクティブオレンジ12、C.I.リアクティブオレンジ99、C.I.アシッドブラウン298、C.I.アシッドオレンジ56等が挙げられる。
【0036】
C.I.リアクティブオレンジ35、C.I.リアクティブオレンジ12、C.I.リアクティブオレンジ99、C.I.アシッドブラウン298及びC.I.アシッドオレンジ56の化学構造を以下の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)及び式(5)に示す。なお本明細書において、各化学式中、「−SO
3Na」で表される基は、「−SO
3−」の対となるイオンが「Na
+」である場合を表している。しかし、各式の各「−SO
3−」基においてそれぞれ独立に、対となるイオンは「H
+」、「Li
+」、「K
+」等であってもよい。
【0037】
C.I.リアクティブオレンジ35:式(1)
【0039】
C.I.リアクティブオレンジ12:式(2)
【0041】
C.I.リアクティブオレンジ99:式(3)
【0043】
C.I.アシッドブラウン298:式(4)
【0045】
C.I.アシッドオレンジ56:式(5)
【0047】
捺染用インクジェットインク組成物が上記の染料を含むことにより、捺染する布帛の種
類によらず、良好な発色性及び色相の経時的な安定性(耐光性)を得ることができる。
【0048】
1.1.2.CIELAB色空間で定義される色相角∠h°
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、捺染に用いることにより、記録媒体上でのCIELAB色空間で定義される色相角∠h°が15°以上80°以下の範囲となる。
【0049】
ここで、CIELAB色空間で定義される色相角∠h°とは、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した知覚的にほぼ均等な歩度を持つ色空間であるL
*a
*b
*色空間の色座標a
*、b
*を用いて次式により算出される、色相を表すパラメーターである。「色相角∠h°=tan
−1(b
*/a
*)」。
【0050】
また、この色相角∠h°は、日本工業規格JISZ8781−4:2013「測色−第4部:CIE1976L
*a
*b
*色空間」の「3.6 CIELAB1976ab色相角」において、「4.2 明度,クロマ及び色相のそれぞれに関係する量」の式(11)によって計算される色相の相関量(JISZ8113の03087を合わせて参照)でもあり、「CIE1976L
*a
*b
*」、及び、「CIELAB」は、互いに言い換えることができるとされている。
【0051】
本明細書で定義する、捺染用インクジェットインク組成物の「記録媒体上での」CIELAB色空間で定義される色相角∠h°は、例えば、日本工業規格JISZ8722:2009「色の測定方法−反射及び透過物体色」の「5.分光測色方法」による測定から求めることができる。その際の測定の条件は、以下の通りである。
【0052】
(1)捺染用インクジェットインク組成物を作成する
(2)捺染対象の布帛にインクを塗布する
(3)加熱、スチーム等により、十分に反応させる
(4)布帛を洗浄する
(5)分光測色を行う
そして、得られた測定結果から、色相角∠h°を算出して、捺染用インクジェットインク組成物の「記録媒体上での」CIELAB色空間で定義される色相角∠h°とする。
【0053】
捺染用インクジェットインク組成物を、記録媒体上でのCIELAB色空間で定義される色相角∠h°が15°以上80°以下の範囲となるように調整する方法としては、染料自体を変更する、色相角の異なる染料と混合する等、いくつかの方法が挙げられる。より具体的には、特定の染料に対して、芳香環や置換基の数や種類を変更することにより共役系を改変する方法、中心金属が存在する場合にこれを変更する方法、別の染料を混合する方法などが挙げられる。
【0054】
ただし、これらの方法のうち、捺染用インクジェットインク組成物に他の染料を混合する方法によって色相角を調整する場合には、他の染料は、より少なく配合することが好ましく、例えば捺染用インクジェットインク組成物全体に対して、合計で1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下である。このようにすれば、各染料が経時的な退色を生じた場合でも、印捺部における色相角の変化を小さく抑えることができる。また、他の染料を混合する場合には、係る他の染料の色相角が近いほうがより好ましく、その場合には、配合量を高くしてもよく、例えば、捺染用インクジェットインク組成物全体に対して、合計で2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。
【0055】
なお、染料は、複数種を混合して用いることができるが、捺染部における色相角の変化を小さく抑える観点からは、単一種を配合することが好ましい。すなわち、本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、染料を単独で用いることがより好ましい。なお、この場合において、他の染料が、不純物と見なせる程度であれば含まれてもよい。捺染用インクジェットインク組成物に含まれる染料の全体に対して、当該不純物としての染料の合計は、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下、特に好ましくは0.0001質量%以下である。このようにすれば、実質的に単一の染料のみによって捺染を行うことができ、係る染料が経時的な退色を生じた場合でも、印捺部における色相角の変化をほとんど起こすことがなくさらに好適である。
【0056】
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物における、染料の合計の含有量は、捺染用インクジェットインク組成物の全質量に対して、2質量%以上30質量%以下、好ましくは3質量%以上15量%以下、より好ましくは4質量%以上10質量%以下である。
【0057】
さらに、本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物に配合する染料は、C.I.リアクティブオレンジ35、C.I.リアクティブオレンジ12、C.I.リアクティブオレンジ99、C.I.アシッドブラウン298及びC.I.アシッドオレンジ56から選択される少なくとも1種以上であることがより好ましい。これらの中でも、C.I.リアクティブオレンジ35、C.I.アシッドブラウン298を用いることが特に好ましい。このような染料を選択することにより、色相角∠h°が15°以上80°以下の範囲の色を、複数色の混色によることなく、捺染物において発色性良く表現でき、かつ、経時的な色相変化(耐光性)を抑制することができる。すなわち、少なくともこれらの染料を含むことにより、捺染物において良好な発色性を得ることができる。そして、C.I.リアクティブオレンジ35又はC.I.アシッドブラウン298を用いる場合には、染料自体の耐光性がより良好であることから、複数色の混色によることなく、色相角∠h°が20°以上75°以下の範囲の色を表現できるため、経時的な色相変化(耐光性)を顕著に抑制することができる。
