(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、ボビンに巻き取られる前の連結管を「巻き取り前管」ともいう。ボビンに巻き取られた連結管を「巻き取り済み管」ともいう。第1圧力及び第2圧力を総称して「管押さえ圧力」ともいう。
【0013】
本明細書では、疵とは、連結管の表面の擦れ疵、凹み等をいう。また、列飛ばしとは、
図7を参照して、隣接する連結管の外表面間の最短距離L1が連結管の外径以上であることを意味する。
【0014】
本明細書では、連結管をボビンにコイル状に巻き取る際、連結管がスプール部の軸と平行に移動する方向を「巻き取り進行方向」と称する。
【0015】
本明細書では、周溶接部は、金属管同士が周溶接された領域を意味する。
【0016】
本実施形態の連結管の巻き取り装置は、ボビンと、管案内装置と、を備える。連結管は、周溶接により連結されている複数の金属管からなる。ボビンは、円柱状又は円筒状のスプール部とフランジ部を有する。少なくともスプール部は軸周りに回転可能である。管案内装置は、ボビンの上流に配置される。管案内装置は、基台部と、第1管押さえ部と、第2管押さえ部と、第1圧力付与装置と、第2圧力付与装置と、を含む。基台部は、スプール部の軸と平行な方向にボビンに対して相対的に移動可能である。第2管押さえ部は、第1管押さえ部に対しスプール部の軸と平行な方向に並んで配置される。第1圧力付与装置は、基台部に取り付けられ、第2管押さえ部に向かう方向に所定の第1圧力を第1管押さえ部に加えることが可能である。第2圧力付与装置は、基台部に取り付けられ、第1管押さえ部に向かう方向に所定の第2圧力を第2管押さえ部に加えることが可能である。ボビンと基台部の相対的な移動方向に応じて、第1管押さえ部及び第2管押さえ部のいずれか一方が基台部に対して固定され、他方が基台部に対して可動の状態にされる。
【0017】
より具体的には、ボビンに導かれる連結管は第1管押さえ部と第2管押さえ部との間に配置される。そして、連結管の巻き取り進行方向が第1管押さえ部から第2管押さえ部に向かう方向であるとき、第1管押さえ部は基台部に対して固定され、第2管押さえ部は第2圧力付与
装置によって第2圧力を加えられながら基台部に対して可動の状態にされる。一方、連結管の巻き取り進行方向が第2管押さえ部から第1管押さえ部に向かう方向であるとき、第2管押さえ部は基台部に対して固定され、第1管押さえ部は第1圧力付与
装置によって第1圧力を加えられながら基台部に対して可動の状態にされる。すなわち、ボビンに導かれる連結管に所定の第1圧力又は第2圧力を巻き取り進行方向と反対方向に加えながら、連結管をボビンに巻き取る。
【0018】
本実施形態の連結管の巻き取り装置では、巻き取り前管に管押さえ圧力を加えているため、巻き取り済み管に隣接して巻き取り前管を巻き取ることができる。つまり、連結管をボビンに隙間なく整列して巻き取ることができる。また、巻き取り前管には、第1管押さえ部又は第2管押さえ部から適度な管押さえ圧力が加えられている。周溶接部を有する連結管では、周溶接部の外径は、連結管を構成する金属管の外径よりも大きい。巻き取り前管の周溶接部がボビンに到達すると、その周溶接部が巻き取り済み管に接触する。このとき、巻き取り前管は、管押さえ圧力に抗して巻き取り進行方向に振れ、その周溶接部が巻き取り済み管に隣接するように収まる。これは、第1管押さえ部又は第2管押さえ部が適度な管押さえ圧力を加えられながら基台部に対して可動の状態にされており、第1管押さえ部又は第2管押さえ部が管押さえ圧力に抗して巻き取り進行方向に移動(後退)することによる。これにより、周溶接部が巻き取り済み管を傷付けるのを抑制できる。
【0019】
上記の連結管の巻き取り装置において、第1圧力は、複数の金属管同士が連結されている周溶接部がボビンに到達したときに第1管押さえ部が連結管から受ける力よりも小さく、第2圧力は、連結管の周溶接部がボビンに到達したときに第2管押さえ部が連結管から受ける力よりも小さいのが好ましい。
