特許第6972911号(P6972911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972911
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】グラビアインキ、それを用いた積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/106 20140101AFI20211111BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20211111BHJP
   C09D 11/08 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   C09D11/106
   B32B27/30 A
   C09D11/08
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-205360(P2017-205360)
(22)【出願日】2017年10月24日
(65)【公開番号】特開2019-77775(P2019-77775A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光人
(72)【発明者】
【氏名】胡 皓
(72)【発明者】
【氏名】野田 倫弘
(72)【発明者】
【氏名】永田 研人
【審査官】 宮地 慧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−213108(JP,A)
【文献】 特開2017−186500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B32B
B41M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材1、印刷層、基材2をこの順に有する積層体の、前記印刷層を形成するためのグラビアインキであって、
前記積層体が、包装容器または包装袋に用いられるものであり、
前記グラビアインキが、アクリル樹脂を含有するバインダー樹脂および有機溶剤を含み、前記アクリル樹脂の酸価が、10mgKOH/g以下であり、かつ、前記アクリル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が、1.2〜4であることを特徴とするグラビアインキ。
【請求項2】
アクリル樹脂が、アクリル樹脂総量中に、アルキルメタクリレートおよび/またはアルキルアクリレートに由来する構成単位を、5〜95質量%含有することを特徴とする、請求項1に記載のグラビアインキ。
【請求項3】
25℃における粘度が、50〜500mPa・sであることを特徴とする、請求項1または2に記載のグラビアインキ。
【請求項4】
バインダー樹脂が、更にセルロース系樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のグラビアインキ。
【請求項5】
アクリル樹脂の重量平均分子量が、20,000〜300,000であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のグラビアインキ。
【請求項6】
更に顔料を含み、前記顔料は、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウムおよび沈降性バリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の体質顔料を含有する、請求項1〜5いずれかに記載のグラビアインキ。
【請求項7】
基材1および/または基材2が、ポリスチレン基材であることを特徴とする、請求項1〜いずれかに記載のグラビアインキ。
【請求項8】
基材1、請求項1〜いずれかに記載のグラビアインキからなる印刷層、基材2をこの順に有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラビアインキ、それを用いた積層体に関する。
【0002】
より詳細には、ポリスチレンフィルムその他の各種基材に対して印刷層を形成し、更にポリスチレンシートその他の各種基材と熱圧着により積層される積層体、およびその成型物および食品用トレーに好適なグラビアインキに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、包装物には装飾や表面保護のために印刷インキにより絵柄で装飾が施されているのが一般的である。また、印刷インキの性能差による意匠性、高級感など印刷物の良し悪しによっては内容物に対する好感度や注目度、消費者の購買意欲をも左右し、産業の発展に対する寄与は大きい。
【0004】
包装物に絵柄を形成する際には印刷インキを用いて装飾が施される。食品用トレー、食品包装袋その他の包装物に用いられる基材としてはポリオレフィン系基材、ポリエステル系基材およびポリスチレン系基材その他の透明プラスチック基材が使用され、その態様としては基材が複数重なった積層体として使用される場合が多く、該印刷インキからなる印刷層(絵柄層)は当該積層体の中間層として使用される。
【0005】
例えば、惣菜容器や弁当容器などの食品用トレーは、ポリスチレンフィルムに意匠性の絵柄等を印刷し、該印刷フィルムの印刷層に対して発泡ポリスチレンシートまたは耐衝撃性に優れたポリスチレンシートを熱圧着でラミネート(以下「熱ラミネート」と略記する場合がある)して作られる。この印刷に用いられるインキとしては、アクリル樹脂やスチレン−アクリル共重合樹脂をバインダー樹脂とするグラビアインキが知られている。
【0006】
食品用トレーは惣菜容器等に食品が詰められてコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで販売されている。食品トレーを製造する過程において、ポリスチレンフィルムにグラビア印刷された印刷物とポリスチレンシートの熱ラミネートの工程があるが、印刷物に使用したインキとポリスチレンシート間のラミネート強度が不十分であれば、熱ラミネート加工時の温度や圧力の影響により、印刷物とポリスチレンシート間に気泡状の浮き部位(以下「ブリスター」と略記する)が発生し、食品トレーの外観および意匠性を損なわれる場合がある。