【0058】
さらに、C.I.リアクティブオレンジ35又はC.I.アシッドブラウン298を用いる場合には、複数色の混色によることなく、単独で色相角∠h°が20°以上75°以下の範囲の色を表現できる。すなわち記録媒体上でのCIELAB色空間で定義される色相角∠h°が20°以上75°以下の範囲となってもよい。
【0059】
このような捺染用インクジェットインク組成物によれば、例えば、捺染対象の布帛が、綿・シルク・羊毛(ウール)・ビスコース(レーヨン)、PA(ポリアミド)エラストマー等である場合に、係る範囲の色を複数色の混色によることなく表現でき、経時的な色相変化(耐光性)をさらに抑制することができる。また、これにより、複数種の染料を含むコンポジットインク又は複数種の色相のインクを組み合わせてブラウンの色相を実現する(例えば:YMCKの4色からなるインクセットを用いてブラウンの色味を実現する)従来の技術に比べて、より優れた耐光性(すなわち色相の経時変化の抑制)を実現することができる。
【0060】
また、本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物に含有される染料は、上記の通りであるが、係る染料は、最大吸収波長が、350nm以上450nm以下の範囲にある染料であることがさらに好ましい。
【0061】
ここで、最大吸収波長は、染料を適宜の溶媒(水、有機溶剤又はそれらの混合液)に適宜の濃度で溶解させた溶液を作成し、その可視光域の吸光スペクトルを測定することによ
り測定することができる。最大吸収波長は、可視光域の吸光スペクトルが、例えば複数の極大を有する場合であっても、そのうちの最大の吸光度を示す波長のことをいう。染料の最大吸収波長の測定は、染料が溶解したインク組成物でも可能であり、染料濃度によって適宜決定すればよいが、当該インク組成物を水で500〜2000倍に希釈した希釈液を調製することで測定できる。
【0062】
最大吸収波長が、350nm以上450nm以下の範囲にある染料は、典型的には色相角∠h°が15°以上80°以下の範囲の色を呈する。上述のC.I.リアクティブオレンジ35、C.I.リアクティブオレンジ12、C.I.リアクティブオレンジ99、C.I.アシッドブラウン298及びC.I.アシッドオレンジ56は、いずれも最大吸収波長が350nm以上450nm以下の範囲にある。C.I.リアクティブオレンジ35、C.I.リアクティブオレンジ12、及び、C.I.リアクティブオレンジ99の最大吸収波長を記す。
【0063】
C.I.リアクティブオレンジ35 最大吸収波長:414nm
C.I.リアクティブオレンジ12 最大吸収波長:420nm
C.I.リアクティブオレンジ99 最大吸収波長:420nm
C.I.アシッドブラウン298 最大吸収波長:362nm
C.I.アシッドオレンジ56 最大吸収波長:414nm
【0064】
また、
図1にC.I.リアクティブオレンジ35、C.I.リアクティブオレンジ12、C.I.リアクティブオレンジ99、C.I.アシッドブラウン298及びC.I.アシッドオレンジ56の吸光スペクトルを例示する。
図1に示すスペクトルは、ダブルビーム分光光度計U−3300(商品名、日立ハイテクノロジーズ株式会社製)を用いて、水を溶媒として染料の濃度が10ppmの水溶液を調製し、光路長10mmの石英セルを使用して測定した結果である。染料の吸光スペクトルの測定は、係る方法に限るものではなく、適宜の手法により測定することができる。
【0065】
1.2.環状アミド
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、常温で液体であって、標準沸点が190℃以上260℃以下である環状アミドを含む。係る環状アミドは、上述した染料を溶解させやすく、かつ、捺染用インクジェットインク組成物の固化や乾燥を抑制するという機能を備える。また、標準沸点が190℃以上260℃以下であることにより、環状アミドの揮発を十分に抑制し、これに伴い保湿性が高まる結果、捺染用インクジェットインク組成物の固化や乾燥を抑制する効果がより顕著に得られる。
【0066】
環状アミドとしては、アミド基を含む環構造を有する化合物が挙げられ、例えば、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0067】
【化6】
・・・(6)
(式(6)中、R
1は、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは、1〜4の整数を表す。また係るアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。)
式(6)で表される化合物としては、2−ピロリドン[245℃]、1−メチル−2−
ピロリドン[204℃](N−メチル−2−ピロリドン)、1−エチル−2−ピロリドン[212℃](N−エチル−2−ピロリドン)、N−ビニル−2−ピロリドン[193℃]、1−プロピル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン等のγ−ラクタム類、β−ラクタム類、δ−ラクタム類等が挙げられる。括弧内の数値は標準沸点を表す。これらの環状アミドは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0068】
また、環状アミド化合物のうち、常温で液体である化合物としては、2−ピロリドン(25℃)、1−メチル−2−ピロリドン(−24℃)、1−エチル−2−ピロリドン(−77℃)、N−ビニル−2−ピロリドン(14℃)等が挙げられる。括弧内の数値は融点を表す。なお、2−ピロリドン融点は25℃と高く、常温(例えば室温、23℃、25℃等)では、試薬を購入した時点では、固体になっている場合があるが、例えば40℃程度の温水で加温して一度溶解させると、常温において液体の状態を保つことができる。発明者らは、この現象は過冷却状態又は水分等による凝固点降下に起因していると推測しているが、本発明ではこのような状態を含めて常温で液体であるものとする。
【0069】
環状アミドの合計の含有量は、インク組成物の全質量に対して、1質量%以上30質量%以下、好ましくは5質量%以上30質量%以下、より好ましくは5質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは7質量%以上15質量%以下である。
【0070】
環状アミドの合計の含有量が上記の範囲であれば、染料を十分に溶解させることができ、染料の配合量(濃度)を高めることができる。すなわち、各種染料のうち、特定の染料(例えば、C.I.リアクティブオレンジ35、C.I.リアクティブオレンジ12、C.I.リアクティブオレンジ99、C.I.アシッドブラウン298及びC.I.アシッドオレンジ56、特に、C.I.リアクティブオレンジ35及びC.I.アシッドブラウン298)は、捺染用インクジェットインク組成物に用いる場合には、溶解性が必ずしも高くないため、濃度を高めることによる高発色化は比較的難しい。しかし、環状アミドを用いることにより、染料の配合量を高めることができる結果、捺染物の発色性をさらに良好なものとすることができる。