【0020】
上記の連結管の巻き取り装置において、第1管押さえ部及び第2管押さえ部それぞれは、円柱状であり、それぞれの中心軸周りに回転可能であるのが好ましい。
【0021】
連結管が巻き取られるとき、第1管押さえ部及び第2管押さえ部は巻き取り前管を挟む。したがって、第1管押さえ部及び第2管押さえ部が回転可能であれば、第1管押さえ部と巻き取り前管との間、第2管押さえ部と巻き取り前管との間に生じる摩擦を低減できる。これにより、摩擦により巻き取り前管に生じる疵を抑制できる。
【0022】
本実施形態のコイル巻き連結管の製造方法は、上述の連結管の巻き取り装置を用いて連結管をボビンに巻き取る。
【0023】
本実施形態のコイル巻き連結管の製造方法は、連結管を製造する工程と、連結管を巻き取る工程と、を備える。連結管を製造する工程では、周溶接により連結されている複数の金属管からなる連結管を製造する。連結管を巻き取る工程では、上記した連結管の巻き取り装置を用いる。連結管を巻き取る工程では、少なくともスプール部を軸周りに回転させ、第1管押さえ部及び第2管押さえ部によってボビンに導かれる連結管に巻き取り進行方向と反対方向に第1圧力又は第2圧力を加えながら、ボビンに導かれる連結管がスプール部の軸方向と略直角となるように基台部を巻き取り進行方向にボビンに対して相対的に移動させ、連結管を巻き取る。
【0024】
上記のコイル巻き連結管の製造方法において、連結管を巻き取る工程は、連結管がボビンのフランジ部まで巻き取られた後、巻き取り済み管とフランジ部との隙間に緩衝材を取り付ける工程を含むのが好ましい。
【0025】
隙間が生じた状態で、現在巻き取られている連結管のさらに次の層の連結管が巻き取られるとき、次の層の連結管が隙間に落ちやすい。しかしながら、緩衝材が隙間に取り付けられると、隙間は緩衝材で埋められる。したがって、次の層の連結管が隙間に落ちにくい。これにより、次の層の連結管が落ちることによる疵の発生を抑制できる。
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0027】
本発明者らは、ボビンにコイル状に巻き取られた連結管に発生する疵について検討した。上述したように、アンビリカルチューブ等の連結管は長い。そのため、連結管は、ボビンに層状に巻き取られる。本発明者らは、まず、1層目の連結管の巻き取りについて検討した。
【0028】
[1層目の巻き取り]
図1は、連結管の典型的な巻き取り状況を示す概略図である。
図1では、連結管6はボビン2にコイル状に巻き取られている。連結管6はボビン2のスプール部4の軸Xに沿って移動しながら巻き取られる。
【0029】
連結管6をボビン2に整列して巻き取るには、巻き取り前管6Bを隣接する巻き取り済み管6Aに押さえつけるように巻き取る必要がある。連結管6がボビン2に巻き付けられる際、連結管6には巻き取り進行方向D(
図1中の矢印参照)と反対方向の力が負荷される。連結管6に巻き取り進行方向Dと反対方向の力を負荷するためには、GAP距離Lを小さくする。これにより、連結管6は整列して巻き取られる。GAP距離Lは、以下の式により算出される。
(GAP距離L)=(ボビン2の1回転当たりにおける管案内装置3の移動量)−(連結管6の外径)
【0030】
しかしながら、このような巻き取り方法で連結管をボビンに巻き取ると、巻き取り済み管に疵が発生することがある。連結管6は周溶接部7を有する。周溶接部7の外径は連結管6を構成する金属管の外径よりも大きい。そのため、周溶接部7がボビン2に巻き取られると、周溶接部7が隣接する巻き取り済み管6Aに押さえつけられる力は、周溶接部7以外の部位が隣接する巻き取り済み管6Aに押さえつけられる力よりも大きくなる。したがって、巻き取り進行方向Dと反対方向の力が過剰に大きい場合、周溶接部7が隣接する巻き取り済み管6Aの表面に疵をつけることがある。
【0031】
