(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、これらの成形方法によって成形されるガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体に求められる特性向上の要求は、近年増加している。
ここで、例えば単に、ガラスストランドを構成するガラス単繊維の繊維径を太くしても、ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の曲げ強度と曲げ弾性率の向上を図ることは、これらが相反する特性であるため困難である。
また、成形されたガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の表面近傍にガラスストランドが存在すると、当該表面にガラス単繊維による凹凸が発生し易いところ、ガラス単繊維の繊維径を太くすれば、増々大きな凹凸が発生し易くなる。
その結果、特に意匠性の要求が高いガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体においては、例えば、ガラスチョップドストランドマットやガラスペーパーなどに熱硬化性樹脂を含浸させたものをガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の表面に貼り付けて、別途意匠性を高めることが必要となり、製造コストの増加を招く要因ともなり得る。
【0006】
本発明は、以上に示した現状の問題点を鑑みてなされたものであり、適度な曲げ弾性率を確保しつつ曲げ強度の向上を図るとともに、外観性に優れたガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体、及び当該ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、本発明に係るガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体は、熱硬化性樹脂と、前記熱硬化性樹脂中に内在されるガラスストランドと、を備えるガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体であって、前記ガラスストランドは複数のガラス単繊維からなり、前記複数のガラス単繊維の平均繊維径は5μm以上11μm以下であり、且つ、前記複数のガラス単繊維の本数は4000本以上10000本以下であることを特徴とする。
【0009】
このような構成からなる本発明によれば、例えば同じ番手の従来のガラスストランドと比べて、ガラス単繊維の平均繊維径は小さくなり、また束ねる本数も多くなることから、ガラスストランド全体の表面積(外周面)が増加し、熱硬化性樹脂との結着可能な面積が増加する。
その結果、適度な曲げ弾性率を確保しつつ曲げ強度の向上を図ることができる。
また、本発明によれば、ガラスストランドの表面に現れるガラス単繊維の繊維径は、例えば同じ番手の従来のものに比べて小さくなることから、成形されたガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の表面上に凹凸が発生し難く、当該ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の外観の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係るガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体においては、前記ガラスストランドを複数備えてなることとしてもよい。
【0011】
このような構成からなる本発明によれば、より曲げ強度の高いガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体を提供することができる。
【0012】
また、本発明に係るガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の製造方法は、複数のガラス単繊維を集束して形成されたガラスストランドを、未硬化(液体状態)の熱硬化性樹脂に含浸させて樹脂含浸ガラスストランドを形成する含浸工程と、前記樹脂含浸ガラスストランドを加熱硬化してガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体を得る加熱工程と、を備えるガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の製造方法であって、前記複数のガラス単繊維の平均繊維径は5μm以上11μm以下であり、且つ、前記複数のガラス単繊維の本数は4000本以上10000本以下であることを特徴とする。
【0013】
このような構成からなる本発明によれば、例えば同じ番手の従来のガラスストランド(樹脂含浸ガラスストランド)と比べて、ガラス単繊維の平均繊維径は小さくなり、また束ねる本数も多くなることから、ガラスストランド全体の表面積(外周面)が増加し、熱硬化性樹脂との結着可能な面積が増加する。
その結果、適度な曲げ弾性率を確保しつつ曲げ強度の向上を図ることができる。
