(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
図1〜
図4は本発明の一の実施形態に係る三次元造形物の製造装置の構成を示す概略構成図である。
ここで、本実施形態の三次元造形物の製造装置は、2種類の材料供給部(ヘッドベース)を備えている。このうち、
図1及び
図2は、一の材料供給部(三次元造形物の構成材料を供給する材料供給部)のみを表した図である。また、
図3及び
図4は、別の一の材料供給部(三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部を形成する支持部形成用材料を供給する材料供給部)のみを表した図である。
なお、本明細書における「三次元造形」とは、いわゆる立体造形物を形成することを示すものであって、例えば、平板状、いわゆる二次元形状の形状であっても厚さを有する形状を形成することも含まれる。また、「支持する」とは、下側から支持する場合の他、横側から支持する場合や、場合によっては上側から支持する場合も含む意味である。
また、本実施例の構成材料は、三次元造形物を構成する粉末粒子と溶媒と該溶媒に可溶なバインダーとを含む三次元造形用ペースト(ペースト状の組成物)である。そして、本実施例の支持部形成用材料は、支持層形成用粒子と溶媒と該溶媒に可溶なバインダーとを含む三次元造形用ペースト(ペースト状の組成物)である。
【0020】
図1及び
図3に示す三次元造形物の製造装置2000(以下、形成装置2000という)は、基台110と、基台110に備える駆動手段としての駆動装置111によって、図示するX,Y,Z方向の移動、あるいはZ軸を中心とする回転方向に駆動可能に備えられたステージ120を備えている。
そして、
図1及び
図2で表されるように、一方の端部が基台110に固定され、他方の端部に構成材料を吐出する構成材料吐出部1230を備えるヘッドユニット1400を複数保持するヘッドベース1100が保持固定される、ヘッドベース支持部130を備えている。
また、
図3及び
図4で表されるように、一方の端部が基台110に固定され、他方の端部に三次元造形物を支持する支持層形成用材料を吐出する支持層形成用材料吐出部1730を備えるヘッドユニット1900を複数保持するヘッドベース1600が保持固定される、ヘッドベース支持部730と、を備えている。
ここで、ヘッドベース1100と、ヘッドベース1600とは、XY平面において並列に設けられている。
なお、構成材料吐出部1230と支持層形成用材料吐出部1730とは同様の構成のものである。ただし、このような構成に限定されない。
【0021】
ステージ120上には、三次元造形物500が形成される過程での層501、502及び503が形成される。三次元造形物500の形成には、電磁波照射部1000などによる熱エネルギーの照射がなされるため、ステージ120の熱からの保護のため、耐熱性を有する試料プレート121を用いて、試料プレート121の上に三次元造形物500を形成してもよい。本実施形態の試料プレート121は頑丈で製造の容易な金属製のものである。しかしながら、試料プレート121としては、例えばセラミック板を用いることで、高い耐熱性を得ることができ、更に脱脂や焼結などがされる三次元造形物の構成材料との反応性も低く、三次元造形物500の変質を防止することができる。なお、
図1及び
図3では、説明の便宜上、層501、502及び503の3層を例示したが、所望の三次元造形物500の形状まで(
図1及び
図3中の層50nまで)積層される。
ここで、層501、502、503、・・・50nは、各々、支持層形成用材料吐出部1730から吐出される支持層形成用材料で形成される支持層300と、構成材料吐出部1230から吐出される構成材料で形成される構成層310と、で構成される。
なお、本実施形態の形成装置2000は、三次元造形物500の構成材料のほか支持層形成用材料を用いて層501、502、503、・・・50nと複数の層を形成可能な三次元造形物の製造装置であるが、支持層形成用材料を用いることなく複数の層を形成可能な三次元造形物の製造装置であってもよい。
【0022】
また、
図2は、
図1に示すヘッドベース1100を示すC部拡大概念図である。
図2に示すように、ヘッドベース1100は、複数のヘッドユニット1400が保持されている。詳細は後述するが、1つのヘッドユニット1400は、構成材料供給装置1200に備える構成材料吐出部1230が保持治具1400aに保持されることで構成される。構成材料吐出部1230は、吐出ノズル1230aと、材料供給コントローラー1500によって吐出ノズル1230aから構成材料を吐出させる吐出駆動部1230bと、を備えている。
【0023】
図4は、
図3に示すヘッドベース1600を示すC’部拡大概念図である。