【0071】
1.3.その他の成分
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、上記成分の他に、以下の成分を含むことができる。
【0072】
1.3.1.アルキルポリオール
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、標準沸点が180℃以上260℃以下であるアルキルポリオールを含んでもよい。係るアルキルポリオールを含むことにより、捺染用インクジェットインク組成物の保湿性をさらに高め、インクジェット法による吐出安定性を優れたものとしつつ、長期放置時による記録ヘッドからの水分蒸発を効果的に抑制することができる。また、これにより、ノズルの目詰まりを生じやすい種の染料を用いた場合でも、放置回復性や連続吐出安定性を良好に維持することができる。
【0073】
標準沸点が180℃以上260℃以下であるアルキルポリオールの具体例としては、1,2−ブタンジオール[194℃]、1,2−ペンタンジオール[210℃]、1,2−ヘキサンジオール[224℃]、1,2−ヘプタンジオール[227℃]、1,3−プロパンジオール[210℃]、1,3−ブタンジオール[230℃]、1,4−ブタンジオール[230℃]、1,5−ペンタンジオール[242℃]、1,6−ヘキサンジオール[250℃]、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール[226℃]、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール[230℃]、2−メチル−1,3−プロパンジオール[214℃]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール[210℃]、3−メチル−1,3−ブタンジオール[203℃]、2−エチル−1,3−ヘキサ
ンジオール[244℃]、3−メチル−1,5−ペンタンジオール[250℃]、2−メチルペンタン−2,4−ジオール[197℃]、ジエチレングリコール[245℃]、ジプロピレングリコール[232℃]等が挙げられる。なお、括弧内の数値は標準沸点を表す。これらのアルキルポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0074】
標準沸点が180℃以上260℃以下であるアルキルポリオールを含有させる場合の含有量は、捺染用インクジェットインク組成物の全質量に対して、5質量%以上であれば効果を奏することができるが、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、8質量%以上27質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。
【0075】
本実施形態に係る捺染用インクジェットインク組成物は、標準沸点が260℃以上のアルキルポリオールを含有しないことが好ましい。標準沸点が260℃以上のアルキルポリオールは、染料の染着性を阻害して画像の色再現性や発色性を低下させる原因になりやすいためである。標準沸点が260℃以上のアルキルポリオールの具体例としては、トリエチレングリコール[287℃]、グリセリン[290℃]等が挙げられる。
【0076】
本発明において、「Aを含有しない」とは、Aを全く含有しないことのみを指すのではなく、組成物を製造する際にAを意図的に添加しないという意味も含み、組成物を製造中又は保管中に不可避的に混入又は発生する微量のAを含んでいても構わない。「含有しない」の具体例としては、たとえば1.0質量%以上含まない、好ましくは0.5質量%以上含まない、より好ましくは0.1質量%以上含まない、さらに好ましくは0.05質量%以上含まない、特に好ましくは0.01質量%以上含まないことである。
【0077】
1.3.2.界面活性剤
本実施形態に係る捺染用インクジェットインク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、捺染用インクジェットインク組成物の表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性(布帛等への浸透性)を調整、向上させるために用いることができる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。また、界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0078】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、PD−005、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0079】
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、BY
K社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。
【0080】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0081】
捺染用インクジェットインク組成物に界面活性剤を配合する場合には、捺染用インクジェットインク組成物全体に対して、界面活性剤の合計で0.01質量%以上3質量%以下、好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以上1質量%以下配合することが好ましい。
【0082】
また、捺染用インクジェットインク組成物が界面活性剤を含有することにより、ヘッドからインクを吐出する際の安定性が増す傾向がある。また、適切な量の界面活性剤の使用は、布帛への浸透性が向上し、前処理組成物との接触を増やすことができる場合がある。
【0083】
1.3.3.pH調整剤
本実施形態のインク組成物は、pHを調整する目的で、pH調整剤を添加することができる。pH調整剤としては、特に限定されないが、酸、塩基、弱酸、弱塩基の適宜の組み合わせが挙げられる。そのような組み合わせに用いる酸、塩基の例としては、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸等、無機塩基として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等が挙げられ、有機塩基として、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(THAM)等が挙げられ、有機酸として、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、モルホリノエタンスルホン酸(MES)、カルバモイルメチルイミノビス酢酸(ADA)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、コラミン塩酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、ビシン等のグッドバッファー、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液等を用いてもよい。さらに、これらのうち、pH調整剤の一部又は全部として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の第三級アミン、及び、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸等のカルボキシル基含有有機酸、が含まれることが、pH緩衝効果をより安定に得ることができるため好ましい。
