【実施例】
【0028】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「フィルタ」として、ひだ(「プリーツ」とも称する)が形成された濾過部2及び濾過部2の底部外周側から外方に広がるフランジ部3を備える不織布製のエアフィルタ1を例示する(
図5参照)。
【0029】
<実施例1>
(1)フィルタの製造方法
本実施例に係るフィルタの製造方法は、エアフィルタ1の製造方法であって、
図3(a)に示すように、成形型5内に、ひだ折り加工された第1不織布7を配置するとともに、第1不織布7の外周部11に重なるようにシート状の第2不織布8を配置するセット工程と、
図3(b)に示すように、成形型5で第1不織布7及び第2不織布8を加熱圧縮して、第1不織布7の外周部11の内側で濾過部2を形成するとともに、第1不織布7の外周部11と第2不織布8とを一体化してフランジ部3を形成する成形工程と、を備えている。
【0030】
上記第1不織布7は、
図1に示すように、シート状の不織布を山部と谷部とが連続するように規則的に折り返すことでひだ折り加工されている。このひだ折り加工された第1不織布7は、ひだ部PLと、ひだ部PLのひだの連続方向Qの端側に連なる端部13と、を備えている。この端部13は、複数折り返されて構成されている。さらに、第1不織布7の目付量は、約60g/m
2とされている。
【0031】
上記第2不織布8は、
図2に示すように、シート状の不織布の中央部を打抜き等で切り抜いて枠状に形成されている。この枠状の第2不織布8は、第1不織布7の外周部11に相当する形状とされている。また、第2不織布8は、接続部16で折り返されて複数枚(図中で2枚)重ね合わされて構成されている。また、第2不織布8は、第1不織布7と同じ材料から形成されている。さらに、第2不織布8の目付量は、約60g/m
2とされている。
【0032】
なお、本実施例では、上記第1及び第2不織布7、8として、繊維を混綿、カーディング及びラッピングにより繊維ウエブを形成し、その繊維ウェブを加熱して繊維同士を熱融着(即ち、サーマルボンド)して得られる不織布を採用する。なお、上記繊維ウエブにニードルパンチ加工を施して予備不織布を形成し、その予備不織布を加熱して繊維同士を熱融着して得られる不織布を採用してもよい。また、本実施例では、エアフィルタ1を車両室内から目視可能な箇所に配置するため、黒色等に着色された不織布を採用する。
【0033】
上記成形型5は、
図3に示すように、互いに近接・離間可能な一対の金型21a、21bを備えている。この一対の金型21a、21bのそれぞれは、濾過部2を形成するための濾過部形成面22a、22bと、フランジ部3を形成するためのフランジ部形成面23a、23bと、を備えている。この濾過部形成面22a、22bは、濾過部2のひだに対応したひだ状に形成されている。さらに、フランジ部形成面23a、23bは、濾過部形成面22a、22bの外周側に配置されており、フランジ部3に対応した平坦状に形成されている。
【0034】
上記セット工程では、
図3(a)及び
図4に示すように、成形型5内に、第1不織布7の外周部11(
図1(b)中に仮想線のハッチング領域で示す。)のうちの少なくともひだの稜線方向Pの端側12を含む部分に重なるようにシート状の第2不織布8が配置される。具体的に、セット工程では、成形型5内に、第1不織布7の外周部11の全周にわたって重なるように枠状の第2不織布8が配置される。この第2不織布8の中央開口17は、濾過部2の底部外周縁よりも僅かに大きな開口(例えば、濾過部2の底部外周縁を外方に約5mmオフセットした開口)に設定されている。これにより、成形時に第2不織布8が中央側へ引き込まれても、第1不織布7の外周部11と第2不織布8とが適当な位置で一体化される。なお、成形型5内で不織布7、8を位置決め構造により位置決め保持することで、成形時に不織布7、8の引き込みを防止するようにしてもよい。
【0035】
上記成形工程では、
図3(b)に示すように、一対の金型21a、21bにより第1不織布7及び第2不織布8を加熱圧縮することで、各フランジ部形成面23a、23bで第1不織布7の外周部11と第2不織布8とが押し潰されて一体化される。そして、各濾過部形成面22a、22bの間に挟まれる第1不織布7の外周部11の内側で濾過部2が形成されるとともに、各フランジ部形成面23a、23bの間に挟まれる第1不織布7の外周部11と第2不織布8とでフランジ部3が形成される。その結果、濾過部2及びフランジ部3を備えるエアフィルタ1が得られる。
【0036】
(2)エアフィルタの構成
本実施例に係るエアフィルタ1は、