図4に示すように、ヘッドベース1600は、複数のヘッドユニット1900が保持されている。ヘッドユニット1900は、支持層形成用材料供給装置1700に備える支持層形成用材料吐出部1730が保持治具1900aに保持されることで構成される。支持層形成用材料吐出部1730は、吐出ノズル1730aと、材料供給コントローラー1500によって吐出ノズル1730aから支持層形成用材料を吐出させる吐出駆動部1730bと、を備えている。
【0024】
図1及び
図2で表されるように、構成材料吐出部1230は、ヘッドベース1100に保持されるヘッドユニット1400それぞれに対応させた構成材料を収容した構成材料供給ユニット1210と供給チューブ1220により接続されている。そして、所定の構成材料が構成材料供給ユニット1210から構成材料吐出部1230に供給される。構成材料供給ユニット1210には、本実施形態に係る形成装置2000によって造形される三次元造形物500の構成材料が構成材料収容部1210aに収容され、個々の構成材料収容部1210aは、供給チューブ1220によって、個々の構成材料吐出部1230に接続されている。このように、個々の構成材料収容部1210aを備えることにより、ヘッドベース1100から、複数の異なる種類の材料を供給することができる。
【0025】
図3及び
図4で表されるように、支持層形成用材料吐出部1730は、ヘッドベース1600に保持されるヘッドユニット1900それぞれに対応させた支持層形成用材料を収容した支持層形成用材料供給ユニット1710と供給チューブ1720により接続されている。そして、所定の支持層形成用材料が支持層形成用材料供給ユニット1710から支持層形成用材料吐出部1730に供給される。支持層形成用材料供給ユニット1710には、三次元造形物500を造形する際の支持層を構成する支持層形成用材料が支持層形成用材料収容部1710aに収容され、個々の支持層形成用材料収容部1710aは、供給チューブ1720によって、個々の支持層形成用材料吐出部1730に接続されている。このように、個々の支持層形成用材料収容部1710aを備えることにより、ヘッドベース1600から、複数の異なる種類の支持層形成用材料を供給することができる。
なお、本実施例の形成装置2000で使用される構成材料及び支持層形成用材料としての各々の三次元造形用ペーストについての詳細は後述する。
【0026】
形成装置2000には、図示しない、例えばパーソナルコンピューター等のデータ出力装置から出力される三次元造形物の造形用データに基づいて、上述したステージ120、構成材料供給装置1200に備える構成材料吐出部1230、並びに、支持層形成用材料供給装置1700に備える支持層形成用材料吐出部1730を制御する制御手段としての制御ユニット400を備えている。そして、制御ユニット400には、図示しないが、ステージ120及び構成材料吐出部1230が連携して駆動及び動作するよう制御し、ステージ120及び支持層形成用材料吐出部1730が連携して駆動及び動作するよう制御する制御部を備えている。
【0027】
基台110に移動可能に備えられているステージ120は、制御ユニット400からの制御信号に基づき、ステージコントローラー410においてステージ120の移動開始と停止、移動方向、移動量、移動速度などを制御する信号が生成され、基台110に備える駆動装置111に送られ、図示するX、Y、Z方向にステージ120が移動する。ヘッドユニット1400に備える構成材料吐出部1230では、制御ユニット400からの制御信号に基づき、材料供給コントローラー1500において構成材料吐出部1230に備える吐出駆動部1230bにおける吐出ノズル1230aからの材料吐出量などを制御する信号が生成され、生成された信号により吐出ノズル1230aから所定量の構成材料が吐出される。
同様に、ヘッドユニット1900に備える支持層形成用材料吐出部1730では、制御ユニット400からの制御信号に基づき、材料供給コントローラー1500において支持層形成用材料吐出部1730に備える吐出駆動部1730bにおける吐出ノズル1730aからの材料吐出量などを制御する信号が生成され、生成された信号により吐出ノズル1730aから所定量の支持層形成用材料が吐出される。
また、電磁波照射部1000も、制御ユニット400による制御で、ステージ120(試料プレート121)に形成された三次元造形物500の層501、502、503、・・・50nに向けて、電磁波を照射可能な構成になっている。
【0028】
次に、ヘッドユニット1400についてさらに詳細に説明する。なお、ヘッドユニット1900は、ヘッドユニット1400と同様の構成である。このため、ヘッドユニット1900についての詳細な構成の説明は省略する。
図5、並びに、
図6〜
