特許第6972862号(P6972862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972862
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】自立性薄型直方体カートン
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/42 20060101AFI20211111BHJP
   B65D 5/44 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B65D5/42 Z
   B65D5/44 E
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-190912(P2017-190912)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-64648(P2019-64648A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】東京UIT国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小柳津 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】杉山 有二
(72)【発明者】
【氏名】吉川 智隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
(72)【発明者】
【氏名】穂谷 清志
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3209728(JP,U)
【文献】 特開2017−056964(JP,A)
【文献】 特開2015−016905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/42
B65D 5/44
B65D 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形の正面パネルの短辺下縁に長方形の外側底面パネルの長辺が,上記正面パネルの長辺両側縁に上記正面パネルより幅狭の長方形の左右の側面パネルの長辺が,上記左右の側面パネルのいずれかの側縁に長方形の背面パネルの長辺が,それぞれ連設されているパネル構成を有する型紙からつくられる,薄型直方体カートンであって,
上記外側底面パネルに,上記外側底面パネルの両側短辺同士を結ぶように長手方向の全体にわたってのびる反発力遮断罫線が形成されている,
自立性薄型直方体カートン。
【請求項2】
上記反発力遮断罫線が,正面パネルとの境界の近くに形成されている,
請求項1に記載の自立性薄型直方体カートン。
【請求項3】
上記反発力遮断罫線が,上記外側底面パネルの両側短辺を二分する中心線を挟む両側にそれぞれ形成されている,
請求項1または2に記載の自立性薄型直方体カートン。
【請求項4】
上記背面パネルの短辺下縁に長方形の内側底面パネルの長辺が連設されており,
上記内側底面パネルにも,上記内側底面パネルの両側短辺同士を結ぶように長手方向の全体にわたってのびる反発力遮断罫線が形成されている,
請求項1から3のいずれか一項に記載の自立性薄型直方体カートン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自立性の高い,すなわち安定して自立させることができる薄型直方体カートンに関する。
【背景技術】
【0002】
長方形の底面を備える薄型直方体カートンは倒れやすく,これを倒れにくくするために外向きに短くのびる脚部を形成することが考えられている(特許文献1)。特許文献1に記載のものは,カートンの前板部と底板部の境界において底板部に入り込む切欠きが形成されており,この切欠きを前脚部として利用する。底面に穴が開くので内容物の保護に欠ける。
【0003】
特許文献2は,長方形の底板面に,短辺に平行な方向の罫線を入れたものを開示する。長方形の底面を備える薄型直方体カートンの底面は,側方から見て外方に向かって弧状に反りがちであるが,上記罫線によって底板面の上記反りに対する剛性を向上させることができる。しかしながら,反りに完全に打ち勝つほどに剛性を向上させるのは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−1631号公報
