(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明の幾つかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0034】
本実施形態に係る記録方法は、処理液付着工程と、白色インク付着工程と、非白色インク付着工程と、を含む。以下、本実施形態の製造方法で形成される画像、インクジェット法及び記録媒体について説明し、その後に各工程等について説明する。
【0035】
1.記録方法によって形成される画像
図1は、本実施形態の記録方法によって形成される画像を説明する模式図である。本実施形態の記録方法では、
図1に示すように、記録媒体Pに、白色インク組成物と非白色インク組成物とを付着させた第1領域Aと、白色インク組成物を付着させ非白色インク組成物を付着させない第2領域Bと、を有する画像領域Cが形成される。したがって画像領域Cは、非白色の第1領域Aと白色の第2領域Bとを含んでいる。
【0036】
第1領域Aは、白色インク組成物が付着された白色インク層20と非白色インク組成物が付着された非白色インク層30とが積層して形成されている。第2領域Bは、白色インク組成物が付着された白色インク層20を有し非白色インク層を備えないものである層が形成されている。なお、
図1右側の画像領域Cにおける第2領域Bは、第1層目の白色インク層21と第2層目の白色インク層22とを説明の便宜上破線で分けて描いてある。白色インク層21及び白色インク層22は、一体とみなしてもよい。
【0037】
また、本実施形態の記録方法では、処理液付着工程によって記録媒体Pに対して処理液が付着される。
図1に示す例では、処理液付着工程によって処理液が付着された処理液層10が描かれている。図示の処理液層10は、説明の便宜上「層」の形状で描かれているが、処理液の成分の蒸発やインク層への拡散により層の形状となっていなくてもよい。したがって、処理液層10は、処理液が付着された領域に相当するのであって必ずしも層として残っている必要はない。図示のように、処理液層10は、
図1左側の例のように画像領域C以外の記録媒体Pの部分に形成されてもよいし、
図1右側の例のように画像領域Cのみに形成されてもよい。
【0038】
また
図1において、各層の高さ(厚さ)は、付着されたインク組成物の付着量を概念的に表している。本実施形態の記録方法では、
図1に示すように、第1領域Aの高さは第2領域Bと同じでも異なってもよい。また、
図1左側の例では、第1領域Aのほうが第2領域Bよりも高く描かれている(図中E参照)が、第1領域Aのほうが第2領域Bよりも低くてもよい。すなわち、第1領域Aへの白色インク組成物及び非白色インク組成物の合計の付着量は、第2領域Bへの白色インク組成物の合計の付着量と同じでも異なってもよい。
【0039】
ただし、いずれの場合でも画像領域Cは、第1領域Aにおける白色インク組成物の合計の付着量のほうが第2領域Bにおける白色インク組成物の合計の付着量よりも少なくなるように形成される。すなわち、白色インク組成物の付着量が、第1領域A<第2領域Bの関係にある(以下この状態を「条件(i)」ということがある。)。
【0040】
また、条件(i)において、第1領域Aにおける白色インク組成物の合計の付着量と、第2領域Bにおける白色インク組成物の合計の付着量と、の差は、0mg/inch
2超であり、1mg/inch
2以上18mg/inch
2以下が好ましく、2mg/inch
2以上15mg/inch
2以下がより好ましく、5mg/inch
2以上10mg/inch
2以下がより好ましい。
【0041】
条件(i)を満たす場合、第1領域Aの白色インク組成物の付着量が少なくなることから、第1領域Aの処理液が残存しやすくなり、第1領域Aに付着する非白色インク組成物が処理液と充分に反応することができ、非白色画像の品質を優れたものにできる。また、第1領域Aの白色インク組成物の付着量が少なくなっても、第1領域Aには非白色インク組成物と白色インク組成物とを付着させるため、第1領域Aの隠蔽性が劣ることが無い。
【0042】
なお、第1領域Aの合計の付着量と第2領域Bの合計の付着量は、例えば、白色インク組成物の隠蔽性や非白色インク組成物の発色性のバランスなどを考慮して決定してもよい。例えば、非白色インク組成物の発色性を白色インク組成物の隠蔽性よりも優先させたい場合などにおいて、
図1左側の例のように第1領域Aのほうが第2領域Bよりも合計の付着量を多くするなど、適宜に設計され得る。
【0043】
本明細書では「合計の付着量」という表現は、第1領域Aにおける白色インク組成物及び非白色インク組成物の合計の付着量のことを指す意味で用いられるだけでなく、白色インク層20及び/又は非白色インク層30が、複数回の付着工程により形成される場合があるので、その場合の合計の付着量のことを指す意味でも用いられる。
【0044】
図1左側に示すような白色インク層20を形成する場合であって一回の白色インク付着工程によって形成する場合には、第1領域Aへの付着量を第2領域Bへの付着量よりも少なくする(吐出量を領域毎に調節する)ことで白色インク層20を図示する構造に形成することができる。そしてその後に非白色インク層30を形成する。
【0045】
また、
図1左側に示すような白色インク層20を形成する場合であって複数回の白色インク付着工程によって形成する場合には、第1領域Aへの合計の付着量を第2領域Bへの合計の付着量よりも少なくすることで白色インク層20を図示する構造に形成することもできる。この場合白色インク層20が図示の高さ(厚さ)に最終的に到達するように複数回の白色インク付着工程が行われればよく、白色インク付着工程の回数や、各白色インク付着工程における白色インク組成物の吐出量によって任意に調節することができる。また、吐出量を一定とする場合には、白色インク付着工程の回数(走査回数)によって調節することができる。
【0046】
一方、
図1右側に示すような構造を形成する場合には、まず第1層目の白色インク層21を白色インク付着工程によって形成し、その後に第2領域Bの第2層目の白色インク層22と第1領域Aの非白色インク層30とを同時に又は別々に形成することで、白色インク層20及び非白色インク層30を図示する構造に形成することができる。
【0047】
また、
図1右側に示すような白色インク層20を形成する場合であっても、複数回の白色インク付着工程によって形成することができる。すなわち、複数回の白色インク付着工
程を行い第1層目の白色インク層21を形成した後、複数回の白色インク付着工程及び/又は複数回の非白色インク付着工程を行うことにより、
図1右側に示すような構造を形成することができる。
【0048】
このように一回の白色インク付着工程を行っても複数回の白色インク付着工程を行っても
図1に示すような構造の記録領域Cを形成することができるが、一回の工程で付着させるインク組成物の付着量は、処理液層10から処理液の成分が十分に拡散できる程度とすることがより好ましい。この観点からすると、一回の工程で付着させるインク組成物の付着量は、例えば、5mg/inch
2以下、好ましくは4mg/inch
2以下、より好ましくは3.5mg/inch
2以下、さらに好ましくは3mg/inch
2以下、特に好ましくは2.5mg/inch
2以下、殊更好ましくは2mg/inch
2以下である。なお隠蔽性や発色性の観点からすると、十分に反応が生じるように0.05mg/inch
2以上、好ましくは0.1mg/inch
2以上である。
【0049】
このようにすれば、第2領域Bにおける白色インク組成物の1走査あたりの付着量が多すぎることがないため、処理液との反応を十分に生じさせることができ、当該領域の遮蔽性をさらに高くすることができる。
【0050】
図1に示すような構造を形成する場合であって、例えば1回の白色インク付着工程によって白色インク層20を形成すると、付着量が上記範囲を超えてしまうような場合には、付着量が上記範囲に収まるように付着量を減らして白色インク付着工程の回数を増やすことが好ましい。これにより、容易に一回あたりの付着量を上記範囲に設定することができる。複数回の白色インク付着工程の場合でも、一回あたりの付着量が上記範囲を超えてしまうような場合には、付着量が上記範囲となるように白色インク付着工程の数を増やすことができる。このことは非白色インク付着工程についても同様である。
【0051】
なお本明細書では「領域」という場合、該領域へ付着させる白色インク組成物の付着量、非白色インク組成物の付着量がそれぞれ略一定であるような記録媒体上の一定の面積を占める部分を指す。一の領域は、目視で同じ色に視認できる領域であり、例えば1mm
2以上の面積を有する。また、付着量が略一定であるとは、例えば、dutyが低い場合、インク組成物のドットを着弾させた位置と着弾させない位置とでは厳密にはインク組成物の付着量が異なるが、領域は1ドットの面積よりも大きい巨視的(マクロ)な範囲を意味しており、巨視的には領域でインク付着量が一定であり、ドットの付着有無による付着量の不均一は無視するものとする。
【0052】
また、dutyが低い場合、白色インク組成物と非白色インク組成物の両者が付着された領域(第1領域A)であっても、微視的(例えばインクジェット法における液滴(着弾したドット)のスケール)には白色ドットと非白色ドットとが重ならない部位も存在しうるが、巨視的に見たインク組成物の積層であるものとして、ドット単位でみた場合のドットが重ならない部位があることについては無視するものとする。したがって、ここで第1領域Aとは、当該領域全体としての白色インク組成物と非白色インク組成物とが積層した領域と考えることとする。
【0053】
なお、本明細書において「インク組成物」というときは「白色インク組成物及び非白色インク組成物の一方又は両方」を指すものとする。白色インク組成物及び非白色インク組成物の詳細は後述する。
【0054】
2.インクジェット法
白色インク付着工程及び非白色インク付着工程は、インクジェットヘッドからインク組成物を吐出しつつ記録媒体Pと該インクジェットヘッドの相対位置を変化させる走査を行
うことにより行われる。また、画像領域Cのうちの第2領域Bに対して白色インク組成物及び非白色インク組成物を付着させるために、記録媒体Pとインクジェットヘッドの相対位置を変化させる走査を複数回行ってもよい。
【0055】
インクジェット記録装置を用いれば、インクジェットヘッドからインク組成物を吐出しつつ記録媒体と該インクジェットヘッドの相対位置を変化させる走査を容易に行うことができる。インクジェット記録装置は、インク組成物を収容するインク収容容器(カートリッジ、タンク等)及びこれに接続されるインクジェットヘッドを少なくとも有し、インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体Pに画像を形成することができる仕様のものであれば特に限定されない。
【0056】
本実施形態のインクジェット記録装置としては、シリアル型及びライン型のいずれでも使用することができる。これらの型のインクジェット記録装置には、インクジェットヘッドが搭載されており、記録媒体Pとインクジェットヘッドとの相対的な位置関係を変化させながら、インクジェットヘッドのノズル孔からインク組成物の液滴を所定のタイミングで(間欠的に)かつ所定の体積(質量)で吐出させ、記録媒体Pにインク組成物を付着させて所定の画像を形成することができる。
【0057】
ここで一般に、シリアル型のインクジェット記録装置では、記録媒体Pの搬送方向と、インクジェットヘッドの往復動作の方向が交差しており、インクジェットヘッドの往復動作と記録媒体Pの搬送動作(往復動作も含む)との組み合わせによって、記録媒体Pとインクジェットヘッドとの相対的な位置関係を変化させる。またこの場合、一般的には、インクジェットヘッドには複数のノズル孔(インク組成物を吐出する孔)が配置され、記録媒体Pの搬送方向に沿ってノズル孔の列(ノズル列)が形成されている。また、インクジェットヘッドには、インク組成物の種類や数に応じて、複数のノズル列が形成される。