また、本発明によれば、ガラスストランド(樹脂含浸ガラスストランド)の表面に現れるガラス単繊維の繊維径は、例えば同じ番手の従来のものに比べて小さくなることから、成形されたガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の表面上に凹凸が発生し難く、当該ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の外観の向上を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係るガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の製造方法において、前記樹脂含浸ガラスストランドは、複数の前記ガラスストランドを備えてなることとしてもよい。
【0015】
このような構成からなる本発明によれば、より曲げ強度の高いガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体を提供することができる。
【0016】
また、本発明に係るガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の製造方法において、前記樹脂含浸ガラスストランドは、前記ガラス単繊維の平均繊維径がR1である第1のガラスストランドと、前記ガラス単繊維の平均繊維径が、前記第1のガラスストランドを構成するガラス単繊維の平均繊維径R1よりも平均繊維径の小さいR2である第2のガラスストランドと、を備えてなり、前記加熱工程において、繊維径の小さなガラス単繊維からなる前記第2のガラスストランドを表面に配置した状態にて加熱硬化することが好ましい。
【0017】
このような構成からなる本発明によれば、平均繊維径の小さいガラスストランドが表面に配置されるため、成形されたガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の表面上に発生し得る凹凸をより効果的に抑制することができる。
加えて、表面以外は、表面に配置されるガラスストランドと比較して繊維径の大きなガラスストランドにより構成されるため、適度な曲げ弾性率を確保しつつ曲げ強度の向上を図ることができる。即ち、表面に配置されるガラスストランドと、表面以外のガラスストランドの平均繊維径が異なることにより、外観と、曲げ弾性率、曲げ強度の両立を図ることができる。
【0018】
また、本発明に係るガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の製造方法において、前記ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体は、引抜成形法またはフィラメントワインディング法の何れかの方法により成形されることを特徴とする。
【0019】
即ち、引抜成形法及びフィラメントワインディング法による成形方法は、FRPに関する種々の成形方法の中でも、強化繊維として設けられるガラスストランドの機械的特性を最も有効に利用できる成形方法であり、ガラス含有率が高く、最も機械的強度の高い樹脂成形体が得られる成形方法として知られているところ、このような成形方法を用いる場合であっても、本発明によれば、十分な効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係るガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体、及び当該ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の製造方法によれば、適度な曲げ弾性率を確保しつつ曲げ強度の向上を図るとともに、外観性に優れたガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体、及び当該ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態について、
図1乃至
図4を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、
図4中に示した矢印の方向によって、イーブン試験装置100の上下方向及び左右方向を規定して記述する。
【0023】
[ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体1の構成]
先ず、本発明を具現化するガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体1(以下、単に「樹脂成形体1」と記載する)の構成について、
図1及び
図4を用いて説明する。
なお、以下の説明においては、主に中実の丸棒形状の樹脂成形体1について記載するが、当該樹脂成形体1の形状についてはこれに限定されるものではなく、例えば中実の他の断面形状からなるもの(例えば、平板部材など)や、中空の管形状のものや、底部を有する筒型形状のものなど、何れの形状であってもよい。
【0024】
本実施形態における樹脂成形体1は、FRPを素材とする成形品であって、
図1に示すように、主に熱硬化性樹脂2と、当該熱硬化性樹脂2中に内在されるガラスストランド3とを備える。
言い換えれば、熱硬化性樹脂2は、ガラスストランド3の表面だけでなく、それらの間隔に充填された状態で存在する。
【0025】
熱硬化性樹脂2の種類については、特に限定されることはなく、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、及びメラミン樹脂などが挙げられ、樹脂成形体1の成形方法や使用用途に応じて適宜選択される。
