【実施例1】
【0010】
[全体構成]
図1は、実施例1にかかるシステムの全体構成例を示す図である。
図1に示すように、このシステムは、高所で作業を行う作業者が装着する安全帯1と、作業者が携帯するスマートフォン3と、作業者が身体の一部に装着するセンサ5と、現場監督者が所持する管理端末7と、クラウドサービスを提供する安全度判定装置10とが無線通信可能に接続される。ここで、作業者は、安全帯1を1つ以上装着して、高所で作業を行い、現場監督者は、作業者の作業内容、進捗や各作業者の安全性を管理する。なお、安全帯1とセンサ5とが別々の筐体である例を説明するが、これに限定されず、安全帯1がセンサ5を有していてもよい。
【0011】
ここで、各作業者が作業を行う現場の例を説明する。
図2は、実施例1にかかる作業現場の例を示す図である。
図2に示すように、本実施例では、一例として、31階建のビルなどの工事を例にして説明する。このような工事では、パイプや柱等の固定物を用いて作業者が作業する足場を構築する。
図2の例は、1番目のパイプ(P1)から17番目のパイプ(P17)までの17個のパイプで足場が構成されている。そして、各作業者は、地上から作業場所まで安全帯1を付け替えながら登って行く。例えば、作業者は、P1、P2、P6、P7、P8、P12、P13、P14、P15の各パイプに、安全帯1を付け替えながら地上から作業場所まで移動する。
【0012】
図1に戻り、安全帯1は、作業現場に固定された足場や柱などの支持物や固定物に安全に取り付けられているか否かを判定するセンサなどの判定機能と、その判定結果である取付情報を安全度判定装置10に送信する送信機能とを有する安全フックなどの一例である。
【0013】
例えば、安全帯1は、作業者が所持する収納部に収納されているときは判定機能と、張力センサおよび送信機能とを抑制する。また、安全帯1は、フック部分が作業現場に装着されているときはオン信号を安全度判定装置10に送信し、フック部分が作業現場に装着されていないときはオフ信号を安全度判定装置10に送信する。
【0014】
スマートフォン3は、ブルートゥース(登録商標)などの近距離通信や無線通信機能を有する通信装置の一例である。例えば、スマートフォン3は、安全度判定装置10から警告信号や警告メッセージなどを受信すると、バイブレーションや音声等により、警告を報知する。
【0015】
センサ5は、作業者が作業している作業環境に関する環境情報をセンシングして安全度判定装置10に送信する測定器の一例である。例えば、センサ5は、作業者の位置情報(座標)、作業者が位置する高さ、作業者の加速度データなどを測定して安全度判定装置10に送信する。なお、各種センシングなどは、GPS(Global Positioning System)など公知の手法を採用することができ、送信間隔も任意に設定できるが、例えば1秒おきに送信する。
【0016】
管理端末7は、作業現場の作業計画、作業者の情報、作業時間、進捗などの管理に使用されるコンピュータ機器の一例であり、例えばタブレット端末やスマートフォンなどである。この管理端末7は、安全度判定装置10から警告、管理画面、作業進捗などの各情報を受信して表示して、現場監督者に報知する。
【0017】
安全度判定装置10は、他の装置の無線通信によって各種情報を送受信するコンピュータ装置の一例であり、各作業者の取付情報や環境情報を統合管理するとともに、過去の作業履歴などを管理する。
【0018】
このようなシステムにおいて、安全度判定装置10は、作業者が装着する、作業現場に取り付けられているか否かを示す取付情報を送信する送信機能を有する安全帯1から、安全帯の位置情報と当該位置情報における取付情報とを含む履歴情報を取得する。そして、安全度判定装置10は、履歴情報のうち、安全帯1が取り付けられていない時間の長さを特定する。その後、安全度判定装置10は、作業現場において安全帯1が取り付けられていない状態を許容する許容時間の長さと、時間の長さとに基づいて、作業者の安全度を判定する。
【0019】
