(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜
図6を参照して、建設機械10(
図3参照)、および、
図1に示す走行ルートガイダンス装置20について説明する。
【0010】
建設機械10は、
図3に示すように、建設作業などの作業を行う機械であり、地形を成形可能な機械であり、例えばショベルである。建設機械10の走行は、建設機械10の内部(運転室)から操作されてもよく、建設機械10の外部から操作(遠隔操作)されてもよく、自動制御により操作されてもよい(走行以外の操作についても同様)。建設機械10は、下部走行体11と、上部旋回体13と、アタッチメント15と、を備える。下部走行体11は、左右のクローラ11c・11cを備える。上部旋回体13は、下部走行体11に対して旋回可能である。アタッチメント15は、地形を成形する作業を行う部分であり、例えばバケットなどを備える。
【0011】
走行ルートガイダンス装置20(
図1参照)は、建設機械10の周辺の地形の勾配を考慮して、建設機械10の走行ルートRをガイド(支援、案内)する装置である。走行ルートガイダンス装置20は、建設機械10に設けられてもよく、建設機械10の外部に設けられてもよく、建設機械10の外部および建設機械10に設けられてもよい。
図1に示すように、走行ルートガイダンス装置20は、地形取得部21と、現在地取得部22と、目的地取得部23と、選択部31と、出力部50と、制御部40と、を備える。
【0012】
地形取得部21は、
図3に示すように、建設機械10の周辺の三次元地形情報Tを取得する。三次元地形情報Tは、勾配の情報を含む。勾配の情報は、三次元地形情報Tから読み取り(例えば算出)可能である。地形取得部21(
図1参照)は、建設機械10に設けられた距離画像センサでもよく、例えばTOF(Time Of Flight)センサなどでもよい。地形取得部21は、空撮を用いるものでもよく、例えばドローンなどの飛行物体を用いるものでもよい。地形取得部21は、三次元地形情報Tが予め記憶された記憶装置などでもよい。なお、
図3では、三次元地形情報Tの地形を、等高線を用いて表した。
【0013】
現在地取得部22(
図1参照)は、三次元地形情報T内の建設機械10の現在地P1を取得する。現在地取得部22は、衛星測位システムを用いるものでもよく、空撮を用いるものでもよい。現在地取得部22は、走行ルートガイダンス装置20の使用者(以下、単に「使用者」ともいう)の操作に基づいて現在地P1を取得するもの(入力装置など)でもよい。この場合、現在地取得部22は、現在地P1の座標などを使用者が入力することで現在地P1を取得するものでもよく、ディスプレイに表示された地図上の位置を使用者が指定することで現在地P1を取得するものでもよい。
【0014】
目的地取得部23(
図1参照)は、三次元地形情報T内の建設機械10の目的地P2を取得する。目的地取得部23は、現在地取得部22と同様に、使用者の操作に基づいて目的地P2を取得するもの(入力装置など)でもよい。目的地取得部23は、目的地P2が予め記憶された記憶装置などでもよい。
【0015】
選択部31(
図1参照)は、
図6に示す複数の走行ルートRの候補から1つの走行ルートRを使用者に選択させるものである。例えば、選択部31は、ディスプレイの表示を用いたものでもよく、スイッチなどでもよい。
【0016】
制御部40は、情報の入出力、情報の記憶、および、走行ルートRの探索などの演算を行う(詳細は後述)。
【0017】
出力部50(
図1参照)は、走行ルートRに関する情報を出力する(ガイダンスを出力する)。
図1に示す出力部50は、例えば表示を行うもの(ディスプレイなど)でもよく、音を出力するものでもよい。
【0018】
(作動)
図2に示すフローチャートを参照して、
図1に示す走行ルートガイダンス装置20の作動について説明する。以下では、走行ルートガイダンス装置20の上記の各構成要素(制御部40、出力部50など)については主に
図1を参照し、フローチャートの各ステップ(ステップS11〜S43)については
図2を参照して説明する。
【0019】
図3に示す建設機械10の周囲の三次元地形情報Tが、地形取得部21に取得され(S11)、制御部40に入力される。また、建設機械10の現在地P1が、現在地取得部22に取得され(S12)、制御部40に入力される。目的地P2が、目的地取得部23に取得され(S13)、制御部40に入力される。次に、制御部40は、三次元地形情報Tに基づいて、現在地P1から目的地P2までの建設機械10の走行ルートRを探索する(S21)。