【0084】
1.3.4.水
本実施形態に係る捺染用インクジェットインク組成物は、水を含んでもよい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、捺染用インクジェットインク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を抑制することができる。
【0085】
水の含有量は、捺染用インクジェットインク組成物の総量に対して、30質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。なお捺染用インクジェットインク組成物中の水というときには、例えば、原料として用いる樹脂粒子分散液、添加する水を含むものとする。水の含有
量が30質量%以上であることにより、捺染用インクジェットインク組成物を比較的低粘度とすることができる。また、水の含有量の上限は、捺染用インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0086】
1.3.5.有機溶剤
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、標準沸点が190℃未満又は260℃超の環状アミド、含窒素複素環式化合物や、水溶性有機溶剤を含んでもよい。標準沸点が190℃未満又は260℃超の環状アミドとしては例えば、ε−カプロラクタム[136℃]等のラクタム類が挙げられ、水溶性有機溶剤としては、γ−ブチロラクトン[204℃]等のラクトン類、ベタイン化合物等が挙げられる。さらに、グリコールエーテルを含んでもよく、これにより組成物の濡れ性や浸透速度を制御できる場合がある。ため、画像の発色性を向上できる場合がある。
【0087】
標準沸点が190℃以上260℃以下のグリコールエーテルとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選択されるグリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。より好ましくは、メチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられ、典型例としてジエチレングリコールモノブチルエーテル[230℃]が挙げられる。括弧内の数値は標準沸点を表す。
【0088】
このような有機溶剤は、複数種を混合して用いてもよい。また、本項目で説明している有機溶剤の配合量は、捺染用インクジェットインク組成物の粘度調整、保湿効果による目詰まり防止の点から、捺染用インクジェットインク組成物の全量に対して合計で、0.2質量%以上30質量%以下、好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以上10質量%以下である。
【0089】
1.3.6.尿素類
捺染用インクジェットインク組成物の保湿剤として、あるいは、染料の染着性を向上させる染着助剤として、尿素類を使用してもよい。尿素類の具体例としては、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。尿素類を含有する場合には、その含有量は、インク組成物の全質量に対して、1質量%以上10質量%以下とすることができる。
【0090】
1.3.7.糖類
捺染用インクジェットインク組成物の固化、乾燥を抑制する目的で、糖類を使用してもよい。糖類の具体例としては、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びマルトトリオース等が挙げられる。
【0091】
1.3.8.キレート化剤
捺染用インクジェットインク組成物中の不要なイオンを除去する目的で、キレート化剤を使用してもよい。キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸及びそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩、又は、エチレンジアミンのニト
リロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、若しくはメタリン酸塩等)等が挙げられる。
【0092】
1.3.9.防腐剤、防かび剤
捺染用インクジェットインク組成物は、防腐剤、防かび剤を使用してもよい。防腐剤、防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンゾイソチアゾリン−3−オン(ゼネカ社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL.2、プロキセルTN、プロキセルLV)、4−クロロ−3−メチルフェノール(バイエル社のプリベントールCMK等)などが挙げられる。
【0093】
1.3.10.その他
さらに上記以外の成分として、例えば、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、溶解助剤など、インクジェット用のインク組成物において通常用いることができる添加剤を含有してもよい。
【0094】
1.4.捺染用インクジェットインク組成物のpH
本実施形態のインクジェット捺染用インク組成物は、pHが5.8以上10.5以下、好ましくは6.0以上10.0以下、より好ましくは6.0以上9.5以下、さらに好ましくは7.0以上8.5以下であることが好ましい。捺染用インクジェットインク組成物のpHがこの範囲であれば、インク組成物中における染料の保存安定性が向上し、得られる画像の発色性や色相の変化を生じにくいので、所定のデザインの色を良好に再現することができる。
【0095】
捺染用インクジェットインク組成物のpHは、例えば、上述の染料の液性、染料がイオン性である場合の対イオンの種類、それらのバランス、又は、pH調整剤の種類の選択若しくは添加量の調節により、上記範囲に調整することができる。
【0096】
1.5.インク組成物の製造及び物性
本実施形態に係るインク組成物は、上記した各成分を、任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。
【0097】