【0058】
また、一般に、ライン型のインクジェット記録装置では、インクジェットヘッドは往復動作を行わず、記録媒体Pの搬送(往復動作も含む)によって記録媒体Pとインクジェットヘッドとの相対的な位置関係を変化させて、記録媒体Pとインクジェットヘッドとの相対的な位置関係を変化させる。この場合においても、一般的には、インクジェットヘッドには、ノズル孔が複数配置され、記録媒体Pの搬送方向に交差する方向に沿って該ノズル孔の列(ノズル列)が形成されている。
【0059】
なお、条件(i)を満たす場合には、インクジェット法として、ライン型のインクジェット記録装置をより好適に採用することができる。この場合、記録速度が速いなどの点で好ましい。
【0060】
インクジェット方式としては、インク組成物を微細なノズル孔より液滴として吐出して該液滴を記録媒体Pに付着させることができれば、特に制限されない。例えば、液滴吐出方式(インクジェット法の方式)としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることができるが、インク組成物の熱による変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式がより好ましい。
【0061】
またインクジェット記録装置には、例えば、加熱ユニット、乾燥ユニット、ロールユニット、巻き取り装置などの公知の構成を制限無く採用することができる。
【0062】
インクジェット記録装置を用いる場合、ノズルから吐出されるインク組成物の種類は適宜に選ぶことができる。例えば白色インク組成物を吐出するノズルと非白色インク組成物を吐出するノズルを設ければ、これらのノズルから所定の間隔、量のインク組成物を所定のタイミングで吐出することができる。これにより、インクジェットヘッドからインク組
成物を吐出しつつ記録媒体Pと該インクジェットヘッドの相対位置を変化させる走査(本明細書では、単に「走査」ということがある。)により、例えば上述の画像領域Cの白色インク層20及び非白色インク層30を容易に形成することができる。
【0063】
したがって、インクジェット記録装置を用いれば、記録媒体Pに画像領域Cを形成する場合、画像領域Cは、第1領域Aにおける白色インク組成物を付着する走査回数のほうが第2領域Bにおける白色インク組成物を付着する走査回数よりも少なくなるように形成することができる。すなわち、白色インク付着工程における走査の回数が、第1領域A<第2領域Bの関係(以下この関係を「条件(ii)」ということがある。)を満たすように画像領域Cを形成することができる。走査は主走査の意味である。
【0064】
またこのようにすれば、第2領域Bの白色インク付着工程の走査回数のほうが第1領域Aの白色インク付着工程の走査回数よりも多くできる。そのため、吐出量の上限等を考慮した場合等において、例えば、第2領域Bの白色インク組成物の付着量が、第1領域Aの白色インク組成物の付着量と同じか又は場合によっては多い場合であっても、第2領域Bは白色インク付着工程の走査の回数を多くすることにより、走査ごとの付着量は少なくすることができ、走査ごとにインクが処理液と反応する時間が生まれ、より画質を良好とすることができる。また、第1領域Aでは、白色インク組成物(白色インク層20)が非白色インク組成物(非白色インク層30)によって隠されることにより、白色としての画質の低下が目立ちにくいので、走査回数を少なくしても、画質への影響が少ない。
【0065】
ここで付着工程の走査回数は、画像の所定の領域に対してインクを付着させる走査回数である。例えば、ノズル列のノズル密度が360dpiのヘッドを用いて、記録解像度が走査方向×副走査方向に720×1440dpiの画像を記録する場合において、1回の走査で走査方向と副走査方向にそれぞれ360dpiのインク滴解像度で付着をさせるとする。ここでは1つの画素に対して1回ずつインク滴を付着させるとする。画素は、記録解像度で規定される、インク滴を付着させるべき場所の単位である。
【0066】
この場合、走査回数=(走査方向の記録解像度/走査方向の1回の走査のインク滴解像度)×(副走査方向の記録解像度/副走査方向の1回の走査のインク滴解像度)=2×4=8回となり、8回の走査でインクの付着を行うこととなる。
【0067】
副走査方向の1回の走査のインク滴解像度はノズル列のノズル密度の制約を受ける。主走査方向の1回の走査のインク滴解像度は、ノズルからインク滴を吐出させる吐出の周期と走査の際にノズルと記録媒体が相対的に走査方向に位置を変える速度(走査速度、例えばキャリッジ速度)によって決まる。よって、走査回数は、記録する画像の記録解像度や、用いるヘッドのノズル密度や吐出周波数や走査速度によって変わる。また、1つの画素に対してインク滴を付着させる回数によっても変わり、回数が多いと走査回数は多くなる。
【0068】
上述の走査回数を求める計算式は1例であり、走査回数の多いか少ないかの比較については、上記の式に限らず、所定の面積を有するある画像(例えば縦横に1×1インチの正方形の画像)に対して記録を行うのに要する走査の回数でも比較することができる。
【0069】
また、条件(ii)において、第1領域Aにおける白色インク付着工程における走査の回数と、第2領域Bにおける白色インク付着工程における走査の回数と、の差は、1以上20以下が好ましく、2以上15以下がより好ましく、3以上10以下がより好ましい。
【0070】
また、条件(ii)を満たす場合には、第2領域Bと第1領域Aへ白色インク組成物を付着させる第1走査と、第2領域Bへ白色インク組成物を付着させ、第1領域Aへ白色イ
ンク組成物を付着させない第2走査と、を含むような記録を行ってもよい。このようにすれば、より少ない走査回数で画像を形成することができる場合がある。さらに、上記の第2走査において、第1領域Aへ非白色インク組成物を付着させることとしてもよい。こうすることで、さらにより少ない走査回数で画像を形成することができる場合がある。
【0071】
図3は、シリアルプリンターのヘッド配置を示す一例である。キャリジに図のような3個のヘッド(ヘッド20a、20b、20c)が搭載されている。各ヘッドは複数個のノズル列(NW、NC、NM、NY)を備えている。各ノズル列は、No.1〜192の複数個のノズルを副走査方向のノズル間距離Pで備えているが、ノズル数は限るものではない。
【0072】
例えば、処理液を各ヘッドのノズル列NKに充填し、白色インクを各ヘッドのノズル列NWに充填し、非白色インクを各ヘッドのノズル列NCに充填させる。
【0073】
走査と副走査(記録媒体搬送)を交互に繰り返し行いながら記録する場合に、先にヘッド20cから処理液を吐出し、記録が進むにつれ、ヘッド20bから白色インクを吐出して第1領域Aと第2領域Bに白色インクを付着させる第1走査を行い、さらに、ヘッド20aから白色インクを吐出して第2領域Bに白色インクを付着させつつヘッド20aから非白色インクを吐出して第1領域Aに非白色インクを付着させる第2走査を行えばよい。
【0074】
この場合、記録速度が速い点で好ましい。このように、走査方向に白色インクを吐出するノズル列と非白色インクを吐出するノズル列が並んでいる場合、上記のような第2走査が行える点で好ましい。
【0075】
記録方法は上記の例に限らず、処理液をヘッド20bやヘッド20aのノズル列から吐出させたり、記録媒体を逆送りして再度搬送して非白色インクを吐出したり、非白色インクを白色インクより先に吐出して付着させたり、記録に必要なヘッドのノズル列のみに必要なインクまたは処理液を充填したりしてもよい。
【0076】
3.記録媒体
本実施形態の記録方法で用いられる記録媒体Pの形状は、シート状、板状、布帛状、三次元形状等とすることができる。
【0077】
記録媒体Pは、インク液滴を吸収する吸収性記録媒体でも良いし、インク液滴を吸収しない又は低吸収の印刷面を有する非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体でもよい。
吸収性記録媒体としては、普通紙やインクジェット専用紙などの紙、インク受容層を有するシート、布帛などがあげられる。非吸収性記録媒体としては、例えば、金属、ガラス、インクジェット印刷用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等の非吸収性記録媒体などが挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0078】
低吸収性記録媒体としては、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。ここで、本明細書において「非吸収性又は低吸収性の記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec
1/2までの水吸収量が10mL/m
2以下である記録媒体」を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法
2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
【0079】
また、記録媒体Pは、無色透明、半透明、着色透明、有彩色不透明、無彩色不透明等であってもよい。さらに、記録媒体Pは、グロス系、マット系、ダル系のいずれであってもよい。市販の記録媒体Pとしては、光沢塩化ビニルシート(例えば商品名SP−SG−1270C:ローランドディージー株式会社製)、PETフィルム(例えば商品名XEROX FILM<枠無し>:富士ゼロックス株式会社製)などがある。
【0080】
本実施形態に係る記録方法では、記録媒体Pとしてこのような低吸収記録媒体又は非吸収記録媒体も用いることができる。本実施形態の記録方法において、低吸収記録媒体又は非吸収記録媒体を用いても、画像の十分な隠蔽性及び発色性を実現できる。
【0081】
4.記録方法における条件
上述したように、本実施形態の記録方法では、白色インク付着工程及び非白色インク付着工程は、インクジェットヘッドからインク組成物を吐出しつつ記録媒体Pと該インクジェットヘッドの相対位置を変化させる走査を行うことにより行われ、記録媒体Pには、白色インク組成物と非白色インク組成物とを付着させる第1領域Aと、白色インク組成物を付着させ非白色インク組成物を付着させない第2領域Bと、が形成される。
【0082】
そして、本実施形態の記録方法では以下の条件(i)及び条件(ii)の一方又は両方が満たされる。
(i)白色インク組成物の付着量が、第1領域A<第2領域Bの関係にある。
(ii)白色インク付着工程における走査の回数が、第1領域A<第2領域Bの関係にある。
【0083】
5.記録方法の各工程
本実施形態に係る記録方法は、処理液付着工程と、白色インク付着工程と、非白色インク付着工程と、を含む。
5.1.処理液付着工程
本実施形態の記録方法は、処理液付着工程を含む。処理液付着工程は、後述するインク組成物の成分を凝集させる処理液を記録媒体Pへ付着させる工程である。以下、処理液及び処理液付着工程について説明する。
【0084】
5.1.1.処理液
処理液(反応液又は前処理液と称することもある。)は、インク組成物の成分を凝集(又は増粘)させる機能を有する。処理液は、インク組成物の成分と反応して主に色材や樹脂を凝集させる凝集剤を含有する。本実施形態において、処理液は、色材の含有量が0.2質量%以下であり、記録媒体を着色するために用いられる液体(インク組成物)ではなく、インク組成物を付着させる前、後又は同時に記録媒体Pへ付着させて用いられる液体である。
【0085】