例えば、安全度判定装置10は、作業者の過去の作業履歴、作業初心者の作業履歴や熟練者の作業履歴などの基準情報(基準値)と、作業者の現在の作業履歴とを比較し、通常とは異なる安全帯1のオフ時間が発生しているか否かを判定する。そして、安全度判定装置10は、通常とは異なる安全帯1のオフ状況を検出すると、作業者がリスクの高い作業状態であると判定する。その後、安全度判定装置10は、該当作業者のスマートフォン3または該当作業者の近隣にある他のスマートフォン3に警告を送信する。
【0020】
このように、安全度判定装置10は、他の客観的な指標を用いて、通常の作業とは異なる作業を行っている作業者を特定することができるので、作業リスクの高い作業者を検出することができる。
【0021】
[機能構成]
続いて、
図1で示した各装置の機能構成について説明する。なお、安全帯1は、通信機能を有する公知の安全帯1と同様の機能を有し、スマートフォン3は、一般的な通信装置と同様の機能を有し、センサ5は、一般的なセンサと同様の機能を有し、管理端末7は、一般的なコンピュータ装置と同様の機能を有するので、詳細な説明は省略する。ここでは、一般的な機能とは異なる機能を有する安全度判定装置10について説明する。
【0022】
図3は、実施例1にかかる安全度判定装置10の機能構成を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、安全度判定装置10は、通信部11、記憶部12、制御部30を有する。
【0023】
通信部11は、他の装置の間の通信を制御する処理部であり、例えば通信インタフェースや無線インタフェースなどである。例えば、通信部11は、各作業者の安全帯1から取付情報を受信し、センサ5から環境情報を受信し、スマートフォン3や管理端末7に警告を送信する。
【0024】
記憶部12は、プログラムやデータを記憶する記憶装置の一例であり、例えばメモリやハードディスクなどである。この記憶部12は、パイプ構造DB13、作業者DB14、履歴情報DB15、過去履歴DB16、初心者技術DB17、模範技術DB18を有する。
【0025】
パイプ構造DB13は、作業現場に作成された固定物に関する情報を記憶するデータベースである。具体的には、パイプ構造DB13は、作業者が移動に使用するパイプに関する情報を記憶する。
【0026】
図4は、パイプ構造DB13に記憶される情報の例を示す図である。
図4に示すように、パイプ構造DB13は、「パイプ名、始点、終点、距離」を対応付けて記憶する。「パイプ名」は、パイプを識別する識別子である。「始点」は、パイプの開始位置を示す位置情報であり、「終点」は、パイプの終了位置を示す位置情報である。「距離(長さ)」は、パイプの長さを示す情報である。
図4の例では、「35.4/139/0」から「35.4/140/5」の位置に長さ10mのパイプP1が設置されていることを示す。なお、ここで記憶される情報は、管理者等によって更新される。
【0027】
作業者DB14は、作業者に関する情報を記憶するデータベースである。
図5は、作業者DB14に記憶される情報の例を示す図である。
図5に示すように、作業者DB14は、「デバイスID、作業者ID、作業者名、経験年数、連絡先」を対応付けて記憶する。「デバイスID」は、作業者が使用する安全帯1を識別する識別子である。「作業者ID」は、作業者を識別する識別子である。「作業者名」は、作業者の名称であり、「経験年数」は、作業者の経験年数である。「連絡先」は、作業者の連絡先であり、例えばメールアドレス、電話番号、SNS(Social Networking Service)のID、ブルートゥース(登録商標)のIDなどである。
【0028】
図5の例では、経験年数が30年の特許太郎は、「D1」の安全帯1を使用し、連絡先が「XXX」であることを示す。なお、作業者が携帯するセンサ5を識別する「センサID」をさらに対応付けて記憶することもできる。
【0029】
履歴情報DB15は、作業者の安全帯1やセンサ5から取得した過去の情報を記憶するデータベースである。
図6は、履歴情報DB15に記憶される情報の例を示す図である。
図6に示すように、履歴情報DB15は、各日の「No、作業者ID、パイプ名、開始時刻のGPS、終了時刻のGPS、フック状態、開始時刻、終了時刻、所要時間、移動距離、備考」を対応付けて記憶する。
