(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1乃至第4のギャップの延在方向である第1の方向における前記第1の外部磁性体の幅は、前記磁性体層の前記第1及び第2の領域の前記第1の方向における合計幅よりも広く、これにより、前記第1及び第2の領域の前記第1の方向における全幅が前記第1の外部磁性体によって覆われていることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ。
前記磁性体層の前記第3及び第4の領域の近傍に設けられた第2の外部磁性体と、前記磁性体層の前記第5及び第6の領域の近傍に設けられた第3の外部磁性体とをさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の磁気センサ。
前記第1、第2、第3及び第4の感磁素子は、それぞれ前記第1、第2、第3及び第4のギャップによって形成される磁路上に配置された複数の感磁素子が直列接続されてなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の磁気センサ。
前記磁性体層は、平面視で、前記第1、第2、第3及び第4の感磁素子をそれぞれ構成する前記複数の感磁素子間に配置された第7の領域をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の磁気センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載された磁気センサでは、磁性体層によって形成されるギャップの数が2つであることから、ブリッジ回路を構成する2つの感磁素子が同じギャップ内に配置されることになる。これら2つの感磁素子に流れる電流は、一方が減少すると他方が増加する関係にあることから、一方の感磁素子に流れる電流によって生じる磁束が他方の感磁素子に無視できない影響を与え、その結果、検出精度が低下するおそれがあった。
【0006】
したがって、本発明は、4つの感磁素子がブリッジ接続されてなる改良された磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による磁気センサは、センサ基板と、センサ基板上に設けられた磁性体層と、ブリッジ接続される第1乃至第4の感磁素子とを備え、磁性体層は、いずれも矩形である第1乃至第6の領域を有し、第1の領域は、第3の領域と第5の領域に挟まれるよう設けられ、第2の領域は、第4の領域と第6の領域に挟まれるよう設けられ、第1の感磁素子は、第1の領域と第3の領域の間に位置する第1のギャップによって形成される磁路上に配置され、第2の感磁素子は、第2の領域と第6の領域の間に位置する第2のギャップによって形成される磁路上に配置され、第3の感磁素子は、第2の領域と第4の領域の間に位置する第3のギャップによって形成される磁路上に配置され、第4の感磁素子は、第1の領域と第5の領域の間に位置する第4のギャップによって形成される磁路上に配置されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、4つの感磁素子が互いに異なるギャップによって形成される磁路上に配置されていることから、各感磁素子に流れる電流によって生じる磁束が他の感磁素子に影響を与えることがない。これにより、より検出精度の高い磁気センサを提供することが可能となる。しかも、磁性体層を構成する各領域が矩形であることから、磁性体層を複雑な形状とした場合に顕著となるバルクハウゼンノイズを抑制することも可能となる。また、各感磁素子のサイズを十分に確保することができるため、高いS/N比を得ることも可能となる。
【0009】
本発明による磁気センサは、磁性体層の第1及び第2の領域を覆うよう、センサ基板上に設けられた第1の外部磁性体をさらに備えていても構わない。これによれば、センサ基板に対して垂直方向の磁束の選択性を高めることができる。
【0010】
この場合、第1乃至第4のギャップの延在方向である第1の方向における第1の外部磁性体の幅は、磁性体層の第1及び第2の領域の第1の方向における合計幅よりも広く、これにより、第1及び第2の領域の第1の方向における全幅が第1の外部磁性体によって覆われていても構わない。これによれば、第1の外部磁性体に位置ずれに起因する検出精度の低下を抑制することが可能となる。
【0011】
