特許第6972752号(P6972752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972752
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】扉のロック器具
(51)【国際特許分類】
   E05B 15/02 20060101AFI20211111BHJP
   E05C 1/10 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   E05B15/02 H
   E05C1/10
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-153678(P2017-153678)
(22)【出願日】2017年8月8日
(65)【公開番号】特開2019-31843(P2019-31843A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂東 祐二
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−340145(JP,A)
【文献】 特開2011−137347(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0104584(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101240676(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
E05C 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納空間を開閉する扉の背面に設置される第1設置部材と、
前記収納空間に関連する壁、または、前記収納空間に配置された物品に設置される第2設置部材と、
磁力により移動できるように前記第1設置部材および前記第2設置部材の一方に配置される規制部材と、
前記規制部材と接触することにより、前記収納空間を閉鎖する前記扉をロックできるように前記第1設置部材および前記第2設置部材の他方に設けられる被規制部材とを備え、
前記規制部材は金属製の球である
扉のロック器具。
【請求項2】
収納空間を開閉する一対の扉の一方の背面に設置される第1設置部材と、
前記一対の扉の他方の背面に設置される第2設置部材と、
磁力により移動できるように前記第1設置部材および前記第2設置部材の一方に配置される規制部材と、
前記規制部材と接触することにより、前記収納空間を閉鎖する前記一対の扉をロックできるように前記第1設置部材および前記第2設置部材の他方に設けられる被規制部材とを備え、
前記規制部材は金属製の球である
扉のロック器具。
【請求項3】
前記第2設置部材は前記規制部材の移動方向を規定するガイド面を含む
請求項1または2に記載の扉のロック器具。
【請求項4】
前記第2設置部材は前記規制部材を収容する箱を含む
請求項1〜3のいずれか一項に記載の扉のロック器具。
【請求項5】
前記第1設置部材は前記扉に取り付けるための金属製の取付部を含む
請求項1〜4のいずれか一項に記載の扉のロック器具。
【請求項6】
前記規制部材が前記第1設置部材および前記第2設置部材に対して移動するように前記規制部材に磁力を与える操作部材をさらに備える
請求項1〜5のいずれか一項に記載の扉のロック器具。
【請求項7】
前記規制部材の位置を示すために前記扉に取り付けられるマーカーをさらに含む
請求項1〜6のいずれか一項に記載の扉のロック器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は扉をロックする扉のロック器具に関する。
【背景技術】
【0002】
扉をロックするロック器具の一例として、非特許文献1に示されるように粘着テープを扉に貼り付けることにより扉に設置されるロック器具が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】株式会社赤ちゃん本舗、“キャビネットロック くまのプーさん”、[online]、[平成29年7月31日検索]、〈URL:http://akachan.omni7.jp/detail/385007000?gclid=EAIaIQobChMI4_PPjqCy1QIVzQoqCh2MMgjCEAYYBSABEgIWBPD_BwE〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
扉に設置された非特許文献1のロック器具を扉から取り外した場合、扉の表面を構成する部分が剥がれるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に関する扉のロック器具は収納空間を開閉する扉の背面に設置される第1設置部材と、前記収納空間に関連する壁、または、前記収納空間に配置された物品に設置される第2設置部材と、磁力により移動できるように前記第1設置部材および前記第2設置部材の一方に配置される規制部材と、前記規制部材と接触することにより、前記収納空間を閉鎖する前記扉をロックできるように前記第1設置部材および前記第2設置部材の他方に設けられる被規制部材とを備える。
