特許第6972773号(P6972773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972773
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】浴室システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20211111BHJP
   A61H 33/00 20060101ALI20211111BHJP
   G08B 21/04 20060101ALI20211111BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20211111BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20211111BHJP
   F24H 9/16 20060101ALI20211111BHJP
   F26B 9/02 20060101ALI20211111BHJP
   F24D 15/00 20060101ALN20211111BHJP
【FI】
   F24H1/00 602P
   A61H33/00 310Z
   G08B21/04
   G08B25/00 510F
   G08B25/04 K
   F24H9/16 F
   F24H1/00 602G
   F26B9/02 A
   !F24D15/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-161103(P2017-161103)
(22)【出願日】2017年8月24日
(65)【公開番号】特開2019-39591(P2019-39591A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】野中 隆
(72)【発明者】
【氏名】矢部 文彦
(72)【発明者】
【氏名】古賀 弘子
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−276165(JP,A)
【文献】 特開2014−112004(JP,A)
【文献】 特開2013−167425(JP,A)
【文献】 特開2010−117060(JP,A)
【文献】 特開平08−014631(JP,A)
【文献】 特開2002−117466(JP,A)
【文献】 特開平08−066323(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0302715(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
A61H 33/00
G08B 21/04
G08B 25/00
G08B 25/04
F24H 9/16
F26B 9/02
F24D 15/00
A47K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内における入浴者の動きを検知し、かつその検知信号を出力可能な人体検知手段と、
前記入浴者の動きが所定時間以上無い、または少ない状態が発生した際に、前記検知信号に基づいて前記入浴者に所定の異常が発生したと判断する制御手段と、
前記浴室内の入浴者を暖めるように前記浴室内への熱供給が可能な熱供給手段と、
を備えている、浴室システムであって、
前記制御手段は、前記入浴者に前記異常が発生したと判断した場合には、前記入浴者が低体温症になる可能性があるか否かを判断し、かつ低体温症になる可能性があると判断した場合には、この判断を契機として、前記熱供給手段を作動させて前記浴室内に熱供給を行なわせるように構成されており、
前記浴室の浴槽の湯水を前記浴槽の外部に排出するための排水弁を備えており、
前記制御手段は、前記入浴者に前記異常が発生し、かつ前記入浴者が低体温症になる可能性があると判断したときには、前記入浴者が前記浴室のいずれの箇所に存在するかを判断し、
この判断において、前記入浴者が前記浴槽内に存在していると判断された場合には、前記排水弁を開状態とするように構成されており、
前記熱供給手段として、給湯装置を備えており、
前記排水弁が開状態とされて前記浴槽内の湯水が排水された後には、前記排水弁が開状態のまま、前記給湯装置から前記浴槽内に所定の温度範囲の温水が供給されるように構成されていることを特徴とする、浴室システム。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室システムであって、
前記浴槽内の湯水が排水された後に、前記給湯装置から前記浴槽内に供給される温水の温度は、36.5〜37.5℃の範囲内とされている、浴室システム。
【請求項3】
浴室内における入浴者の動きを検知し、かつその検知信号を出力可能な人体検知手段と、
前記入浴者の動きが所定時間以上無い、または少ない状態が発生した際に、前記検知信号に基づいて前記入浴者に所定の異常が発生したと判断する制御手段と、
前記浴室内の入浴者を暖めるように前記浴室内への熱供給が可能な熱供給手段と、