【0007】
ブリスターの発生を改善する方法として、フィルムに対する印刷により絵柄等の意匠を付与した後に、その上面にメジウムなどの易接着層を印刷またはコーティングする方法があり、接着強度を向上させるために様々な工夫がなされている。
【0008】
また易接着層等を使用せずに、インキからなる印刷層とポリスチレンシート間のラミネート強度を向上させようとすると、インキのバインダー樹脂であるアクリル樹脂やスチレン−アクリル共重合樹脂のガラス転移温度を調節する方法があるが、そもそも従来のインキでは基材への印刷・巻き取り時にブロッキング(インキ被膜面が接着する現象)のトラブルを起こしやすいという問題がある。一方、ブロッキングを改善するために、インキ被膜の耐ブロッキング性を向上させるためニトロセルロース樹脂を併用する方法が知られているが、アクリル樹脂等との相溶性が乏しいことからインキの保存安定性が劣り(インキ経時での分離や沈殿および粘度の上昇などによる)課題を残している。従って、インキの保存安定性が良好であり、ラミネート強度が良好であり、耐ブロッキング性が両立できるグラビアインキが求められている。
【0009】
また、包装容器や包装袋は様々な内容物を含む。内容物は酸性のもの、アルカリ性のもの、アルコールを含むもの、また油脂を含むもの等があり様々である。そのため一定の耐薬品性が必要となる。例えば、耐酸性、耐アルカリ性や耐油性など様々な使用条件に適応できるものである必要がある。
【0010】
特許文献1に記載のグラビアインキは、インキ中にブロッキングを防止する成分が含まれていないため、印刷を施したフィルム巻取り物の保管時にブロッキングし、作業性に劣る。また、特許文献2に記載のインキは、ブロッキング防止を目的としてニトロセルロース樹脂を使用しているため、アクリル樹脂との相溶性不足に起因して経時安定性不良、更にはインキ中に界面活性剤を含有しているため、それが原因となってラミネート強度が劣る。更に特許文献3ではアクリル樹脂とセルロース樹脂の分子量等制御でラミネート強度の向上を試みているが、耐酸性、耐アルカリ性その他の耐薬品性が満たされているか定かではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−285245号公報
【特許文献2】特開2000−313833号公報
【特許文献3】特開2013−213108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、熱ラミネートでのラミネート強度が良好であり、耐ブロッキング性および耐薬品性に優れ、かつ経時安定性に優れたグラビアインキを提供することを目的とする。
【0013】
より詳細には、使用態様として、食品用トレー、食品包装袋その他の包装袋に使用される積層体用のグラビアインキであって、保存安定性が良好であり、当該インキからなる印刷物の耐薬品性の良好なグラビアインキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、以下に記載のグラビアインキを用いることで上記課題を解決できることを見出して、本発明に至った。
【0015】
本発明は、基材1、印刷層、基材2をこの順に有する積層体の印刷層を形成するためのグラビアインキであって、酸価が10mgKOH/g以下かつ分子量分布(Mw/Mn)が1.2〜4であるアクリル樹脂を含有するバインダー樹脂および有機溶剤を含有することを特徴とするグラビアインキに関する。
【0016】
また、本発明は、25℃における粘度が、50〜500mPa・sであることを特徴とする、前記グラビアインキに関する。
【0017】
また、本発明は、バインダー樹脂が、更にセルロース系樹脂を含有することを特徴とする前記グラビアインキに関する。
【0018】
また、本発明は、基材1および/または基材2が、ポリスチレン基材であることを特徴とする、前記グラビアインキに関する。
【0019】
また、本発明は、基材1、前記グラビアインキからなる印刷層、基材2をこの順に有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、熱ラミネートでのラミネート強度が良好であり、耐ブロッキング性および耐薬品性に優れ、かつ経時安定性に優れたグラビアインキを提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施態様を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は実施態様のごく一例であり、本発明はその趣旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0022】
本発明は、基材1、印刷層、基材2をこの順に有する積層体の印刷層を形成するためのグラビアインキであって、顔料と、酸価が10mgKOH/g以下かつ分子量分布(Mw/Mn)が1.2〜4であるアクリル樹脂を有するバインダー樹脂と、有機溶剤とを含有することを特徴とするグラビアインキである。
【0023】
本明細書において、「アクリル樹脂」とは、アクリルモノマーを構成単位に有する重合体を意味する。また、「アクリルモノマー」とは、アクリル基またはメタクリロイル基を有するモノマーを意味し、「メタクリルおよびアクリル」を総称して「(メタ)アクリル」と略記することがある。また、「メタクリレートおよびアクリレート」を総称して「(メタ)アクリレート」と略記することがある。
【0024】
<バインダー樹脂>
本明細書においてバインダー樹脂とは有機溶剤に可溶な熱可塑性樹脂をいう。バインダー樹脂は以下に説明のアクリル樹脂を含むものであり、下記アクリル樹脂はバインダー樹脂の総量中30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。なお併用できるバインダー樹脂としては後述のセルロース系樹脂が好ましい。なお、バインダー樹脂はグラビアインキ総量中に5〜15質量%含有することが好ましい。
【0025】
<アクリル樹脂>
本発明において使用されるアクリル樹脂はバインダー樹脂中に使用され、酸価が10mgKOH/g以下で、かつ分子量分布(Mw/Mn)が1.2〜4である。