図2は、GAP距離と疵の発生との関係を示す図である。たとえば、(GAP距離)=−0.1mmは、巻き取り前管を巻き取る際の管案内装置の位置と、それと隣接する巻き取り済み管を巻き取った際の管案内装置の位置の差が、連結管の外径よりも0.1mm小さいことを意味する。
【0032】
図2に示すように、GAP距離がマイナスである場合、周溶接部が押し付けられたことによる疵が巻き取り済み管の外表面の複数箇所にみられた。他方、GAP距離が0以上である場合、周溶接部が隣接する巻き取り済み管に押し付けられる力が適正範囲になるため巻き取り済み管の外表面に疵はみられなかった。
【0033】
要するに、連結管を整列して巻き取る観点からは、巻き取り進行方向と反対方向の力は大きい方が望ましい。他方、疵を抑制する観点からは、巻き取り進行方向と反対方向の力は過剰に大きくない方が望ましいことがわかった。
【0034】
[2層目以降の巻き取り]
続いて、本発明者らは、2層目以降の連結管を巻き取る場合について検討した。
【0035】
図3は、ボビンに複数層に巻き取られた連結管を示す図である。
図3では、周溶接部7の図示は省略する。以下、現在ボビン2に巻き取られている層を、「最上層」ともいう。以下、最上層の1つ下の層を、「前層」ともいう。ボビン2に連結管6を複数層巻き取る場合、前層ALの連結管6をボビン2のフランジ部5まで巻き取った後、連結管の巻き取り進行方向Dは切り替わる。つまり、最上層ULの巻き取り進行方向Dは、前層ALの巻き取り進行方向と反対方向となる。ボビン2に連結管を複数層巻き取る場合、最上層ULの連結管6が前層ALの連結管6と交差する領域が必ず生じる。
【0036】
図4は、フォロー領域の連結管の断面図である。
図5は、クロス領域の連結管の断面図である。
図4を参照して、フォロー領域Fは、最上層ULの連結管6が前層ALの隣接する連結管6同士の間に沿って巻き取られている領域をいう。
図5を参照して、クロス領域Cは、最上層ULの連結管6が前層ALの連結管6に乗り上げている領域をいう。すなわち、クロス領域Cでは、最上層ULの連結管6が前層ALの連結管6と交差する。
【0037】
上述したように、2層目以降の連結管は必ずフォロー領域Fとクロス領域Cとを含む。したがって、最上層ULの連結管6がボビン2に1周巻き取られる途中で、フォロー領域Fからクロス領域C、又は、クロス領域Cからフォロー領域Fに移り変わる。
【0038】
図4に示すように、フォロー領域Fの最上層ULの連結管6は、前層ALの隣接する連結管6同士の間に沿って巻き取られている。フォロー領域Fの最上層ULの連結管6は、前層ALの2つの隣接する連結管6と2点で接するため、安定している。他方、
図5に示すように、クロス領域Cの最上層ULの連結管6は、前層ALの連結管6に乗り上げている。クロス領域Cの最上層ULの連結管6は、前層ALの連結管6と1点で接するため、不安定である。そのため、連結管6が巻き取られている際に連結管6がスプール部4の軸X方向に振れると、列飛ばしが発生することがある。以下、列飛ばしの発生について説明する。
【0039】
図6は、列飛ばしの発生を説明するための断面図である。
図6は、
図3中のVI−VI線での断面図に相当し、クロス領域からフォロー領域に移り変わる近傍の断面図である。巻き取り前管6Bがスプール部4の軸X方向に振れると(
図3参照)、その時点でまさに巻き取られている最中の最上層ULの連結管6(
図6中の矢印を付与した管)が
図6に示すような状態となることがある。このような連結管6は、前層ALの連結管6と1点で接するため不安定である。この状態で、巻き取りが進むと、巻き取り進行方向と反対方向の力がない場合又は弱すぎる場合は、連結管は
図7に示す状態となることがある。
【0040】
図7は、列飛ばしが発生した場合のフォロー領域の断面図である。前層ALの連結管6に乗り上げた最上層ULの連結管6(
図7中の破線参照)は、巻き取り進行方向と反対方向の力がない又は弱すぎると、所定の位置の隣の前層ALの隣接する連結管6同士の間に移動することがある(