本実施形態に係るインク組成物は、印捺品質とインクジェット捺染用インクとしての信頼性とのバランスの観点から、表面張力が20〜40mN/mであることが好ましく、22〜35mN/mであることがより好ましい。また、同様の観点から、インク組成物の20℃における粘度は、1.5〜10mPa・sであることが好ましく、2〜8mPa・sであることがより好ましい。表面張力及び粘度を前記範囲内とするには、上述した水溶性溶剤や界面活性剤の種類、及びこれらと水の添加量等を適宜調整すればよい。
【0098】
1.6.作用効果
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物によれば、色相角∠h°が15°以上80°以下の範囲の色を、複数色の混色によることなく、捺染物において発色性良く表現でき、かつ、経時的な色相変化(耐光性)を抑制することができる。すなわち標準沸点が190℃以上260℃以下である環状アミドを5質量%以上30質量%以下で含むことにより、染料を十分な量で溶解させることができること、により、捺染物において良好な発色性を得ることができる。そして、色相角∠h°が30°以上65°以下の範囲の色を複数色の混色によることなく表現でき、経時的な色相変化(耐光性)を抑制することができ
る。
【0099】
2.インクセット
上述の本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、他の任意の色の染料を含む捺染用インクジェットインク組成物、及び、後述する前処理組成物と、任意の組成物数、任意の色数で組み合わせたインクセットを構成することができる。
【0100】
本実施形態のインクセットによれば、色相角∠h°が15°以上80°以下の範囲の色を、複数色の混色によることなく、捺染物において発色性良く表現でき、かつ、経時的な色相変化(耐光性)を抑制することができる。さらに、C.I.リアクティブオレンジ35又はC.I.アシッドブラウン298を用いる場合には、複数色の混色によることなく、色相角∠h°が20°以上75°以下、より好ましくは25°以上70°以下の範囲の色を表現できるため、経時的な色相変化(耐光性)を顕著に抑制することができる。
【0101】
また、本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、後述の前処理組成物を含むインクセットとすることができ、前処理組成物を用いることにより、さらに良好な捺染を実現することができる。
【0102】
本実施形態のインクセットによれば、色相角∠h°が15°以上80°以下の範囲の色を、複数色の混色によることなく、表現することができ、少なくとも当該色相角の範囲の色の印捺部の経時的な色相変化(耐光性)を抑制することができる。
【0103】
3.記録方法(捺染方法)
本実施形態に係る記録方法は、上述した捺染用インクジェットインク組成物を布帛に印捺する工程(以下、「印捺工程」ともいう。)を含む。以下、本実施形態に係る記録方法に含む工程及び含み得る工程について、工程毎に説明する。
【0104】
3.1.記録媒体
本実施形態の捺染用インクジェットインク組成物は、記録媒体に付着させて使用される。記録媒体としては、特に限定されないが、各種の布帛が挙げられる。布帛を構成する素材としては、特に限定されず、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維などが挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。本実施形態で使用する布帛は、これらのうち綿、麻等のセルロースを含む繊維で形成されたものがより好ましい。このような布帛を用いることで、捺染用インクジェットインク組成物のよりすぐれた染着性を得ることができる。
【0105】
また、本実施形態で使用する布帛の目付は、1.0oz(オンス)以上10.0oz以下、好ましくは2.0oz以上9.0oz以下、より好ましくは3.0oz以上8.0oz以下、さらに好ましくは4.0oz以上7.0oz以下の範囲である。
【0106】
3.2.前処理工程
本実施形態に係る記録方法は、布帛にアルカリ剤、酸及びヒドロトロピー剤の少なくとも一種を含有する前処理組成物を付与する前処理工程を備えていてもよい。これにより染料の染着性が一層向上する。
【0107】
前処理組成物を布帛に付与する方法としては、例えば、前処理組成物中に布帛を浸漬させる方法、前処理組成物をロールコーター等で塗布する方法、前処理組成物を噴射する方法(例えば、インクジェット法、スプレー法)等が挙げられ、いずれの方法も使用できる
。
【0108】
<前処理組成物>
前処理組成物は、アルカリ剤、酸及びヒドロトロピー剤の少なくとも一方を含有する。これらの成分の前処理組成物中の含有量は、布帛の種類などに応じて適宜設定することができ、特に制限されるものではない。
【0109】
アルカリ剤は、反応染料を使用する場合に、反応染料の染着性を一層向上させるという点から好ましく使用される。アルカリ剤の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0110】
酸は、酸性染料を使用する場合に、染料の染着性を一層向上させるという点から好ましく使用される。酸の具体例としては、分子中にカルボキシル基をもつカルボン酸や、スルホ基をもつスルホン酸等の有機酸、もしくは、強酸のアンモニウム塩等が汎用的に用いられるが、その中でも、特に、硫酸アンモニウムが好ましい。
【0111】
ヒドロトロピー剤は、記録される画像の発色性を向上させるという点から好ましく使用される。ヒドロトロピー剤としては、上記捺染用インクジェットインク組成物の項で例示した尿素類が挙げられる。
【0112】
本実施形態の前処理組成物は、水を含んでもよい。水としては、上述の捺染用インクジェットインク組成物において説明したと同様である。水の含有量は、前処理組成物の総量に対して、30質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。
【0113】
本実施形態の前処理組成物は、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤は、記録媒体に対する前処理組成物の濡れ性を向上させることができる場合がある。水溶性有機溶剤としては、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類及びアルコキシアルキルアミド類の少なくとも一種を例示できる。また、水溶性有機溶剤としては、これら以外の含窒素化合物、糖類、アミン類等であってもよい。また、前処理組成物は、上述した捺染用インクジェットインク組成物に用い得る水溶性有機溶剤を含有してもよい。
【0114】
前処理組成物には、水溶性有機溶剤を複数種含んでもよい。水溶性有機溶剤を含む場合には、前処理組成物の全体に対する、水溶性有機溶剤の合計の含有量は、0.1質量以上20質量%以下、好ましくは0.3質量以上15質量%以下、より好ましくは0.5質量以上10質量%以下、さらに好ましくは1質量以上7質量%以下である。
【0115】