【0030】
「No」は、履歴情報のレコード(情報)を識別する識別子であり、「作業者ID」は、作業者を識別する識別子であり、「パイプ名」は、作業者が移動時に通過したパイプを識別する識別子である。「開始時刻のGPS」は、フック状態の変化開始時刻の位置情報であり、「終了時刻のGPS」は、フック状態の変化終了時刻の位置情報である。「フック状態」は、安全帯1がパイプ等に正常に取り付けられたか否かを示す情報であり、正常に取り付けられた場合はオンが格納され、正常に取り付けられていない場合はオフが格納される。
【0031】
「開始時刻」は、フック(安全帯1)の状態の変化が開始された時刻であり、「終了時刻」は、フック(安全帯1)の状態の変化が終了した時刻である。「所要時間」は、パイプの移動に要した時間、すなわち安全帯1の状態が維持した時間である。「移動距離」は、作業者が移動した距離であり、パイプの距離(長さ)で特定することもでき、GPSによる位置情報の差分で算出することもできる。「備考」は、スマートフォン3の作業者が入力する情報である。
【0032】
図6の1行目は、作業者Aが、「(35.4/139/0)−(35.4/140/5)」に位置する10mのパイプP1を、「8:00:00」から「8:01:00」まで安全帯1をオン状態にして、1分間で移動したことを示す。また、この1行目が作業開始に該当する。なお、履歴情報DB15は、作業者ごと、または、作業内容ごとに区分けして、履歴情報を管理することができる。例えば、履歴情報DB15は、作業者Aの作業S1(壁塗り)の履歴情報と作業S2(外壁取付)の履歴情報を別々に管理し、作業者Bの作業S1(壁塗り)の履歴情報と作業S2(外壁取付)の履歴情報とを別々に管理することができる。
【0033】
過去履歴DB16は、各作業者の過去の履歴情報を記憶するデータベースである。具体的には、過去履歴DB16は、各作業者の作業内容ごとに区分けして、過去の履歴情報の平均値を記憶する。なお、記憶される情報は、
図6と同様の情報である。ここで、平均値の例としては、所要時間の平均値や移動距離の平均値が該当する。
【0034】
初心者技術DB17は、入社3年目以下などのように、作業経験年数が閾値以下の作業に慣れていない未熟作業者(初心者)の過去の履歴情報を記憶するデータベースである。具体的には、初心者技術DB17は、作業内容ごとに区分けして、初心者の作業履歴と想定される履歴情報を記憶する。例えば、複数人の初心者の過去の履歴情報の平均値などを初心者の作業履歴と推定して、初心者技術DB17に格納することができる。ここで、平均値の例としては、所要時間の平均値や移動距離の平均値が該当する。なお、記憶される情報は、
図6と同様の情報であり、管理者等や安全度判定装置10によって生成することもできる。また、作業内容は、作業内容IDなどによって識別することができる。
【0035】
模範技術DB18は、発生させた事故が閾値以下の作業者などのように、一定の技術水準がある模範作業者の過去の履歴情報を記憶するデータベースである。具体的には、模範技術DB18は、作業内容ごとに区分けして、模範作業者の作業履歴と想定される履歴情報を記憶する。例えば、複数人の模範作業者の過去の履歴情報の平均値などを模範作業者の作業履歴と推定して、模範技術DB18に格納することができる。ここで、平均値の例としては、所要時間の平均値や移動距離の平均値が該当する。なお、記憶される情報は、
図6と同様の情報であり、管理者等や安全度判定装置10によって生成することもできる。また、作業内容は、作業内容IDなどによって識別することができる。
【0036】
制御部30は、安全度判定装置10全体を司る処理部であり、例えばプロセッサなどである。この制御部30は、収集部31、判定部32、警告部35を有する。なお、収集部31、判定部32、警告部35は、プロセッサなどの電子回路の一例やプロセッサが実行するプロセスの一例などである。また、収集部31は、取得部の一例であり、判定部32は、特定部と判定部の一例である。
【0037】
