【実施例】
【0027】
図1および
図2は、道路1上を走行している自車両2と、道路1上において自車両2の前方に存在する小型電動車両3を示している。自車両2には本発明の実施例の運転支援装置11(
図3参照)が設けられている。運転支援装置11は、
図1または
図2に示すように、自車両2の前方に存在する小型電動車両3の挙動を認識し、その認識結果に基づいて自車両2の運転者の運転を支援し、または自車両2の走行を制御する装置である。
【0028】
自車両2は手動運転車両でもよいし、自動運転車両でもよい。ここでいう手動運転車両とは自動運転のレベルが0の車両であり、自動運転車両とは自動運転のレベルが1以上の車両である。運転支援装置11を手動運転車両である自車両2に適用した場合には、運転支援装置11により、自車両2の前方に存在する小型電動車両3の挙動の認識結果に基づき、自車両2と小型電動車両3との接触または急接近の危険性が高まったことを自車両2の運転者に知らせることができる。また、運転支援装置11を自動運転車両である自車両2に適用した場合には、運転支援装置11により、自車両2の前方に存在する小型電動車両3の挙動の認識結果に基づき、自車両2と小型電動車両3との接触または急接近が回避されるように自車両2の走行を制御することができる。また、図中の自車両2は自動四輪車であるが、自車両は、自動二輪車や自動三輪車等の鞍乗型車両でもよい。
【0029】
小型電動車両3は、運転支援装置11(具体的には後述する車両挙動認識装置12)の認識対象の一例であり、電動車いすまたは電動カートと呼ばれる車両である。なお、運転支援装置11の認識対象である小型電動車両は電動車いすおよび電動カートに限らない。運転支援装置11の認識対象である小型電動車両には、走行の動力源として電動の原動機を有し、車輪の数が3つまたは4つであり、シートが単座式であり、乗員定数が一人であり、かつ車両の幅が大きくても1m程度の種々の車両が含まれる。また、縦方向に一列に配置された2つまたは3つのシートを有する二人乗りまたは三人乗りの三輪または四輪の電動車両も、運転支援装置11の認識対象である小型電動車両に含まれる。また、図中の小型電動車両3はキャノピーを有していないが、キャノピーを有する電動車いすまたは電動カートも、運転支援装置11の認識対象である小型電動車両に含まれる。また、電動車いすまたは電動カートの最高速度は一般的に時速6km未満であるが、最高速度が時速15km程度(徐行速度より少し速いレベル)である車両であっても、上記条件を満たす場合には運転支援装置11の認識対象である小型電動車両に含まれる。
【0030】
運転支援装置11(具体的には車両挙動認識装置12)は、小型電動車両3の構成要素の形状や位置に基づいて小型電動車両3の挙動を認識する。そこで、運転支援装置11の詳細な説明に入る前に、小型電動車両3の構成要素について説明する。
図5ないし
図8は、
図1または
図2中の小型電動車両3の詳細を示している。詳しくは、
図5は小型電動車両3の斜視図であり、
図6は小型電動車両3の正面図であり、
図7は小型電動車両3の背面図であり、
図8は小型電動車両3の平面図である。なお、
図1、
図2、
図6、
図7および
図8では、小型電動車両3の運転者4を二点鎖線で模式的に示している。
【0031】
図5に示すように、小型電動車両3は、ボディ31、操舵輪としての一対の前輪32、および駆動輪としての一対の後輪33を有している。一対の前輪32は、ボディ31の前部の左側および右側にそれぞれ配置されている。一対の後輪33は、ボディ31の後部の左側および右側にそれぞれ配置されている。また、
図7に示すように、ボディ31の後部の下側には、後輪33を駆動する駆動源としてモータ34が設けられている。また、
図6に示すように、ボディ31の前部には左右一対のフロントフェンダ35が設けられ、
図7に示すように、ボディ31の後部には左右一対のリアフェンダ36が設けられている。各フロントフェンダ35は、前輪32の上側であって前輪32に接近した位置に配置されている。また、各リアフェンダ36は、後輪33の上側であって後輪33に接近した位置に配置されている。
【0032】
また、
図6に示すように、ボディ31の前面の左右方向中央にはヘッドライト37が設けられている。また、
図7に示すように、小型電動車両3は一対のウインカランプ38を有している。一対のウインカランプ38は、ボディ31の後部の左角部および右角部にそれぞれ配置されている。また、ボディ31の後面の左部および右部には反射板39がそれぞれ設けられている。
【0033】
