(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の下部超格子層、前記超格子吸収層及び前記上部超格子層は、InAs/GaSb/AlSb/GaSb超格子、または、InAs/GaSb超格子により形成されており、
前記第1の下部超格子層は、InAs/AlSb超格子、または、InAs/InAsSb超格子により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線検出器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0014】
〔第1の実施の形態〕
最初に、赤外線検出器について、
図1及び
図2に基づき説明する。この赤外線検出器を作製する際には、最初に、
図1に示されるように、GaSb基板901の上に、InAsSb層902、p−GaSb層910、p型超格子層20、超格子吸収層30、n型超格子層40、上部コンタクト層50を順に積層形成する。p型超格子層20、超格子吸収層30、n型超格子層40は、InAs/AlSb超格子により形成されており、p型超格子層20にはp型となる不純物元素がドープされており、n型超格子層40にはn型となる不純物元素がドープされている。この後、上部コンタクト層50の側から、上部コンタクト層50、n型超格子層40、超格子吸収層30、p型超格子層20をドライエッチングにより除去することにより、画素に対応した超格子層のメサを形成する。この際、p−GaSb層910がエッチングストッパ層として機能する。例えば、ドライエッチングによりエッチングした際に、p型超格子層20、超格子吸収層30、n型超格子層40には含まれていないGaを検出したらエッチングを停止する。これにより、p−GaSb層910の表面が露出した直後にエッチングを停止することができる。
【0015】
この後、超格子層のメサの全体を覆う保護膜60を形成し、コンタクトホールを開口した後、上部コンタクト層50の上に上部電極71を形成し、p−GaSb層910の上に下部電極72を形成する。尚、p−GaSb層910は下部コンタクト層としても機能する。この後、GaSb基板901を研削して薄層化した後、残りのGaSb基板901についてはInAsSb層902をエッチングストッパ層としてウェットエッチングにより除去する。更に、p−GaSb層910をエッチングストッパ層としてInAsSb層902をウェットエッチングにより除去する。これにより、
図2に示す構造の赤外線検出器を作製することができる。
図1及び
図2に示される破線矢印は、赤外線の入射方向を示す。
【0016】
InAsSb層902は、GaSb基板901と格子整合させるため、組成がInAs
0.91Sb
0.09となるように形成されているが、InAs
0.91Sb
0.09はバンドギャップが約0.335eVと小さく中赤外線から近赤外線における吸収が大きい。従って、SWIRに対応した検出器では、InAsSb層902を除去する必要がある。
【0017】
また、GaSbもバンドギャップは約0.73eVであり、InAs
0.91Sb
0.09に比べれば、近赤外線の吸収は低いものの、波長が1.7μmより短い赤外線を吸収する。このためp−GaSb層910は可能な限り薄い方(例えば、2μm以下)が好ましいが、p−GaSb層910は素子間に共通の下部コンタクト層としても機能するため、あまり薄いとその機能が低下するため好ましくない。また、GaSbは水等により酸化されやすいため、p−GaSb層910が露出している状態のままでは、製造プロセスが不安定となる。
【0018】
このため、
図3に示されるように、p型超格子層20を残してメサを形成する方法が考えられる。具体的には、上部コンタクト層50の側から、上部コンタクト層50、n型超格子層40、超格子吸収層30をドライエッチングにより除去することにより、画素に対応した超格子層のメサを形成する方法である。この場合、GaSb基板901、InAsSb層902、p−GaSb層910を除去することにより、
図4に示す構造の赤外線検出器が作製される。
【0019】
この構造の赤外線検出器では、赤外線の入射面側には、InAs
0.91Sb
0.09層や厚いp−GaSb層が存在しないため、これらによる赤外線の吸収がなく、近赤外線を効率よく検出することができる。しかしながら、この構造の赤外線検出器では、p型超格子層20と超格子吸収層30は、ドープされている不純物元素を除き、同じ材料の超格子により形成されているため、p型超格子層20が露出した直後にエッチングを停止することは極めて困難である。このため、メサ間におけるp型超格子層20の厚さにバラツキが生じてしまい、画素間におけるクロストーク等に違いが生じ、特性が安定ではなくなる場合がある。また、メサを形成する際のエッチングのバラツキを考慮すると、p型超格子層20を十分に厚く(例えば、2μm以上)形成する必要もある。