収集部31は、作業者が装着する、作業現場に取り付けられているか否かを示す取付情報を送信する送信機能を有する安全帯1やセンサ5から、安全帯1の位置情報と当該位置情報における取付情報とを含む履歴情報を収集する処理部である。
【0038】
例えば、収集部31は、作業者ID「A」の作業者が使用するデバイスID「D1」の安全帯1やセンサ5から、フック状態と位置情報とを受信すると、このときの受信時刻を開始時刻と判定するとともに、このときの位置情報を開始時刻のGPSと判定する。そして、収集部31は、開始時刻、フック状態、開始時刻のGPSを対応付けて履歴情報DB15に格納する。
【0039】
続いて、収集部31は、安全帯1やセンサ5から、変化したフック状態と位置情報とを受信すると、このときの受信時刻を終了時刻と判定するとともに、このときの位置情報を終了時刻のGPSと判定する。そして、収集部31は、終了時刻、終了時刻のGPSを対応付けて履歴情報DB15に格納する。
【0040】
さらに、収集部31は、開始時刻のGPSと終了時刻のGPSに対応するパイプ名をパイプ構造DB13から特定し、上記各情報に対応付けて履歴情報DB15に格納する。また、収集部31は、開始時刻と終了時刻の差分を所要時間として履歴情報DB15に格納する。また、収集部31は、開始時刻のGPSと終了時刻のGPSの差分の絶対値を算出して、移動距離として履歴情報DB15に格納する。
【0041】
例えば、収集部31は、安全帯1やセンサ5から受信する取付情報等によって安全帯1がオフやオンになっている時間帯を特定することができる。
図7は、取付情報を説明する図である。
図7に示すように、安全帯1は、パイプP1に取り付けられるとオン情報を安全度判定装置10に送信し、パイプP1から取り外されるとオフ情報を安全度判定装置10に送信する。
【0042】
したがって、収集部31は、安全帯1がオフされた時刻と安全帯1がオンされた時刻との差分から、安全帯1がオフであった時間の長さを算出できる。同様に、収集部31は、安全帯1がオフされた位置情報と安全帯1がオンされた位置情報との差分から、安全帯1がオフの状態で作業者が移動した距離を算出できる。
【0043】
このようにして、収集部31は、安全帯1やセンサ5から情報を受信するたびに、履歴情報を生成して、履歴情報DB15に格納する。なお、終了時刻のGPSは、次のレコードの開始時刻のGPSとして格納され、終了時刻は、次のレコードの開始時刻として格納される。
【0044】
判定部32は、初期判定部33と標準判定部34とを有し、基準となる作業履歴を選択し、現在の作業者の作業履歴と基準となる作業履歴とを比較して、作業者の安全性を判定する処理部である。
【0045】
初期判定部33は、作業現場での作業開始から所定日数までの間、作業員の履歴情報と初心者技術とを比較して、作業員の安全性を判定する処理部である。すなわち、初期判定部33は、新しい作業現場で不慣れな作業現場での作業時については、作業開始から2日間などの所定期間の間、初心者技術DB17に記憶される該当作業内容の過去履歴と作業者の履歴情報とを比較して、作業員の安全性を判定する。
【0046】
例えば、初期判定部33は、作業内容S1(作業S1)を行っている作業者Aの履歴情報を所定時間(例えば一時間)分蓄積すると、作業内容S1に対応する初心者の過去履歴の所定時間分を初心者技術DB17から抽出する。そして、初期判定部33は、作業者Aの履歴情報と初心者技術の過去履歴とを比較し、安全帯1のオフの合計時間が作業者Aの履歴情報の方が長い場合は、作業者Aがリスクの高い作業状態であると判定する。つまり、初期判定部33は、平均して、初心者よりも作業者Aの方が安全帯1をオフにしている時間が長い場合は、作業者Aの安全性を危険と判定する。
【0047】
別例としては、初期判定部33は、フック状態がオフの各レコードに着目して判定することもできる。例えば、初期判定部33は、パイプP1において安全帯1がオフになっている所要時間(オフ時間)を作業者Aの履歴情報から特定するとともに、対応する過去履歴を初心者技術DB17から特定する。そして、初期判定部33は、作業者Aの履歴情報のオフ時間の方が長い場合、作業者Aがリスクの高い作業状態であると判定することもできる。つまり、初期判定部33は、あるパイプについて作業者Aのオフ時間が長い場合は、オフのまま作業している可能性が高いことから、作業者Aの安全性を危険と判定する。