また、
図5に示すように、ボディ31の前部の左右方向中央にはフロントフレーム40が設けられている。フロントフレーム40はボディ31から上方へ伸長している。また、フロントフレーム40の上端部には操作ボックス41が設けられている。操作ボックス41は、小型電動車両3の前上部の左右方向中央に配置されている。操作ボックス41には、
図8に示すように、アクセルレバー42およびブレーキレバー43が設けられている。また、図示を省略するが、操作ボックス41には、前後進切替スイッチやウインカスイッチ、表示器等が設けられている。
【0034】
また、フロントフレーム40の上端部にはハンドル44が設けられている。ハンドル44は、
図8に示すように、左右対称の形状を有しており、小型電動車両3の前上部の左右方向中央に配置されている。また、ハンドル44の両端部にはハンドルグリップ45がそれぞれ設けられている。これらハンドルグリップ45は互いに左右対称の形状を有し、小型電動車両3の左右方向中央を基準に左右対称の位置に配置されている。また、小型電動車両3は一対のバックミラー46を有している。これらバックミラー46は、
図6に示すように、互いに左右対称の形状を有し、小型電動車両3の前上部において、小型電動車両3の左右方向中央を基準に左右対称の位置に配置されている。また、フロントフレーム40には荷籠47が取り付けられている。荷籠47は、左右対称の形状を有し、小型電動車両3の前部上側の左右方向中央に配置されている。
【0035】
また、
図5に示すように、ボディ31の後部上側には、小型電動車両3の運転者が着座するシート48が設けられている。シート48は、座部49、背もたれ部50および一対のアームレスト51を有している。
図7または
図8に示すように、座部49および背もたれ部50はそれぞれ左右対称の形状を有し、小型電動車両3の左右方向中央に配置されている。一対のアームレスト51は、互いに左右対称の形状を有し、小型電動車両3の後上部において、小型電動車両3の左右方向中央を基準に左右対称の位置に配置されている。また、
図5に示すように、ボディ31の前後方向略中央部には、シート48に着座した運転者4が足を置くステップ52が設けられている。
【0036】
図3は本発明の実施例の運転支援装置11の構成を示している。
図3に示すように、自車両2が自動運転車両である場合には、運転支援装置11は車両挙動認識装置12、警報装置25および走行制御装置27を備えている。また、自車両2が手動運転車両である場合には、運転支援装置11は車両挙動認識装置12および警報装置25を備えている。
【0037】
車両挙動認識装置12は、自車両2の前方に存在する小型電動車両3の挙動を認識する装置である。車両挙動認識装置12は、自車両2の前方の所定距離範囲内に存在する小型電動車両3が自車両の走行している道路1の中央側に移動を開始したか否かを判断することができる。
【0038】
車両挙動認識装置12は、演算処理装置13、記憶装置21および撮像装置23を備えている。演算処理装置13は、例えば、電子制御ユニット(ECU)、中央演算処理装置(CPU)またはマイクロプロセッサ(MPU)等である。記憶装置21は例えば半導体記憶素子等である。演算処理装置13および記憶装置21は自車両2に取り付けられている。撮像装置23は、自車両2の前方を撮像する装置であり、例えばビデオカメラまたはスチルカメラである。撮像装置23は、例えば自車両2の前部または上部に取り付けられている。本実施例における自車両2では、
図1または
図2に示すように、撮像装置23は自車両2の運転室内における前上部の左右方向中央に取り付けられている。
【0039】
また、演算処理装置13は、例えば記憶装置21に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより、存在判断部14、向き判断部15、位置判断部16および挙動判断部17として機能する。存在判断部14は、自車両2の前方の所定距離範囲内に小型電動車両3が存在するか否かを判断する。向き判断部15は、小型電動車両3の向きが自車両2の向きと同じか逆かを判断する。位置判断部16は、小型電動車両3が自車両の前方における左側に位置しているか右側に位置しているかを判断する。挙動判断部17は、小型電動車両3の挙動、具体的には、小型電動車両3が左または右に移動を開始したか否かを判断する。
【0040】
警報装置25は、自車両2の運転者に向けて警報を発する装置である。警報装置25は、自車両2の室内に設けられたスピーカを利用して警報を音で出力することができる。また、警報装置25は、自車両2の計器盤等に設けられたランプやディスプレイを利用して警報を光や画面表示で出力することができる。
