特許第6972910号(P6972910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972910燃料電池システムおよび燃料電池システムの制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972910
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよび燃料電池システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20211111BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20211111BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20211111BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/2475
   H01M8/04 J
   !H01M8/12 101
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-205272(P2017-205272)
(22)【出願日】2017年10月24日
(65)【公開番号】特開2019-79678(P2019-79678A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 孝忠
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−091004(JP,A)
【文献】 特開2007−329079(JP,A)
【文献】 特開2010−272288(JP,A)
【文献】 特開2012−028182(JP,A)
【文献】 特開2007−087784(JP,A)
【文献】 特開2007−103194(JP,A)
【文献】 特開2012−234745(JP,A)
【文献】 特開2013−191315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスおよび酸化剤ガスで発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池を含む高温領域を取り囲むように設けられた断熱材と、
前記断熱材を収容し、前記断熱材の外部に低温領域を有する筐体と、
前記低温領域に配置され、前記燃料電池の発電に用いられる機器と、
前記酸化剤ガスを前記筐体の外部から前記低温領域に導入する酸化剤ガス導入路と、
前記低温領域に導入された前記酸化剤ガスを前記断熱材の内部に導入して前記燃料電池に供給する酸化剤ガス供給路と、
前記酸化剤ガス導入路に配置された酸化剤ガス導入装置と、
前記低温領域における前記酸化剤ガス供給路に配置され、前記低温領域に導入された前記酸化剤ガスを吸入する酸化剤ガス吸入装置と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記酸化剤ガス導入装置は、前記筐体の外部に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記酸化剤ガス導入装置は、前記筐体の内部の前記低温領域に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記断熱材の周囲と前記筐体の内面との間に前記低温領域と連続する空間が形成される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記機器は、前記低温領域に位置する前記酸化剤ガス導入路の開口部、または前記低温領域に位置する前記酸化剤ガス供給路の開口部の近傍に配置される、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記機器は、前記低温領域における前記酸化剤ガス導入路の吹き出し方向の延長線上、または前記低温領域における前記酸化剤ガス供給路の吸い込み方向の延長線上に配置される、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記低温領域における前記酸化剤ガス導入路の開口部に配置され、前記低温領域に導入された前記酸化剤ガスの流れ方向を変更する流路変更手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項8】
燃料ガスおよび酸化剤ガスで発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池を含む高温領域を取り囲むように設けられた断熱材と、
前記断熱材を収容し、前記断熱材の外部に低温領域を有する筐体と、