以下、アクリル樹脂を構成するアクリルモノマーについて列記する。尚、アクリルモノマーは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アクリルモノマーは以下に列記するうちで、アルキルメタクリレートおよび/またはアルキルアクリレートを含有することが好ましく、含有量としてはアクリル樹脂総量中に5〜95質量%であることが好ましい。
【0026】
アルキル(メタ)アクリレートとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどが挙げられる。これらの中でも、アルキル基の炭素数が1〜6であることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルが、基材に対して良好な密着性を得やすいという点からより好ましい。
【0027】
アクリルモノマーは、水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートを含有してもよく、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。
【0028】
アクリルモノマーは、他にカルボキシル基含有アクリルモノマー、アミド結合基含有アクリルモノマー、アミノ基含有アクリルモノマー、アルキレンオキサイド基含有アクリルモノマー、芳香環含有アクリルモノマー、エポキシ基含有アクリルモノマー、更にスチレン系モノマーなどを含有しても良い。
【0029】
カルボキシル基含有アクリルモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、p−カルボキシベンジル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性(付加モル数:2〜18)フタル酸(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルなどが挙げられる。
【0030】
アミド結合基含有アクリルモノマーとして、例えば、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0031】
アミノ基含有アクリルモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどが挙げられる。
【0032】
アルキレンオキサイド基含有アクリルモノマーとして、例えば、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0033】
芳香環含有アクリルモノマーとして、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0034】
エポキシ基含有アクリルモノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジルアクリレート、α−メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0035】
スチレン系モノマーとして、例えば、α−メチルスチレン、スチレンなどが好ましく用いられる。
【0036】
本発明において、アクリル樹脂は本発明の効果を損なわない範囲でアクリルモノマー以外に酸性モノマーを構成単位として含んで良い。例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、および2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェートなどが挙げられる。
【0037】
アクリル樹脂は、インキ被膜の耐薬品性および積層体の耐久性の維持向上の観点から、酸価が10mgKOH/g以下であることが必要である。酸価が10mgKOH/g以下であることで、インキ被膜および積層体の耐久性を更に向上することができる。酸価は5mgKOH/g以下であることがより好ましい。アクリル樹脂に酸価を付与する方法としては、カルボキシル基含有アクリルモノマー等の酸性モノマーと他のアクリルモノマーとを共重合することにより得られる。酸性モノマーとしては(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェートなどが好ましく、中でも(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。なお、アクリル樹脂が一部熱などで分解して上記酸価の範囲となっていても良い。
【0038】
アクリル樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」と記載する場合がある)は20〜100℃の範囲が好ましく、30〜90℃であることがより好ましく、35℃〜85℃であることが更に好ましい。Tgが20℃以上であればグラビアインキからなる印刷層の耐ブロッキング性が向上し、Tgが100℃以下であることにより、積層体の良好な成型性が保持できる。
【0039】
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20,000〜300,000であることが好ましい。重量平均分子量を20,000以上とすることにより、積層体の成型性とインキ被膜の表面強度を兼ね備えることができる。重量平均分子量が300,000以下であることにより、耐薬品性が良好となる。なお、重量平均分子量が70,000〜200,000であることがより好ましい。
【0040】
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である分子量分布(Mw/Mn)は、インキ被膜の耐薬品性および積層体のラミネート強度や外観が向上するため、1.2〜4である必要がある。分子量分布が該当範囲であれば、低分子量成分によりインキ被膜強度や積層体の性能を低下させることはない。なお分子量分布は1.2〜3であることが好ましく、1.2〜2.5であることがより好ましい。積層体のラミネート強度が均一・安定化して良好となるためである。尚、重量平均分子量または数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒として用いたゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレンに対する換算値をいう。
