(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように、前記媒体載置部側の歯部と前記エッジガイド側の歯部との噛み合いによりエッジガイドを位置決めする構成では、前記エッジガイドの位置決め精度は、前記媒体載置部側の歯部(底板側第1ロック歯部41、底板側第2ロック歯部41)のピッチ(歯と歯の間隔)によって決まる。
このため、媒体のサイズによっては、当該媒体の幅に最も近い位置に前記エッジガイドを規定しても、前記エッジガイドと前記媒体の前記側縁との間に若干の隙間ができる場合がある。
【0006】
ここで、前記媒体給送装置において、前記媒体載置部にセットされた前記媒体を、給送ローラー等の給送部により給送すると、前記媒体が斜めに送られる斜行(スキューとも言う)が発生する場合がある。媒体の前記側縁がエッジガイドにより適切にガイドされていると前記斜行を抑制することができる。
反対に、前記エッジガイドと前記媒体の前記側縁との間に隙間があると、前記媒体の斜行が発生する虞がある。
【0007】
前記媒体載置部側の歯部と前記エッジガイド側の歯部との噛み合いによりエッジガイドを位置決めする構成において、前記媒体載置部側の歯部のピッチは、通常、媒体の幅に最も近い位置に前記エッジガイドを規定した場合に前記エッジガイドと前記媒体の前記側縁との間にできる前記隙間が、給送時の前記媒体の斜行に影響しない程度のピッチに設定される。
【0008】
しかし、前記エッジガイドと前記媒体の前記側縁との間にできる前記隙間は、給送される前記媒体の幅が狭いほど斜行に大きく影響する。それは、前記媒体の幅が狭い程当該媒体の長さが短い場合が多いからである。前記エッジガイドと前記媒体の前記側縁との間の隙間が同じであっても媒体の長さが短いほど斜行角度が大きくなる可能性がある。したがって、前記媒体載置部側の歯部のピッチを所定の間隔にした場合に、幅広の媒体に対しては斜行が発生しないが、幅狭の媒体に対しては斜行が生じる場合ある。
一方、前記媒体載置部側の歯部のピッチを小さくすれば、前記エッジガイドの位置決め精度が上がり、幅狭の媒体における斜行の問題もある程度解消できるが、ピッチを小さくするほど前記媒体載置部側の歯部の形成が難しくなる。
【0009】
本発明はこの様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成簡単にして、エッジガイドを媒体のサイズに応じた適切な位置に確実に位置決めすることができる媒体給送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る媒体給送装置は、給送される媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部に設けられ、前記媒体の給送方向と交差する幅方向の側縁をガイドする、前記幅方向に移動可能なガイド部と、前記幅方向における前記ガイド部の位置を決める位置決め機構と、を備え、前記位置決め機構は、前記ガイド部の移動領域のうち、第1領域において、所定間隔で配置された位置決め部によって前記ガイド部の位置を規定し、前記第1領域以外の領域である第2領域において、無段階で前記ガイド部の位置を規定する、ことを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記幅方向における前記ガイド部の位置を決める位置決め機構が、前記ガイド部の移動領域のうち、第1領域において、所定間隔で配置された位置決め部によって前記ガイド部の位置を規定し、前記第1領域以外の領域である第2領域において、無段階で前記ガイド部の位置を規定するので、前記ガイド部を媒体のサイズに応じて位置決めの精度を変えることができる。以って、前記ガイド部を媒体のサイズに応じた適切な位置に位置決めすることができる。
また、例えば、高い位置決め精度が要求される領域(第2領域)を、無段階で前記ガイド部の位置を規定する構成とし、前記第2領域に比して高い位置決め精度を必要としない他の領域(第1領域)を、所定間隔で配置された位置決め部によって前記ガイド部の位置を規定するので、前記ガイド部の移動領域全体における位置決め精度を高める場合よりも、前記位置決め機構の構成を簡単にすることができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記位置決め機構は、前記ガイド部側に設けられる凸部と、前記媒体載置部における前記第1領域に対応する部位に前記所定間隔を空けて複数設けられ、前記凸部を受け入れて前記ガイド部の位置を規定する位置決め部としての凹部と、前記媒体載置部における前記第2領域に対応する部位に設けられ、前記凸部との間の摩擦抵抗により前記ガイド部の位置を規定する摩擦部材と、を備えて構成される、ことを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様の構成を実現できる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記凹部の開口の縁の高さと、前記摩擦部材における前記凸部との接触面の高さと、が同じである、ことを特徴とする。
