特許第6972890号(P6972890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972890
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】モータ、およびモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20211111BHJP
   H02K 1/14 20060101ALI20211111BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20211111BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H02K1/18 Z
   H02K1/14 Z
   H02K15/02 D
   H02K15/14 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-200385(P2017-200385)
(22)【出願日】2017年10月16日
(65)【公開番号】特開2019-75890(P2019-75890A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂内 宣
(72)【発明者】
【氏名】一岡 祐介
(72)【発明者】
【氏名】黒川 義夫
(72)【発明者】
【氏名】杉之原 貴洋
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−019356(JP,A)
【文献】 特開2016−226254(JP,A)
【文献】 特開2004−176817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 1/14
H02K 15/02
H02K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転し、中心軸に対して上下に延びるシャフトと、
前記シャフトを回転可能に支持する軸受部材と、
前記シャフトに連結され、下向きに開口するカップ形状のロータハブと、
前記ロータハブの径方向内側に保持されるロータマグネットと、
前記ロータマグネットの径方向内側に位置し、前記ロータマグネットと間隙を介して対向するステータと、
外側に前記ステータを保持する筒部を有する、ハウジングと、
を備え、
前記ステータは、
環状のコアバック部と、
前記コアバック部の外周から径方向外側に延びる複数のティースと、
前記ティースに導電線が巻回されてなるコイルと、
を有し、
前記コアバック部は、
前記コアバック部の軸方向上側端部を含み、径方向内側に前記軸受部材を収容する上コアバック部と、
前記コアバック部の軸方向下側端部を含み、前記筒部と径方向に対向する下コアバック部と、
前記上コアバック部の軸方向下側および前記下コアバック部の軸方向上側に配置され、前記上コアバック部および前記下コアバック部よりも、前記中心軸から内周面までの距離の小さい小径部と、
を有し、
前記小径部は、径方向外側に向かって凹む凹部を有し、
前記筒部と前記小径部との間隙、および前記凹部には接着剤が収容されており、前記筒部は、前記小径部と径方向に対向する第1筒部と、前記第1筒部の下方において、前記第1筒部よりも、前記中心軸から外周面までの距離が大きい第2筒部と、を有し、前記第2筒部は、前記下コアバック部と径方向に対向し、前記第1筒部の外周面は、前記小径部の内周面と接着剤を介して対向し、前記第2筒部の外周面と前記下コアバック部の内周面とは圧入にて固定され、前記第2筒部と前記下コアバック部との圧入領域は、前記第1筒部と前記小径部との接着領域よりも軸方向下側かつ径方向外側に位置する、モータ。
【請求項2】
前記軸受部材の外輪の下面と前記小径部の上面とは、直接又は予圧ばねを介して軸方向に対向する、請求項に記載のモータ。
【請求項3】
前記第2筒部の外周面は、上端に前記中心軸に対して傾斜する傾斜面を有し、
前記傾斜面と、前記小径部の下面と、前記上コアバック部の内周面と、の間には空間が形成され、
前記空間には前記接着剤の少なくとも一部が配置される、請求項1または請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記筒部は、前記第2筒部よりも下方において、前記第2筒部よりも、前記中心軸から外周面までの距離が大きい第3筒部を有し、