【0041】
アクリル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲とするためには、モノマー/有機溶剤比率、重合開始剤の種類、更には一定温度で反応容器に有機溶剤および重合開始剤を溶解撹拌しているところにモノマー滴下を徐々に滴下しながら重合するモノマー滴下法、または一定温度でモノマー/有機溶剤比率を撹拌しているところで重合開始剤溶液を徐々に滴下する開始剤滴下法、更にモノマー種類の選択など適宜組み合わせて合成することができる。また適宜連鎖移動剤などを組み合わせて合成しても良い。
【0042】
さらに、アクリル樹脂は、アルコール系およびエステル系の有機溶剤に溶解あるいは分散されてなる樹脂溶液を使用することが好ましい。取り扱いが容易であるからである。当該溶剤としては以下に限定されないが、アルコール系有機溶剤ではメタノールまたはエタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノールのいずれか1種またはこれらの混合溶剤であることが好ましく、エステル系有機溶剤としては酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチルなどが挙げられるが、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチルより選ばれるいずれか1種またはこれらの混合溶剤であることが好ましい。アクリル樹脂は、バインダー樹脂溶液中に固形分として5〜40質量%の範囲で含まれることが好ましい。また、グラビアインキ総量中に固形分として5〜15質量%で含まれることが好ましい。なお、本明細書において固形分とは、樹脂溶液やインキその他の組成物総量における不揮発成分の総質量%をいう。
【0043】
<セルロース系樹脂>
本発明は、さらにバインダー樹脂としてセルロース系樹脂を含有することが好ましい。セルロース系樹脂としては、例えば、ニトロセルロース(硝化綿)樹脂、カルボン酸によりエステル化されているエステル化セルロース樹脂などが挙げられる。好ましくは、エステル化セルロース樹脂である。
【0044】
エステル化セルロース系樹脂は、セルロースをカルボン酸によりエステル化することにより得られた樹脂をいう。カルボン酸としては、酢酸、酪酸、プロピオン酸、無水酢酸、無水酪酸などが挙げられる。このようなエステル化セルロース系樹脂としては、具体的には、セルロースアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート(CAB)樹脂、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)樹脂等が例示される。特に好ましくは、セルロースアセテートブチレート(CAB)樹脂、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)樹脂である。
アクリル樹脂と、CAB樹脂および/またはCAP樹脂を併用することで樹脂同士の相溶性が優れ、かつインキ被膜の強度が向上する。またポリスチレン基材への印刷に適したグラビアインキとなる。また、本発明のグラビアインキは、ポリスチレン基材に限定されず、例えば収縮フィルム用の特殊基材などの用途においても有効である。
【0045】
セルロース系樹脂は、数平均分子量が6万以下であることが好ましく、1万〜3万であることがより好ましい。数平均分子量が1万以上であれば、耐ブロッキング性が優れ、数平均分子量が6万を以下とすることで樹脂の粘度を適性に維持でき、印刷時にインキが転移しやすくなり、好ましい。
【0046】
本発明で使用されるバインダー樹脂成分の割合は、アクリル樹脂の固形分質量(W1)とセルロース系樹脂の固形分質量(W2)との比率がW1:W2=30:70〜99:1であることが好ましく、より好ましくはW1:W2=40:60〜97:3の範囲である。また、バインダー樹脂成分の総量中、アクリル樹脂およびセルロース系樹脂を合計で80質量%以上含むことが好ましく、90%以上がより好ましい。
【0047】
<その他バインダー樹脂>
また、さらにバインダー樹脂は他の樹脂を含有することが好ましい。特段限定されないが、スチレン系樹脂が挙げられる。当該スチレン系樹脂を使用する場合は、印刷グラビアインキ総量中に0.05%〜15.0%、さらには0.1%〜5%の添加量が好ましい。当該スチレン系樹脂としてはフェニル基、キシリル基を有する樹脂をいい、当該スチレン系樹脂の具体例としては、スチレン樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル樹脂、キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
また、更にポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ケトン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂等などを併用しても良い。
【0048】
<添加剤>
本発明のグラビアインキに使用できる添加剤としては、可塑剤、粘着付与剤、トラッピング剤、ワックス、硬化剤、補助樹脂などが好適に使用できる。なかでも可塑剤あるいは粘着付与剤の使用が好ましく、グラビアインキ中に添加することで、基材1と印刷層の間または印刷層と基材2の間のラミネート強度を更に向上させる傾向がある。
【0049】
可塑剤については、印刷グラビアインキ中に0.01%〜5.0%、さらには0.05%〜2%の添加量が好ましい。可塑剤の具体例としては、クエン酸エステル、フタル酸系、アジピン酸エステル系、セバシン酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、トリメリット酸系等が挙げられる。
【0050】
粘着付与剤の具体例としては、ロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂などが挙げられ、グラビアインキ総量中に0.05%〜15.0%、さらには0.1%〜5%の添加量が好ましい。
【0051】