【0014】
前記凹部の開口の縁の高さよりも、前記摩擦部材における前記凸部との接触面の高さが高いと、前記ガイド部が前記摩擦部材に接触して、前記ガイド部が移動する際に抵抗になる虞がある。前記凹部の開口の縁の高さよりも、前記摩擦部材における前記凸部との接触面の高さが低いと、前記摩擦部材の前記接触面における前記凸部の保持性が低くなる。
本態様によれば、前記凹部の開口の縁の高さと、前記摩擦部材における前記凸部との接触面の高さと、が同じであるので、前記ガイド部の前記幅方向への良好な移動性と前記摩擦部材の前記接触面における前記凸部の保持性とを両立させることができる。
尚、高さが「同じ」とは、厳密に同じ場合だけでなく、例えば、公差の範囲の違いでほぼ同じと言える場合を含むものとする。
【0015】
本発明の第4の態様に係る媒体給送装置は、給送される媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部に設けられ、前記媒体の給送方向と交差する幅方向の側縁をガイドする、前記幅方向に移動可能なガイド部と、前記幅方向における前記ガイド部の位置を決める位置決め機構と、を備え、前記位置決め機構は、前記ガイド部の移動領域のうち、第1領域において、第1の間隔で配置された第1位置決め部によって前記ガイド部の位置を規定し、前記第1領域以外の領域である第2領域において、前記第1の間隔よりも狭い第2の間隔で配置された第2位置決め部によって前記ガイド部の位置を規定する、ことを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記幅方向における前記ガイド部の位置を決める位置決め機構が、前記ガイド部の移動領域のうち、第1領域において、第1の間隔で配置された第1位置決め部によって前記ガイド部の位置を規定し、前記第1領域以外の領域である第2領域において、前記第1の間隔よりも狭い第2の間隔で配置された第2位置決め部によって前記ガイド部の位置を規定するので、前記ガイド部を媒体のサイズに応じて位置決めの精度を変えることができる。以って、前記ガイド部を媒体のサイズに応じた適切な位置に位置決めすることができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記位置決め機構は、前記ガイド部側に設けられる凸部と、前記媒体載置部における前記第1領域に対応する部位に前記第1の間隔を空けて複数設けられ、前記凸部を受け入れて前記ガイド部の位置を規定する第1位置決め部としての第1凹部と、前記媒体載置部における前記第2領域に対応する部位に前記第2の間隔を空けて複数設けられ、前記凸部を受け入れて前記ガイド部の位置を規定する第2位置決め部としての第2凹部と、を備えて構成される、ことを特徴とする。
本態様によれば、第3の態様の構成を実現できる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第2の態様、第3の態様、及び第5の態様のいずれか一つにおいて、前記凸部は、前記凹部と前記摩擦部材、または、前記第1凹部と前記第2凹部に対して接触する接触状態と、前記凹部と前記摩擦部材、または、前記第1凹部と前記第2凹部から離間する離間状態と、の間で変位可能に構成されるとともに、前記接触状態に押圧されている、ことを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記ガイド部を決められた位置でしっかりと保持する構成とすることができる。
【0020】
本発明の第7の態様は、第1の態様から第6の態様のいずれか一つにおいて、前記第2領域は、前記媒体の前記幅方向において、前記第1領域よりも内側に配置される、ことを特徴とする。
【0021】
媒体の幅が小さい程、前記ガイド部の位置決めの精度が、前記媒体の斜行の発生に影響し易い。
本態様によれば、前記第2領域は、前記媒体の前記幅方向において、前記第1領域よりも内側に配置されるので、幅の狭い媒体の側縁の位置を規定する場合の位置決め精度を高め、当該媒体が給送される際の斜行の発生を抑制できる。
【0022】
本発明の第8の態様は、第7の態様において、前記第2領域は、前記ガイド部が、ハガキサイズ以下のサイズの媒体の前記幅方向の側縁の位置を規定する領域である、ことを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、前記ガイド部が、ハガキサイズ以下のサイズの媒体の前記幅方向の側縁の位置を規定する場合の位置決め精度を高め、ハガキサイズ以下のサイズの媒体が給送される際の斜行の発生を抑制できる。