本実施形態で用いられる処理液が凝集剤を含むことにより、処理液と後述するインク組成物とが接触した場合に、凝集剤とインク組成物に含まれる成分(例えば樹脂、色材等の成分)とが反応する。これにより、インク組成物中の色材や樹脂の分散状態が変化し、色材や樹脂を凝集させることができる。このような作用により、例えば記録媒体上での色材の発色性を高めることができ、非白色の画像においては発色性が良好で、白色及び非白色の画像においては十分な隠蔽性を有する画像を形成することができる。
【0086】
また、処理液が付着された後にインク組成物が付着される場合には、処理液に含まれる
凝集剤がインク組成物中へと拡散され反応により一部又は全部が消費される。さらにインク組成物中に拡散した凝集剤がインク組成物中に残っている場合であって、さらにインク組成物が付着された場合には、当該後に付着されたインク組成物中へ凝集剤を拡散させることができる。なおこの場合、既に述べたように後に付着されるインク組成物の一回の付着量が多すぎると拡散が不十分となる場合があるため、後に付着されるインク組成物の一回の走査で付着される付着量にはより好ましい範囲があると考えられる。
【0087】
<凝集剤>
処理液に含有される凝集剤としては、例えば、多価金属塩、カチオン性化合物(カチオン性樹脂、カチオン性界面活性剤等)、有機酸などが挙げられる。これらの凝集剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの凝集剤の中でも、インク組成物に含まれる成分との反応性に優れるという点から、多価金属塩、カチオン性樹脂及び有機酸よりなる群から選択される1種以上の凝集剤を用いることが好ましい。
【0088】
多価金属塩としては、二価以上の多価金属イオンとこれら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶な化合物である。多価金属イオンの具体例としては、Ca
2+、Cu
2+、Ni
2+、Mg
2+、Zn
2+、Ba
2+などの二価金属イオン;Al
3+、Fe
3+、Cr
3+などの三価金属イオンが挙げられる。対イオンとしての陰イオンは、Cl
−、I
−、Br
−、SO
42−、ClO
3−、NO
3−、及びHCOO
−、CH
3COO
−などが挙げられる。これらの多価金属塩の中でも、処理液の安定性や凝集剤としての反応性の観点から、カルシウム塩及びマグネシウム塩が好ましい。
【0089】
カチオン性樹脂としては、例えば、カチオン性のウレタン樹脂、カチオン性のオレフィン樹脂、カチオン性のポリアミン樹脂、カチオン性のポリアミド樹脂、カチオン性のポリアクリルアミド樹脂、カチオン性のポリアリルアミン樹脂等が挙げられる。
【0090】
カチオン性のウレタン樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。カチオン性のウレタン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、ハイドラン CP−7010、CP−7020、CP−7030、CP−7040、CP−7050、CP−7060、CP−7610(以上商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、スーパーフレックス 600、610、620、630、640、650(以上商品名、第一工業製薬株式会社製)、ウレタンエマルジョン WBR−2120C、WBR−2122C(以上商品名、大成ファインケミカル株式会社製)等を用いることができる。
【0091】
カチオン性のオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性のオレフィン樹脂は、水や有機溶剤等を含む溶媒に分散させたエマルジョン状態であってもよい。カチオン性のオレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、アローベースCB−1200、CD−1200(以上商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
【0092】
カチオン性のポリアリルアミン樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸
塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマー等を挙げることができる。
【0093】
カチオン性ポリアミン樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができ、ポリアミン構造を有する樹脂であれば良い。なお、ポリアミン構造と、ポリアミド構造又はポリアクリルアミド構造又はポリアリル構造を共に有する樹脂はポリアミン樹脂に含めるものとする。他のカチオン性樹脂も、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0094】
カチオン性のポリアリルアミン樹脂の市販品としては、例えば、PAA−HCL−01、PAA−HCL−03、PAA−HCL−05、PAA−HCL−3L、PAA−HCL−10L、PAA−H−HCL、PAA−SA、PAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−08、PAA−15、PAA−15C、PAA−25、PAA−H−10C、PAA−D11−HCL、PAA−D41−HCL、PAA−D19−HCL、PAS−21CL、PAS−M−1L、PAS−M−1、PAS−22SA、PAS−M−1A、PAS−H−1L、PAS−H−5L、PAS−H−10L、PAS−92、PAS−92A、PAS−J−81L、PAS−J−81(商品名、ニットーボーメディカル会社製)、ハイモ Neo−600、ハイモロック Q−101、Q−311、Q−501、ハイマックス SC−505、SC−505(商品名、ハイモ株式会社製)等を用いることができる。
【0095】
有機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
また凝集剤として、カチオン性界面活性剤を用いてもよい。カチオン性界面活性剤としては、例えば、第1級、第2級及び第3級アミン塩型化合物、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、ベンザルコニウム塩、第4級アンモニウム塩、第4級アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、オニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン、ヤシアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ジメチルエチルラウリルアンモニウムエチル硫酸塩、ジメチルエチルオクチルアンモニウムエチル硫酸塩、トリメチルラウリルアンモニウム塩酸塩、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミン、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0097】
凝集剤は一種単独でも複数種を用いてもよい。処理液における凝集剤の含有量は、処理液の全質量(100質量%)に対し、合計で0.1質量%以上25質量%以下であり、1質量%以上20質量以下であってもよく、3質量%以上10質量以下であってもよい。また、凝集剤の含有量の下限は、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。凝集剤の含有量の上限は、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0098】
処理液は、凝集剤の他に以下の成分を含有してもよい。
【0099】
<水>
本実施形態で用いられる処理液は、水を主溶媒とする水系であってもよい。この水は、処理液を記録媒体に付着させた後、乾燥により蒸発飛散する成分である。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、処理液を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。処理液に含まれる水の含有量は、処理液の全質量(100質量%)に対して、例えば、40質量%以上とすることができ、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。
【0100】
<溶剤>
本実施形態で用いられる処理液は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤を含有することにより、記録媒体に対する処理液の濡れ性を向上させたりすることができる。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤であることが好ましい。
【0101】
有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、ピロリドン誘導体、ラクトン、グリコールエーテル類等が挙げられる。
【0102】
1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。1,2−アルカンジオール類は、記録媒体に対する濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、記録媒体上に密着性に優れた画像を形成することができる場合がある。
【0103】
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール類は、インクジェット記録装置のインクジェットヘッドのノズル形成面における乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。
【0104】
ピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。なおピロリドン誘導体は、樹脂成分の良好な溶解剤として作用することもできる。
【0105】
「ラクトン」とは、環内にエステル基(−CO−O−)を有する環状化合物の総称をいう。ラクトンとしては、上記定義に含まれるものであれば特に制限されないが、炭素数2以上9以下のラクトンであることが好ましい。このようなラクトンの具体例としては、α−エチルラクトン、α−アセトラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ζ−エナンチオラクトン、η−カプリロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−ノナラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、2−ブチル−2−エチルプロピオラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン等が挙げられるが、これらの中でもγ−ブチロラクトンが特に好ましい。ラクトンは、記録媒体が塩化ビニル樹脂等のフィルムである場合に、記録媒体の内部にインクを浸透させて、密着性を高めることができる。
【0106】
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノイソオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0107】
これらの有機溶剤は、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。処理液に有機溶剤を配合する際、水系インクとして用いる場合には、処理液の全質量(100質量%)に対して、合計で0.5質量%以上45質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上35質量%以下であることが特に好ましく、2.0質量%以上30質量%以下であることがさらに特に好ましい。一方、処理液を非水系インクとして用いる場合には、有機溶剤の含有量は、処理液の全質量に対して、合計で70質量%以上90質量%以下程度とすることができる。