本発明による磁気センサは、磁性体層の第3及び第4の領域の近傍に設けられた第2の外部磁性体と、磁性体層の第5及び第6の領域の近傍に設けられた第3の外部磁性体とをさらに備えていても構わない。これによれば、より高い検出精度を得ることが可能となる。
【0012】
本発明において、磁性体層の第1の領域と第2の領域は、一体的であり且つ全体として矩形であっても構わない。また、磁性体層の第3の領域と第4の領域は、一体的であり且つ全体として矩形であり、磁性体層の第5の領域と第6の領域は、一体的であり且つ全体として矩形であっても構わない。これらによれば、磁性体層の平面形状をより単純化することが可能となる。
【0013】
本発明において、第1の感磁素子は、磁性体層の第1及び第3の領域と重なりを有しており、第2の感磁素子は、磁性体層の第2及び第6の領域と重なりを有しており、第3の感磁素子は、磁性体層の第2及び第4の領域と重なりを有しており、第4の感磁素子は、磁性体層の第1及び第5の領域と重なりを有していても構わない。これによれば、漏れ磁束が低減されるため、より高い検出精度を得ることが可能となる。
【0014】
本発明において、磁性体層には、ループ状の外周を有する切り欠き部が設けられていても構わない。これによれば、磁性体層の残留磁束が切り欠き部の外周を周回することから、残留磁束による検出精度の低下を防止することが可能となる。
【0015】
本発明において、第1、第2、第3及び第4の感磁素子は、それぞれ第1、第2、第3及び第4のギャップによって形成される磁路上に配置された複数の感磁素子が直列接続されてなるものであっても構わない。これによれば、より高い検出精度を得ることが可能となる。
【0016】
この場合、磁性体層は、平面視で、第1、第2、第3及び第4の感磁素子をそれぞれ構成する複数の感磁素子間に配置された第7の領域をさらに有していても構わない。これによれば、複数の感磁素子間における漏れ磁束を低減することが可能となる。さらにこの場合、磁性体層の第7の領域は、第1、第2、第3及び第4の感磁素子をそれぞれ構成する複数の感磁素子と重なりを有していても構わない。これによれば、複数の感磁素子間における漏れ磁束をよりいっそう低減することが可能となる。また、磁性体層の第7の領域は、第1乃至第4のギャップの延在方向である第1の方向に分割されていても構わない。これによれば、磁性体層の第7の領域が磁気的に異方性を持つことから、より高い検出精度を得ることが可能となる。
【0017】
本発明において、第1乃至第4の感磁素子は、いずれも磁気抵抗素子であることが好ましい。この場合、第1乃至第4の感磁素子を構成する磁気抵抗素子の感度方向は互いに同一であることが好ましく、第1乃至第4の感磁素子を構成する磁気抵抗素子は、スピンバルブ型GMR素子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、4つの感磁素子が互いに異なるギャップによって形成される磁路上に配置されることから、これら4つの感磁素子をブリッジ接続することにより、検出精度の高い磁気センサを構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態による磁気センサ100の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、磁気センサ100の略分解斜視図である。
【
図4】
図4は、センサ基板20の素子形成面21の構造を説明するための略平面図である。
【
図6】
図6は、感磁素子R1〜R4とボンディングパッド51〜54の接続関係を説明するための回路図である。
【
図7】
図7は、第1の変形例による磁気センサ101の主要部の構成を説明するための略断面図である。
【
図8】
図8は、第2の変形例による磁気センサ102の主要部の構成を説明するための略断面図である。
【
図9】
図9は、第3の変形例による磁気センサ103の主要部の構成を説明するための略断面図である。
【
図10】
図10は、第4の変形例による磁気センサ104の主要部の構成を説明するための略断面図である。
【
図11】
図11は、第5の変形例による磁気センサ105の主要部の構成を説明するための略断面図である。
【
図12】
図12は、第6の変形例による磁気センサ106の主要部の構成を説明するための略断面図である。
【
図13】
図13は、第7の変形例による磁気センサ107の主要部の構成を説明するための略平面図である。
【
図14】