前記第3筒部には、前記軸受部材が配置される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記ロータハブの外径が、11mm以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
中心軸を中心とする環状のコアバック部と、前記コアバック部の外周から径方向外側に延びる複数のティースと、を有するステータと、
前記中心軸に対して上下に延びる筒部を有する、ハウジングと、
を備え、
前記コアバック部は、前記コアバック部の軸方向上側端部を含む上コアバック部と、前記コアバック部の軸方向下側端部を含む下コアバック部と、前記上コアバック部の軸方向下側および前記下コアバック部の軸方向上側に配置され、前記上コアバック部および前記下コアバック部よりも、前記中心軸から内周面までの距離の小さい小径部と、を有し、前記小径部が、径方向外側に向かって凹む凹部を有する、モータの製造方法であって、
a)巻線機のピンに設けられた凸部を、前記凹部に固定し、前記ティースに導電線を巻回してコイルを形成する工程と、
b)前記筒部の下方を第1 冶具の上面に配置する工程と、
c)前記筒部の上方から、前記小径部の上面に第2冶具の下面を接触させて、前記ステータを前記筒部の径方向外側に固定する工程と、
を含み、前記小径部と径方向に対向する第1筒部と、前記第1筒部の下方において、前記第1筒部よりも、前記中心軸から外周面までの距離が大きい第2筒部と、を有する前記筒部を準備する工程を含み、前記工程c)において、前記下コアバック部の内周面は、前記第2 筒部の外周面に圧入され、前記工程c)は、
前記第1筒部の外周面または前記小径部の内周面のいずれかに接着剤を塗布する工程を含み、前記第2筒部と前記下コアバック部との圧入領域は、前記第1筒部と前記小径部との接着領域よりも軸方向下側かつ径方向外側に位置する、モータの製造方法。
【請求項7】
請求項に記載の製造方法であって、
前記工程c)の後に、
前記小径部の上方から、前記上コアバック部に前記軸受部材を固定する、モータの製造方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の製造方法であって、
前記第2筒部の外周面は、上端に前記中心軸に対して傾斜する傾斜面を有し、
前記傾斜面と、前記小径部の下面と、前記下コアバック部の内周面と、の間には空間が形成され、
前記工程c)は、
前記接着剤の少なくとも一部が前記空間内に流入する工程を含む、モータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータおよびモータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータにおいて、ステータの径方向外側にマグネットが配置される、いわゆるアウターロータ型のモータが知られている。アウターロータ型のモータでは、ステータコアの径方向内側に、ステータを保持するための部材が配置されたり、モータの組み立て工程で、組み立て用の冶具が配置されたりする。
【0003】
近年、アウターロータ型モータが搭載される装置の小型化に伴い、モータ自体を小径化することが求められている。モータの外径を規定する要素として、例えば、ステータコアのティースの径方向の長さ、ステータコアのコアバック部の径方向の長さ、がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開1999−089196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開1999−089196号公報に開示のモータにおいて、コアバック部の径方向の長さを短くして、モータの小型化を図ろうとすると、切欠部の配置によって磁気的特性が低下する。一方で、切欠部の深さを浅くすると、ハウジングの凸部とステータコアの凹部が係合されない可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、磁気的特性を低下させることなく、ハウジングとステータとを構造的に締結する、小径化可能なモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な一実施形態のモータは、中心軸を中心として回転し、中心軸に対して上下に延びるシャフトと、シャフトを回転可能に支持する軸受部材と、シャフトに連結され、下向きに開口するカップ形状のロータハブと、ロータハブの径方向内側に保持されるロータマグネットと、ロータマグネットの径方向内側に位置し、ロータマグネットと間隙を介して対向するステータと、外側にステータを保持する筒部を有する、ハウジングと、を備え、ステータは、環状のコアバック部と、コアバック部の外周から径方向外側に延びる複数