図7中の矢印参照)。これにより、列飛ばしが発生する。列飛ばしが発生すると列飛ばしが発生した上の層(最上層ULのさらに上の層)の連結管を整列して巻き取りにくくなる。
【0041】
したがって、連結管を整列して巻き取る観点からは巻き取り進行方向と反対方向の力は大きい方が望ましい。しかしながら、2層目以降の連結管の巻き取りについても1層目と同様に、疵を抑制する観点からは、巻き取り進行方向と反対方向の力は過剰に大きくない方が望ましい。
【0042】
そこで、本実施形態の連結管の巻き取り装置では、管案内装置がボビンに巻き取られる前の連結管に、巻き取り進行方向と反対方向に所定の圧力(管押さえ圧力)を加えながら連結管を巻き取る。これにより、管押さえ圧力が上述した巻き取り進行方向と反対方向の力となるため連結管を整列して巻き取ることができる。また、周溶接部がボビンに到達すると、周溶接部の外径は連結管を構成する金属管の外径よりも大きいため、巻き取り前管が巻き取り進行方向に振れる。これに伴い、連結管に管押さえ圧力を加える第1管押さえ部又は第2管押さえ部も巻き取り進行方向に移動する。したがって、周溶接部を有する連結管を巻き取っても、巻き取り進行方向と反対方向の力が過剰に大きくならない。これにより、連結管に疵が生じるのを抑制できる。
【0043】
以下、本実施形態の連結管の巻き取り装置について説明する。
【0044】
図8は、本実施形態の連結管の巻き取り装置を模式的に示す平面図である。連結管の巻き取り装置1は、ボビン2と、管案内装置3と、を備える。
【0045】
[ボビン]
ボビン2は、スプール部4と、フランジ部5とを含む。スプール部4は、円柱状又は円筒状である。スプール部4は、2つのフランジ部5の間に配置される。スプール部4は、軸X周りに回転可能である。ボビン2は、連結管6を巻き取り可能である。より具体的には、スプール部4が回転することにより、連結管6はスプール部4に巻き取られる。連結管6を巻き取る際、スプール部4は図示しない駆動装置によって軸X周りに回転し、連結管6がコイル状に複数層巻き取られる。なお、スプール部4がフランジ部5に固定されている場合、フランジ部5はスプール部4と共に回転する。すなわち、ボビン2全体がスプール部4の軸X周りに回転する。
【0046】
連結管6は、複数の金属管を周溶接により連結したものである。連結管6は、周溶接部7を有する。
【0047】
[管案内装置]
管案内装置3は、ボビン2の上流に配置される。ここで、上流とは、連結管6の搬送経路の上流を意味する。したがって、管案内装置3は、ボビン2に巻き取られる前の連結管6をボビン2に案内する役割を担う。また、管案内装置3は、巻き取られる前の連結管の振れを抑制し、連結管6をボビン2に整列して巻き取る役割を担う。さらに、管案内装置3は、連結管6の周溶接部7が既に巻き取られた連結管6に疵を付けることを抑制する役割を担う。
【0048】
図9は、管案内装置の正面図である。管案内装置3は、基台部8と、第1管押さえ部9aと、第2管押さえ部9bと、第1圧力付与装置11aと、第2圧力付与装置11bと、を含む。第1圧力付与装置11aは、第1圧力付与部10aを含む。第1圧力付与部10aは、第1圧力付与装置11aの先端に配置される。第2圧力付与装置11bは、第2圧力付与部10bを含む。第2圧力付与部10bは、第2圧力付与装置11bの先端に配置される。第1圧力付与装置11aは、第1圧力付与台座12a及び第1台座調整部13aを介して基台部8に取り付けられる。第2圧力付与装置11bは、第2圧力付与台座12b及び第2台座調整部13bを介して基台部8に取り付けられる。
【0049】
基台部8は、スプール部4の軸Xと平行な方向にボビン2に対して相対的に移動可能である。ボビン2を移動させずに、基台部8を移動させてもよいし、ボビン2を移動させ、基台部8を移動させなくてもよいし、ボビン2と基台部8の双方を移動させ、ボビン2に対して基台部8を相対的に移動させてもよい。以下では、代表例として基台部8をボビン2に対して移動させることを前提に説明する。基台部8が移動する場合、基台部8はたとえば、トラバーサである。