【0041】
走行制御装置27は、自車両2が自動運転車両である場合に、自車両2の走行を制御する装置である。走行制御装置27は、例えば自車両2に設けられた燃料噴射弁やスロットル装置を制御して自車両2のエンジン出力を制御することにより、または自車両2のブレーキを制御することにより、自車両を自動的に減速させ、または停止させることができる。
【0042】
図4は運転支援装置11による運転支援処理を示している。運転支援処理は例えば自車両2の走行中に実行される。また、運転支援処理の実行中、撮像装置23が自車両2の前方を常に撮像している。
【0043】
運転支援処理において、まず、存在判断部14が、撮像装置23により撮像された撮像画像に基づいて、自車両2の前方の所定距離範囲内に小型電動車両3が存在するか否かを判断する(
図4中のステップS1)。この判断は例えば次のように行うことができる。すなわち、自車両2の前方に存在する小型電動車両3と自車両2との間の距離と、当該小型電動車両3を撮像装置23で撮像することにより得られた撮像画像における小型電動車両3の縮小率(例えば小型電動車両3の実際の幅寸法と撮像画像中の幅寸法との比率)との関係を予め測定して記憶装置21に記憶しておく。この予め記憶された関係を用いて、実際の撮像画像における小型電動車両3の縮小率から当該小型電動車両3と自車両2との間の距離を特定する。そして、この特定した距離が上記所定距離範囲の閾値以下であるか否かを判断する。
【0044】
上記所定距離範囲の閾値は、自車両2が安全に停止することができる距離に設定されている。一般に、乾燥したアスファルトの道路上を時速40kmで走行している自動四輪車が制動を開始してから停止するまでの距離は17mである。また、乾燥したアスファルトの道路上を時速60kmで走行している自動四輪車が制動を開始してから停止するまでの距離は32mである。これらのことを考慮すると、自車両2が安全に停止することができる距離は例えば40mである。上記所定距離範囲の閾値は例えば40mに設定されている。
【0045】
存在判断部14による判断の結果、自車両2の前方の所定距離範囲内に小型電動車両3が存在する場合には(ステップS1:YES)、次に、向き判断部15が、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像に基づいて、小型電動車両3の向きが自車両2の向きと逆であるか同じであるかを判断する(ステップS2)。この判断は例えば次のように行うことができる。すなわち、小型電動車両3の向きが自車両2の向きと逆である場合、撮像装置23から得られた撮像画像には小型電動車両3の前面の画像が映る。したがって、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像から、小型電動車両3の前面に配置された構成要素を認識することができた場合には、小型電動車両3の向きが自車両2の向きと逆であると判断することができる。
図6に示すように、小型電動車両3の前面にはヘッドライト37および荷籠47が配置されている。向き判断部15は、例えば、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像から、小型電動車両3のヘッドライト37または荷籠47を認識することができた場合には、小型電動車両3の向きが自車両2の向きと逆であると判断する。一方、小型電動車両3の向きが自車両2の向きと同じである場合、撮像装置23から得られた撮像画像には小型電動車両3の後面の画像が映る。したがって、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像から、小型電動車両3の後面に配置された構成要素を認識することができた場合には、小型電動車両3の向きが自車両2の向きと同じであると判断することができる。
図7に示すように、小型電動車両3の後面には一対のウインカランプ38および背もたれ部50が配置されている。向き判断部15は、例えば、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像から、小型電動車両3の一対のウインカランプ38または背もたれ部50を認識することができた場合には、小型電動車両3の向きが自車両2の向きと同じであると判断する。
【0046】