【0026】
ガラスストランド3は、集束された複数のガラス単繊維3a・3a・・・により構成され、熱硬化性樹脂2の機械的特性(例えば、曲げ強度や曲げ弾性率など)を強化するための強化繊維として樹脂成形体1に内在している。
ここで、ガラス単繊維3aを構成するガラスとしては、Eガラス、ARガラス、Cガラス、Dガラス、及びSガラスなど、何れの種類のものを用いてもよい。
但し、Eガラスは安価であり、且つ比較的機械的強度に優れた樹脂成形体1を得やすいために好ましい。また、Sガラスは、Eガラスに比べてより一層機械的強度に優れた樹脂成形体1を得やすいために好ましい。
【0027】
ガラス単繊維3aは、後述するように、溶融されたガラス素材をブッシング10のノズル10a(
図2を参照)より連続的に引出して繊維状に成形してなるものであり、その平均繊維径は5μm以上11μm以下に設定されている。
また、ガラスストランド3を構成する複数のガラス単繊維3a・3a・・・の本数は、4000本以上10000本以下に設定されている。
【0028】
ここで、ガラス単繊維3aの平均繊維径が5μm未満である場合、当該ガラス単繊維3aを安定して成形することは困難である。また、ガラス単繊維3aの平均繊維径が5μm未満であると、ガラス単繊維3aが折れやすくなり、曲げ強度の向上を図ることは困難である。
さらに、ガラス単繊維3aの平均繊維径が11μmを超える場合、成形後の樹脂成形体1の表面近傍にガラス単繊維3aが存在することによって、当該表面にガラス単繊維3aによる凹凸が発生し易く、樹脂成形体1の外観が低下する。また、ガラス単繊維3aの平均繊維径が11μmを超える場合、樹脂成形体1の曲げ弾性率が低下する。
【0029】
一方、集束されるガラス単繊維3a・3a・・・の本数が4000本未満である場合、ガラス単繊維3aの本数不足により、適度な曲げ弾性率を確保しつつ曲げ強度の向上を図ることは困難である。また、集束されるガラス単繊維3a・3a・・・の本数が10000本を超える場合、当該ガラス単繊維3aを紡糸するのに用いられるブッシング10(
図2を参照)が大掛かりなものとなり、設備コストが嵩むため望ましくない。
【0030】
このようなことから、本実施形態においては、ガラスストランド3を構成する複数のガラス単繊維3a・3a・・・の平均繊維径を5μm以上11μm以下に設定するとともに、集束される複数のガラス単繊維3a・3a・・・の本数を4000本以上10000本以下に設定することとしている。
これにより、例えば同じ番手の従来のガラスストランドを用いた場合と比べて、ガラス単繊維3aの平均繊維径は小さくなり、また束ねる本数も多くなることから、ガラス単繊維3a・3a・・・全体の表面積(外周面)が増加し、熱硬化性樹脂2との結着可能な面積が増加する。
その結果、適度な曲げ弾性率を確保しつつ曲げ強度の向上を図ることができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、ガラスストランド3の表面に現れるガラス単繊維3aの平均繊維径は、例えば同じ番手の従来のものに比べて小さくなることから、成形された樹脂成形体1の表面上に凹凸が発生し難く、当該樹脂成形体1の外観の向上を図ることができる。
【0032】
なお、複数のガラス単繊維3a・3a・・・については、平均繊維径が7μm以上9μm以下であり、且つ、本数が5000本以上7000本以下であることが好ましい。
より具体的には、複数のガラス単繊維3a・3a・・・については、平均繊維径が7μm以上8μm以下であり、且つ、本数が5500本以上6500本以下であることがより好ましい。
【0033】
ところで、樹脂成形体1に用いられるガラスストランド3は、イーブンの試験においてガラス単繊維3aの垂下り量が40mm以下の値を示すものが好ましい。
【0034】
ここで、イーブンの試験方法について、
図4を用いて説明する。
先ず、試験対象となるガラスストランド3を2.0m〜2.2m程度の長さに切断し、イーブン試験装置100にセットする。
【0035】
具体的には、
図4(a)に示すように、イーブン試験装置100には、2mの間隔(
図4(a)中の寸法D)を有して水平方向(本実施形態においては、左右方向)に互いに対向する一対の支持部材101・102が備えられており、これらの支持部材101・102によって、切断されたガラスストランド3の両端部を各々支持することにより、当該ガラスストランド3を水平方向に延出した状態にて保持する。
なお、支持部材101・102によってガラスストランド3の両端部を支持する際は、例えば接着剤等を用いて各々堅固に固定される。
【0036】
次に、
図4(b)に示すように、支持部材101・102によって保持されたガラスストランド3を解繊(モノフィラメント化)し、一本毎のガラス単繊維3a・3a・・・を露呈させた後、一対の支持部材101・102におけるガラスストランド3の両端部が各々固定された位置同士を結んだ仮想直線(
図4(b)中の直線La)を基準として、ガラス単繊維3aの水平方向中央部における垂下り量を測定する。
【0037】
具体的には、支持部材101・102によって保持されたガラスストランド3を、例えば人手によって全体的に揉み解し、目視によって完全に解されたことを確認したうえで1回目のガラス単繊維3aの垂下り量を測定する。
【0038】
