特許第6972835号(P6972835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972835
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】分注ユニット
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   G01N35/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-183591(P2017-183591)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-60643(P2019-60643A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】堀越 勝恵
(72)【発明者】
【氏名】糸長 誠
(72)【発明者】
【氏名】辻田 公二
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐一
【審査官】 北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−058242(JP,A)
【文献】 特開2013−050435(JP,A)
【文献】 特開2004−239743(JP,A)
【文献】 実開昭59−029751(JP,U)
【文献】 国際公開第2016/208713(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−35/10
B01L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板形状を有し、凹部と凸部とが半径方向に交互に配置されたトラック領域を有するディスクと、
貫通孔を有し、前記ディスクに装着された状態において、前記貫通孔と前記トラック領域とにより、溶液を溜めるウェルが構成されるカートリッジと、
前記ウェルに対応して形成された凸状の保持部、及び、前記保持部を貫通するガイド孔を有し、前記保持部が前記ウェルに挿入されることにより前記カートリッジに保持される分注用ホルダと、
を備え、
前記ガイド孔は
記保持部の前記ディスクと対向する下面側の第1の開口径が前記分注用ホルダの上面側の第2の開口径よりも小さく、前記溶液を前記ウェル内に注入するピペットが前記ガイド孔に挿入された状態において、前記ピペットの先端を前記ウェルの内周面の近傍に位置させる円錐台形状を有し
記カートリッジが前記ディスクに装着され、前記分注用ホルダが前記カートリッジに保持されている状態において、前記分注用ホルダ側から前記ガイド孔を見たときに、前記ガイド孔の中心線が前記ディスクの中心と前記ウェルの中心とを通る線上に位置するように形成されてい
注ユニット。
【請求項2】
前記カートリッジは、前記貫通孔の周囲に配置されたシール部材を有し、
前記ウェルは、前記貫通孔と前記シール部材と前記トラック領域とにより構成されている
求項に記載の分注ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料液、及び、緩衝液等の溶液が分注される分注ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
疾病に関連付けられた特定の抗原または抗体をバイオマーカーとして検出することで、疾病の発見及び治療の効果等を定量的に分析する免疫検定法(immunoassay)が知られている。
【0003】
特許文献1には、試料分析用のディスクにカートリッジが装着されることにより、複数のウェルが形成される検出対象物質捕捉ユニットの一例が記載されている。試料液及び緩衝液を複数のウェルに分注し、抗原抗体反応を進行させることにより、ディスク上に複数の反応領域を形成させることができる。ウェルは試料液及び緩衝液を溜めるための容器として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−58242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、試料液及び緩衝液をウェルに注入したときに、ウェルの底面に気泡が付着する場合がある。気泡がウェルの底面を構成するディスクの表面に付着すると、気泡が付着している領域(以下、気泡領域と称す)では抗原抗体反応が進行しない。そのため、ディスクには気泡領域を含む反応領域が形成される。従って、気泡領域を含む反応領域では、その反応領域における検出対象物質を正確に計測することが困難である。
【0006】
