【実施例】
【0033】
次に、本発明を具体的に実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお以下、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0034】
また、樹脂の昇温時結晶化温度と、カーボンブラックの平均一次粒子径および灰分と、樹脂組成物中のカーボンブラックの平均分散粒子径との測定方法は以下の通りである。
【0035】
<樹脂の昇温時結晶化温度>
示差走査熱量計DSC6200(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、樹脂を40℃から300℃まで20℃/1分で昇温していき、結晶化のピークが得られた温度を昇温時結晶化温度とした。
【0036】
<カーボンブラックの平均一次粒子径>
カーボンブラック粒子を電子顕微鏡での観察によって得られた粒子20個の粒子径の平均値を平均一次粒子径として求めた。(平均一次粒子径(B1))
<カーボンブラックの灰分>
ASTMD1506に基づいて測定した。
【0037】
<カーボンブラックの平均分散粒子径の測定>
1,1,2,2−テトラクロロエタン100質量部に対してフェノール100質量部を配合した溶液50質量部に、樹脂組成物0.5質量部を溶解し、遊離したカーボンブラック(B)を、マイクロトラックMT3300EX(日機装社製)にて粒度分布を測定することで平均粒子径(MN)を測定した。(平均分散粒子径(BX1))
【0038】
実施例および比較例に用いたポリエステル樹脂、およびカーボンブラックを以下に記す。
[ポリエステル樹脂]
<PET−1>
三井PET SA−135(三井化学社製、昇温時結晶化温度145℃)
ポリエチレンテレフタレート
<PET−2>
クラペット KL236R(クラレ社製、昇温時結晶化温度137℃)
ポリエチレンテレフタレート
<PET−3>
ユニペット RT513H(日本ユニペット社製、昇温時結晶化温度175℃)
ポリエチレンテレフタレート
【0039】
[カーボンブラック]
<CB−1>
ENCACO260G(IMERYS社製、平均一次粒子径45nm、灰分0.01質量%、ファーネスブラック)
<CB−2>
ENCACO150G(IMERYS社製、平均一次粒子径45nm、灰分0.1質量%、ファーネスブラック)
<CB−3>
シーストSP(東海カーボン社製、平均一次粒子径95nm、灰分0.1質量%、ファーネスブラック)
<CB−4>
シーストFM(東海カーボン社製、平均一次粒子径50nm、灰分0.2質量%、ファーネスブラック)
<CB−5>
デンカブラックHS−100(デンカ社製、平均一次粒子径48nm、灰分0.01質量%、アセチレンブラック)
<CB−6>
シースト3(東海カーボン社製、平均一次粒子径28nm、灰分0.2質量%、ファーネスブラック)
<CB−7>
シーストTA(東海カーボン社製、平均一次粒子径122nm、灰分0.1質量%、ファーネスブラック)
<CB−8>
VULCAN9A−32(CABOT社製、平均一次粒子径19nm、灰分0.6質量%、ファーネスブラック)
<CB−9>
デンカブラックビーズ(デンカ社製、平均一次粒子径35nm、灰分0.01質量%、アセチレンブラック)
<CB−10>
旭カーボン#80(旭カーボン社製、平均一次粒子径22nm、灰分0.3質量%、ファーネスブラック)
<CB−11>
旭カーボンAX−015(旭カーボン社製、平均一次粒子径19nm、灰分0.3質量%、ファーネスブラック)
【0040】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(PET−1)100質量部を二軸押出機(日本製鋼所製)に投入して溶融させた後にカーボンブラック(CB−1)25質量部を投入し、溶融混練によりポリエステル樹脂にカーボンブラックを分散し、ペレタイザーを使用してカッティングすることで、ペレット状のマスターバッチである樹脂組成物(MB−1)を得た。
【0041】
(実施例2)
ポリエチレンテレフタレート(PET−1)100質量部とカーボンブラック(CB−1)12質量部を一括して二軸押出機に投入し、溶融混練によりポリエステル樹脂にカーボンブラックを分散し、ペレタイザーを使用してカッティングすることで、ペレット状のマスターバッチである樹脂組成物(MB−2)を得た。
【0042】
(実施例3)
ポリエチレンテレフタレート(PET−1)100質量部とカーボンブラック(CB−1)25質量部を一括して二軸押出機に投入し、溶融混練によりポリエステル樹脂にカーボンブラックを分散し、ペレタイザーを使用してカッティングすることで、ペレット状のマスターバッチである樹脂組成物(MB−3)を得た。
【0043】
(実施例4)
ポリエチレンテレフタレート(PET−2)100質量部を二軸押出機(日本製鋼所製)に投入して溶融させた後にカーボンブラック(CB−1)25質量部を投入し、溶融混練によりポリエステル樹脂にカーボンブラックを分散し、ペレタイザーを使用してカッティングすることで、ペレット状のマスターバッチである樹脂組成物(MB−4)を得た。
【0044】
(実施例5)