を備えている、浴室システムであって、
前記制御手段は、前記入浴者に前記異常が発生したと判断した場合には、前記入浴者が低体温症になる可能性があるか否かを判断し、かつ低体温症になる可能性があると判断した場合には、この判断を契機として、前記熱供給手段を作動させて前記浴室内に熱供給を行なわせるように構成されており、
前記熱供給手段として、給湯装置を備えており、
前記制御手段は、前記入浴者に前記異常が発生し、かつ前記入浴者が低体温症になる可能性があると判断したときには、前記入浴者が前記浴室のいずれの箇所に存在するかを判断し、
この判断において、前記入浴者が前記浴室の洗い場に存在していると判断された場合には、前記給湯装置が作動し、前記浴室の浴槽への湯張り動作、または前記浴槽内に存在している湯水の追い焚き動作が実行されるように構成されていることを特徴とする、浴室システム。
【請求項4】
浴室内における入浴者の動きを検知し、かつその検知信号を出力可能な人体検知手段と、
前記入浴者の動きが所定時間以上無い、または少ない状態が発生した際に、前記検知信号に基づいて前記入浴者に所定の異常が発生したと判断する制御手段と、
前記浴室内の入浴者を暖めるように前記浴室内への熱供給が可能な熱供給手段と、
を備えている、浴室システムであって、
前記制御手段は、前記入浴者に前記異常が発生したと判断した場合には、前記入浴者が低体温症になる可能性があるか否かを判断し、かつ低体温症になる可能性があると判断した場合には、この判断を契機として、前記熱供給手段を作動させて前記浴室内に熱供給を行なわせるように構成されており、
前記熱供給手段として、浴室乾燥機を備えており、
前記制御手段において、前記入浴者に前記異常が発生し、かつ前記入浴者が低体温症になる可能性があると判断されたときには、前記浴室乾燥機から前記浴室内に温風送風が行なわれるように構成されており、
前記制御手段は、前記入浴者の身体が水に濡れているか否かを判断可能であり、
前記入浴者の身体が水に濡れていると判断した場合には、前記温風送風は、前記入浴者を避けた位置に向けて行なわれるように構成されていることを特徴とする、浴室システム。
【請求項5】
浴室内における入浴者の動きを検知し、かつその検知信号を出力可能な人体検知手段と、
前記入浴者の動きが所定時間以上無い、または少ない状態が発生した際に、前記検知信号に基づいて前記入浴者に所定の異常が発生したと判断する制御手段と、
前記浴室内の入浴者を暖めるように前記浴室内への熱供給が可能な熱供給手段と、
を備えている、浴室システムであって、
前記制御手段は、前記入浴者に前記異常が発生したと判断した場合には、前記入浴者が低体温症になる可能性があるか否かを判断し、かつ低体温症になる可能性があると判断した場合には、この判断を契機として、前記熱供給手段を作動させて前記浴室内に熱供給を行なわせるように構成されており、
前記熱供給手段として、ミスト供給手段を備えており、
前記制御手段において、前記入浴者に前記異常が発生し、かつ前記入浴者が低体温症になる可能性があると判断されたときには、前記ミスト供給手段から前記浴室内に温水ミストが供給されるように構成されており、
前記制御手段は、前記入浴者の顔部が前記ミスト供給手段の方を向いているか否かを判断可能であり、
前記入浴者の顔部が前記ミスト供給手段の方を向いていると判断された場合には、前記温水ミストの供給は実行されないように構成されていることを特徴とする、浴室システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の浴室システムであって、
前記低体温症になる可能性があるか否かの判断は、前記浴室の温度が所定温度以下である場合に、低体温症になる可能性があるとする判断である、浴室システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の浴室システムであって、
前記制御手段において、前記入浴者に前記異常が発生し、かつ前記入浴者が低体温症になる可能性があると判断されたことにより、前記熱供給手段を作動させるときには、前記浴室に付属して設置されている換気扇は、オフ状態とされる、浴室システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴者が気絶などを生じた場合に適切な対応措置を採ることが可能とされた浴室システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室システムの具体例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の浴室システムにおいては、入浴者の動きを検知可能な人体検知装置が浴室に設置されており、たとえば入浴者が気絶(失神)し、入浴者が動かなくなると、このことが人体検知装置を介して所定の制御手段において察知され、入浴者に異常が発生したと判断される。このような判断がなされた場合、入浴者に異常が発生した旨が浴室外のリモコンに通報される。このことにより、浴室外の人が浴室内の異常に気付くこととなり、入浴者の救助・保護を図る上で好ましいものとなる。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、入浴者が浴室で気絶するなどの異常が発生した場合、他者が直ちに浴室に駆け付けることができればよいが、そうでない場合もあり得る。ここで、冬季などの寒い時期に前記した異常が発生し、入浴者が浴室内で気絶した状態が比較的長時間にわたって継続すると、浴室温度の低下に伴い、低体温症を発症する虞がある。このような虞は、できる限り解消することが要望される。
