特許第6972754号(P6972754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972754
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】内燃機関の排気構造
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/10 20100101AFI20211111BHJP
   F01N 13/00 20100101ALI20211111BHJP
【FI】
   F01N13/10
   F01N13/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-154981(P2017-154981)
(22)【出願日】2017年8月10日
(65)【公開番号】特開2019-31964(P2019-31964A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下釜 一
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−083756(JP,A)
【文献】 特開2003−269158(JP,A)
【文献】 特開昭52−041723(JP,A)
【文献】 特開2007−211663(JP,A)
【文献】 特開2003−262120(JP,A)
【文献】 実開平02−101017(JP,U)
【文献】 実開昭64−051719(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0098009(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/035156(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00−13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一列に並んで配列された複数の気筒を有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックの上部に設けられ、内部に、前記気筒から排気ガスを排出する排気通路が形成されたシリンダヘッドと、前記気筒の配列方向に沿った前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの側面に設置された排気管と、前記シリンダヘッドの前記側面から外方に突出し、前記排気管が接続される排気フランジ部と、前記排気管の下流端に接続された触媒コンバータとを備え、
前記排気通路が、前記気筒毎に設けられ、前記気筒から排出される排気ガスが流れる排気通路部と、前記排気通路部の下流側において前記排気フランジ部に設けられ、少なくとも2つ以上の前記排気通路部をそれぞれの前記気筒毎に集合させる少なくとも2つ以上の排気集合部と、前記排気集合部にそれぞれ連通して前記排気フランジ部に開口し、前記排気集合部を流れる排気ガスを前記シリンダヘッドの外部に排出する少なくとも2つ以上の排気口とを備え、
前記排気口が、少なくとも2つ以上の前記排気口のうちの少なくとも1つを構成する第1の排気口と、少なくとも2つ以上の前記排気口のうちの残りの少なくとも1つを構成する第2の排気口とを有し、
前記第1の排気口に対して前記第2の排気口が下方に形成されており、
前記排気管は、前記排気フランジ部から外方に直線状に延びる直線部と、前記直線部から下方に湾曲し、前記シリンダブロックの前記側面に対向する湾曲内側面と前記シリンダブロックの前記側面と反対側に位置する湾曲外側面とを有する湾曲部とを備えており、
前記排気管は、仕切壁によって仕切られ、前記第1の排気口から排出される排気ガスが流れる第1の排気管通路と、前記第2の排気口から排出される排気ガスが流れる第2の排気管通路とを有する内燃機関の排気構造であって、
前記湾曲部は、前記気筒の軸線と直交する軸線方向において、前記湾曲外側面と前記気筒の軸線とが最も離れた最大距離に対して、前記気筒の軸線と前記湾曲外側面の延びる方向の先端部との距離が短くなるように湾曲しており、
前記仕切壁は、前記排気フランジ部から外方に直線状に延びる第1の仕切壁部と、前記第1の仕切壁部から下方に湾曲する第2の仕切壁部と、前記第2の仕切壁部から下方に直線状に延びる第3の仕切壁部とを含んで構成されており、
前記仕切壁の板厚は、前記第2の仕切壁部の板厚が、前記第1の仕切壁部の板厚よりも大きく形成され、かつ、前記第3の仕切壁部の板厚が、前記第2の仕切壁部の板厚より下流側に向かうに従って徐々に小さくなるように形成されており、
前記第1の排気管通路の中心軸は、その下流側が前記シリンダブロックの前記側面に近づくように傾斜しており、前記第2の排気管通路の中心軸はその下流側が前記シリンダブロックの前記側面から離れるように傾斜していることを特徴とする内燃機関の排気構造。
【請求項2】
前記触媒コンバータに設けられ、排気ガス中の酸素量を検出する排気センサとを備え、
前記第1の排気管通路は、前記第2の排気管通路に対して上方でかつ、前記第2の排気管通路に対して前記シリンダヘッドの前記側面から外方に離れて形成されており、
前記排気センサが、前記第1の排気管通路の下流開口端に対向し、かつ、前記仕切壁側に設置されており、
前記湾曲外側面の裏側の湾曲内周面の先端部内周面を通り、前記第1の排気管通路の下流側の中心軸に沿って延びる仮想線を第3の仮想線とし、前記シリンダブロックの前記側面に対向する前記仕切壁の下端部を通り、前記第2の排気管通路の下流側の中心軸に沿って延びる仮想線を第4の仮想線とした場合に、前記排気センサは、前記第3の仮想線と前記第4の仮想線との間に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気構造。