図14は、第8の変形例による磁気センサ108の主要部の構成を説明するための略平面図である。
【
図15】
図15は、第9の変形例による磁気センサ109の主要部の構成を説明するための略平面図である。
【
図16】
図16は、第10の変形例による磁気センサ110の主要部の構成を説明するための略平面図である。
【
図17】
図17は、第11の変形例による磁気センサ111の主要部の構成を説明するための略平面図である。
【
図18】
図18は、第12の変形例による磁気センサ112の主要部の構成を説明するための略平面図である。
【
図19】
図19は、第13の変形例による磁気センサ113の主要部の構成を説明するための略平面図である。
【
図20】
図20は、第14の変形例による磁気センサ114の主要部の構成を説明するための略平面図である。
【
図21】
図21は、第15の変形例による磁気センサ115の主要部の構成を説明するための略断面図である。
【
図22】
図22は、磁気センサ115の変形例を説明するための略断面図である。
【
図23】
図23は、第16の変形例による磁気センサ116の主要部の構成を説明するための略平面図である。
【
図24】
図24は、第17の変形例による磁気センサ117の主要部の構成を説明するための略断面図である。
【
図25】
図25は、第18の変形例による磁気センサ118の主要部の構成を説明するための略断面図である。
【
図26】
図26は、第19の変形例による磁気センサ119の主要部の構成を説明するための略断面図である。
【
図27】
図27は、第20の変形例による磁気センサ120の主要部の構成を説明するための略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施形態による磁気センサ100の外観を示す略斜視図である。また、
図2は磁気センサ100の略分解斜視図であり、
図3は
図1に示すA−A線に沿った略断面図である。
【0022】
図1〜
図3に示すように、本実施形態による磁気センサ100は、開口部11を有する回路基板10と、開口部11に配置されたセンサ基板20と、センサ基板20に固定された第1〜第4の外部磁性体31〜34とを備えている。センサ基板20は、回路基板10よりも小さいチップ部品であり、後述する感磁素子を有している。また、第1〜第4の外部磁性体31〜34は、フェライトなど透磁率の高い軟磁性材料からなるブロックである。
【0023】
センサ基板20は略直方体形状を有し、xy平面を構成する素子形成面21には第1の外部磁性体31が配置されている。センサ基板20の作製方法としては、集合基板に多数のセンサ基板20を同時に形成し、これらを分離することによって多数個取りする方法が一般的であるが、本発明がこれに限定されるものではなく、個々のセンサ基板20を別個に作製しても構わない。詳細については後述するが、素子形成面21には4つの感磁素子R1〜R4及び磁性体層40が形成されている。また、素子形成面21には4つのボンディングパッド51〜54が設けられており、対応するボンディングワイヤBWを介して、回路基板10に設けられたボンディングパッド61〜64にそれぞれ接続されている。
【0024】
さらに、第2及び第3の外部磁性体32,33は、センサ基板20のx方向における両側にそれぞれ配置されている。第2及び第3の外部磁性体32,33は、センサ基板20の底部に位置する第4の外部磁性体34を介して接続されており、これにより第2〜第4の外部磁性体32〜34は単一の磁性ブロック35を構成する。そして、この磁性ブロック35が回路基板10の開口部11に挿入されるよう配置されている。磁性ブロック35には、センサ基板20を収容するための凹部36が設けられており、この凹部36にセンサ基板20が収容されると、センサ基板20の素子形成面21と、第2及び第3の外部磁性体32,33の先端が近接し、ほぼ同一平面を構成する。
【0025】
次に、センサ基板20の素子形成面21に形成される各構成要素について詳細に説明する。
【0026】
図4は、センサ基板20の素子形成面21の構造を説明するための略平面図である。また、
図5は、
図4に示すB−B線に沿った略断面図である。
【0027】
図4及び
図5に示すように、センサ基板20の素子形成面21には、磁性体層40が形成されている。特に限定されるものではないが、磁性体層40としては、樹脂材料に磁性フィラーが分散された複合磁性材料からなる膜であっても構わないし、ニッケル又はパーマロイなどの軟磁性材料からなる薄膜もしくは箔であっても構わないし、フェライトなどからなる薄膜又はバルクシートであっても構わない。