第1設置部材および第2設置部材の一方が扉の背面に設置され、第1設置部材および第2設置部材の他方が収納空間に関連する壁または物品に設置されることにより、上記ロック器具を使用するための状態が整えられる。扉が収納空間を閉鎖した状態で規制部材と被規制部とが接触した場合、ロック器具により扉がロックされる。扉がロックされた状態において、磁石を含む操作部材により規制部材が被規制部材と接触しない位置に移動した場合、扉がアンロックされる。このため、扉を操作し、収納空間を開放できる。上記ロック器具によれば、操作部材の磁石の磁力により規制部材を移動させることができるため、粘着テープにより扉に設置する従来のロック器具とは異なり、操作部材を扉に固定する必要がない。このため、扉の外観が好ましい状態に保持される。
【0006】
(2)本発明に関する扉のロック器具は収納空間を開閉する一対の扉の一方の背面に設置される第1設置部材と、前記一対の扉の他方の背面に設置される第2設置部材と、磁力により移動できるように前記第1設置部材および前記第2設置部材の一方に配置される規制部材と、前記規制部材と接触することにより、前記収納空間を閉鎖する前記一対の扉をロックできるように前記第1設置部材および前記第2設置部材の他方に設けられる被規制部材とを備える。
上記ロック器具によれば、(1)に記載のロック器具により得られる効果に準じた効果が得られる。
【0007】
(3)好ましい例では(1)または(2)に記載の扉のロック器具において、前記規制部材は金属製の球である。
このため、規制部材が移動する場合の抵抗が小さくなる。
【0008】
(4)好ましい例では(3)に記載の扉のロック器具において、前記第2設置部材は前記規制部材の移動方向を規定するガイド面を含む。
このため、規制部材を移動させるために操作部材を操作する場合にシビアな操作精度が要求されず、扉のロックおよびアンロックを容易に変更できる。
【0009】
(5)好ましい例では(3)または(4)に記載の扉のロック器具において、前記第2設置部材は前記規制部材を収容する箱を含む。
このため、規制部材が第2設置部材から落ちることが抑制される。
【0010】
(6)好ましい例では(1)〜(5)のいずれか一項に記載の扉のロック器具であって、前記第1設置部材は前記扉に取り付けるための金属製の取付部を含む。
操作部材が扉を介して取付部に吸着するため、操作部材を扉の取手として利用できる。
【0011】
(7)好ましい例では(1)〜(6)のいずれか一項に扉のロック器具において、前記規制部材が前記第1設置部材および前記第2設置部材に対して移動するように前記規制部材に磁力を与える操作部材をさらに備える。
規制部材の操作に適した操作部材により規制部材を操作できるため、扉のロックおよびアンロックを容易に変更できる。
【0012】
(8)好ましい例では(1)〜(7)のいずれか一項に記載の扉のロック器具において、前記規制部材の位置を示すために前記扉に取り付けられるマーカーをさらに含む。
このため、規制部材の位置を容易に把握できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に関するロック器具によれば、扉の外観が好ましい状態に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のロック器具が取り付けられた扉を含む収納構造の正面図。
図2図1のD2−D2線に沿う断面図。
図3図1の扉が収納空間を開放した状態の収納構造の正面図。
図4図3のロック器具の斜視図。
図5】扉をロックした状態のロック器具の断面図。
図6図5の操作部材および規制部材が上方に移動した状態を示す断面図。
図7図6の被規制部材の接触部が箱の空間に移動した状態を示す断面図。
図8図7の被規制部材が箱から抜けた状態を示す断面図。
図9】閉じ方向に移動する被規制部材が規制部材と接触した状態を示す断面図。
図10図9の被規制部材が規制部材を押し上げた状態を示す断面図。
図11図10の規制部材が接触部の頂部に乗り上げた状態を示す断面図。
図12図11の規制部材が下方に移動した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示されるように、ロック器具1は建築物300に設けられた扉100をロックできるように扉100等に設置される。扉100の一例は建築物300に設けられた収納構造200の出入口を開閉する扉である。ロック器具1が設置される扉100の例としては、片開きの開戸、両開きの開き戸、片引きの引戸、引違の引戸、引分の引戸、片引きの吊戸、引違の吊戸、引分の吊戸、および、折戸が挙げられる。収納構造200の一例はクローゼットである。収納構造200は建築物300の壁310に囲まれた収納空間210を有する。壁310には収納構造200の出入口を構成する開口部220が形成されている。開口部220の縁には枠400が設置されている。枠400の内側に扉100が設置されている。