【0020】
(赤外線検出器)
次に、本実施の形態における赤外線検出器について説明する。本実施の形態における赤外線検出器は、
図5に示されるように、第1のp型超格子層110、第2のp型超格子層120、超格子吸収層130、n型超格子層140、上部コンタクト層150が順に積層形成されている。また、上部コンタクト層150の側から、上部コンタクト層150、n型超格子層140、超格子吸収層130、第2のp型超格子層120をドライエッチングにより除去することにより、画素に対応した超格子層のメサが形成されている。また、超格子層のメサの全体を覆う保護膜160が形成されており、上部コンタクト層150の上に上部電極171、第1のp型超格子層110の上に下部電極172が形成されている。
【0021】
本実施の形態においては、第1のp型超格子層110を第1の下部超格子層と記載し、第2のp型超格子層120を第2の下部超格子層と記載し、n型超格子層140を上部超格子層と記載する場合がある。よって、本実施の形態における赤外線検出器においては、近赤外線は、破線矢印に示されるように、第1の下部超格子層の側から入射する。
【0022】
本実施の形態における赤外線検出器においては、第2のp型超格子層120、超格子吸収層130、n型超格子層140は、InAs/GaSb/AlSb/GaSb超格子により形成されており、同じ超格子構造により形成されている。また、第2のp型超格子層120にはp型となる不純物元素がドープされており、n型超格子層140にはn型となる不純物元素がドープされている。また、第1のp型超格子層110は、InAs/AlSb超格子により形成されており、p型となる不純物元素がドープされている。尚、第2のp型超格子層120、超格子吸収層130、n型超格子層140は、InAs/GaSb超格子により形成されていてもよく、第1のp型超格子層110は、InAs/InAsSb超格子により形成されていてもよい。また、上部コンタクト層150は、InAsにより形成されており、n型となる不純物元素がドープされている。
【0023】
ところで、第1のp型超格子層110は、InAs/AlSb超格子等の超格子構造ではなく、InAsとAlSbとの混晶により形成する方法も考えられる。しかしながら、この場合、4元系となるため組成を制御することが極めて困難であり、所望の組成比で形成することが難しい。従って、本実施の形態のように、超格子構造により形成した方が、製造の観点等からは好ましい。また、第2のp型超格子層120、超格子吸収層130、n型超格子層140については、同じ材料の同じ超格子構造により形成した方が、電気的特性等の観点から好ましい。例えば、第2のp型超格子層120と超格子吸収層130との界面では、空乏層が形成されるが、この部分で材料が変わると、接合の電気的特性が変化し、また、超格子吸収層130とn型超格子層140との界面との対称性も崩れてしまうため、好ましくない。
【0024】
本実施の形態は、ドライエッチングにより超格子層のメサを形成する際には、第2のp型超格子層120、超格子吸収層130、n型超格子層140には含まれているが、第1のp型超格子層110には含まれていないGaの検出量が減少した時点でエッチングを止める。これにより、第2のp型超格子層120が除去され、第1のp型超格子層110が露出した直後にドライエッチングを停止することができ、メサ間における第1のp型超格子層110の厚さを均一にすることができる。また、必要以上に、第1のp型超格子層110等の厚さを厚く形成する必要もない。尚、不図示のGaSb基板、InAsSb層、p−GaSb層をウェットエッチングにより除去する際には、第1のp型超格子層110を形成しているInAsまたはAlSbがエッチングストッパ層として機能する。
【0025】
従って、本実施の形態における赤外線検出器においては、第1のp型超格子層110は、メサを形成する際のドライエッチングのエッチングストッパ層、GaSb層等を除去する際のウェットエッチングのエッチングストッパ層、下部コンタクト層として機能するものである。第1のp型超格子層110は、GaSb基板と疑似的に格子整合するものであり、水等により酸化されることもない。
【0026】