【0024】
本発明の第9の態様は、第1の態様から第6の態様のいずれか一つにおいて、前記ガイド部の移動領域は、前記媒体の前記幅方向における外側に設けられる第1領域である外側第1領域と、前記媒体の前記幅方向における内側に設けられる第1領域である内側第1領域と、前記外側第1領域と前記内側第1領域との間に設けられる前記第2領域と、を含み、
前記第2領域は、少なくともハガキサイズの媒体の前記幅方向の側縁の位置を規定する領域である、ことを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、少なくともハガキサイズの媒体の前記幅方向の側縁の位置を規定する領域を、前記ガイド部の位置決め精度が高い第2領域とするので、ハガキサイズの媒体が給送される際の斜行の発生をより確実に抑制できる。
【0026】
本発明の第10の態様に係る記録装置は、第1の態様から第9の態様のいずれか一つの媒体給送装置と、前記媒体給送装置から給送される前記媒体に記録を行う記録部と、を備える、ことを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、前記媒体給送装置から給送される前記媒体に記録を行う記録部を備える記録装置において、第1の態様から第9の態様のいずれか一つと同様の作用効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
まず、本発明の一実施形態に係る記録装置の概略について説明する。本実施例の記録装置の一例として、インクジェットプリンター1(以下、単にプリンター1という)を例に挙げる。
図1は、本発明の一実施例に係るプリンターの外観斜視図である。
図2は、展開状態にした手差し給紙部を示す斜視図である。
図3は、プリンターにおける用紙の搬送経路を示す概略図である。
図4は、媒体載置部の要部を示す斜視図である。
図5は、媒体載置部の要部を示す平面図である。
図6は、ガイド部の移動機構について説明する図である。
図7は、第1載置部においてガイド部が第1領域に位置する状態を示す断面図である。
図8は、第1載置部においてガイド部が第2領域に位置する状態を示す断面図である。
図9は
図7の要部拡大図である。
図10は、凸部を接触状態にした場合の切替機構を示す斜視図である。
図11は、凸部を離間状態にした場合の切替機構を示す斜視図である。
図12及び
図13は、切替機構の動作について説明する図である。
【0030】
各図において示すX−Y−Z座標系は、X方向が記録装置内の搬送経路における記録媒体の幅方向、Y方向が記録媒体の搬送方向、Z方向が装置高さ方向を示している。各図において−X方向を装置前面側とし、+X方向側を装置背面側とする。
【0031】
■■■プリンターの概要■■■
以下において、主として
図1を参照してプリンター1について説明する。
プリンター1は、用紙に記録を行う「記録部」としてのラインヘッド10を内部に備える記録ユニット2と、原稿を読み取るスキャナーユニット3とを備える複合機として構成されている。記録ユニット2は、用紙束を収容する複数の用紙収容カセット4を備えている。各用紙収容カセット4は、記録ユニット2の前面側(
図1における−X軸方向側)から着脱可能に取り付けられている。尚、本明細書において、「媒体」としての用紙は、一例として普通紙や厚紙、写真用紙等の用紙を指している。
【0032】
用紙収容カセット4に収容された用紙がラインヘッド10に向けて送られて、記録動作が行われる。本実施形態において、ラインヘッド10による記録後の用紙は、ラインヘッド10の上方に設けられる第1排紙トレイ5に用紙P(
図3)をスタックするための第1排出部7か、記録ユニット2の+Y方向側の側面に設けられる第2排紙トレイ8(
図3)に用紙をスタックするための第2排出部9(
図3)かのいずれかに排出されるように構成されている。
【0033】
記録ユニット2は、用紙収容カセット4に収容された用紙を給送して記録を行う場合の他、「媒体給送装置」としての手差し給紙部11(
図2、3も参照)からの給紙が可能に構成されている。言い換えると、手差し給紙部11から給送される用紙に、ラインヘッド10は記録を行うことができる。
手差し給紙部11は、記録ユニット2の−Y方向側の側面に設けられ、
図1に示すように前記側面と面一に収納される収納状態と、
図2に示すように開かれて、用紙を載置する媒体載置部が現れる展開状態と、をとり得る。手差し給紙部11は、回動軸11a(
図3)を軸として回動することにより開閉し、前記収納状態と前記展開状態との間で変位する。尚、手差し給紙部11のより具体的な構成については、後で説明する。
【0034】
また、記録ユニット2の前面側には、操作パネル6が設けられている。操作パネル6には、液晶パネル等の表示手段が設けられている。また、操作パネル6で操作することにより、プリンター1に対して記録動作及び画像読取動作の指示を入力できる。