ここで、「垂下り量」とは、ガラス単繊維3aの水平方向中央部における、水平方向に対して直交する垂直方向(本実施形態においては、下方向)への変位量を意味する。
また、ガラス単繊維3aの水平方向中央部は、一対の支持部材101・102間の水平方向中央部に該当し、この部分において、ガラス単繊維3aの垂下り量は最大値となる。
なお、ガラス単繊維3aの垂下り量は、複数存在するガラス単繊維3a・3a・・・のうちで、最も変位量の大きなガラス単繊維3aの垂下り量にて規定するものとする。
【0039】
1回目の測定を終了した後、再び人手によってガラスストランド3を揉み解し、目視によって完全に解されたことを確認したうえで2回目のガラス単繊維3aの垂下り量を測定する。
そして、1回目の測定値と2回目の測定値とを比較し、両者の測定値が同じであれば、当該測定値をガラス単繊維3aの垂下り量(
図4(b)中の寸法X)として判断する。
【0040】
一方、1回目の測定値と2回目の測定値とを比較した結果、両者の測定値が異なる場合は、再び人手によってガラスストランド3を揉み解し、目視によって完全に解されたことを確認したうえで3回目のガラス単繊維3aの垂下り量を測定する。
こうして、垂下り量の測定値が前回の測定値と同じ値になるまで、一連の作業は繰り返され、最後に測定された垂下り量をガラス単繊維3aの垂下り量(寸法X)として判断する。
【0041】
以上のような手順によって行われるイーブンの試験において、前述したように、40mm以下の垂下り量となるガラス単繊維3aから構成されたガラスストランド3を用いることが、樹脂成形体1にとって好ましい。
具体的には、20mm以上35mm以下の垂下り量となるガラス単繊維3aから構成されたガラスストランド3を用いることが、樹脂成形体1にとってより好ましい。
【0042】
このような、ガラス単繊維3aの垂下り量が40mm以下である場合においては、各々のガラス単繊維3a・3a・・・の長さをより一層揃えやすいため、熱硬化性樹脂と複合化して樹脂成形体1を製造する際に、ガラスストランド3の断線をより効果的に抑制することができる。
【0043】
[ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体(樹脂成形体)1の製造方法]
次に、本実施形態におけるガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体1(樹脂成形体1)の製造方法について、
図2を用いて説明する。
【0044】
先ず、前工程において、白金製のブッシング10の底部に設けられた複数(4000〜10000個)のノズル10a・10a・・・を介して、溶融されたガラス素材(溶融ガラス)が連続的に引出され、繊維状の複数の平均繊維径が5μm以上11μm以下のガラス単繊維3a・3a・・・が成形される。
成形された複数のガラス単繊維3a・3a・・・は、その後集束剤を塗布され、集束ローラー11を介して一本のガラスストランド3に集束される。
【0045】
そして、集束された複数のガラス単繊維3a・3a・・・(ガラスストランド3)は、図示せぬコレット等によってロール状に巻き取られ、これによりロービング巻回体4が形成される。
【0046】
形成されたロービング巻回体4は、次工程である成形工程S100に送られる。
成形工程S100は、引抜成形法を用いた製造工程であり、主に経時的に順に配置される含浸工程S101、加熱工程S102、及び切断工程S103などにより構成される。
【0047】
そして、加熱工程S102と切断工程S103との間には引抜装置40が配設されており、後述するように、当該引抜装置40によって加熱硬化された樹脂成形体1を引抜くことにより、ロービング巻回体4よりガラスストランド3が引出され、その後、樹脂収容槽20、引抜金型30、引抜装置40、切断装置50と順に当該ガラスストランド3が搬送されることとなり、最終製品としての樹脂成形体1Aが形成される。
【0048】
なお、本実施形態の樹脂成形体1のような、中実形状のものにかわり、例えば管形状や筒型形状等からなる樹脂成形体(図示せず)を成形する場合においては、後述するようなフィラメントワインディング法を用いた成形工程S200によって成形されることとなる。
【0049】
含浸工程S101は、連続する複数の平均繊維径が5μm以上11μm以下のガラス単繊維3a・3a・・・を4000〜10000本集束して形成された1本のガラスストランド3を、未硬化(液体状態)の熱硬化性樹脂2(以下、「熱硬化性樹脂2A」と記載)に含浸させて樹脂含浸ガラスストランド5を形成する工程である。
含浸工程S101には、未硬化の熱硬化性樹脂2Aが貯溜された樹脂収容槽20が設けられている。
【0050】
樹脂収容槽20内に貯溜される熱硬化性樹脂2Aには、硬化剤や離型剤等が含有されていてもよく、また、硬化促進剤、反応性希釈剤、着色剤、充填剤、増粘剤及び低収縮剤などが含有されていてもよい。
【0051】
そして、成形工程S100に送られたロービング巻回体4は、先ず含浸工程S101において解舒され、当該ロービング巻回体4より連続する一本のガラスストランド3が引出される。
ロービング巻回体4より引出されたガラスストランド3は、樹脂収容槽20内に導かれ、未硬化の熱硬化性樹脂2A内を通過しながら浸漬され、その後、再び当該樹脂収容槽20の外部へと引出される。
これにより、ガラスストランド3には未硬化の熱硬化性樹脂2Aが含浸され、樹脂含浸ガラスストランド5が形成される。