【0050】
第1台座調整部13aは、第1圧力付与台座12aを固定して支えており、基台部8に対してスライド可能に支持されている。本実施形態では、基台部8に設けられたレールを介して第1台座調整部13a(すなわち、第1圧力付与台座12a)がスライド可能になっている。図示しないネジで締めつけることでレール上の任意の位置に第1台座調整部13a(すなわち、第1圧力付与台座12a)を固定することができる。第2台座調整部13bは、スプール部4の軸Xと平行な方向に第1台座調整部13aと並んで配置されている。第2台座調整部13b及び第2圧力付与台座12bは、それぞれ第1台座調整部13a及び第1圧力付与台座12aと対応する構成を有している。第1台座調整部13aと第2台座調整部13bの少なくても1つの位置を変えることで、巻き取り対象となる管の外径に応じて第1台座調整部13aと第2台座調整部13bの距離を適切に調整することができる。
【0051】
第1圧力付与装置11aは、第1圧力付与台座12aに固定されて支えられている。第1管押さえ部9aは、第1圧力付与装置11aの先端に備えられている第1圧力付与部10aによって支持されている。本実施形態では、第1圧力付与装置11aは流体シリンダであり、当該流体シリンダによって第1管押さえ部9aに所定の第1圧力を第2管押さえ部9bに向かう方向に付与することができる。上記では第1管押さえ部9a、第1圧力付与部10a、第1圧力付与装置11a及び第1圧力付与台座12aについて説明したが、第2管押さえ部9b、第2圧力付与部10b、第2圧力付与装置11b、第2圧力付与台座12bについては、それぞれスプール部4の軸Xと平行な方向に並んで配置されており、同様の構成を有している。なお、第1圧力付与装置11a及び第2圧力付与装置11bの流体シリンダの例には、エアシリンダや油圧シリンダを挙げることができる。
【0052】
第1管押さえ部9a及び第2管押さえ部9bは、円柱状又は円筒状であり、それぞれの中心軸周りに回転可能であるのが好ましい。連結管6を巻き取るときは、連結管6を第1管押さえ部9a及び第2管押さえ部9bに挟み込む。第1管押さえ部9a及び第2管押さえ部9bが円柱状又は円筒状であるので、連結管6を巻き取るときに、連結管6と第1管押さえ部9a及び第2管押さえ部9bとの間に生じる摩擦を低減でき、連結管6に生じる疵を抑制できる。
【0053】
第1管押さえ部9a及び第2管押さえ部9bの表面はたとえば、ポリアミド合成樹脂で覆われている。しかしながら、第1管押さえ部9a及び第2管押さえ部9bの表面はポリアミド合成樹脂に限定されるものではない。連結管の強度等を考慮し、連結管との摩擦を低減できるように適宜選定されればよい。
【0054】
[整列巻き取り]
上述したように、ボビン2に連結管6を整列して巻き取るためには、巻き取り進行方向と反対方向の管押さえ圧力を与える必要がある。本実施形態の連結管の巻き取り装置では、第1管押さえ部9a及び第2管押さえ部9bが巻き取り進行方向と反対方向の管押さえ圧力を与える。したがって、連結管6をボビン2に整列して巻き取ることができる。
【0055】
図10は、連結管に付与される管押さえ圧力を示す図である。
図10では、連結管6の巻き取り進行方向Dが第1管押さえ部9aから第2管押さえ部9bに向かう方向である場合を示す。連結管がボビンに巻き取られるとき、第1管押さえ部9aと第2管押さえ部9bとの間に巻き取り前管6Bを通す。巻き取り進行方向Dが第1管押さえ部9aから第2管押さえ部9bに向かう方向である場合、第1圧力付与装置11aは作動しない。すなわち、第1圧力付与装置11aは第1管押さえ部9aに圧力を付与しない。これにより、第1管押さえ部9aは基台部8に対して固定の状態にされる。
【0056】
他方、第2圧力付与装置11bは作動する。すなわち、第2圧力付与装置11bは第2管押さえ部9bに圧力を付与する。これにより、第2管押さえ部9bは基台部8に対して可動の状態にされる。第2管押さえ部9bは、第2圧力付与部10bを介して連結管6(巻き取り前管6B)に巻き取り進行方向Dと反対方向に管押さえ圧力Fを付与する。これにより、巻き取り前管6Bは、巻き取り済み管6Aに押さえつけられながら、隣接する巻き取り済み管6Aと隙間なく整列して巻き取られる。