前記低温領域に配置され、前記燃料電池の発電に用いられる機器と、
前記低温領域に導入された前記酸化剤ガスを前記断熱材の内部に導入して前記燃料電池に供給する酸化剤ガス供給路と、
を備えた燃料電池システムの制御方法であって、
酸化剤ガス導入装置を用いて前記酸化剤ガスを前記筐体の外部から前記低温領域に導入し、
前記低温領域に導入された前記酸化剤ガスを前記断熱材の内部に導入して前記燃料電池に供給し、
前記低温領域における前記酸化剤ガス供給路に配置された酸化剤ガス吸入装置を用いて前記低温領域に導入された前記酸化剤ガスを吸入する、
ことを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムおよび燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)や溶融炭酸塩形燃料電池等の比較的高温で動作する燃料電池を備えた燃料電池システムのハウジング内部において、外部への放熱を抑制すべく、燃料電池と、燃料電池の運転に用いる改質装置等の周辺装置とを含む燃料電池モジュール等を断熱材で囲んだ高温領域と、燃料電池の運転に要する電気部品等が配置される低温領域とが存在する。
【0003】
ここで、上記のハウジングは、一定の気密性能を有しているため、高温領域からの伝熱により低温領域が昇温する。このため、低温領域に配置された電気部品等には所定の耐熱性能が求められる。求められる耐熱性能が満たせない場合は、低温領域の昇温を抑制するための冷却装置等が必要になる。
【0004】
例えば、国際公開2012−128368には、燃料電池及び改質装置を含む燃料電池モジュールを断熱材に収容した燃料電池システムの一例が提案されている。この燃料電池システムでは、ハウジング内において、断熱材の周囲に低温領域と区画された空間を設け、その空間に空気を流すことにより高温領域から低温領域への伝熱を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2012−128368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、ハウジング内において、断熱材と低温領域との間に空気を流すための空間を設けるので、ハウジング内の構造が複雑になり、製造コストが増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、製造コストの増加を抑制しつつ、より簡素な構成により、高温領域からの伝熱によって低温領域が昇温することを抑制できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による燃料電池システムによれば、燃料ガスおよび酸化剤ガスで発電を行う燃料電池と、燃料電池を含む高温領域を取り囲むように設けられた断熱材と、断熱材を収容し、断熱材の外部に低温領域を有する筐体とを備える。そして、燃料電池システムはさらに、低温領域に配置され、燃料電池の発電に用いられる機器と、酸化剤ガスを筐体の外部から低温領域に導入する酸化剤ガス導入路と、低温領域に導入された酸化剤ガスを断熱材の内部に導入して燃料電池に供給する酸化剤ガス供給路と、酸化剤ガス導入路に配置された酸化剤ガス導入装置と、低温領域における酸化剤ガス供給路に配置され、低温領域に導入された酸化剤ガスを吸入する酸化剤ガス吸入装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸化剤ガス導入路の開口部と、酸化剤ガス供給路の開口部とを低温領域に配置するだけの簡素な構成により空気の流れを形成するので、製造コストの増加を抑制しつつ、高温領域からの伝熱によって低温領域が昇温することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図2図2は、第2実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図3図3は、第3実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図4A図4Aは、第4実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図4B図4Bは、図4Aで示した第4実施形態に係る燃料電池システムの変形例を示す概略構成図である。
図4C図4Cは、図4A、Bで示した第4実施形態に係る燃料電池システムの変形例を示す概略構成図である。
図4D図4Dは、図4A〜Cで示した第4実施形態に係る燃料電池システムの変形例を示す概略構成図である。
図4E図4Eは、図4A〜Dで示した第4実施形態に係る燃料電池システムの変形例を示す概略構成図である。
図5A図5Aは、第5実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図5B図5Bは、図5Aで示した第5実施形態に係る燃料電池システムの変形例を示す概略構成図である。