図8は、ヘッドベース1100に複数保持されるヘッドユニット1400及び構成材料吐出部1230の保持形態の一例を示し、このうち
図6〜
図8は、
図2に示す矢印D方向からのヘッドベース1100の外観図である。
【0029】
図5に示すように、ヘッドベース1100に複数のヘッドユニット1400が、図示しない固定手段によって保持されている。また、
図6〜
図8で表されるように、本実施形態に係る形成装置2000のヘッドベース1100では、図下方より第1列目のヘッドユニット1401、第2列目のヘッドユニット1402、第3列目のヘッドユニット1403、そして第4列目のヘッドユニット1404の、4ユニットが千鳥状(互い違い)に配置されたヘッドユニット1400を備えている。そして、
図6で表されるように、ステージ120をヘッドベース1100に対してX方向に移動させながら各ヘッドユニット1400から構成材料を吐出させて構成層構成部50(構成層構成部50a、50b、50c及び50d)が形成される。構成層構成部50の形成手順については後述する。
なお、図示しないが、それぞれのヘッドユニット1401〜1404に備える構成材料吐出部1230は、吐出駆動部1230bを介して構成材料供給ユニット1210に供給チューブ1220で繋がれる構成となっている。
【0030】
図5に示すように、構成材料吐出部1230は吐出ノズル1230aから、ステージ120上に載置された試料プレート121上に向けて三次元造形物の構成材料(ペースト状の組成物)である材料Mが吐出される。ヘッドユニット1401では、材料Mが液滴状で吐出される吐出形態を例示し、ヘッドユニット1402では、材料Mが連続体状で供給される吐出形態を例示している。材料Mの吐出形態は、液滴状であっても連続体状であっても、どちらでもよいが、本実施形態では材料Mは液滴状で吐出される形態により説明する。
【0031】
吐出ノズル1230aから液滴状に吐出された材料Mは、略重力方向に飛翔し、試料プレート121上に着弾する。ステージ120は移動し、着弾した材料Mにより構成層構成部50が形成される。この構成層構成部50の集合体が、試料プレート121上に形成される三次元造形物500の構成層310(
図1参照)として形成される。
【0032】
次に、構成層構成部50の形成手順について、
図6〜
図8、並びに、
図9及び
図10を用いて説明する。
図6〜
図8は、本実施形態のヘッドユニット1400の配置と、構成層構成部50の形成形態と、の関係を概念的に説明する平面図である。そして、
図9及び
図10は、構成層構成部50の形成形態を概念的に表す側面図である。
【0033】
まず、ステージ120が+X方向に移動すると、複数の吐出ノズル1230aから材料Mが液滴状に吐出され、試料プレート121の所定の位置に材料Mが配置され、構成層構成部50が形成される。
より具体的には、まず、
図9で表されるように、ステージ120を+X方向に移動させながら、複数の吐出ノズル1230aから試料プレート121の所定の位置に一定の間隔で材料Mを配置させる。
【0034】
次に、
図10で表されるように、ステージ120を−X方向に移動させながら、一定の間隔で配置された材料Mの間を埋めるように新たに材料Mを配置させる。
ただし、ステージ120を+X方向に移動させながら、複数の吐出ノズル1230aから試料プレート121の所定の位置に材料Mが重なるように(間隔を空けないように)配置させる構成(ステージ120のX方向における往復移動で構成層構成部50を形成する構成ではなく、ステージ120のX方向における片側の移動のみで構成層構成部50を形成する構成)としても良い。
【0035】
上記のように構成層構成部50を形成することによって、
図6で表されるような、各ヘッドユニット1401、1402、1403及び1404のX方向における1ライン分(Y方向における1ライン目)の構成層構成部50(構成層構成部50a、50b、50c及び50d)が形成される。
【0036】
次に、各ヘッドユニット1401、1402、1403及び1404のY方向における2ライン目の構成層構成部50’(構成層構成部50a’、50b’、50c’及び50d’)を形成するため、−Y方向にヘッドベース1100を移動させる。移動量は、ノズル間のピッチをPとすると、P/n(nは自然数)ピッチ分だけ−Y方向に移動させる。本実施例ではnを3として説明する。
図9及び
図10で表されるような、上記と同様な動作を行うことで、
図7で表されるような、Y方向における2ライン目の構成層構成部50’(構成層構成部50a’、50b’、50c’及び50d’)が形成される。
【0037】
次に、各ヘッドユニット1401、1402、1403及び1404のY方向における3ライン目の構成層構成部50’’