【0016】
一例では、扉100は開口部220に対して両開きする第1扉110および第2扉120により構成されている。以降の説明では、各扉110、120が開口部220を閉鎖するように移動する方向を閉じ方向と称し、各扉110、120が開口部220を開放するように移動する方向を開き方向と称する。開口部220に対する扉100の位置は閉じ位置、開き位置、および、中間位置に分類できる。閉じ位置は扉100が最大限に閉じ方向に移動した位置である。開き位置は扉100が最大限に開き方向に移動した位置である。中間位置は閉じ位置と開き位置との間の位置である。図2に示されるように、各扉110、120が開口部220を閉鎖した状態では、第1扉110の縦縁111が第2扉120の縦縁121よりも収納空間210側に位置するように重ね合わせられる。このため、各扉110、120の位置が閉じ位置である場合に、第2扉120の位置が閉じ位置に保持された状態のまま第1扉110を開き方向に移動させることはできない。
【0017】
図3に示されるように、収納空間210には収納空間210を第1収納空間211および第2収納空間212に区画する仕切り320が設置されている。各収納空間211、212には棚330が設置されている。第1扉110は第1収納空間211の出入口を開閉できるように開口部220に設置されている。第2扉120は第2収納空間212の出入口を開閉できるように開口部220に設置されている。
【0018】
ロック器具1を構成する主要な要素は第1設置部材10、第2設置部材40、規制部材70(図4参照)、および、操作部材80(図1および図4参照)である。第1設置部材10、第2設置部材40、および、規制部材70は、閉じ位置の扉100を開くように扉100に力が加えられた場合に、扉100に設置された各設置部材10、40の一方の移動が各設置部材10、40の他方との接触により規制されるロック構造を構成している。第1設置部材10および第2設置部材40の一方は収納空間210に関連する壁に設置される。収納空間210に関連する壁は、収納空間210を構成する壁310、収納空間210に設置される仕切り320および棚330、ならびに、ロック器具1を設置するために収納空間210に設置される専用の取付部を含む。第1設置部材10および第2設置部材40の他方は扉100に設置される。一例では、第1設置部材10が第2扉120の背面120Aに設置され、第2設置部材40が仕切り320に設置される。収納構造200の高さ方向における各設置部材10、40の位置は建築物に設置される一般的な構造の扉における取手の位置と同様であることが好ましい。
【0019】
図4に示されるように、第1設置部材10を構成する主な要素は被規制部材20および取付部30である。被規制部材20は第2設置部材40に設けられる規制部材70と接触することにより収納空間210を閉鎖する第2扉120をロックできるように構成されている。取付部30は扉100および壁310等に取り付けることができるように構成されている。被規制部材20および取付部30は個別に構成された部材であり、結合手段により結合されている。結合手段の一例は溶接、接着剤、ねじ、および、嵌合する凹凸である。被規制部材20および取付部30の具体的な形態は任意に選択できる。一例では、被規制部材20は金属製のフックであり、取付部30は金属製の板である。
【0020】
被規制部材20は基部21および接触部22に区分される。基部21は取付部30と接合された板である。接触部22は基部21の先端部から上方に突出した爪である。接触部22には規制部材70と接触する傾斜面22Aおよび被規制面22Bが形成されている。傾斜面22Aは接触部22の基部21側から上方側に向かうにつれて接触部22の先端側から基端側に傾斜するように接触部22の先端側の部分に形成されている。被規制面22Bは箱50の長手方向に沿うように接触部22における取付部30側の部分に形成されている。
【0021】
取付部30は第2扉120の背面120Aに固定されている。取付部30を構成する材料は任意に選択できる。好ましい例では、取付部30は操作部材80の磁石81が第2扉120を介して取付部30に吸着できるような磁性材料により構成される。この場合、操作部材80を扉100の取手として利用できる。磁性材料の一例は鉄、ケイ素鋼、パーマロイ、センダスト、パーメンジュール、ソフトフェライト、アモルファス磁性合金、および、ナノクリスタル磁性合金である。磁石81の一例はフェライト、ネオジウム、サマリウムコバルト、および、アルニコである。取付部30を扉100に結合する結合手段は任意に選択できる。第1例では、結合手段は固定部材を利用して取付部30を扉100に結合する手段である。固定部材の一例はねじ、ボルト、および、リベットである。第2例では、結合手段は接着力を利用して取付部30を扉100に結合する手段である。接着力を提供する物体の一例は接着剤および両面テープである。第3例では、結合手段は磁力を利用して取付部30を扉100に結合する手段である。磁力を提供する物体の一例は、取付部30および扉100の一方に設けられる磁石、および、取付部30および扉100の他方に設けられる磁石または磁性体である。