向き判断部15による判断の結果、小型電動車両3の向きが自車両2の向きと逆である場合には、次に、位置判断部16が、撮像装置23により撮像された撮像画像に基づいて、小型電動車両3が自車両2の前方における左側に位置しているか右側に位置しているかを判断する(ステップS3)。この判断は、撮像装置23から得られた自車両2の前方の撮像画像における小型電動車両3の位置を認識することにより行うことができる。
【0047】
位置判断部16による判断の結果、小型電動車両3が自車両2の前方における左側に位置している場合には、次に、挙動判断部17が、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、小型電動車両3のフェンダ35、36よりも上側に位置する左右対称の形状を有する構成要素における左側部分および右側部分のそれぞれの面積変化、または小型電動車両3のフェンダ35、36よりも上側における左右対称の位置に配置された一対の構成要素のそれぞれの面積変化に基づいて、小型電動車両3が自車両2から見て右に移動を開始したか否かを判断する。具体的には、挙動判断部17は、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て、小型電動車両3のハンドル44の右側部分の面積がハンドル44の左側部分の面積よりも小さくなるように変化したか否かを判断する(ステップS4)。なお、ハンドル44は、フェンダ35、36よりも上側に位置する左右対称の形状を有する構成要素に当たる。
【0048】
自車両2の前方において自車両2の向きと逆向きに走行または停止している小型電動車両3が自車両2から見て右に移動を開始した場合には、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て小型電動車両3のハンドル44の右側部分の面積がハンドル44の左側部分の面積よりも小さくなるように変化する。したがって、自車両2から見て小型電動車両3のハンドル44の右側部分の面積がハンドル44の左側部分の面積よりも小さくなるように変化したことに基づいて、小型電動車両3が自車両2から見て右に移動を開始したことを認識することができる。
【0049】
撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て、ハンドル44の右側部分の面積は、
図6中の破線で囲った部分HRに相当する部分の面積であり、ハンドル44の左側部分の面積は、
図6中の破線で囲った部分HLに相当する部分の面積である。挙動判断部17は、例えば、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、
図6中の部分HRに相当する部分の面積値から
図6中の部分HLに相当する部分の面積値を引き、それにより今回得られた値と、今回と同じステップを経て前回得られた値とを比較する。その結果、今回得られた値が前回得られた値よりも所定量以上減少した場合に、自車両2から見て小型電動車両3のハンドル44の右側部分の面積がハンドル44の左側部分の面積よりも小さくなるように変化したと判断する。
【0050】
また、ステップS3における位置判断部16による判断の結果、小型電動車両3が自車両2の前方における右側に位置している場合には、挙動判断部17が、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、小型電動車両3のフェンダ35、36よりも上側に位置する左右対称の形状を有する構成要素における左側部分および右側部分のそれぞれの面積変化、または小型電動車両3のフェンダ35、36よりも上側における左右対称の位置に配置された一対の構成要素のそれぞれの面積変化に基づいて、小型電動車両3が自車両2から見て左に移動を開始したか否かを判断する。具体的には、挙動判断部17は、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て、小型電動車両3のハンドル44の右側部分の面積がハンドル44の左側部分の面積よりも大きくなるように変化したか否かを判断する(ステップS5)。
【0051】
自車両2の前方において自車両2の向きと逆向きに走行または停止している小型電動車両3が自車両2から見て左に移動を開始した場合には、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て小型電動車両3のハンドル44の右側部分の面積がハンドル44の左側部分の面積よりも大きくなるように変化する。したがって、自車両2から見て小型電動車両3のハンドル44の右側部分の面積がハンドル44の左側部分の面積よりも大きくなるように変化したことに基づいて、小型電動車両3が自車両2から見て左に移動を開始したことを認識することができる。