ワックスとしては、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、パーフルオロエチレン系ワックスを好適に使用することができる。
【0052】
<有機溶剤>
本発明のグラビアインキは有機溶剤を含有してよく、当該有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルプロピルアルコール等のアルコール系有機溶剤、および酢酸エチルやノルマル酢酸プロピル等のエステル系有機溶剤の使用が好ましく、有機溶剤はエステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤を混合比率(エステル系有機溶剤:アルコール系有機溶剤)が70:30〜30:70で含有することが好ましい。ポリスチレン系基材は耐溶剤性が低いためである。更に低乾燥性溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系有機溶剤を少量使用することが好ましい。
【0053】
本発明のグラビアインキの粘度は25℃において50〜500mPa・sであることが好ましい。50mPa・s以上であればインキの濃度差が生じにくく色調再現性が良好である。500mPa・s以下とすることにより、印刷時にインキ転移性が良好に維持される。また70〜400mPa・sであることがより好ましい。インキの経時安定性が良好となるためである。上記粘度とは、印刷時に希釈する前の粘度を示す。
【0054】
<顔料>
本発明のグラビアインキにおいては、通常グラビア印刷インキに用いる顔料を使用することが好ましい。顔料とは、例えば、体質顔料、有機顔料または無機顔料などをいう。
有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられるが、これらに限定されない。また、以下の例には限定されないが、例えば、カーミン6B 、レーキレッドC 、パーマネントレッド2B 、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。
【0055】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカなどの白色無機顔料が挙げられるが、これらに限定されない。白インキの顔料には酸化チタンを用いることが、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましい。印刷性能の観点から、該酸化チタンは、シリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものが好ましい。
【0056】
白色系以外の無機顔料としては、以下の例には限定されないが、例えば、カーボンブラック、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒等が挙げられる。
【0057】
顔料は、グラビアインキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちグラビアインキの総質量に中に5〜50質量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの顔料は単独で使用してもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0058】
本発明の印刷グラビアインキは、体質顔料を配合することが好ましい。体質顔料としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、沈降性バリウム等を使用することが好ましい。
【0059】
インキの製造は、通常のグラビアインキと同様に、樹脂、顔料、溶剤および助剤を秤量し、良く撹拌してからペイントシェーカーやアトライター、サンドミル等の分散機により製造が可能である。
【0060】
<基材1>
本発明の印刷物に使用できる基材1は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル基材、ポリカーボネート基材、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン基材、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハン、紙、アルミなど、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状の基材が挙げられる。また、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの無機化合物をポリエチレンテレフタレート、ナイロンフィルムに蒸着した蒸着基材も用いることができ、更に蒸着処理面がポリビニルアルコールなどによるコート処理を施されていても良い。
【0061】
中でも、ポリオレフィン基材、ポリエステル基材、ポリアミド基材、ポリスチレン基材およびそれらに無機化合物が蒸着された基材が好ましい。特にポリスチレン基材の使用が好ましい。
また、基材1は、コロナ処理やフレーム処理、延伸処理が施されていてもよい。
【0062】
<基材2>
基材2は基材1と同一でも異なっていてもよく、後述の積層体において印刷物の印刷層面に積層されるプラスチック基材であり、中でも、未延伸の基材または発泡基材であることが好ましい。発泡基材はシート状かつ発泡処理されていてもよく、例えばプラスチック樹脂に発泡剤を混練させ加熱押出成形することにより気泡を生成させて作成される。発泡シートの材質としてはポリスチレンが好ましい。
【0063】
基材2は、熱可塑性のプラスチックが好ましく使用される。中でもポリスチレン系基材が好ましく、基材中に体質顔料が配合されていてもよい。又、炭酸ガスやブタンガス、空気等で発泡させたシートでもよい。
【0064】
<印刷物>
グラビアインキの印刷は、輪転印刷方式であるグラビア印刷の他に、フレキソ印刷等の方式が用いること可能であるが、特にグラビア印刷が好ましい。例えば、基材1上に所定のグラビアインキを希釈溶剤で希釈して印刷に適正な粘度に調整し、印刷ユニットへと供給されて印刷される。
【0065】
<積層体>