【0028】
本実施形態においては、磁性体層40が第1の領域41〜第6の領域46に分割されている。第1の領域41〜第6の領域46はいずれも矩形状であり、いずれも2辺がx方向に延在し、残りの2辺がy方向に延在する。このうち、第1の領域41と第2の領域42は、素子形成面21のx方向における略中央部に配置されており、互いにy方向に隣接している。また、第1の領域41のx方向における両側には第3の領域43と第5の領域45が設けられており、これにより、第1の領域41は第3の領域43と第5の領域45によってx方向に挟まれている。同様に、第2の領域42のx方向における両側には第4の領域44と第6の領域46が設けられており、これにより、第2の領域42は第4の領域44と第6の領域46によってx方向に挟まれている。また、第3の領域43と第4の領域44は互いにy方向に隣接しており、同様に、第5の領域45と第6の領域46は互いにy方向に隣接している。
【0029】
特に限定されるものではないが、第1の外部磁性体31のy方向における幅は、磁性体層40の第1及び第2の領域41,42のy方向における合計幅よりも広く、これにより、第1及び第2の領域41,42のy方向における全幅が第1の外部磁性体31によって覆われていることが好ましい。これによれば、製造時において、第1の外部磁性体31と磁性体層40との相対的な位置関係にずれが生じたとしても、検出精度が大幅に低下することがない。位置ずれとしては、xy方向におけるずれの他、回転ずれも考えられる。
【0030】
ここで、磁性体層40の第1の領域41と第2の領域42は、互いに同じ形状及びサイズを有しており、x方向に延在する仮想的な直線L1を対称軸として線対称である。このような対称形状のため、第1の外部磁性体31を介して取り込まれた磁束は、磁性体層40の第1の領域41と第2の領域42に対してほぼ均等に分配される。また、第1及び第2の領域41,42は、いずれもy方向に延在する仮想的な直線L2を対称軸として線対称となるよう配置されている。
【0031】
また、磁性体層40の第3の領域43と第4の領域44は、互いに同じ形状及びサイズを有しており、x方向に延在する仮想的な直線L1を対称軸として線対称である。このような対称形状のため、第2の外部磁性体32を介して取り込まれた磁束は、磁性体層40の第3及び第4の領域43,44に対してほぼ均等に分配される。同様に、磁性体層40の第5の領域45と第6の領域46は、互いに同じ形状及びサイズを有しており、x方向に延在する仮想的な直線L1を対称軸として線対称である。このような対称形状のため、第3の外部磁性体33を介して取り込まれた磁束は、磁性体層40の第5及び第6の領域45,46に対してほぼ均等に分配される。また、第3及び第4の領域43,44と第5及び第6の領域45,46は、y方向に延在する仮想的な直線L2を対称軸として互いに線対称となるよう配置されている。
【0032】
第1の領域41のx方向における一方の端部は、第1のギャップG1を介して、第3の領域43のx方向における一方の端部と対向している。また、第1の領域41のx方向における他方の端部は、第4のギャップG4を介して、第5の領域45のx方向における一方の端部と対向している。同様に、第2の領域42のx方向における一方の端部は、第3のギャップG3を介して、第4の領域44のx方向における一方の端部と対向している。また、第2の領域42のx方向における他方の端部は、第2のギャップG2を介して、第6の領域46のx方向における一方の端部と対向している。上述の通り、各領域41〜46はいずれも矩形であるため、各領域41〜46の上記端部のy方向における長さは、当該領域のy方向における幅とほぼ一致している。
【0033】
図4に示すように、第1〜第4のギャップG1〜G4には、それぞれy方向に延在する第1〜第4の感磁素子R1〜R4が配置されている。第1〜第4のギャップG1〜G4のx方向における幅は互いに同一である。第1〜第4の感磁素子R1〜R4は、磁性体層40とは接していない。
【0034】
感磁素子R1〜R4は、磁束密度によって物理特性の変化する素子であれば特に限定されないが、磁界の向きに応じて電気抵抗が変化する磁気抵抗素子であることが好ましく、スピンバルブ型GMR素子であることが特に好ましい。本実施形態においては、感磁素子R1〜R4の感度方向(固定磁化方向)は、