本発明は、試料液及び緩衝液等の溶液をウェルに注入したときに発生する気泡の付着を抑制する分注ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、円板形状を有し、凹部と凸部とが半径方向に交互に配置されたトラック領域を有するディスクと、貫通孔を有し、前記ディスクに装着された状態において、前記貫通孔と前記トラック領域とにより、溶液を溜めるウェルが構成されるカートリッジと、前記ウェルに対応して形成された凸状の保持部、及び、前記保持部を貫通するガイド孔を有し、前記保持部が前記ウェルに挿入されることにより前記カートリッジに保持される分注用ホルダとを備え、前記ガイド孔は、前記保持部の前記ディスクと対向する下面側の第1の開口径が前記分注用ホルダの上面側の第2の開口径よりも小さく、前記溶液を前記ウェル内に注入するピペットが前記ガイド孔に挿入された状態において、前記ピペットの先端を前記ウェルの内周面の近傍に位置させる円錐台形状を有し、前記カートリッジが前記ディスクに装着され、前記分注用ホルダが前記カートリッジに保持されている状態において、前記分注用ホルダ側から前記ガイド孔を見たときに、前記ガイド孔の中心線が前記ディスクの中心と前記ウェルの中心とを通る線上に位置するように形成されている分注ユニットを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の分注ユニットによれば、試料液及び緩衝液等の溶液をウェルに注入したときに発生する気泡の付着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】分注ユニットを示す平面図である。
図2A図1のA−Aで切断した分注ユニットの断面図である。
図2B】分注用ホルダを検出対象物質捕捉ユニットより取り外した状態を示す断面図である。
図2C】分注用ホルダ及びカートリッジを試料分析用のディスクより取り外した状態を示す断面図である。
図3】検出対象物質捕捉ユニットを示す平面図である。
図4図3のB−Bで切断したウェルを示す拡大斜視図である。
図5図2Aのウェルとガイド孔との関係を示す拡大断面図である。
図6】ガイド孔にピペットが挿入されている状態を示す拡大断面図である。
図7】ディスク上に反応領域を形成する方法を説明するためのフローチャートである。
図8A】ウェル10内に緩衝液が注入される状態を示す上面図である。
図8B】ウェル10内に緩衝液が注入される状態を示す上面図である。
図9A図8Aの比較例を示す上面図である。
図9B図8Bの比較例を示す上面図である。
図10】検出対象物質が抗体と微粒子とによってトラック領域の凹部にサンドイッチ捕獲されている状態を示す模式的な断面図である。
図11】微粒子が検出対象物質と結合した状態でトラック領域の凹部に捕捉されている状態を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[分注ユニット]
図1図4を用いて、一実施形態の分注ユニットを説明する。図1は分注ユニットを分注用ホルダ側から見た状態を示している。図2A図1のA−Aで切断した分注ユニットの断面を示している。図2Bは分注用ホルダを検出対象物質捕捉ユニットから取り外した状態を示している。図2C図2Bに示す状態から、さらにカートリッジを試料分析用のディスクより取り外した状態を示している。図3は検出対象物質捕捉ユニットをカートリッジ側から見た状態を示している。図4図3のウェルをB−Bで切断した状態を部分的に拡大して示している。
【0011】
図1及び図2Aに示すように、分注ユニット1は、試料分析用のディスク100と、カートリッジ200と、分注用ホルダ300とを備える。ディスク100は、例えば、ブルーレイディスク(BD)、DVD、コンパクトディスク(CD)等の光ディスクと同等の円板形状を有する。
【0012】
ディスク100は、例えば、一般的に光ディスクに用いられるポリカーボネート樹脂またはシクロオレフィンポリマー等の樹脂材料で形成されている。なお、ディスク100は、上記の光ディスクに限定されるものではなく、他の形態または所定の規格に準拠した光ディスクを用いることもできる。
【0013】
図1または図2Cに示すように、ディスク100は、中心部に形成された中心孔101を有する。中心孔101の中心C101はディスク100の中心C100と一致している。
【0014】
図4に示すように、ディスク100の表面には、凸部103と凹部104とがディスク100の半径方向に交互に配置されたトラック領域105が形成されている。凸部103及び凹部104は、中心孔101の中心C101を中心点として、ディスク100の内周部から外周部に向かってスパイラル状に形成されている。従って、ディスク100の半径方向と凸部103及び凹部104に沿う方向(以下、トラック方向と称す)とは直交する。
【0015】
凸部103は光ディスクのランドに相当し、凹部104は光ディスクのグルーブに相当する。例えば、凹部104の半径方向のピッチに相当するトラックピッチは320nmであり、凹部104の深さは70nmである。
【0016】
図3に示すように、カートリッジ200は、周方向に複数の円筒状の貫通孔201が形成されている。複数の貫通孔201は、それぞれの中心が同一円周上に位置するように等間隔に形成されている。例えば、貫通孔201の直径は6mmであり、長さは10mmである。図2Cに示すように、カートリッジ200は、中心部に形成された凸部202と、外周部に複数の貫通孔201に対応して形成された複数のシール部材203とを有する。
【0017】