【請求項3】
前記第1の排気管通路および前記第2の排気管通路の少なくとも一方は、上流側に対して下流側の開口面積が大きく形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の排気構造。
【請求項4】
前記仕切壁は、前記第1の仕切壁部から前記第2の仕切壁部に亙って貫通孔を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関の排気構造。
【請求項5】
前記第1の仕切壁部に形成される前記貫通孔の開口面積に対して前記第2の仕切壁部に形成される前記貫通孔の開口面積が大きいことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の排気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
気筒から延びる排気ポートをシリンダヘッド内で集合させた内燃機関のシリンダヘッド構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この内燃機関のシリンダヘッド構造は、排気行程が行われる順に各気筒を第1気筒、第3気筒、第4気筒、第2気筒と称したときに、第1気筒に接続された排気ポートと第4気筒に接続された排気ポートとが合流して1つの合流排気ポートとなり、この合流排気ポートがシリンダヘッドの側面に開口している。
【0004】
また、第2気筒に接続された排気ポートと第3気筒に接続された排気ポートとが合流して1つの合流排気ポートとなり、この合流排気ポートがシリンダヘッドの側面に開口している。2つの合流排気ポートにはそれぞれ別体の排気管が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−285168
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のエンジンのシリンダヘッド構造にあっては、各合流排気ポートにそれぞれ別体の排気管が接続されている。このため、個々の排気管を各合流排気ポートに接続するために、シリンダヘッドの側面や個々の排気管に、排気管とシリンダヘッドとを接続するための専用の構成が必要となる。
【0007】
このため、排気管が大型化してしまい、排気管の大型化に伴って排気管の設置スペースが増大する。この結果、排気管の周囲に設置される車載部品の設置の自由度が低下してしまう。さらに、排気管を流れる排気ガスは、円滑に流れる必要があるが、従来のシリンダヘッド構造は、排気ガスを円滑に流すための構成が記載されていない。
【0008】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、排気管の小型化を図ることができ、排気管の周囲に設置される車載部品の設置の自由度を向上させつつ、排気管を流れる排気ガスを下流に向かって円滑に流すことができる内燃機関の排気構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一列に並んで配列された複数の気筒を有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックの上部に設けられ、内部に、前記気筒から排気ガスを排出する排気通路が形成されたシリンダヘッドと、前記気筒の配列方向に沿った前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの側面に設置された排気管と、前記シリンダヘッドの前記側面から外方に突出し、前記排気管が接続される排気フランジ部と、前記排気管の下流端に接続された触媒コンバータとを備え、前記排気通路が、前記気筒毎に設けられ、前記気筒から排出される排気ガスが流れる排気通路部と、前記排気通路部の下流側において前記排気フランジ部に設けられ、少なくとも2つ以上の前記排気通路部をそれぞれの前記気筒毎に集合させる少なくとも2つ以上の排気集合部と、前記排気集合部にそれぞれ連通して前記排気フランジ部に開口し、前記排気集合部を流れる排気ガスを前記シリンダヘッドの外部に排出する少なくとも2つ以上の排気口とを備え、前記排気口が、少なくとも2つ以上の前記排気口のうちの少なくとも1つを構成する第1の排気口と、少なくとも2つ以上の前記排気口のうちの残りの少なくとも1つを構成する第2の排気口とを有し、前記第1の排気口に対して前記第2の排気口が下方に形成されており、前記排気管は、前記排気フランジ部から外方に直線状に延びる直線部と、前記直線部から下方に湾曲し、前記シリンダブロックの前記側面に対向する湾曲内側面と前記シリンダブロックの前記側面と反対側に位置する湾曲外側面とを有する湾曲部とを備えており、前記排気管は、仕切壁によって仕切られ、前記第1の排気口から排出される排気ガスが流れる第1の排気管通路と、前記第2の排気口から排出される排気ガスが流れる第2の排気管通路とを有する内燃機関の排気構造であって、 前記湾曲部は、前記気筒の軸線と直交する軸線方向において、前記湾曲外側面と前記気筒の軸線とが最も離れた最大距離に対して、前記気筒の軸線と前記湾曲外側面の延びる方向の先端部との距離が短くなるように湾曲しており、前記仕切壁は、前記排気フランジ部から外方に直線状に延びる第1の仕切壁部と、前記第1の仕切壁部から下方に湾曲する第2の仕切壁部と、前記第2の仕切壁部から下方に直線状に延びる第3の仕切壁部とを含んで構成されており、前記仕切壁の板厚は、前記第2の仕切壁部の板厚が、前記第1の仕切壁部の板厚よりも大きく形成され、かつ、前記第3の仕切壁部の板厚が、前記第2の仕切壁部の板厚より下流側に向かうに従って徐々に小さくなるように形成されており、前記第1の排気管通路の中心軸は、その下流側が前記シリンダブロックの前記側面に近づくように傾斜しており、前記第2の排気管通路の中心軸はその下流側が前記シリンダブロックの前記側面から