図4及び
図5の矢印Cが示す方向(x方向におけるプラス側)に全て揃えられている。
【0035】
図5に示すように、第1の外部磁性体31はz方向の磁束φを集め、これを磁性体層40の第1及び第2の領域41,42に放出する役割を果たす。第1の外部磁性体31のz方向における高さについては特に限定されないが、z方向における高さをより高くすることによって、z方向の磁束の選択性を高めることができる。但し、第1の外部磁性体31のz方向における高さが高すぎると、第1の外部磁性体31の支持が不安定となるおそれがあることから、安定的な支持を確保できる範囲において高くすることが好ましい。
【0036】
第1の外部磁性体31を介して磁性体層40の第1及び第2の領域41,42に集められた磁束φは、第1及び第2の領域41,42に対してほぼ均等に分配された後、第1〜第4の感磁素子R1〜R4を介してそれぞれ第3〜第6の領域43〜46へと放出される。これにより、感磁素子R1,R3と感磁素子R2,R4には、互いに逆方向の磁束が与えられることになる。上述の通り、感磁素子R1〜R4の磁化固定方向は、矢印Cが示すxプラス方向に向けられていることから、磁束のx方向における成分に対して感度を持つことになる。
【0037】
磁性体層40の第3及び第4の領域43,44に到達した磁束は、第2の外部磁性体32に回収される。同様に、磁性体層40の第5及び第6の領域45,46に到達した磁束は、第3の外部磁性体33に回収される。
【0038】
図6は、感磁素子R1〜R4とボンディングパッド51〜54の接続関係を説明するための回路図である。
【0039】
図6に示すように、ボンディングパッド51,54には、回路基板10側からそれぞれグランド電位Gnd及び電源電位Vddが供給される。また、ボンディングパッド51,54間には、感磁素子R1,R2が直列に接続されるとともに、感磁素子R4,R3が直列に接続される。そして、感磁素子R3,R4の接続点はボンディングパッド52に接続され、感磁素子R1,R2の接続点はボンディングパッド53に接続される。このようなブリッジ接続により、ボンディングパッド53に現れる電位Vaとボンディングパッド52に現れる電位Vbを参照することにより、磁束密度に応じた感磁素子R1〜R4の電気抵抗の変化を高感度に検出することが可能となる。
【0040】
具体的には、感磁素子R1〜R4が全て同一の磁化固定方向を有していることから、第1の外部磁性体31からみて一方側に位置する感磁素子R1,R3の抵抗変化量と、第1の外部磁性体31からみて他方側に位置する感磁素子R2,R4の抵抗変化量との間には差が生じる。この差は、
図6に示した差動ブリッジ回路によって2倍に増幅され、ボンディングパッド52,53に現れる。回路基板10には、図示しない電圧検出回路が設けられており、ボンディングパッド52,53に現れる電位Va,Vbの差を検出することによって、磁束密度を測定することが可能となる。
【0041】
そして、本実施形態による磁気センサ100は、センサ基板20の素子形成面21に磁性体層40が設けられており、磁性体層40に設けられた4つのギャップG1〜G4にそれぞれ感磁素子R1〜R4が配置されていることから、ある感磁素子に流れる電流によって生じる磁束が他の感磁素子に影響を与えることがない。これにより、従来よりも高い検出精度を得ることが可能となる。
【0042】
しかも、磁性体層40を構成する各領域41〜46が矩形であることから、磁性体層を複雑な形状とした場合に顕著となるバルクハウゼンノイズを抑制することも可能となる。また、感磁素子R1〜R4のy方向における長さを十分に確保することができるため、高いS/N比を得ることも可能となる。
【0043】
また、本実施形態による磁気センサ100は、第1の外部磁性体31を備えていることから、z方向の磁束を選択的に検出することができる。しかも、本実施形態による磁気センサ100は、第2の外部磁性体32と第3の外部磁性体33が一体化されていることから、センサ基板20の背後に回り込む磁束の磁気抵抗を低減することもできる。
【0044】
以下、本実施形態による磁気センサ100のいくつかの変形例について説明する。
【0045】
図7は、第1の変形例による磁気センサ101の主要部の構成を説明するための略断面図である。
