(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る電界効果トランジスタの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、第1実施形態に係る製造方法によって製造される電界効果トランジスタ(以下、単にトランジスタという)の一例を示す断面図である。
図1に示されるように、トランジスタ1は、基板2、チャネル層3、バリア層4、キャップ層5、絶縁膜6、ソース電極7、ドレイン電極8、及びゲート電極9を備える。トランジスタ1は高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり、チャネル層3とバリア層4との界面に2次元電子ガス(2DEG:2 Dimensional Electron Gas)が生じることにより、チャネル層3内にチャネル領域が形成される。
【0013】
基板2は、結晶成長用の基板である。基板2として、例えばSi基板、SiC基板、サファイア基板、又はダイヤモンド基板が挙げられる。本実施形態では、基板2はSiC基板である。
【0014】
チャネル層3は、基板2上にエピタキシャル成長した層であり、上述した2次元電子ガスが生じ、ドレイン電流が流れるチャネル領域を有する層である。チャネル層3は、窒化物半導体を有しており、例えばGaNからなる。チャネル層3の厚さは、例えば200nm以上2000nm以下である。
【0015】
バリア層4は、チャネル層3上にエピタキシャル成長した層である。バリア層4は、チャネル層3よりも電子親和力が大きい窒化物半導体を有しており、例えばAlGaN、InAlNおよびInAlGaNの何れかからなる。バリア層4には不純物が含まれてもよい。本実施形態では、バリア層4は、n型のAlGaN層である。バリア層4の厚さは、例えば5nm以上30nm以下である。
【0016】
キャップ層5は、バリア層4上にエピタキシャル成長した層である。キャップ層5は、窒化物半導体を有しており、例えばGaN層である。本実施形態では、キャップ層5は、n型GaN層からなる。キャップ層5の厚さの下限値は、例えば1nmである。キャップ層5の厚さの上限値は、例えば5nmである。
【0017】
絶縁膜6は、キャップ層5上に設けられた非導電性の膜であって、例えば窒化シリコン(SiN)膜といったシリコン系絶縁膜である。絶縁膜6には開口6a〜6cが設けられている。開口6a,6b内のキャップ層5は除去されており、バリア層4が露出している。開口6cからは、キャップ層5が露出している。
【0018】
ソース電極7及びドレイン電極8は、少なくともバリア層4に接している。具体的には、ソース電極7は開口6aを介してバリア層4に接し、ドレイン電極8は開口6bを介してバリア層4に接している。ソース電極7及びドレイン電極8は、オーミック電極であり、例えばチタン(Ti)層とアルミニウム(Al)層との積層構造を合金化して形成する。Al層の上に他のTi層をさらに積層化した上で合金化してもよい。
【0019】
ゲート電極9は、絶縁膜6上及びキャップ層5上に接している。具体的には、ゲート電極9は、開口6c内のキャップ層5に接している。ゲート電極9は、ソース電極7及びドレイン電極8の間に設けられている。ゲート電極9はキャップ層5とショットキ接触する材料を含み、例えばニッケル(Ni)層とパラジウム(Pd)層と金(Au)層との積層構造を有する。この場合、Ni層がキャップ層5にショットキ接触する。なお、キャップ層5とショットキ接触できる材料としては、Niの他にPt(白金)等が知られている。
【0020】
図2〜
図4を用いながら本実施形態に係るトランジスタの製造方法を説明する。
図2の(a)〜(c)、
図3の(a)〜(c)、及び
図4は、本実施形態に係るトランジスタの製造方法を説明する図である。
【0021】
まず、
図2の(a)に示されるように、チャネル層3、バリア層4、及びキャップ層5を含む半導体積層部20を基板2上に形成する。例えば、有機金属気相成長法(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy;MOVPE)によって、チャネル層3として機能するGaN層、バリア層4として機能するAlGaN層、及びキャップ層5として機能する5nm以下の厚さを有するn型のGaN層を、SiC基板上に順に成長する。
【0022】
次に、