ポリエチレンテレフタレート(PET−3)100質量部を二軸押出機(日本製鋼所製)に投入して溶融させた後にカーボンブラック(CB−1)25質量部を投入し、溶融混練によりポリエステル樹脂にカーボンブラックを分散し、ペレタイザーを使用してカッティングすることで、ペレット状のマスターバッチである樹脂組成物(MB−5)を得た。
【0045】
(実施例6〜9)
それぞれ表1に示すカーボンブラックおよびポリエステル樹脂を用いて、実施例1の樹脂組成物(MB−1)と同様にしてペレット状のマスターバッチである樹脂組成物(MB−6〜9)を得た。
ただし、実施例8は参考例である。
【0046】
(比較例1〜4)
それぞれ表1に示すカーボンブラック、およびポリエステル樹脂を用いて、実施例1の樹脂組成物(MB−1)と同様にしてペレット状のマスターバッチである樹脂組成物(MB−10〜13)を得た。
【0047】
(比較例5、6)
それぞれ表1に示すカーボンブラックおよびポリエステル樹脂を用いて、実施例1の樹脂組成物(MB−1)と同様にしてペレット状のマスターバッチである樹脂組成物(MB−14、15)を得た。
【0048】
実施例および比較例で得られた樹脂組成物を以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
なお、(X)の値は、下記式(1)により求めた値である。
式(1)
(X)=カーボンブラック(B)の平均一次粒子径(B1)[nm]
× カーボンブラック(B)の平均分散粒子径(BX1)[μm]
【0049】
<スクリーンパス濾圧上昇値>
得られた樹脂組成物を単軸ラボプラストミル(東洋精機社製)に投入し、300℃で溶融させ、スクリーンを通過させた。樹脂組成物が通過し始めた際の圧力とカーボンブラック200部相当の樹脂組成物が通過した際の圧力の差をスクリーンパス濾圧上昇値とし、以下の基準で評価した。
◎(非常に良好):スクリーンパス濾圧上昇値が1.0MPa未満
○(良好):スクリーンパス濾圧上昇値が1.0MPa以上5.0MPa未満
△(可):スクリーンパス濾圧上昇値が5.0MPa以上15.0MPa未満
×(フィルム成形不可):スクリーンパス濾圧上昇値が15.0以上
【0050】
<フィルムの形成>
得られた樹脂組成物(マスターバッチ)と、樹脂組成物の形成に用いたものと同じ樹脂である希釈用ポリエステル樹脂を、フィルム中のカーボンブラックの濃度が0.5質量%になるように単層Tダイフィルム成形機(東洋精機社製)を用いて温度280℃にて押出し成形を行い、厚さ100μmのフィルムを得た。
【0051】
なお、樹脂組成物(MB−14、15)は、スクリーンパス濾圧上昇値が高く、フィルムを成形することができなかった。
【0052】
<透過率>
得られたフィルムの透過率を紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定した。透過率は白色標準板に対しての分光透過率を測定し、以下の基準で評価した。
◎(非常に良好):400〜1500nm の平均透過率が0.5%未満
○(良好):400〜1500nm の平均透過率が0.5%以上1.0%未満
△(可):400〜1500nm の平均透過率が1.0%以上1.5%未満
×(不良):400〜1500nm の平均透過率が1.5%以上
【0053】
<黒色度維持性>
得られたフィルムを120℃の環境下で20分間静置し、静置前後のフィルムのL
*をAUCOLOR−T2(倉敷紡績社製)によって測色し、次式によって黒色度維持性を評価した。数値が小さい程、黒色度維持性が優れていることを意味する。
黒色度維持性=(静置後のフィルムのL
*)−(静置前のフィルムのL
*)
【0054】
<熱寸法安定性>
得られたフィルムを垂直方向(TD)方向50mm、流れ方向(MD)方向70mmに打抜いて試験片とした。200℃の環境下で20分間静置させた後の試験片と、静置前の試験片の寸法を測定し、次式によって熱寸法安定性を評価した。数値が高い程、熱寸法安定性が良好なことを意味する。
熱寸法安定性=(静置後の寸法)/(静置前の寸法)
【0055】
<引張降伏点強度>
得られたフィルムを2号ダンベル型に打抜いて試験片とした。23℃にて試験片を引張試験機(東洋精機社製)を用いて、引張速度50mm/分の条件で測定した。
【0056】
<強度保持率>
得られたフィルムをTD方向50mm、MD方向70mmに打抜いて試験片とした。プレッシャークッカー試験機EHS−221M(エスペック社製)を用いて、120℃、100%RHの環境下で12時間試験した後、23℃にて試験片を引張試験機(東洋精機社製)を用いて引張速度50mm/分の条件で降伏点強度を測定した。同様に、プレッシャークッカー試験前の試験片の降伏点強度を測定した。次式によって強度保持率を評価した。数値が高い程、強度保持率が良好なことを意味する。
強度保持率=(プレッシャークッカー試験後の降伏点強度)/(プレッシャークッカー試験前の降伏点強度)
【0057】
【表1】
【0058】
表1の結果より、本発明の樹脂組成物は、成型体を成形する際のスクリーン付近の濾圧上昇が低く、加工性にも優れており、該樹脂組成物を用いて形成したフィルムは、隠蔽性が高く、耐久性との両立ができていることが確認できた。
【0059】
なお、希釈樹脂を用いずに、得られた樹脂組成物を用いてそのままフィルムを形成した場合にも、本願の樹脂組成物からなるフィルムは比較例の樹脂組成物からなるフィルムよりも隠蔽性と耐久性に優れていた。