【0052】
樹脂収容槽20の外部に引出された樹脂含浸ガラスストランド5は、続いて加熱工程S102へと導かれる。
加熱工程S102は、樹脂含浸ガラスストランド5を加熱硬化して樹脂成形体1を得る工程である。
加熱工程S102には、貫通通路30aを有した引抜金型30が設けられている。
【0053】
引抜金型30には図示せぬ加熱ヒーターが備えられており、当該加熱ヒーターによって、引抜金型30は、常時所定の加熱温度にて維持された状態となっている。
また、貫通通路30aの断面形状は、最終的に得られる樹脂成形体1の形状等に基づき設定されており、例えば本実施形態においては、円形状に設定されている。
なお、貫通通路30aの内周面には、流動パラフィン、溶剤系ワックス、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール溶液などの離型剤が塗布されていてもよい。
【0054】
ここで、前述したように、加熱工程S102と切断工程S103との間には引抜装置40が配設されており、当該引抜装置40は、例えば上下方向に対向して配置される一対の無端状コンベア41・41などにより構成される。
【0055】
そして、樹脂収容槽20より引出された樹脂含浸ガラスストランド5は、一対の無端状コンベア41・41に挟持された状態にて引抜装置40によって引抜かれることにより、引抜金型30へと導かれ、貫通通路30a内を通過した後、再び当該引抜金型30の外部へと引出される。
これにより、樹脂含浸ガラスストランド5は、貫通通路30aの断面形状に外形を規制されつつ、加熱硬化されることとなり、連続する樹脂成形体1が成形される。
【0056】
引抜金型30の外部に引出された樹脂成形体1は、続いて切断工程S103へと導かれる。
切断工程S103は、成形された樹脂成形体1を、最終製品として所定の長さに切断する工程である。
切断工程S103には、例えば円盤形状のブレード51や、軸心を中心にして当該ブレード51を回転駆動させる駆動モータ52などからなる切断装置50が設けられている。
【0057】
そして、引抜金型30より引出され、引抜装置40を通過した樹脂成形体1は、高速回転する切断装置50のブレード51によって所定の位置にて切断される。
これにより、最終製品である所定長さの長尺の樹脂成形体1Aが得られ、成形工程S100は終了する。
【0058】
[別実施形態におけるガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体201の構成]
次に、別実施形態におけるガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体(以下、単に「樹脂成形体201」と記載する)の構成について、
図3を用いて説明する。
別実施形態における樹脂成形体201は、前述した樹脂成形体1と一部同等な構成を有する一方、ガラスストランド203の構成において、樹脂成形体1と大きく相違する。
よって、以下の説明においては、主に樹脂成形体1との相違点について記載し、当該樹脂成形体1と同等な構成についての記載は省略する。
【0059】
なお、以下の説明においては、主に中空の管形状の樹脂成形体201について記載するが、当該樹脂成形体201の形状についてはこれに限定されるものではなく、例えば中実の丸棒形状のものや、底部を有する筒型形状のものなど、何れの形状であってもよい。
【0060】
樹脂成形体201は、主にマトリックス樹脂(樹脂母材)の熱硬化性樹脂202と、当該熱硬化性樹脂202中に内在する複数本のガラスストランド203とを備える。
ここで、使用される複数本のガラスストランド203は、ガラス単繊維の平均繊維径が異なる複数種類のガラスストランドからなり、例えば本実施形態においては、平均繊維径がR1である第1ガラスストランド203Aと、当該第1ガラスストランド203Aを構成するガラス単繊維と比べて、少なくとも平均繊維径の小さな平均繊維径R2であるガラス単繊維からなる第2ガラスストランド203Bとの2種類のガラスストランド203A・203Bによって構成されている。
【0061】
そして、これら複数種類(本実施形態においては2種類)のガラスストランド203・203は、平均繊維径の大きなガラス単繊維からなる第1ガラスストランド203Aを、樹脂成形体201の断面視中央側に配置するとともに、平均繊維径の小さなガラス単繊維からなる第2ガラスストランド203Bを、第1ガラスストランド203Aの外側、即ち、樹脂成形体201の表面に配置した状態によって、当該樹脂成形体201中に内在される。
【0062】
このような構成を有することにより、平均繊維径の小さいガラスストランドが表面に配置されるため、成形される樹脂成形体201の表面上に発生し得る凹凸をより効果的に抑制することができる。
加えて、表面以外は、表面に配置されるガラスストランドと比較して繊維径の大きなガラスストランドにより構成されるため、適度な曲げ弾性率を確保しつつ曲げ強度の向上を図ることができる。即ち、表面に配置されるガラスストランドと、表面以外のガラスストランドの平均繊維径が異なることにより、外観と、曲げ弾性率、曲げ強度の両立を図ることができる。
【0063】
なお、本実施形態においては、それぞれガラス単繊維の平均繊維径が異なる2種類のガラスストランド203A・203Bを用いることとしているが、これに限定されることはなく、例えば平均繊維径だけでなく、集束される本数も異なることとしてもよい。