【0108】
なお、処理液をインクジェット法により記録媒体に付着させる場合には、沸点が280℃以上の有機溶剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。このような有機溶剤は、水分を吸収して、インクジェットヘッド付近の処理液を増粘させる作用を生じる場合があり、これによりインクジェットヘッドの吐出安定性を低下させる場合があるからである。このため標準沸点が280℃以上の有機溶剤の含有量をこの程度とすれば、吐出安定性を得ることができ、さらに、種々の記録媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体において、記録媒体上での画像の乾燥性が高くなるので、ブリードの発生が抑制され、画像の濃淡ムラを抑制して画質に優れた画像を形成できる。また、耐擦性に優れた画像を形成できる。
【0109】
沸点が280℃以上の有機溶剤としては、例えば、グリセリンを挙げることができる。グリセリンは吸湿性が高く、沸点が高いため、インクジェットヘッドの目詰まりや、動作不良の原因となる場合がある。また、グリセリンは、防腐性が乏しく、カビや菌類を繁殖させやすいので含有しないことが好ましい。
【0110】
<界面活性剤>
本実施形態で用いられる処理液は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤を含有させると、処理液の表面張力が低下し、記録媒体との濡れ性を向上させることができる。また、処理液付着工程をインクジェット法にて行う場合には、記録時の吐出信頼性を確保することができる。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等のノニオン系界面活性剤を好ましく用いる
ことができる。
【0111】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される1種以上が好ましい。
【0112】
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(商品名、エアープロダクツ社製)、サーフィノール465やサーフィノール61やサーフィノールDF110D(商品名、日信化学工業株式会社製)、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0113】
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリシロキサン系界面活性剤、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349(以上商品名、BYK Additives & Instruments社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
【0114】
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、サーフロンS144、S145(以上商品名、AGCセイミケミカル株式会社製);FC−170C、FC−430、フロラード−FC4430(以上商品名、住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300(以上商品名、Dupont社製);FT−250、251(以上商品名、株式会社ネオス製)が挙げられる。
【0115】
また、フッ素系界面活性剤として、フッ素変性ポリマーを用いることもでき、その具体例としては、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0116】
さらにその他のノニオン性界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂
肪酸エステルポリオキシアルキレングリコールアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキサイド、脂肪酸アルカノールアミド、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキサイド付加物、2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール、2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物等を用いてもよい。
【0117】
これらの市販品としては、限定はされないが例えば、アデカトール TN−40、TN−80、TN−100、LA−675B、LA−775、LA−875、LA−975、LA−1275、OA−7(以上商品名、株式会社ADEKA製)、CL−40、CL−50、CL−70、CL−85、CL−95、CL−100、CL−120、CL−140、CL−160、CL−200、CL−400(以上商品名、三洋化成工業株式会社製)、ノイゲン XL−40、−41、−50、−60、−6190、−70、−80、−100、−140、−160、−160S、−400、−400D、−1000、ノイゲン TDS−30、−50、−70、−80、−100、−120、−200D、−500F、ノイゲン EA−137、−157、−167、−177、−197D、DKS NL−30、−40、−50、−60、−70、−80、−90、−100、−110、−180、−250、ノイゲン ET−89、−109、−129、−149、−159、−189、ノイゲン ES−99D、−129D、−149D、−169D、ソルゲン
TW−20、−60、−80V、−80DK、エステル F−160、−140、−110、−90、−70(以上商品名、第一工業製薬株式会社製)、ラテムル PD−450、PD−420、PD−430、PD−430S、レオドール TW−L106、TW−L120、TW−P120、TW−S106V、TW−S120V、TW−S320V、TW−O106V、TW−O120V、TW−O320V、レオドール 430V、440V、460V、レオドールスーパー SP−L10、TW−L120、エマノーン 1112、3199V、4110V、3299RV、3299V、エマルゲン 109P、1020、123P、130K、147、150、210P、220、306P、320P、350、404、408、409PV、420、430、1108、1118S−70、1135S−70、1150S−60、4085、A−60、A−90、A−500、B−66(以上商品名、花王株式会社製)等が挙げられる。
【0118】
処理液は、上述の凝集剤の機能を損なわない範囲において、ノニオン性界面活性剤の他の界面活性剤を含有してもよい。例えば、アニオン性界面活性剤や両イオン性界面活性剤などのイオン性界面活性剤が挙げられる。また、処理液には、上記例示した界面活性剤を一種又は二種以上配合することができる。
【0119】
界面活性剤を使用する場合その含有量は、処理液の全質量(100質量%)に対して合計で0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.25質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0120】
<その他の成分>
本実施形態で用いられる処理液には、必要に応じて、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を添加してもよい。
5.1.2.処理液の調製
本実施形態で用いられる処理液は、上記の各成分を適当な方法で分散・混合することよ
って製造することができる。上記の各成分を十分に攪拌した後、必要に応じてろ過を行って、調製することができる。
【0121】
5.1.3.処理液の物性
本実施形態で用いられる処理液は、インクジェットヘッドで吐出させる場合には、20℃における表面張力が18mN/m以上40mN/mであることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましく、22mN/m以上33mN/m以下であることがさらに好ましい。表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートを処理液で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0122】
また、同様の観点から、本実施形態で用いられる処理液の20℃における粘度は、3mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上8mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
【0123】
5.1.4.処理液を付着させる態様
処理液付着工程では、処理液を記録媒体Pに付着させる。本工程は、インクジェット法、処理液を各種のスプレーを用いて記録媒体Pに付着させる方法、処理液に記録媒体Pを浸漬させて付着させる方法、処理液を刷毛等により記録媒体Pに付着させる方法等の非接触式及び接触式のいずれか又はそれらを組み合わせた方法で行うことができる。またこれらの方法のうち、インクジェット法を選択すれば、記録媒体P上の画像が形成される領域を選んで処理液を付着させやすく、処理液の無駄を削減することができる。また、インクジェット法を用いれば、例えば、処理液が付着された後、インク組成物が付着されるまでの間の時間を制御しやすいためより好ましい。
【0124】
処理液付着工程では、記録媒体上に最終的な画像が形成される画像領域C(第1領域A及び第2領域B)を平面視において包含する領域に処理液を付着させる。画像領域Cに付着される限り、処理液を付着させる領域は画像領域Cと同じか、画像領域Cより広くてもよい。
【0125】
処理液付着工程では、画像領域C(第1領域A及び第2領域B)への処理液の付着量は、当該領域に付着されるインク組成物の付着量にも依存するが、例えば2mg/inch
2以上20mg/inch
2以下が好ましい。付着量の下限は、5mg/inch
2以上がさらに好ましく、付着量の上限は15mg/inch
2以下がより好ましく、10mg/inch
2以下がさらに好ましい。処理液の付着量が2mg/inch
2以上であることにより、ムラの発生がより抑制される傾向にある。また、処理液の付着量が20mg/inch
2以下であることにより、密着性の低下を抑制することができ、耐擦性の低下を抑制することができる。
【0126】
また、処理液付着工程で記録媒体Pに付着される処理液の付着量は、第1領域A及び第2領域Bのそれぞれにおいて、白色インク組成物及び非白色インク組成物の合計の付着量の5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0127】
このような付着量であれば、インク組成物の付着領域において、処理液の量がより適切であるので、第2領域B(白色領域)における遮蔽性、及び第1領域A(非白色領域)における発色性の両方にさらに優れ、かつ、画像全体の耐擦過性が高く維持された画像を記録することができる。
【0128】
処理液付着工程は、白色インク付着工程及び非白色インク付着工程よりも先に行われてもよいし、白色インク付着工程及び非白色インク付着工程の何れか一方又は両方と同時に行われてもよいし、白色インク付着工程及び非白色インク付着工程よりも後に行われてもよい。これらのうち、処理液付着工程が後述する白色インク付着工程及び非白色インク付着工程よりも先に行われると、処理液と各インク組成物との反応をより確実に行うことができる。なお、インクジェットヘッドの近隣のノズル列から処理液とインク組成物とが吐出される場合においても、インク組成物よりも処理液が先に記録媒体Pに付着するようにノズル列の配置、インクジェットヘッドの走査方向、記録媒体Pの搬送方向等を調節すれば、処理液と各インク組成物との反応をより確実に行うことができる。