本実施の形態においては、第1のp型超格子層110における実効的なバンドギャップは、第2のp型超格子層120の実効的なバンドギャップ以上、更に好ましくは、第2のp型超格子層120の実効的なバンドギャップよりも大きな材料により形成されている。これにより、入射する近赤外線が、第1のp型超格子層110において吸収されることを防ぐことができ、赤外線検出器において検出される近赤外線の信号量を増やし、S/N比を向上させることができる。
【0027】
また、第1のp型超格子層110は、下部コンタクト層として機能させるべく、導電性を確保するため、p型となる不純物元素の濃度が1×10
17/cm
3以上、3×10
18/cm
3以下となるようにドープされている。第1のp型超格子層110は、第2のp型超格子層120と同じ導電型であることが好ましいが、上記のように不純物濃度が高い場合はトンネル接合により電気的導電性が確保できる場合には、第2のp型不純物と異なるn型超格子にする場合もある。尚、超格子吸収層130は、不純物元素がドープされていないか、または、不純物元素がドープされていても、ドープされている不純物元素の濃度は5×10
16/cm
3以下である。
【0028】
また、第1のp型超格子層110の厚さは、薄すぎると十分な導電性が得られず、厚すぎると自由キャリア吸収等が生じるため、第1のp型超格子層110の厚さは、0.3μm以上、2.0μm以下が好ましい。
【0029】
尚、本実施の形態における赤外線検出器では、検出対象となる赤外線が近赤外線であるため、第2のp型超格子層120、超格子吸収層130、n型超格子層140におけるカットオフ波長は、1.0μm以上、2.5μm以下である。
【0030】
上記における説明では、第2のp型超格子層120、超格子吸収層130、n型超格子層140は、InAs/GaSb/AlSb/GaSb超格子、または、InAs/GaSb超格子等のGaを含む超格子により形成されている。また、第1のp型超格子層110は、InAs/AlSb超格子、または、InAs/InAsSb超格子等のGaを含まない超格子により形成されている。
【0031】
しかしながら、本実施の形態は、第2のp型超格子層120、超格子吸収層130、n型超格子層140は、InAs/AlSb超格子、または、InAs/InAsSb超格子等のGaを含まない超格子により形成してもよい。この場合、第1のp型超格子層110は、InAs/GaSb/AlSb/GaSb超格子、または、InAs/GaSb超格子等のGaを含む超格子により形成する。尚、超格子構造であるためには、各々の層の膜厚は、所定の膜厚以下であることが好ましいが、好ましい膜厚は材料によって異なる。例えば、InAs/GaSb超格子構造の場合、SWIRに対応させるためにはInAsでは5ML以下(1.5nm以下)であり、GaSbでは10ML以下(3.1nm以下)である。
【0032】
(赤外線検出器の製造方法)
次に、本実施の形態における赤外線検出器の製造方法について、
図6から
図9に基づき説明する。
【0033】
最初に、
図6(a)に示すように、GaSb基板181の上に、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシー)によるエピタキシャル成長により化合物半導体層を形成する。即ち、GaSb基板181の上に、p
+型InAsSb層182、p
+型GaSb層183、第1のp型超格子層110、第2のp型超格子層120、超格子吸収層130、n型超格子層140、上部コンタクト層150を順に積層して形成する。
【0034】
具体的には、最初に、厚さが約625μmのGaSb基板181の上に、不図示のGaSbバッファ層を形成する。このGaSbバッファ層は、膜厚が1μmであり、p型となる不純物元素が、1×10
18/cm
3の濃度でドープされている。このようなGaSbバッファ層をGaSb基板181の上に形成することにより、GaSb基板181の表面の自然酸化膜を除去する際に生じる表面の荒れを小さくできるため,より平坦な超格子層を得ることができる。
【0035】
p
+型InAsSb層182は、GaSb基板181の上の不図示のGaSbバッファ層の上に形成される。p
+型InAsSb層182は、GaSb基板181を除去する際に、エッチングストッパ層となる層であり、p型となる不純物元素が1×10
18/cm
3の濃度でドープされている膜厚が約2μmのInAs
0.91Sb
0.09により形成されている。
【0036】
p
+型GaSb層183は、p
+型InAsSb層182を除去する際に、エッチングストッパ層となる層であり、p型となる不純物元素が1×10
18/cm
3の濃度でドープされており、膜厚は約500nmである。
【0037】
第1のp型超格子層110は、p