図7に示す例では、センサ基板20の表面に絶縁層22,23がこの順に積層されており、絶縁層22の表面が素子形成面21を構成している。そして、素子形成面21である絶縁層22の表面に感磁素子R1〜R4が設けられ、上層に位置する絶縁層23の表面に磁性体層40が設けられている。このように、第1の変形例による磁気センサ101では、感磁素子R1〜R4と磁性体層40が異なる層に位置しており、磁性体層40の第1及び第3の領域41,43によって形成されるギャップG1と平面視で重なる位置に感磁素子R1が配置され、磁性体層40の第1及び第5の領域41,45によって形成されるギャップG4と平面視で重なる位置に感磁素子R4が配置される。感磁素子R2,R3についても同様である。第1の変形例による磁気センサ101が例示するように、本発明において、感磁素子R1〜R4と磁性体層40のz方向における位置は互いに異なっていても構わない。この場合、感磁素子R1〜R4は、厳密にはギャップG1〜G4間には位置しないが、ギャップG1〜G4によって形成される磁路上に配置されることから、ギャップG1〜G4を通過する磁束を正しく検出することが可能となる。
【0046】
図8は、第2の変形例による磁気センサ102の主要部の構成を説明するための略断面図である。
図8に示す例では、感磁素子R1の一部が磁性体層40の第1及び第3の領域41,43とz方向に重なりを有しており、感磁素子R4の一部が磁性体層40の第1及び第5の領域41,45とz方向に重なりを有している。感磁素子R2,R3についても同様である。本例においても、感磁素子R1〜R4は、厳密にはギャップG1〜G4間には位置しないが、ギャップG1〜G4によって形成される磁路上に配置されている。このように、感磁素子R1〜R4と磁性体層40のz方向における位置が互いに異なっている場合、ギャップG1〜G4の近傍において両者の一部がz方向に重なるよう配置すれば、漏れ磁束が低減されるため、より高い検出精度を得ることが可能となる。
【0047】
図9は、第3の変形例による磁気センサ103の主要部の構成を説明するための略断面図である。
図9に示す例では、センサ基板20の表面に絶縁層24,25,26がこの順に積層されており、絶縁層25の表面が素子形成面21を構成している。そして、素子形成面21である絶縁層25の表面に感磁素子R1〜R4が設けられ、下層に位置する絶縁層24の表面に磁性体層40の第3〜第6の領域43〜46が設けられ、上層に位置する絶縁層26の表面に磁性体層40の第1及び第2の領域41,42が設けられている。このように、第3の変形例による磁気センサ103では、第1及び第2の領域41,42と第3〜第6の領域43〜46が異なる層に位置しており、これらの一部が重なることによって立体的なギャップG1〜G4が形成されている。そして、これらギャップG1〜G4間に感磁素子R1〜R4が配置される構成を有している。第3の変形例による磁気センサ103が例示するように、ギャップG1〜G4は平面的なものである必要はなく、立体的なものであっても構わない。
【0048】
図10は、第4の変形例による磁気センサ104の主要部の構成を説明するための略断面図である。
図10に示す例では、磁性体層40の第1及び第2の領域41,42と第3〜第6の領域43〜46が異なる層に位置しており、且つ、互いに重なりを有していない。このため、第1及び第2の領域41,42と第3〜第6の領域43〜46によって斜め方向のギャップG1〜G4が形成され、これらギャップG1〜G4に相当する位置に感磁素子R1〜R4が配置されている。この場合、感磁素子R1〜R4と磁性体層40は、重なりを有していても構わないし、重なりを有していなくても構わない。
【0049】
図11は、第5の変形例による磁気センサ105の主要部の構成を説明するための略断面図である。
図11に示す例では、第2の外部磁性体32と第3の外部磁性体33が一体化されておらず、互いに分離されている。このような構成においては、センサ基板20の背後に回り込む磁束の磁気抵抗が若干増加するものの、上述した磁気センサ100とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0050】
図12は、第6の変形例による磁気センサ106の主要部の構成を説明するための略断面図である。
図12に示す例では、第2及び第3の外部磁性体32,33が省略されている。このような構成においては、第2及び第3の外部磁性体32,33による集磁効果がなくなるものの、上述した磁気センサ100とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0051】