図5に示すように、ひだが形成された濾過部2及び濾過部2の底部外周側から外方に広がるフランジ部3を備えている。この濾過部2は、エア中のダストを捕集する部位であり、フランジ部3は、枠状のベゼル等により支持される部位である。また、濾過部2は、ひだの稜線方向Pの端側14が側壁2aにより閉塞されている。
【0037】
上記フランジ部3の主要部(即ち、フランジ部3の外周縁側を除く部位)の任意の位置の目付量は、濾過部2の主要部(即ち、濾過部2の側壁2aを除く部位)の目付量よりも大きい。このフランジ部3の主要部は、第1不織布7と第2不織布8とからなる多層構造とされており、その目付量が約200g/m
2以上とされている。一方、濾過部2の主要部は、第1不織布7からなる単層構造とされており、その目付量が約70g/m
2以下とされている。よって、フランジ部3の目付量T1と濾過部2の目付量T2との比(T1/T2)は、約2.9とされている。
【0038】
なお、上記フランジ部3の外周縁側には、第1不織布7及び第2不織布8の位置合わせ状態によっては低目付の箇所が生じる可能性がある。そのため、エアフィルタ1の成形後に、打抜き等によりフランジ部3の外周縁側を除去することが好ましい。さらに、上記濾過部2の側壁2aには、第1不織布7が重ねられた高目付の箇所が生じる。
【0039】
上記エアフィルタ1は、
図6に示すように、車両室内Rから外部Sへ送出されるエアをろ過するものである。具体的に、エアフィルタ1は、ハイブリッド車両におけるバッテリの冷却装置(図示省略)に搭載されている。そして、エアフィルタ1は、車両室内Rから区画されたバッテリ収容室Sの区画壁25に対して車両室内R側から着脱自在に取り付けられる湾曲枠状のベゼル26に支持されている。この支持状態では、エアフィルタ1は、ベゼル26の湾曲形状に沿って曲げられている。そして、バッテリ収容室Sの区画壁25からベゼル26とともにエアフィルタ1を取り外すことで、エアフィルタ1の点検・清掃等が実施される。なお、上記エアフィル1としては、フランジ部3が平坦状のままでベゼルに支持される形態であってもよい。
【0040】
(3)実施例の効果
本実施例のエアフィルタの製造方法によると、成形型5内に、ひだ折り加工された第1不織布7を配置するとともに、第1不織布7の外周部11のうちの少なくともひだの稜線方向Pの端側12を含む部分に重なるようにシート状の第2不織布8を配置するセット工程と、成形型5で第1不織布7及び第2不織布8を加熱圧縮して、第1不織布7の外周部11の内側で濾過部2を形成するとともに、第1不織布7の外周部11と第2不織布8とを一体化してフランジ部3を形成する成形工程と、を備える。これにより、エアフィルタ1において、濾過部2は、第1不織布7から形成されることで低目付となり低圧損を保つ一方、フランジ部3は、第1不織布7及び第2不織布8から形成されて補強される。その結果、濾過部2の圧力損失を低減させ得るとともに、フランジ部3の強度向上を図ることができる。また、エアフィルタ1は、不織布7、8のみから形成されているため、形状の自由度を確保できるとともに、リサイクル性等の環境特性に優れる。さらに、1つの成形工程でエアフィルタ1を簡易且つ安価に得ることができる。
【0041】
また、本実施例では、第2不織布8は、枠状に形成されており、セット工程において、成形型5内に、第1不織布7の外周部11の全周にわたって重なるように第2不織布8を配置する。これにより、セット工程において第1不織布7と第2不織布8とを簡易且つ正確に位置合わせできる。
【0042】
また、本実施例では、セット工程において、成形型5内に、複数枚重ね合わされた第2不織布8を配置する。これにより、フランジ部3の強度を更に向上させることができる。
【0043】
さらに、本実施例では、第1不織布7及び第2不織布8は、同じ材料から形成されている。これにより、リサイクル等の環境特性に優れたエアフィルタ1を提供できる。
【0044】
本実施例のエアフィルタ1によると、フランジ部3の任意の位置の目付量は、濾過部2の目付量よりも大きい。これにより、濾過部2の圧力損失を低減させ得るとともに、フランジ部3の強度向上を図ることができる。さらに、エアフィルタ1は、不織布7、8のみから形成されているため、形状の自由度を確保できるとともに、リサイクル性等の環境特性に優れる。
【0045】
また、本実施例では、フランジ部3の目付量T1と濾過部2の目付量T2との比(T1/T2)は、2.9である。これにより、濾過部2の圧力損失の低減とフランジ部3の強度向上とを効果的に両立させることができる。
【0046】