【0020】
(勾配の許容範囲)
制御部40は、許容範囲内の勾配のみを走行して現在地P1から目的地P2まで到達可能な、建設機械10の走行ルートR(成形不要ルートR1)を探索する。制御部40には、勾配の度合い(例えば傾斜率、例えば水平面に対する角度など)の許容範囲が予め設定される。勾配の許容範囲は、建設機械10の安定性に基づいて決定される。建設機械10が安定性を確保した状態で走行可能な勾配(緩やかな勾配)は、許容範囲内に設定される。建設機械10が走行不可能な勾配(急勾配)は、許容範囲外に設定される。
【0021】
ここで、勾配の傾斜が最も急になる方向(高さの変化量が最も大きい方向)を、勾配の方向D1(
図4参照)とする。
図4では、例として、ある位置での勾配の方向D1を図示した。また、左右のクローラ11c・11cのそれぞれが延びる方向、すなわち、下部走行体11が直進するときの進行方向(前後方向)を、クローラ11cの方向D2とする。このとき、勾配の方向D1に対する、クローラ11cの方向D2によって、建設機械10の安定度が異なる。具体的には、勾配の傾斜が同じでも、勾配の方向D1とクローラ11cの方向D2とが成す角度が小さいほど、建設機械10の安定度が高い。具体的には、例えば
図4に示す地形では、現在地P1から目的地P2に直線的に走行するルート(図示なし)では、建設機械10は、安定した状態では目的地P2まで到達できない。一方、中継地点P5から目的地P2に向かうルートのように、勾配を登る(または下る)方向に建設機械10が走行するルートでは、勾配の方向D1とクローラ11cの方向D2とが成す角度がほぼ同じになる。このルートでは、建設機械10は、安定した状態で目的地P2に到達できる。
【0022】
そこで、勾配の許容範囲は、勾配の方向D1に対するクローラ11cの方向D2によって異なるように、制御部40に設定される。具体的には例えば、勾配の方向D1とクローラ11cの方向D2とが成す角度が0°の場合、勾配の許容範囲が最も大きく(勾配が急でも許容範囲内になるように)設定される。勾配の方向D1とクローラ11cの方向D2とが成す角度が大きくなるにしたがって、段階的または連続的に、勾配の許容範囲が小さく設定される。勾配の方向D1とクローラ11cの方向D2とが成す角度が90°の場合、勾配の許容範囲が最も小さく設定される。
【0023】
(走行ルートRの評価)
図3に示す現在地P1から目的地P2までの走行ルートR(成形不要ルートR1、または後述する成形必要ルートR2(
図5参照))は、通常、多数存在する。そこで、制御部40は、予め定められた評価条件に基づいて走行ルートRを評価し、評価の高さに基づいて出力部50に出力させる走行ルートRを決定する。評価条件は、例えば次の通りである。なお、評価条件の数、内容、重みづけなどは、様々に設定されてもよい。
【0024】
[評価条件の例1]評価条件には、現在地P1から目的地P2までの走行距離の短さが含まれてもよい。制御部40は、走行距離が短いほど評価の高い走行ルートRであると判断する。
【0025】
[評価条件の例2]評価条件には、走行ルートRでの勾配の緩やかさが含まれてもよい。例えば、制御部40は、勾配の許容範囲の限度に対して、走行ルートRでの勾配の度合い(例えば最も急な勾配の度合いなど)の余裕が大きいほど、評価の高い走行ルートRであると判断する。
【0026】
[評価条件の例3]評価条件には、現在地P1から目的地P2まで建設機械10を到達させるのに必要な燃料の少なさが含まれてもよい。制御部40は、必要な燃料が少ないほど評価の高い走行ルートRであると判断する。上記「必要な燃料」には、建設機械10の走行に必要な燃料が含まれる。地形の成形が必要な場合(詳細は後述)は、地形の成形に必要な燃料が、上記「必要な燃料」に含まれてもよい。
【0027】
制御部40が、成形不要ルートR1を発見した場合(S31でYESの場合)、次の処理が行われる。制御部40は、出力部50に出力させる成形不要ルートR1として、評価が最も高い1つの(最適な)成形不要ルートR1を決定してもよく、複数の成形不要ルートR1の候補を決定してもよい。例えば、
図6に示すように、評価が最も高い成形不要ルートR1が複数存在する場合に、複数の成形不要ルートR1の候補が決定されてもよい。例えば、評価の高さが1番目からn番目(nは所定の整数)までの、複数の成形不要ルートR1の候補が決定されてもよい。複数の成形不要ルートR1の候補が決定された場合、選択部31により、複数の成形不要ルートR1の候補から1つの成形不要ルートR1を使用者に選択させる(S32)。次に、制御部40は、制御部40が決定した1つの成形不要ルートR1、または、選択部31で選択された1つの成形不要ルートR1に関する情報を、出力部50に出力させる(S33)。例えば、出力部50は、成形不要ルートR1を表示してもよく、成形不要ルートR1を音声でガイドしてもよい。