【0057】
図11は、
図10とは巻き取り進行方向が異なる場合の連結管に付与される管押さえ圧力を示す図である。
図11では、連結管6の巻き取り進行方向Dが第2管押さえ部9bから第1管押さえ部9aに向かう方向である場合を示す。巻き取り進行方向Dが第2管押さえ部9bから第1管押さえ部9aに向かう方向である場合、第1圧力付与装置11aは作動する。すなわち、第1圧力付与装置11aは第1管押さえ部9aに圧力を付与する。これにより、第1管押さえ部9aは基台部8に対して可動の状態にされる。
【0058】
他方、第2圧力付与装置11bは作動しない。すなわち、第2圧力付与装置11bは第2管押さえ部9bに圧力を付与しない。これにより、第2管押さえ部9bは基台部8に対して固定の状態にされる。第1管押さえ部9aは、第1圧力付与部10a(第1圧力付与装置11a)を介して連結管6(巻き取り前管6B)に巻き取り進行方向Dと反対方向に管押さえ圧力Fを付与する。これにより、巻き取り前管6Bは、巻き取り済み管6Aに押さえつけられながら、隣接する巻き取り済み管6Aと隙間なく整列して巻き取られる。
【0059】
[疵の抑制]
上述したように、周溶接部7を有する連結管6を巻き取る際、管押さえ圧力Fが過剰に大きければ連結管6に疵が発生することがある。本実施形態の連結管の巻き取り装置1では、周溶接部7がボビン2に到達したとき、第1管押さえ部9a又は第2管押さえ部9bが移動(後退)する。したがって、管押さえ圧力Fが過剰に大きくなるのを抑制できるため、連結管6に疵が付きにくい。
【0060】
図12は、周溶接部がボビンに到達したときの第1管押さえ部の動きを示す図である。
図12では、巻き取り進行方向Dが第2管押さえ部9bから第1管押さえ部9aに向かう方向である場合を示す。したがって、第2管押さえ部9bは基台部8に対して固定されており、第1管押さえ部9aが巻き取り前管6Bに管押さえ圧力Fを付与している。
【0061】
周溶接部7がボビン2に到達すると、巻き取り前管6Bは巻き取り進行方向Dに振れようとする。具体的には、
図12中の破線で示される位置の巻き取り前管6Bが巻き取り進行方向Dに移動しようとする。周溶接部7の外径は、連結管6を構成する金属管の外径よりも大きいからである。巻き取り前管6Bが振れると、第1管押さえ部9aは巻き取り進行方向Dに巻き取り前管6Bから力を受ける。
【0062】
この点、本実施形態の連結管の巻き取り装置1では、第1圧力付与部10aが所定の第1圧力を第1管押さえ部9aに加えながら、巻き取り前管6Bがボビン2に巻き取られる。所定の第1圧力は、巻き取り前管6Bの周溶接部7がボビン2に到達したときに第1管押さえ部9aが巻き取り前管6Bから受ける力よりも小さい。つまり、第1管押さえ部9aが、周溶接部7がボビン2に到達したことによる力を巻き取り前管6Bから受けると、第1管押さえ部9aは巻き取り進行方向Dに移動する。これにより、巻き取り進行方向Dと反対方向の力が過剰に増加することを抑制でき、周溶接部7が巻き取り済み管6Aを傷付けるのを抑制できる。さらに、管押さえ圧力F(第1圧力)を巻き取り前管6Bに加えながら連結管6を巻き取ることができるため、連結管6をボビン2に整列して巻き取ることもできる。
【0063】
連結管を整列して巻き取ることが可能な管押さえ圧力Fは、連結管の寸法に依存する。疵の発生を抑制して連結管を巻き取ることが可能な管押さえ圧力Fも、連結管の寸法に依存する。したがって、予め試験を実施したり、コンピュータシミュレーションを実施したりして管押さえ圧力Fの上限及び下限を把握しておくのが好ましい。要するに、第1圧力の上限及び下限は連結管の寸法によって適宜設定される。たとえば、後述する実施例に示すように、連結管の外径が16〜32mmの場合、管押さえ圧力は0.01〜0.03MPaが好ましい。