さらに、本実施例では、車両室内Rから外部へ送出されるエアをろ過するためのエアフィルタ1を採用した。これにより、車両室内Rのエアをろ過するエアフィルタ1において、濾過部2の圧力損失を低減させ得るとともに、フランジ部3の強度向上を図ることができる。ここで、上記エアフィルタ1でろ過する車両室内Rのエアは、内燃機関の吸気系のエアクリーナ等で用いられるエアフィルタでろ過する外気よりも汚染度が低い。そのため、エアフィルタ1には、圧力損失の低減を目的として低目付の不織布を使用することが求められる。本エアフィルタ1によれば、低目付の不織布を使用しても、フランジ部3に必要な強度が確保される。
【0047】
<実施例2>
次に、実施例2に係るフィルタの製造方法について説明するが、上記実施例1に係るフィルタの製造方法と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0048】
(1)フィルタの製造方法
本実施例に係るフィルタの製造方法は、エアフィルタ1の製造方法であって、
図7に示すように、ひだ折り加工された第1不織布7を加熱圧縮して、濾過部2及び濾過部2の底部外周側から外方に広がるつば部32を備える第1不織布成形体31を成形する予備成形工程と、
図8(a)に示すように、成形型5内に、第1不織布成形体31を配置するとともに、第1不織布成形体31のつば部32に重なるようにシート状の第2不織布8を配置するセット工程と、
図8(b)に示すように、成形型5で第1不織布成形体31及び第2不織布8を加熱圧縮して、第1不織布成形体31のつば部32と第2不織布8とを一体化してフランジ部3を形成する成形工程と、を備えている。
【0049】
上記予備成形工程では、
図7に示すように、互いに近接・離間可能な一対の金型35a、35bを備える予備成形型34を用いる。この一対の金型35a、35bのそれぞれは、濾過部2を形成するための濾過部形成面36a、36bと、つば部32を形成するためのつば部形成面37a、37bと、を備えている。この濾過部形成面36a、36bは、濾過部2のひだに対応したひだ状に形成されている。また、つば部形成面37a、37bは、濾過部形成面36a、36bの外周側に配置されており、つば部32に対応した平坦状に形成されている。
【0050】
上記予備成形工程では、一対の金型35a、35bにより第1不織布7を加熱圧縮することで、各つば部形成面37a、37bで第1不織布7の外周部11が押し潰される。そして、各濾過部形成面36a、36bの間で挟まれる第1不織布7の外周部11の内側で濾過部2が形成されるとともに、各つば部形成面37a、37bの間で挟まれる第1不織布7の外周部11でつば部32が形成される。その結果、濾過部2及びつば部32を備える第1不織布成形体31が得られる。
【0051】
上記セット工程では、
図8(a)及び
図9に示すように、成形型5内に、第1不織布成形体31のつば部32のうちの少なくとも濾過部2のひだの稜線方向Pの端側14に連なる部分に重なるようにシート状の第2不織布8が配置される。具体的に、セット工程では、成形型5内に、第1不織布成形体31のつば部32の全周にわたって重なるように枠状の第2不織布8が配置される。
【0052】
上記成形工程では、
図8(b)に示すように、一対の金型35a、35bにより第1不織布成形体31及び第2不織布8を加熱圧縮することで、各フランジ部形成面23a、23bで第1不織布成形体31のつば部32と第2不織布8とが押し潰されて一体化される。そして、各フランジ部形成面23a、23bの間に挟まれる第1不織布成形体31のつば部32と第2不織布8とでフランジ部3が形成される。その結果、濾過部2及びフランジ部3を備えるエアフィルタ1が得られる。
【0053】
(2)実施例の効果
本実施例のフィルタの製造方法によると、ひだ折り加工された第1不織布7を加熱圧縮して、濾過部2及び濾過部2の底部外周側から外方に広がるつば部32を備える第1不織布成形体31を成形する予備成形工程と、成形型5内に、第1不織布成形体31を配置するとともに、第1不織布成形体31のつば部32のうちの少なくとも濾過部2のひだの稜線方向Pの端側14に連なる部分に重なるようにシート状の第2不織布8を配置するセット工程と、成形型5で第1不織布成形体31及び第2不織布8を加熱圧縮して、第1不織布成形体31のつば部32と第2不織布8とを一体化してフランジ部3を形成する成形工程と、を備える。これにより、エアフィルタ1において、濾過部2は、第1不織布7から形成されることで低目付となり低圧損を保つ一方、フランジ部3は、第1不織布7及び第2不織布8から形成されて補強される。その結果、濾過部2の圧力損失を低減させ得るとともに、フランジ部3の強度向上を図ることができる。また、エアフィルタ1は、不織布7、8のみから形成されているため、形状の自由度を確保できるとともに、リサイクル性等の環境特性に優れる。さらに、第1不織布成形体31の姿勢が安定しているため、セット工程において第1不織布成形体31と第2不織布8とを簡易且つ正確に位置合わせできる。