+型GaSb層183を除去する際に、エッチングストッパ層となるとともに、メサを形成する際のエッチングストッパ層となり、更には、下部コンタクト層となる層である。第1のp型超格子層110は、InAs/AlSb=6ML/6MLの超格子により形成されており、p型となる不純物元素が1×10
18/cm
3の濃度でドープされており、膜厚は約1μmである。尚、超格子の界面には、歪を補償するために、超格子を構成する元素の組み合わせにより、極薄い界面層を挿入する場合がある。例えばInAs/AlSb超格子であればInSbやAlAs、InAs/GaSb界面であればInSbやGaAsが歪補償の界面層となる。この例では、意図的な界面層は導入していない。
【0038】
第2のp型超格子層120、超格子吸収層130、n型超格子層140は、InAs/GaSb/AlSb/GaSb=7ML/1ML/5ML/1MLの超格子により形成されている。第2のp型超格子層120は、p型となる不純物元素が、5×10
17/cm
3の濃度でドープされており、膜厚は約300mである。超格子吸収層130は、p型となる不純物元素が、1×10
16/cm
3の濃度でドープされており、膜厚は約3μmである。n型超格子層140は、n型となる不純物元素が、5×10
17/cm
3の濃度でドープされており、膜厚は約300mである。
【0039】
尚、超格子吸収層130は、近赤外線を吸収する層であり、不純物元素をドープしない場合もあるが、本実施の形態においては、少数キャリアを電子とするため意図的に微量のp型となる不純物元素をドープしている。キャリアの種類は素子設計に依存し、少数キャリアに正孔を用いる場合には、意図的にn型となる不純物をドープする。尚、超格子吸収層130にドープされている不純物元素の濃度は、5×10
16/cm
3以下である。
【0040】
上部コンタクト層150は、膜厚が20nmであり、n型となる不純物元素が、1×10
18/cm
3の濃度でドープされたInAsにより形成されている。
【0041】
次に、
図6(b)に示すように、上部コンタクト層150の上に、画素に対応したメサを形成するためのハードマスク184を形成する。具体的には、上部コンタクト層150の上に、プラズマ化学気相堆積(CVD:chemical vapor deposition)により、膜厚が500nmのSiON膜を形成する。この後、SiON膜の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、ハードマスク184が形成される領域に、レジストパターン185を形成する。この後、エッチングガスとして、ArとCF
4を用いた反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)により、レジストパターン185が形成されていない領域のSiON膜を除去する。これにより、残存するSiON膜によりハードマスク184を形成することができる。
【0042】
次に、
図7(a)に示すように、ハードマスク184をマスクとして、RIEにより、上部コンタクト層150、n型超格子層140、超格子吸収層130、第2のp型超格子層120を除去することにより、複数のメサ186を形成する。このRIEを行う際には、エッチングガスとしてArとBCl
3を用い、四重極形質量分析計等を用いてGaが検出されなくなったらエッチングを停止する終点検知を行う。これにより、InAs/AlSb超格子構造により形成されている第1のp型超格子層110の表面が露出した直後にエッチングを停止することができる。この後、リン酸、クエン酸、過酸化水素水、水の混合溶液により、メサ186の側面部分を約100nmエッチングすることにより、RIEによって受けたメサ186の側面部分のダメージ領域を除去する。この後、BHFによりSiONにより形成されているハードマスク184を除去する。
【0043】
次に、
図7(b)に示すように、メサ186の上面及び側面、第1のp型超格子層110の表面に、保護膜160を形成する。保護膜160は、SiH
4/NH
3ガスを用いたプラズマCVDにより、SiN(シリコン窒化)膜を膜厚が300nmとなるように成膜することにより形成する。
【0044】
次に、