【0129】
5.2.白色インク付着工程
白色インク付着工程は、白色色材を含む白色インク組成物を記録媒体Pへ付着させる工程である。以下、白色インク組成物及び白色インク付着工程について説明する。本工程により白色インク組成物が付着される記録媒体P上の領域は、第1領域A及び第2領域Bであり、第1領域Aでは非白色インク付着工程によって非白色インク組成物が付着され、第2領域Bでは、非白色インク組成物が付着されず、白色の画像が形成される。
【0130】
本実施形態の記録方法では、白色インク付着工程及び非白色インク付着工程は、インクジェットヘッドから各インク組成物を吐出しつつ記録媒体Pとインクジェットヘッドの相対位置を変化させる走査を行うこと(インクジェット法)により行われる。これにより高精細な画像を形成できる。
【0131】
5.2.1.白色インク組成物
白色インク組成物は、第1領域Aにおいては非白色インク組成物の下地層を形成するため、及び、第2領域Bにおいては白色画像を形成するために用いられる。例えば、非白色インク組成物と記録媒体Pとの色相が近い場合や、明度の低い記録媒体Pを用いる場合には、非白色インク組成物からなる画像を記録媒体Pに形成しても、画像が認識しにくい場合がある。このような場合に、白色インク組成物を用いて、記録媒体Pに白色インク組成物からなる下地層を形成することで、下地層の上に形成される非白色インク組成物からなる画像の視認性を向上できる。例えば、非白色インク組成物として、カラー顔料を含有する非白色インク組成物(イエローインク、マゼンタインク、シアンインク等)や、ブラック顔料を含有するブラックインクを使用する場合、記録媒体Pが黒系統の色相であったり、透明や半透明等であると、非白色インク組成物からなる画像が認識しにくくなる。そうした場合に、例えば、白色色材を含む白色インク組成物からなる画像(下地層)を記録媒体に形成しておくことで、非白色インク組成物からなる画像の視認性を高めることができる。
<白色色材>
白色インク組成物は、白色色材を含有する。白色色材(白色系色材)としては、以下に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、及び酸化ジルコニウム等の白色無機顔料が挙げられる。当該白色無機顔料以外に、白色の中空樹脂粒子及び高分子粒子などの白色有機顔料を使用することもできる。
【0132】
白色顔料のカラーインデックス(C.I.)としては、以下に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントホワイト1(塩基性炭酸鉛)、4(酸化亜鉛)、5(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物)、6(酸化チタン)、6:1(他の金属酸化物を含有する酸化チタン)、7(硫化亜鉛)、18(炭酸カルシウム)、19(クレー)、20(雲母チタン)、21(硫酸バリウム)、22(天然硫酸バリウム)、23(グロスホワイト)、24(アルミナホワイト)、25(石膏)、26(酸化マグネシウム・酸化ケイ素)、27(シリカ)、28(無水ケイ酸カルシウム)などが挙げられる。これらの中でも、発色性、隠蔽性、及び視認性(明度)に優れる点で酸化チタンがより好ましい。
【0133】
上記酸化チタンの中でも、白色顔料としては一般的なルチル型の酸化チタンが好ましい。このルチル型の酸化チタンは、自ら製造したものであってもよく、市販されているものであってもよい。ルチル型の酸化チタン(粉末状)を自ら製造する場合の工業的製造方法として、従来公知の硫酸法及び塩素法が挙げられる。ルチル型の酸化チタンの市販品としては、例えば、Tipaque(登録商標) CR−60−2、CR−67、R−980、R−780、R−850、R−980、R−630、R−670、PF−736等のルチル型(以上、石原産業社製、商品名)が挙げられる。
【0134】
また、白色色材としては、例えば平均粒子径200nm未満の一次粒子が複数集合して形成された二次粒子(あるいは高次粒子)からなり、当該二次粒子の平均粒子径が、200nm以上1μm以下、好ましくは200nm以上800nm以下、より好ましくは200nm以上500nm以下のものがより好適である。
【0135】
白色色材として上記の二次粒子を含む場合、二次粒子は、記録媒体P上に付与された処理液の作用によってより凝集しやすくすることができる。また、処理液の作用を受ける前はほとんど凝集していない。すなわち、凝集前の二次粒子は、多孔質であるという性質を備えることから沈降を抑制できつつ、凝集後の二次粒子と比較して粒子径が小さいことからインクジェット記録装置のノズルから吐出させた際の吐出性にも優れる。一方で、凝集後の二次粒子は、記録媒体P上で二次粒子が密に配置されたものであることから、記録される白色系画像の白色度が著しく向上する。また、記録媒体P上で二次粒子が密に配置されることで、記録される白色系画像の滲みを低減できる。
【0136】
白色インク組成物は上記白色色材を単独あるいは複数種含有してもよい。白色インク組成物における白色色材の含有量(固形分換算)は、白色インク組成物の全質量に対して、合計で1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。白色色材の含有量が上記範囲内にあることで、分散性に優れた白色インク組成物が得られやすく、また発色性、隠蔽性に優れた画像が得られやすい。
【0137】
白色インク組成物は、白色色材の他に以下の成分を含有してもよい。
【0138】
<樹脂>
白色インク組成物は、樹脂を含有してもよい。樹脂は、記録される画像の耐擦性等の物理的強度を向上させることができる。このような樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂等の公知の樹脂や、ポリオレフィンワックス等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0139】
上記の例示した樹脂の中でも、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィンワックスを好ましく用いることができる。
【0140】
アクリル系樹脂は、樹脂を構成するモノマーとして少なくとも(メタ)アクリルモノマーを含む樹脂であり、好ましくはそれがモノマー全体のうち20質量%以上であり、さらに好ましくは、40%以上、50%以上、70%以上、80%以上である。(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートが挙げられ、後者はアルキル(メタ)アクリレート、脂環アルキル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0141】
アクリル系樹脂の市販品としては、特に限定されないが、例えば、モビニール7320(商品名、日本合成化学株式会製)、マイクロジェルE−1002、マイクロジェルE−5002(商品名、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001、ボンコート5454(商品名、DIC株式会社製)、SAE1014(商品名、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK−200(商品名、サイデン化学株式会社製)、ジョンクリル7100、ジョンクリル390、ジョンクリル711、ジョンクリル511、ジョンクリル7001、ジョンクリル632、ジョンクリル741、ジョンクリル450、ジョンクリル840、ジョンクリル62J、ジョンクリル74J、ジョンクリルHRC−1645J、ジョンクリル734、ジョンクリル852、ジョンクリル7600、ジョンクリル775、ジョンクリル537J、ジョンクリル1535、ジョンクリルPDX−7630A、ジョンクリル352J、ジョンクリル352D、ジョンクリルPDX−7145、ジョンクリル538J、ジョンクリル7640、ジョンクリル7641、ジョンクリル631、ジョンクリル790、ジョンクリル780、ジョンクリル7610(商品名、BASFジャパン株式会社社製)、NKバインダーR−5HN(商品名、新中村化学株式会社製)等が挙げられる。
【0142】
スチレンアクリル系樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。なお、共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。なお、スチレンアクリル系樹脂は、市販されているものを利用してもよい。スチレンアクリル系樹脂の市販品としては、ジョンクリル62J(商品名、BASFジャパン株式会社製)、ポリゾールAM−610(商品名、昭和電工株式会社製)等が挙げられる。
【0143】
ポリエステル系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、Eastek 1100、1300、1400(商品名、イーストマンケミカルジャパン社製)、エリーテル KA−5034、KA−3556、KA−1449、KT−8803、KA−5071S、KZA−1449S、KT−8701、KT9204(商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
【0144】
ウレタン系樹脂は、樹脂の骨格中に少なくともウレタン結合を有する樹脂である。ウレタン系樹脂は、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリエステル骨格の少なくとも何れかを有するウレタン樹脂が好ましい。上記ウレタン樹脂のエマルジョンの市販品としては、特に限定されないが、例えば、サンキュアー2710(商品名、日本ルーブリゾール株式会社製)、パーマリンUA−150(商品名、三洋化成工業株式会社製)、スーパーフレックス 460、470、610、700(商品名、第一工業製薬株式会社製)、NeoRez R−9660、R−9637、R−940(商品名、楠本化成株式会社製)、アデカボンタイター HUX−380、290K(商品名、株式会社アデカ製)、タケラック(登録商標)W−605、W−635、WS−6021(商品名、三井化学株式会社製)等が挙げられる。
【0145】
ポリオレフィンワックスとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン又はその誘導体から製造されたワックス及びそのコポリマー、具体的には、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリブチレン系ワックス等が挙げられる。これらの中でも、画像のヒビ割れの発生を低減できるという観点から、ポリエチレン系ワックスが好ましい。ポリオレフィンワックスは、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0146】
ポリオレフィンワックスの市販品としては、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製、ポリエチレン系ワックス)等のケミパールシリーズが挙げられる。その他、AQUACER 503、507、513、515、840(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエチレン系ワックス)等のAQUACERシリーズや、ハイテック E−7025P、E-2213、E−9460、E−9015、E−4A、E−5403P、E−8237(商品名、東邦化学株式会社製)等のハイテックシリーズ、ノプコート PEM−17(商品名、サンノプコ株式会社製、ポリエチレンエマルジョン)等が挙げられる。これらは、常法によりポリオレフィンワックスを水中に分散させた水系エマルジョンの形態で市販されている。