【0054】
また、本実施例では、第2不織布8は、枠状に形成されており、セット工程において、成形型5内に、第1不織布成形体31のつば部32の全周にわたって重なるように第2不織布8を配置する。これにより、セット工程において第1不織布成形体31と第2不織布8とを簡易且つ正確に位置合わせできる。
【0055】
また、本実施例では、セット工程において、成形型5内に、複数枚重ね合わされた第2不織布8を配置する。これにより、フランジ部3の強度を更に向上させることができる。
【0056】
さらに、本実施例では、第1不織布7及び第2不織布8は、同じ材料から形成されている。これにより、リサイクル等の環境特性に優れたエアフィルタ1を提供できる。
【0057】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、一体的に形成された単一の第2不織布8を成形型5内に配置するセット工程を例示したが、これに限定されず、例えば、
図10に示すように、第1不織布7の外周部11(又は第1不織布成形体31のつば部32)の部分に応じて複数の第2不織布8を平面方向(即ち、成形型5の型締め方向と直交する面方向)に位置をずらして成形型5内に配置するセット工程を採用してもよい。これにより、第2不織布8の形状自由度が高いため、不織布の材料歩留りを向上できる。
【0058】
上述の形態では、例えば、
図10(a)に示すように、第1不織布7の外周部11(又は第1不織布成形体31のつば部32)をひだの稜線方向Pに沿う線で2つに分割し、これら各分割部のそれぞれに重なるようにU字状の第2不織布8を配置してもよい。さらに、例えば、
図10(b)(c)に示すように、第1不織布7の外周部11においてひだの稜線方向Pの端側12及びその端部12をひだの連続方向Qに延長した部分を含む両サイドのそれぞれに重なるように第2不織布8を配置してもよい。
【0059】
また、上記実施例では、複数折り返されてなる第1不織布7の端部13を例示したが、これに限定されず、例えば、折り返されていない第1不織布の端部を採用してもよい。また、上記実施例では、複数枚重ね合わされた多層構造の第2不織布8を例示したが、これに限定されず、例えば、単層構造の第2不織布(即ち、1枚の第2不織布)を採用してもよい。
【0060】
また、上記実施例では、同じ材料から形成されて同じ目付量を有する第1及び第2不織布7、8を例示したが、これに限定されず、例えば、異なる材料から形成される第1及び第2不織布を採用したり、異なる目付量を有する第1及び第2不織布を採用したりしてもよい。
【0061】
また、上記実施例のセット工程において、成形型5に対する第1不織布7(又は第1不織布成形体31)及び第2不織布8の配置順序は特に問わない。例えば、両者を重ねた状態で同時に配置してもよいし、一方を配置した後に他方を配置してもよい。
【0062】
また、上記実施例では、型締め方向が上下方向となる成形型5を例示したが、これに限定されず、例えば、型締め方向が左右方向や斜め方向となる成形型を採用してもよい。
【0063】
また、上記実施例では、予備成形型34で第1不織布成形体31を成形し、成形型5でエアフィルタ1を成形する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、共通の成形型5で第1不織布成形体31及びエアフィルタ1を成形するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施例では、予備成形工程で完全な濾過部2を形成する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、予備成形工程で未完成の濾過部を形成し、成形工程で完全な濾過部を形成するようにしてもよい。
【0065】
さらに、上記実施例では、車両室内Rから外部へ送出されるエアをろ過するエアフィルタ1を例示したが、これに限定されず、例えば、内燃機関の吸気系のエアクリーナで用いられるエアフィルタとしたり、エアコンディショナで用いられるエアフィルタとしたりしてもよい。さらに、燃料ガス等の空気以外の気体をろ過する気体フィルタとしたり、オイル等の液体をろ過する液体フィルタとしたりしてもよい。
【0066】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0067】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。