【0052】
挙動判断部17は、例えば、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、
図6中の部分HRに相当する部分の面積値から
図6中の部分HLに相当する部分の面積値を引き、それにより今回得られた値と、今回と同じステップを経て前回得られた値とを比較する。その結果、今回得られた値が前回得られた値よりも所定量以上増加した場合に、自車両2から見て小型電動車両3のハンドル44の右側部分の面積がハンドル44の左側部分の面積よりも大きくなるように変化したと判断する。
【0053】
一方、向き判断部15による判断の結果、小型電動車両3の向きが自車両2の向きと同じである場合には、位置判断部16が、撮像装置23により撮像された撮像画像に基づいて、小型電動車両3が自車両2の前方における左側に位置しているか右側に位置しているかを判断する(ステップS6)。この判断はステップS3における判断と同様に行うことができる。
【0054】
位置判断部16による判断の結果、小型電動車両3が自車両2の前方における左側に位置している場合には、次に、挙動判断部17が、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、小型電動車両3のフェンダ35、36よりも上側に位置する左右対称の形状を有する構成要素における左側部分および右側部分のそれぞれの面積変化、または小型電動車両3のフェンダ35、36よりも上側における左右対称の位置に配置された一対の構成要素のそれぞれの面積変化に基づいて、小型電動車両3が自車両2から見て右に移動を開始したか否かを判断する。具体的には、挙動判断部17は、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て、小型電動車両3の左側のアームレスト51の面積が右側のアームレスト51の面積よりも小さくなるように変化したか否かを判断する(ステップS7)。なお、左側および右側のアームレスト51は、フェンダ35、36よりも上側における左右対称の位置に配置された一対の構成要素に当たる。
【0055】
自車両2の前方において自車両2と同じ向きに走行または停止している小型電動車両3が自車両2から見て右に移動を開始した場合には、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て小型電動車両3の左側のアームレスト51の面積が右側のアームレスト51の面積よりも小さくなるように変化する。したがって、自車両2から見て小型電動車両3の左側のアームレスト51の面積が右側のアームレスト51の面積よりも小さくなるように変化したことに基づいて、小型電動車両3が自車両2から見て右に移動を開始したことを認識することができる。
【0056】
撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、左側のアームレスト51の面積は、
図7中の破線で囲った部分ALに相当する部分の面積であり、右側のアームレスト51の面積は、
図7中の破線で囲った部分ARに相当する部分の面積である。挙動判断部17は、例えば、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、
図7中の部分ALに相当する部分の面積値から
図7中の部分ARに相当する部分の面積値を引き、それにより今回得られた値と、今回と同じステップを経て前回得られた値とを比較する。その結果、今回得られた値が前回得られた値よりも所定量以上減少した場合に、自車両2から見て小型電動車両3の左側のアームレスト51の面積が右側のアームレスト51の面積よりも小さくなるように変化したと判断する。
【0057】
また、ステップS6における位置判断部16による判断の結果、小型電動車両3が自車両2の前方における右側に位置している場合には、挙動判断部17が、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、小型電動車両3のフェンダ35、36よりも上側に位置する左右対称の形状を有する構成要素における左側部分および右側部分のそれぞれの面積変化、または小型電動車両3のフェンダ35、36よりも上側における左右対称の位置に配置された一対の構成要素のそれぞれの面積変化に基づいて、小型電動車両3が自車両2から見て左に移動を開始したか否かを判断する。具体的には、挙動判断部17は、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て、小型電動車両3の左側のアームレスト51の面積が右側のアームレスト51の面積よりも大きくなるように変化したか否かを判断する(ステップS8)。