【特許文献2】特開2001−219929号公報
【発明の開示】
【0005】
この発明は,剛性向上に頼らずに長方形の底面の反りを無くすまたは軽減することを目的とする。
【0006】
この発明はまた,長期間にわたって安定した自立を維持することができるようにすることを目的とする。
【0007】
この発明による自立性薄型直方体カートンは,長方形の正面パネルの短辺下縁に長方形の外側底面パネルの長辺が,上記正面パネルの長辺両側縁に上記正面パネルより幅狭の長方形の左右の側面パネルの長辺が,上記左右の側面パネルのいずれかの側縁に長方形の背面パネルの長辺が,それぞれ連設されているパネル構成を有する型紙からつくられるものであって,上記外側底面パネルに,長手方向にのびる反発力遮断罫線が形成されているものである。
【0008】
型紙を折ることで立体的につくられるカートンは,紙が持つ弾性(反発力)によって,折られる前の状態に戻ろうとする力がパネルに働く。正面パネルに連設された外側底面パネルは内向きに折られるので,外側底面パネルには外向きの力が生じがちである。この発明によると,外側底面パネルにその長手方向に形成された反発力遮断罫線によって外側底面パネルに作用する反発力が遮断されるので,反発力遮断罫線を越えて,反発力が外側底面パネルに伝わりにくい。外側底面パネルの外方への湾曲を少なくとも軽減することができ,カートンの自立安定化を図ることができる。
【0009】
反発力遮断罫線は典型的には押し罫線(線状にのびる凹凸)であり,線状の凹溝が外側底面パネルの外面に,これに対応する線状の凸条が外側底面パネルの内面に,それぞれ形成される。
【0010】
一実施態様では,上記反発力遮断罫線が,正面パネルとの境界の近くに形成されている。外側底面パネルの広い範囲に紙が持つ反発力を伝わりにくくすることができる。
【0011】
好ましくは,外側底面パネルの両側短辺を二分する中心線を挟む両側に,上記反発力遮断罫線が形成されている。二本の反発力遮断罫線の間に,外側底面パネルの両側短辺を二分する中心線が挟まれることになる。上述のように,薄型直方体カートンは,側方からみて外方(下向き)に外側底面パネルが湾曲する(反る)と不安定になるが,二本の反発力遮断罫線が上記中心線を挟んで形成されているので,外側底面パネルは,二本の反発力遮断罫線によって挟まれた上記中心線を含む範囲が外向きに突出して湾曲しにくくなり,これによって自立安定性を図ることができる。
【0012】
外側底面パネルの長手方向に形成される反発力遮断罫線は,外側底面パネルの左右両側短辺に至るまで(端から端まで)形成してもよいし,両側短辺の近くまでにとどめて形成してもよい。
【0013】
一実施態様では,上記背面パネルの短辺下縁に長方形の内側底面パネルの長辺が連設されており,内側底面パネルについても,上記内側底面パネルの長手方向にのびる反発力遮断罫線が形成されている。内側底面パネルについても外方への湾曲を少なくとも軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】薄型直方体カートンの型紙である。
図2】薄型直方体カートンを底面がわから見た斜視図である。
図3図2のIII−III線に沿う薄型直方体カートンの下部の端面図である。
図4図2のIII−III線に沿う薄型直方体カートンの下部の端面図である。
図5】変形例の薄型直方体カートンの型紙である。
図6】他の変形例の薄型直方体カートンの型紙である。
図7】さらに他の変形例の薄型直方体カートンの型紙である。
【実施例】
【0015】
図1は薄型直方体カートンの展開図を示している。図2は薄型直方体カートンを底面がわから見た斜視図である。図3図2のIII−III線に沿う薄型直方体カートンの下部の端面図である。
【0016】
図1の展開図1Aは薄型直方体カートン1B(図2図3)を形成する厚紙の型紙1Aを示しており,薄型直方体カートン1Bに組み立てたときの外側となる面を見たものである。一点鎖線は薄型直方体カートン1Bを組み立てるときに山折りにされる折り線を示している。折り曲げを容易にするために,この一点鎖線に沿って押し罫加工が施される。
【0017】
図1に示すように型取り(型抜き)された型紙1Aを折り曲げかつ必要箇所を接着(糊付け)することによって図2図3に示す薄型直方体カートン1Bがつくられる。
【0018】
図1を参照して,右側面パネル11,正面パネル12,左側面パネル13,背面パネル14および糊代パネル15が横向きに連設されている。右側面パネル11,正面パネル12,左側面パネル13,背面パネル14および糊代パネル15は,いずれもその幅(横方向の長さ)に比べて高さ(縦方向の長さ)が高く,長方形の形状を持つ。