離れるように傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように上記の本発明によれば、排気管の小型化を図ることができ、排気管の周囲に設置される車載部品の設置の自由度を向上させつつ、排気管を流れる排気ガスを下流に向かって円滑に流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施例に係る排気構造を備えたエンジンの正面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る排気構造を備えたエンジンの左側面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る排気構造を備えたエンジンの右側面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る排気構造を備えたエンジンのシリンダブロックとシリンダヘッドとの正面図であり、排気管付近の拡大図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係る排気構造を備えたエンジンのシリンダブロックとシリンダヘッドとの正面図であり、排気管、触媒コンバータおよびスタータジェネレータを取り外した状態を示す図である。
図6図6は、図2のVI−VI方向矢視断面図である。
図7図7は、図4のVII−VII方向矢視断面図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る排気構造を備えたエンジンにおいて、触媒コンバータを下方から見た図である。
図9図9は、本発明の一実施例に係る排気構造を備えたエンジンのシリンダブロックとシリンダヘッドとの正面図であり、補機の取付用ブラケットが取付けられた状態を示す図である。
図10図10は、図4のVII−VII方向矢視断面図に相当し、仕切壁の他の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る内燃機関の排気構造は、一列に並んで配列された複数の気筒を有するシリンダブロックと、シリンダブロックの上部に設けられ、内部に、複数の気筒から排気ガスを排出する排気通路が形成されたシリンダヘッドと、気筒の配列方向に沿ったシリンダブロックとシリンダヘッドとの側面に設置された排気管と、シリンダヘッドの側面から外方に突出し、排気管が接続される排気フランジ部とを備え、排気通路が、気筒毎に設けられ、気筒から排出される排気ガスが流れる排気通路部と、排気通路部の下流側において排気フランジ部に設けられ、少なくとも2つ以上の排気通路部をそれぞれの気筒毎に集合させる少なくとも2つ以上の排気集合部と、排気集合部にそれぞれ連通して排気フランジ部に開口し、排気集合部を流れる排気ガスをシリンダヘッドの外部に排出する少なくとも2つ以上の排気口と備え、排気口が、少なくとも2つ以上の排気口のうちの少なくとも1つを構成する第1の排気口と、少なくとも2つ以上の排気口のうちの残りの少なくとも1つを構成する第2の排気口を構成する内燃機関の排気構造であって、排気管は、仕切壁によって仕切られ、第1の排気口から排出される排気ガスが流れる第1の排気管通路と、第2の排気口から排出される排気ガスが流れる第2の排気管通路とを有し、仕切壁の板厚は、排気ガスの流れる方向の下流側に向かうに従って徐々に小さくなる。
【0013】
これにより、排気管の小型化を図ることができ、排気管の周囲に設置される車載部品の設置の自由度を向上させつつ、排気管を流れる排気ガスを下流に向かって円滑に流すことができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の一実施例に係る内燃機関の排気構造について、図面を用いて説明する。
図1から図10は、本発明の一実施例に係る内燃機関の排気構造を示す図である。図1から図10において、上下前後左右方向は、エンジンの気筒の配列方向に沿う方向と直交する方向で排気管が設置されている側を前とした場合に、気筒の配列方向が左右方向、エンジンの高さ方向が上下方向である。
【0015】
まず、構成を説明する。
図1図2において、車両の図示しないエンジンルームには内燃機関としてのエンジン1が設置されている。エンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に取付けられたシリンダヘッド3と、シリンダブロック2の下部に取付けられたオイルパン4とを有する。
【0016】
シリンダブロック2には複数の気筒2A、2B、2C、2D(図6参照)が設けられており、気筒2A、2B、2C、2Dは、エンジン1の左右方向に1列に並んで配列されている。気筒2A、2B、2C、2Dには図示しないピストンが収納されており、ピストンは、気筒に対して上下方向に往復運動する。
【0017】
ピストンは、図示しないコネクティングロッドを介してクランクシャフト2S(図3参照)に連結されており、ピストンの往復運動は、コネクティングロッドを介してクランクシャフト2Sの回転運動に変換される。
【0018】
シリンダヘッド3には複数の吸気ポート3A(図6参照)と、吸気ポート3Aを開閉する図示しない複数の吸気バルブと、排気ポート3B(図6参照)と、排気ポート3Bを開閉する図示しない複数の排気バルブ等が設けられている。吸気ポート3Aは、気筒2A、2B、2C、2Dに空気を導入し、排気ポート3Bは、気筒2A、2B、2C、2D内で燃焼された排気ガスを気筒から排出する。
【0019】
シリンダヘッド3にはそれぞれ図示しない吸気カムを有する吸気カムシャフトと、排気カムを有する排気カムシャフトとが回転自在に設けられており、吸気バルブおよび排気バルブは、吸気カムおよび排気カムによって開閉駆動される。
【0020】