【0058】
自車両2の前方において自車両2と同じ向きに走行または停止している小型電動車両3が自車両2から見て左に移動を開始した場合には、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て小型電動車両3の左側のアームレスト51の面積が右側のアームレスト51の面積よりも大きくなるように変化する。したがって、自車両2から見て小型電動車両3の左側のアームレスト51の面積が右側のアームレスト51の面積よりも大きくなるように変化したことに基づいて、小型電動車両3が自車両2から見て左に移動を開始したことを認識することができる。
【0059】
挙動判断部17は、例えば、撮像装置23により撮像された小型電動車両3の撮像画像において、
図7中の部分ALに相当する部分の面積値から
図7中の部分ARに相当する部分の面積値を引き、それにより今回得られた値と、今回と同じステップを経て前回得られた値とを比較する。その結果、今回得られた値が前回得られた値よりも所定量以上増加した場合に、自車両2から見て小型電動車両3の左側のアームレスト51の面積が右側のアームレスト51の面積よりも大きくなるように変化したと判断する。
【0060】
挙動判断部17による判断の結果、(a)自車両2の前方左側に自車両2の向きと逆向きに走行または停止している小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て小型電動車両3のハンドル44の右側部分の面積がハンドル44の左側部分の面積よりも小さくなるように変化した場合(ステップS4:YES)、(b)自車両2の前方右側に自車両2の向きと逆向きに走行または停止している小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て小型電動車両3のハンドル44の右側部分の面積がハンドル44の左側部分の面積よりも大きくなるように変化した場合(ステップS5:YES)、(c)自車両2の前方左側に自車両2と同じ向きに走行または停止している小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て小型電動車両3の左側のアームレスト51の面積が右側のアームレスト51の面積よりも小さくなるように変化した場合(ステップS7:YES)、または(d)自車両2の前方右側に自車両2と同じ向きに走行または停止している小型電動車両3の撮像画像において、自車両2から見て小型電動車両3の左側のアームレスト51の面積が右側のアームレスト51の面積よりも大きくなるように変化した場合(ステップS8:YES)には、警報装置25が警報を発し、または走行制御装置27が自車両2を減速または停止させる(ステップS9)。
【0061】
すなわち、上記(a)の場合は、自車両2の前方左側に自車両2の向きと逆向きに走行または停止している小型電動車両3が自車両2から見て右に移動を開始し、道路1の中央側に寄り始めた状態である。また、上記(b)の場合は、自車両2の前方右側に自車両2の向きと逆向きに走行または停止している小型電動車両3が自車両2から見て左に移動を開始し、道路1の中央側に寄り始めた状態である(
図1参照)。また、(c)自車両2の前方左側に自車両2と同じ向きに走行または停止している小型電動車両3が自車両2から見て右に移動を開始し、道路1の中央側に寄り始めた状態である(
図2参照)。また、(d)自車両2の前方右側に自車両2と同じ向きに走行または停止している小型電動車両3が自車両2から見て左に移動を開始し、道路1の中央側に寄り始めた状態である。小型電動車両が道路1の中央側に寄り始めると、自車両2と小型電動車両3との接触または急接近の危険性が高まる。このような状態が認識されたとき、自車両2が手動運転車両である場合には、警報装置25が警報を発し、上記危険性が高まったことを自車両2の運転者に知らせる。また、上述したような状態が認識されたとき、自車両2が自動運転車両である場合には、警報装置25が警報を発し、かつ走行制御装置27が、自車両2と小型電動車両3との接触または急接近が回避されるように自車両2を減速または停止させる。
【0062】