図6A図6Aは、第6実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図6B図6Bは、図6Aで示した第6実施形態に係る燃料電池システムの変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
−第1実施形態−
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システム100の概略構成図である。
【0012】
本実施形態に係る燃料電池システム100は例えば車両等に搭載される。図示するように、燃料電池システム100は、燃料電池スタック1と、燃料電池1が発電するために必要な補機類2と、空気導入路3と、ブロア4と、空気供給路5と、燃料供給路6と、電気通路7と、排気管8と、筐体9とを含んで構成される。なお、図示する各構成はあくまでも概略図であって、各構成の形状や上下左右の方向を特定する趣旨ではない。
【0013】
燃料電池スタック1(以下、単に「燃料電池1」という)は、複数の燃料電池または燃料電池の単位セルを積層して構成される。本実施形態では、発電源である燃料電池を構成する単位セルは、固体酸化物形燃料電池(SOFF:Solid Oxide Fuel Cell)である。すなわち、燃料電池1は、例えば、800℃〜1000℃の好適な作動温度で燃料及び酸化剤(空気)の供給を受けて発電を行う。
【0014】
補機類2は、燃料電池1が発電するために必要となる機器類のうち、発電時に加熱する、あるいは加熱される機器類である。具体的には、本実施形態の補機類2は、例えば蒸発器、熱交換器、改質器、燃焼器(排気燃焼器)等を含む。
【0015】
蒸発器は、燃料供給路6に設けられ、燃料供給路6を介して供給された燃料を気化させ、熱交換器に供給する。なお、蒸発器は、後述する排気燃焼器から排出される排気の熱を利用して燃料を気化させる。
【0016】
熱交換器は、空気供給路5、および燃料供給路6にそれぞれ設けられる。空気供給路5に設けられる熱交換器は、排気燃焼器から排出される排気の熱を利用して空気を加熱する。燃料供給路6に設けられる熱交換器は、蒸発器よりも下流側において排気燃焼器と隣接して配置され、排気燃焼器から伝熱してくる熱を利用して、蒸発器において気化した燃料をさらに加熱する。
【0017】
改質器は、図示しない燃料タンク等の燃料貯留部から燃料供給路6を介して供給される改質前の燃料を、改質用触媒によって燃料電池1の発電に用いるために適切な状態の燃料ガスに改質する。改質器で改質された燃料は、燃料電池1に供給され、発電に利用される。
【0018】
排気燃焼器は、不図示の排出通路を介して燃料電池1から排出されるアノードオフガスとカソードオフガスを触媒燃焼させ、二酸化炭素や水を主成分とする燃焼ガス(排気ガス)を生成する。なお、上述のとおり、排気燃焼器は熱交換器と隣接する様に配置されるため、排気燃焼器の触媒燃焼による熱は熱交換器に伝熱され、伝熱された熱は燃料を加熱するために利用される。排気燃焼器で生成された排気ガスは、排気管8を介して筐体9の外部へ排出される。
【0019】
以上が補機類2の具体例である。燃料電池1および補機類2は、上述のとおり高い熱を発するので、外部への放熱を抑制するために断熱材10の内部に収容される。換言すると、断熱材10は、燃料電池1および補機類2の放熱を抑制するために、燃料電池1および補機類2を取り囲むように設けられる。なお、図1における断熱材10は矩形形状であるが、実際の形状はこれに限られない。燃料電池1および補機類2を取り囲むように設けられる限り、断熱材10の形状は特に限定されない。
【0020】
断熱材10は、例えばシリカ系セラミックス等の断熱材料で構成される。断熱材10が筐体9の内部において燃料電池1および補機類2を取り囲むように設けられることにより、燃料電池1および補機類2の熱が外部へ放熱するのを抑制することができる。この断熱材10で取り囲まれた領域を以下では「高温領域H」と称する。
【0021】
一方で、筐体9の内部における断熱材10の外側の領域を、以下では「低温領域L」と称する。すなわち、本実施形態の燃料電池システム100が備える筐体9は、断熱材10により区画された高温領域Hと低温領域Lとを有している。筐体9は、燃料電池システム100のハウジングであって、例えば、ステンレス又はステンレスに類する熱伝導率および水密性を有する所望の金属材料により形成される。なお、本実施形態の筐体9は、断熱材10を構成する材料よりも高い熱伝導率を有する材料で構成されることが好ましい。これにより低温領域を低温に維持できる。
【0022】
空気導入路3は、筐体9の外部から筐体9の内部に空気(酸化剤ガス、カソードガス)を導入するための通路(例えば配管)である。空気導入路3の筐体9の内部側の開口部3a(導入開口部3a)は、低温領域Lに配置される。