【0048】
また、初期判定部33は、パイプP1において安全帯1がオフのときの移動距離を作業者Aの履歴情報から特定するとともに、対応する過去履歴を初心者技術DB17から特定する。そして、初期判定部33は、作業者Aの移動距離の方が長い場合、作業者Aがリスクの高い作業状態であると判定することもできる。つまり、初期判定部33は、あるパイプについて作業者Aのオフ状態での移動距離が長い場合は、オフのまま作業している可能性が高いことから、作業者Aの安全性を危険と判定する。
【0049】
これら以外にも、初期判定部33は、過去履歴等をグラフ化して判定することもできる。具体的には、初期判定部33は、初心者技術DB17から初心者の過去履歴を抽出し、初心者の過去履歴からフック状態がオフのレコードを読み出す。続いて、初期判定部33は、読み出した各レコードの「移動距離(Δd)、所要時間(Δt)、高度(GPSの高度)」をデータペア(測定点データ)としてグラフにプロットする。
【0050】
図8は、安全性の判定例を説明する図である。
図8に示すように、初期判定部33は、初心者の過去履歴から抽出した各測定点データ(黒丸)をプロットする。同様に、初期判定部33は、作業者Aの履歴情報を履歴情報から抽出し、フック状態がオフのレコードを読み出す。続いて、初期判定部33は、読み出した各レコードの「移動距離(Δd)、所要時間(Δt)、高度(GPSの高度)」を測定点データ(白丸)としてグラフにプロットする。
【0051】
ここで、初期判定部33は、初心者の各測定点データを元にして基準曲線を引き、作業者Aの各測定点データが基準曲線の内側にあるか外側にあるかによって、作業者Aの安定性を判定する。例えば、初期判定部33は、白丸8−1のように、作業者Aの各測定点データが基準曲線の内側に閾値以上ある場合は、安全帯1が外れている状態での移動距離が短く、かつ時間が短いと判断して、安全状態と判定する。一方、初期判定部33は、白丸8−2のように、作業者Aの各測定点データが基準曲線の外側に閾値以上ある場合は、安全帯1が外れている状態での移動距離が長い、または時間が長いと判断して、危険状態と判定する。
【0052】
また、初期判定部33は、高度が高い測定点データをより重要視することもできる。例えば、初期判定部33は、高度が閾値未満である作業者Aの測定点データが基準曲線の外側に多いときは、作業者の危険性を注意レベルと判定し、高度が閾値以上の測定点データが多いときは、作業者の危険性を即注意レベルと判定し、危険性のレベルを区分けすることができる。
【0053】
また、初期判定部33は、基準曲線の外側にある測定点データに対して、以下の処理をすることもできる。例えば、初期判定部33は、高度の高い測定点データから順に比較する。また、初期判定部33は、Δdが基準曲線よりも所定値以上離れている場合、安全帯1が外れている状態で移動している距離が長いことから、より危険であると判定する。また、初期判定部33は、Δtが基準曲線よりも所定値以上離れている場合、安全帯1が外れている状態での時間が長いことから、休憩中かもしれないが突風時危険であると判定する。
【0054】
初期判定部33は、上述した各判定手法による判定結果を警告部35に出力する。なお、各判定手法は、任意に組み合わせることができる。
【0055】
標準判定部34は、作業現場での作業が所定日数を経過した後、作業員の履歴情報と過去歴または模範技術と比較して、作業員の安全性を判定する処理部である。すなわち、標準判定部34は、作業現場に慣れた後の作業について、過去履歴DB16に記憶される作業者の該当作業内容の過去履歴と作業者の履歴情報とを比較して、作業員の安全性を判定する。同様に、標準判定部34は、作業現場に慣れた後の作業について、模範技術DB18に記憶される該当作業内容の模範技術と作業者の履歴情報とを比較して、作業員の安全性を判定する。
【0056】
例えば、標準判定部34は、作業者の過去履歴と比較することで、作業者の現在の体調などを特定することができる。より詳細には、標準判定部34は、過去履歴に比べて、作業者のオフ時間が長い場合は、現在の作業者の体調が悪いと疑うことができ、作業者の危険な状態を素早く検出することができる。