【0147】
これらの樹脂は一種又は複数種を用いることができる。白色インク組成物に樹脂を含有させる場合には、その含有量(固形分換算量)は、白色インク組成物の全質量に対して合計で、好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上7質量%以下である。
【0148】
また、樹脂を用いる場合の白色色材の含有量は、樹脂の含有量に対して、固形分換算で0.2倍以上20倍以下であることが好ましく、1倍以上10倍以下であることがより好ましい。上記範囲内にあることで、記録媒体に対する白色色材の定着性が良好になるので、得られる画像の耐擦性を向上させやすい。
【0149】
樹脂は、皮膜の耐擦性、密着性、インクの保存安定性を向上できる等の観点から、エマルジョンで供給されることが好ましい。本実施形態に係る白色系インクに樹脂を含有させる場合には、水に安定に分散させるために必要な親水成分が導入された自己乳化型のものでもよいし、外部乳化剤の使用により水分散性となるものでもよいが、処理液に含まれる凝集剤との反応を阻害しないという観点から、乳化剤を含まない自己乳化型の分散体(自己乳化型のエマルジョン)であることがより好ましい。
【0150】
<溶媒>
白色インク組成物は、溶媒として水及び有機溶剤から選ばれる一種以上を含有することができる。白色インク組成物が溶媒として水を含有する場合には、いわゆる水系インクとして用いられる。一方、白色インク組成物が水を含有しない場合には、いわゆる非水系インクとして用いられる。
【0151】
本明細書において、「Xを含まない」とは、組成物を製造する際にXを意図的に添加しないという程度の意味、又は、Xを添加する意義を十分に達成する量を超えて添加しない程度の意味である。「含まない」の具体例としては、たとえば1.0質量%以上含まない、好ましくは0.5質量%以上含まない、より好ましくは0.1質量%以上含まない、さらに好ましくは0.05質量%以上含まない、特に好ましくは0.01質量%以上含まない、一層好ましくは0.001質量%以上含まないことである。
【0152】
水及び有機溶剤は、いずれも上述の処理液の項で説明したと同様であるので説明を省略する。白色インク組成物が水系インクである場合には、例えば水の含有量を、白色インク組成物の全質量に対して、50質量%以上とすることができる。
【0153】
<界面活性剤>
白色インク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる機能を備える。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。界面活性剤は、処理液の項で説明したと同様であるので説明を省略する。界面活性剤を含有する場合には、その含有量は、白色インク組成物の全質量に
対して、合計で0.1質量%以上1.5質量%以下であることが好ましい。
【0154】
<その他の成分>
白色インク組成物は、必要に応じて、増粘剤、重合性化合物、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を含有してもよい。
【0155】
5.2.2.白色インク組成物の物性
本実施形態に係る白色インク組成物は、画像品質とインクジェット記録装置に適用するため信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上40mN/mであることが好ましく、25mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0156】
また、同様の観点から、本実施形態に係る白色インク組成物の20℃における粘度は、3mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上8mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
【0157】
5.2.3.白色インク組成物を付着させる態様
白色インク付着工程は、インクジェット法を用いて白色インク組成物を記録媒体Pに付着させる。すなわち、インクジェットヘッドからインク組成物を吐出しつつ記録媒体Pとインクジェットヘッドの相対位置を変化させる走査を行うことにより行われる。白色インク付着工程では、記録媒体P上に最終的な画像が形成される画像領域C(第1領域A及び第2領域B)に白色インク組成物を付着させる。白色インク付着工程では、第1領域Aへの白色インク組成物の合計の付着量は、例えば8mg/inch
2以上25mg/inch
2以下であり、付着量の下限は、10mg/inch
2以上が好ましく、15mg/inch
2以上がより好ましい。また、付着量の上限は20mg/inch
2以下がより好ましく、18mg/inch
2以下がより好ましい。
【0158】
第1領域Aにおける白色インク組成物の合計の付着量が8mg/inch
2以上であることにより、十分な背景隠蔽性と、非白色インク組成物の発色性の十分な画像を形成することができる。また、白色インク組成物の合計の付着量が25mg/inch
2以下であることにより、処理液との反応を十分に行わせることができ、また、記録媒体と画像との密着性の低下を抑制することができる。
【0159】
また、白色インク付着工程では、第2領域Bへの白色インク組成物の付着量の合計は、例えば9mg/inch
2以上36mg/inch
2以下であり、付着量の下限は、10mg/inch
2以上が好ましく、15mg/inch
2以上がより好ましい。また、付着量の上限は30mg/inch
2以下がより好ましく、20mg/inch
2以下がより好ましい。
【0160】
第2領域Bにおける白色インク組成物の合計の付着量が9mg/inch
2以上であることにより、十分な背景隠蔽性を有する白色画像を形成することができる。また、白色インク組成物の合計の付着量が36mg/inch
2以下であることにより、処理液との反応を十分に行わせることができ、また、記録媒体Pと画像との密着性の低下を抑制することができる。なお、第2領域への白色インク組成物の合計の付着量は、複数回の走査で付着させる場合は複数回の走査の合計として上記合計の付着量とすればよいし、1回の走査で付着させる場合は1回の走査で上記合計の付着量を付着させればよい。第1領域Aにつ
いても同様である。
【0161】
なお、インク組成物の付着量は、インク付着工程においてインク組成物で形成した領域に付着させたインク組成物の総吐出量(mg)を、該領域の面積(inch
2)で除することで求められる。
【0162】
白色インク付着工程は、処理液付着工程で処理液を付着させた後に、完全には乾燥させずに白色インク組成物を付着させるウェットオンウェット方式を採用することが好ましい。具体的には、画像領域Cへ付着させた処理液の揮発成分残存率が40質量%以上の状態で、白色インク組成物の付着を行うことが好ましい。ウェットオンウェット方式では、乾燥させない分、記録時間を短縮できるという利点ある。また、先に付着される組成物の乾燥がより適切な状態で後の白色インク組成物が付着されるので、処理液が後に付着される組成物中へ拡散しやすく、十分に反応させることができる。またこれにより、先に付着される処理液と後に付着される白色インク組成物との間のにじみをさらに抑制することができる。
【0163】
また、ウェットオンウェット方式は先に付着させる液体が付着してから次の液体が付着するまでの時間によっても規定することができる。白色インク付着工程の前に付着された液体(処理液、白色インク組成物及び非白色インク組成物のいずれか)が付着した後、1秒以上120秒以下の時間間隔をおいて、次の白色インク付着工程によって白色インク組成物が付着されることが好ましい。このような範囲であれば、ウェットオンウェット方式を実現できるため、先に付着した液体からその成分の少なくとも一部を新たに付着させた白色インク組成物により拡散させやすい。そのため、例えば処理液が先行して記録媒体Pに付着されている場合には、白色色材の凝集をより起こしやすいので、より背景隠蔽性の良好な画像を形成することができる。
【0164】
このような観点からは、白色インク付着工程の前に付着された液体が付着した後、白色インク組成物を付着させるまでの時間間隔は、1秒以上が好ましく、2秒以上がより好ましく、3秒以上がさらに好ましい。上限は、90秒以下が好ましく、60秒以下がより好ましく、30秒以下がさらに好ましく、20秒以下が特に好ましく、10秒以下が増々好ましい。
このような時間間隔は、白色インク付着工程がインクジェット法により行われるため、例えば、インクジェットヘッドが搭載されたキャリッジの移動速度や、キャリッジの待機時間などを調節することにより調節することができる。あるいは記録媒体の搬送速度を調節する、記録に用いるノズル列のノズル数を調節する、ヘッド間の副走査方向の距離を調節する、ことでも可能である。時間間隔が上記以上であると、先に付着したインクの乾燥を促進することができるため画質が特に優れる。また、時間間隔が上記以下であると、先に付着したインクが処理液との反応が進み過ぎて後から付着するインクが処理液と充分反応することができないことを防止でき画質が特に優れ、また、記録速度を早くすることができ有用でありながら、本実施形態によれば十分な画質が確保できる。
【0165】
なお、時間差(時間間隔)は、画像領域Cの特定の位置において定義できるものであるが、より明確には、例えば、複数回の走査によって記録を行う場合には、画像中の、記録媒体Pの走査方向(主走査方向)における中央を含む位置であって副走査方向の特定の位置(位置Aとする)へ、インク組成物を付着させる場合に、位置Aへ先の液体の付着が完了してから、該位置に後のインク組成物の付着が開始するまでの時間としてもよい。
また、一回の走査で記録を行う場合には、記録媒体Pの所定の位置への先の液体の付着の完了から、該位置へ後のインク組成物の付着の開始までの時間とすることができる。
【0166】
5.3.非白色インク付着工程
非白色インク付着工程は、非白色色材を含む非白色インク組成物を記録媒体Pへ付着させる工程である。以下、非白色インク組成物及び非白色インク付着工程について説明する。本工程により非白色インク組成物が付着される記録媒体P上の領域は、第1領域Aであり、非白色の画像が形成される。第1領域Aでは下地に白色インク層20が形成されているので背景隠蔽性及び発色性の良好な非白色画像が形成される。
【0167】
本実施形態の記録方法では、非白色インク付着工程は、インクジェットヘッドから非白色インク組成物を吐出しつつ記録媒体Pとインクジェットヘッドの相対位置を変化させる走査を行うこと(インクジェット法)により行われる。これにより高精細な画像を形成できる。
【0168】
5.3.1.非白色インク組成物
非白色インク組成物は、少なくとも非白色色材を含有する。
<非白色色材>
非白色インク組成物に含まれる色材として、染料又は顔料を用い得るが、発色や処理液による凝集増粘性の点で顔料を用いることが好ましい。顔料としては、有機顔料及び無機顔料のいずれも使用することができる。非白色インク組成物に含まれる色材は、白色インク組成物と色相が異なるように選択される。
【0169】