図1において、シリンダブロック2およびシリンダヘッド3の右側面にはチェーンケース5(図3参照)が設けられており、チェーンケース5は、シリンダブロック2およびシリンダヘッド3の右側面に設けられたタイミングチェーン6(図3に仮想線で示す)を覆っている。
【0021】
図4図5において、シリンダブロック2およびシリンダヘッド3の右端部にはケースフランジ部2F、3Fが形成されており、チェーンケース5は、ボルト20(図4参照)によってケースフランジ部2F、3Fに締結されている。本実施例のシリンダヘッド3の右端部は、本発明のシリンダヘッドの気筒の配列方向の端部を構成する。
【0022】
図3において、タイミングチェーン6は、クランクシャフト2Sに設けられたクランクプーリ46と、吸気カムシャフトと排気カムシャフトにそれぞれ設けられたカムプーリ17A、17Bとを連結しており、クランクシャフト2Sの動力を吸気カムシャフトと排気カムシャフトに伝達する。
【0023】
図1において、シリンダブロック2の左側面には変速機7が取付けられており、変速機7は、複数の変速段を成立させるための図示しない複数の変速ギヤを有し、エンジン1の回転速度を変速する。
【0024】
オイルパン4にはクランクシャフト2Sやピストン等を潤滑するためのオイルが貯留されており、オイルは、図示しないオイルポンプによってクランクシャフト2Sやピストン等に供給される。
【0025】
図1図4において、シリンダヘッド3には排気管8が取付けられており、排気管8は、気筒2A、2B、2C、2Dの配列方向に沿ったシリンダヘッド3の側面3aとシリンダブロック2の側面2aとに設置されている。排気管8には排気ポート3Bから排出される排気ガスが導入される。
【0026】
排気管8の下流端には触媒コンバータ9が取付けられており、排気管8および触媒コンバータ9は、エンジン1の高さ方向に延びている。触媒コンバータ9は、排気管8から排出さる排気ガスを浄化した後、下流側に設けられた図示しない排気管に排出する。
【0027】
図6において、シリンダヘッド3の内部には排気通路11が形成されている。排気通路11は、排気通路部12A、12B、12C、12Dと、排気集合部13A、13Bと、第1の排気口14Aおよび第2の排気口14B(図5参照)とを備えている。
【0028】
排気通路部12A、12B、12C、12Dは、排気ポート3Bを介してそれぞれ気筒2A、2B、2C、2Dに連通している。排気通路部12B、12Cは、排気通路部12A、12Dの下方に形成されており、気筒2A、2B、2C、2Dから排出される排気ガスは、それぞれ排気通路部12A、12B、12C、12Dを流れる。図6において、排気通路11を流れる排気ガスを矢印Wで示している。
【0029】
排気集合部13Aは、排気通路部12A、12Dの下流側に設けられている。排気集合部13Aは、排気通路部12A、12Dを集合させ、排気通路部12A、12Dを流れる排気ガスを集合させる。
【0030】
排気集合部13Bは、排気集合部13Aの下方に形成されており(図7参照)、排気通路部12B、12Cの下流側に設けられている。排気集合部13Bは、排気通路部12B、12Cを集合させ、排気通路部12B、12Cを流れる排気ガスを集合させる。
【0031】
第1の排気口14Aは、シリンダヘッド3の側面3aに開口しており、排気集合部13Aに連通している。第2の排気口14Bは、第1の排気口14Aの下方においてシリンダヘッド3の側面3aに開口しており、排気集合部13Bに連通している。
【0032】
これにより、気筒2A、2Dから排出される排気ガスは、排気ポート3Bを通して排気通路部12A、12Dを流れた後、排気集合部13Aを通して第1の排気口14Aからシリンダヘッド3の外部に排出される。
【0033】
気筒2B、2Cから排出される排気ガスは、排気ポート3Bを通して排気通路部12B、12Cを流れた後、排気集合部13Bを通して第2の排気口14Bからシリンダヘッド3の外部に排出される。
【0034】
図4図5において、シリンダヘッド3の側面3aには膨出部15が形成されている。膨出部15は、シリンダヘッド3の側面3aから外方に膨れ出し、気筒2A、2B、2C、2Dの配列方向に沿って延びている。膨出部15には排気通路部12B、12Cに対して上方に位置する排気通路部12A、12Dが形成されている。
【0035】
図5において、シリンダヘッド3の側面3aには排気フランジ部16が形成されており、排気フランジ部16は、シリンダヘッド3の側面3aから膨出部15よりも外方に突出している(図6参照)。図7に示すように、排気フランジ部16には排気集合部13A、13Bと第1の排気口14Aおよび第2の排気口14Bとが形成されている。
【0036】
図5において、膨出部15は、気筒の配列方向の両側から排気フランジ部16に向かって上方に傾斜しており、排気フランジ部16に連結されている。
【0037】
図6において、気筒2A、2Dは、シリンダブロック2の気筒の配列方向の両側にそれぞれ設置されており、気筒2Aは、本発明の第1の外側気筒を構成し、気筒2Dは、本発明の第2の外側気筒を構成する。
【0038】
気筒2B、2Cは、気筒の配列方向において気筒2A、2Dによって挟まれて設置されており、気筒2B、2Cは、本発明の内側気筒を構成する。
【0039】
排気通路部12Aは、気筒2Aから膨出部15を経由して排気フランジ部16まで延びており、本発明の第1の外側排気通路部を構成する。排気通路部12Dは、気筒2Dから膨出部15を経由して排気フランジ部16まで延びており、本発明の第2の外側排気通路部を構成する。
【0040】
排気通路部12Bは、気筒2Bから排気フランジ部16まで延びており、本発明の内側排気通路部を構成している。排気通路部12Cは、気筒2Cから排気フランジ部16まで延びており、本発明の内側排気通路部を構成する。
【0041】
排気集合部13Aは、排気通路部12Aと排気通路部12Dとを集合させており、本発明の第1の排気集合部を構成する。排気集合部13Aの下方に形成された排気集合部13Bは、排気通路部12Bと排気通路部12Cとを集合させており、本発明の第2の排気集合部を構成する。