また、平均繊維径の最も大きなガラス単繊維からなるガラスストランド203が、樹脂成形体201の表面に配置されない限りにおいて、ガラスストランド203の種類を3種類以上としてもよい。
具体的には、例えば異なる3種類の平均繊維径のガラスストランドを用いた場合、平均繊維径の最も小さなガラス単繊維からなるガラスストランドが、樹脂成形体の表面に配置されるようにする。
【0064】
但し、全てのガラスストランド203A・203Bにおいて、ガラス単繊維の平均繊維径が5μm以上11μm以下であり、且つ、ガラス単繊維の本数が4000本以上10000本以下であることは言うまでもない。
【0065】
[別実施形態におけるガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体(樹脂成形体)201の製造方法]
次に、別実施形態におけるガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体(樹脂成形体)201の製造方法について、
図3を用いて説明する。
先ず、前述した樹脂成形体1の製造方法と同様に、前工程において、ブッシング210のノズル210a・210a・・・を介して繊維状に引出された複数のガラス単繊維203a・203a・・・が、集束ローラー211によって一本のガラスストランド203に集束され、その後図示せぬコレット等によってロール状に巻き取られることにより、ロービング巻回体204が形成される。
【0066】
ここで、本実施形態においては、ガラス単繊維203aの平均繊維径の異なる複数種類(本実施形態においては、2種類)のガラスストランド203、即ち第1ガラスストランド203A及び第2ガラスストランド203Bが用いられる。
よって、前工程においては、第1ガラスストランド203Aが巻き取られてなる第1ロービング巻回体204A、及び第2ガラスストランド203Bが巻き取られてなる第2ロービング巻回体204Bが、各々形成される。
【0067】
形成されたこれら2種類のロービング巻回体204A・204Bは、次工程である成形工程S200に送られる。
成形工程S200は、フィラメントワインディング法を用いた製造工程であり、主に経時的に順に配置される含浸工程S201、巻付け工程S202、加熱工程S203、及び脱型工程S204などにより構成される。
【0068】
そして、後述するように、巻付け工程S202において、樹脂含浸ガラスストランド205をマンドレル231に巻付けることにより、ロービング巻回体204よりガラスストランド203が引出され、その後、樹脂収容槽220、巻取装置230と順に当該ガラスストランド203が搬送されることとなり、最終製品としての樹脂成形体201Aが形成される。
【0069】
なお、本実施形態の樹脂成形体201のような、中空の管形状のものにかわり、例えば中実の丸棒形状などからなる樹脂成形体(図示せず)を成形する場合においては、前述したような引抜成形法を用いた成形工程S100によって成形されることとなる。
【0070】
含浸工程S201は、前述した成形工程S100の含浸工程S101と略同等な内容からなる工程である一方、2種類のロービング巻回体204(第1ロービング巻回体204A及び第2ロービング巻回体204B)を用いる点において、前記含浸工程S101と相違する。
よって、以下の説明においては、主に含浸工程S101との相違点について記載し、当該含浸工程S101と同等な内容についての記載は省略する。
【0071】
成形工程S200に送られた2種類の第1ロービング巻回体204A及び第2ロービング巻回体204Bは、先ず含浸工程S201において各々解舒され、これらの第1ロービング巻回体204A及び第2ロービング巻回体204Bより連続する一本のガラスストランド203(第1ガラスストランド203A及び第2ガラスストランド203B)が各々引出される。
【0072】
そして、第2ロービング巻回体204Bより引出された、平均繊維径の小さなガラス単繊維からなる第2ガラスストランド203Bの終端部(引出方向側の端部)は、第1ロービング巻回体204Aにおける未だ巻き取られた状態にある第1ガラスストランド203Aの始端部(終端部と反対側の端部)と連結される。
その後、第1ロービング巻回体204Aより引出された第1ガラスストランド203Aは、樹脂収容槽220内に導かれる。
【0073】
樹脂収容槽220内に導かれた第1ガラスストランド203Aは、未硬化の熱硬化性樹脂202(以下、「熱硬化性樹脂202A」と記載)内を通過しながら浸漬され、その後、再び当該樹脂収容槽220の外部へと引出される。
これにより、第1ガラスストランド203Aには未硬化の熱硬化性樹脂202Aが含浸され、樹脂含浸ガラスストランド205が形成される。
【0074】
なお、樹脂成形体201の成形が進み、第1ガラスストランド203Aの始端部が樹脂収容槽220内に導かれる際は、第2ガラスストランド203Bの終端部を伴いながら当該樹脂収容槽220内に導かれる。
これにより、引き続き第2ガラスストランド203Bが、未硬化の熱硬化性樹脂202A内を通過しながら浸漬されることとなり、当該第2ガラスストランド203Bに熱硬化性樹脂202Aが含浸されることにより、樹脂含浸ガラスストランド205が継続して形成される。
【0075】
樹脂収容槽220の外部に引出された樹脂含浸ガラスストランド205は、続いて巻付け工程S202へと導かれる。