【0064】
図12では、巻き取り進行方向Dが第2管押さえ部9bから第1管押さえ部9aに向かう方向である場合を示した。巻き取り進行方向Dが第1管押さえ部9aから第2管押さえ部9bに向かう方向である場合は、
図12に示す場合の逆になる。すなわち、第2圧力付与部10bが所定の第2圧力を第2管押さえ部9bに加えながら、巻き取り前管6Bがボビン2に巻き取られる。所定の第2圧力は、巻き取り前管6Bの周溶接部7がボビン2に到達したときに第2管押さえ部9bが巻き取り前管6Bから受ける力よりも小さい。つまり、第2管押さえ部9bが、周溶接部7がボビン2に到達したことによる力を巻き取り前管6Bから受けると、第2管押さえ部9bは巻き取り進行方向Dに移動する。
【0065】
[製造方法]
続いて、本実施形態の連結管の巻き取り装置を用いて製造されるコイル巻き連結管の製造方法について説明する。本実施形態のコイル巻き連結管の製造方法は、周溶接工程と、巻き取り工程とを備える。以下、各工程について説明する。
【0066】
[周溶接工程]
図13は、本実施形態のコイル巻き連結管の製造方法を模式的に示す図である。周溶接工程では、複数の金属管を周溶接により連結する。そして、周溶接部7を有する連結管を製造する。連結管がアンビリカルチューブの場合、金属管はたとえば、二相ステンレス鋼管である。
【0067】
金属管20は、搬送ライン21に一列に並べられる。金属管20は、搬送ライン21により溶接装置14まで搬送される。溶接装置14は、金属管20の端部同士を突合せ、周溶接する。これにより、周溶接部7が形成され、連結管6が製造される。なお、金属管20の肉厚が大きい場合、金属管20の端部を開先加工してもよい。
【0068】
連結管6は、搬送ライン21によって溶接装置14の下流に配置された非破壊検査装置15まで搬送される。非破壊検査装置15はたとえば、X線を周溶接部7に照射し、周溶接部7を非破壊検査する。非破壊検査装置15は、周溶接部7内の欠陥の有無を検出する。
【0069】
非破壊検査後、連結管6はキャプスタン16に導かれる。キャプスタン16は、連結管6をボビン2に供給する。また、キャプスタン16は、連結管6に張力を付与する。これにより、連結管6がボビン2に緩まずに巻き取られる。キャプスタン16が連結管6に付与する張力は、小さい方が好ましい。ただし、張力が小さすぎれば、連結管6が撓むため、連結管6がボビン2に整列して巻き取られにくい。他方、張力が大きすぎれば、連結管を複数層巻き取った場合、最上層の連結管が前層の連結管に過剰な力で押さえつけられるため、連結管に疵が発生する場合がある。したがって、キャプスタン16が連結管6に付与する張力は、連結管6をボビン2に整列して巻き取ることができる最低限の張力であるのが好ましい。
【0070】
[巻き取り工程]
巻き取り工程では、上述した本実施形態の連結管の巻き取り装置1を用いる。巻き取り工程では、連結管6を巻き取るため少なくともスプール部4を軸X周りに回転させる。そして、第1管押さえ部9a及び第2管押さえ部9bによってボビン2に導かれる連結管6に巻き取り進行方向Dと反対方向に第1圧力又は第2圧力を加える。上述したように、連結管6をボビン2に整列して巻き取り、かつ、連結管6に疵がつくことを抑制するためである。
【0071】
巻き取り工程では、ボビン2に導かれる連結管6が、連結管6が整列して巻き取られるように管案内装置3の基台部8を巻き取り進行方向D(
図13では、第1管押さえ部9aから第2管押さえ部9bに向かう方向)にボビン2に対して相対的に移動させる。
図2に示すように、GAP距離がマイナスになれば連結管に疵が発生する場合がある。そのため、基台部8は、GAP距離が0となるようにボビン2に対して移動する。
【0072】