(構成層構成部50a’’、50b’’、50c’’及び50d’’)を形成するため、−Y方向にヘッドベース1100を移動させる。移動量は、P/3ピッチ分だけ−Y方向に移動させる。
そして、
図9及び
図10で表されるような、上記と同様な動作を行うことで、
図8で表されるような、Y方向における3ライン目の構成層構成部50’’
(構成層構成部50a’’、50b’’、50c’’及び50d’’)が形成され、構成層310を得ることができる。
【0038】
また、構成材料吐出部1230から吐出される材料Mを、ヘッドユニット1401、1402、1403、1404のいずれか1ユニット、あるいは2ユニット以上からその他ヘッドユニットと異なる構成材料を吐出供給することもできる。従って、本実施形態に係る形成装置2000を用いることによって、異種材料から形成される三次元造形物を得ることができる。
【0039】
なお、第1層目の層501において、上述したように構成層310を形成する前或いは後に、支持層形成用材料吐出部1730から支持層形成用材料を吐出させて、同様の方法で、支持層300を形成することができる。そして、層501に積層させて層502、503、・・・50nを形成する際にも、同様に、構成層310及び支持層300を形成することができる。
【0040】
上述の本実施形態に係る形成装置2000が備えるヘッドユニット1400及び1900の数及び配列は、上述した数及び配列に限定されない。
図11及び
図12に、その例として、ヘッドベース1100に配置されるヘッドユニット1400の、その他の配置の例を模式図的に示す。
【0041】
図11は、ヘッドベース1100にヘッドユニット1400をX軸方向に複数、並列させた形態を示す。
図12は、ヘッドベース1100にヘッドユニット1400を格子状に配列させた形態を示す。なお、いずれも配列されるヘッドユニットの数は、図示の例に限定されない。
【0042】
次に、本実施例の構成材料及び支持層形成用材料としての各々の三次元造形用ペーストについて詳細に説明する。
構成材料及び支持層形成用材料としては、例えばマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単体粉末、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金(マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金)などの混合粉末を、溶剤と、バインダーとを含むペースト状の混合材料にして用いることが可能である。
また、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチックを用いることが可能である。その他、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック(樹脂)も用いることが可能である。
このように、構成材料及び支持層形成用材料に特に限定はなく、上記金属以外の金属やセラミックスや樹脂等も使用可能である。また、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどを好ましく使用可能である。
さらには、セルロースなどの繊維も用いることが可能である。
【0043】
溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ−ピコリン、2,6−ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等)等のイオン液体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)或いはその他の熱可塑性樹脂である。
【0044】
次に、上記形成装置2000を用いて行う三次元造形物の製造方法の一例についてフローチャートを用いて説明する。
ここで、
図13は、本実施例に係る三次元造形物の製造方法のフローチャートである。
【0045】
図13で表されるように、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、最初にステップS110で、三次元造形物のデータを取得する。詳細には、例えばパーソナルコンピューターにおいて実行されているアプリケーションプログラム等から、三次元造形物の形状を表すデータを取得する。
【0046】
次に、ステップS120で、層毎のデータを作成(生成)する。詳細には、三次元造形物の形状を表すデータにおいて、Z方向の造形解像度に従ってスライスし、断面毎にビットマップデータ(断面データ)を生成する。
【0047】
次に、ステップS130で、ステップS120で生成したデータに基づき、構成材料吐出部1230から構成材料を吐出して(なお、場合によっては、支持層形成用材料吐出部1730から支持層形成用材料も吐出して)、1層分の層(三次元造形物500の層)を形成する。
