【実施例】
【0066】
以下に実施例をあげて本発明の具体例を示すが、以下は本発明における実施態様のごく一例を示すものであり、本発明は以下実施例に限定されるものではない。なお、各例中の「部」は質量部あるいは質量%を表す。
【0067】
(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mn)
重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnは、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製HLC−8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW2500
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW3000
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW4000
東ソー株式会社製 TSKgel guardcolumn SuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0068】
(ガラス転移温度(Tg))
ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定測定)により求めた。なお、測定機は株式会社リガク社製 DSC8231を使用し、測定温度範囲−50〜250℃、昇温速度10℃/分、DSC曲線におけるガラス転移に基づくベースライン変化の変曲点をガラス転移温度とした。
【0069】
(酸価)
酸価は、JISK0070に従って測定し、固形分における値とした。
(粘度)
粘度はJISK7117−1:1999に従って測定した。(単位:mPa・s)
【0070】
<合成例1>(アクリル樹脂A溶液)
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル(モノマーTg105℃)29部、およびメタクリル酸ブチル(モノマーTg=20℃)71部、アクリル酸(モノマーTg=106℃)0部の組成比、および酢酸n−プロピル125部、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.5部を混合して、窒素気流下、85℃の温度で6時間反応させたのち、追加で2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.5部を加えて更に1時間反応させた。反応終了後、酢酸n−プロピルを125部加えて固形分を40%とした。
得られたアクリル樹脂Aは重量平均分子量(Mw)130000、分子量分布(Mw/Mn)1.2、Tg40℃、酸価0mgKOH/gであった。
【0071】
<合成例2〜10>(アクリル樹脂B溶液〜J溶液)
合成例1と同様の方法でアクリル樹脂B〜Jを合成した。なお使用したモノマーおよび性状は以下に示した。
・アクリル樹脂B溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=29/71/0(質量比)重量平均分子量130000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg40℃、酸価0mgKOH/g
・アクリル樹脂C溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=29/71/0(質量比)重量平均分子量130000、分子量分布(Mw/Mn)=3.0、Tg40℃、酸価0mgKOH/g
・アクリル樹脂D溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=29/71/0(質量比)重量平均分子量13000、分子量分布(Mw/Mn)=4.0、Tg40℃、酸価0mgKOH/g
・アクリル樹脂E溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=28.4/71/0.6(質量比) 重量平均分子量130000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg40℃、酸価 4.7mgKOH/g
・アクリル樹脂F溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=27.8/71/1.2(質量比) 重量平均分子量130000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg40℃、酸価 9.3mgKOH/g
・アクリル樹脂G溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=75/25/0(質量比)
重量平均分子量50000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg80℃、酸価 0mgKOH/g
・アクリル樹脂H溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/メタクリル酸2-ヒドロキシエチル=70/20/10(質量比) 重量平均分子量70000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg70℃、酸価 0mgKOH/g
・アクリル樹脂I溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸シクロヘキシル=43/42/15(質量比)重量平均分子量160000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg50℃、酸価 0mgKOH/g