これに対し、前記従来技術においては、異常が発生した旨を浴室外に通報するだけであるため、前記した要望に適切に応えることは困難であり、この点において未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−25625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、入浴者が気絶するなどの異常が発生した場合に、入浴者が低体温症となることを適切に防止または抑制することが可能な浴室システムを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される浴室システムは、浴室内における入浴者の動きを検知し、かつその検知信号を出力可能な人体検知手段と、前記入浴者の動きが所定時間以上無い、または少ない状態が発生した際に、前記検知信号に基づいて前記入浴者に所定の異常が発生したと判断する制御手段と、前記浴室内の入浴者を暖めるように前記浴室内への熱供給が可能な熱供給手段と、を備えている、浴室システムであって、前記制御手段は、前記入浴者に前記異常が発生したと判断した場合には、前記入浴者が低体温症になる可能性があるか否かを判断し、かつ低体温症になる可能性があると判断した場合には、この判断を契機として、前記熱供給手段を作動させて前記浴室内に熱供給を行なわせるように構成されており、前記浴室の浴槽の湯水を前記浴槽の外部に排出するための排水弁を備えており、前記制御手段は、前記入浴者に前記異常が発生し、かつ前記入浴者が低体温症になる可能性があると判断したときには、前記入浴者が前記浴室のいずれの箇所に存在するかを判断し、この判断において、前記入浴者が前記浴槽内に存在していると判断された場合には、前記排水弁を開状態とするように構成されており、前記熱供給手段として、給湯装置を備えており、前記排水弁が開状態とされて前記浴槽内の湯水が排水された後には、前記排水弁が開状態のまま、前記給湯装置から前記浴槽内に所定の温度範囲の温水が供給されるように構成されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、入浴者が浴室内において気絶するなどの異常が生じた場合に、この入浴者が低体温症になる可能性があると、熱供給手段が作動し、浴室内に熱供給が行なわれるため、入浴者の体温が下降することは適切に抑制される。したがって、冬季などの寒い時期において、入浴者に所定の異常が発生してから他者が浴室に駆け付ける迄の時間が長くなるような場合であっても、その期間中に入浴者が低体温症になることを適切に防止または抑制することが可能である。
また、浴槽内で気絶などを生じた入浴者が、浴槽の湯水中に溺没することを適切に防止することが可能である。
さらに、浴槽内に所定の温度範囲の温水が供給されることにより、浴槽内で気絶などを生じている入浴者に温水を掛け流し状態で作用させるなどし、入浴者を暖めることが可能となる。排水弁は開状態のままであるため、浴槽内に多くの温水が溜まって入浴者がその温水中に溺没する事態も適切に回避することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記低体温症になる可能性があるか否かの判断は、前記浴室の温度が所定温度以下である場合に、低体温症になる可能性があるとする判断である。
【0011】
このような構成によれば、浴室内において気絶などを生じた入浴者が低体温症になるか否かの判断を、容易かつ的確に行なうことが可能である。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記浴槽内の湯水が排水された後に、前記給湯装置から前記浴槽内に供給される温水の温度は、36.5〜37.5℃の範囲内とされている。
【0017】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、36.5〜37.5℃は、健康な人の深部体温に相当する。このため、そのような温度の温水を利用すれば、温水の温度が高過ぎ、あるいは低過ぎにならないようにして、入浴者を適切に温めることが可能となる。
【0018】