のティースと、ティースに導電線が巻回されてなるコイルと、を有し、コアバック部は、コアバック部の軸方向上側端部を含み、径方向内側に軸受部材を収容する上コアバック部と、コアバック部の軸方向下側端部を含み、筒部と径方向に対向する下コアバック部と、上コアバック部の軸方向下側および下コアバック部の軸方向上側に配置され、上コアバック部および下コアバック部よりも、中心軸から内周面までの距離の小さい小径部と、を有し、小径部は、径方向外側に向かって凹む凹部を有し、筒部と小径部との間隙、および凹部には接着剤が収容されており、筒部は、小径部と径方向に対向する第1筒部と、第1筒部の下方において、第1筒部よりも、中心軸から外周面までの距離が大きい第2筒部と、を有し、第2筒部は、下コアバック部と径方向に対向し、第1筒部の外周面は、小径部の内周面と接着剤を介して対向し、第2筒部の外周面と前記下コアバック部の内周面とは圧入にて固定され、第2筒部と下コアバック部との圧入領域は、第1筒部と小径部との接着領域よりも軸方向下側かつ径方向外側に位置する
【0008】
本発明の例示的な一実施形態のモータの製造方法は、中心軸を中心とする環状のコアバック部と、コアバック部の外周から径方向外側に延びる複数のティースと、を有するステータと、中心軸に対して上下に延びる筒部を有する、ハウジングと、を備え、コアバック部は、コアバック部の軸方向上側端部を含む上コアバック部と、コアバック部の軸方向下側端部を含む下コアバック部と、上コアバック部の軸方向下側および下コアバック部の軸方向上側に配置され、上コアバック部および下コアバック部よりも、中心軸から内周面までの距離の小さい小径部と、を有し、小径部が、径方向外側に向かって凹む凹部を有する、モータの製造方法であって、a)巻線機のピンに設けられた凸部を、凹部に固定し、テ
ィースに導電線を巻回してコイルを形成する工程と、b)筒部の下方を第1冶具の上面に配置する工程と、c)筒部の上方から、小径部の上面に第2冶具の下面を接触させて、ステータを筒部の径方向外側に固定する工程と、を含み、小径部と径方向に対向する第1筒部と、第1筒部の下方において、第1筒部よりも、中心軸から外周面までの距離が大きい第2筒部と、を有する筒部を準備する工程を含み、工程c)において、下コアバック部の内周面は、第2筒部の外周面に圧入され、工程c)は、第1筒部の外周面または小径部の内周面のいずれかに接着剤を塗布する工程を含み、第2筒部と下コアバック部との圧入領域は、第1筒部と小径部との接着領域よりも軸方向下側かつ径方向外側に位置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る例示的なモータによれば、磁気的特性を低下させることなく、ハウジングとステータとを構造的に締結し、かつ、モータを小径化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態におけるモータの断面を示す概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態におけるモータのコアバック部およびティースの上面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るモータのティースに導電線を巻回してコイルを形成する工程を説明するための図である。
図4図4は、本発明の実施形態におけるモータの一部を拡大して示す部分断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態におけるモータのステータがハウジングに固定された状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本明細書では、図1に示す中心軸Jに沿う方向を軸方向、中心軸Jに直交する方向を径方向、中心軸Jを中心とする円弧に沿う方向を周方向と称する。また、本明細書では、軸方向を上下方向とし、モータ10に対してロータハブ3側を上として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義により、本発明のモータ10の使用時の向きを限定する意図はない。
【0012】
図1は、本発明の例示的な一実施形態に係るモータ10の全体構成を示した断面図である。 モータ10は、たとえば、小型の無人飛行機(不図示)に搭載されて翼部を回転させる。なお、この例示に限定されず、モータ10は、たとえば、OA機器や医療機器、工具、産業用の大型設備などに搭載されて種々の駆動力を発生させてもよい。モータ10は、シャフト1と、軸受部材2と、ロータハブ3と、ロータマグネット4と、ステータ5と、ハウジング6と、を備える。