以上で運転支援処理は終了するが、例えば、警報を発してから一定時間経過後、自車両2が減速から加速に転じた後、または自車両2が停止してから発進した後に、運転支援処理がステップS1から再び実行される。一方、上記(a)、(b)、(c)および(d)のいずれでもない場合には、運転支援処理はステップS1へ戻る。
【0063】
以上説明した通り、本発明の実施例の運転支援装置11における車両挙動認識装置12は、自車両2の前方において自車両2の向きと逆向きに走行または停止している小型電動車両3の撮像画像において、小型電動車両3のハンドル44における左側部分および右側部分のそれぞれの面積変化に基づいて、小型電動車両3が右または左に移動を開始したか否かを判断する。ハンドル44は、小型電動車両3のフェンダ35、36よりも上側に位置する左右対称の形状を有する構成要素に当たる。小型電動車両3において、フェンダ35、36よりも上側に位置する構成要素は外部に露出しているため撮像し易い。また、左右対称の形状を有する構成要素は、その左側部分および右側部分のそれぞれの面積変化、すなわち、左側部分の面積が右側部分の面積よりも大きくなるように変化しているか、または左側部分の面積が右側部分の面積よりも小さくなるように変化しているかを認識し易い。したがって、ハンドル44における左側部分および右側部分のそれぞれの面積変化に基づいて、小型電動車両3が右または左に移動を開始したことを容易かつ高精度に認識することができる。
【0064】
また、本発明の実施例の運転支援装置11における車両挙動認識装置12は、自車両2の前方において自車両2の向きと同じ向きに走行または停止している小型電動車両3の撮像画像において、小型電動車両3の一対のアームレスト51のそれぞれの面積変化に基づいて、小型電動車両3が右または左に移動を開始したか否かを判断する。一対のアームレスト51は、小型電動車両3のフェンダ35、36よりも上側における左右対称の位置に配置された一対の構成要素に当たる。小型電動車両3において、フェンダ35、36よりも上側に位置する構成要素は外部に露出しているため撮像し易い。また、左右対称の位置に配置された一対の構成要素は、それぞれの面積変化、すなわち、一対の構成要素において左側の構成要素の面積が右側の構成要素の面積よりも大きくなるように変化しているか、または一対の構成要素において左側の構成要素の面積が右側の構成要素の面積よりも小さくなるように変化しているかを認識し易い。したがって、一対のアームレスト51のそれぞれの面積変化に基づいて、小型電動車両3が右または左に移動を開始したことを容易かつ高精度に認識することができる。
【0065】
また、小型電動車両3において、ハンドル44だけでなく、荷籠47、ヘッドライト37、座部49および背もたれ部50も、フェンダ35、36よりも上側に位置する左右対称の形状を有する構成要素に当たる。荷籠47、ヘッドライト37、座部49または背もたれ部50の左側部分および右側部分のそれぞれの面積変化に基づいても、小型電動車両3が右または左に移動を開始したことを容易かつ高精度に認識することができる。また、小型電動車両3において、一対のアームレスト51だけでなく、一対のバックミラー46、一対のハンドルグリップ45および一対のウインカランプ38も、フェンダ35、36よりも上側における左右対称の位置に配置された一対の構成要素に当たる。一対のバックミラー46、一対のハンドルグリップ45または一対のウインカランプ38のそれぞれの面積変化に基づいても、小型電動車両3が右または左に移動を開始したことを容易かつ高精度に認識することができる。また、小型電動車両3において、フェンダ35、36よりも上側に位置する左右対称の形状を有する複数の構成要素およびフェンダ35、36よりも上側における左右対称の位置に配置された複数組の構成要素のうち、いくつか複数の構成要素を選択し、これら選択した複数の構成要素の左、右のそれぞれの面積変化に基づいても、小型電動車両3が右または左に移動を開始したことを容易かつ高精度に認識することができる。
【0066】
また、本発明の実施例の運転支援装置11における車両挙動認識装置12によれば、撮像装置23のみにより、すなわちレーダ等の高価な装置を利用することなく、小型電動車両3の挙動を容易かつ高精度に認識することができる。したがって、小型電動車両3の挙動認識を安価に実現することができる。
【0067】