【0048】
次に、ステップS150で、電磁波照射部1000から電磁波(赤外線)を照射して、ステップS130で形成した三次元造形物500の層を加熱させることで、構成材料に含まれる溶媒を除去(揮発)させる。
なお、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、電磁波照射部1000から電磁波を照射して溶媒を揮発させることで、三次元造形物500の層から溶媒を除去させるが、このような方法に限定されない。例えば、光やレーザーなどを三次元造形物500の層に照射して溶媒を除去させてもよいし、ホットプレートや他の加熱機構を用いて溶媒を除去させてもよいし、さらには、雰囲気を減圧させることや自然乾燥により溶媒を除去させてもよい。
【0049】
そして、ステップS160により、ステップS120において生成された各層に対応するビットマップデータに基づく三次元造形物500の積層物の造形が終了するまで、ステップS130からステップS160までが繰り返される。
【0050】
ステップS130からステップS160までが繰り返されることでステップS120において生成された各層に対応するビットマップデータに基づく三次元造形物500の積層物の造形が終了すると、ステップS170で熱処理(所謂アニール)が行われる。
具体的には、例えば、不図示の恒温槽に三次元造形物500の積層物を移動し、該恒温槽において構成材料に含まれるバインダーのガラス転移温度(Tg)以上の温度であって軟化点以下の温度で該積層物を加熱する。なお、熱処理方法は、このような方法に限定されず、例えば、形成装置2000の内部に熱処理可能な加熱機構を備え形成装置2000の内部で熱処理を実行してもよく、また、加熱温度も上記のような温度範囲に限定されない。なお、恒温槽内部の雰囲気に関しての限定は特にないが、窒素雰囲気や、還元気体の雰囲気などを好ましく採用できる。
【0051】
そして、ステップS180により、例えば上記の恒温槽において、上記ステップで形成した三次元造形物500の積層物を加熱して脱脂及び焼結の少なくともいずれかを実行する。
そして、ステップS180の終了に伴い、本実施例の三次元造形物の製造方法を終了する。
【0052】
上記のように、本実施例の三次元造形物の製造方法は、複数の層(層501、502、503、・・・50n)が積層されてなる三次元造形物500を製造する三次元造形物の製造方法であって、三次元造形物500を構成する粉末と、溶媒と、バインダーと、を含む組成物である構成材料(材料M)を用いて、前記層を形成する層形成工程(ステップS130)と、前記層に含まれる溶媒を除去する溶媒除去工程(ステップS150)と、層形成工程と溶媒除去工程とが実行されることで得られた複数の前記層からなる三次元造形物500の積層物に熱を加える熱処理工程(ステップS170)と、熱処理工程で熱処理された三次元造形物500の積層物に対して、脱脂及び焼結の少なくともいずれかを実行する加熱工程(ステップS180)と、を有する。
このように、本実施例の三次元造形物の製造方法は、脱脂及び焼結の少なくともいずれかを実行する加熱工程の前に、三次元造形物500の積層物(三次元造形物500を構成する層)に熱を加える熱処理工程を実行するため、溶媒除去工程で溶媒及びバインダーの分布が偏ったとしても、該熱処理工程によりその偏り(該偏りに伴う応力)を低減又は解消できる。したがって、本実施例の三次元造形物の製造方法は、脱脂や焼結を実行する前に三次元造形物500の積層物内での応力を低減又は解消でき、加熱工程(脱脂や焼結)に伴って三次元造形物500の積層物が変形することを抑制することができる。
なお、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、ステップS170の熱処理工程において層形成工程と溶媒除去工程とが実行されることで得られた複数の前記層からなる三次元造形物500の積層物に熱を加えている。このため、熱処理工程の実行回数を減らすことができ、三次元造形物500の製造効率(製造速度)を高めることができる。しかしながら、ステップS170の熱処理工程において層形成工程と溶媒除去工程とが実行されることで得られた1層分の層に熱を加える方法(ステップS160とステップS170の順番を入れ替える)としてもよい。
【0053】
また、本実施例の三次元造形物の製造方法では、熱処理工程において、バインダーのガラス転移温度以上の温度の熱を加えるので、溶媒除去工程でバインダーの分布が偏ったとしても、該熱処理工程によりその偏りを特に効果的に低減又は解消できる。したがって、本実施例の三次元造形物の製造方法は、脱脂や焼結を実行する前に三次元造形物500の積層物内での応力を特に効果的に低減又は解消でき、加熱工程(脱脂や焼結)に伴って三次元造形物の積層物が変形することを特に効果的に抑制することができる。