図2の(b)に示されるように、キャップ層5の表面を覆う絶縁膜6を形成する。例えば、シランガス及びアンモニアガスを用いたプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)により、窒化シリコン(SiN)膜をキャップ層5上に形成する。
【0023】
次に、
図2の(c)に示されるように、絶縁膜6の一部を選択的にエッチングし、開口6a,6bを形成する。例えば、レジストマスクを用いたドライエッチングにより、絶縁膜6に開口6a,6bを形成する。これにより、開口6a,6bを介してキャップ層5の表面5aの一部を露出させる。
【0024】
次に、
図3の(a)に示されるように、絶縁膜6の一部を除去して開口6a,6bを形成し、さらに開口6a,6b内に露出したバリア層4の一部を除去する。これにより、リセス31,32を形成する。そして、リセス31内にソース電極7を形成し、リセス32内にドレイン電極8を形成する。
【0025】
次に、
図3の(b)に示されるように、開口パターン21aを有するレジストマスク21を絶縁膜6上に形成する。この開口パターン21aは、例えば電子ビーム露光により形成される。
【0026】
次に、
図3の(c)に示されるように、レジストマスク21の開口パターン21aを介して絶縁膜6を選択的にエッチングし、絶縁膜6に開口6cを形成する。例えば、フッ素系ガスとしてSF
6(六フッ化硫黄)を用いたフッ素系プラズマ処理によって、絶縁膜6を選択的にエッチングする。上記フッ素系プラズマ処理は、誘導結合型の反応性イオンエッチング(ICP-RIE: Inductive Coupled Plasma-Reactive Ion Etching)である。フッ素系プラズマ処理の条件として、例えば、気圧が1Pa、パワーが100W〜500W、バイアスが10W〜30Wにそれぞれ設定される。このフッ素系プラズマ処理で形成された開口6cにより、半導体積層部20の表面(例えばキャップ層5の表面)の一部が露出する。
【0027】
次に、
図4に示されるように、レジストマスク21を除去した後、ゲート電極9を形成する。例えば、電子ビーム蒸着、あるいは抵抗加熱蒸着によって金属層を形成した後、リフトオフ法によるパターニングを行うことにより、ゲート電極9を形成する。ゲート電極9には、半導体積層部20に接してショットキ接触する部分と、開口6cの周囲の絶縁膜6上に設けられる部分とが存在する。以上の工程を経て、本実施形態のトランジスタ1が作製される。
【0028】
ここで、上述した
図3の(b)及び(c)並びに
図4に示される各工程について詳細に説明する。
図5の(a)〜(c)、
図6の(a)〜(c)、
図7の(a),(b)、
図8の(a),(b)、
図9の(a),(b)、並びに
図10は、これらの工程を詳細に説明する図である。
【0029】
まず、
図3の(b)に示される工程の詳細を説明する。
図5の(a)に示されるように、半導体積層部20の表面を覆う絶縁膜6上に、レジストRを塗布する。絶縁膜6の厚さhsinは例えば50nmである。レジストRは紫外線露光用レジスト若しくは電子線露光用レジストである。レジストRが紫外線露光用レジストである場合、厚さhrは例えば1000nm〜2000nmである。レジストRが電子線露光用レジストである場合、厚さhrは例えば300nm〜500nmであり、一実施例では400nmである。なお、絶縁膜6の厚さhsin、レジストRの厚さhrは絶縁膜6の厚さhsinに応じて決定される。電子線露光用レジストとしては、例えば、α−クロロアクリル酸メチルとα−メチルスチレンとの共重合体(商品名:ZEP520(日本ゼオン株式会社))、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、若しくはこれらにフラーレンを添加したものが用いられる。紫外線露光用レジストとしては、例えば、クレゾールノボラック樹脂やノボラック型フェノール樹脂の混合物が用いられる。
【0030】
なお、レジストRの塗布後、レジストRに対して熱処理(プリベーク)を行ってもよい。レジストRが電子線露光用レジストである場合、プリベーク温度は例えば150℃〜250℃の範囲内であり、一実施例では180℃である。また、プリベーク時間は例えば1分〜20分の範囲内であり、一実施例では3分である。
【0031】
次に、絶縁膜6の開口6cを形成すべき領域上のレジストRを露光することにより、レジストRに感光部分Raを形成する。感光部分Raの幅L