【0042】
排気集合部13Aに連通する第1の排気口14Aと、第1の排気口14Aの下方において排気集合部13Bに連通する第2の排気口14Bとは、本発明の排気口を構成する。
【0043】
図7において、排気フランジ部16には排気管8の上流端が取付けられている。排気管8は、仕切壁21によって仕切られた第1の排気管通路22と第2の排気管通路23とを有する。ここで、上流、下流とは、排気ガスが流れる方向に対して上流、下流を意味している。
【0044】
第1の排気管通路22は、第1の排気口14Aに連通しており、第1の排気管通路22には第1の排気口14Aから排気ガスが排出される。第2の排気管通路23は、第2の排気口14Bに連通しており、第2の排気管通路23には第2の排気口14Bから排気ガスが排出される。
【0045】
第1の排気管通路22は、第2の排気管通路23に対して上方でかつ、第2の排気管通路23に対してシリンダヘッド3の側面3aから外方に離れて形成されている。
【0046】
排気管8は、シリンダヘッド3の側面3aから外方に直線状に延びた後、下方に湾曲して延びている。
【0047】
すなわち、本実施例の排気管8は、排気フランジ部16から外方に直線状に延びる直線部31と、直線部31から下方に湾曲し、シリンダブロック2の側面2aに対向する湾曲内側面32aとシリンダブロック2の側面2aと反対側に位置する湾曲外側面32bとを有する湾曲部32とを備えている。
【0048】
湾曲部32は、気筒の軸線2Lと直交する軸線方向において、湾曲外側面32bと気筒の軸線2Lとが最も離れた最大距離Lmaxに対して、気筒の軸線2Lと湾曲外側面32bの延びる方向の先端部32cとの距離Lが短くなるように湾曲している。ここで、気筒の軸線とは、気筒2A、2B、2C、2Dのうち、排気管8の近くに形成されている気筒2Bまたは気筒2Cの軸線2Lを基準とする。
【0049】
換言すれば、第1の排気管通路22の中心軸C1の延びる方向の中心付近を第1の中心点O1をとし、第1の中心点O1を上下方向に横切る仮想線を第1の仮想線L1とする。また、第1の排気管通路22の下流開口端22aを通る中心軸C1を上下方向に横切る仮想線を第2の仮想線L2とする。
【0050】
本実施例の排気管8は、第1の仮想線L1に対して第2の仮想線L2がシリンダヘッド3の側面3aに近づくように湾曲部32が湾曲されている。
図7図8において、触媒コンバータ9には排気センサ10が設けられており、排気センサ10は、排気ガス中の酸素量を検出する。図7において、排気センサ10は、第1の排気管通路22の下流開口端22aに対向し、かつ、仕切壁21側に設置されている。
【0051】
具体的には、湾曲外側面32bの裏側の湾曲内周面32dの先端部内周面32eを通り、第1の排気管通路22の下流側の中心軸C1に沿って延びる仮想線を第3の仮想線L3とする。また、シリンダブロック2の側面2aに対向する仕切壁21の下端部21aを通り、第2の排気管通路23の下流側の中心軸C2に沿って延びる仮想線を第4の仮想線L4とする。
【0052】
本実施例の排気センサ10は、第3の仮想線L3と第4の仮想線L4との間に設置されている。
仕切壁21は、排気フランジ部16から外方に直線状に延びる第1の仕切壁部21Aと、第1の仕切壁部21Aから下方に湾曲する第2の仕切壁部21Bと、第2の仕切壁部21Bから下方に直線状に延びる第3の仕切壁部21Cとを含んで構成されている。
【0053】
第2の仕切壁部21Bの板厚T2は、第1の仕切壁部21Aの板厚T1よりも大きく形成されており、第3の仕切壁部21Cの板厚T3は、第2の仕切壁部21Bの板厚T2よりも小さく形成されている。すなわち、仕切壁21は、上流側から下流側に向かって板厚が徐々に大きくなった後、下流側に向かうに従って板厚が徐々に小さく形成されている。
【0054】
第1の排気管通路22および第2の排気管通路23は、排気フランジ部16に接続される上流側に対して触媒コンバータ9に接続される下流側の開口面積が大きく形成されている。
【0055】
図4図5において、シリンダヘッド3の側面3aには第1のボス部35および第2のボス部36が形成されており、シリンダブロック2の側面2aには第3のボス部37が形成されている。本実施例の第1のボス部35および第2のボス部36は、本発明のボス部を構成する。
【0056】
図5において、第1のボス部35および第2のボス部36は、気筒の配列方向において、排気フランジ部16に隣接して設けられている。膨出部15は、エンジン1の高さ方向で第2の排気口14Bよりも上方に形成されており、第1のボス部35は、膨出部15とシリンダヘッド3の下端部3bと排気フランジ部16とによって囲まれた空間52に形成されている。
【0057】
排気フランジ部16は、膨出部15に連結されており、エンジン1の高さ方向において膨出部15よりも上方および下方に延びている。
【0058】
第2のボス部36は、エンジン1の高さ方向において膨出部15を挟んで第1のボス部35よりも上方に形成されており、シリンダヘッド3のケースフランジ部3Fに連結されている。
【0059】
第3のボス部37は、エンジン1の高さ方向において第2のボス部36と並ぶようにシリンダブロック2に形成されている。図5に示すように、第3のボス部37は、シリンダブロック2の高さ方向の中央部C3よりも上側に形成されている。
【0060】
第1のボス部35、第2のボス部36および第3のボス部37には図3に示すスタータジェネレータ(Integrated Starter Generator)41の取付用ブラケット42がボルト43によって締結されている(図9参照)。
【0061】
図9において、取付用ブラケット42にはボス部42Aが形成されており、ボス部42Aは、エンジン1の左右方向に延びている。
【0062】
