特許第6972919号(P6972919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972919
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20211111BHJP
   C08L 45/02 20060101ALI20211111BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20211111BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20211111BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L45/02
   C08K3/36
   C08L9/06
   B60C1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-207537(P2017-207537)
(22)【出願日】2017年10月26日
(65)【公開番号】特開2019-77833(P2019-77833A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中川 隆太郎
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−216608(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/104955(WO,A1)
【文献】 特開2010−059248(JP,A)
【文献】 特開2011−246563(JP,A)
【文献】 特開2011−225731(JP,A)
【文献】 特開2013−014708(JP,A)
【文献】 特開2003−253051(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0312015(US,A1)
【文献】 特開2017−019935(JP,A)
【文献】 特開2003−210616(JP,A)
【文献】 特開2019−077832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00−19/12
C08F 6/00−246/00、301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン‐ブタジエンゴムを30質量%以上含み、平均ガラス転移温度Tgが−50℃以下であるジエン系ゴム100質量部に対し、クマロン、インデン、およびスチレンの共重合体の酸変性物である共重合樹脂(a)が1〜30質量部、無機充填材が10〜150質量部配合されたことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記共重合樹脂(a)の重量平均分子量Mwが500以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記共重合樹脂(a)の変性率が10%〜100%であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記共重合樹脂(a)における酸変性基が無水マレイン酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記無機充填材としてシリカを30質量部以上含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記スチレン‐ブタジエンゴムが変性スチレン‐ブタジエンゴムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に空気入りタイヤのトレッド部に用いることを意図したタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの要求性能の一つとしてウェット性能が挙げられる。このウェット性能をトレッドコンパウンドによって高めようとする場合、比較的柔軟なゴムを用いる傾向があるため、耐摩耗性が低下し易くなる。このため、耐摩耗性能を良好に維持しながら、ウェット性能と耐摩耗性能とを両立することが求められる。例えば、特許文献1では、クマロンインデン樹脂を配合することでウェット性能(ウェットグリップ性能)と耐摩耗性能とを両立することが提案されている。しかしながら、この方法であっても、ウェット性能の向上効果が必ずしも充分でなく、また、耐摩耗性を充分に良好に維持することも難しく、これら性能を高次元で両立するための更なる対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012‐036370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、主に空気入りタイヤのトレッド部に用いることを意図したタイヤ用ゴム組成物であって、ウェット性能と耐摩耗性能とを高度に両立したタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、スチレン‐ブタジエンゴムを30質量%以上含み、平均ガラス転移温度Tgが−50℃以下であるジエン系ゴム100質量部に対し、クマロン、インデン、およびスチレンの共重合体の酸変性物である共重合樹脂(a)が1〜30質量部、無機充填材が10〜150質量部配合されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、酸変性された共重合樹脂(a)を含むことでウェット路面上の水との親和性が高まりウェット性能を向上することができる。また、酸変性された共重合樹脂(a)を含むことでゴム硬度を確保することもでき、耐摩耗性を良好に維持することができる。その結果、ウェット性能と耐摩耗性能とを高度に両立することができる。
【0007】
本発明においては、共重合樹脂(a)の重量平均分子量Mwが500以下であることが好ましい。これにより、タイヤ用ゴム組成物の物性が更に良好になり、ウェット性能と耐摩耗性能とを高度に両立することができる。
【0008】