【0022】
第2設置部材40を構成する主要な要素は箱50および取付部60である。箱50および取付部60を構成する材料は任意に選択できる。その一例は軽量な樹脂材料である。箱50および取付部60は個別に構成された樹脂部材であり、接着剤により接合されている。箱50の形状は長方形状である。箱50は第1側壁51、第2側壁52、第3側壁53、天壁54、および、底壁55により構成されている。箱50を構成するこれらの要素は個別に構成された樹脂部材であり、接着剤により接合されている。第1側壁51と第2側壁52とは空間50Aを介して対向している。各側壁51、52には被規制部材20が通過できるスリット51B、52Bが形成されている。各スリット51B、52Bは天壁54から底壁55までの範囲に形成されている。第3側壁53は第1側壁51の端部と第2側壁52の端部との間に設けられている。取付部60は板であり、空間50Aを介して第3側壁53と対向するように第1側壁51および第2側壁52のそれぞれに接合されている。取付部60が仕切り320に固定されることにより第2設置部材40が仕切り320に設置される。第2設置部材40は箱50の長手方向が仕切り320の長手方向に沿うように設置される。取付部60と仕切り320とを結合する手段の一例は取付部30と第2扉120とを結合する手段として例示した手段と同様である。
【0023】
規制部材70は箱50の空間50Aを移動できるように空間50Aに配置されている。規制部材70を構成する材料は磁性材料および磁石から任意に選択できる。規制部材70を構成する磁性材料は取付部30を構成する磁性材料の例から選択できる。規制部材70を構成する磁石は磁石81の例から選択できる。規制部材70の形状は任意に選択できる。その一例は、球、円柱、角柱、板、および、フックである。図示される例では、規制部材70は金属製の球である。箱50の内面には規制部材70を箱50の底壁55よりも高い位置で保持する複数の支持部56が設けられている。規制部材70は箱50の空間50Aにおいて支持部56と天壁54との間を移動できる。支持部56を構成する材料は箱50を構成する材料と同じである。支持部56は各側壁51〜53および取付部60とは個別に構成された樹脂部材であり、接着剤により各側壁51〜53および取付部60に接合されている。
【0024】
規制部材70は操作部材80の磁力または被規制部材20から与えられる力により箱50に対して移動する。操作部材80の磁力が規制部材70に与えられている場合、規制部材70は箱50、取付部30、および、扉100を介して操作部材80の磁石81に吸着し、操作部材80の移動にともない箱50に対して移動する。被規制部材20が接触部22の傾斜面22Aにより規制部材70を押し上げるように扉100の閉じ方向に移動する場合、規制部材70は傾斜面22Aに沿って箱50に対して移動する。傾斜面22Aの傾斜角度は任意に選択できる。一例では、接触部22が規制部材70を押し上げるように移動する場合に規制部材70が滑らかに傾斜面22Aに沿って移動できるように傾斜面22Aの傾斜角度が設定される。
【0025】
第1側壁51の内面である第1ガイド面51Aおよび第2側壁52の内面である第2ガイド面52Aは箱50の空間50Aにおける規制部材70の移動方向を規定する。規制部材70の直径は第1ガイド面51Aと第2ガイド面52Aとの距離よりも若干短い。このため、規制部材70と第1側壁51および第2側壁52のそれぞれとの間には微小な隙間が形成され、箱50に対する規制部材70の移動方向は実質的に箱50の長手方向に規定されている。このような移動方向に関する規定は各ガイド面51A、52Aにより実現されている。規制部材70の移動方向が規定されていることにより、規制部材70を移動させるために操作部材80を操作する場合にシビアな操作精度が要求されないため、扉100のロックおよびアンロックを容易に変更できる。
【0026】
操作部材80は規制部材70が第1設置部材10および第2設置部材40に対して移動するように規制部材70に磁力を与える。操作部材80を構成する主な要素は磁石81、および、磁石81を保持するグリップ82である。磁石81はグリップ82に固定されている。グリップ82を構成する材料は任意に選択できる。その一例は軽量な合成樹脂である。グリップ82がこの材料で構成される場合、ユーザによる操作部材80の操作性が向上する。操作部材80を利用して規制部材70を移動させる場合、図5に示されるように、第2扉120を介して取付部30と結合するように第2扉120の表面120Bに操作部材80が設置される。この状態では、操作部材80の磁石81と取付部30とが結合しているため、ユーザが操作部材80を支持しなくても操作部材80が第2扉120に設置された状態が保たれる。規制部材70が箱50の天壁54よりも下方に位置する状態で、第2扉120に設置された操作部材80が第2扉120に沿って上方に移動した場合、操作部材80とともに規制部材70が上方に移動する。規制部材70が箱50の支持部56よりも上方に位置する状態で、第2扉120に設置された操作部材80が第2扉120に沿って下方に移動した場合、操作部材80とともに規制部材70が下方に移動する。