なお、熱処理工程において加える熱の温度は、バインダーのガラス転移温度+5℃の温度、或いは、バインダーのガラス転移温度+10℃の温度などが好ましく採用できる。
【0054】
さらに、本実施例の三次元造形物の製造方法では、前記熱処理工程において、バインダーの軟化点以下の温度の熱を加えるので、熱処理工程に伴ってバインダーが軟化して三次元造形物500の積層物が変形することを抑制できる。
【0055】
ここで、構成材料には、各々複数種類の、三次元造形物を構成する粉末、溶剤、バインダーを含有させることができる。
そして、構成材料にバインダーが複数種類含まれていた場合、熱処理工程では、構成材料に含まれるバインダーのうちの最高のガラス転移温度以上の温度の熱を加えることができる。このような温度の熱を加えることで、バインダーが複数種類含まれていた場合でも、バインダーの分布の偏りを特に効果的に低減又は解消できる。
ただし、このような方法に限定されず、例えば、構成材料にバインダーが複数種類含まれていた場合、含有量が最大のバインダーのガラス転移温度以上の温度の熱を加える方法としてもよい。
【0056】
また、本実施例の三次元造形物の製造方法では、溶媒除去工程は、層形成工程が1回行われる毎に実行される方法になっている。溶媒除去工程を1回行う毎に層形成工程が実行されるので、溶媒除去工程に伴うバインダーの分布の偏りを特に効果的に低減できる方法になっている。しかしながら、このような三次元造形物の製造方法に限定されない。
【0057】
以下に、
図13で表される三次元造形物の製造方法とは別の三次元造形物の製造方法(層形成工程が複数回行われてから溶媒除去工程が実行される三次元造形物の製造方法)について、
図14を用いて説明する。
ここで、
図14は、本実施例に係る三次元造形物の製造方法のフローチャートであって、
図13で表される三次元造形物の製造方法に対してステップS130(層形成工程)とステップS150(溶媒除去工程)との間にステップS140(所定数の層が形成されたか否かを判断する工程)を実行する方法のフローチャートである。ステップS110からステップS130までとステップ150からステップS180までのフローは
図13で表される上記三次元造形物の製造方法と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0058】
本実施例の三次元造形物の製造方法は、ステップS130の層形成工程の終了後、ステップS150の溶媒除去工程に進むまでの間に、ステップS140で、所定数の層が形成されたか否かを判断する。すなわち、所定数の層が形成されるまで(所定の厚さの積層物となるまで)ステップS130を繰り返す。
【0059】
別の表現をすると、本実施例の三次元造形物の製造方法は、溶媒除去工程は、層形成工程が複数回行われてから実行される。このように、溶媒除去工程を複数回行ってから層形成工程を実行することで、溶媒除去工程の実行回数を減らすことができ、三次元造形物500の製造効率(製造速度)を高めることができる。
なお、ステップS140における所定数(溶媒除去工程が実行されるまでに行われる層形成工程の連続実行回数)は、三次元造形物500の積層物の形成が完成する数としてもよいが、そのような数に限定されず、2回以上であればよい。
【0060】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
50、50a、50b、50c、50d…構成層構成部、110…基台、
111…駆動装置、120…ステージ、121…試料プレート、
130…ヘッドベース支持部、300…支持層、310…構成層、
400…制御ユニット、410…ステージコントローラー、
500…三次元造形物、501、502、503、・・・50n…層、
730…ヘッドベース支持部、1000…電磁波照射部、1100…ヘッドベース、
1200…構成材料供給装置、1210…構成材料供給ユニット、
1210a…構成材料収容部、1220…供給チューブ、1230…構成材料吐出部、
1230a…吐出ノズル、1230b…吐出駆動部、1400…ヘッドユニット、
1400a…保持治具、
1401、1402、1403及び1404…ヘッドユニット、
1500…材料供給コントローラー、1600…ヘッドベース、
1700…支持層形成用材料供給装置、1710…支持層形成用材料供給ユニット、
1710a…支持層形成用材料収容部、1720…供給チューブ、
1730…支持層形成用材料吐出部、1730a…吐出ノズル、
1730b…吐出駆動部、1900…ヘッドユニット、
1900a…保持治具、2000…形成装置(三次元造形物の製造装置)、
M…材料(構成材料、組成物)