【0023】
また、空気導入路3は、空気導入装置としてのブロア4を備える、本実施形態のブロア4は、筐体9の外部に配置される。これにより、筐体9の外気を空気導入路3を介して筐体9内に積極的に導入することができる。ここで、筐体9は、通常常温領域に設置されるので、筐体9の近傍の外気は、断熱材10の内部(高温領域H)の温度よりも低い。このため、筐体9の外気が筐体9の内部に導入されることにより、筐体9の内部の温度を高温領域Hよりも低くすることができる。
【0024】
すなわち、ブロア4を用いて筐体9の外気を一定の気密性を有する筐体9の内部に空気導入路3を介して導入することにより、筐体9の内部における断熱材10の外側の領域(低温領域L)を、高温領域Hよりも温度の低い状態に保つことができる。また、ブロア4を用いることにより、筐体9内に導入する空気量を増加させることができるので、低温領域Lの冷却効果を高めることができるとともに、後述する空気供給路5を介して燃料電池1に供給される空気量を増加させることができる。
【0025】
またさらに、ブロア4を用いて筐体9へ導入する空気量を増加させることにより、筐体9の内部を加圧し、大気圧よりも高い正圧にすることができるので、筐体9の外部から内部へ水や埃等が侵入し難くし、筐体9の水密性をより向上させることができる。なお、空気導入手段としては、ブロアに限らず、ファンやコンプレッサ等でもよい。
【0026】
空気供給路5は、筐体9の外部から空気導入路3を介して導入された低温領域L内の空気を断熱材10内に導入するとともに、補機類2(熱交換器等)を介して燃料電池1に供給するための通路である。そのため、空気供給路5の断熱材10の外側の開口部5a(供給開口部5a)は、低温領域Lに配置される。また、空気供給路5は、空気を燃料電池1へ供給するために必要な空気供給用部品5cを備える。空気供給用部品5cは、例えば空気の流量を調整するバルブ等である。空気供給用部品5cは、低温領域Lに配置される。
【0027】
燃料供給路6は、筐体9の外部に設けられた不図示の燃料タンクに貯蔵された燃料を筐体9内の低温領域Lを通して断熱材10内に導入するとともに、補機類2(蒸発器、改質器等)を介して燃料電池1に供給するための通路である。また、燃料供給路6は、燃料を燃料電池1へ供給するために必要な燃料供給用部品6cを備える。燃料供給用部品6cは、例えば燃焼器に燃料を供給するためのインジェクタ等である。燃料供給用部品6cは、低温領域Lに配置される。
【0028】
電気通路7は、筐体9の外部に設けられた不図示の電源からの電気を燃料電池1および補機類2に供給するための電源線、および、燃料電池1および補機類2を制御するための制御信号を送信するための信号線などが通るための通路である。また、電気通路7には、燃料電池1および補機類2を動作させ、制御するために必要な電気部品(電装品)7cを備える。電気部品7cは、例えば燃料電池システムを統括するコントローラや、電力を変換するためのインバータ等である。電気部品7cは、低温領域Lに配置される。
【0029】
なお、上記の空気供給用部品5c、燃料供給用部品6c、および電気部品7cも燃料電池1の発電に用いられる機器であるため、一般的にはいわゆる「補機類」に含まれる。しかしながら、空気供給用部品5c、燃料供給用部品6c、および電気部品7c等の低温領域Lに配置される機器は、低温ないし常温であることが望ましく、加熱を要求されないので、本明細書における「補機類2」には含まれない。また、本実施形態における低温領域Lに配置される機器は、空気供給用部品5c、燃料供給用部品6c、および電気部品7cの少なくとも一つ以上であればよい。
【0030】
また、図示しないが、筐体9において空気供給路5、燃料供給路6、および電気通路7が通る孔には、筐体9の気密性あるいは水密性を高めるためのシール材が設けられていてもよい。シール材は、例えば、車両用のリップパッキン、スクィーズドパッキン(Oリング)、又はガスケット等である。
【0031】
上述のとおり、低温領域Lには、筐体9の外部から高温領域Hよりも低い低温の空気が導入され、導入された空気は、供給開口部5aまで流れて断熱材10の内部に配置された燃料電池1へ供給される。すなわち、低温領域Lでは、上記文献に開示されたような構造よりも簡素な構成によって、導入開口部3aから供給開口部5aまでの低温な空気の流れが形成される。
【0032】
また、上記文献に開示された構造では、断熱材の周囲に空気を流すための空間を設けているが、当該空間の構造的な複雑さに起因する圧力損失により空気の流れが妨げられる場合があった。しかしながら、本実施形態では、低温領域Lにおいて導入開口部3aと供給開口部5aとを配置するだけの簡素な構成により空気の流れを形成しているので、従来のような圧力損失が生じることによって空気の流れが妨げられることがない。