【0057】
例えば、標準判定部34は、模範技術と比較することで、作業者の安全性に加えて作業者の技術力などを判定することができる。より詳細には、標準判定部34は、模範技術に比べて、安全帯1がオフの時間が短く、かつ、作業時間も短い場合、作業者の技術力が高いと判定することができる。また、標準判定部34は、模範技術に比べて、安全帯1がオフの時間は変わらないが、作業時間が長い場合、慎重な作業者と判定することができる。また、標準判定部34は、模範技術に比べて、安全帯1がオフの時間が長く、作業時間も長い場合、作業者の技術力を低いと判定することができる。
【0058】
そして、標準判定部34は、作業者の安全性の判定結果などを警告部35に出力する。なお、判定手法は、初期判定部33と同様の手法を用いることができるので、詳細な説明は省略する。なお、作業現場での作業が所定日数を経過前であっても、標準判定部34による判定を実行することもできる。
【0059】
警告部35は、危険な作業者が検出された場合に、警告を報知する処理部である。例えば、警告部35は、作業者Aが危険であると初期判定部33や標準判定部34から通知された場合、作業者Aの半径5mに存在する作業者のスマートフォン3と、管理端末7とに、作業者Aが危険であることを通知する。その後、警告部35は、作業者Aの安全性が改善されない場合、作業者Aの半径10mに存在する作業者のスマートフォン3と、管理端末7とに、周辺に危険な作業者Aが作業中であることを通知する。このようにして、警告部35は、送信範囲を段階的に広げて、作業者が危険であることを周囲に報知する。
【0060】
また、警告部35は、作業者Aの安全帯1がオン状態のときに、作業者Aのスマートフォン3に、注意して作業する旨の警告を送信することもできる。なお、作業者Aの安全帯1がオフ状態のときに警告を送信することもできるが、警告時の危険性を小さくするために、安全帯1がオン状態のときが好ましい。また、警告部35は、危険レベルに応じて、送信範囲やメッセージ内容を動的に変更して、警告を報知することもできる。
【0061】
[処理の流れ]
図9は、処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示すように、安全度判定装置10の判定部32は、作業開始から所定日数以下である場合(S101:Yes)、初心者技術を選択し(S102)、作業開始から所定日数を超える場合(S101:No)、過去履歴または模範技術を選択する(S103)。
【0062】
続いて、判定部32は、S102またはS103で選択したデータを用いて、測定点データを生成するとともに基準曲線を生成する(S104)。また、判定部32は、収集部31によって収集された作業者の履歴情報を履歴情報DB15から読み出し(S105)、作業者の測定点データを生成する(S106)。
【0063】
その後、判定部32は、測定点データをプロットしたデータプロットを比較し(S107)、作業者の測定点データが基準曲線の内側にあるか否かを判定する(S108)。
【0064】
そして、判定部32は、作業者の測定点データが基準曲線の内側にあると判定した場合(S108:Yes)、作業者の状態を安全状態と判定する(S109)。
【0065】
一方、判定部32は、作業者の測定点データが基準曲線の内側にないと判定した場合(S108:No)、作業者の状態を危険状態と判定する(S110)。そして、警告部35は、危険作業中の作業者の周辺の作業者に警告を送信する(S111)。
【0066】
[効果]
上述したように、安全度判定装置10は、定性的な基準指標を用いて、作業者の癖や技量に依存することなく、作業リスクの高い作業者を検出することができる。また、安全度判定装置10は、基準指標を動的に変更して安全性を判定することができるので、作業の状態に追従した安定を実行することができ、判定精度の向上が図れる。また、安全度判定装置10は、作業者の技術レベルを特定することができ、作業者の教育等に役立てられる情報を管理端末7に提供することができる。