【0013】
シャフト1は、中心軸Jを中心として回転し、中心軸Jに対して上下に延びる。軸受部材2は、シャフト1を回転可能に支持する。軸受部材2は、シャフト1の外周に取り付けられる。本実施形態では、軸受部材2はボールベアリングである。また、軸受部材2は、上下方向に2つ設けられる。
【0014】
ロータハブ3は、シャフト1に連結され、下向きに開口するカップ形状である。ロータハブ3は、円筒状のマグネット保持部31と、マグネット保持部31から径方向内側に延びる平板部32と、平板部32の中央から軸方向下側に延び、かつ軸方向に貫通する円筒状の連結部33と、を有する。ロータハブ3は、連結部33において、シャフト1の軸受部材2の固定される部位より上側に固定される。つまり、連結部33の円筒状の内周面は、シャフト1の外周面と、接着剤または圧入によって固定される。
【0015】
ロータマグネット4は、ロータハブ3の径方向内側に保持される。本実施形態において、ロータマグネット4は、マグネット保持部31の内周面に固定される。ロータマグネット4の内周面とステータ5とは、径方向に間隙を介して対向する。ロータハブ3とロータマグネット4とは、接着または圧入によって固定される。平板部32は、軸方向に貫通する複数の貫通孔34を有する。モータ10の回転によってステータ5から発生した熱い空気は、貫通孔34を通じてモータ10の外部に排出される。
【0016】
ステータ5は、ロータマグネット4の径方向内側に位置し、ロータマグネット4と間隙を介して対向する。ステータ5は環状のコアバック部51と、コアバック部51の外周から径方向外側に延びる複数のティース52と、ティース52に導電線が巻回されてなるコイル53と、を有する。本実施形態において、コアバック部51およびティース52は、強磁性体である薄い鋼鈑を複数積層されてなる。ティース52において、導電線の巻回される部位とその周辺とには、絶縁塗装が行われる。なお、コアバック部51およびティース52は、金属粉末を金型に用いて圧縮成形して作成する、圧粉鉄心であってもよい。
【0017】
コアバック部51は、コアバック部51の軸方向上側端部を含む上コアバック部511と、コアバック部51の軸方向下側端部を含む下コアバック部512と、上コアバック部511の軸方向下側および下コアバック部512の軸方向上側に配置される小径部513と、を有する。上コアバック部511は、径方向内側に軸受部材2を収容する。言い換えると、軸受部材2は、上コアバック部511の内周面に直接又は接着剤を介して保持される。本実施形態において、軸受部材2の外輪の下面と小径部513の上面とは、直接又は予圧ばねを介して軸方向に対向する。下コアバック部512は、後述する筒部61と径方向に対向する。
【0018】
小径部513は、上コアバック部511および下コアバック部512よりも、中心軸Jから内周面までの距離が小さい。言い換えると、小径部513は上コアバック部511および下コアバック部512よりも中心軸Jに向かって突出する。
【0019】
ハウジング6は、径方向外側にステータ5を保持する筒部61を有する。さらに、ハウジング6は、ステータ5よりも軸方向下側において軸受部材2を収容する軸受収容部21を有する。本実施形態において、上側の軸受部材2はステータ5の上コアバック部511に収容され、下側の軸受部材2はハウジング6の軸受収容部21に収容される。筒部61は、第1筒部611と、第2筒部612と、第3筒部613と、を有する。第1筒部611は、小径部513と径方向に対向する。第2筒部612は、第1筒部611の下方において、第1筒部611よりも、中心軸Jから外周面までの距離が大きく、下コアバック部512と径方向に対向する。
【0020】
第3筒部613は、第2筒部612よりも下方において、第2筒部612よりも、中心軸Jから外周面までの距離が大きい。本実施形態において、軸受収容部21は、第3筒部613に設けられ、下方に開口する。すなわち、第3筒部613には軸受部材2が配置される。軸受部材2は、下方から軸受収容部21内に収容される。すなわち、軸受部材2は下方から第3筒部613内に収容される。軸受部材2の外周面は、第3筒部613の内周面と接着剤を介して固定される。
【0021】
図2は、本発明の実施形態におけるステータ5のコアバック部51およびティース52の上面図である。図2に示すように、小径部513は、径方向外側に向かって凹む凹部514を有する。筒部61と小径部513との間隙、および凹部514には接着剤11が収容される。これにより、ステータ5とハウジング6とを強固に固定することができる。また、小径部513に凹部514が設けられるため、凹部514の形成によって磁気的特性が低下することを抑制できる。