巻付け工程S202は、樹脂含浸ガラスストランド205を連続的に巻付けて、中空の管形状に形成する工程である。
巻付け工程S202には、例えば円柱状のマンドレル231や、軸心を中心にして当該マンドレル231を回転駆動させる駆動モータ232などからなる巻取装置230が設けられている。
【0076】
そして、樹脂収容槽220より引出された樹脂含浸ガラスストランド205は、回転されるマンドレル231に対して所定のテンションを掛けながら綾振しつつ巻付けられる。
これにより、樹脂含浸ガラスストランド205は、中空の管形状に形成される。
【0077】
なお、前述したように、樹脂含浸ガラスストランド205を構成する第1ガラスストランド203A及び第2ガラスストランド203Bは、互いに連結されており、当該樹脂含浸ガラスストランド205がマンドレル231に巻付けられる際は、先ず第1ガラスストランド203Aが巻付けられ、その後、巻付けられた第1ガラスストランド203Aの上層部に第2ガラスストランド203Bが巻付けられることとなる。
その結果、中空の管形状に形成された樹脂含浸ガラスストランド205においては、第1ガラスストランド203Aに比べて、平均繊維径の小さなガラス単繊維203aからなる第2ガラスストランド203Bが、常に表面に配置された状態となる。
【0078】
マンドレル231への樹脂含浸ガラスストランド205の巻付けが終了すると、加熱工程S203が開始される。
加熱工程S203は、樹脂含浸ガラスストランド205を加熱硬化して樹脂成形体1を得る工程である。
ここで、巻取装置230には、図示せぬ加熱ヒーターが備えられており、当該加熱ヒーターによって、マンドレル231は、所定の加熱温度に昇温される構成となっている。
【0079】
そして、樹脂含浸ガラスストランド205が巻付けられた状態によって、マンドレル231が昇温される。
これにより、樹脂含浸ガラスストランド205は、第1ガラスストランド203Aに比べて、繊維径の小さなガラス単繊維203aからなる第2ガラスストランド203Bが、常に表面に配置された状態にて加熱硬化されることとなり、中空の管形状の樹脂成形体201が成形される。
【0080】
樹脂含浸ガラスストランド205に含浸された未硬化の熱硬化性樹脂202Aが十分な硬度に達し、加熱工程S203が終了すると、脱型工程S204が開始される。
脱型工程S204は、成形された樹脂成形体201を、巻取装置230より取出す工程である。
【0081】
成形が完了した樹脂成形体201は、マンドレル231より抜取られ、巻取装置230より取出される。
これにより、最終製品である中空の管形状の樹脂成形体201Aが得られ、成形工程S200は終了する。
【0082】
[製造方法の総論]
以上のように、本実施形態における樹脂成形体1・201は、主に引抜成形法またはフィラメントワインディング法の何れかの方法により成形される。
即ち、前述したような丸棒形状の樹脂成形体1については、主に引抜成形法によって成形され、また例えば管形状からなる別実施形態の樹脂成形体201については、主にフィラメントワインディング法によって成形される。
【0083】
このような、引抜成形法及びフィラメントワインディング法による成形方法は、FRPに関する種々の成形方法の中でも、強化繊維として設けられるガラスストランド3・203の機械的特性を最も有効に利用できる成形方法であり、ガラス含有率が高く、最も機械的強度の高い樹脂成形体1・201が得られる成形方法として知られている。
また、これらの成形方法においては、各製造工程における機械化が進んでおり、大量生産と自動化が可能であるだけでなく、成形される樹脂成形体1の品質は比較的安定しているという特徴がある。
【0084】
ところで、本発明を具現化するガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体(樹脂成形体)1・201について、その有効性を判断するために、以下のような実験を行った。
【0085】
先ず始めに、引抜成形法により成形される本発明の実施形態のサンプルとして、実施例1、2なる丸棒形状の樹脂成形体を用意した。また、これらのサンプルの比較対象として、比較例1、2、3なる丸棒形状の樹脂成形体を用意した。
【0086】
ここで、これらのサンプル(実施例1、2及び比較例1、2、3)は、ともに以下に示す手順に従い、実験室内にて試験的に製作することとした。
即ち、ガラス単繊維の平均繊維径及び集束本数が異なる種々のガラスストランドを用意し、これらのガラスストランドに、ラジカル開始剤パーカドックスC−50L(化薬アグゾ製)を2質量%溶解している熱硬化性樹脂である不飽和ポリエステル樹脂N−350L(ジャパンコンポジット製)を各々含浸させたうえで、熱硬化性樹脂が含浸されたガラスストランドを直径2.3mm、長さ50cmのガラス管内に投入した。
【0087】
次に、この状態のまま80℃で1時間加熱し、その後さらに120℃で1時間加熱した後、冷却して、当該ガラスストランドをガラス管内より取出す(脱型する)ことで、直径が2.15mmの丸棒形状のサンプルを得た。
【0088】
なお、実施例1、2については、ともに平均繊維径が7.0μmであり、且つ集束本数が6000本である複数のガラス単繊維からなるガラスストランドを用いて、サンプルを成形した。