2層目の連結管の巻き取りについて説明する。1層目(前層)の連結管がボビン2のフランジ部5まで巻き取られた後、基台部8の移動方向は第2管押さえ部9bから第1管押さえ部9aに向かう方向に切り替わる。これにより、2層目の巻き取り進行方向は1層目と反対方向となる。巻き取り進行方向が反転すると、管押さえ圧力の向きも反転する。したがって、第1管押さえ部9aの基台部8に対する固定は解除され、第1管押さえ部9aは基台部8に対して移動可能となる。そして、第1圧力付与部10aが第1管押さえ部9aに第1圧力を加える。他方、第2管押さえ部9bは基台部8に固定される。そして、1層目と同様に、連結管6はボビン2の他方のフランジ部5まで巻き取られる。
【0073】
3層目以降の連結管の巻き取りは上述の工程を繰り返せばよい。したがって、詳細な説明は省略する。
【0074】
図14は、ボビンのフランジ部近傍に巻き取られた連結管を示す図である。上述したように、連結管6をボビン2に複数層巻き取るとき、現在巻き取られている層の連結管6の巻き取り進行方向は、前層の巻き取り進行方向と反対になる。そのため、フランジ部5と現在巻き取られている連結管6との間に隙間SPが生じる。
【0075】
隙間SPが生じた状態で、現在巻き取られている連結管6のさらに次の層(以下、次層ともいう)の連結管6が巻き取られるとき、次層の連結管6が隙間SPに落ちる場合がある。次層の連結管6が隙間SPに落ちるとき、落ちる連結管6は隣接する連結管や1つ前の層の連結管と擦れるため、これらの連結管に疵が付くことがある。
【0076】
そこで、巻き取り工程は、連結管6がボビン2のフランジ部5まで巻き取られた後、巻き取られた連結管6とボビン2のフランジ部5との隙間SPに緩衝材を取り付ける工程を含むのが好ましい。
【0077】
図15は、緩衝材が取付けられたボビンのフランジ部近傍を示す断面図である。緩衝材17が隙間SPに取り付けられると、隙間SPは緩衝材17で埋められる。したがって、次層の連結管6が隙間SPに落ちることによる疵の発生を抑制できる。緩衝材17はたとえば、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、フェルト、ゴム、樹脂等である。
【実施例】
【0078】
本実施形態の連結管の巻き取り装置及びコイル巻き連結管の製造方法を用いて、管押さえ圧力を種々変更し、コイル巻き連結管を製造した。そして、連結管の整列巻き状況及び疵の発生の有無について調査した。
【0079】
[製造条件]
管押さえ圧力は0〜0.1MPaの間で変更した。本実施例では、寸法の異なる2種類の連結管をボビンに巻き取った。本実施例で用いた2種類の連結管の諸元を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
図16は、本実施例により製造されたコイル巻き連結管の整列巻き状況及び疵の発生の有無を示す図である。
図16中の、黒丸印は試験材1の列飛ばし発生率を示し、白丸印は試験材2の列飛ばし発生率を示す。
図16中の、黒塗り棒グラフは試験材1の疵発生率を示し、白塗り棒グラフは試験材2の疵発生率を示す。列飛ばし発生率及び疵発生率は以下の式により算出した。
(列飛ばし発生率[%])=(列飛ばしが発生した巻き数)/(総巻き数)×100
(疵発生率[%])=(疵が発生した巻き数)/(総巻き数)×100
【0082】
[結果]
図16に示すように、管押さえ圧力が0.03MPa以上になると、巻き取られた連結管に疵が見られた。また、管押さえ圧力が0.01MPa以下になると、巻き取られた連結管に列飛ばしが見られた。したがって、連結管の外径が16〜32mmの場合、管押さえ圧力は0.01〜0.03MPaが好ましいことがわかる。
【0083】
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
【0084】
たとえば、上述の説明では、1層目の連結管の巻き取りから本実施形態の連結管の巻き取り装置及びコイル巻き連結管の製造方法を適用する場合を説明した。しかしながら、本実施形態の連結管の巻き取り装置及びコイル巻き連結管の製造方法は、これに限定されない。たとえば、2層目以降の巻き取りから本実施形態の連結管の巻き取り装置及びコイル巻き連結管の製造方法を適用してもよい。