【0022】
図3は、本発明の実施形態におけるステータ5のティース52に導電線を巻回してコイル53を形成する工程を説明するための図である。ロータハブ3が小型化する場合、コアバック部51の径方向の厚みも薄くなる。例えば、コイル53を形成する場合、巻線機のピン8に設けられた凸部81を凹部514に配置して位置決めをする。このとき、上コアバック部511または下コアバック部512に凹部514を設けると、凹部514の深さが浅くなる、または、磁気的特性が低下する虞がある。本実施形態において、ロータハブ3の外径は、11mm以下である。このような小型のモータ10において凹部514の深さが浅くなると、凹部514と凸部81での保持力が小さくなり、凸部81が凹部514から抜ける可能性がある。本実施形態において、凹部514は小径部513に設けられるため、小型のモータ10においても、凹部514の深さをより深くすることができる。
【0023】
本実施形態において、第2筒部612は、下コアバック部512と径方向に対向する。これにより、ステータ5とハウジング6との固定方法を、小径部513および第1筒部611の間と、下コアバック部512および第2筒部612の間と、で異なる方法を用いることができる。本実施形態では、例えば、第1筒部611の外周面と小径部513の内周面とは間隙を有し、さらに当該間隙において接着剤11を介して対向する。第2筒部612の外周面と下コアバック部512の内周面とは圧入にて固定される。これにより、例えば、小径部513の内周面の中心軸と下コアバック部512の内周面の中心軸とがずれている場合、当該ずれ量を第1筒部611の外周面と小径部513の内周面との間隙にて調整し、第1筒部611の外周面と小径部513とが接触することによるコアバック部51への応力が偏ることが抑制される。
【0024】
図4は、本発明の実施形態におけるモータの一部を拡大して示す部分断面図である。第2筒部612の外周面は、上端に中心軸Jに対して傾斜する傾斜面614を有する。これにより、傾斜面614と、小径部513の下面と、下コアバック部512の内周面と、の間には空間7が形成される。第1筒部611の外周面と、小径部513の内周面との間に介在する接着剤11は、第1筒部611を小径部513に固定するときに、接着剤11は空間7に流入する。すなわち、空間7には接着剤11の少なくとも一部が配置される。これにより、接着剤11が上側に流出し、軸受部材2側に流出することを抑制できる。
【0025】
本実施形態において、第2筒部612と下コアバック部512との圧入領域は、第1筒部611と小径部513との接着領域よりも軸方向下側かつ径方向外側に位置する。当該圧入領域が、第1筒部611と小径部513との接着領域よりも軸方向下側かつ径方向外側に位置することで、ステータ5とハウジング6との組立時に接着剤11を圧入領域で堰き止めることができ、接着剤11を接着領域に保持することができる。つまり、接着剤11を第2筒部612の下方に流出することを抑制できる。
【0026】
モータ10において、圧入と接着とを併用することでステータ5とハウジング6とを強固に固定することができる。また、接着固定において、組立時の接着剤11の流出を抑制するために圧入領域を接着領域よりも軸方向下側かつ径方向外側に配置することで接着剤11がステータ5とハウジング6との間隙に保持され、接着強度を確保することができる。
【0027】
次に、本実施形態におけるモータ10の製造工程について説明する。
【0028】
上述したように、このモータ10に備えられているステータ5は、中心軸Jを中心とする環状のコアバック部51と、コアバック部51の外周から径方向外側に延びる複数のティース52と、を有する。さらに、このモータ10は、中心軸Jに対して上下に延びる筒部61を有するハウジング6と、を備える。
【0029】
上述したように、このモータ10に備えられているステータ5のコアバック部51は、コアバック部51の軸方向上側端部を含む上コアバック部511と、コアバック部51の軸方向下側端部を含む下コアバック部512と、上コアバック部511の軸方向下側および下コアバック部512の軸方向上側に配置され、上コアバック部511および下コアバック部512よりも、中心軸Jから内周面までの距離の小さい小径部513と、を有し、小径部513が、径方向外側に向かって凹む凹部514を有する。
【0030】
本実施形態におけるモータ10の製造方法は、コイル53を形成する工程と、ハウジング6の筒部61を第1冶具91に配置する工程と、ステータ5を筒部61に固定する工程と、を含む。
【0031】