本発明の積層体は、印刷物の印刷層上に、更に基材2が順に貼り合わされたものである。なお、積層体は接着剤層を含んでも含まなくとも良く、接着剤層を含まない場合は、熱ラミネートで融着させて使用することが好ましい。熱ラミネートで積層体を作成する場合には接合温度は80〜200℃の範囲であることが好ましい。
接着剤層を使用する場合は、接着剤層は、アンカーコート剤、ウレタン系ラミネート接着剤、溶融樹脂等からなる層が挙げられる。アンカーコート剤(AC剤)としてはイミン系AC剤、イソシアネート系AC剤、ポリブタジエン系AC剤、チタン系AC剤が挙げられ、ウレタン系ラミネート接着剤としてはポリエーテルウレタン系ラミネート接着剤、ポリエステル系ラミネート接着剤などが挙げられ、有機溶剤を含むものと、無溶剤のものとがある。また、溶融樹脂としては、溶融ポリエチレン等が挙げられる。
接着剤層を使用する場合の積層体の製造方法としては、例えば、印刷層上に、イミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタン系等の各種アンカーコート剤を介して、溶融ポリエチレン樹脂を積層する通常のエクストルジョンラミネート(押し出しラミネート)法、印刷面にウレタン系等の接着剤を塗工し、その上にプラスチックフィルムを積層するドライラミネート法やノンソルベントラミネート法、また印刷面に直接溶融ポリプロピレンを圧着して積層するダイレクトラミネート法等、公知のラミネート工程により得られる。
【実施例】
【0066】
以下に実施例をあげて本発明の具体例を示すが、以下は本発明における実施態様のごく一例を示すものであり、本発明は以下実施例に限定されるものではない。なお、各例中の「部」は質量部あるいは質量%を表す。
【0067】
(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mn)
重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnは、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製HLC−8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW2500
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW3000
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW4000
東ソー株式会社製 TSKgel guardcolumn SuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0068】
(ガラス転移温度(Tg))
ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定測定)により求めた。なお、測定機は株式会社リガク社製 DSC8231を使用し、測定温度範囲−50〜250℃、昇温速度10℃/分、DSC曲線におけるガラス転移に基づくベースライン変化の変曲点をガラス転移温度とした。
【0069】
(酸価)
酸価は、JISK0070に従って測定し、固形分における値とした。
(粘度)
粘度はJISK7117−1:1999に従って測定した。(単位:mPa・s)
【0070】
<合成例1>(アクリル樹脂A溶液)
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル(モノマーTg105℃)29部、およびメタクリル酸ブチル(モノマーTg=20℃)71部、アクリル酸(モノマーTg=106℃)0部の組成比、および酢酸n−プロピル125部、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.5部を混合して、窒素気流下、85℃の温度で6時間反応させたのち、追加で2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.5部を加えて更に1時間反応させた。反応終了後、酢酸n−プロピルを125部加えて固形分を40%とした。
得られたアクリル樹脂Aは重量平均分子量(Mw)130000、分子量分布(Mw/Mn)1.2、Tg40℃、酸価0mgKOH/gであった。
【0071】
<合成例2〜10>(アクリル樹脂B溶液〜J溶液)
合成例1と同様の方法でアクリル樹脂B〜Jを合成した。なお使用したモノマーおよび性状は以下に示した。
・アクリル樹脂B溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=29/71/0(質量比)重量平均分子量130000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg40℃、酸価0mgKOH/g
・アクリル樹脂C溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=29/71/0(質量比)重量平均分子量130000、分子量分布(Mw/Mn)=3.0、Tg40℃、酸価0mgKOH/g
・アクリル樹脂D溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=29/71/0(質量比)重量平均分子量13000、分子量分布(Mw/Mn)=4.0、Tg40℃、酸価0mgKOH/g
・アクリル樹脂E溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=28.4/71/0.6(質量比) 重量平均分子量130000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg40℃、酸価 4.7mgKOH/g
・アクリル樹脂F溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=27.8/71/1.2(質量比) 重量平均分子量130000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg40℃、酸価 9.3mgKOH/g
・アクリル樹脂G溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=75/25/0(質量比)