本発明の第2の側面により提供される浴室システムは、浴室内における入浴者の動きを検知し、かつその検知信号を出力可能な人体検知手段と、前記入浴者の動きが所定時間以上無い、または少ない状態が発生した際に、前記検知信号に基づいて前記入浴者に所定の異常が発生したと判断する制御手段と、前記浴室内の入浴者を暖めるように前記浴室内への熱供給が可能な熱供給手段と、を備えている、浴室システムであって、前記制御手段は、前記入浴者に前記異常が発生したと判断した場合には、前記入浴者が低体温症になる可能性があるか否かを判断し、かつ低体温症になる可能性があると判断した場合には、この判断を契機として、前記熱供給手段を作動させて前記浴室内に熱供給を行なわせるように構成されており、前記熱供給手段として、給湯装置を備えており、前記制御手段は、前記入浴者に前記異常が発生し、かつ前記入浴者が低体温症になる可能性があると判断したときには、前記入浴者が前記浴室のいずれの箇所に存在するかを判断し、この判断において、前記入浴者が前記浴室の洗い場に存在していると判断された場合には、前記給湯装置が作動し、前記浴室の浴槽への湯張り動作、または前記浴槽内に存在している湯水の追い焚き動作が実行されるように構成されていることを特徴としている
【0019】
このような構成によれば、浴槽への湯張り、または浴槽内に存在している湯水の追い焚き動作が行なわれることによって、浴室全体の温度が上昇する効果が期待できる。したがって、洗い場に存在する入浴者を暖めて、低体温症にならないようにすることが、簡易な手段によって適切に実現できる。
【0022】
本発明の第3の側面により提供される浴室システムは、浴室内における入浴者の動きを検知し、かつその検知信号を出力可能な人体検知手段と、前記入浴者の動きが所定時間以上無い、または少ない状態が発生した際に、前記検知信号に基づいて前記入浴者に所定の異常が発生したと判断する制御手段と、前記浴室内の入浴者を暖めるように前記浴室内への熱供給が可能な熱供給手段と、を備えている、浴室システムであって、前記制御手段は、前記入浴者に前記異常が発生したと判断した場合には、前記入浴者が低体温症になる可能性があるか否かを判断し、かつ低体温症になる可能性があると判断した場合には、この判断を契機として、前記熱供給手段を作動させて前記浴室内に熱供給を行なわせるように構成されており、前記熱供給手段として、浴室乾燥機を備えており、前記制御手段において、前記入浴者に前記異常が発生し、かつ前記入浴者が低体温症になる可能性があると判断されたときには、前記浴室乾燥機から前記浴室内に温風送風が行なわれるように構成されており、前記制御手段は、前記入浴者の身体が水に濡れているか否かを判断可能であり、前記入浴者の身体が水に濡れていると判断した場合には、前記温風送風は、前記入浴者を避けた位置に向けて行なわれるように構成されていることを特徴としている
【0023】
このような構成によれば、気絶などを生じている入浴者が、浴室の浴槽内および洗い場のいずれに存在するかを問うことなく、温風送風によって入浴者を適切に温めることが可能である。
さらに、このような構成によれば、温風送風によって入浴者の体温が下がる虞を適切に回避することが可能である。すなわち、入浴者の身体が水に濡れている場合、入浴者に温風を直接送風すると、入浴者の身体を却って冷やしてしまう虞があるが、前記構成によれば、そのような虞を回避することが可能である。
【0024】
本発明の第4の側面により提供される浴室システムは、浴室内における入浴者の動きを検知し、かつその検知信号を出力可能な人体検知手段と、前記入浴者の動きが所定時間以上無い、または少ない状態が発生した際に、前記検知信号に基づいて前記入浴者に所定の異常が発生したと判断する制御手段と、前記浴室内の入浴者を暖めるように前記浴室内への熱供給が可能な熱供給手段と、を備えている、浴室システムであって、前記制御手段は、前記入浴者に前記異常が発生したと判断した場合には、前記入浴者が低体温症になる可能性があるか否かを判断し、かつ低体温症になる可能性があると判断した場合には、この判断を契機として、前記熱供給手段を作動させて前記浴室内に熱供給を行なわせるように構成されており、前記熱供給手段として、ミスト供給手段を備えており、前記制御手段において、前記入浴者に前記異常が発生し、かつ前記入浴者が低体温症になる可能性があると判断されたときには、前記ミスト供給手段から前記浴室内に温水ミストが供給されるように構成されており、前記制御手段は、前記入浴者の顔部が前記ミスト供給手段の方を向いているか否かを判断可能であり、前記入浴者の顔部が前記ミスト供給手段の方を向いていると判断された場合には、前記温水ミストの供給は実行されないように構成されていることを特徴としている。
【0025】
このような構成によれば、温水ミストを利用して入浴者を積極的に温めることができ、低体温症を適切に防止することが可能である。
さらにこのような構成によれば、気絶などを生じている入浴者の顔部の各所に多くのミストが当たり、かつこれが水滴化する不具合を適切に回避することができる。
【0028】
本発明において、好ましくは、前記制御手段において、前記入浴者に前記異常が発生し、かつ前記入浴者が低体温症になる可能性があると判断されたことにより、前記熱供給手段を作動させるときには、前記浴室に付属して設置されている換気扇は、オフ状態とされる。
【0029】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、入浴者の低体温症を防止すべく熱供給手段を作動させている際に、前記換気扇が仮にオン状態とされていたのでは、浴室の温度を早期に上昇させるといったことが困難化する虞がある。これに対し、前記構成によれば、換気扇がオフ状態とされるために、前記した虞を適切に解消することが可能である。