前処理組成物は、糊剤を含有してもよい。糊剤としては、トウモロコシ及び小麦などのデンプン物質、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロース等のセルロース系物質、アルギン酸ナトリウム、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、トラントガム、グアーガム、及びタマリンド種子などの多糖類、ゼラチン及びカゼイン等のタンパク質、タンニン及びリグニン等の天然水溶性高分子、並びにポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレンオキサイド系化合物、アクリル酸系化合物、及び無水マレイン酸系化合物などの合成の水溶性高分子が挙げられる。
【0116】
本実施形態の前処理組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、上述の捺染用インクジェットインク組成物において説明したと同様である。前処理組成物に界面活性剤を配合する場合には、前処理組成物全体に対して、界面活性剤の合計で0.01質量%以上3質量%以下、好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、さらに好ましく
は0.1質量%以上1質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以上0.5質量%以下配合することが好ましい。前処理組成物が界面活性剤を含有することにより、前処理された布帛上に塗布されたインクの浸透性や濡れ性を制御し、捺染物の発色性向上や滲みの抑制を実現できる。
【0117】
本実施形態の前処理組成物は、水、還元防止剤、防腐剤、防かび剤、キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤等、捺染における前処理組成物に通常用いられる成分を含有してもよい。
【0118】
また、前処理組成物は、インクジェット法によって布帛に付着されてもよく、そのようにする場合には、20℃における粘度を、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上5mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上3.6mPa・s以下とすることがより好ましい。
【0119】
一方、前処理組成物は、インクジェット法以外の方法で用いられてもよい。そのような方法としては、前処理組成物を各種のスプレーを用いて布帛に塗布する方法、前処理組成物に布帛を浸漬させて塗布する方法、処理液を刷毛等により布帛に塗布する方法等の非接触式及び接触式のいずれか又はそれらを組み合わせた方法が挙げられる。
【0120】
前処理組成物がこのようなインクジェット法以外の方法によって布帛に付着される場合には、20℃における粘度は、インクジェット法による場合よりも高くてもよく、例えば、1.5mPa・s以上100mPa・s以下、好ましくは1.5mPa・s以上50mPa・s以下、より好ましくは1.5mPa・s以上20mPa・s以下とすることが好ましい。なお、粘度の測定は、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
【0121】
3.3.印捺工程
本実施形態に係る記録方法は、上述した捺染用インクジェットインク組成物を布帛に印捺する印捺工程を含む。具体的には、インクジェット記録方式により吐出されたインク滴を布帛に付着させて、布帛に画像を形成する。インクジェット記録方式としては、いずれの方式でもよく、荷電偏向方式、コンティニュアス方式、オンデンマンド方式(ピエゾ式、バブルジェット(登録商標)式)などが挙げられる。これらのインクジェット記録方式の中でも、ピエゾ式のインクジェット記録装置を用いる方式が特に好ましい。
【0122】
3.4.熱処理工程
本実施形態に係る記録方法は、上記のインク組成物が印捺された布帛を熱処理する熱処理工程を含んでもよい。熱処理工程を行うことにより、染料が繊維に良好に染着する。熱処理工程は従来公知の方法を用いることができ、例えば、HT法(高温スチーミング法)、HP法(高圧スチーミング法)、サーモゾル法等が挙げられる。
【0123】
熱処理工程における温度としては、布帛に対するダメージを軽減するという観点から、90℃以上110℃以下の範囲で行われることが好ましい。
【0124】
3.5.洗浄工程
本実施形態に係る記録方法は、捺染物を洗浄する洗浄工程を含んでもよい。洗浄工程は、上記の熱処理工程の後に行うことが好ましく、繊維に染着していない染料を効果的に除去することができる。洗浄工程は、例えば水を用いて行うことができ、必要に応じてソーピング処理を行ってもよい。
【0125】
3.6.その他の工程
本実施形態に係る記録方法は、上述の前処理工程の後、上述の印捺工程の前に、布帛に付与された前処理組成物を乾燥する前処理組成物の乾燥工程を含んでいてもよい。前処理組成物の乾燥は、自然乾燥で行ってもよいが、乾燥速度の向上という観点から、加熱を伴う乾燥であることが好ましい。前処理組成物の乾燥工程において加熱を伴う場合に、その加熱方法は特に限定されるものではないが、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、及びサーモフィックス法が挙げられる。また、加熱の熱源としては、以下に限定されないが、例えば赤外線(ランプ)が挙げられる。
【0126】
3.7.作用効果
本実施形態の記録方法によれば、印捺工程で上述の捺染用インクジェットインク組成物を用いることにより、色相角∠h°が15°以上80°以下の範囲の色を、複数色の混色によることなく、捺染物において発色性良く表現でき、かつ、経時的な色相変化(耐光性)を抑制でき、吐出信頼性(目詰まり放置回復性や連続吐出安定性)を良好にすることができる。
【0127】
4.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0128】
4.1.捺染用インクジェットインク組成物の調製
表1の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、実施例及び
比較例に係るインク組成物を得た。なお、表1中の数値は、質量%を示し、イオン交換水はインク組成物の全質量が100質量%となるように添加した。
【0129】
【表1】
表1において、化合物名以外で記載した成分は次の通りである。
【0130】
・C.I.リアクティブオレンジ35 最大吸収波長:414nm
・C.I.リアクティブオレンジ12 最大吸収波長:420nm
・C.I.リアクティブオレンジ99 最大吸収波長:420nm
・C.I.リアクティブイエロー2 最大吸収波長:404nm
・C.I.リアクティブレッド31 最大吸収波長:546nm
・C.I.アシッドブラウン298 最大吸収波長:362nm
・C.I.アシッドオレンジ56 最大吸収波長:414nm
・C.I.アシッドレッド289 最大吸収波長:527nm
・C.I.アシッドイエロー79 最大吸収波長:402nm
・BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸:試薬)
・オルフィンPD−002W(商品名、日信化学工業社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