シール部材203は、例えばシリコーンゴム等の弾性変形部材で作製されたリング状のパッキンである。シール部材203の厚さは例えば1.5mmである。図2Cまたは図4に示すように、シール部材203は、複数の貫通孔201の周囲にそれぞれ配置されている。
【0018】
カートリッジ200をディスク100に装着すると、シール部材203は、トラック領域105の凹部104を埋めるように弾性変形する。なお、図4はシール部材203が弾性変形する前の状態を示している。
【0019】
カートリッジ200の凸部202がディスク100の中心孔101に挿入されることにより、カートリッジ200はディスク100に装着され、図3に示す検出対象物質捕捉ユニット2が構成される。
【0020】
図2B及び図4に示すように、検出対象物質捕捉ユニット2は、カートリッジ200の貫通孔201とシール部材203とディスク100のトラック領域105とによって形成される複数のウェル10を有する。貫通孔201及びシール部材203の内周面はウェル10の内周面を構成し、ディスク100のトラック領域105はウェル10の底面を構成している。従って、ウェル10の直径は6mmであり、深さは11.5mmである。
【0021】
複数のウェル10には、試料液または緩衝液等の溶液が分注される。ウェル10は試料液及び緩衝液等の溶液を溜めるための容器である。シール部材203は、ウェル10から溶液が漏れる危険性を低減させる。
【0022】
図2Bに示すように、分注用ホルダ300は、周方向に複数の凸状の保持部310が形成された円板形状を有する。複数の保持部310は、それぞれの中心が同一円周上に位置するように等間隔に形成されている。複数の保持部310は、検出対象物質捕捉ユニット2の複数のウェル10に対応して形成されている。
【0023】
図2Aに示すように、保持部310の外径はウェル10(貫通孔201)の内径と同じ、または、内径よりもわずかに小さくなるように形成されている。分注用ホルダ300は、保持部310がウェル10に挿入されることにより、検出対象物質捕捉ユニット2のカートリッジ200に保持される。
【0024】
分注用ホルダ300は、保持部310を貫通するガイド孔320を有する。ガイド孔320は保持部310に対応して形成されている。図5図2Aに示す右側のウェル10及びガイド孔320を拡大したものである。ガイド孔320は、分注用ホルダ300において保持部310側(ディスク100と対向する下面側)の開口径R320a(第1の開口径)が保持部310とは反対側(分注用ホルダ300の上面側)の開口径R320b(第2の開口径)よりも小さい円錐台形状を有する。
【0025】
ガイド孔320は、開口径R320aの中心と開口径R320bの中心とを通る中心線CL320が分注用ホルダ300の半径方向となるように形成されている。具体的には、ガイド孔320は、分注用ホルダ300が検出対象物質捕捉ユニット2のカートリッジ200に保持されている状態において、分注用ホルダ300側からガイド孔320を見たときに、ガイド孔320の中心線CL320がディスク100の中心C100とウェル10の中心C10とを通る線CL110上に位置するように形成されている。
【0026】
従って、ガイド孔320は、中心線CL320がディスク100の半径方向となるように形成されている。ディスク100に対するガイド孔320の傾斜角度θa(具体的にはウェル10の内周面とガイド孔320の中心線CL320との角度)は例えば30°である。
【0027】
図6に示すように、ガイド孔320には試料液及び緩衝液を注入するピペット400が挿入される。ガイド孔320は、ピペット400がガイド孔320に挿入された状態において、ピペット400の先端401が、線CL110上におけるウェル10の内周面の近傍に位置し、ウェル10の深さ(11.5mm)に対してウェル10の底面から約1/3(3〜4mm)の位置となる形状を有する。
【0028】
ディスク100に対するガイド孔320の傾斜角度θaが30°である場合、ガイド孔320に挿入されたピペット400の傾斜角度θbも30°となる。即ち、ガイド孔320は、ピペット400の先端401がディスク100の半径方向におけるウェル10の内周面の近傍に位置し、所定の傾斜角度θbとなるようにピペット400を案内して保持する。
【0029】
[分注方法]
図7のフローチャート、図8A図8B図9A図9B図10、及び、図11を用いて、分注ユニット1のディスク100上に反応領域を形成する方法の一例を説明する。オペレータは、図7のステップS1にて、分注ユニット1のガイド孔320にピペット400を挿入し、抗体501を含む緩衝液を、分注ユニット1の複数のウェル10に分注する。
【0030】
図8A及び図8Bは、ウェル10内に緩衝液が注入される状態を示している。図8A及び図8Bに示す円弧状の矢印はウェル10内に注入される緩衝液の流動方向を示している。ピペット400の先端401は、ウェル10の線C110上における内周面の近傍に位置しているため、図8Aに示すように、緩衝液はウェル10におけるディスク100の半径方向の外周側の内周面に吐出される。
【0031】