【0030】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係る浴室システムの一例を示す概略断面図である。
図2】(a),(b)は、浴室システムにおいて入浴者に異常が発生した状態を模式的に示す平面図である。
図3図1に示す浴室システムにおいて実行される動作制御手順の一例を示すフローチャートである。
図4図3に示す動作制御手順に追加して実行される動作制御手順の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の他の例を示す要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0033】
図1に示す浴室システムBSは、浴槽10およびこれに隣接する洗い場11を有する浴室1、浴槽10内への給湯動作が可能な給湯装置2、浴室1の天井部に設置された浴室乾燥機3、少なくとも1つのミスト噴出ノズル4、および換気扇5を備えている。
給湯装置2、浴室乾燥機3、およびミスト噴出ノズル4のそれぞれは、本発明でいう「熱供給手段」の具体例に相当する。
【0034】
給湯装置2は、たとえば瞬間式のガス給湯装置またはオイル給湯装置などであり、そのハード構成自体は、従来既知のものと同様であって、各部の動作を制御する制御部20、この制御部20に通信接続された浴室リモコン21Aおよび台所リモコン21B、ならびに外気温センサSdなどを備えている。この給湯装置2は、浴槽10の循環アダプタ10aに配管部29(往き管および戻り管)を介して配管接続されており、浴槽10への湯張り動作、および浴槽10に溜められた湯水の追い焚き動作が可能である。浴槽10の底部の排水口10bには、制御部20によって遠隔制御される開閉弁としての排水弁V1(排水栓)が設けられており、浴槽10内の湯水のいわゆる自動排水が可能である。
【0035】
浴室リモコン21Aには、浴室1の温度(室温)を検出するための温度センサSb、および人体検知センサSaが設けられている。人体検知センサSaは、本発明でいう「人体検知手段」の一例に相当し、たとえば焦電素子を用いたイメージセンサ(赤外線カメラ)であり、入浴者を含め、浴室1内の赤外画像を撮像可能である。人体検知センサSaはシャワーの水流等も検知可能としてもよい。人体検知センサSaの撮像範囲は、浴室1内の略全域とされている。1つの人体検知センサSaによって浴室1の略全域を撮像できない場合には、人体検知センサSaを複数設けた構成とすることが可能である。また、人体検知センサSaは、浴室リモコン21Aとは異なる部位に設けてもよい。人体検知センサSaからの出力信号(撮像画像データ)は、給湯装置2の制御部20に送られる。
【0036】
制御部20は、本発明でいう「制御手段」の一例に相当する。この制御部20においては、人体検知センサSaからの出力信号に基づき、入浴者の位置や、動きの有無などが判断され、かつ入浴者がたとえば気絶して動かなくなった状態、あるいは動きが少なく、その動き量が所定レベル以下である状態が所定時間継続した場合には、入浴者に異常が発生したものと判断される。その後は、入浴者が低体温症になる可能性があるか否かなどが判断され、後述する種々の動作処理が実行される。好ましくは、制御部20においては、入浴者の頭部の位置や、顔部の向きなども判断できるように構成されている。
【0037】
浴室乾燥機3は、ファン31、加熱用熱交換器32、ルーバ33、浴室乾燥機3の各部
の動作を制御する制御部30、およびこれらを内部に収容する筐体34を備えている。
ファン31は、浴室1の天井部に設けられた給気口35から浴室1内のエアを吸い込み、かつエア吹き出し口に設けられたルーバ33を介して浴室1内にエア送風を行なわせる。加熱用熱交換器32は、給気口35からファン31に吸い込まれるエアを加熱するための加熱手段である。この加熱用熱交換器32には、たとえば給湯装置2から加熱湯水が供給可能であり、このような加熱湯水の供給時には、ルーバ33から浴室1内に温風送風がなされる。加熱湯水の非供給時には、いわゆる冷風送風としてのエア送風が可能である。ルーバ33は、モータM1の駆動により角度変更自在であり、ルーバ33からの送風方向を変更可能である。
【0038】
ミスト噴出ノズル4は、浴室乾燥機3に組み付けられている。ミスト噴出ノズル4からのミスト噴出は、ミスト用の給水配管部40に設けられた開閉弁V2を開閉させることにより、オン・オフ切り替え可能である。給水配管部40には、内部を通過する湯水を加熱可能な加熱部41も設けられている。このため、ミストの種類としては、加熱部41により加熱された湯水をミスト化した温水ミスト、および非加熱の湯水をミスト化した非温水ミストのいずれかを選択可能である。加熱部41は、たとえば加熱用熱交換器32と同様に、給湯装置2から湯水供給を受ける熱交換器とすることができる。ミスト噴出ノズル4は、モータM2の駆動により角度変更自在であり、ミスト噴出ノズル4からのミスト噴出方向を変更可能である。