図3は、本発明の実施形態におけるステータ5のティース52に導電線を巻回してコイル53を形成する工程を説明するための図である。巻線機のピン8には凸部81が配置される。巻線機のピン8に設けられた凸部81を、上述の凹部514に固定する。これにより、コアバック部51およびティース52が巻線機に位置決めされる。位置決めされたティース52に、導電線を巻回してコイル53を形成する。上述のように、凹部514は小径部513に設けられるため、小型のモータ10においても、凹部514の深さをより深くすることができる。そのため、巻線機に取り付けた際にコアバック部51およびティース52が移動することを抑制できる。
【0032】
図5は、本発明の実施形態におけるモータ10のステータ5がハウジング6に固定された状態を示した断面図である。ハウジング6の筒部61の下方を第1冶具91の上面に配置する。第1冶具91に配置した筒部61の上方から、ステータ5を筒部61の径方向外側に固定する。このとき、小径部513の上面に第2冶具92の下面を接触させる。これにより、ステータ5に力が加わり、ステータ5が筒部61の径方向外側に固定される。
【0033】
上述のように、ティース52において、導電線の巻回される部位とその周辺とには、絶縁塗装が行われている。コイル53周辺のコアバック部51の上面に第2冶具92の下面を接触させる場合、コイル53周辺の絶縁塗装が第2冶具92に接触する可能性がある。本実施形態では、小径部513の上面に第2冶具92の下面を接触させて力を加える。コイル53周辺の絶縁塗装に第2冶具92が接触しないため、絶縁塗装が剥げたり、薄くなったりすることを抑制できる。
【0034】
本実施形態におけるモータ10の製造方法は、小径部513と径方向に対向する第1筒部611と、第1筒部611の下方において、前記第1筒部611よりも、中心軸Jから外周面までの距離が大きい第2筒部612と、を有する筒部61を準備する工程を含む。これにより、ステータ5とハウジング6との固定方法を、小径部513および第1筒部611の間と、下コアバック部512および第2筒部612の間と、で異なる方法を用いることができる。
【0035】
本実施形態におけるモータ10の製造方法は、ステータ5を筒部61に固定する工程の後に、小径部513の上方から、上コアバック部511に軸受部材2を固定する工程を含む。
【0036】
本実施形態において、ステータ5を筒部61に固定する工程において、下コアバック部512の内周面は、第2筒部612の外周面に圧入される。さらに、ステータ5を筒部61に固定する工程は、ステータ5を筒部61に固定した後、第1筒部611の外周面または小径部513の内周面にいずれかに接着剤11を塗布する工程を含む。すなわち、第1筒部611と小径部513とは、接着剤11により固定される。下コアバック部512の内周面が小径部513の内周面よりも大きいことで、下コアバック部512の内周面が、第1筒部611の外周面に塗布された接着剤11に接触することなく、ステータ5をハウジング6へ固定することができる。つまり、第1筒部611と小径部513との間隙に接着剤11を保持することができる。
【0037】
上述のように、第2筒部612の外周面は、上端に中心軸Jに対して傾斜する傾斜面614を有し、傾斜面614と、小径部513の下面と、下コアバック部512の内周面と、の間には空間7が形成される。本実施形態におけるモータ10の製造方法は、接着剤11の少なくとも一部が前記空間7内に流入する工程を含む。これにより、接着剤11が上側に流出し、軸受部材2内側に流出することを抑制できる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾を生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明はモータに利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1・・・シャフト、2・・・軸受部材、21・・・軸受収容部、3・・・ロータハブ、31・・・マグネット保持部、32・・・平板部、33・・・連結部、34・・・貫通孔、4・・・ロータマグネット、5・・・ステータ、51・・・コアバック部、511・・・上コアバック部、512・・・下コアバック部、513・・・小径部、514・・・凹部、52・・・ティース、53・・・コイル、6・・・ハウジング、61・・・筒部、611・・・第1筒部、612・・・第2筒部、613・・・第3筒部、614・・・傾斜面、7・・・空間、8・・・ピン、81・・・凸部、91・・・第1冶具、92・・・第2冶具、10・・・モータ、11・・・接着剤、J・・・中心軸



図1
図2
図3
図4
図5