重量平均分子量50000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg80℃、酸価 0mgKOH/g
・アクリル樹脂H溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/メタクリル酸2-ヒドロキシエチル=70/20/10(質量比) 重量平均分子量70000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg70℃、酸価 0mgKOH/g
・アクリル樹脂I溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸シクロヘキシル=43/42/15(質量比)重量平均分子量160000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg50℃、酸価 0mgKOH/g
・アクリル樹脂J溶液
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸ブチル=55/30/15(質量比)重量平均分子量180000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg43℃、酸価 0mgKOH/g
【0072】
(実施例1)グラビアインキS1の作成
アクリル樹脂A(固形分40%酢酸エチル溶液)40部、セルロース樹脂であるCAB−381−2(イーストマンケミカル社製 セルロースアセテートブチレート Tg133℃ 重量平均分子量40,000)の固形分40%IPA溶液10部、顔料(体質顔料)としてシリカ(水澤化学工業社製 ミズカシルP−73 平均粒子径2.3μm)1部、酢酸エチルとIPAが6/4(質量比)の混合溶剤40部を配合してサンドミルを用いて30分間分散混合を行い、グラビアインキS1を得た。なお「IPA」とはイソプロパノールをいう。
【0073】
(実施例2〜20)グラビアインキS2〜S20の作成
表1に記載の材料と配合比率に変更した以外は、実施例1と同じ方法によりグラビアインキS2〜S20をそれぞれ得た。なお、表中の略称は以下を表す。
CAP−482−0.5:巴工業社製 セルロースアセテートプロピオネート ガラス転移温度142℃ 重量平均分子量50,000 固形分40%IPA溶液
DLX5−8:ICI Novel enterprises社製 ニトロセルロース 窒素分12.0% 固形分40%IPA溶液
酸化チタン:テイカ社製 チタニックスJR800 ルチル型酸化チタン 粒子径0.27μm
ピグメントブルー15:4:トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG4330
【0074】
<比較合成例1>(ポリウレタン樹脂PU1溶液)
フラスコに数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール313部、イソホロンジイソシアネート63部および酢酸エチル60.0部を仕込み、窒素気流下90℃で6時間反応させた。次いでイソホロンジアミン21部、酢酸エチル560.0部、IPA280.0部を添加し、固形分30%、25℃における粘度200mPa・s、重量平均分子量30,000のポリウレタン樹脂PU1を得た。
【0075】
<比較合成例2および3>(アクリル樹脂K溶液およびL溶液)
・アクリル樹脂K溶液:メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=29/71/0(質量比) 重量平均分子量50000、分子量分布(Mw/Mn)=7.0、Tg40℃、酸価0mgKOH/g
・アクリル樹脂L溶液:メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸=26/71/3(質量比) 重量平均分子量130000、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、Tg40℃、酸価 20mgKOH/g
【0076】
<比較例1〜6>(グラビアインキSS1〜SS6の作成)
表2に記載の材料と配合比率に変更した以外は、実施例1〜20と同じ方法によりグラビアインキSS1〜SS6を得た。
【0077】
(実施例21)
<グラビアインキの印刷>
グラビアインキS1を混合溶剤(酢酸n−プロピル:IPA=6:4) により 、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。なお、25℃環境下でザーンカップNo.3を用いて16秒に希釈したインキ粘度は、52mPa・sであった。レーザー版深25μmのベタ版を備えたグラビア印刷機により、ポリスチレンフィルム(旭化成ケミカルズ社製 二軸延伸ポリスチレンフィルム OPS(登録商標)フィルムGM 厚み20μm)に印刷速度50m/分で印刷し、印刷物J1を得た。
【0078】
<熱ラミネート>
高発泡のポリスチレンシート(株式会社JSP製)を、室温で一日放置した印刷物T1の印刷層面を合わせ、印刷物のOPS面は厚さ12μmのポリエステルフイルムで耐熱保護した状態で、温度180℃、速度5m/分の条件で熱ラミネートを行った。その後保護フィルムである前記ポリエステルフイルムを除いて積層体U1を得た。
【0079】
(実施例22〜40)
表1に記載のグラビアインキS2〜S20を用いた以外は、実施例21と同様の方法で印刷物J2〜J20および積層体U2〜U20を得た。
【0080】
(比較例7〜12)
表2に記載のグラビアインキSS1〜SS6を用いた以外は、実施例21と同様の方法で印刷物JJ1〜JJ6および積層体UU1〜UU6を得た。
【0081】
[物性評価]
得られたグラビアインキS1〜S20(実施例)およびSS1〜SS6(比較例)、印刷物J1〜J20(実施例)およびJJ1〜JJ6(比較例)、積層体U1〜U20(実施例)およびUU1〜UU6(比較例)を用いて以下の特性評価を行い、表3および表4に結果を示した。
【0082】
<グラビアインキの保存安定性>
グラビアインキS1〜S20(実施例)およびSS1〜SS6(比較例)を用いて40℃下で7日間放置し、経過時間による粘度測定データを離合社製ザーンカップで測定し、インキの仕上り直後と経過時間後の粘度の差からインキの保存安定性の評価を行った。