本発明においては、共重合樹脂(a)の変性率が10%〜100%であることが好ましい。このように共重合樹脂(a)を充分に変性することで、タイヤ用ゴム組成物の物性が更に良好になり、ウェット性能と耐摩耗性能とを高度に両立することができる。
【0009】
本発明においては、共重合樹脂(a)における酸変性基が無水マレイン酸であることが好ましい。これにより、タイヤ用ゴム組成物の物性が更に良好になり、ウェット性能と耐摩耗性能とを高度に両立することができる。
【0010】
本発明においては、無機充填材としてシリカを30質量部以上含むことが好ましい。これにより、タイヤ用ゴム組成物の物性が更に良好になり、ウェット性能と耐摩耗性能とを高度に両立することができる。
【0011】
本発明においては、スチレン‐ブタジエンゴムが変性スチレン‐ブタジエンゴムであることが好ましい。これにより、タイヤ用ゴム組成物の物性が更に良好になり、ウェット性能と耐摩耗性能とを高度に両立することができる。
【0012】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッド部に用いることが好ましく、本発明のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いた空気入りタイヤは、ウェット性能および耐摩耗性能を共に良好に発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ジエン系ゴムは、スチレン‐ブタジエンゴムを必ず含む。スチレン‐ブタジエンゴムを主成分にすることにより、ウェット性能を向上することができる。スチレン‐ブタジエンゴムの含有量は、ジエン系ゴム100質量%中に30質量%以上、好ましくは40質量%〜100質量%である。スチレン‐ブタジエンゴムの含有量が30質量%未満であると、ウェット性能が低下する。
【0014】
本発明で使用するスチレン‐ブタジエンゴムは、タイヤ用ゴム組成物に通常使用される溶液重合スチレン‐ブタジエンゴム、乳化重合スチレン‐ブタジエンゴム、およびこれらに官能基を導入した変性スチレン‐ブタジエンゴムを用いることができる。変性スチレン‐ブタジエンゴムを使用する場合、スチレン‐ブタジエン共重合体の末端もしくは側鎖が、シリカ表面のシラノール基と反応性を有する官能基で変性したものを用いるとよい。シラノール基と反応する官能基としては、好ましくはヒドロキシル基含有ポリオルガノシロキサン構造、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、アミド基、チオール基、エーテル基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。なかでもヒドロキシル基含有ポリオルガノシロキサン構造、ヒドロキシル基、アミノ基がより好ましい。変性スチレン‐ブタジエンゴムを用いる場合、そのスチレン単位含有量が好ましくは5質量%〜70質量%、より好ましくは10質量%〜60質量%である。変性スチレン‐ブタジエンゴムのスチレン単位含有量が5質量%未満であると強度が低下する。変性スチレン‐ブタジエンゴムのスチレン単位含有量が70質量%を超えると耐摩耗性が低下する。尚、変性スチレン‐ブタジエンゴムのスチレン単位含有量は赤外分光分析(ハンプトン法)により測定するものとする。変性スチレン‐ブタジエンゴムにおけるスチレン単位含有量の増減は、触媒等、通常の方法で適宜調製することができる。変性ブタジエンゴムを調製する方法は、特に限定されるものではなく、通常の製造方法を適用することができる。
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述したスチレン‐ブタジエンゴム以外の他のジエン系ゴムを配合することもできる。他のジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等を例示することができる。なかでも、ブタジエンゴムが好ましい。これらジエン系ゴムは、単独または任意のブレンドとして使用することができる。他のジエン系ゴムの含有量は、本発明の課題の達成を阻害しない範囲内であるものとする。特に、他のジエン系ゴムとしてブタジエンゴムを用いる場合は、ジエン系ゴム100質量%中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下するとよい。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物では、上述のジエン系ゴムの平均ガラス転移温度Tgが−50℃以下、好ましくは−55℃以下である。このように平均ガラス転移温度Tgを低くすることで、耐摩耗性を向上することができる。ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度Tgが−50℃より高いと、耐摩耗性が低下する。尚、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度Tgとは、ジエン系ゴムを構成するスチレン‐ブタジエンゴムと任意成分である他のジエン系ゴムのそれぞれのガラス転移温度Tgと各ゴム成分の配合割合との積の合計として算出したガラス転移温度Tgの平均値である。また、各ゴム成分のガラス転移温度Tgは示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
【0017】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、クマロン、インデン、およびスチレンの共重合体の酸変性物である共重合樹脂(a)が必ず配合される。共重合樹脂(a)は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として炭素数8のクマロンおよび炭素数9のインデンを含み、クマロンおよびインデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としてスチレンを含むクマロンインデン樹脂を、例えば無水マレイン酸等で酸変性して得ることができる。酸変性された共重合樹脂(a)を配合することで、ウェット路面上の水との親和性を高めてウェット性能を向上することができる。また、酸変性された共重合樹脂(a)を含むことで、ゴム硬度を確保することができ、耐摩耗性を良好に維持することができる。共重合樹脂(a)の配合量はジエン系ゴム100質量部に対して1質量部〜30質量部、好ましくは3質量部〜25質量部である。共重合樹脂(a)の配合量が1質量部未満であると、ウェット性能および耐摩耗性能を向上する効果が得られない。共重合樹脂(a)の配合量が30質量部を超えると、ゴム組成物の加工性が著しく悪化して、実用に供することができなくなる。