また、実施例1において用いたガラスストランドは、番手が600texであり、且つサンプル中における繊維量が79.3wt%であり、実施例2において用いられるガラスストランドは、番手が600texであり、且つサンプル中における繊維量が65.7wt%である。
【0089】
一方、比較例1、3については、ともに平均繊維径が17.0μmであり、且つ集束本数が2000本である複数のガラス単繊維からなるガラスストランドを用いて、サンプルを成形することし、比較例2については、平均繊維径が13.0μmであり、且つ集束本数が2000本である複数のガラス単繊維からなるガラスストランドを用いて、サンプルを成形することとした。
また、比較例1において用いられるガラスストランドは、番手が1200texであり、且つサンプル中における繊維量が79.5wt%であり、比較例2において用いられるガラスストランドは、番手が700texであり、且つサンプル中における繊維量が79.7wt%であり、比較例3において用いられるガラスストランドは、番手が1200texであり、且つサンプル中における繊維量が65.42wt%である。
【0090】
以上の手順に従い製作された種々のサンプルに対して、外観判定として表面におけるガラス目(表面に露呈するガラス単繊維によるパターン)の見え方を評価するとともに、機械的特性である最大曲げ強度及び曲げ弾性率を各々測定した。
【0091】
なお、ガラス目の評価については目視によって行うこととし、ガラス目がほとんど視認できない場合は良好(〇印にて記載)と判断し、ガラス目が僅かに視認できる場合は普通(△印にて記載)と判断し、ガラス目がはっきりと視認できる場合は不良(×印にて記載)と判断することとした。
【0092】
また、最大曲げ強度及び曲げ弾性率の測定については、3点曲げ試験によって測定することとし、その際の試験条件として、支点間距離を32mmに設定するとともに、試験速度を1.3mm/minに設定することとした。
【0093】
こうして得られた結果を、[表1]によって示す。
【表1】
【0094】
[表1]に示すように、実施例1、2におけるサンプルについては、ともに外観が良好(〇印)であることの結果を得ることができた。
一方、比較例2におけるサンプルについては、外観が普通(△印)であるものの、比較例1、3におけるサンプルについては、ともに外観が不良(×印)であるとの結果を得ることとなった。
【0095】
また、実施例1、2におけるサンプルについては、ともに45.0GPaを超えつつ、1100MPaを超える最大曲げ強度を記録したのに対して、比較例1、2、3におけるサンプルについては、ともに45.0GPaを超えつつ、1100MPaを超えることは無かった。
【0096】
以上の検証実験の結果により、本実施形態の樹脂成形体1に示すような、平均繊維径が5μm以上11μm以下であり、且つ、集束本数が4000本以上10000本以下である複数のガラス単繊維からなるガラスストランドを用いた樹脂成形体であれば、適度な曲げ弾性率を確保しつつ曲げ強度の向上を図るとともに、外観性に優れた樹脂成形体を得ることができることを確認することができた。
【0097】
次に、フィラメントワインディング法により成形される本発明の実施形態のサンプルとして、実施例3なる中空の管形状の樹脂成形体を用意した。また、このサンプルの比較対象として、比較例4なる中空の管形状の樹脂成形体を用意した。
【0098】
この際、用いられる熱硬化性樹脂は、前述した引抜成形法により成形される樹脂成形体の検証実験と同じく、ラジカル開始剤パーカドックスC−50L(化薬アグゾ製)を2質量%溶解している、不飽和ポリエステル樹脂N−350L(ジャパンコンポジット製)を採用することとした。
また、成形されるサンプルの外形サイズについては、ともに内径が50mmであり、且つ外径が60mmとなるように設定することとした。
【0099】
なお、実施例3については、平均繊維径が7.0μmであり、且つ集束本数が6000本である複数のガラス単繊維からなるガラスストランドを用いて、サンプルを成形することとした。
一方、比較例4については、平均繊維径が17.0μmであり、且つ集束本数が2000本である複数のガラス単繊維からなるガラスストランドを用いて、サンプルを成形することとした。
【0100】
以上の手順に従い製作された種々のサンプルに対して、外観判定として表面におけるガラス目(表面に露呈するガラス単繊維によるパターン)の見え方を評価することとした。
【0101】
なお、ガラス目の評価については、前述した引抜成形法により成形される樹脂成形体の検証実験と同じく、目視によって行うこととし、ガラス目がほとんど視認できない場合は良好(〇印にて記載)と判断し、ガラス目が僅かに視認できる場合は普通(△印にて記載)と判断し、ガラス目がはっきりと視認できる場合は不良(×印にて記載)と判断することとした。
【0102】
こうして得られた結果を、[表2]によって示す。
【表2】
【0103】
[表2]に示すように、実施例3におけるサンプルについては、外観が良好(〇印)であることの結果を得ることができた。
一方、比較例4におけるサンプルについては、外観が不良(×印)であるとの結果を得ることとなった。
【0104】
以上の検証実験の結果により、本実施形態の樹脂成形体2に示すような、平均繊維径が5μm以上11μm以下であり、且つ、集束本数が4000本以上10000本以下である複数のガラス単繊維からなるガラスストランドを用いた樹脂成形体であれば、外観性に優れた樹脂成形体を得ることができることを確認することができた。