【0028】
制御部40が成形不要ルートR1を発見しない場合(S31でNOの場合)、さらに詳しくは、
図5に示すように、建設機械10が許容範囲外の勾配を走行しなければ、建設機械10が目的地P2まで到達できない場合、次の処理が行われる。制御部40は、許容範囲内の勾配のみを走行して目的地P2まで建設機械10を到達可能とするために、成形すべき地点P7を決定(判断)する(S41)。すなわち、制御部40は、どの地点(成形すべき地点P7)を成形すれば、許容範囲内の勾配のみを走行して目的地P2まで建設機械10が到達可能になるかを判断する。上記「成形」は、建設機械10による掘削または盛り土によって、勾配を許容範囲内にすること(勾配を緩やかにすること)である。成形すべき地点P7を通る走行ルートRを、成形必要ルートR2とする。
【0029】
制御部40は、評価が最も高い1つの(最適な)成形必要ルートR2を決定してもよく、複数の成形必要ルートR2の候補を決定してもよい(成形不要ルートR1と同様)。制御部40は、複数の成形不要ルートR1の候補を決定した場合、選択部31により、複数の成形必要ルートR2の候補から1つの成形必要ルートR2を使用者に選択させる(S42)。次に、制御部40は、制御部40が決定した1つの成形必要ルートR2、または、選択部31で選択された1つの成形必要ルートR2に関する情報を、出力部50に出力させる(S43)(成形不要ルートR1に関する情報の出力と同様)。さらに、制御部40は、成形すべき地点P7に関する情報を、出力部50に出力させる(S43)。例えば、出力部50は、成形すべき地点P7の位置を表示してもよく、成形すべき地点P7に関する情報を音声でガイドしてもよい。
【0030】
(効果)
図1に示す走行ルートガイダンス装置20による効果は次の通りである。なお、走行ルートガイダンス装置20の各構成要素(制御部40など)については、
図1を参照して説明する。
【0031】
(第1の発明の効果)
走行ルートガイダンス装置20は、地形取得部21と、現在地取得部22と、目的地取得部23と、制御部40と、出力部50と、を備える。地形取得部21は、
図3に示すように、建設機械10の周辺の勾配の情報を含む三次元地形情報Tを取得する。現在地取得部22は、三次元地形情報T内の建設機械10の現在地P1を取得する。目的地取得部23は、三次元地形情報T内の目的地P2を取得する。制御部40は、三次元地形情報Tに基づいて、現在地P1から目的地P2までの建設機械10の走行ルートRを探索する。出力部50は、制御部40に探索された走行ルートRに関する情報を出力する。
【0032】
[構成1−1]制御部40には、建設機械10の安定性に基づいて決定された勾配の許容範囲が設定される。制御部40は、建設機械10が許容範囲内の勾配のみを走行して目的地P2まで到達可能な走行ルートRである成形不要ルートR1を発見した場合、成形不要ルートR1に関する情報を出力部50に出力させる。
【0033】
[構成1−2]制御部40は、成形不要ルートR1を発見しない場合、
図5に示すように、許容範囲内の勾配のみを走行して目的地P2まで建設機械10を到達可能にするために、地形を成形すべき地点P7を決定する。制御部40は、成形すべき地点P7および走行ルートR(成形必要ルートR2)に関する情報を出力部50に出力させる。
【0034】
走行ルートガイダンス装置20は、上記[構成1−1]を備える。よって、
図3に示すように、走行ルートガイダンス装置20の使用者は、許容範囲内の勾配のみを走行して目的地P2まで到達可能な成形不要ルートR1に関する情報を入手できる。よって、使用者は、地形の成形が不要であること、および、どの成形不要ルートR1を走行すべきか、が分かる。よって、走行ルートガイダンス装置20は、現在地P1から目的地P2まで建設機械10を容易に到達させるようにガイドできる。
【0035】
図5に示すように、許容範囲外の勾配を走行しなければ目的地P2まで建設機械10が到達できない場合は、成形不要ルートR1(
図3参照)が発見されない。そこで、走行ルートガイダンス装置20は、上記[構成1−2]を備える。よって、成形不要ルートR1が発見されない場合でも、使用者は、どの地点(成形すべき地点P7)を成形すべきか、および、どの走行ルートR(成形必要ルートR2)を走行すべきか、が分かる。よって、走行ルートガイダンス装置20は、許容範囲外の勾配を走行しなければ目的地P2まで建設機械10が到達できない場合であっても、建設機械10を目的地P2まで容易に到達させるようにガイドできる。