[評価基準]
5:経時粘度変化が仕上がり直後の1.2倍未満であるもの。(良好)
4:経時粘度変化が仕上がり直後の1.2〜1.5倍であるもの。(実用可)
3:経時粘度変化が仕上がり直後の1.5倍〜2倍程度であるもの。(やや不良)
2:経時粘度変化が仕上がり直後の2倍以上であるもの。(不良)
1:分離・沈殿・分離を起こしているもの。(極めて不良)
なお、実用上支障のない評価は5または4である。
【0083】
<耐ブロッキング性>
印刷物J1〜JJ20(実施例)およびJJ1〜JJ6(比較例)を同じ大きさに切ったそれぞれの印刷物の印刷層と印刷していないポリスチレン基材層とを重ね合わせて、0.5kg/cmの荷重をかけ、40℃、80%RHの雰囲気で24時間放置後に引き剥がし、インキの剥離の程度から耐ブロッキング性を評価した。
[評価基準]
5:インキが全く剥離しなかったもの。(良好)
4:インキが剥離した面積が20%未満のもの。(実用可)
3:インキが剥離した面積が20以上50%未満のもの。(やや不良)
2:インキが剥離した面積が50以上〜75%未満のもの。(不良)
1:インキが剥離した面積が75%以上剥離したのものまたは印刷層とポリスチレン基材層とが密着一体化して剥離不可能であるもの。(極めて不良)
なお、実用上支障のない評価は5または4である。
【0084】
<耐薬品性>
印刷物J1〜J20(実施例)およびJJ1〜JJ6(比較例)について、NaOH1.5質量%水溶液を常温で滴下して40℃で24時間放置後、目視にて剥離を評価した。
[評価基準]
5:剥離しない。(良好)
4:面積5%未満剥離する。(実用可)
3:面積5%以上15%未満剥離する。(やや不良)
2:面積15%以上30%未満剥離する。(不良)
1:面積30%以上剥離する。(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0085】
<室温(25℃)でのラミネート強度>
印刷物J1〜J20(実施例)JJ1〜JJ6(比較例)について、テスター産業株式会社製のSA1010小型卓上テストラミネーターを使用し、印刷物の印刷面に発泡ポリスチレンシート(JSP社製 厚み3mmの発泡ポリスチレンシート)を貼りあわせて、ラミネート積層体を作成した。作成したラミネート積層体について、ポリスチレンフィルム/インキ層で剥離させ、株式会社インテスコ製の201引張試験機を使用して、25℃の環境下にてラミネート強度を測定した。
(ラミネート条件)
温度:140℃ 荷重圧:0.05MPa
[評価基準]
5:ラミネート強度が500g/25mm以上である。(良好)
4:ラミネート強度が400g/25mm以上500g/25mm未満である。(実用可)
3:ラミネート強度が300g/25mm以上400g/25mm未満である。(やや不良)
2:ラミネート強度が200g/25mm以上300g/25mm未満である。(不良)
1:ラミネート強度が200g/25mm未満である。(極めて不良)
なお、実用上支障のない評価は5または4である。
【0086】
<高温環境(60℃)でのラミネート強度>
印刷物J1〜J20(実施例)JJ1〜JJ6(比較例)について、テスター産業株式会社製のSA1010小型卓上テストラミネーターを使用し、印刷物の印刷面に発泡ポリスチレンシート(JSP社製 厚み3mmの発泡ポリスチレンシート)を貼りあわせて、ラミネート積層体を作成した。作成したラミネート積層体について、ポリスチレンフィルム/インキ層で剥離させ、株式会社インテスコ製の201引張試験機を使用して、60℃の環境下にてラミネート強度を測定した。
(ラミネート条件)
温度:140℃ 荷重圧:0.05MPa
[評価基準]
5:ラミネート強度が400g/25mm以上である。(良好)
4:ラミネート強度が400g/25mm以上300g/25mm未満である。(実用可)
3:ラミネート強度が300g/25mm以上200g/25mm未満である。(やや不良)
2:ラミネート強度が200g/25mm以上100g/25mm未満である。(不良)
1:ラミネート強度が100g/25mm未満である。(極めて不良)
なお、実用上支障のない評価は5または4である。
【0087】
<成型後の外観評価>
上記ラミネート強度の評価に使用した、印刷物J1〜J20(実施例)JJ1〜JJ6(比較例)を用いた積層体について、成光産業株式会社製の真空成型機フォーミング300型を使用して印刷基材であるポリスチレンフィルム面が凹部となるように真空成型した。得られた成型物にて外観の評価を行った。なお、ラミネート積層体の外観は、印刷基材、発泡シート間の剥離によるデラミネーションの度合を評価した。
(成型条件)
温度:120℃、加工時間:20秒間 型サイズ:深さ:3cm、幅:10cm、奥行き:15cm
[評価基準]
5:層間剥離によるデラミネーションが全くない。(良好)
4:成型物の面積に対して2%未満の層間剥離によるデラミネーションが見られる。(実用可)
3:成型物の面積に対して2%以上10%未満の層間剥離によるデラミネーションが見られる。(やや不良)
2:成型物の面積に対して10%以上30%未満の層間剥離によるデラミネーションが見られる。(不良)
1:成型物の面積に対して30%以上の層間剥離によるデラミネーションが見られる。(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0088】
表3に示すように、実施例の酸価が10mgKOH/g以下かつ分子量分布(Mw/Mn)が1.2〜4であるアクリル樹脂用いたものは、要求物性を全て満たしているのに対し、比較例では、要求物性のいずれかが不良であり、全てが良好となるものは得られなかった。なお、本発明のグラビアインキは、それを使用した積層体のラミネート強度に優れ、常温におけるラミネート強度、更には高温環境でのラミネート強度に優れるため、積層体の使用される環境は幅広く産業的利用価値の高いものであることが分かった。
【0089】
本発明により、熱ラミネートでのラミネート強度が良好であり、更にラミネート強度は高温における測定でも良好であり、更に耐ブロッキング性および耐薬品性に優れ、かつ経時安定性に優れたグラビアインキを提供することができた。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】