図3において、スタータジェネレータ41には上側締結部41Aおよび下側締結部41Bが設けられている。上側締結部41Aは、スタータジェネレータ41の上部に設けられており、上側締結部41Aは、ボルト44Aによって取付用ブラケット42のボス部42Aに締結される。
【0063】
下側締結部41Bは、スタータジェネレータ41の下部に設けられており、下側締結部41Bは、ボルト44Bによってシリンダブロック2に締結される。
【0064】
これにより、スタータジェネレータ41は、気筒の配列方向(前後方向)で取付用ブラケット42が排気フランジ部16と隣り合うように、第1のボス部35および第2のボス部36を介してシリンダヘッド3の側面3aに取付けられる(図1参照)。本実施例のスタータジェネレータ41は、取付用ブラケット42を含んで構成されている。
【0065】
ボス部42Aとボルト44Aとの間には図示しない弾性体がクッションとして設けられており、スタータジェネレータ41の振動は、弾性体によって吸収される。
【0066】
図3において、スタータジェネレータ41は、モータプーリ45を備えており、モータプーリ45は、クランクシャフト2Sの右端部に取付けられたクランクプーリ46に伝動ベルト47を介して連結されている。
【0067】
図1において、スタータジェネレータ41の下部においてシリンダブロック2の側面2aには、エアコンコンプレッサ49が取付けられている。図3において、エアコンコンプレッサ49は、コンプレッサプーリ49Aを備えており、コンプレッサプーリ49Aは、伝動ベルト47によってクランクプーリ46に連結されている。
【0068】
スタータジェネレータ41は、電力が供給されることにより回転することで伝動ベルト47を介してエンジン1を回転駆動させる電動機の機能と、クランクシャフト2Sから伝動ベルト47を介して入力された回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
【0069】
エアコンコンプレッサ49は、伝動ベルト47を介してクランクシャフト2Sから伝達される動力によって駆動され、冷媒を圧縮して高圧にする。
【0070】
図1図3において、シリンダブロック2の側面2aにはテンショナ部材50が設けられている。テンショナ部材50は、テンションローラ50Aと、テンションローラ50Aを回転自在に支持するテンションブラケット50Bとを備えている。
【0071】
テンションローラ50Aは、伝動ベルト47に接触しており、伝動ベルト47に張力を与えている。テンションブラケット50Bは、ボルト51によってスタータジェネレータ41に締結されている。これにより、テンショナ部材50は、スタータジェネレータ41に安定して支持され、伝動ベルト47からの反力を受け止めて伝動ベルト47に張力を与えることができる。
【0072】
図1において、テンショナ部材50は、第3のボス部37とエアコンコンプレッサ49と触媒コンバータ9とチェーンケース5とによって囲まれた空間53で、かつ、エンジン1の高さ方向でスタータジェネレータ41とエアコンコンプレッサ49とで挟まれる位置に設置されている。
【0073】
シリンダブロック2の側面2aにはオートテンショナ54が設けられており、オートテンショナ54は、油圧等を利用して伝動ベルト47の張力を調整する。本実施例のスタータジェネレータ41は、本発明の補機、第1の補機および回転電機を構成し、エアコンコンプレッサ49は、本発明の第2の補機を構成する。
【0074】
図4図5において、シリンダヘッド3の側面3aには中子用のボス部38が形成されており、ボス部38は、シリンダヘッド3の図示しないウォータジャケットを形成する工程において、中子を抜くときに用いられる。ボス部38は、プラグ38Aによって閉止されており、プラグ38Aによってウォータジャケットからシリンダヘッド3の外部に冷却水が漏出することを防止できる。
【0075】
シリンダヘッド3の側面には第1のリブ55、第2のリブ56および第3のリブ57が形成されている。第1リブ55は、第1のボス部35と第2のボス部36とを連結しており、第1のリブ55は、膨出部15を横切るようにして膨出部15に連結されている。
【0076】
第2のリブ56は、膨出部15を横切るようにして第1のボス部35から上方で、かつ排気フランジ部16に向かって延びており、延びる方向の先端部がボス部38に連結されている。
【0077】
第3のリブ57は、第2のボス部36から排気フランジ部16に向かって横方向に延びており、延びる方向の先端部がボス部38に連結されている。これにより、第2のリブ56の延びる方向の先端部と第3のリブ57の延びる方向の先端部とは、ボス部38を介して連結されている。
【0078】
シリンダヘッド3の側面3aには第1のリブ55、第2のリブ56および第3のリブ57によって三角形状のリブ(以下、三角リブ58という)が形成され、三角リブ58は、膨出部15を介して排気フランジ部16に連結される。
【0079】
図1において、排気管8および触媒コンバータ9は、排気フランジ部16に対してスタータジェネレータ41から気筒の配列方向に離れるように設置されており、スタータジェネレータ41は、気筒の配列方向において排気管8および触媒コンバータ9とケースフランジ部2F、3F(図4参照)との間に設置されている。
【0080】
本実施例のエンジン1の排気構造によれば、エンジン1が、シリンダブロック2の上部に設けられ、内部に複数の気筒2A、2B、2C、2Dから排気ガスを排出する排気通路11が形成されたシリンダヘッド3と、気筒の配列方向に沿ったシリンダブロック2とシリンダヘッド3との側面2a、3aに設置された排気管8および触媒コンバータ9と、シリンダヘッド3の側面3aから外方に突出し、排気管8および触媒コンバータ9が接続される排気フランジ部16とを備えている。
【0081】