【0019】
正面パネル12の上縁に外側天面パネル21が連設され,背面パネル14の上縁に内側天面パネル22が連設されている。正面パネル12の下縁に外側底面パネル31が連設され,背面パネル14の下縁に内側底面パネル32が連設されている。左右の側面パネル11,13の上下縁にはフラップ41が連設されている。
【0020】
正面パネル12とその下縁に連設された外側底面パネル31の境界,および背面パネル14とその下縁に連設された内側底面パネル32の境界にはミシン目(間隔をあけて形成された複数の孔の列)Mが形成されている。ミシン目Mは厚紙を折ったときの反発(折られる前の姿勢に戻ろうとする力)を軽減するために形成されている。ミシン目Mに代えてハーフカットを形成してもよい。
【0021】
外側底面パネル31および内側底面パネル32の表面(外面)には,長手方向(左右の短辺同士を結ぶ向き)に線状の反発力遮断罫線35が形成されている。反発力遮断罫線35は,型紙1Aの外面から内面に向かう方向の押し罫(表面に型を押し付ける)によって形成され,型紙1Aを型抜きするときに同時に形成される。反発力遮断罫線35の深さは紙厚によるが,たとえば紙厚が 400μmであれば100μm〜200μm程度とされる。反発力遮断罫線35の詳細は後述する。
【0022】
図3を参照して,外側,内側底面パネル31,32の反発力遮断罫線35は,外側,内側底面パネル31,32が重ねあわされたときに一致する箇所に形成される。反発力遮断罫線35は,外側,内側底面パネル31,32の外面に凹部が,内面に凸部が,それぞれ線状に形成され,外側,内側底面パネル31,32の長手方向にのびたものである。反発力遮断罫線35は,図3に示すように断面弧状の溝によって形成してもよいし,図4に示すように,断面三角形の溝によって形成してもよく,その断面形状は適宜設計することができる。
【0023】
薄型直方体カートン1Bは次のようにして組み立てられる。すなわち,左側面パネル13と背面パネル14の境界で型紙1Aを折畳み,正面パネル12と右側面パネル11の境界も折畳む。重なり合う糊代パネル15と右側面パネル11とを接着して筒状とし,その後に隣接するパネル間の角度が直角となるように起函する。上面および下面が開口する角筒が作られる。
【0024】
左右の側面パネル11,13の下縁に連設されたフラップ41を内向きに直角に折り,次に背面パネル14の下縁に連設された内側底面パネル32を内向きに直角に折り,最後に正面パネル12の下縁に連設された外側底面パネル31を内向きに直角に折り,外側底面パネル31の内面と内側底面パネル32の外面とを接着する。角筒の底面が閉じられる。
【0025】
開口する上面から角筒内に,医薬品,化粧品,菓子等の内容物が入れられ,その後に上面開口も閉じられる。下面を閉じる工程と同様に,左右の側面パネル11,13の上縁のフラップ41を内向きに直角に折り,背面パネル14の上縁の内側天面パネル22を内向きに直角に折る。最後に正面パネル12の上縁の外側天面パネル21を内向きに直角に折り,外側天面パネル21の内面と内側天面パネル22の外面を接着する。角筒の天面が閉じられ,薄型直方体カートン1Bが完成する。
【0026】
型紙を折ることで立体的につくられるカートンは,紙が持つ弾性(反発力)によって,折られる前の状態に戻ろうとする力がパネルに働く。正面パネル12の下縁に連設された外側底面パネル31は内向きに折られるので,外向きの力が生じる。背面パネル14の下縁に連設された内側底面パネル32も内向きに折られるので,外向きの力が生じる。外向きの力は正面パネル12と外側底面パネル31の境界,および背面パネル14と内側底面パネル32の境界に働く。外側,内側底面パネル31,32は接着されているので,側方からみて外方(下方)に反る向きに湾曲を生じがちである。
【0027】
図2および図3を参照して,薄型直方体カートン1Bの底面を構成する外側,内側底面パネル31,32には,上述のように,長手方向にのびる反発力遮断罫線35が形成されているので,正面パネル12と外側底面パネル31の境界,および背面パネル14と内側底面パネル32の境界に働く外向きの紙の反発力は,反発力遮断罫線35において遮断され,反発力遮断罫線35を越えて伝わりにくくなる。二本の反発力遮断罫線35によって挟まれた外側,内側底面パネル31,32の範囲に反発力は伝わらないまたは伝わりにくい。
【0028】