【0027】
収納構造200は操作部材80を保管するための保管構造を備えている。保管構造の構成は任意に選択できる。第1例では、保管構造は扉100に設けられた磁性体である。第2例では、保管構造は壁310の収納空間210外の面に設けられた磁性体である。第3例では、保管構造は扉100の表面または壁310の収納空間210外の面に設けられた収納部である。収納部の一例は操作部材80を収納するケースである。第1例および第2例によれば、操作部材80の磁石81と磁性体とが結合することにより操作部材80が扉100の表面または壁310の収納空間210外の面に保持される。図3に示される磁性体83は第1例における磁性体の一例である。磁性体83は第2扉120の背面120Aに固定されている。第2扉120の高さ方向における磁性体83の設置箇所は任意に選択できる。好ましい例では、磁性体83は幼児の手が届かない位置に設置される。
【0028】
収納構造200では、操作部材80が扉100の取手として利用されるため、扉100の表面に一般的な扉の取手が設けられていない。保管構造を構成する磁性体が扉100の背面に設けられる場合、扉100の表面には取手および保管構造のいずれもが設けられない。このため、扉100と壁310との違いが認識されにくい。このような特性を利用して、収納構造200を隠し収納庫として利用することができる。
【0029】
扉100にはロック器具1の使用を補助するマーカー90が設けられている。マーカー90は扉100の正面側に位置するユーザに対して、規制部材70のおおよその位置を示すために設けられる。ユーザは操作部材80を用いて規制部材70を移動させる場合に、操作部材80を扉100のどのあたりに設置することが適切かを容易に認識できる。マーカー90の構成は任意に選択できる。好ましい例では、扉100の表面に沿った操作部材80の移動を妨げないようにマーカー90が構成される。その一例はシールおよび塗料の層である。図示される例では、マーカー90は扉100の表面に貼り付けられたシールである。マーカー90の表面の色または模様(以下「色等」)は任意に選択できる。好ましい例では、マーカー90の表面の色等は扉100の表面の色等と一致または類似する。この場合、一見しただけではマーカー90の存在が認識されにくいため、扉100の美観が保たれる。
【0030】
図5に示されるように、ロック器具1が扉100をロックしている場合、被規制部材20の接触部22が箱50の第2側壁52のスリット52Bから箱50の外側に突出し、規制部材70が支持部56に支持されている。この状態において第2扉120を開き方向に移動させる力を第2扉120に加える動作(以下「開放動作」という)が実施された場合、第2扉120に固定されている被規制部材20が箱50の各スリット51B、52Bを通過して箱50から抜ける方向に移動しようとする。この動きは支持部56上に配置された規制部材70が接触部22と第1側壁51との間に挟み込まれることにより規制される。このため、第2扉120の開き方向への移動が規制され、第2扉120が開かない。ロック器具1が扉100をロックし、開放動作が実施されていない状態では、接触部22と規制部材70との間に隙間が形成されている。このため、開放動作が実施された場合、接触部22がわずかに規制部材70側に移動し、規制部材70と接触することにより移動が規制される。隙間の間隔は接触部22が規制部材70と接触した場合に大きな音が生じないように設定されている。接触部22と規制部材70との接触にともない生じる音を低減するその他の方法としては、例えば接触部22の被規制面22Bに緩衝材を取り付ける方法が挙げられる。この方法は上記隙間の間隔の設定と組み合わせ可能である。緩衝材の一例はゴムおよび発泡スチロールである。
【0031】
ロック器具1のロックを解除する場合、第2扉120におけるマーカー90と対応する箇所に操作部材80が設置される。図6に示されるように、第2扉120に設置された操作部材80が第2扉120に沿って上方に操作された場合、磁石81の磁力により操作部材80の移動方向と同じ方向に規制部材70が移動する。これにより、規制部材70が接触部22と第1側壁51との間から離れた場所に移動し、開き方向への接触部22の移動が規制部材70により規制されない状態が形成される。すなわち、ロック器具1の状態が扉100をロックする状態から扉100をアンロックする状態に変更される。扉100がアンロックされた状態で第2扉120の開放動作が実施されることにより、図7に示されるように、第2扉120および被規制部材20が開き方向に移動し、接触部22が第2側壁52のスリット52Bを通過して箱50の空間50Aに移動する。第2扉120がさらに開き方向に移動することにより、図8に示されるように被規制部材20の全体が箱50から抜け、規制部材70が支持部56に移動する。第2扉120が閉じ位置から中間位置に移動することにより、第1扉110を開き方向に移動させることが可能な状態が形成される。