0は、EB露光の場合には例えば50nmであり、紫外線露光の場合には例えば400nmである。幅L
0は、後述する絶縁膜6の開口6cの所望の最小幅L
4(
図7の(a)を参照)から逆算して決定されるとよい。EB露光のドーズ量は、例えば500μC/cm
2である。
【0032】
続いて、感光部分Raを現像液によって溶解させ、レジストRから感光部分Raを除去する。これにより、
図5の(c)に示されるように、開口パターン21aを有するレジストマスク21が形成される。開口パターン21aの幅L
1は、感光部分Raの幅L
0よりもわずかに広くなり、例えば60nm(EBレジストの場合)である。現像液としては、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、キシレン、酢酸n−アミル、及び2−プロパノール(IPA)を任意の割合で混合した液体が用いられる。一実施例では、現像液は、メチルイソブチルケトンと2−プロパノールとを89:11の割合で混合した液体である。
【0033】
続いて、
図6の(a)に示されるように、開口パターン21aを介して絶縁膜6をエッチングすることにより、絶縁膜6に凹部6dを形成する(第1エッチング工程)。この工程では、絶縁膜6に対してドライエッチング(例えば反応性イオンエッチング(RIE))を行う。これにより、絶縁膜6の表面と凹部6dの側壁との間に角部(エッジ)6eが形成される。凹部6dの深さは例えば5nm以上であり、例えば10nm以下である。また、この工程では、開口パターン21a及び凹部6dの幅L
2が幅L
1よりもわずかに広くなり、例えば70nm(電子線露光用レジストの場合)である。
【0034】
この工程に用いられるエッチングガスとしては、例えば、フッ素系ガスとして、SF
6、CF
4、CHF
3、C
3F
6、C
2F
6からなる群から1つ以上が選択される。なお、塩素系ガスでも絶縁膜6(SiN)のエッチングは可能である。エッチングレートは、例えば0.1nm/秒〜0.3nm/秒の範囲内である。エッチング時間は、例えば、絶縁膜6の全厚(
図5の(a)に示されたhsin)の5%増ないし15%増の厚さを有する絶縁膜に開口を形成するために必要なエッチング時間から、凹部6d下に残存した絶縁膜に開口を形成するために必要なエッチング時間を差し引いた時間である。エッチング時間は、例えば10秒以上、塩素系ガスでは20〜1200秒である。炉内圧力は例えば0.1Pa〜10Paの範囲内であり、RFバイアスは例えば30W〜500Wの範囲内であり、ICPバイアスは例えば0W〜50Wの範囲内である。但し、RIEは誘導結合型(ICP)であってもよく、ICP以外(例えば容量結合型(CCP))であってもよい。
【0035】
続いて、レジストマスク21を酸素プラズマに曝す。上記のエッチング工程において、レジストマスク21の表面がプラズマに曝されることで変質するので、この工程においてレジストマスク21を酸素プラズマに曝すことにより、レジストマスク21表面の変質層を除去することができる。この工程では、酸素プラズマ処理によってレジストマスク21の表面を少なくとも5nm除去する。また、
図6の(b)に示されるように、この工程によってレジストマスク21の開口パターン21aの側壁が後退し、開口パターン21aの幅が拡がる。酸素プラズマは、開口パターン21aの幅を少なくとも5nm広げる。この工程ののちの開口パターン21aの幅L
3は、例えば70nmである。この工程により、開口パターン21aの内側においてエッジ6e近傍の絶縁膜6の表面6fが露出する。
【0036】
この工程では、プラズマ装置として例えばバレル型プラズマエッチング装置若しくは平行平板型のものが用いられる。また、プラズマ化するガスとしては例えば酸素若しくはオゾンが用いられる。圧力は例えば5Pa〜200Paの範囲内であり、一実施例では50Paである。処理パワーは例えば50W〜500Wの範囲内であり、一実施例では300Wである。処理時間は例えば10秒〜600秒の範囲内であり、一実施例では30秒である。
【0037】
続いて、レジストマスク21を熱処理(ベーク)する。ベーク温度は例えば140℃〜250℃の範囲内であり、一実施例では180℃である。ベーク時間は例えば5分〜60分の範囲内であり、一実施例では15分である。ベーク時間は、例えば前述したプリベーク時間よりも10分程度長くするとよい。
【0038】