非白色色材とは、上述した白色色材を除く色材のことをいう。非白色顔料としては、以下に限定されないが、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、染料系、縮合多環系、ニトロ系、及びニトロソ系などの有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等)、コバルト、鉄、クロム、銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、及びニッケル等の金属類、金属酸化物及び硫化物、並びにファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、及びチャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、さらには黄土、群青、及び紺青等の無機顔料を用いることができる。
【0170】
更に詳しくは、ブラック系の顔料として使用できるカーボンブラックとしては、例えば、MCF88、No.2300、2200B、900、33、40、45、52、MA7、8、100等(以上、三菱化学社製、商品名)、Raven 5750、5250、5000、3500、1255、700等(以上、コロンビアカーボン社製、商品名)、Rega1 400R、330R、660R、Mogul L、Monarch 700、800、880、900、1000、1100、1300、1400等(以上、キャボット社製、商品名)、Color Black FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、Printex 35、U、V、140U、Special Black 6、5、4A、4等(以上、デグッサ社製、商品名)等が挙げられる。
【0171】
イエロー系の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等が挙げられる。
【0172】
マゼンタ系の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(M
n)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、C.I.ピグメントバイオレット 19、23、32、33、36、38、43、5
0等が挙げられる。
【0173】
シアン系の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66等が挙げられる。
【0174】
マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7、10、C.I.ピグメント ブラウン 3、5、25、26、C.I.ピグメント オレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等が挙げられる。
【0175】
以上例示した顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、例示した以外の顔料も適宜用いることができる。
【0176】
非白色インク組成物に含まれる非白色色材の含有量は、使用する色材種により異なるものの良好な発色性を確保することなどから、非白色インク組成物の全質量に対して、合計で1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。
【0177】
顔料は、非白色インク組成物中での分散性を高めるという観点から、表面処理を施した顔料であってもよいし、分散剤等を利用した顔料であってもよい。表面処理を施した顔料とは、物理的処理又は化学的処理によって顔料表面に親水性基(カルボキシル基、スルホン酸基等)を、直接又は間接的に結合させて水性溶媒中に分散可能としたものである(以下、「自己分散型の顔料」ともいう。)。また、分散剤を利用した顔料とは、分散樹脂や分散剤等により顔料を分散させたものであり(以下、「ポリマー分散型顔料」ともいう。)、界面活性剤や樹脂としてはいずれも公知の物質を使用することが可能である。また、「ポリマー分散型顔料」の中には、樹脂により被覆された顔料も含まれる。樹脂により被覆された顔料は、酸析法、転相乳化法及びエマルション重合法などにより得ることができる。
【0178】
<その他の成分>
非白色インク組成物は、上述の白色インク組成物と同様に樹脂、溶媒、界面活性剤、その他の成分を含むことができる。これらの成分は、白色インク組成物で例示した成分を用いることができ、含有量も同様の範囲とすることができるので、その説明を省略する。
【0179】
5.3.2.非白色インク組成物の物性
本実施形態に係る非白色インク組成物は、画像品質とインクジェット記録装置に適用するので、上述の白色インク組成物と同様の物性とすることが好ましい。
5.3.3.非白色インク組成物を付着させる態様
非白色インク付着工程は、インクジェット法を用いて非白色インク組成物を記録媒体Pに付着させる。すなわち、インクジェットヘッドから非白色インク組成物を吐出しつつ記録媒体Pとインクジェットヘッドの相対位置を変化させる走査を行うことにより行われる。非白色インク付着工程では、記録媒体P上に最終的な画像が形成される第1領域Aに非白色インク組成物を付着させる。非白色インク付着工程では、第1領域Aへの非白色インク組成物の合計の付着量は、例えば5mg/inch
2以上30mg/inch
2以下であり、付着量の下限は、7mg/inch
2以上が好ましく、10mg/inch
2以上
がより好ましい。また、付着量の上限は25mg/inch
2以下が好ましく、20mg/inch
2以下がより好ましく、16mg/inch
2以下がより好ましく、13mg/inch
2以下がより好ましい。また、非白色インク組成物の合計の付着量は、最大で前記範囲となることが好ましい。
【0180】
第1領域Aにおける非白色インク組成物の合計の付着量が5mg/inch
2以上であることにより、非白色インク組成物の発色性の十分な画像を形成することができる。また、非白色インク組成物の合計の付着量が30mg/inch
2以下であることにより、処理液との反応を十分に行わせることができ、また、処理液の成分が反応により消費されることで記録媒体Pと画像との密着性が低下することの抑制や、インクの乾燥不足による耐張り付き性の低下の抑制をすることができる。
【0181】
非白色インク付着工程は、白色インク付着工程で白色インク組成物を付着させた後に、完全に乾燥させずに非白色インク組成物を付着させるウェットオンウェット方式を採用することが好ましい。先に付着される白色インク組成物又は非白色インク組成物が付着してから次の非白色インク組成物が付着するまでの時間によって規定するならば、非白色インク付着工程の前に付着された液体(白色インク組成物及び非白色インク組成物のいずれか)が付着した後、1秒以上120秒以下の時間間隔をおいて、次の非白色インク付着工程によって非白色インク組成物が付着されることが好ましい。このような範囲であれば、ウェットオンウェット方式を実現できるため、先に付着したインク組成物を介して例えば処理液の成分を新たに付着させた非白色インク組成物により拡散させやすい。そのため、例えば処理液が先行して記録媒体Pに付着されている場合には、非白色色材の凝集をより起こしやすいので、より発色性の良好な画像を形成することができる。このようにすれば、先に付着される液体の乾燥がより適切な状態で後の組成物が付着される。これにより処理液が後に付着される組成物中へ拡散しやすく、十分に反応させることができる。またこれにより、先に付着される組成物と後に付着される組成物との間のにじみをさらに抑制することができる。
【0182】
このような観点からは、非白色インク付着工程の前に付着されたインク組成物が付着した後、非白色インク組成物を付着させるまでの時間間隔は、1.5秒以上90秒以下が好ましく、2秒以上60秒以下がより好ましく、2秒以上30秒以下がさらに好ましい。このような時間間隔は、非白色インク付着工程がインクジェット法により行われるため、例えば、キャリッジの移動速度や、待機時間などを調節することにより容易に達成することができる。
【0183】
5.4.加熱工程
本実施形態に係る記録方法は、加熱工程を含んでもよい。加熱工程は、記録媒体Pを加熱する工程であり、これを備えることにより、例えば、記録に要する時間を短縮させたり、画像の乾燥性を向上させたりすることができる。
【0184】
加熱工程に用いる加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、記録媒体と接触する部材から熱を記録媒体へ伝導させる伝導法、赤外線などの熱を生じさせる放射線を記録媒体へ放射する放射法、熱を含む空気を記録媒体へ送る対流法などや、これらの組み合わせがあげられる。
【0185】
加熱工程としては、例えば、記録媒体Pの加熱を上述の白色インク付着工程及び非白色インク付着工程の前及び/又は同時に行う第1加熱工程、及び、記録媒体Pの加熱を記録が終了した後で行う第2加熱工程が挙げられる。
【0186】
また、加熱時の記録媒体の表面温度(到達温度)は、第1加熱工程では30℃以上45
℃以下が好ましい。またこの場合下限温度は32℃がより好ましく、35℃がさらに好ましく、上限温度は40℃がより好ましく、38℃がさらに好ましい。このようにすれば、付着されるインク組成物と処理液との反応がより促進される。これにより、よりさらに高速な記録ができる。
【0187】
一方、加熱時の記録媒体の表面温度(到達温度)は、第2加熱工程では50℃以上110℃以下が好ましい。またこの場合下限温度は70℃がより好ましく、80℃がさらに好ましく、上限温度は100℃がより好ましく、90℃がさらに好ましい。この程度の温度であれば、各インクに樹脂が含まれる場合に、これを融着し、かつ、水分を蒸発させることができて早期に使用可能な記録物を得ることができる。
【0188】
5.5.作用効果
本実施形態の記録方法によれば、処理液を用いて、第1領域A(白色インクと非白色インクとが重ねて2層印刷された領域)及び第2領域B(白色インクのみで形成された領域)を含む画像を容易に記録することができる。そして、条件(i)及び条件(ii)の一方又は両方を満たすので、第2領域B(白色領域)における遮蔽性、及び第1領域A(非白色領域)における発色性の両方に優れ、かつ、画像全体の耐擦過性が高く維持された画像を記録することができる。
【0189】
6.変形例の記録方法によって形成される画像
図2は、本実施形態の変形例の記録方法によって形成される画像を説明する模式図である。変形例の記録方法では、上記実施形態と同様に、
図2に示すように、記録媒体Pに、白色インク組成物と非白色インク組成物とを付着させた第1領域Aと、白色インク組成物を付着させ非白色インク組成物を付着させない第2領域Bと、を有する画像領域Cが形成される。したがって画像領域Cは、非白色の第1領域Aと白色の第2領域Bとを含んでいる。
【0190】
変形例では、第1領域Aは、非白色インク組成物が付着された非白色インク層30と白色インク組成物が付着された白色インク層20とが積層して形成されている。第2領域Bは、白色インク組成物が付着された白色インク層20のみが形成されている。
【0191】
また
図2においても、各層の高さ(厚さ)は、付着されたインク組成物の付着量を概念的に表している。変形例の記録方法でも、第1領域Aの高さは第2領域Bと同じでも異なってもよい。
図2の例では、第1領域Aのほうが第2領域Bよりも高く描かれている(図中E参照)が、第1領域Aのほうが第2領域Bよりも低くてもよい。すなわち、第1領域Aへの白色インク組成物及び非白色インク組成物の合計の付着量は、第2領域Bへの白色インク組成物の合計の付着量と同じでも異なってもよい。ただし、いずれの場合でも画像領域Cは、第1領域Aにおける白色インク組成物の合計の付着量のほうが第2領域Bにおける白色インク組成物の合計の付着量よりも少なくなるように形成される。すなわち、変形例においても白色インク組成物の付着量が、第1領域A<第2領域Bの関係にある(以下この状態を「条件(i)」ということがある。)。
【0192】