【0035】
■■■プリンターの搬送経路について■■■
次に、
図3を参照して、プリンター1における手差し給紙部11からの用紙の搬送経路について説明する。
図3において、符号12で示す点線は、手差し給紙部11から給紙した場合の給送経路である第1給送経路12である。手差し給紙部11にセットされた用紙は、第1給送ローラー17により送られて、第1給送経路12からストレート経路13(破線で示す)に入る。
【0036】
第1給送ローラー17の搬送方向下流側には、レジストローラー19が設けられている。本実施形態ではレジストローラー19の位置で、第1給送経路12とストレート経路13とが接続されている。
ストレート経路13は略直線状に延びる経路として構成され、レジストローラー19の下流側に、上流側搬送ローラー対20、ラインヘッド10、及び下流側搬送ローラー対21が設けられている。ストレート経路13には、ラインヘッド10による記録領域が含まれる。
【0037】
ラインヘッド10のヘッド面と対向する領域には、用紙を記録面の反対側から支持する支持部22が配置されている。
ラインヘッド10は、支持部22上のラインヘッド10と対向する記録領域に用紙が搬送された際、用紙の記録面にインク(液体)を噴射して記録を実行するように構成されている。ラインヘッド10は、インクを噴射するノズルが用紙の全幅をカバーする様に設けられた記録ヘッドであり、媒体幅方向への移動を伴わないで媒体幅全体に記録が可能な記録ヘッドとして構成されている。
尚、本実施例のプリンター1はラインヘッド10を備えているが、キャリッジに搭載されて媒体搬送方向と交差する方向に往復移動しながら媒体に液体を噴射して記録を行うシリアル型記録ヘッドを備えていてもよい。
【0038】
続いて、ラインヘッド10による記録が行われた用紙は、記録後の用紙の排出先に応じて、ストレート経路13から、第1排出用経路14(
図3において二点鎖線で示す)か第2排出用経路24(
図3において一点鎖線で示す)かのいずれかへ送られる。
第1排出用経路14は、ラインヘッド10の下流側においてストレート経路13と接続される湾曲経路であり、用紙を、記録面を下にして第1排出部7から排出するように送る経路である。
第2排出用経路24は、ラインヘッド10の下流側においてストレート経路13からそのまま直線状に延びる経路であり、用紙を、記録面を上にして第2排出部9から排出するように送る経路である。
第1排出用経路14及び第2排出用経路24は、下流側搬送ローラー対21の下流側においてストレート経路13から分岐するように設けられている。
【0039】
ストレート経路13から第1排出用経路14に送られた用紙は、第1排出部7から排出され、記録面を下にして第1排紙トレイ5に載置される。
また、ストレート経路13から第2排出用経路24に送られた用紙は、第2排出部9から排出されて、記録面を上にして第2排紙トレイ8に載置される。
【0040】
尚、用紙収容カセット4に収容された用紙は、第2給送ローラー18によりピックアップされて、第2給送経路25(
図3において実線で示す)に送られる。第2給送経路25は、レジストローラー19の手前でストレート経路13に合流している。ストレート経路13以降の経搬送路は、手差し給紙部11から給紙された用紙の搬送経路と同様であるため、その説明は省略する。
【0041】
また、プリンター1は、第1面への記録後に、その裏面である第2面への記録を行う両面記録を実行可能である。第1面への記録後の用紙は、スイッチバック経路15及び反転経路16を通って反転されるように構成されている。
【0042】
■■■手差し給紙部について■■■
以下、本発明の要部である手差し給紙部11(媒体給送装置)の構成について説明する。
図2に示す手差し給紙部11は、給送される用紙を載置する媒体載置部30と、媒体載置部30に設けられ、用紙の給送方向(+Y方向)と交差する幅方向(X軸方向)の側縁をガイドするガイド部31a、31bと、を備えている。
【0043】
図2に示す媒体載置部30は、ガイド部31a、31bが設けられるとともに、記録ユニット2の本体に設けられる回動軸11a(
図3)を受ける軸受け部35a、35b(
図4)を有する第1載置部32(
図4及び
図5も参照)と、第1載置部32の上流側において用紙を支持する第2載置部33と、第2載置部33に収納及び引き出し可能に設けられる第3載置部34とを備えている。第3載置部34は、媒体載置部30にセットされる用紙の長さ(媒体搬送方向のサイズ)に応じて、引き出せるようになっている。また、手差し給紙部11を収納状態(
図1)にする際には、第3載置部34は第2載置部33に収納される。
【0044】