図8(a)に示すように、上部コンタクト層150の上に上部電極171を形成し、第1のp型超格子層110の上に下部電極172を形成する。具体的には、保護膜160の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、上部電極171及び下部電極172が形成される領域に開口部を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、RIEにより、レジストパターンの形成されていない領域における保護膜160を除去することにより、上部電極171が形成される領域の上部コンタクト層150の表面、下部電極172が形成される領域の第1のp型超格子層110の表面を露出させる。この後、レジストパターンを有機溶剤により除去した後、再び、保護膜160の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行う。これにより、上部電極171及び下部電極172が形成される領域に開口部を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、真空蒸着により、Ti/Pt/Auにより形成された積層金属膜を成膜し、有機溶剤等に浸漬させることにより、レジストパターンの上の金属積層膜をレジストパターンとともにリフトオフにより除去する。これにより、残存する金属積層膜により、上部コンタクト層150の上に上部電極171を形成し、第1のp型超格子層110の上に下部電極172を形成することができる。これにより、1つのメサ186を1画素とする複数の画素を有する画素アレイ101が形成される。尚、画素アレイ101は、GaSb基板181、p
+型InAsSb層182、p
+型GaSb層183が除去されたものを意味するが、説明の便宜上、これらが除去される前のものについても、画素アレイ101と記載する場合がある。
【0045】
次に、
図8(b)に示すように、上部電極171等の上にInバンプ190を形成する。具体的には、保護膜160、上部電極171及び下部電極172の上にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、Inバンプ190が形成される領域に開口部を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、真空蒸着によりIn膜を成膜し、有機溶剤に浸漬させることにより、レジストパターンの上のIn膜をリフトオフにより除去する。これにより、残存するIn膜によりInバンプ190を形成することができる。本実施の形態においては、図示はしないが、端部にはダミーメサが形成されており、ダミーメサの上面には下部電極172と接続されている電極が形成されており、この電極の上にも、Inバンプが形成されている。尚、この電極と下部電極172とは、ダミーメサの側面の保護膜160の上に形成された不図示の配線により接続されている。
【0046】
次に、
図9(a)に示すように、画素アレイ101とROIC200とをInバンプ190によりフリップチップボンディングによりハイブリッド接続し、更に、画素アレイ101とROIC200との間にアンダーフィル191を充填し硬化させる。尚、フリップチップボンディングの際にはROIC200側にもInバンプがあってもよく、その場合、
図9(a)のInバンプ190は、二つのInバンプが融合したものである。
【0047】
次に、
図9(b)に示すように、GaSb基板181、p
+型InAsSb層182、p
+型GaSb層183を除去する。具体的には、厚さが約625μmのGaSb基板181を背面研削により、残膜が約30μmになるまで除去した後、HF/CrO
3の混合溶液により、p
+型InAsSb層182をエッチングストッパ層として、ウェットエッチングにより除去する。この後、リン酸、過酸化水素水、水の混合溶液により、p
+型GaSb層183をエッチングストッパ層として、p
+型InAsSb層182をウェットエッチングにより除去する。この後、リン酸、クエン酸、過酸化水素水、水の混合溶液により、InAs/AlSbにより形成されている第1のp型超格子層110をエッチングストッパ層として、p
+型GaSb層183をウェットエッチングにより除去する。この後、図示はしないが、赤外線の入射面となる第1のp型超格子層110が露出している面に反射防止膜を成膜する。このように、GaSb基板181、p
+型InAsSb層182、p
+型GaSb層183を除去することにより、本実施の形態における赤外線検出器が形成される。
【0048】
図10は、赤外線検出器となる画素アレイ101とROIC200とがフリップチップボンディングにより接続され、焦点面アレイとなるものの様子を模式的に示す。画素アレイ101は、メサにより形成された画素が2次元状に形成されており、各々の画素ごとに独立して近赤外線を検出することができる。画素アレイ101の各々のメサの上面には上部電極171が各々形成されている。ROIC200には、上部電極171に対応する電極201が形成されており、対応する画素アレイ101の上部電極171と、ROIC200の電極201とは、フリップチップボンディングによりInバンプ190によって接続されている。ROIC200の内部には、読み出し回路が設けられており、画素アレイ101において2次元状に形成される画素に入力した赤外線の強度の情報に基づき、近赤外線の2次元画像を得ることができる。