緩衝液は、ウェル10の内周面、及び内周面と底面との境界部を伝って、ウェル10におけるディスク100の半径方向の内周側の内周面、及び内周面と底面との境界部に到達する。そのため、図8Bに示すように、ウェル10の底面を構成するディスク100の凸部103及び凹部104の影響を低減させ、ウェル10の内周面と底面との境界部の全周に亘って緩衝液を流動させることができる。従って、緩衝液をウェル10に注入したときに発生する気泡の付着を抑制できる。
【0032】
図9A及び図9Bは、図8A及び図8Bの比較例である。図9Aは、緩衝液がウェル10におけるディスク100の半径方向とは異なる位置に吐出される状態を示している。ウェル10のディスク100の半径方向とは異なる位置に吐出された緩衝液は、ウェル10の内周面及び底面を流動するときに、ディスク100の凹部104に沿って流動しやすい。図9Bに示すように、緩衝液はウェル10におけるディスク100の半径方向の内周面の近傍の凹部104に阻まれやすい。そのため、ウェル10におけるディスク100の半径方向側の端部に気泡BUが発生しやすい。
【0033】
オペレータは、ピペット400をガイド孔320から抜き取り、分注ユニット1を、適切な時間、適切な温度でインキュベートさせる。図10に示すように、抗体501は、ウェル10の底面を構成するディスク100のトラック領域105上に固定される。なお、図9Bに示す比較例のように、気泡BUがトラック領域105上に付着すると、気泡BUが付着している気泡領域では、抗体501はトラック領域105上に固定されない。
【0034】
オペレータは、ウェル10から緩衝液を排出し、ウェル10を別の緩衝液で洗浄する。トラック領域105に固定されなかった抗体501はこの洗浄によって除去される。
【0035】
オペレータは、ステップS2にて、分注ユニット1のガイド孔320にピペット400を挿入し、検出対象物質502を含む試料液をウェル10に注入する。検出対象物質502は、例えばエクソソームである。なお、試料液には検出対象物質502が含まれていない場合もある。説明をわかりやすくするために、試料液に検出対象物質502が含まれている場合について説明する。
【0036】
試料液は、上記の緩衝液と同様に、ウェル10におけるディスク100の半径方向の外周側の内周面に吐出される。試料液は、ウェル10の内周面、及び内周面と底面との境界部を伝って、ウェル10におけるディスク100の半径方向の内周側の内周面、及び内周面と底面との境界部に到達する。
【0037】
そのため、ウェル10の底面を構成するディスク100の凸部103及び凹部104の影響を低減させ、ウェル10の内周面と底面との境界部の全周に亘って試料液を流動させることができる。従って、試料液をウェルに注入したときに発生する気泡の付着を抑制できる。
【0038】
オペレータは、ピペット400をガイド孔320から抜き取り、分注ユニット1を、適切な時間、適切な温度でインキュベートさせる。図10に示すように、検出対象物質502は、トラック領域105上に固定されている抗体501と抗原抗体反応により特異的に結合する。その結果、検出対象物質502は、トラック領域105上に捕捉される。
【0039】
オペレータは、ウェル10から試料液を排出し、ウェル10を緩衝液で洗浄する。なお、抗体501と結合しないで試料液中に分散している検出対象物質502、及び、抗原抗体反応ではない非特異吸着によってトラック領域105上に付着している検出対象物質502は、この洗浄によって除去される。
【0040】
オペレータは、ステップS3にて、分注ユニット1のガイド孔320にピペット400を挿入し、標識となる微粒子503を含む緩衝液をウェル10に注入する。微粒子503の表面には検出対象物質502と抗原抗体反応により特異的に結合する抗体が形成されている。
【0041】
緩衝液は、上記の試料液と同様に、ウェル10のディスク100の半径方向における外周側の内周面に吐出される。緩衝液は、ウェル10の内周面、及び内周面と底面との境界部を伝って、ウェル10におけるディスク100の半径方向の内周側の内周面、及び内周面と底面との境界部に到達する。
【0042】
そのため、ウェル10の底面を構成するディスク100の凸部103及び凹部104の影響を低減させ、ウェル10の内周面と底面との境界部の全周に亘って緩衝液を流動させることができる。従って、緩衝液をウェルに注入したときに発生する気泡の付着を抑制できる。
【0043】
分注用ホルダ300の保持部310は、ウェル10に注入された抗体501を含む緩衝液の液面、試料液の液面、及び、微粒子503を含む緩衝液の液面と接触しない高さに設定されている。保持部310は、ピペット400からウェル10内へ吐出された試料液及び緩衝液の飛び散りを防止する。なお、ピペット400の先端401は、上記の液面に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
【0044】
オペレータは、ピペット400をガイド孔320から抜き取り、分注ユニット1を、適切な時間、適切な温度でインキュベートさせる。図10に示すように、微粒子503は、トラック領域105上に捕捉されている検出対象物質502と抗原抗体反応により特異的に結合する。その結果、微粒子503は、トラック領域105、具体的にはトラック領域105の凹部104に、検出対象物質502と結合した状態で捕捉される。