ガイド部31a、31bは、第1載置部32の上面に対し、用紙の幅サイズに応じてX軸方向にスライド移動可能に設けられている。本実施例において、ガイド部31a、31bは、一方のガイド部31aのX軸方向への移動に追従して、他方のガイド部31bが相対する方向に移動するように構成されている。
すなわち、媒体載置部30において、用紙は幅方向の中央に揃えられ、所謂、センター給紙方式で給紙されるように構成されている。
尚、
図5において、実線で示すガイド部31a、31bの位置は、媒体載置部30に載置可能な最大幅サイズの用紙の側縁に対応する位置であり、点線で示すガイド部31a、31bの位置は、媒体載置部30に載置可能な最小幅サイズの用紙の側縁に対応する位置であり、二点鎖線で示すガイド部31a、31bの位置は、ハガキサイズの用紙の側縁に対応する位置である。
【0045】
<<<ガイド部の移動機構について>>>
以下、
図6を参照して、ガイド部31a及びガイド部31bについて説明する。
ガイド部31a及びガイド部31bの移動機構として、X軸方向に延設されて一端側がガイド部31aに設けられる腕部36a、及びX軸方向に延設されて一端側がガイド部31bに設けられる腕部36bと、腕部36aに設けられる複数の歯37aによって構成されるラック部38a、及び腕部36bに設けられる複数の歯37bによって構成されるラック部38bと、第1載置部32の幅方向の中央部に回転可能に取り付けられるピニオン歯車39と、を備えている。ラック部38a及びラック部38bは、
図6の上図に示すようにピニオン歯車39と噛み合っている。
尚、
図6においては、第1載置部32は点線で示している。ガイド部31a及びガイド部31bの移動機構(腕部36a、36b、ラック部38a、38b、及びピニオン歯車39)は、実際には、第1載置部32の下面(−Z方向側)に配置されている。
【0046】
図6の上図は、ガイド部31a、31bが、媒体載置部30にセット可能な最大サイズの用紙の幅方向に対応する位置、つまり最も外側に配置されている。
図6の上図の状態から、ガイド部31aを幅方向の外側から内側へ、つまり+X方向に移動させると、腕部36aも+X方向に移動し、これに伴ってラック部38aと噛み合うピニオン歯車39が両矢印で示す方向のうち、−A方向に回転する。
【0047】
ピニオン歯車39が−A方向に回転すると、ピニオン歯車39と噛み合うラック部38bを有する腕部36bが−X方向に移動する。以って、ガイド部31bも−X方向に移動する。複数の歯37aの間隔と、複数の歯37bの間隔は、それぞれ同じに設定されており、ガイド部31aを用紙の幅方向の内側に移動させると、
図6の下図のように、ガイド部31bもガイド部31aと同じだけ用紙の幅方向の内側に移動する。
逆に、ガイド部31aを幅方向の内側から外側へ、つまり−X方向に移動させる場合には、ピニオン歯車39が+A方向に回転し、ガイド部31bが+X方向に移動する。
【0048】
<<<ガイド部の位置決め機構について>>>
ここで、ガイド部31a及びガイド部31bの位置を、媒体載置部30にセットされる用紙の幅サイズに適切に合わせるため、第1載置部32には、
図4及び
図5に示すように、前記幅方向におけるガイド部31a、31bの位置を決める位置決め機構40が設けられている。本実施形態において、位置決め機構40は、一方側のガイド部であるガイド部31aの移動領域M(
図7)に設けられている。
そして、位置決め機構40は、
図7に示すガイド部31aの移動領域Mのうち、第1領域M1において、所定間隔d(
図9)で配置された位置決め部41aによってガイド部31aの位置を規定し、第1領域M1以外の領域である第2領域M2において、無段階でガイド部31aの位置を規定するように構成されている。
【0049】
より具体的には、位置決め機構40は、
図7及び
図9に示すように、ガイド部31a側に設けられる凸部42と、第1載置部32(媒体載置部30)における第1領域M1に対応する部位に所定間隔d(
図9)を空けて複数設けられ、凸部42を受け入れてガイド部31aの位置を規定する位置決め部41aとしての凹部43aと、
図7に示す第1載置部32(媒体載置部30)における第2領域M2に対応する部位に設けられ、凸部42との間の摩擦抵抗によりガイド部31aの位置を規定する摩擦部材44と、を備えて構成されている。摩擦部材44としては、例えば、ゴム、コルク、樹脂材料等の摩擦抵抗を有する弾性部材が用いられる。
【0050】
第1領域M1におけるガイド部31aの位置決めは、
図7に示すように、ガイド部31a側に設けられる凸部42と、第1載置部32側に所定間隔d(
図9)を空けて複数設けられる凹部43aと、が嵌合することにより行われる。したがって、第1領域M1における位置決め精度は、複数の凹部43aの間の所定間隔dに応じた精度になる。
一方、第2領域M2におけるガイド部31aの位置決めは、