排気通路11は、気筒2A、2B、2C、2D毎に設けられ、気筒2A、2B、2C、2Dから排出される排気ガスが流れる排気通路部12A、12B、12C、12Dと、排気通路部12A、12B、12C、12Dの下流側において排気フランジ部16に設けられ、排気通路部12A、12B、12C、12Dをそれぞれの気筒2A、2B、2C、2D毎に集合させる排気集合部13A、13Bとを備えている。
【0082】
さらに、排気通路11は、排気集合部13A、13Bにそれぞれ連通して排気フランジ部16に開口し、排気集合部13A、13Bを流れる排気ガスをシリンダヘッド3の外部に排出する第1の排気口14Aおよび第2の排気口14Bを備えている。
【0083】
排気管8は、仕切壁21によって仕切られ、排気通路11の第1の排気口14Aから排出される排気ガスが流れる第1の排気管通路22と、第2の排気口14Bから排出される排気ガスが流れる第2の排気管通路23とを有し、仕切壁21の板厚は、排気ガスの流れる方向の下流側に向かうに従って徐々に小さく形成されている。
【0084】
このように、1つの排気管8の内部を、仕切壁21によって2つの第1の排気管通路22と第2の排気管通路23とに仕切ることで、第1の排気管通路22と第2の排気管通路23とを近接して設けることができる。このため、排気管8の小型化を図ることができる上に、排気管8と排気フランジ部16との接続部の構成を簡素化、かつ、小型化できる。
【0085】
このため、排気管8の小型化を図ることができる上に、排気管8と排気フランジ部16との接続部の構成を簡素化、かつ、小型化できる。これにより、排気管8の周囲のスタータジェネレータ41や図示しない車載部品の設置の自由度を容易に向上できる。
【0086】
さらに、仕切壁21の板厚は、排気ガスの流れる方向の下流側に向かうに従って徐々に小さく形成されているので、排気管8の下流側を大きくすることなく、第1の排気管通路22と第2の排気管通路23との開口面積を大きくできる。このため、第1の排気管通路22および第2の排気管通路23を流れる排気ガスを排気管8の下流側に設けられた触媒コンバータ9に向けて滑らかに流すことができる。
【0087】
ここで、第1の排気口14Aおよび第2の排気口14Bから排出される排気ガスの勢いによって第1の排気管通路22および第2の排気管通路23を流れる排気ガスは、湾曲外側面32bに偏って流れて触媒コンバータ9に排出される。
【0088】
このため、触媒コンバータ9を流れる排気ガスは、シリンダブロック2の側面2aから離れた外方に偏り、触媒コンバータ9の内部に設けられた触媒の特定の部位に排気ガスが集中して流れ、触媒が早期に劣化するおそれがある。
【0089】
これに対して、本実施例のエンジン1の排気構造によれば、第1の排気口14Aに対して第2の排気口14Bが下方に形成されている。排気管8は、排気フランジ部16から外方に直線状に延びる直線部31と、直線部31から下方に湾曲し、シリンダブロック2の側面2aに対向する湾曲内側面32aとシリンダブロック2の側面2aと反対側に位置する湾曲外側面32bとを有する湾曲部32とを備えている。
【0090】
湾曲部32は、気筒の軸線2Lと直交する軸線方向において、湾曲外側面32bと気筒2Aの軸線2Lとが最も離れた最大距離Lmaxに対して、気筒の軸線2Lと湾曲外側面32bの延びる方向の先端部32cとの距離Lが短くなるように湾曲している。
【0091】
これにより、排気管8の先端部32cを、排気管8の上流側の湾曲外側面32bよりもシリンダブロック2の側面2aに近づけて設置することができ、触媒コンバータ9に排出される排気ガスが、シリンダブロック2の側面2aから離れた外方に偏ることを防止できる。このため、触媒コンバータ9の内部に設けられた触媒に対して広範囲に排気ガスを流すことができる。したがって、触媒が早期に劣化することを防止できる。
【0092】
また、本実施例のエンジン1の排気構造によれば、触媒コンバータ9に、排気ガス中の酸素量を検出する排気センサ10が設けられている。第1の排気管通路22は、第2の排気管通路23に対して上方でかつ、第2の排気管通路23に対してシリンダヘッド3の側面3aから外方に離れて形成されており、排気センサ10が、第1の排気管通路22の下流開口端22aに対向し、かつ、仕切壁21側に設置されている。
【0093】
これにより、第1の排気管通路22と第2の排気管通路23とを流れる排気ガスの両方を確実に検出できる位置に排気センサ10を設置できる。このため、第1の排気管通路22および第2の排気管通路23を流れる排気ガス中の酸素濃度を適切に検出することができ、エンジン1の空燃比制御の精度を向上できる。
【0094】
また、本実施例のエンジン1の排気構造によれば、仕切壁21が、排気フランジ部16から外方に直線状に延びる第1の仕切壁部21Aと、第の仕切壁部21Aから下方に湾曲する第2の仕切壁部21Bと、第2の仕切壁部21Bから下方に直線状に延びる第3の仕切壁部21Cとを含んで構成されている。
【0095】
さらに、第2の仕切壁部21Bの板厚T2が、第1の仕切壁部21Aの板厚T1よりも大きく形成されており、第3の仕切壁部21Cの板厚T3が、第2の仕切壁部21Bの板厚T2よりも小さく形成されている。
【0096】
これにより、それぞれ厚みの大きい第1の仕切壁部21Aおよび第2の仕切壁部21Bと直線部31および湾曲部32の上流側とによって囲まれる第1の排気管通路22および第2の排気管通路23の上流側の開口面積を、厚みの小さい第3の仕切壁部21Cと湾曲部32の下流側とによって囲まれる第1の排気管通路22および第2の排気管通路23の下流側の開口面積よりも小さくできる。
【0097】
このため、第1の排気管通路22および第2の排気管通路23の上流側を流れる排気ガスの流速を速くし、第1の排気管通路22および第2の排気管通路23の下流側を流れる排気ガスを触媒コンバータ9のシリンダブロック2の側面2aから離れた外方に偏ることなく、触媒コンバータ9に滑らかに導入することができる。