【0033】
そして、筐体9の内部に導入された低温の空気は、低温領域Lに配置された空気供給用部品5c、燃料供給用部品6c、および、電気部品7c(以下これらをまとめて「内部部品」という)と、断熱材10の外表面の少なくとも一部と接して熱交換し、それらの温度を低下させることができる。このように、本実施形態の燃料電池システム100は、従来に比べて簡素な構成により低温領域Lでの低温な空気の流れを形成することによって、製造コストを増加させることなく、高温領域Hから内部部品等への伝熱を抑制するとともに、内部部品を冷却することができる。
【0034】
以上、第1実施形態の燃料電池システム100によれば、燃料ガスおよび酸化剤ガスで発電を行う燃料電池1と、燃料電池1を含む高温領域Hを取り囲むように設けられた断熱材10と、断熱材10を収容し、断熱材10の外部に低温領域Lを有する筐体9と、低温領域Lに配置され、燃料電池1の発電に用いられる機器と、酸化剤ガスを筐体9の外部から低温領域Lに導入する酸化剤ガス導入路(空気導入路3)と、低温領域Lに導入された酸化剤ガスを断熱材10の内部に導入して燃料電池1に供給する酸化剤ガス供給路(空気供給路5)と、酸化剤ガス導入路(空気導入路3)に配置された酸化剤ガス導入装置(ブロア4)と、を備える。これにより、空気導入路3の導入開口部3aと、空気供給路5の供給開口部5aとを低温領域Lに配置するだけの簡素な構成により空気の流れを形成するので、製造コストの増加を抑制しつつ、高温領域Hからの伝熱によって低温領域Lが昇温することを抑制することができる。
【0035】
また、第1実施形態の燃料電池システムによれば、酸化剤ガス導入装置としてのブロア4は、筐体9の外部に配置される。これにより、ブロア4により筐体9の内部スペースが狭められないので、筐体9内のレイアウト性を向上することができる。または、筐体9をより小型化することができる。
【0036】
−第2実施形態−
以下、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
図2は、第2実施形態の燃料電池システム200を説明する概略構成図である。燃料電池システム200が燃料電池システム100と異なる点は、ブロア4の配置である。
【0038】
図示するとおり、本実施形態のブロア4は、筐体9の内部の低温領域Lに配置される。これにより、ブロア4が筐体9の外部に配置されることにより外部環境にさらされる場合に比べて、ブロア4の防水性を向上させることができる。結果として、ブロア4が雨などによって濡れることを防止するための防水構造等を別個に設ける必要がなくなるので、燃料電池システム200の構造を複雑化させることなく、燃料電池システム200全体の防水性を向上させることができる。
【0039】
以上、第2実施形態の燃料電池システム200によれば、ブロア4は、筐体9の内部には配置される。これにより、燃料電池システム200の構造を複雑化させることなく、燃料電池システム200全体の防水性を向上させることができる。
【0040】
−第3実施形態−
以下、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
図3は、第3実施形態の燃料電池システム300を説明する概略構成図である。燃料電池システム300が燃料電池システム100、200と異なる点は、筐体9の内部における断熱材10の配置に以下の限定を加えた点である。
【0042】
すなわち、燃料電池システム300に係る断熱材10は、断熱材10の周囲と筐体9の内面との間に、低温領域Lと連続(連通)する空間が形成されるように設けられる。ここでの「断熱材10の周囲」とは、断熱材10の接地面(重力方向における下側の面)以外の面、または、接地面も含む全面である。なお、「断熱材10の周囲」を接地面も含む全面とする場合は、例えば、接地面にスペーサ等の空間確保用部材を設ける、あるいは断熱材10を筐体9の内部において上からつるし接地面を浮かせる等することで、接地面と筐体9との間において低温領域Lと連続する空間を確保することができる。
【0043】
これにより、断熱材10の外面と低温領域Lとの接触面をより広くすることができるので、断熱材10の外面の温度をより低下させることができる。結果として、高温領域Hから内部部品等への伝熱をより抑制することができるとともに、内部部品をより効率的に冷却することができる。
【0044】
以上、第3実施形態の燃料電池システム300によれば、断熱材10の周囲と筐体9の内面との間に低温領域Lと連続する空間が形成される。これにより、低温領域Lの空気と断熱材10の外面との接触面をより広くすることができるので、断熱材10の外面の温度をより低下させることができる。
【0045】
−第4実施形態−
以下、第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