・アクリル樹脂J溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸ブチル=55/30/15(質量比)重量平均分子量180000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg43℃、酸価 0mgKOH/g
【0072】
(実施例1)グラビアインキS1の作成
アクリル樹脂A(固形分40%酢酸エチル溶液)40部、セルロース樹脂であるCAB−381−2(イーストマンケミカル社製 セルロースアセテートブチレート Tg133℃ 重量平均分子量40,000)の固形分40%IPA溶液10部、顔料(体質顔料)としてシリカ(水澤化学工業社製 ミズカシルP−73 平均粒子径2.3μm)1部、酢酸エチルとIPAが6/4(質量比)の混合溶剤40部を配合してサンドミルを用いて30分間分散混合を行い、グラビアインキS1を得た。なお「IPA」とはイソプロパノールをいう。
【0073】
(実施例2〜20)グラビアインキS2〜S20の作成
表1に記載の材料と配合比率に変更した以外は、実施例1と同じ方法によりグラビアインキS2〜S20をそれぞれ得た。なお、表中の略称は以下を表す。
CAP−482−0.5:巴工業社製 セルロースアセテートプロピオネート ガラス転移温度142℃ 重量平均分子量50,000 固形分40%IPA溶液
DLX5−8:ICI Novel enterprises社製 ニトロセルロース 窒素分12.0% 固形分40%IPA溶液
酸化チタン:テイカ社製 チタニックスJR800 ルチル型酸化チタン 粒子径0.27μm
ピグメントブルー15:4:トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG4330
【0074】
<比較合成例1>(ポリウレタン樹脂PU1溶液)
フラスコに数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール313部、イソホロンジイソシアネート63部および酢酸エチル60.0部を仕込み、窒素気流下90℃で6時間反応させた。次いでイソホロンジアミン21部、酢酸エチル560.0部、IPA280.0部を添加し、固形分30%、25℃における粘度200mPa・s、重量平均分子量30,000のポリウレタン樹脂PU1を得た。
【0075】
<比較合成例2および3>(アクリル樹脂K溶液およびL溶液)
・アクリル樹脂K溶液:メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=29/71/0(質量比) 重量平均分子量50000、分子量分布(Mw/Mn)=7.0、Tg40℃、酸価0mgKOH/g
・アクリル樹脂L溶液:メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=26/71/3(質量比) 重量平均分子量130000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg40℃、酸価 20mgKOH/g
【0076】
<比較例1〜6>(グラビアインキSS1〜SS6の作成)
表2に記載の材料と配合比率に変更した以外は、実施例1〜20と同じ方法によりグラビアインキSS1〜SS6を得た。
【0077】
(実施例21)
<グラビアインキの印刷>
グラビアインキS1を混合溶剤(酢酸n−プロピル:IPA=6:4) により 、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。なお、25℃環境下でザーンカップNo.3を用いて16秒に希釈したインキ粘度は、52mPa・sであった。レーザー版深25μmのベタ版を備えたグラビア印刷機により、ポリスチレンフィルム(旭化成ケミカルズ社製 二軸延伸ポリスチレンフィルム OPS(登録商標)フィルムGM 厚み20μm)に印刷速度50m/分で印刷し、印刷物J1を得た。
【0078】
<熱ラミネート>
高発泡のポリスチレンシート(株式会社JSP製)を、室温で一日放置した印刷物T1の印刷層面を合わせ、印刷物のOPS面は厚さ12μmのポリエステルフイルムで耐熱保護した状態で、温度180℃、速度5m/分の条件で熱ラミネートを行った。その後保護フィルムである前記ポリエステルフイルムを除いて積層体U1を得た。
【0079】
(実施例22〜40)
表1に記載のグラビアインキS2〜S20を用いた以外は、実施例21と同様の方法で印刷物J2〜J20および積層体U2〜U20を得た。
【0080】
(比較例7〜12)
表2に記載のグラビアインキSS1〜SS6を用いた以外は、実施例21と同様の方法で印刷物JJ1〜JJ6および積層体UU1〜UU6を得た。
【0081】
[物性評価]
得られたグラビアインキS1〜S20(実施例)およびSS1〜SS6(比較例)、印刷物J1〜J20(実施例)およびJJ1〜JJ6(比較例)、積層体U1〜U20(実施例)およびUU1〜UU6(比較例)を用いて以下の特性評価を行い、表3および表4に結果を示した。
【0082】
<グラビアインキの保存安定性>
グラビアインキS1〜S20(実施例)およびSS1〜SS6(比較例)を用いて40℃下で7日間放置し、経過時間による粘度測定データを離合社製ザーンカップで測定し、インキの仕上り直後と経過時間後の粘度の差からインキの保存安定性の評価を行った。
[評価基準]
5:経時粘度変化が仕上がり直後の1.2倍未満であるもの。(良好)
4:経時粘度変化が仕上がり直後の1.2〜1.5倍であるもの。(実用可)
3:経時粘度変化が仕上がり直後の1.5倍〜2倍程度であるもの。(やや不良)
2:経時粘度変化が仕上がり直後の2倍以上であるもの。(不良)
1:分離・沈殿・分離を起こしているもの。(極めて不良)
なお、実用上支障のない評価は5または4である。