レジストマスク21は熱可塑性を有するので、熱処理によりレジストマスク21が軟化して変形・流動し、
図6の(c)に示されるように、レジストマスク21の開口パターン21aの側壁が傾斜する。したがって、開口パターン21aの幅は、半導体積層部20から離れるほど広くなる。この工程では、レジストマスク21が流動することによって、開口パターン21aの側壁のうち絶縁膜6に近い部分が開口パターン21aの内側に移動し、開口パターン21aが狭くなる。しかしながら、絶縁膜6に凹部6dが形成されているので、表面張力により開口パターン21aの側壁の移動は凹部6dのエッジ6eにおいて停止する。したがって、レジストマスク21は凹部6dの内側には入り込まず、凹部6dの露出状態が維持される。すなわち、開口パターン21aの最小幅が凹部6dの幅L
2に維持される。
【0039】
なお、開口パターン21aの側壁の幅L
5は例えば700nmであり、該側壁と絶縁膜6の表面との成す角(テーパ角)θsは例えば30度である。テーパ角θsは、レジストマスク21の厚さ(
図5の(a)に示されたレジストRの厚さhrから、酸素プラズマ処理による変質層の除去厚さを差し引いた厚さ)に影響される。レジストマスク21の厚さが薄いほど、テーパ角θsが小さくなる傾向がある。これは、レジストマスク21の厚さが薄いほど、テーパ角θsが小さいほうが最終的な表面積が小さくなり、エネルギー的に安定であるためと考えられる。
【0040】
次に、
図3の(c)に示される工程の詳細を説明する。レジストマスク21の開口パターン21aを介して絶縁膜6をドライエッチングすると、
図7の(a)に示されるように、絶縁膜6に開口6cが形成され、半導体積層部20の表面が露出する(第2エッチング工程)。このとき、開口パターン21aの側壁の形状は、レジストマスク21の形状が、絶縁膜6の開口6cの側壁に転写されて形成される。すなわち、絶縁膜6に開口6cの側壁が傾斜し、開口6cの幅は、半導体積層部20から離れるほど広くなる。なお、開口6cの側壁形状は、レジストマスク21のテーパ角θs、並びにレジストRと絶縁膜6とのエッチングレート差に影響される。エッチング時間は、例えば、凹部6dが形成されていない場合の絶縁膜6の全厚(
図5の(a)に示されたhsin)をエッチングするのに要する時間と同じか、それよりも長い。エッチング時間を除くエッチング条件は、前述した第1エッチング工程(
図6の(a)を参照)と同様である。
【0041】
なお、この工程ののちの開口6cの最小幅L
4は例えば100nmである(レジストマスク21がEBレジストの場合)。また、開口6cの側壁の幅L
6は例えば70nmであり、該側壁と半導体積層部20の表面との成す角φsは例えば30度である。その後、
図7の(b)に示されるように、レジストマスク21を絶縁膜6上から除去(剥離)する。一実施例では、レジストマスク21をピロリドン(90度)に1時間程度浸すことにより、レジストマスク21を除去する。
【0042】
続いて、
図4に示される工程の詳細を説明する。この工程では、露出した半導体積層部20の表面上、及び開口6cの周囲の絶縁膜6上にゲート電極9を形成する。まず、
図8の(a)に示されるように、絶縁膜6及び開口6c内の半導体積層部20の表面を覆う金属薄膜9aを形成する。次に、
図8の(b)に示されるように、開口パターン24aを有するレジストマスク24を金属薄膜9a上に形成する。開口パターン24aは、絶縁膜6の開口6cを内側に含む。
【0043】
続いて、
図9の(a)に示されるように、開口パターン24aの内側に、金属層9bを例えばめっき法により形成する。金属層9bは例えば金(Au)からなる。そして、
図9の(b)に示されるように、レジストマスク24を除去する。更に、
図10に示されるように、金属薄膜9aのうち金属層9bから露出した部分を除去する。こうして、金属薄膜9a及び金属層9bを含む本実施形態のゲート電極9が好適に形成される。
【0044】
以上に説明した本実施形態のトランジスタの製造方法によって得られる効果について説明する。本実施形態の製造方法では、
図6の(a)に示された第1エッチング工程において、開口パターン21aを介して絶縁膜6をエッチングすることにより絶縁膜6に凹部6dを形成する。これにより、
図6の(c)に示された熱処理工程において、開口パターン21aの側壁の流動が凹部6dのエッジ6eにおいて停止するので、開口パターン21aの最小幅が凹部6dの幅L