【0049】
(撮像装置及び撮像システム)
次に、本実施の形態における撮像装置及び撮像システムについて、
図11に基づき説明する。本実施の形態における撮像システムは、光学系310、撮像装置320、補正信号処理部330、表示記録部340、冷却器350、制御部360を有している。撮像装置320は、シャッタ321、画素アレイ101、ROIC200、及び温度センサ322を有している。
【0050】
光学系310は、入射した近赤外線を画素アレイ101の撮像面に結像するものである。画素アレイ101では、撮像面に入射した近赤外光の強度を画素ごとに検出することができる。シャッタ321は、機械的シャッタ等の開閉可能なシャッタであり、開いている状態では赤外光が入射し、閉じている状態では赤外光の入射を遮断することができる。尚、ROIC内部のトランジスタのON/OFFによってもシャッタ機能を実現することができるため、シャッタ321は必須の構成要素ではない。
【0051】
ROIC200には、画素アレイ101における各々の画素に1対1に対応する画素読み出し回路が設けられており、各々の画素において検出された赤外線の光量に対応する電流をキャパシタに蓄積し、アンプによって電圧による電気信号に変換する。尚、温度センサ322は、撮像装置320の画素アレイ101の温度を検出することができる。
【0052】
撮像装置320より出力される各々の画素の電気信号は、補正信号処理部330に入力される。補正信号処理部330では、入力された電気信号に対して、画素ごとの感度や非線形性のばらつきを補正する処理を行うことにより補正後の撮像データを生成する。補正信号処理部330から出力された補正後の撮像データは、表示記録部340に入力される。表示記録部340では、入力された撮像データを表示記録部340の表示部に撮像画像として表示し、表示記録部340の記録部に記録する。
【0053】
制御部360は、光学系310、撮像装置320、補正信号処理部330、表示記録部340、冷却器350を制御する。制御部360は、所定のタイミングでシャッタ321を開閉することにより、画素アレイ101による撮像や、温度板を用いた補正処理が行われる。また、制御部360は、温度センサ322において検出された温度に基づき、冷却器350の動作を制御することにより、撮像装置320の温度を一定に保つことができる。
【0054】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態における赤外線検出器について説明する。本実施の形態における赤外線検出器は、第1の実施の形態における赤外線検出器において、p型とn型とを入れ換えた構造のものである。
【0055】
具体的には、本実施の形態における赤外線検出器は、
図12に示されるように、第1のn型超格子層210、第2のn型超格子層220、超格子吸収層230、p型超格子層240、上部コンタクト層250が形成されている。また、上部コンタクト層250の側から、上部コンタクト層250、p型超格子層240、超格子吸収層230、第2のn型超格子層220をドライエッチングにより除去することにより、画素に対応した超格子層のメサが形成されている。また、超格子層のメサの全体を覆う保護膜160が形成されており、上部コンタクト層250の上に上部電極271、第1のn型超格子層210の上に下部電極272が形成されている。
【0056】
本実施の形態においては、第1のn型超格子層210を第1の下部超格子層と記載し、第2のn型超格子層220を第2の下部超格子層と記載し、p型超格子層240を上部超格子層と記載する場合がある。よって、本実施の形態における赤外線検出器においては、近赤外線は、破線矢印で示すように、第1の下部超格子層の側から入射する。
【0057】
本実施の形態における赤外線検出器においては、第2のn型超格子層220、超格子吸収層230、p型超格子層240は、InAs/GaSb/AlSb/GaSb超格子により形成されており、同じ超格子構造により形成されている。また、第2のn型超格子層220にはn型となる不純物元素がドープされており、p型超格子層240にはp型となる不純物元素がドープされている。また、第1のn型超格子層210は、InAs/AlSb超格子により形成されており、n型となる不純物元素がドープされている。尚、第2のn型超格子層220、超格子吸収層230、p型超格子層240は、InAs/GaSb超格子により形成してもよく、第1のn型超格子層210は、InAs/InAsSb超格子により形成してもよい。また、上部コンタクト層250は、InAsにより形成されており、p型となる不純物元素がドープされている。