図13は、第7の変形例による磁気センサ107の主要部の構成を説明するための略平面図である。
図13に示す例では、磁性体層40の第1の領域41と第2の領域42が一体的であり、且つ、全体として矩形である。第7の変形例による磁気センサ107が例示するように、本発明において、磁性体層40の第1の領域41と第2の領域42が互いに分離していることは必須でなく、両者が一体化していても構わない。
【0052】
図14は、第8の変形例による磁気センサ108の主要部の構成を説明するための略平面図である。
図14に示す例では、磁性体層40の第3の領域43と第4の領域44が一体的であり、且つ、全体として矩形であるとともに、磁性体層40の第5の領域45と第6の領域46が一体的であり、且つ、全体として矩形である。第8の変形例による磁気センサ108が例示するように、本発明において、磁性体層40の第3の領域43と第4の領域44や、第5の領域45と第6の領域46が互いに分離していることは必須でなく、両者が一体化していても構わない。
【0053】
図15は、第9の変形例による磁気センサ109の主要部の構成を説明するための略平面図である。
図15に示す例では、磁性体層40の第1の領域41と第2の領域42が一体的であり、且つ、全体として矩形であり、第3の領域43と第4の領域44が一体的であり、且つ、全体として矩形であり、磁性体層40の第5の領域45と第6の領域46が一体的であり、且つ、全体として矩形である。このような構成によれば、磁性体層40の平面形状がより単純化することから、バルクハウゼンノイズをより低減することが可能となる。
【0054】
図16は、第10の変形例による磁気センサ110の主要部の構成を説明するための略平面図である。
図16に示す例では、磁性体層40にいくつかの切り欠き部71が設けられている。切り欠き部71は、ループ状の外周を有する独立したスペースパターンであり、いずれもy方向を長軸方向とする楕円形である。独立したスペースパターンとは、外周が閉じていることを意味する。
図16に示す例では、第1及び第2の領域41,42にそれぞれ2つの切り欠き部71が設けられ、第3〜第6の領域43〜46にそれぞれ1つの切り欠き部71が設けられている。第1及び第2の領域41,42においては、第1の外部磁性体31で覆われる部分を避けて切り欠き部71が配置されており、これにより第1及び第2の領域41,42における集磁効果の低下を防止している。このような切り欠き部71を設ければ、磁性体層40の残留磁束が切り欠き部71の外周を周回することから、残留磁束による検出精度の低下を防止することが可能となる。
【0055】
図17は、第11の変形例による磁気センサ111の主要部の構成を説明するための略平面図である。
図17に示す例では、切り欠き部71の内径領域に島状の独立パターン72が設けられている点において、
図16に示す例と相違している。独立パターン72は、切り欠き部71を介して磁性体層40と分離されている。このような独立パターン72を追加すれば、切り欠き部71を形成することによる磁気抵抗の増加を最小限に抑えることが可能となる。
【0056】
図18は、第12の変形例による磁気センサ112の主要部の構成を説明するための略平面図である。
図18に示す例では、磁性体層40の第1及び第2の領域41,42にそれぞれ1つの大きな切り欠き部73が設けられている点において、
図16に示す例と相違している。切り欠き部73もループ状の外周を有する独立したスペースパターンであり、いずれもx方向を長軸方向とする楕円形である。このような構成であっても、
図16に示す例と同様の効果を得ることができる。
【0057】
図19は、第13の変形例による磁気センサ113の主要部の構成を説明するための略平面図である。
図19に示す例では、切り欠き部73の内径領域に島状の独立パターン74が設けられている点において、
図18に示す例と相違している。独立パターン74は、切り欠き部73を介して磁性体層40と分離されている。このような独立パターン74を追加すれば、切り欠き部73を形成することによる磁気抵抗の増加を最小限に抑えることが可能となる。
【0058】
図20は、第14の変形例による磁気センサ114の主要部の構成を説明するための略平面図である。