2に精度良く一致する。凹部6dの幅L
2は、
図6の(a)に示された第1エッチング工程において精度良く形成される。すなわち、本実施形態によれば、ゲート電極9を形成する際のレジストマスク21の開口パターン21aの最小幅を精度良く形成することが可能となる。故に、ゲート電極9と半導体積層部20との接触長さ(すなわちゲート長)を精度良く形成することができ、所望の特性を有するトランジスタを得ることができる。
【0045】
また、本実施形態のように、レジストマスク21を酸素プラズマに曝す工程において、酸素プラズマは、開口パターン21aの幅を少なくとも5nm広げてもよい。これにより、ベーク工程の際に十分な傾斜を開口パターン21aの側壁に与えることができる。
【0046】
また、本実施形態のように、
図6の(a)に示された第1エッチング工程において、凹部6dの深さを少なくとも5nmとしてもよい。これにより、熱処理工程における開口パターン21aの側壁の流動を、凹部6dのエッジ6eにおいてより確実に停止させることができる。
【0047】
また、本実施形態のように、
図7の(a)に示された第2エッチング工程におけるエッチング時間は、凹部6dが形成されていない場合の絶縁膜6の全厚hsinをエッチングするのに要する時間以上であってもよい。これにより、開口パターン21aの形状を、絶縁膜6の開口6cに対して十分に転写することができる。
【0048】
また、本実施形態のように、
図6の(a)に示された第1エッチング工程におけるエッチング時間は、絶縁膜6の全厚hsinの5%増ないし15%増の厚さを有する絶縁膜に開口を形成するために必要なエッチング時間から、凹部6d下に残存した絶縁膜に開口を形成するために必要なエッチング時間を差し引いた時間であってもよい。これにより、十分な深さの凹部6dを形成することができる。
【0049】
ここで、
図11は、第1エッチング工程の有無によるレジストマスク21の断面形状の違いを示すSEM像である。
図11の上段は、
図5の(c)に相当する現像後のレジストマスク21の断面形状を示す。
図11の中段は、絶縁膜6に凹部6dを形成せずに熱処理(160℃・10分)を行った場合のレジストマスク21の断面形状を示す。
図11の下段は、絶縁膜6に凹部6dを形成したのちに熱処理(160℃・10分)を行った場合のレジストマスク21の断面形状を示す。なお、
図11には、左から順に、現像後のレジストマスク21の開口パターン21aの幅L
1を30nm、50nm、80nm、及び100nmとした場合が示されている。
【0050】
図11を参照すると、絶縁膜6に凹部6dを形成しない(すなわち
図6の(a)に示される第1エッチング工程を行わない)場合、熱処理した際にレジストマスク21の変形によって開口パターン21aが潰れてしまい、ゲート電極が形成できない。これに対し、第1エッチング工程を行って絶縁膜6に凹部6dを形成すると、絶縁膜6上に段差(エッジ6e)が生じ、ベーク処理した際のレジストマスク21の流動が表面張力により該段差部分で止まっていることがわかる。このように、本実施形態の製造方法によれば、開口パターン21aの開口幅を精度良く形成することができる。なお、
図11に示されるように、テーパ角θsは、熱処理温度が高いほど小さくなる傾向がある。ただし、プリベーク温度を超えると、ベーク後のテーパ角θsは飽和する傾向がある。
【0051】
図12は、酸素プラズマ処理の有無によるレジストマスク21の断面形状の違いを示すSEM像である。
図12の上段は、
図11の上段と同じSEM像である。
図12の中段は、
図11の下段と同じSEM像である。
図12の下段は、絶縁膜6に凹部6dを形成したのち、酸素プラズマ処理を経て、熱処理(160℃・10分)を行った場合のレジストマスク21の断面形状を示す。なお、
図12においても、左から順に、現像後のレジストマスク21の開口パターン21aの幅L
1を30nm、50nm、80nm、及び100nmとした場合が示されている。
【0052】
図12に示されるように、酸素プラズマ処理を行うことによって、レジストマスク21の表面の変質層が除去されるので、十分に小さく且つ均一なテーパ角θsを得ることができる。更に、開口パターン21aの側壁の幅L
5を大きくすることができる。従って、第2エッチング工程(
図7の(a))において、エッチング時間の変化に対する絶縁膜6の開口6cの形状の変化を小さくすることができ、絶縁膜6の開口6cを精度良く形成することができる。