反発力遮断罫線35は,外側,内側底面パネル31,32の短辺を二分する中心線を挟んでその両側に形成されている。二本の反発力遮断罫線35によって挟まれる,上記中心線を含む長手方向にのびる外側,内側底面パネル31,32の領域は湾曲しにくい。外側,内側底面パネル31,32が外方に湾曲することで不安定になるのは,外側,内側底面パネル31,32の中心線付近が最も外方に突出するときであるから,これを効果的に防止することができ,薄型直方体カートン1Bを安定して自立させることができる。
【0029】
外側底面パネル31の下縁の正面がわ縁部と反発力遮断罫線35の間,および背面パネル14の下縁の背面がわ縁部と反発力遮断罫線35の間が外方(下向き)に湾曲したとしても,外側,内側底面パネル31,32の正面パネル12がわおよび背面パネル14がわのそれぞれが外方に湾曲することになり,自立安定性はこの場合にも保たれる。長期間にわたって薄型直方体カートン1Bを安定して自立させ続けることができる。外方湾曲底面が平坦面に接して薄型直方体カートン1Bを不安定にすることがないので,薄型直方体カートン1Bを安定して自立させることができる。
【0030】
また,外側,内側底面パネル31,32に形成されるのは罫線であるから,設計,製造が容易で,印刷表示部を阻害することがなく,意匠性にも優れる。
【0031】
また薄型直方体カートン1Bは切込みを用いて脚部を形成するものではないので,切込みによる隙間(孔)ができることもなく,カートン1B内への塵埃の侵入を防止することができる。
【0032】
反発力遮断罫線35は少なくとも外側底面パネル31に形成すればよく,必ずしも内側底面パネル32に形成する必要はない。もっとも,内側底面パネル32にも反発力遮断罫線35を形成するのが好ましい。
【0033】
反発力遮断罫線35と正面パネル12,背面パネル14の下縁(ミシン目M)の間には3〜8mm程度の距離を確保しておくのが好ましい。たとえば,外側底面パネル31を内向きに直角に折るときに罫線35に沿って折れてしまうことが防止される。また,あまり遠いと反発力遮断効果が薄れてしまうので,これを防止するためである。
【0034】
図5は変形例を示すもので,薄型直方体カートンを形成する厚紙の型紙2Aを示している。図1に示す型紙1Aとは,外側,内側底面パネル31,32のそれぞれに,3本の反発力遮断罫線35が形成されている点が異なる。反発力遮断罫線35の数は任意に設計することができる。
【0035】
図6はさらに他の変形例を示すもので,薄型直方体カートンを形成する厚紙の型紙3Aを示している。外側,内側底面パネル31,32に形成されている反発力遮断罫線35が,外側,内側底面パネル31,32の短辺同士を結ぶ全体に(端から端まで)形成されている点が,図1に示す型紙1Aと異なっている。
【0036】
図7はさらに他の変形例を示すもので,薄型直方体カートンを形成する厚紙の型紙4Aを示している。外側,内側底面パネル31,32の短辺同士を結ぶ全体に形成されている反発力遮断罫線35が1本であり,これが正面パネル12と外側底面パネル31の境界の折り目(ミシン目M)に近い箇所,および背面パネル14と内側底面パネル32の境界の折り目(ミシン目M)に近い箇所に形成されている点が,図6に示す型紙3Aと異なっている。上述したように,紙の反発力は,正面パネル12と外側底面パネル31の境界,および背面パネル14と内側底面パネル32の境界において,外側,内側底面パネル31,32に作用するので,これら境界に近い箇所に(好ましくは上述のように罫線35に沿って誤って外側,内側底面パネル31,32が折られてしまうことがない程度の間隔をあけて),反発力遮断罫線35を形成することで,外側,内側底面パネル31,32の広い範囲に反発力を伝わりにくくすることができる。
【0037】
上述した実施例では,長手方向にのびる直線状の反発力遮断罫線35を例示したが,少なくとも一部に屈曲または湾曲した形状を有する反発力遮断罫線を作成してもよい。また,長手方向にのびる反発力遮断罫線35に,方向の異なる罫線を組み合わせてもよい(たとえば,横H型,横U型など)。さらに,反発力遮断罫線35は必ずしも一本線でなくてもよく,途中でとぎれる間欠線であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1A,2A,3A,4A 型紙
1B 薄型直方体カートン
31 外側底面パネル
32 内側底面パネル
35 反発力遮断罫線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7