【0036】
(第2の発明の効果)
[構成2]上記の許容範囲(勾配の許容範囲)は、
図4に示す勾配の方向D1に対する、建設機械10のクローラ11cの方向D2によって異なるように制御部40に設定される。
【0037】
通常、勾配の方向D1に対する、クローラ11cの方向D2によって、建設機械10の安定度が異なる。例えば、建設機械10の安定度が最も低い状態でも建設機械10の安定性を確保できるように勾配の許容範囲が設定される(最も安全側で設定される)と、許容範囲が狭くなりすぎる。すると、勾配の方向D1に対するクローラ11cの方向D2によっては、建設機械10が安定性を確保した状態で走行可能な勾配であるにもかかわらず、制御部40が「許容範囲外」の勾配と判断してしまう場合がある。そこで、上記[構成2]では、勾配の方向D1に対する、建設機械10のクローラ11cの方向D2に応じて、勾配の許容範囲を適切に設定できる。その結果、建設機械10が安定性を確保した状態で走行可能な勾配であるにもかかわらず、許容範囲外の勾配と判断してしまうことを抑制できる。
【0038】
(第3の発明の効果)
[構成3]制御部40は、予め定められた評価条件に基づいて走行ルートRを評価し、評価の高さに基づいて出力部50に出力させる走行ルートRを決定する。評価条件には、走行ルートRでの勾配の緩やかさが含まれる。
【0039】
上記[構成3]により、できるだけ勾配が緩やかな走行ルートRに関する情報を、出力部50に出力させることができる。よって、走行ルートガイダンス装置20は、建設機械10をより安定させた状態で、目的地P2まで到達させるようにガイドできる。
【0040】
(第4の発明の効果)
[構成4]制御部40は、予め定められた評価条件に基づいて走行ルートRを評価し、評価の高さに基づいて出力部50に出力させる走行ルートRを決定する。評価条件には、現在地P1から目的地P2まで建設機械10を到達させるのに必要な燃料の少なさが含まれる。
【0041】
上記[構成4]により、できるだけ少ない燃料で目的地P2まで到達できる走行ルートRに関する情報を、出力部50に出力させることができる。よって、走行ルートガイダンス装置20は、できるだけ少ない燃料で目的地P2まで建設機械10を到達させるようにガイドできる。
【0042】
(第5の発明の効果)
[構成5]走行ルートガイダンス装置20は、複数の走行ルートRの候補(
図6参照)から1つの走行ルートRを使用者に選択させる選択部31を備える。
【0043】
上記[構成5]により、使用者の利便性を高めることができる。
【0044】
(第6の発明の効果)
[構成6]建設機械10の走行は、建設機械10の外部から操作される、または、自動制御により操作される。
【0045】
上記[構成6]の場合、走行ルートガイダンス装置20の使用者(走行ルートRに関する情報を得ようとする者)は、建設機械10に乗車せず、建設機械10の外部にいることが想定される。このような使用者は、建設機械10に乗車する者に比べ、建設機械10の周囲の勾配を把握しにくい場合がある。その結果、建設機械10の外部の使用者が、どの走行ルートRが適切であるか、地形の成形が必要か否か、地形の成形が必要であれば成形すべき地点P7がどこであるか、を把握しにくい場合がある。一方、走行ルートガイダンス装置20では、建設機械10の外部の使用者は、どの成形不要ルートR1を走行すべきか、地形の成形が必要であれば成形すべき地点P7がどこであるか、が分かる(上記[構成1])。よって、上記[構成6]の場合に、上記[構成1]による効果が、特に有効である。
【0046】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、
図1に示すブロック図の構成は変更されてもよい。例えば、
図2などに示すフローチャートのステップの順序は変更されてもよい。例えば、構成要素の一部が設けられなくてもよく、ステップの一部が行われなくてもよい。
【0047】
例えば、
図5に示す複数の走行ルートRの候補から1つの走行ルートRを選択するステップ(
図2のS32、S42)は設定されなくてもよく、選択部31(
図1参照)は設けられなくてもよい。
【0048】
例えば、複数の構成要素が兼用されてもよい。例えば、
図1に示す目的地取得部23、選択部31、および出力部50のうち2以上の構成要素が、例えば1つのディスプレイなどで兼用されてもよい。