【0045】
オペレータは、ウェル10から緩衝液を排出し、ウェル10を別の緩衝液で洗浄し、乾燥させる。なお、検出対象物質502と結合しないで緩衝液中に分散している微粒子503は、この洗浄により除去される。
【0046】
オペレータは、ステップS4にて、図2Cに示すように、ディスク100とカートリッジ200と分注用ホルダ300とを分離する。ディスク100には、複数のウェル10に対応して複数の円形の反応領域120が形成されている。
【0047】
図10に示すように、反応領域120では、微粒子503が検出対象物質502と結合した状態でトラック領域105の凹部104に捕捉されている。即ち、検出対象物質502は、抗体501と微粒子503とによってトラック領域105の凹部104にサンドイッチ捕獲されている。図11は、微粒子503が検出対象物質502と結合した状態でトラック領域105の凹部104に捕捉されている状態の一例を示している。
【0048】
図10に示すように、レーザ光20aを、レンズ21によりトラックに相当する凹部104に集光させ、凹部104に沿って走査させて反応領域120の微粒子503を計測する。反応領域120の全てのトラックにおける微粒子503の数を加算することにより、反応領域120における微粒子503の総数を算出することができる。これにより、微粒子503と特異的に結合している検出対象物質502の総数を間接的に計測することができる。
【0049】
反応領域120が形成される過程で気泡BUが発生すると、気泡BUが付着している気泡領域では、検出対象物質502及び微粒子503が捕捉されないため、微粒子503及び検出対象物質502を正確に計測することができない。本実施形態の分注ユニット1によれば、試料液及び緩衝液等の溶液を分注させるピペット400を分注用ホルダ300のガイド孔320で保持し、ピペット400の先端401を、ウェル10におけるディスク100の半径方向の内周面の近傍に位置決めすることができる。
【0050】
これにより、ピペット400の先端401から吐出される試料液及び緩衝液は、ウェル10におけるディスク100の半径方向の一方の側の内周面に吐出され、ウェル10の内周面、及び内周面と底面との境界部を伝って、他方の側の内周面、及び内周面と底面との境界部に到達する。
【0051】
そのため、ウェル10の底面を構成するディスク100の凸部103及び凹部104の影響を低減させ、ウェル10の内周面と底面との境界部の全周に亘って試料液及び緩衝液を流動させることができる。従って、試料液及び緩衝液をウェル10に注入したときに発生する気泡BUの付着を抑制できる。
【0052】
本発明は、上述した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0053】
本実施形態の分注ユニット1では、ガイド孔320は、ガイド孔320に挿入されたピペット400の先端401がウェル10におけるディスク100の半径方向の外周側の内周面の近傍に位置する形状を有する。試料液及び緩衝液はウェル10におけるディスク100の半径方向の内周面に吐出されればよい。
【0054】
従って、ガイド孔320はピペット400の先端401がウェル10におけるディスク100の半径方向の内周側の内周面の近傍に位置する形状を有していてもよい。また、ピペット400の先端401はウェル10の内周面に接触していてもよい。
【0055】
本実施形態の分注ユニット1では、ウェル10の内周面に対してガイド孔320及びピペット400の傾斜角度を30°に設定しているが、ガイド孔320及びピペット400の傾斜角度は、ウェル10及びピペット400の形状に応じて適宜設定されるものである。
【0056】
分注用ホルダ300のガイド孔320の内周面に溝を形成してもよい。ピペット400がガイド孔320に挿入されている状態において、ウェル10内が密閉されることを溝により防止することができる。これにより、試料液及び緩衝液をウェル10内に円滑に注入させることができる。
【0057】
本実施形態の分注ユニット1では、カートリッジ200は貫通孔201とシール部材203とを有する構成としているが、シール部材203を有さない構成としてもよい。この場合、ウェル10は、カートリッジ200の貫通孔201とディスク100のトラック領域105とによって構成される。ウェル10の内周面は貫通孔201の内周面で構成され、ウェル10の底面はディスク100のトラック領域105で構成される。
【符号の説明】
【0058】
1 分注ユニット
10 ウェル
100 ディスク
103 凸部
104 凹部
105 トラック領域
200 カートリッジ
201 貫通孔
300 分注用ホルダ
310 保持部
320 ガイド孔
R320a,R320b 開口径
C10,C100 中心
CL110 線
CL320 中心線
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11