また、本発明の実施例の運転支援装置11における車両挙動認識装置12によれば、高齢者の行動予測が困難である場合でも、高齢者が運転する小型電動車両3の挙動を高精度に認識することができる。すなわち、高齢者は、一般に、小型電動車両を右または左に移動させる際にウインカを出し忘れることが多く、または移動方向とは逆の方向のウインカを出すおそれもある。また、高齢者は、注意力の低下により、自車両の接近に気付かず、周囲の確認をすることなく、小型電動車両を自車両に接近する方向へ突然発進させるおそれがある。また、高齢者は、運動能力の低下により、自車両の接近を察知しても、小型電動車両を素早く路肩側へ寄せることができない場合がある。このように、高齢者の行動は、高齢でない成人の行動と比較して予測し難い。本発明の実施例の運転支援装置11における車両挙動認識装置12によれば、小型電動車両3の運転者4の行動予測を利用せずに、小型電動車両3の撮像画像に基づいて小型電動車両3の挙動を認識するので、行動を予測し難い高齢者が運転する小型電動車両の挙動を高精度に認識することができる。
【0068】
また、本発明の実施例の運転支援装置11における車両挙動認識装置12は、撮像装置23により撮像された撮像画像に基づいて小型電動車両3が自車両2の前方における左側に位置しているか右側に位置しているかを判断する。これにより、道路1の左側から中央側へ移動を開始した小型電動車両3、または道路1の右側から中央側へ移動を開始した小型電動車両3を認識することができる。
【0069】
また、本発明の実施例の運転支援装置11における車両挙動認識装置12は、自車両2の前方の所定距離範囲内に小型電動車両3が存在するか否かを判断する。そして、上記所定距離範囲の閾値は、自車両2が安全に停止することができる距離に設定されている。これにより、車両挙動認識装置12は、小型電動車両3から、自車両2が安全に停止することができる距離離れた位置で、小型電動車両3が道路の中央側へ移動を開始したことを認識することができる。そして、このような認識に応じて警報を発し、または自車両2を減速もしくは停止させることで、自車両2が小型電動車両3に接触または急接近することを確実に防止することができる。
【0070】
また、本発明の実施例の運転支援装置11を手動運転車両である自車両2に適用した場合には、自車両2の前方を走行する小型電動車両3が道路1の中央側へ移動を開始したときに警報を発することにより、小型電動車両3が道路1の中央側へ移動を開始したことを運転者に知らせることができる。これにより、運転者は、自車両2と小型電動車両3との接触または急接近を回避すべく、自車両2を減速または停止させることができる。また、本発明の実施例の運転支援装置11を自動運転車両である自車両2に適用した場合には、自車両2の前方を走行する小型電動車両3が道路1の中央側へ移動を開始したときに、自車両2を自動的に減速または停止させることができる。これにより、自車両2と小型電動車両3との接触または急接近が自動的に回避される。いずれの場合でも、本発明の実施例の運転支援装置11によれば、市街地や田舎道等を走行する小型電動車両3の数が増加した場合でも、自車両2と小型電動車両3との接触や急接近を防止することができ、予防安全を図ることができる。
【0071】
なお、上述した実施例では、車両挙動認識装置12により、自車両2の前方において走行または停止している小型電動車両3が道路1の左側または右側から道路1の中央側へ移動を開始したことを認識する場合を例に挙げたが、車両挙動認識装置12の向き判断部15および挙動判断部17の判断結果に基づき、自車両2の前方において道路1の中央から道路1の左側または右側へ移動を開始したことを認識するようにしてもよい。また、向き判断部15および挙動判断部17の判断結果に基づき、自車両2の前方を走行している小型電動車両3が道路1と交差する他の道路に向かって曲がり始めたことを認識するようにしてもよい。
【0072】
また、上述した実施例では、撮像装置23による撮像画像に基づいて自車両2の前方の所定距離範囲内に小型電動車両3が存在するか否かを判断することとしたが、自車両2と小型電動車両3との間の距離をレーダで測定し、その測定結果に基づいて自車両2の前方の所定距離範囲内に小型電動車両3が存在するか否かを判断してもよい。
【0073】
また、上述した実施例の運転支援装置11を自動運転車両である自車両2に適用した場合には、車両挙動認識装置12の認識結果に応じ、自車両2の操舵を自動的に制御して自車両2と小型電動車両3との接触または急接近を回避するようにしてもよい。
【0074】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両挙動認識装置および運転支援装置もまた本発明の技術思想に含まれる。