【0083】
<耐ブロッキング性>
印刷物J1〜JJ20(実施例)およびJJ1〜JJ6(比較例)を同じ大きさに切ったそれぞれの印刷物の印刷層と印刷していないポリスチレン基材層とを重ね合わせて、0.5kg/cm
2の荷重をかけ、40℃、80%RHの雰囲気で24時間放置後に引き剥がし、インキの剥離の程度から耐ブロッキング性を評価した。
[評価基準]
5:インキが全く剥離しなかったもの。(良好)
4:インキが剥離した面積が20%未満のもの。(実用可)
3:インキが剥離した面積が20以上50%未満のもの。(やや不良)
2:インキが剥離した面積が50以上〜75%未満のもの。(不良)
1:インキが剥離した面積が75%以上剥離したのものまたは印刷層とポリスチレン基材層とが密着一体化して剥離不可能であるもの。(極めて不良)
なお、実用上支障のない評価は5または4である。
【0084】
<耐薬品性>
印刷物J1〜J20(実施例)およびJJ1〜JJ6(比較例)について、NaOH1.5質量%水溶液を常温で滴下して40℃で24時間放置後、目視にて剥離を評価した。
[評価基準]
5:剥離しない。(良好)
4:面積5%未満剥離する。(実用可)
3:面積5%以上15%未満剥離する。(やや不良)
2:面積15%以上30%未満剥離する。(不良)
1:面積30%以上剥離する。(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0085】
<室温(25℃)でのラミネート強度>
印刷物J1〜J20(実施例)JJ1〜JJ6(比較例)について、テスター産業株式会社製のSA1010小型卓上テストラミネーターを使用し、印刷物の印刷面に発泡ポリスチレンシート(JSP社製 厚み3mmの発泡ポリスチレンシート)を貼りあわせて、ラミネート積層体を作成した。作成したラミネート積層体について、ポリスチレンフィルム/インキ層で剥離させ、株式会社インテスコ製の201引張試験機を使用して、25℃の環境下にてラミネート強度を測定した。
(ラミネート条件)
温度:140℃ 荷重圧:0.05MPa
[評価基準]
5:ラミネート強度が500g/25mm以上である。(良好)
4:ラミネート強度が400g/25mm以上500g/25mm未満である。(実用可)
3:ラミネート強度が300g/25mm以上400g/25mm未満である。(やや不良)
2:ラミネート強度が200g/25mm以上300g/25mm未満である。(不良)
1:ラミネート強度が200g/25mm未満である。(極めて不良)
なお、実用上支障のない評価は5または4である。
【0086】
<高温環境(60℃)でのラミネート強度>
印刷物J1〜J20(実施例)JJ1〜JJ6(比較例)について、テスター産業株式会社製のSA1010小型卓上テストラミネーターを使用し、印刷物の印刷面に発泡ポリスチレンシート(JSP社製 厚み3mmの発泡ポリスチレンシート)を貼りあわせて、ラミネート積層体を作成した。作成したラミネート積層体について、ポリスチレンフィルム/インキ層で剥離させ、株式会社インテスコ製の201引張試験機を使用して、60℃の環境下にてラミネート強度を測定した。
(ラミネート条件)
温度:140℃ 荷重圧:0.05MPa
[評価基準]
5:ラミネート強度が400g/25mm以上である。(良好)
4:ラミネート強度が400g/25mm以上300g/25mm未満である。(実用可)
3:ラミネート強度が300g/25mm以上200g/25mm未満である。(やや不良)
2:ラミネート強度が200g/25mm以上100g/25mm未満である。(不良)
1:ラミネート強度が100g/25mm未満である。(極めて不良)
なお、実用上支障のない評価は5または4である。
【0087】
<成型後の外観評価>
上記ラミネート強度の評価に使用した、印刷物J1〜J20(実施例)JJ1〜JJ6(比較例)を用いた積層体について、成光産業株式会社製の真空成型機フォーミング300型を使用して印刷基材であるポリスチレンフィルム面が凹部となるように真空成型した。得られた成型物にて外観の評価を行った。なお、ラミネート積層体の外観は、印刷基材、発泡シート間の剥離によるデラミネーションの度合を評価した。
(成型条件)
温度:120℃、加工時間:20秒間 型サイズ:深さ:3cm、幅:10cm、奥行き:15cm
[評価基準]
5:層間剥離によるデラミネーションが全くない。(良好)
4:成型物の面積に対して2%未満の層間剥離によるデラミネーションが見られる。(実用可)
3:成型物の面積に対して2%以上10%未満の層間剥離によるデラミネーションが見られる。(やや不良)
2:成型物の面積に対して10%以上30%未満の層間剥離によるデラミネーションが見られる。(不良)
1:成型物の面積に対して30%以上の層間剥離によるデラミネーションが見られる。(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0088】
表3に示すように、実施例の酸価が10mgKOH/g以下かつ分子量分布(Mw/Mn)が1.2〜4であるアクリル樹脂用いたものは、要求物性を全て満たしているのに対し、比較例では、要求物性のいずれかが不良であり、全てが良好となるものは得られなかった。なお、本発明のグラビアインキは、それを使用した積層体のラミネート強度に優れ、常温におけるラミネート強度、更には高温環境でのラミネート強度に優れるため、積層体の使用される環境は幅広く産業的利用価値の高いものであることが分かった。
【0089】
本発明により、熱ラミネートでのラミネート強度が良好であり、更にラミネート強度は高温における測定でも良好であり、更に耐ブロッキング性および耐薬品性に優れ、かつ経時安定性に優れたグラビアインキを提供することができた。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】