・プロキセルXL2(商品名、アーチ・ケミカルズ社製)
なお、染料の名称中に「リアクティブ」とあるものは反応染料、「アシッド」とあるものは酸性染料に分類した。
【0131】
染料の最大吸収波長は、ダブルビーム分光光度計U−3300(商品名、日立ハイテクノロジーズ株式会社製)を用いて、水を溶媒として染料の濃度が10ppmの水溶液を調製し、光路長10mmの石英セルを使用して測定した。また、このようにして得られた幾つかの染料の分光スペクトルは既に
図1に示した。染料の最大吸収波長の測定は、染料が溶解したインク組成物でも可能であり、染料濃度によって適宜決定すればよいが、当該インク組成物を水で500〜2000倍に希釈した希釈液を調製することで、上述の装置によって測定できる。
【0132】
4.2.インクセット
表2に示すようなインクセットを構成した。インクセットは、インク1、インク2、インク3及びインク4の4種類のインクからなるセットとした。インク1〜4は、それぞれ、ブラウン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクに相当する。そして、実施例21〜25のインクセットを、それぞれ、上記実施例1、2、3、18、19の捺染用インクジェットインク組成物と、色材濃度のみが異なる(5質量%)インクをインク1としたインクセットとした。また、比較例6のインクセットを、上記比較例1の捺染用インクジェットインク組成物と、色材濃度のみが異なる(5質量%)インクをインク1としたインクセットとした。また、比較例7のインクセットを、上記比較例5の捺染用インクジェットインク組成物の色材種を1種(C.I.アシッドイエロー79)とし、色材濃度が異なる(5質量%)インクをインク1としたインクセットとした。インクセットの各例のインク2〜4は、上記実施例1の捺染用インクジェットインク組成物と色材種(表2記載)及び濃度が異なる(5質量%)インクとした。
【0134】
表2で初出の染料の一部は、以下の通りである。
・C.I.リアクティブブルー15 最大吸収波長:672nm
・C.I.リアクティブブラック39 最大吸収波長:610nm
・C.I.アシッドブルー112 最大吸収波長:589nm
・C.I.アシッドブラック172 最大吸収波長:573nm
【0135】
4.3.前処理組成物の調製
(1)反応染料を用いる場合の前処理液調製方法
ポリオキシエチレンジイソプロピルエーテル(オキシエチレン=30モル)を5質量部、エーテル化カルボキシメチルセルロースを5質量部、尿素(ヒドロトロピー剤)100質量部、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム10質量部をよく混合した後、イオン交換水1000質量部に少量ずつ添加しながら60℃下で30分撹拌する。その後、炭酸ナトリウム(アルカリ剤)30質量部を撹拌されている溶液にさらに加えて10分撹拌し、この溶液を孔径10μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、前処理組成物を得た。
【0136】
(2)酸性染料を用いる場合の前処理液調製方法
m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムを添加しないことと、アルカリ剤である炭酸ナトリウムの代わりに、硫酸アンモニウムを用いたこと以外は、上記、反応染料用前処理液の調製と同様にして、酸性染料用の前処理液を調製した。
【0137】
4.4.評価方法
4.4.1.捺染物の色相角評価
上記実施例1〜20の捺染用インクジェットインク組成物、及び、比較例1〜5の捺染用インクジェットインク組成物について、捺染物の色相角∠h°を以下の通り評価した。
白色度L*が85〜95の範囲にある布帛(綿100%、ビスコース、シルク、ウール又はPAエラストマー)を用い、上記のようにして得られた前処理組成物を前記布帛に塗布して、マングルにてピックアップ率80%で絞って乾燥させた。その後、インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)のカートリッジに上記で調製した捺染用インクジェットインク組成物を充填し、前処理を行った布帛に、1440dpi×720dpiの解像度で、インク打ち込み量23mg/inch
2の条件で、各捺染用インクジェットインク組成物を付着させて画像を記録(印刷)した。
【0138】
次に、画像の記録された布帛に対して102℃で10分間スチーミングを行った後、ラッコールSTA(明成化学株式会社製、界面活性剤)を0.2質量%含む水溶液を用いて90℃で10分間洗浄し、乾燥させ各評価サンプルを得た。得られた評価サンプルを、JISZ8722:2009の方法に従って、色相角∠h°を求め、以下の判定基準で評価した。なお、白色度L*は、Spectrolino(X−RITE社製測色器、測定条件:光源D65
、フィルターD65、φ2度)を用いて測定した。評価結果を表3に示す。
A:色相角∠h°が20°以上75°以下であった
B:色相角∠h°が15°以上20°未満又は75°超80°以下であった
C:色相角∠h°が15°未満80°超であった
【0139】
4.4.2.耐光性評価
上記実施例1〜20の捺染用インクジェットインク組成物、及び、比較例1〜5の捺染用インクジェットインク組成物の耐光性評価を以下のように行った。
上記「4.4.1.捺染物の色相角評価」で得られた評価サンプルを用いて、ISO 105 B02に従って実施し、以下の基準に従って結果を評価した。評価結果を表3に示す。なお、この評価は、変退色を調べ,堅ろう度を判定するものであり、色相角を直接測定するものではないが、少なくとも変色を判定することができる。
A:耐光性が5級以上
B:耐光性が4級以上5級未満
C:耐光性が3級以上4級未満
D:耐光性が3級未満
E:捺染物の色相角h°が30°以上65°以下の範囲に入らないため、評価対象外
【0140】
4.4.3.発色性(発色濃度)評価
印捺を1440pi×720dpiの解像度で布帛(反応染料使用時:綿100%、酸性染料使用時:シルク)に実施した以外は、上記「4.4.1.捺染物の色相角評価」と同様の方法で、評価サンプルを得た。発色性の評価は、測色器(商品名「Spectrolino、X−RITE社製)で画像のOD値(発色濃度:イエロー成分のOD値とマゼンタ成分のOD値との和)を測定することで行い、測定されたOD値に基づいて画像の発色性を評価した。評価基準を以下に示す。評価結果を表3に示す。
【0141】
A:OD値が2.7以上
B:OD値が2.5以上2.7未満
C:OD値が2.3以上2.5未満
D:OD値が2.3未満
【0142】
4.4.4.目詰まり信頼性評価
インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)のカートリッジに上記の捺染用インクジェットインク組成物を充填した。充填後、ノズルチェックパターンを印刷して充填不良・ノズル目詰まりの無いことを確認してから、ヘッドをホームポジションに戻した状態(すなわち、ヘッドノズル面にヘッドキャップをした状態)にして、35℃/40%RHの環境下で一週間放置した。放置後、ノズルチェックパターンを印刷してノズルの吐出状況を観察することで、インク組成物のインクジェットヘッドの目詰まり放置回復性を評価した。その評価基準を以下に示す。評価結果を表3に示す。