【0018】
本発明で使用する共重合樹脂(a)は、ガラス転移温度Tgが好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下であるとよい。このようにガラス転移温度Tgが低い共重合樹脂(a)を用いることで、良好な耐摩耗性を得ることができる。共重合樹脂(a)のガラス転移温度Tgが15℃より高いと、耐摩耗性が低下する。尚、本発明において、ガラス転移温度TgはDSCにより測定することができる。
【0019】
本発明で使用する共重合樹脂(a)は、重量平均分子量Mwが好ましくは500以下、より好ましくは200〜500であるとよい。このように低分子量の共重合樹脂(a)を用いることで、ウェット性能を改善することができる。共重合樹脂(a)の重量平均分子量Mwが500を超えると、ウェット性能向上の効果が低下する。
【0020】
本発明で使用する共重合樹脂(a)は、変性率が好ましくは10%〜100%、より好ましくは30%〜80%であるとよい。このように充分に酸変性された共重合樹脂(a)を用いることで、ゴム組成物の硬度を確保することができ、耐摩耗性を向上することができる。共重合樹脂(a)の変性率が10%未満であると、ゴム組成物の硬度を充分に確保することができず、耐摩耗性を良好に維持することが難しくなる。尚、本発明において、共重合樹脂(a)の変性率とは、共重合樹脂(a)を構成するすべてのポリマー分子のうち酸変性されたポリマー分子の割合(%)を表し、共重合樹脂(a)を構成するすべてのポリマー分子がそれぞれ1つ以上の変性基を有する状態が変性率100%である。
【0021】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、無機充填材が必ず配合される。無機充填材を配合することでゴム組成物の強度を高めることができる。無機充填材の配合量はジエン系ゴム100質量部に対して10質量部〜150質量部、好ましくは20質量部〜120質量部である。無機充填材の配合量が10質量部未満であると、ゴム組成物の硬度が低下し、耐摩耗性を良好に維持することができない。無機充填材の配合量が150質量部を超えると、ゴム組成物の加工性が著しく悪化して、実用に供することができなくなる。無機充填材としては、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、水酸化アルミニウムを例示することができる。これら無機充填材は単独または任意のブレンドとして使用することができる。なかでもカーボンブラック、シリカが好ましく、これらを併用することが好ましい。特に、無機充填材としてシリカを用いる場合、シリカの配合量をジエン系ゴム100質量部に対して好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部〜150質量部にするとよい。このように無機充填材としてシリカを充分に配合することで、Wetグリップを向上することができる。シリカの配合量が30質量部未満であると、Wetグリップが低下する。更に、無機充填材としてカーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックの配合量をジエン系ゴム100質量部に対して好ましくは10質量部〜50質量部にするとよい。
【0022】
無機充填材としてシリカを用いる場合、シリカのCTAB吸着比表面積が好ましくは100m2 /g〜300m2 /g、より好ましくは150m2 /g〜250m2 /gであるとよい。シリカのCTAB吸着比表面積が100m2 /g未満であるとゴム強度が低下する。シリカのCTAB吸着比表面積が300m2 /gを超えると加工性が悪化する。尚、本発明において、シリカのCTAB吸着比表面積は、ISO 5794に準拠して測定するものとする。
【0023】
無機充填材としてカーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2 SAが好ましくは30m2 /g〜150m2 /g、より好ましくは60m2 /g〜120m2 /gであるとよい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2 SAが30m2 /g未満であるとゴム強度が低下する。カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2 SAが150m2 /gを超えると発熱性が悪化する。尚、本発明において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2 SAは、JIS6217‐2に準拠して測定するものとする。
【0024】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記以外の他の配合剤を添加することができる。他の配合剤としては、加硫または架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂など、一般的に空気入りタイヤに使用される各種配合剤を例示することができる。これら配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量にすることができる。また混練機としは、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用することができる。