図4A図4Eは、第4実施形態の燃料電池システム400を説明する概略構成図である。燃料電池システム400が燃料電池システム100〜300と異なる点は、導入開口部3a、供給開口部5a、燃料供給用部品6c、および電気部品7cの配置関係に以下の限定を加えた点である。なお、以下では、燃料供給用部品6cと、電気部品7cとをまとめて「被冷却部品」とも称する。
【0047】
本実施形態に係る被冷却部品は、導入開口部3aの近傍、または、供給開口部5aの近傍、もしくは、導入開口部3aおよび供給開口部5aにおけるそれぞれの空気の流れ方向の延長線上に配置される。
【0048】
図4A、4Bは、被冷却部品が導入開口部3aの近傍に配置された燃料電池システム400を示す概略構成図である。図4Aではブロア4が筐体9の外部に配置されており、図4Bではブロア4が筐体9の内部に配置されている。
【0049】
図示するとおり、被冷却部品が導入開口部3aの吹き出し口の近く、もしくは空気導入路3の導入開口部3aから吹出される空気の流れ方向(吹き出し方向)に沿って延びる延長線上に配置されると、被冷却部品の表面を流れる空気量が増加する(図中の点線矢印参照)。その結果、被冷却部品の表面と空気との熱交換がより効率よく行われるので、被冷却部品をより効果的に冷却することができる。なお、同図における被冷却部品は、導入開口部3aに近い順に、電気部品7c、燃料供給用部品6cと配置されているが、逆の配置であってもよい。また、駆動中により温度が高くなる部品、あるいは耐熱性能がより低い部品が導入開口部3aにより近づくように配置してもよい。
【0050】
図4C図4Dは、被冷却部品が供給開口部5aの近傍に配置された燃料電池システム400を示す概略構成図である。図4Cではブロア4が筐体9の外部に配置されており、図4Bではブロア4が筐体9の内部に配置されている。
【0051】
図示するとおり、被冷却部品が供給開口部5aの吸い込み口の近く、もしくは空気供給路5の供給開口部5aから吸入される空気の流れ方向(吸い込み方向)に沿って延びる延長線上に配置されると、被冷却部品の表面を流れる空気量が増加する(図中の点線矢印参照)。その結果、被冷却部品の表面と空気との熱交換が効率よく行われるので、被冷却部品を効果的に冷却することができる。なお、同図における被冷却部品は、供給開口部5aに近い順に、燃料供給用部品6c、電気部品7cと配置されているが、逆の配置であってもよい。また、駆動中により温度が高くなる部品、あるいは耐熱性能がより低い部品を供給開口部5aにより近づくように配置してもよい。なお、導入開口部3aと供給開口部5aとを結ぶ線上に配置されるのであれば、燃料供給用部品6cおよび電気部品7cのいずれか一方が導入開口部3aおよび供給開口部5aのいずれか一方に近づくように配置される必要は必ずしもなく、それぞれ均等な距離に配置されてもよい。
【0052】
また、図4Eで示すように、導入開口部3aと供給開口部5aとを、その開口面が向かい合うように構成するとともに、被冷却部品を導入開口部3aと供給開口部5aとを結ぶ直線上に配置してもよい。このように配置することにより、被冷却部品全体の表面を流れる空気量がより増加するので(図中の点線矢印参照)、被冷却部品の表面と空気との熱交換がより効率よく行われ、被冷却部品を効果的に冷却することができる。
【0053】
以上、第4実施形態の燃料電池システム400によれば、被冷却部品は、低温領域Lに位置する導入開口部3a、または低温領域Lに位置する供給開口部5aの近傍に配置される。これにより、被冷却部品の表面を流れる空気量が増加するので、被冷却部品の表面と空気との熱交換がより効率よく行われ、被冷却部品をより効果的に冷却することができる。
【0054】
また、第4実施形態の燃料電池システム400によれば、低温領域Lにおける導入開口部3aの吹き出し方向の延長線上、または低温領域Lにおける供給開口部5aの吸い込み方向の延長線上に配置される。これにより、被冷却部品の表面を流れる空気量が増加するので、被冷却部品の表面と空気との熱交換がより効率よく行われ、被冷却部品をより効果的に冷却することができる。
【0055】
−第5実施形態−
以下、第5実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
図5A図5Bは、第5実施形態の燃料電池システム500を説明する概略構成図である。燃料電池システム500が燃料電池システム100〜400と異なる点は、導入開口部3aに空気の流れ方向を変更するためのスワラ11をさらに設けた点である。
【0057】
図5Aではブロア4が筐体9の外部に配置されており、図5Bではブロア4が筐体9の内部に配置されている。いずれの態様であっても、導入開口部5aにスワラ11を備えることにより、導入開口部5aから吹出される空気の流れ方向、および、流量を制御することができる。これにより、被冷却部品に対する空気の流れ方向および流量を適切に調整することができるので、被冷却部品に対する冷却効果を向上させることができる。