図8に示すように、摩擦部材44と凸部42との間の摩擦抵抗によりガイド部31aの位置を規定して行われるので、無段階でガイド部31aの位置を規定することができる。したがって、第2領域M2における位置決め精度は、第1領域M1における位置決め精度よりも高められる。
【0051】
尚、ガイド部31aには、ガイド部31aを位置決め機構40によって決められた位置でロックするロック状態と、ガイド部31aの位置を変えられるようにフリーにする非ロック状態と、を切り替える切替機構50が設けられている。切替機構50については後で説明する。
【0052】
また、第2領域M2の更に内側(+X方向側)には、第1領域M3が設けられている。第1領域M3は、第1領域M1を、用紙の前記幅方向における外側に設けられる第1領域である「外側第1領域」とした場合に、第1領域M1よりも内側に設けられる「内側第1領域」である。
言い換えると、ガイド部31aの移動領域Mにおいて、第1領域M1(外側第1領域)と第1領域M3(内側第1領域)との間に、第2領域M2が設けられている。
そして、第2領域M2は、少なくともハガキサイズの用紙の前記幅方向の側縁の位置を規定する領域である。
【0053】
第1載置部32(媒体載置部30)における第1領域M3には、第1領域M1に設けられた位置決め部41aと同じ所定間隔dを空けて複数設けられ、凸部42を受け入れてガイド部31aの位置を規定する位置決め部41bとしての凹部43bが設けられている。
【0054】
前記幅方向におけるガイド部31aの位置を決める位置決め機構40が、上記構成を有することにより、以下の作用効果が得られる。
すなわち、位置決め機構40が、ガイド部31aの移動領域Mのうち、第1領域M1、第1領域M3において、所定間隔dで配置された位置決め部41a(凹部43a)、位置決め部41b(凹部43b)によってガイド部31aの位置を規定し、第1領域M1、第1領域M3以外の領域である第2領域M2において、摩擦部材44を配置し、無段階でガイド部31aの位置を規定するので、ガイド部31aを用紙のサイズに応じて位置決めの精度を変えることができる。以って、ガイド部31aを用紙のサイズに応じた適切な位置に位置決めすることができる。
【0055】
ガイド部31aが用紙サイズに適した位置より外側にあると、ガイドされる用紙が斜行する場合がある。例えば、用紙の+X側の先端の角部と−X側の先端の角部の位置が、Y軸方向において所定量(例えば1mm)ずれるように斜行した場合、用紙の幅が狭い程、用紙の斜行の角度は大きくなる。また、用紙は、幅が狭い程長さも短い傾向がある。用紙の長さが短い場合には、用紙先端が
図3に示す第1給送ローラー17に達するまでに、用紙後端側がガイド部31a、31bによるガイドからほとんど外れた状態となるため、用紙の斜行の角度が大きくなることが想定できる。つまり、幅狭の用紙ほど、ガイド部31aの位置決めの精度が、用紙の斜行の発生に影響し易くなる傾向がある。
本実施形態においては、無段階の位置決めが可能であり、位置決め精度の高い第2領域M2が、少なくともハガキサイズの用紙の前記幅方向の側縁の位置を規定する領域であるので、ハガキサイズの側縁の位置を規定する場合の位置決め精度を高め、斜行の発生を抑制できる。
【0056】
また、高い位置決め精度が求められる第2領域M2を、無段階でガイド部31aの位置を規定する構成とし、第2領域M2に比して高い位置決め精度を必要としない他の領域第1領域M1を、所定間隔dで配置された位置決め部41aによってガイド部31aの位置を規定するので、ガイド部31aの移動領域M全体における位置決め精度を高める場合(例えば、移動領域Mすべてに摩擦部材を設ける等)よりも、位置決め機構40を安価且つ構成簡単に形成することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、第2領域M2の前記幅方向における内側に、第1領域M3を設ける構成としたが、第1領域M3(内側第1領域)を設けない構成とすることもできる。すなわち、ガイド部31aの移動領域Mのうち、第1領域M1の前記幅方向の内側すべてを第2領域M2とすることができる。更に換言すると、第2領域M2が、前記幅方向において、第1領域M1よりも内側に配置される構成とすることができる。
第2領域M2は、ガイド部31aが、ハガキサイズ以下のサイズの媒体の前記幅方向の側縁の位置を規定する領域となる。
このことによって、ガイド部31aが、ハガキサイズ以下の用紙の前記幅方向の側縁の位置を規定する場合の位置決め精度を高め、ハガキサイズ以下の用紙が給送される際の斜行の発生を抑制できる。
【0058】
尚、例えば、特にハガキサイズの用紙の使用頻度が高く、ハガキサイズの用紙に対するガイド位置の精度を高めることに特化する場合には、第1領域M3(内側第1領域)を設ける
図5の構成にすると、摩擦部材44を設ける領域が少なくなり、以って必要な摩擦部材44も少なくて足りるので、コスト面で有利である。