【0025】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述の配合や物性により、ウェット性能と耐摩耗性能とを高度に両立することができる。具体的には、酸変性された共重合樹脂(a)を含むことでウェット路面上の水との親和性が高まりウェット性能を向上することができ、且つ、ゴム硬度を確保して耐摩耗性を良好に維持することができる。そのため、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッド部に好適に用いることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いた空気入りタイヤでは、上述のタイヤ用ゴム組成物の特性によって、ウェット性能と耐摩耗性能とを高度に両立することができる。
【0026】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
表1に示す配合からなる15種類のタイヤ用ゴム組成物(標準例1、比較例1〜6、実施例1〜)を、それぞれ加硫促進剤および硫黄を除く配合成分を秤量し、1.8Lの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、温度150℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。その後、このマスターバッチを1.8Lの密閉式バンバリーミキサーに供し、加硫促進剤及び硫黄を加え2分間混合してタイヤ用ゴム組成物を調製した。次に、得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を作製した。尚、表1の「無機充填材」の欄の値は、これらタイヤ用ゴム組成物に使用された無機充填材、即ち、カーボンブラックおよびシリカの配合量の合計である。
【0028】
得られたタイヤ用ゴム組成物について、下記に示す方法により、加工性、耐摩耗性、ウェット性能の評価を行った。
【0029】
加工性
加硫ゴム試験片を作製する際の加工性を評価した。加硫ゴム試験片を作製できた場合を「〇」とし、加硫ゴム試験片を作製できなかった場合を「×」として、表1の「加工性」の欄に示した。評価結果が「×」である場合は、タイヤ用ゴム組成物を実用に供することができないことを意味する。
【0030】
耐摩耗性
得られたタイヤ用ゴム組成物の試験片について、ランボーン摩耗試験機を用いてJIS K6264に準拠し、荷重4.0kg(=39N)、スリップ率30%の条件にて摩耗量を測定した。得られた結果は、各試験片の摩耗量の逆数を算出し、標準例の値を100とする指数として表1の「耐摩耗性」の欄に示した。この指数値が大きいほど耐摩耗性が優れることを意味する。
【0031】
ウェット性能
得られたタイヤ用ゴム組成物の試験片の動的粘弾性を、JIS K6394に準拠して、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、伸長変形歪率10%±2%、振動数20Hzの条件で、温度0℃のtanδを測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として、表1の「ウェット性能」欄に示した。この指数が大きいほど0℃のtanδが大きく、ウェット性能(ウェットグリップ性能)が優れることを意味する。
【0032】
【表1】
【0033】
表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
・SBR:スチレン‐ブタジエンゴム、日本ゼオン社製NIPOL 1502
・変性SBR:変性スチレン‐ブタジエンゴム、旭化成社製TUFDENE E581
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製NIPOL BR1220
・CB:カーボンブラック、キャボットジャパン社製ショウブラックN339
・シリカ:ローディア社製ZEOSIL 1165MP
・オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・樹脂1:無水マレイン酸変性クマロンインデン樹脂、ルトガース社製(変性率:33%、ガラス転移温度Tg=−15℃、重量平均分子量Mw=400)
・樹脂2:無水マレイン酸変性クマロンインデン樹脂、ルトガース社製(変性率:67%、ガラス転移温度Tg=0℃、重量平均分子量Mw=400)
・樹脂3:無水マレイン酸変性クマロンインデン樹脂、ルトガース社製(変性率:100%、ガラス転移温度Tg=14℃、重量平均分子量Mw=400)
・樹脂4:クマロンインデン樹脂(未変性)、ルトガース社製(ガラス転移温度Tg=−30℃、重量平均分子量Mw=400)
・樹脂5:マレイン酸変性石油系樹脂、日石エネルギー社製 ネオポリマー160(軟化点=165℃、重量平均分子量Mw=3500)
・老化防止剤:フレキシス社製サントフレックス 6PPD
・ワックス:大内新興化学社製サンノック
・カップリング剤:エボニックデグッサ社製Si69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・加硫促進剤1:大内新興科学工業株式会社製ノクセラー CZ‐G
・加硫促進剤2:住友化学株式会社製ソクシノール D‐G
・硫黄:四国化成工業社製ミュークロン OT−20
【0034】
表1から明らかなように、実施例1〜のタイヤ用ゴム組成物は、標準例1に対して
ウェット性能および耐摩耗性能をバランスよく向上した。
【0035】
一方、比較例1のタイヤ用ゴム組成物は、樹脂4(未変性のクマロンインデン樹脂)が配合されているため、耐摩耗性を向上する効果が得られなかった。比較例2のタイヤ用ゴム組成物は、樹脂5(マレイン酸変性石油系樹脂)が配合されているため、耐摩耗性を向上する効果が得られなかった。比較例3のタイヤ用ゴム組成物は、樹脂2(酸変性クマロンインデン樹脂)の配合量が過少であるため、ウェット性能および耐摩耗性を向上する効果が得られなかった。比較例4のタイヤ用ゴム組成物は、樹脂2(酸変性クマロンインデン樹脂)の配合量が過多であるため、加工性が悪化した(そのため、試験片を作製することができず、ウェット性能および耐摩耗性の評価を行うことができなかった)。比較例5のタイヤ用ゴム組成物は、無機充填材(カーボンブラックおよびシリカ)の配合量が過少であるため、耐摩耗及びウェット性能が悪化した。比較例6のタイヤ用ゴム組成物は、無機充填材(カーボンブラックおよびシリカ)の配合量が過多であるため、加工性が悪化した(そのため、試験片を作製することができず、ウェット性能および耐摩耗性の評価を行うことができなかった)。