【0039】
換気扇5は、浴室乾燥機3の筐体34を利用して設けられており、浴室1内のエアを給気口35から吸い込み、屋外に排気可能である。換気扇5および浴室乾燥機3の動作は、給湯装置2の制御部20によって制御可能とされている。
【0040】
次に、前記した浴室システムBSにおいて実行される動作処理手順の一例について、図3および図4に示したフローチャートを参照しつつ説明し、併せてその作用を説明する。
【0041】
まず、給湯装置2の制御部20は、好ましくは、人体検知センサSaを常時駆動オン状態とし、浴室1内における入浴者の有無、および浴室1内に入浴者が存在する際にはその動きを監視している(S1)。このような監視状態において、入浴者が気絶するなどして、その動きが停止し、または僅かに動くだけの状態が発生し、かつこのような状態が所定時間継続すると、その時点で少なくとも浴室リモコン21Aからは、視覚的または聴覚的に認識可能な警報が発せられる(S2:YES,S3:YES,S4)。仮に、入浴者に異常がなく、入浴者が暫くの間、動きを単に止めていただけの場合、入浴者は前記した警報を察知することにより身体を動かすこととなるため、この場合には入浴者に異常が発生したとの判断はなされない(S5:NO,S1)。
【0042】
前記警報が発せられたにも拘わらず、入浴者の動きがなく、または少ない状態がその後の所定時間にわたって依然として継続した場合、制御部20は入浴者に異常があると判断する(S5:YES,S6)。この場合、入浴者に異常がある旨が、少なくとも台所リモコン21Bを利用して視覚的および聴覚的に認識可能な態様で報知されるとともに、給湯装置2の動作が停止される(S7)。すなわち、浴槽10への湯張りや、風呂追い焚きなどが実行されていた場合、そのような動作は停止される。前記した報知は、台所リモコン21Bとは別の通信機器、たとえば携帯型通信端末などに対して行なわれるようにすることが可能である。異常が発生した旨の報知が、たとえば入浴者の家族などによって察知され、浴室リモコン21Aや台所リモコン21Bが操作された場合、制御部20は入浴者に異常が生じたとする先の判断をキャンセルするとともに、前記した報知動作を停止し、元の異常発生前の初期状態に復帰する(S8:NO,S20,S1)。
【0043】
一方、前記とは異なり、異常が発生した旨の報知がなされたにも拘わらず、浴室リモコ
ン21Aや台所リモコン21Bが操作されない場合には、入浴者が浴槽10内に存在するか否かが制御部20において判断される(S8:YES,S9)。図2(a)は、入浴者が浴槽10内に存在する場合、同図(b)は、入浴者が洗い場11に存在する場合の例を示している。
【0044】
前記判断において、入浴者が浴槽10内に存在すると判断された場合には、浴槽10の湯水を排水させるべく排水弁V1が開状態とされる(S9:YES,S10)。排水弁V1を開状態とし、浴槽10の水位を低下させれば、気絶などを生じている入浴者が浴槽10の湯水中に溺没することを防止することが可能である。排水弁V1を開状態とする制御は、浴槽10内に入浴者が存在する限りは、浴槽10内に湯水が存在するか否かを判断することなく、常に実行されるように構成することが可能である。図3のフローチャートでは、入浴者が洗い場11に存在する場合、排水弁V1を開状態とする動作は実行されないが(S9:NO)、これに限定されず、排水弁V1を開状態としてもよい。
【0045】
その後、制御部20においては、入浴者が低体温症となる可能性があるか否かが判断される(S11)。この判断においては、たとえば温度センサSbを用いて検出される浴室温度が、所定温度Ta(たとえば25℃)以下であると、入浴者が低体温症になる可能性があると判断される。所定温度Taは、必ずしも一定の値でなくてもよく、たとえば外気温が低く、浴室温度が早期に低くなり易い場合ほど所定温度Taを高くするなど、外気温に対応させて変動させてもよい。低体温症になり易さには個人差があるため、閾値となる所定温度Taを、ユーザが適宜変更できるようにしてもよい。また、低体温症となる可能性があるか否かの判断要素として、浴室温度以外のパラメータを加えてもよい。
【0046】
入浴者が低体温症となる可能性があると判断された場合、換気扇5がオフとされて、浴室1内の熱を外部に多く逃げないようにされるとともに(S11:YES,S12)、次のような動作制御も実行される。
【0047】
すなわち、入浴者が浴槽10内に存在する場合には、給湯装置2から浴槽10への温水供給が行なわれるとともに、浴室乾燥機3からは温風送風がなされ、かつミスト噴出ノズル4からは温水ミストが噴出される(S13:YES,S14,S15)。
【0048】