【0059】
また、本実施形態において、凹部43a開口の縁45(
図9)の高さと、摩擦部材44における凸部42との接触面の高さと、は同じ高さになるように配置されている。凹部43bの開口の縁(図示省略)も凹部43a開口の縁45と同じ高さである。
【0060】
凹部43aの開口の縁45の高さよりも、摩擦部材44における凸部42との接触面の高さが高いと、ガイド部31aが摩擦部材44に接触して、ガイド部31aが移動する際に抵抗になる虞がある。凹部43aの開口の縁の高さよりも、摩擦部材44における凸部42との接触面の高さが低いと、摩擦部材44の前記接触面における凸部42の保持性が低くなる。
凹部43aの開口の縁45の高さと、摩擦部材44の前記接触面の高さと、が同じ高さであれば、ガイド部31aの前記幅方向への良好な移動性と摩擦部材44の前記接触面における凸部42の保持性とを両立させることができる。
【0061】
また、
図7及び
図8に示すように、凹部43a、凹部43bと摩擦部材44は、第1載置部32において用紙を主として支持する載置面32aよりも下方に位置する。このことにより、凹部43aの開口の縁45、凹部43bの開口の縁(符号なし)、及び摩擦部材44が用紙に接触して当該用紙の搬送抵抗となる虞を低減できる。
【0062】
<<<切替機構について>>>
前述したように、ガイド部31aには、ガイド部31aを位置決め機構40によって決められた位置でロックするロック状態と、ガイド部31aの位置を変えられるようにフリーにする非ロック状態と、を切り替える切替機構50(
図4)が設けられている。
切替機構50は、
図10及び
図11に示すように、その一部がガイド部31aの内部に設けられている。
図10及び
図11は、ガイド部31aを構成する外側面部46を外した状態を示している。
【0063】
切替機構50(
図10及び
図11)は、ユーザーが操作するための操作部51(
図4も参照)と、先端に凸部42を備える変位部材52と、変位部材52を保持する保持部53と、を備えている。操作部51は、保持部53に連結される軸部54に取り付けられている。
【0064】
図13に示すように、変位部材52は、凸部42が、凹部43a、43bと摩擦部材44に対して接触する接触状態(
図13の左図)と、凹部43aと摩擦部材44から離間する離間状態(
図13の右図)と、の間で変位可能に構成されるとともに、コイルバネ等の押圧部材55によって前記接触状態に押圧されている。
そして、凸部42が前記接触状態にあるときにガイド部31aがロックされ(ロック状態)、凸部42が前記離間状態にあるときにガイド部31aが自由に移動可能になる(前記非ロック状態)。
【0065】
より具体的には、
図10及び
図12の左図のように、操作部51が外側面部46の面に沿う向きになっている場合に、
図13の左図のように凸部42が前記接触状態、すなわち、ガイド部31aが前記ロック状態となり、
図11及び
図12の右図のように、操作部51が−Y方向側から見て時計回りに回動された場合に、変位部材52が上方に変位して、
図13の右図のように凸部42が前記離間状態、すなわち、ガイド部31aが前記非ロック状態となるように構成されている。
【0066】
凸部42が凹部43a、43bに嵌合しつつ押圧されると、凸部42が凹部43a、43bにより確実に保持される。また、凸部42が摩擦部材44に接触して押圧されると、摩擦部材44(ゴムやコルク等の弾性部材により形成される)に凸部42が押し込まれてしっかりと保持される。以って、ガイド部31aを決められた位置で確実に保持する構成とすることができる。
尚、
図12において、点線で示す位置B1は、前記接触状態における凸部42のZ軸方向の位置であり、点線で示す位置B2は、前記離間状態における凸部42のZ軸方向の位置である。
【0067】
[第2実施形態]
第2実施形態では、
図14を参照して、位置決め機構の他の例について説明する。
図14は、第2実施形態に係る位置決め機構について説明する図である。本実施形態において、第1実施形態と同様の構成に対しては第1実施形態と同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0068】
図14に示す位置決め機構60は、ガイド部31aの移動領域Mのうち、第1領域M1、M3において、第1の間隔d1で配置された「第1位置決め部」としての第1凹部61a、61bによってガイド部31aの位置を規定し、第1領域M1、M3以外の領域である第2領域M2において、第1の間隔d1よりも狭い第2の間隔d2で配置された「第2位置決め部」としての第2凹部62によってガイド部31aの位置を規定する構成である。
第1凹部61a、61b及び第2凹部62は、ガイド部31a側に設けられる凸部42を受け入れてガイド部31aの位置を規定する。