【0098】
また、第1の排気管通路22および第2の排気管通路23の上流側を板厚T2が最も大きい第2の仕切壁部21Bによって仕切るので、第1の排気管通路22および第2の排気管通路23の上流側を離すことができる。これにより、第1の排気管通路22および第2の排気管通路23を流れる排気ガスの熱量が増大することを防止でき、排気管8の温度が過度に上昇することを防止できる。
【0099】
また、第1の排気管通路22および第2の排気管通路23は、排気フランジ部16に接続される上流側に対して触媒コンバータ9に接続される下流側の開口面積が大きく形成されている。
【0100】
これにより、第1の排気管通路22および第2の排気管通路23の上流側を流れる排気ガスの流速に対して、第1の排気管通路22および第2の排気管通路23の下流側を流れる排気ガスの流速を低下させることができる。
【0101】
このため、排気管8から触媒コンバータ9に排気ガスを拡散して導入でき、触媒コンバータ9の内部に設けられた触媒に対して広範囲に排気ガスを流すことができる。したがって、触媒が早期に劣化することをより効果的に防止できる。
【0102】
なお、第1の排気管通路22および第2の排気管通路23のいずれか一方の上流側の開口面積が下流側の開口面積よりも大きく形成されてもよい。
【0103】
また、本実施例のエンジン1の排気構造においては、図10に示すように、仕切壁21に、第1の仕切壁部21Aから第2の仕切壁部21Bに亙って貫通孔21hを形成してもよい。
【0104】
このようにすれば、排気管8の温度が過度に上昇することを防止できる。具体的には、第1の仕切壁部21Aは、第1の排気口14Aおよび第2の排気口14Bに近く、排気管8の中で最も高温の排気ガスに晒される部位である。
【0105】
また、第2の仕切壁部21Bは、湾曲しているので、第1の排気口14Aおよび第2の排気口14Bから排出された排気ガスの流速が高くなる部位であり、排気ガスの熱の伝達効率が高くなる部位である。
【0106】
したがって、第1の仕切壁部21Aおよび第2の仕切壁部21Bは、仕切壁21の中でも最も温度が高くなる部位であり、仕切壁21が高温となることで結果的に排気管8の温度が過度に上昇する。
【0107】
本実施例の仕切壁21は、第1の仕切壁部21Aから第2の仕切壁部21Bに亙って貫通孔21hが設けられているので、第1の仕切壁部21Aおよび第2の仕切壁部21Bの板厚を小さくできる。
【0108】
このため、第1の仕切壁部21Aおよび第2の仕切壁部21Bを、エンジンルームに取り入れられる走行風で容易に冷却することができる。換言すれば、第1の仕切壁部21Aおよび第2の仕切壁部21Bから容易に放熱を行うことができ、結果的に排気管8の温度が過度に上昇することを防止できる。
【0109】
また、排気管8の温度が過度に上昇することを防止できるので、排気管8の周囲に車載部品を近づけて設置することができ、エンジン1やエンジン1の周囲の車載部品の設置スペースを少なくすることができる。このため、車両の小型化を図ることや、空いたスペースを有効利用することができる。
【0110】
また、第1の仕切壁部21Aに形成される貫通孔21hの開口面積に対して第2の仕切壁部21Bに形成される貫通孔21hの開口面積を大きく形成してもよい。
【0111】
このようにすれば、仕切壁21の中で板厚が最も大きく、かつ、湾曲している第2の仕切壁部21Bに熱が集中することを防止できる。具体的には、第2の仕切壁部21Bは、板厚T2が最も大きく、かつ、湾曲しているので、第1の排気口14Aおよび第2の排気口14Bから排出された排気ガスの流速が高くなる部位であり、しかも厚みを有する分だけ熱が集中する。
【0112】
このため、仕切壁21を境にして第1の排気管通路22と第2の排気管通路23との間で高温の熱が伝達され、排気管8がより一層高温となるおそれがある。
【0113】
本実施例の仕切壁21は、第1の仕切壁部21Aに形成される貫通孔21hの開口面積に対して第2の仕切壁部21Bに形成される貫通孔21hの開口面積を大きく形成しているので、第2の仕切壁部21Bの板厚を小さくすることができる。このため、第2の仕切壁部21Bを、エンジンルームに取り入れられる走行風で容易に冷却することができ、排気管8の温度が過度に上昇することをより効果的に防止できる。
【0114】
なお、本実施例のエンジン1は、4気筒エンジンであるが、これに限定されるものではない。また、排気口が第1の排気口14A、第2の排気口14Bから構成されているが、5気筒以上であれば、排気口を3つ以上設け、それに応じて排気通路部、排気集合部を2つ以上から構成してもよい。
【0115】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0116】
1...エンジン(内燃機関)、2...シリンダブロック、2A,2B,2C,2D...気筒、2L...軸線(気筒の軸線)、2a...側面(シリンダブロックの側面)、3...シリンダヘッド、3a...側面(シリンダヘッドの側面)、8...排気管、9...触媒コンバータ、10...排気センサ、11...排気通路、12A,12B,12C,12D...排気通路部、13A,13B...排気集合部、14A...第1の排気口、14B...第2の排気口、16...排気フランジ部、21...仕切壁、21A...第1の仕切壁部、21B...第2の仕切壁部、21C...第3の仕切壁部、21h...貫通孔、22...第1の排気管通路、22a...下流開口端(第1の排気管通路の下流開口端)、23...第2の排気管通路、31...直線部、32...湾曲部、32a...湾曲内側面、32b...湾曲外側面、32c...先端部(湾曲外側面32bの延びる方向の先端部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10