本変形例の構造を有する記録物を記録するためのインク組成物の付着量や付着タイミングは、上述の実施形態の態様に準じて適宜行うことができるので、詳細な説明は省略する。変形例の記録物であれば、記録媒体Pが透明又は半透明である場合に、記録媒体P側から画像を視認することができ、上記実施形態の記録物と同様に、処理液を用いて、第1領域(白色インクと非白色インクとが重ねて2層印刷された領域)及び第2領域(白色インクのみで形成された領域)を含む画像を容易に記録することができる。そして、条件(i)及び条件(ii)の一方又は両方を満たすので、第2領域(白色領域)における遮蔽性、及び第1領域(非白色領域)における発色性の両方に優れ、かつ、画像全体の耐擦過性
が高く維持された画像を記録することができる。
【0193】
本実施形態の記録方法では、第1領域Aは、記録媒体Pの記録面において、記録媒体Pに近い側に白色インク組成物を付着させるか、記録媒体Pに近い側に非白色インク組成物を付着させるかのいずれを採用しても、記録物に記録される画像を記録媒体Pの記録面側に表示する場合、及び記録面と反対側に表示する場合の両方に対応することができる。
【0194】
7.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0195】
7.1.処理液及びインク組成物の調製
色材の分散処理を行った後、表1の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、実施例及び比較例に用いる処理液、白色インク組成物、非白色インク組成物を得た。表1中の数値は、質量%を示す。
【0197】
表1において、二酸化チタンは、石原産業社製であり、平均粒子径250nmのものを用いた。シアン顔料はC.I.ピグメントブルー15:3(PB15:3)である。樹脂は、スチレンアクリル系樹脂エマルジョン:(昭和電工社製「ポリゾールAM−610」である。ワックスは、ポリエチレン系ワックスBYK社製「AQUACER515」である。界面活性剤は、シロキサン系界面活性剤BYK社製「BYK348」である。カチオンポリマーは、ポリアミン樹脂(カチオマスタ−PD−7、四日市合成社製)である。また、顔料は分散樹脂によって分散されたものを用いた。なお、スチレンアクリル系樹脂分散剤を顔料1質量部に対しシアン顔料では0.5質量部、二酸化チタンでは0.1質量部を添加して顔料の分散に用いたが表中には記載していない。先に顔料を分散樹脂と混合してビーズミルにより水に分散させて顔料分散液を調製し、これと他の成分を用いてインクを調製した。
【0198】
7.2.評価方法
7.2.1.記録物の作成
インクジェット記録装置として、SC−S30650(セイコーエプソン株式会社製)の改造機を用意した。プラテンのヒーターを温度調整可能とした。処理液やインク組成物
を付着させるときの記録媒体(3M社製「IJ8150」透明の塩化ビニールシート(非吸収性媒体))の表面温度を表中の一次加熱温度とした。ただし25℃の例はヒーターオフとした。
【0199】
図3のように複数のノズル列を有する3つのインクジェットヘッドを、ノズル列の延びる方向に配列したヘッド構成(ヘッドセット)とした。該配列はノズル列の延びる方向において、直交方向から見たときに各インクジェットヘッドが重複するようにして、ノズル列のノズル間隔が直交方向から見た場合に切れ目のないような配列とした。
【0200】
各ノズル列はノズル密度360dpi、ノズル数360個とした。記録パターンの記録解像度は、反応液やインク組成物毎に画素が最大720dpi×1440dpiとし、この画素に、表2〜7中の処理液やインク組成物の付着量となるように、ドットを間引きあるいは複数配置して、ドットが記録パターンにおいてなるべく均一に配置されるようにした。
【0201】
また、白色インク組成物と非白色インク組成物とを用いる例では、表に従い各例毎に、3つのインクジェットヘッドのうち上流側(記録媒体の搬送方向を基準として)から、2番目及び3番目のインクジェットヘッドに、白色インク組成物及び非白色インク組成物を充填し、又は、非白色インク組成物及び白色インク組成物を充填した。
【0202】
さらに、処理液に関しては、表に従って各例毎に、3つのインクジェットヘッドのうち上流側(記録媒体の搬送方向を基準として)から、1番目又は2番目のインクジェットヘッドに充填した。すなわち、表に従い、各例毎に、処理液の付着が、1層目の付着よりも先となる場合には、1番目のインクジェットヘッドのノズル列に処理液を充填した。また、処理液を1層目のインク組成物と同時に付着させる場合には、2番目のインクジェットヘッドのノズル列に処理液を充填した。
【0203】
プリンターに記録媒体を導入し、インクジェットヘッド(ヘッドセット)が搭載されたキャリッジによる主走査(走査)と、紙送りである副走査を交互に行い記録した。1回の副走査の距離は1ヘッドの長さより短い距離である。最初に反応液が記録部に付着し、記録が進むにつれて、白色インク組成物、非白色インク組成物と重ねて付着するようにした。インク組成物が付着する順番が逆となる例については、ヘッドセットに充填するインク組成物を入れ替えて実施した。
【0204】
記録媒体の主走査方向の中央に位置する記録部に、最後に白色インク組成物が付着してから該位置に最初に非白色インク組成物が付着するまでの時間が表中の時間となるよう主走査と次の主走査の間の時間を調整した。調整はキャリッジ速度や走査間の停止時間や各ヘッド間の副走査方向の距離を調整して行った。
【0205】
また、1つのインク層を複数回の走査で記録した例では、1層目、2層目ごとに、各走査ごとのインク組成物の付着量をなるべく均等に分けて付着させた。ただし若干の違いは生じる。表中の1走査の最大付着量は、1層目と2層目のうちの1走査あたりの付着量が多いほうの1走査あたりの付着量を記載した。
【0206】
記録後、記録媒体をプラテンより下流にあるアフターヒーターで記録媒体を表中の二次乾燥温度で二次加熱した。二次加熱後、記録完了した記録媒体の記録部を常温で1日放置した。その後以下の評価を行った。
【0207】
なお表2〜7の読み方を実施例1に沿って概要を説明すると、実施例1では、最初に処理液1を第1領域に3.4mg/inch
2で、第2領域に3.6mg/inch
2で1
回又は複数回の走査で付着させ、インク1層目として白色インク組成物を第1領域及び第2領域に8回の走査で1回の走査あたりの最大付着量(最大吐出量)2.3mg/inch
2で合計18mg/inch
2となるように付着させ、20秒の時間間隔をおいて、インク2層目として第1領域に非白色インク組成物を8回の走査で1回の走査あたりの最大付着量2mg/inch
2で合計16mg/inch
2となるように付着させるとともにインク2層目として第2領域に白色インク組成物を8回の走査で1回の走査あたりの最大付着量2.3mg/inch
2で合計18mg/inch
2となるように付着させている。また表中、処理液タイミング、乾燥温度は、記載の通りであり、条件(i)、条件(ii)は本明細書に記載の条件を表している。
【0208】
7.2.2.L*値の評価
得られた記録物の白色部(第2領域)を、側色機:コニカミノルタ社製CM−700dで測色してL*値を求め、以下の基準で評価して表に記載した。
A:80以上
B:78以上80未満
C:78未満
【0209】
7.2.3.遮蔽性の評価
目視で得られた記録物の白色部(第2領域)を以下の基準で評価して表に記載した。
A:印刷面を通して3m離れた蛍光灯を見た際に、蛍光灯の光が見えない。
B:印刷面を通して3m離れた蛍光灯を見た際に、蛍光灯の光が若干見える。
C:印刷面を通して3m離れた蛍光灯を見た際に、蛍光灯の光がはっきり見える。
【0210】
7.2.4.記録品質
目視で得られた記録物の白色部(第2領域)及び非白色部(第1領域)のベタ面を以下の基準でそれぞれ品質評価して表に記載した。
A:ベタ面内に濃淡のムラや、縁のインクたまりは無い。
B:ベタ面内に濃淡のムラはないが、縁のインクたまりが若干ある。
C:ベタ面内に濃淡のムラ、縁のインクたまりが共にある。
【0211】
7.2.5.耐擦性の評価
以下の基準で評価して表に記載した。
A:学振耐擦試験で、荷重500g10回擦った際に、剥がれが生じない。
B:学振耐擦試験で、荷重00g10回擦った際に、評価面積に対し1割以内の剥がれが生じた。
C:学振耐擦試験で、荷重00g10回擦った際に、評価面積に対し1割以上の剥がれが生じた。
【0212】
7.2.6.記録面の貼り付き評価
記録面と、同種の記録媒体の裏面とを重ねて密着させ、35℃で1日放置し、以下の基準で評価して表に記載した。
A:印刷面を重ねて放置した際に貼り付きが生じない。
B:印刷面を重ねて放置した際に貼り付きは生じるが、記録部の剥がれは生じない。
C:印刷面を重ねて放置した際に貼り付き、記録部の剥がれが共に生じる。
【0213】
7.2.7.目詰まり試験
A4サイズの記録媒体に、5cm×5cmのパターンを、記録媒体の主走査方向の中央に、副走査方向に隙間を空けて並べて記録可能なだけ記録した。記録試験を50枚連続し、記録後のノズル列のノズルの吐出状態を評価した。不吐出の発生有無と、ドットの着弾位置が正規の位置から隣接ノズル間距離の3分の1以上の距離ずれたか否かを確認した。
以下の基準で評価して表に記載した。
A:50枚印刷しても不吐出・位置ずれが発生しなかった。
B:50枚印刷すると、位置ずれが発生した。
C:50枚印刷すると、不吐出が発生した。
【0220】
7.3.評価結果
実施例をみると、条件(i)及び条件(ii)の一方又は両方を満たす、実施例1〜29は、いずれも処理液を用いて、白色インクと非白色インクとが重ねて2層印刷された領域及び白色インクを用い非白色インクを用いずに形成された領域を含む画像を記録することができ、白色領域における画質(ベタ品質)、及び非白色領域における画質(ベタ品質)の両方に優れる画像を記録できることがわかった。また、さらに、白色領域の色濃度や遮蔽性が優れ、耐擦性が優れ、耐貼り付き性にも優れた画像を記録できる例もあることもわかった。
【0221】
これに対して上記条件を満たさない比較例1、3、5では、第1領域における画質が悪く、また、処理液を用いなかった比較例2、4では、第1領域及び第2領域の画質が悪いことが分かった。
【0222】
詳細には、実施例1と実施例2の比較から、1走査の最大付着量が少ないほうが画質が特に優れることがわかった。実施例1と実施例3、実施例4の比較から、時間間隔が所定の範囲にあるほうが後から記録する画像の画質が特に優れることがわかった。
【0223】
また、実施例1と実施例7の比較から、処理液を1層目のインクより先に付着させるほうが画質が特に優れることがわかった。一方、処理液を同時に付着させる場合、記録速度向上の点で有利であり、十分な効果が得られることがわかった。実施例2と実施例28の比較から、一次乾燥温度が低いほうが画質は低下する傾向があるが耐目詰まり性の点で優れることがわかった。一次乾燥温度が比較的低い場合でも、優れた耐目詰まり性を得ながらも十分な画質が確保可能な点で、本発明が特に有用であることがわかった。
【0224】
実施例2と実施例29の比較から、付着量比が多い方が画質は優れるが、非白色領域の耐擦性や耐貼り付き性が特に劣る傾向があった。非白色領域は2種のインクを積層させているためインク間の密着力が劣ることや耐擦性低下が目立ちやすい場合があると推測する。このことから非白色領域の画質を向上させるためには、処理液の付着量を増やすよりも、インクの付着量を減らす方が有利であることがわかった。
【0225】
実施例27から、白色領域のインク付着量が比較的少ない場合、白色領域の色濃度や遮蔽性が劣った。白色領域は白色インクにより色濃度や遮蔽性を確保する必要があるため、白色領域の白色インク付着量は多い方が好ましいことが判った。実施例13〜24、26から、条件(i)を満たす場合や条件(ii)を満たす場合でも優れた画質を得ることができることがわかった。
【0226】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。