【0069】
第1実施形態では、第2領域M2において、摩擦部材44によりガイド部31aの位置を無段階で規定したが、本実施形態では、第2領域M2に、第1領域M1、M3における第1の間隔d1よりも狭い第2の間隔d2で配置された第2凹部62によってガイド部31aの位置を規定することができる。
第2凹部62は、第1凹部61a、61bよりも狭い間隔で設けられるので、第2領域M2におけるガイド部31aの位置決め精度を、第1領域M1、M3におけるガイド部31aの位置決め精度よりも高めることができる。
【0070】
また、本実施形態においては、凸部42は、第1凹部61a、61bと第2凹部62に対して接触する接触状態と、第1凹部61a、61bと第2凹部62から離間する離間状態と、の間で変位可能に構成されるとともに、押圧部材55により前記接触状態に押圧されている。以って、ガイド部31aを決められた位置でしっかりと保持する構成とすることができる。
【0071】
[第3実施形態]
第3実施形態では、
図15を参照して、手差し給紙部(媒体給送装置)を構成する媒体載置部の他の例について説明する。
図15は、第3実施形態に係る媒体載置部について説明する図である。
本実施形態で説明する媒体載置部70は、用紙の幅方向の側縁をガイドする一対のガイド部71a、71bを備えている。ガイド部71a、71bは、一方のガイド部71bが固定されており、他方のガイド部71aのみがX軸方向に移動するように構成された、所謂、片寄せ給紙方式である。
図15の上図は、ガイド部71aが、媒体載置部70に載置可能な最大幅サイズの用紙の側縁に対応する位置にある状態を示し、
図15の下図は、ガイド部71aが、ハガキサイズの用紙の側縁に対応する位置にある状態を示している。
【0072】
媒体載置部70は、移動するガイド部71aに対して、第1実施形態における位置決め機構40と同様の構成を有する位置決め機構72が設けられている。
位置決め機構72は、ガイド部71aの移動領域M(
図7)に設けられており、移動領域Mのうち、第1領域M1及び第1領域M3において、所定間隔で配置された凹部73a及び凹部73b(位置決め部)によってガイド部31aの位置を規定し、第1領域M1と第1領域M3の間の領域である第2領域M2において、摩擦部材74によって無段階でガイド部31aの位置を規定するように構成されている。第2領域M2は、少なくともハガキサイズの用紙の前記幅方向の側縁の位置を規定する領域である。
尚、ガイド部31a側には、凹部73aと嵌合可能な凸部(不図示)が設けられている。
【0073】
以上の構成により、第1実施形態において説明した効果と同様の効果が得られる。
尚、位置決め機構72は、第1実施形態と同様、第1領域M3に摩擦部材74を設け、第1領域M1の前記幅方向の内側すべてを第2領域M2とする構成とすることができる。また、位置決め機構72に替えて、第2実施形態における位置決め機構60と同じ構成の位置決め機構を設けることも可能である。
【0074】
尚、各実施形態で説明したガイド部の位置決め機構の構成は、例えば、用紙の搬送方向の後端をガイドするとともに、用紙サイズに応じて前記搬送方向に沿う方向(Y軸方向)に移動可能な後端ガイドの位置決め機構に適用することも可能である。
また、スキャナーに代表される画像読取装置において読み取られる原稿を給送する媒体給送装置に対して設けることもできる。
【0075】
また、本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
1…インクジェットプリンター(記録装置)、2…記録ユニット、
3…スキャナーユニット、4…用紙収容カセット、5…第1排紙トレイ、
6…操作パネル、7…第1排出部、8…第2排紙トレイ、9…第2排出部、
10…ラインヘッド(記録部)、11…手差し給紙部(媒体給送装置)、
12…第1給送経路、13…ストレート経路、14…第1排出用経路、
15…スイッチバック経路、16…反転経路、17…第1給送ローラー、
18…第2給送ローラー、19…レジストローラー、
20…上流側搬送ローラー対、21…下流側搬送ローラー対、22…支持部、
24…第2排出用経路、25…第2給送経路、30…媒体載置部、
31a、31b…ガイド部、32…第1載置部、33…第2載置部、
34…第3載置部、35a、35b…軸受け部、36a、36b…腕部、
37a、37b…歯、38a、38b…ラック部、39…ピニオン歯車、
40…位置決め機構、41…位置決め部、42…凸部、
43a、43b…凹部、44…摩擦部材、45…縁、46…外側面部、
50…切替機構、51…操作部、52…変位部材、53…保持部、54…軸部、
55…押圧部材、60…位置決め機構、61a、61b…第1凹部、62…第2凹部、
70…媒体載置部、71a、71b…ガイド部、72…位置決め機構、
73a、73b…凹部、74…摩擦部材