【0058】
また、スワラ11によって導入開口部5aからの空気の流れ方向を制御することができるので、被冷却部品の配置、空気導入路3の設置場所、および、導入開口部5aの開口面を向ける方向等のレイアウトに関する自由度を向上させることができる。
【0059】
なお、空気の流れ方向を変更する手段としては、スワラ11に限らず、プロペラやノズル等であってもよい。
【0060】
以上、第5実施形態の燃料電池システム500は、低温領域Lにおける導入開口部3aに配置され、低温領域Lに導入された空気の流れ方向を変更するスワラ11をさらに備える。これにより、被冷却部品に対する空気の流れ方向および流量を適切に調整することができるので、被冷却部品に対する冷却効果を向上させることができる。
【0061】
−第6実施形態−
以下、第6実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
図6A図6Bは、第6実施形態の燃料電池システム600を説明する概略構成図である。燃料電池システム600が燃料電池システム100〜500と異なる点は、低温領域Lにおける空気供給路5に、低温領域Lの空気を積極的に吸入するための空気吸入手段をさらに設けた点である。
【0063】
図6Aは、空気吸入装置としてブロア12を設けた燃料電池システム600を説明する概略構成図である。空気供給路5にブロア12が設けられることにより、空気供給路5に吸入される低温領域Lの空気量を増加させることができる。これにより、燃料電池1への空気供給量を増加させることができる。また、低温領域Lを流れる空気の量あるいは速さを増加させることができるので、内部部品の冷却効果を向上させることができる。
【0064】
また、ブロア12によって空気供給路5へ吸引される空気量を増加させることによって、筐体9内における低温領域Lの圧力を低くすることができる。その結果、ブロア12を備えず、筐体9の内部が強い正圧状態となり得る場合と比べて、筐体9の耐圧性能を軽減し、シール構造を簡素化することができる。これにより、筐体9をより軽量化することができるとともに、筐体9の製造コストを低減することができる。
【0065】
図6Bは、空気吸入装置としてジェットポンプ13を設けた燃料電池システム600を説明する概略構成図である。空気供給手段としてジェットポンプ13を用いる場合は、ジェットポンプ13は、図示するとおり、空気導入路3と空気供給路5とに接続される。そして、ジェットポンプ13は、空気導入路3からジェットポンプ13を介して空気供給路5へ空気が流れる際に、いわゆるベンチュリ効果によって低温領域Lの空気を吸入する。これにより、ブロア12と同様、空気供給路5に吸入される低温領域Lの空気量を増加させることができる。
【0066】
以上、第6実施形態の燃料電池システム600によれば、低温領域Lにおける空気供給路5に配置され、低温領域Lに導入された空気を吸入する吸入手段(ブロア12、またはジェットポンプ13)をさらに備える。これにより、低温領域Lを流れる空気の量あるいは速さを増加させることができるので、内部部品の冷却効果を向上させることができる。
【0067】
以上が、本発明が適用される各実施形態の詳細である。ただし、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。上記実施形態に対し、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で様々な変更及び修正が可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態では、燃料電池1が固体酸化物形燃料電池により構成される例を説明した。しかしながら、燃料電池1は、固体高分子形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、又はりん酸形燃料電池等の作動時に発熱を伴う他の種類の燃料電池により構成してもよい。
【0069】
なお、上記の各実施形態は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…燃料電池
2…補機類
3…酸化剤ガス導入路(空気導入路)
3a…開口部(導入開口部)
4…酸化剤ガス導入装置(ブロア)
5…酸化剤ガス供給路(空気供給路)
5a…開口部(供給開口部)
7c…機器(電気部品)
9…筐体
10…断熱材
11…流路変更手段(スワラ)
12…酸化剤ガス吸入装置(ブロア)
13…酸化剤ガス吸入装置(ジェットポンプ)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B