【0032】
第2扉120が中間位置または開き位置に移動した状態において第2扉120を閉じ方向に移動させる力を第2扉120に加える動作(以下「閉鎖動作」という)が実施された場合、図9に示されるように被規制部材20が箱50の第1側壁51のスリット51Bを通過して箱50の空間50Aに移動する。箱50の空間50Aに移動した接触部22の傾斜面22Aは規制部材70と接触する。規制部材70がさらに閉じ方向に移動した場合、図10に示されるように規制部材70が傾斜面22Aに沿って上方に移動する。すなわち、接触部22が規制部材70を押し上げる。この状態から規制部材70がさらに閉じ方向に移動した場合、図11に示されるように規制部材70が接触部22の頂部22Cに乗り上げる。この状態から規制部材70がさらに閉じ方向に移動した場合、図12に示されるように接触部22が箱50の第2側壁52のスリット52Bを通過して第2側壁52の外側に突出し、規制部材70が支持部56上に移動する。これにより、規制部材70が接触部22と第1側壁51との間に配置され、開き方向への接触部22の移動が規制部材70により規制される状態が形成される。すなわち、ロック器具1の状態が扉100をアンロックする状態から扉100をロックする状態に変更される。
【0033】
ロック器具1によれば、次のような作用および効果が得られる。操作部材80の磁石81の磁力により規制部材70を移動させることができるため、粘着テープにより扉100に設置する従来のロック器具とは異なり、操作部材80を扉100に固定する必要がない。このため、扉100の外観が好ましい状態に保持される。また、規制部材70の操作に適した操作部材80により規制部材70を操作できるため、扉100のロックおよびアンロックを容易に変更できる。また、球である規制部材70が箱50内に配置されているため、規制部材70が第2設置部材40から落ちることが抑制される。
【0034】
(変形例)
上記実施形態は本発明に関するロック器具が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関するロック器具は実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の一例を示す。
【0035】
・ロック器具1の設置形態は任意に変更可能である。第1例では、第2設置部材40が収納空間210に配置される物品に設置される。この物品はロック器具1により扉100がロックされた状態において開放動作が実施された場合に、開放動作により加えられた力で移動しない重量を有することが好ましい。その一例は家具である。第2例では、第1設置部材10が収納空間210に関連する壁、または、収納空間210に配置された物品に設置され、第2設置部材40が扉100に設置される。この場合も図5図12に例示された手順に準じてロック器具1による扉100のロックおよびアンロックを変更できる。第3例では、第1設置部材10および第2設置部材40の一方が第1扉110に設置され、他方が第2扉120に設置される。各設置部材10、40の位置関係は、扉100のロックおよびアンロックを変更できるように、実施形態で例示された第1設置部材10と第2設置部材40との位置関係に準じて設定される。
【0036】
・ロック器具1のロック構造は任意に変更可能である。一例では、ロック構造は各設置部材10、40の一方に設けられた穴、切り欠き、または、凹部(以下「穴等」)と、各設置部材10、40の他方に対して移動可能な状態で各設置部材10、40の他方に支持される規制部材70により構成される。規制部材70の一例は穴等に挿入される棒または板である。規制部材70が穴等に挿入された状態では、ロック器具1が扉100をロックする。この状態において開放動作が実施された場合、規制部材70が穴等の縁に引っ掛かり、扉100の開き方向への移動が規制され、扉100が開かない。ロック器具1のロックを解除する場合、操作部材80の磁石81の磁力により操作部材80の移動方向と同じ方向に規制部材70が移動し、規制部材70が穴等から抜かれ、扉100がアンロックされる。
【0037】
・ロック器具1を設置する対象は任意に変更可能である。一例では、ロック器具1は建築物の建具としての扉ではなく、家具等のように建築物に設置される物品の扉に設置される。
【符号の説明】
【0038】
1 :ロック器具
10 :第1設置部材
20 :被規制部材
30 :取付部
40 :第2設置部材
50 :箱
51A :ガイド面
52A :ガイド面
70 :規制部材
80 :操作部材
90 :マーカー
100 :扉
120A:背面
210 :収納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12