前記した浴槽10への温水供給は、排水弁V1を開状態としたまま実行し、その温水温度は、たとえば健康な人の深部体温である36.5〜37.5℃の範囲とされる。入浴者が浴槽10内に存在する状態で、循環アダプタ10aから浴槽10内に温水供給が行なわれれば、この温水の少なくとも一部が入浴者の身体に掛かることや、入浴者の身体が浴槽10の底面上に供給された温水に触れることが期待できる。したがって、入浴者を暖めることが可能となる。前記温水は、浴槽10を暖める他、浴室1内の空気をも暖めるため、このことによっても入浴者の体温低下を抑制することが可能である。温水の温度が、前記した36.5〜37.5℃の範囲であれば、入浴者に温水が掛かっても、入浴者にダメージを与えることはなく、入浴者の体温を本来の体温に維持するのに好適である。浴槽10内に供給された温水は、排水口10bおよび排水弁V1を通過して排水され、浴槽10の水位が高くなることはないため、入浴者が浴槽10の湯水中に溺没することは、やはり適切に防止される。
【0049】
フローチャートには示されていないが、好ましくは、制御部20は、浴槽10内への前記した温水供給に際し、入浴者の頭部の位置、および浴槽10の水位を判断し、かつ入浴者の頭部が浴槽10の湯水内に沈む可能性があるか否かをも判断するように構成されている。この判断において、入浴者の頭部が浴槽10の湯水内に沈む可能性があると判断された場合、浴槽10への温水供給は中止される。排水弁V1を開状態とした場合であっても、たとえば排水口10bが入浴者の身体によって塞がれるなどの理由から、浴槽10内の
湯水を円滑に排水することができない事態が生じ得る。前記した動作制御によれば、そのような事態が生じた場合にも好適に対処することができる。
【0050】
前記した浴室乾燥機3からの温風送風、およびミスト噴出ノズル4からの温水ミスト噴出は、浴室温度を上昇させる。このため、入浴者の体温が低下し、低体温症となることをより徹底して防止することが可能となる。
【0051】
ここで、好ましくは、制御部20は、入浴者の身体が水に濡れているか否かを判断可能であり、かつ水に濡れていると判断した場合、浴室乾燥機3からの温風送風は、洗い場11に向けて行なわれるように制御される。入浴者が浴槽10内に存在している場合、それ以前において、浴槽10に湯張り、または風呂追い焚き動作がなされていれば、入浴者は浴槽10の湯水に浸かっており、その身体が水に濡れているものと判断することが可能である。入浴者の身体が水に濡れている場合に、入浴者に向けて温風送風がなされると、入浴者を却って冷やしてしまう虞があるが、前記した制御によれば、そのような虞をなくすことが可能である。
【0052】
また、より好ましくは、制御部20は、人体検知センサSaからの信号に基づき、入浴者の顔部の向きを判別可能であり、かつ入浴者の顔部がミスト噴出ノズル4の方を向く場合には、ミスト噴出ノズル4からのミスト噴出はなされないように制御される。気絶などを生じている入浴者の顔部に多くのミストが当たり、これが水滴化することは、余り好ましくないが、前記制御によれば、そのようなことが適切に回避される。
【0053】
前記とは異なり、気絶などを生じた入浴者が洗い場11に存在している場合には、浴槽10に溜まっている湯水の加熱(風呂追い焚き)、または浴槽10内への温水供給が行なわれる(S13:NO,S17)。また、浴室乾燥機3からは温風送風がなされ、かつミスト噴出ノズル4からは温水ミストが噴出される(S18)。
【0054】
前記した浴槽10の湯水の加熱、または浴槽10内への温水供給が行なわれれば、浴槽10の湯水が熱源となって、浴室温度を上昇させる結果、入浴者を暖めることが可能となる。入浴者は、洗い場11に存在するため、浴槽10内にはやや高めの温度の湯水を溜めてもよく、またその湯水量を多くすることもできる。なお、浴槽10に溜まっている湯水の加熱(風呂追い焚き)は、排水弁V1が閉状態で行なわれることは勿論であるが、浴槽10内への温水供給も、好ましくは排水弁V1が閉じられた状態で行なわれる。
【0055】
前記した温風送風、および温水ミストの噴出も、先に述べたステップS15の場合と同様に、浴室温度を上昇させるため、洗い場11に存在する入浴者を暖めることとなり、低体温症を防止する上で効果的である。
【0056】
好ましくは、温風送風に際し、入浴者の身体が水に濡れている場合には、温風が入浴者に当たらないように浴槽10側に温風送風が行なわれ、また入浴者の顔部がミスト噴出ノズル4の方を向く場合には、ミスト噴出は行なわれない。このような制御によって得られる効果は、ステップS15に関連して述べた効果と同様である。
【0057】
洗い場11に入浴者が存在している場合、この入浴者の身体が水に濡れているか否かは、それ以前に入浴者が浴槽10の湯水に浸かっているか否か、シャワーを使っているか否かなどによって判断することが可能である。より具体的には、入浴者が浴室1内に入室した後において、給湯装置2からの給湯がなされていない状態で浴槽10の水位に比較的大きな変化があれば、入浴者が浴槽10の湯水に浸かったと推定することが可能であり、入浴者の身体が水に濡れていると判断することが可能である。また、シャワーを使用した場合には、その熱やシャワーの水流等を人体検知センサSaによって検知することが可能で
あり、入浴者が浴室1に入室した後にシャワーが使用された履歴があれば、入浴者の身体は水に濡れているものと判断することが可能である。
【0058】