図20に示す例では、第1〜第4の感磁素子R1〜R4がそれぞれ第1〜第4のギャップG1〜G4に配置された2つの感磁素子によって構成されている。具体的には、直列接続された2つの感磁素子R11,R12によって第1の感磁素子R1が構成され、直列接続された2つの感磁素子R21,R22によって第2の感磁素子R2が構成され、直列接続された2つの感磁素子R31,R32によって第3の感磁素子R3が構成され、直列接続された2つの感磁素子R41,R42によって第4の感磁素子R4が構成されている。これによれば、より大きな磁気抵抗効果を得ることができるため、センサ基板20のサイズをほとんど大型化することなく、高い検出精度を得ることが可能となる。尚、直列接続される2つの感磁素子(例えばR11とR12)の間には、磁性体層40の第7の領域47を追加しても構わない。また、各感磁素子R1〜R4を直列接続された3以上の感磁素子によって構成しても構わない。
【0059】
図21は、第15の変形例による磁気センサ115の主要部の構成を説明するための略断面図である。
図21に示す例では、感磁素子R1が2つの感磁素子R11,R12によっているとともに、感磁素子R11の一部が磁性体層40の第1及び第7の領域41,47と重なりを有し、感磁素子R12の一部が磁性体層40の第3及び第7の領域43,47と重なりを有している。ここで、第7の領域47は、第1及び第2の領域41,43と同じ層に形成されていても構わないし、
図22に示すように、第1及び第2の領域41,43とは異なる層に形成されていても構わない。
図22に示す例では、第7の領域47がセンサ基板20の素子形成面21に形成されている。図示しない他の感磁素子R2〜R4についても、感磁素子R1と同様の構成を有している。このように、磁性体層40に第7の領域47を設けるとともに、各感磁素子R1〜R4と磁性体層40が重なるよう配置すれば、漏れ磁束が低減されるため、より高い検出精度を得ることが可能となる。
【0060】
図23は、第16の変形例による磁気センサ116の主要部の構成を説明するための略平面図である。
図23に示す例では、磁性体層40の第7の領域47がギャップG1の延在方向であるy方向に多数分割されている。図示しない他のギャップG2〜G4上においても同様の構成を有している。このように、磁性体層40の第7の領域47をy方向に分割すれば、ギャップG1〜G4を介した磁束の流れが感磁方向であるx方向に制限され、y方向にはほとんど流れなくなる。つまり、磁性体層40の第7の領域47をy方向に分割することによって磁気的な異方性が生じることから、より高い検出精度を得ることが可能となる。
【0061】
図24は、第17の変形例による磁気センサ117の主要部の構成を説明するための略断面図である。
図24に示す例では、磁性体層40の膜厚がギャップG1〜G4に向かって連続的に薄くなる構造を有している。このような構成によれば、第1〜第4の感磁素子R1〜R4に磁束がより集中することから、検出精度を高めることが可能となる。
【0062】
図25は、第18の変形例による磁気センサ118の主要部の構成を説明するための略断面図である。
図25に示す例では、磁性体層40の膜厚がギャップG1〜G4の近傍において薄くなる段差構造を有している。このような構成であっても、第1〜第4の感磁素子R1〜R4に磁束がより集中することから、検出精度を高めることが可能となる。
【0063】
図26は、第19の変形例による磁気センサ119の主要部の構成を説明するための略断面図である。
図26に示す例では、磁性体層40の膜厚がギャップG1〜G4に向かって段階的に薄くなる階段状構造を有している。このような構成であっても、第1〜第4の感磁素子R1〜R4に磁束がより集中することから、検出精度を高めることが可能となる。
【0064】
図27は、第20の変形例による磁気センサ120の構成を説明するための略斜視図である。
図27に示す例では、xy平面を有する回路基板10の表面にセンサ基板20が横倒しで搭載されている。つまり、センサ基板20の素子形成面21がxz面を構成しており、第1の外部磁性体31がy方向に延在している。このような構成によれば、回路基板10に開口部11を設ける必要がなくなるとともに、回路基板10の主面と平行な方向の磁束を選択的に検出することが可能となる。また、第1の外部磁性体31の高さ(y方向における長さ)を長くしても、第1の外部磁性体31の支持が不安定となることがない。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。