【0053】
図13は、熱処理温度によるレジストマスク21の断面形状の違いを示すSEM像である。
図13の上段は、熱処理(160℃・20分)を行った場合のレジストマスク21の断面形状を示す。
図13の中上段は、熱処理(170℃・10分)を行った場合のレジストマスク21の断面形状を示す。
図13の中下段は、熱処理(180℃・15分)を行った場合のレジストマスク21の断面形状を示す。
図13の下段は、熱処理(200℃・15分)を行った場合のレジストマスク21の断面形状を示す。なお、
図13においても、左から順に、現像後のレジストマスク21の開口パターン21aの幅L
1を30nm、50nm、80nm、及び100nmとした場合が示されている。
図13を参照すると、熱処理温度が高くなるほど、テーパ角θsが小さくなり、且つ開口パターン21aの側壁の幅L
5が大きくなっている。このように、開口パターン21aの側壁の形状は、熱処理温度によって制御可能である。
【0054】
図14は、レジストマスク21の開口パターン21aの形状を絶縁膜6の開口6cに転写する様子を示すSEM像である。
図14の上段は、熱処理(200℃・15分)後のレジストマスク21の断面形状を示す。
図14の中段は、第2エッチング工程後のレジストマスク21及び絶縁膜6の断面形状を示す。
図14の下段は、レジストマスク21除去後の絶縁膜6の断面形状を示す。なお、
図14においても、左から順に、現像後のレジストマスク21の開口パターン21aの幅L
1を30nm、50nm、80nm、及び100nmとした場合が示されている。
図14を参照すると、熱処理によって形成されたレジストマスク21の開口パターン21aの側壁の傾斜が、第2エッチング工程によって絶縁膜6の開口6cに精度良く転写されていることがわかる。
【0055】
図15は、第2エッチング工程のエッチング時間による絶縁膜6の開口6cの幅の違いを示すSEM像である。
図15の上段は、第1エッチング工程のエッチング時間を0.5分とし、第2エッチング工程のエッチング時間を1分とした場合の絶縁膜6の断面形状を示す。
図15の中段は、第1エッチング工程のエッチング時間を0.5分とし、第2エッチング工程のエッチング時間を1.5分とした場合の絶縁膜6の断面形状を示す。
図15の下段は、第1エッチング工程のエッチング時間を0.5分とし、第2エッチング工程のエッチング時間を3分とした場合の絶縁膜6の断面形状を示す。なお、
図15においても、左から順に、現像後のレジストマスク21の開口パターン21aの幅L
1を30nm、50nm、80nm、及び100nmとした場合が示されている。
【0056】
図15に示されるように、絶縁膜6の開口6cの幅を制御するためには、(4)第1エッチング工程及び第2エッチング工程におけるエッチング時間の配分が重要となる。すなわち、第2エッチング工程のエッチング時間が長くなるに従って、開口6cの幅が大きくなる。そこで、所望のゲート長を得るためには、第2エッチング工程のエッチング時間を、絶縁膜6の厚さhsinから計算されるジャストエッチング時間よりも長い時間にするとよい。
【0057】
図16は、第2エッチング工程のエッチング時間による絶縁膜6の開口6cの形状の違いを示すSEM像である。
図16の上段は、第1エッチング工程のエッチング時間を1分とし、第2エッチング工程のエッチング時間を0.5分とした場合の絶縁膜6の断面形状を示す。
図16の下段は、第1エッチング工程及び第2エッチング工程のエッチング時間を共に1分とした場合の絶縁膜6の断面形状を示す。なお、
図16においても、左から順に、現像後のレジストマスク21の開口パターン21aの幅L
1を30nm、50nm、80nm、及び100nmとした場合が示されている。
図16の上段に示されるように、第2エッチング工程のエッチング時間が不足する場合には、絶縁膜6の開口6cの断面形状がY型形状となる。これに対し、
図16の下段に示されるように、第2エッチング工程のエッチング時間が十分である場合には、絶縁膜6の開口6cの断面形状の全体を良好なテーパ形状とすることができる。
【0058】
本発明による電界効果トランジスタの製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、HEMTに本発明を適用した例について説明しているが、本発明の製造方法は、HEMT以外の様々な電界効果トランジスタに適用可能である。