前記したような低体温症を防止するための動作制御は、浴室リモコン21Aや台所リモコン21Bにおいて、何者かによって所定のスイッチ操作がなされると終了する(S16:YES,S19)。低体温症を防止するための動作制御は、前記した所定のスイッチ操作がなされる迄は継続して実行されるが、これは浴槽10への温水供給、温風送風、温水ミストの噴出などの各動作が常に連続して実行されるということではなく、たとえば浴室温度が、低体温症を発症する可能性がない温度域まで上昇した際には、前記した各動作を一時的に中断させてもよい。この中断後に低体温症の可能性が再度生じた場合には、前記した温水供給、温風送風、あるいは温水ミストの噴出が再開されるようにすればよい。
【0059】
気絶などを生じた入浴者が低体温症となる可能性がない場合、制御部20は、熱中症の可能性があるか否かをさらに判断する(S11:NO,図4のS31)。この判断においては、たとえば浴室1内の暑さ指数(WBGT:Wet-Bulb Globe Temperature)、または熱指数(Heat Index, HI)などの熱中症指数が所定値以上である場合には、熱中症の可能性があると判断するなどの手法が採用される。熱中症のかかり易さは、温度のみならず、湿度(相対湿度)も大きく影響するため、浴室温度と湿度との双方を要素とした熱中症指数(概略的な数値でもよい)を用いることが望まれる。そのための手段として、浴室リモコン21Aには、湿度センサScも設けられる。
【0060】
制御部20は、入浴者が熱中症となる可能性があると判断した場合には、入浴者の体温を下げるための動作を実行する(S31:YES,S32)。この動作は、たとえば浴室乾燥機3からの冷風送風や、ミスト噴出ノズル4からの非温水ミストの噴出などである。また、気絶などを生じた入浴者が浴槽10内に存在する場合には、排水弁V1が開いた状態で浴槽10内に、たとえば36.5〜37.5℃の範囲の湯水を供給し、この湯水をいわゆる掛け流し状態とすることも有効である。36.5〜37.5℃の湯水は、健康な人の深部体温と一致するため、この温度範囲の湯水は、入浴者の低体温症防止作用を発揮するばかりか、熱中症防止作用も発揮する。
【0061】
一方、熱中症の可能性がないと判断した場合には、制御部20は、低体温症または熱中症の可能性があるか否かを継続して判断し、いずれかの可能性が発生すれば、その時点で上述したような対応動作が実行される(S31:NO,S33)。
【0062】
図5は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、その重複説明は省略する。
【0063】
図5に示す実施形態においては、浴槽10の排水口10bに、遠隔操作可能な排水弁は設けられていない。ただし、配管部29に遠隔操作可能な三方弁などの排水弁V3が設けられている。
【0064】
このような構成によれば、浴槽10の水位が循環アダプタ10aよりも高い場合、浴槽10の湯水を排水弁V3から外部に排水し、浴槽10の水位を循環アダプタ10aの高さまで低下させることが可能である。浴槽10の湯水の全量を外部に排水することはできないものの、前記したように浴槽10の水位を低下させれば、浴槽10内において気絶などを生じた入浴者が湯水中に溺没する虞を少なくする効果が得られる。本発明でいう排水弁は、必ずしも浴槽10の排水口10bに設けられたものに限らず、本実施形態のような態様で設けられていてもよい。
【0065】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る浴室システムの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0066】
上述の実施形態では、気絶などを生じた入浴者が低体温症になる可能性があるか否かを、浴室温度に基づいて判断しているが、既述したように、浴室温度以外のパラメータを用いて判断してもよい。
【0067】
上述の実施形態では、入浴者が低体温症となる可能性がある場合に、給湯装置から浴槽への給湯、浴室乾燥機からの温風送風、およびミスト噴出ノズルからの温水ミスト供給の各手段を採用しているが、これらの手段の全てが採用されている必要はなく、これらのうちの少なくとも1つの手段が採用されていれば、本発明の技術的範囲に包摂される。ミスト噴出ノズルは、浴室乾燥機に組み付けられたものに限定されない。
【0068】
人体検知手段は、焦電式のイメージセンサに限定されず、他の種類のセンサ類、または撮像カメラを用いることも可能である。
給湯装置は、瞬間式のものに限らず、たとえば貯湯式の給湯装置を用いることもできる。
本発明でいう浴室は、浴槽が設置されている通常の浴室に限らず、たとえば浴槽が設置されていないシャワー浴専用のシャワー室も含む概念である。本発明でいう洗い場とは、浴室のうち、浴槽以外の領域である。
【符号の説明】
【0069】
BS 浴室システム
Sa 人体検知センサ(人体検知手段)
V1,V3 排水弁
1 浴室
10 浴槽
11 洗い場
2 給湯装置(熱供給手段)
20 制御部(制御手段)
3 浴室乾燥機(熱供給手段)
4 ミスト噴出ノズル(熱供給手段)
5 換気扇
図1
図2
図3
図4
図5