【0143】
A:クリーニング動作が1回で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された
B:クリーニング動作が2回〜5回の範囲内で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された
C:クリーニング動作が6回〜10回の範囲内で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された
D:全ノズルからインク組成物が正常吐出されるまでにクリーニング動作が11回以上必要であったか、又は、クリーニング動作を11回以上行っても正常吐出されないノズルがあった
【0144】
4.4.5.連続吐出安定性評価
インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)のカートリッジに上記の捺染用インクジェットインク組成物を充填後、A4普通紙に1000枚の連続ベタ印字を行い、クリーニング動作を行わずに、連続で印刷できる枚数の平均値を求め、以下の試験方法及び基準により評価した。評価結果を表3に示す。
【0145】
試験方法(1):印刷中、印刷不備(ドットの乱れ、抜け、曲り)が発生した段階で印刷を中断し、クリーニング動作を行い回復させる。回復に複数回のクリーニングを要した場合は、複数回のクリーニング動作を合わせて不備1回とみなす。
【0146】
試験方法(2):インクカートリッジのインクエンドによる印刷の一時停止の場合、又は、明らかにインクエンドが原因と判断できる印刷不備の場合はノーカウントとし、速やかにインクカートリッジを交換して、印刷を再開させる。
(評価基準)
A:平均連続印刷枚数が、80枚以上
B:平均連続印刷枚数が、40枚以上80枚未満
C:平均連続印刷枚数が、20枚以上40枚未満
D:平均連続印刷枚数が、20枚未満
【0148】
4.4.6.インクセットの評価
表2に記載された実施例21〜25及び比較例6、7のインクセットの耐光性を以下のように評価した。各インクセットを用いて、得られる印捺画像の色相角∠h°が15°以上80°以下になるように、1440dpi×720dpi又は720dpi×720dpiの解像度でインクの打ち込み量を制御して画像を印捺した以外は、上記、捺染用インクジェットインク組成物の耐光性評価と同様の評価方法で評価を実施した。なお、印捺は、綿100%の布帛、ビスコース、シルク、ウール、及び、PAエラストマーの各布帛に対して実施した。
【0149】
4.5.評価結果
各実施例の捺染用インクジェットインク組成物の結果をみると、いずれも、記録媒体上でのCIELAB色空間で定義される色相角∠h°が20°以上75°以下の範囲である染料と、常温で液体であって、標準沸点が190℃以上260℃以下である環状アミドを5質量%以上30質量%以下と、を含むことにより、色相角∠h°が20°以上75°以下の範囲の色を、複数色の混色によることなく、捺染物において発色性良く表現でき、かつ、経時的な色相変化(耐光性)を抑制することができることが判明した。
【0150】
このことは、標準沸点が190℃以上260℃以下である環状アミドを5質量%以上30質量%以下含むので染料を十分な量で溶解させることができることにより、捺染物において良好な発色性を得ることができることを示していると考える。実施例の結果より、複数色の混色によることなく、色相角∠h°が20°以上75°以下の範囲の色を表現できるため、経時的な色相変化(耐光性)を抑制することができることが判明した。
【0151】
これに対して、色相角∠h°が15°以上80°以下の範囲を外れた染料を用いた比較例1では、所定の色相角の印捺を行うことができなかった。また、比較例2では、混色したことにより、耐光性が不良となった。さらに、比較例1及び2の目詰まり放置回復性と吐出安定性は不十分であったが、これは、色材としてリアクティブイエロー2と、リアクティブレッド31を用い、さらにアルキルポリオールの添加量が18質量%と過剰量であるので、増粘しやすいことによると推測できる。このメカニズムの詳細は現時点では明らかでないが、色材及びアルキルポリオールの種類及び/又は添加量の組み合わせにより、水分蒸発時の増粘のしやすさが変化することが一因と考えられる。
【0152】
また、比較例3では、発色性が不良であり、これは含窒素環式化合物の含有量が小さいためと考えられる。また、比較例4から、2−ピロリドンの添加量が30質量%を超えると、発色性が低下することが分かった。これは、布帛に対するインクの浸透性が高まることに起因すると考えられる。また、比較例4では、目詰まり信頼性・吐出安定性が著しく低下しているが、これは、インク流路の部材からの不純物がインク中に溶解し、異物として析出したためと考えられる。酸性染料を用いている比較例5については、2−ピロリドンの添加量が30質量%を超えると、発色性が低下することが分かった。
【0153】
一方、各実施例について、実施例2、3をみると、染料種の違いにより若干の耐光性の差異が生じており、RO35が最も良好であることが分かった。また、実施例13、14の結果から、pHの範囲が6〜10を外れると、発色性が若干低下することが分かった。これは、染料の反応性が低下したことが一因と考えられる。また、実施例4をみると、3種の染料を併用しても耐光性の低下は認められなかった。これは、C.I.リアクティブオレンジ35の添加量が十分であることに起因していると考えられる。したがって、C.I.リアクティブオレンジ35のみで印捺した捺染物の色相を微調整する必要が生じた際に、別の染料(C.I.リアクティブオレンジ12、C.I.リアクティブオレンジ99)を合計で1質量%程度添加して微調整した場合でも、耐光性レベルを保てることが分かった。
【0154】
さらに、実施例15、16の結果から、アルキルポリオールの添加量が、10質量%以上25質量%以下の範囲から外れると、目詰まり放置回復性及び/又は連続吐出安定性が低下する傾向が見られた。これは、アルキルポリオールの添加量が10質量%未満の実施例15では、保湿性の確保が難しく、乾燥しやすいためと考えられる。また、アルキルポリオールの添加量が25質量%より大きい実施例16では、乾燥時に増粘しやすいためと考えられる。また、沸点の高いアルキルポリオールを用いた実施例17をみると、目詰まり放置回復性及び/又は連続吐出安定性が低下する傾向が見られ、これについても増粘が一因であると考えられる。
【0155】
また、表2の結果から、複数種の染料を含むコンポジットインク又は複数種の色相のインクを組み合わせてブラウンの色相を実現する比較例6、7に比べて、各実施例のインクセットは、より優れた耐光性(すなわち色相の経時変化の抑制)を示すことが分かった。
【0156】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。