【0058】
本実施の形態における赤外線検出器においても、第1の実施の形態における赤外線検出器と同様の効果を得ることができる。
【0059】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0060】
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0061】
上記の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
第1の導電型の第1の下部超格子層と、
前記第1の下部超格子層の上に形成された第1の導電型の第2の下部超格子層と、
前記第2の下部超格子層の上に形成された超格子吸収層と、
前記超格子吸収層の上に形成された第2の導電型の上部超格子層と、
を有し、
前記第2の下部超格子層、前記超格子吸収層及び前記上部超格子層は、同じ超格子構造により形成されており、
前記第1の下部超格子層は、前記第2の下部超格子層とは異なる材料の超格子構造により形成されており、
前記第1の下部超格子層の実効的なバンドギャップは、前記第2の下部超格子層の実効的なバンドギャップ以上であって、
前記第1の下部超格子層の側から入射した赤外光を検出することを特徴とする赤外線検出器。
(付記2)
前記第1の下部超格子層における不純物元素の濃度は、1×10
17/cm
3以上、3×10
18/cm
3以下であり、
前記超格子吸収層における不純物元素の濃度は、5×10
16/cm
3以下であることを特徴とする付記1に記載の赤外線検出器。
(付記3)
前記第2の下部超格子層、前記超格子吸収層及び前記上部超格子層は、Gaを含む層を有する超格子構造により形成されており、
前記第1の下部超格子層は、Gaを含まない層による超格子構造により形成されていることを特徴とする付記1または2に記載の赤外線検出器。
(付記4)
前記第2の下部超格子層、前記超格子吸収層及び前記上部超格子層は、InAs/GaSb/AlSb/GaSb超格子、または、InAs/GaSb超格子により形成されており、
前記第1の下部超格子層は、InAs/AlSb超格子、または、InAs/InAsSb超格子により形成されていることを特徴とする付記1または2に記載の赤外線検出器。
(付記5)
前記第2の下部超格子層、前記超格子吸収層及び前記上部超格子層は、Gaを含まない層による超格子構造により形成されており、
前記第1の下部超格子層は、Gaを含む層を有する超格子構造により形成されていることを特徴とする付記1または2に記載の赤外線検出器。
(付記6)
前記第2の下部超格子層、前記超格子吸収層及び前記上部超格子層は、InAs/AlSb超格子、または、InAs/InAsSb超格子により形成されており、
前記第1の下部超格子層は、InAs/GaSb/AlSb/GaSb超格子、または、InAs/GaSb超格子により形成されていることを特徴とする付記1または2に記載の赤外線検出器。
(付記7)
前記第1の下部超格子層の厚さは、0.3μm以上、2.0μm以下であることを特徴とする付記1から6のいずれかに記載の赤外線検出器。
(付記8)
前記超格子吸収層におけるカットオフ波長は、1.0μm以上、2.5μm以下であることを特徴とする付記1から7のいずれかに記載の赤外線検出器。
(付記9)
近赤外線を検出することを特徴とする付記1から8のいずれかに記載の赤外線検出器。
(付記10)
前記第1の導電型はp型であり、前記第2の導電型はn型であることを特徴とする付記1から9のいずれかに記載の赤外線検出器。
(付記11)
前記第1の導電型はn型であり、前記第2の導電型はp型であることを特徴とする付記1から9のいずれかに記載の赤外線検出器。
(付記12)
前記第1の下部超格子層の上には、前記第2の下部超格子層、前記超格子吸収層及び前記上部超格子層により形成されるメサが2次元状に複数形成されており、
各々の前記メサを各々画素とすることを特徴とする付記1から11のいずれかに記載の赤外線検出器。
(付記13)
付記12に記載された赤外線検出器を有し、
前記赤外線検出器における複数の前記画素により2次元画像を撮像することのできる撮像装置。
(付記14)
付記12に記載された赤外線検出器を有し、
前記赤外線検出器における複数の前記画素により2次元画像を撮像し、撮像画像の記録表示や、画像解析によって付加価値の高い情報を検知および表示することのできる撮像システム。