(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも2つの並列腕共振子は、前記第1入出力端子に近く接続された並列腕共振子から前記第2入出力端子に近く接続された並列腕共振子へ順に、反共振周波数が高くなっている、
請求項1または2に記載の高周波フィルタ。
前記少なくとも2つの並列腕共振子のうち、前記第1入出力端子に最も近く接続された並列腕共振子が接続された前記接続ノードと前記第1入出力端子とは、前記少なくとも1つの直列腕共振子のいずれも介さずに接続される、
請求項4に記載のマルチプレクサ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0022】
(実施の形態1)
[1.マルチプレクサの構成]
まず、実施の形態1に係るマルチプレクサの構成について説明する。
【0023】
図1は、実施の形態1に係るマルチプレクサ1の回路構成図である。
【0024】
マルチプレクサ1は、ラダー型のフィルタ10(高周波フィルタ)を含む複数のフィルタを備え、複数のフィルタのそれぞれの一方の入出力端子(入出力端子m11およびm21)が共通端子m1に共通に接続された分波・合波器である。複数のフィルタは、例えば、通過帯域が互いに異なる。本実施の形態では、マルチプレクサ1は、2つのフィルタを備えるデュプレクサである。
図1に示されるように、マルチプレクサ1は、それぞれラダー型のフィルタ10および20を備える。共通端子m1には、図示しないが、例えば、スイッチ回路等を介してアンテナ素子が接続される。アンテナ素子は、高周波信号を送受信する、例えばLTE(Long Term Evolution)等の通信規格に準拠したマルチバンド対応のアンテナである。本実施の形態では、共通端子m1には、スイッチ回路を介してアンテナ素子が接続される。また、複数のフィルタのそれぞれの他方の入出力端子(入出力端子m12およびm22)には、図示しないが、例えば、スイッチ回路又はパワーアンプ(PA)、ローノイズアンプ(LNA)等の増幅回路等を介してRF信号処理回路(RFIC:Radio Frequency Integrated Circuit)が接続される。
このRFICによって、通信に使用されるフィルタ
が制御される。例えば、フィルタ10および20が同時に使用されることで、キャリアアグリゲーション(CA)が行われてもよい。
【0025】
フィルタ10は、例えば、LTEのBand25Rx(1930−1995MHz)を通過帯域とする受信フィルタである。フィルタ10は、例えば、ラダー型の弾性波フィルタである。受信フィルタであるフィルタ10の入出力端子m12には、LNAが接続される。
【0026】
フィルタ10は、入出力端子m11(第1入出力端子)と入出力端子m12(第2入出力端子)とを結ぶ経路上に接続された少なくとも1つの直列腕共振子を備える。本実施の形態では、フィルタ10は、互いに直列接続された直列腕共振子s11〜s17を備える。
【0027】
また、フィルタ10は、当該経路上に設けられた接続ノードとグランドとの間に接続された少なくとも2つの並列腕共振子を備える。接続ノードとは、素子と素子、または、素子と端子の間の接続点であり、
図1では、n1等で示される点によって示している。本実施の形態では、フィルタ10は、少なくとも2つの並列腕共振子として、後述するインダクタL1および直列腕共振子s11の間のノードn1とグランドとの間に接続された並列腕共振子p11、直列腕共振子s13およびs14の間のノードn2とグランドとの間に接続された並列腕共振子p12、直列腕共振子s15およびs16の間のノードn3とグランドとの間に接続された並列腕共振子p13、直列腕共振子s17および入出力端子m12の間のノードn4とグランドとの間に接続された並列腕共振子p14を備える。
【0028】
並列腕共振子p14は、
フィルタ10を構成する少なくとも2つの並列腕共振子(並列腕共振子p11〜p14)のうち、入出力端子m12に最も近く接続された第1並列腕共振子である。並列腕共振子p14は、
これらの並列腕共振子のうち入出力端子m12に最も近くに接続されているため、フィルタ10の入出力端子m12側から見たインピーダンスに影響を与えやすい共振子となっている。なお、入出力端子m12に最も近くに接続とは、回路図上で入出力端子m12に最も近
いことを意味する。つまり、例えば基板上等での配置については、並列腕共振子p14は、並列腕共振子p11〜p14のうち入出力端子m12に最も近く
に配置されていなくてもよい。
【0029】
また、並列腕共振子p14が接続されたノードn4と入出力端子m12とは、少なくとも1つの直列腕共振子のいずれも介さずに接続される。したがって、ノードn4の入出力端子m12側には、直列腕共振子が接続されていないため、フィルタ10は、入出力端子m12側から見て、並列腕共振子p14から始まるラダー型フィルタとなっている。
【0030】
また、少なくとも2つの並列腕共振子のうち、入出力端子m11に最も近く接続された並列腕共振子p11が接続されたノードn1と入出力端子m11とは、少なくとも1つの直列腕共振子のいずれも介さずに接続される。したがって、ノードn1の入出力端子m11側には、直列腕共振子が接続されていないため、フィルタ10は、入出力端子m11側から見て、インダクタL1の次に並列腕共振子p11から始まるラダー型フィルタとなっている。
【0031】
なお、入出力端子m11および共通端子m1はアンテナ素子に接続されているため、以下では、入出力端子m11および共通端子m1をAnt端とも呼ぶ。また、入出力端子m12には、LNA等の受信用回路が接続されるため、以下では、入出力端子m12をRx端とも呼ぶ。
【0032】
少なくとも1つの直列腕共振子および少なくとも2つの並列腕共振子は、弾性波を用いた共振子であり、例えば、SAW(Surface Acoustic Wave)を利用した共振子、BAW(Bulk Acoustic Wave)を利用した共振子、もしくは、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)等である。なお、SAWには、表面波だけでなく境界波も含まれる。ここでは、これらの共振子をSAW共振子とする。これにより、フィルタ10を、圧電性を有する基板上に形成されたIDT(InterDigital Transducer)電極により構成できるので、急峻度の高い通過特性を有する小型かつ低背のフィルタ回路を実現できる。なお、圧電性を有する基板は、少なくとも表面に圧電性を有する基板である。当該基板は、例えば、表面に圧電薄膜を備え、当該圧電薄膜と音速の異なる膜、および、支持基板などの積層体で構成されていてもよい。また、当該基板は、例えば、高音速支持基板と、高音速支持基板上に形成された圧電薄膜とを含む積層体、高音速支持基板と、高音速支持基板上に形成された低音速膜と、低音速膜上に形成された圧電薄膜とを含む積層体、または、支持基板と、支持基板上に形成された高音速膜と、高音速膜上に形成された低音速膜と、低音速膜上に形成された圧電薄膜とを含む積層体であってもよい。なお、当該基板は、基板全体に圧電性を有していてもよい。また、以下で説明する共振子についても同様であるため、以下では詳細な説明を省略する。
【0033】
本発明においては、少なくとも2つの並列腕共振子のうち、入出力端子m12に最も近く接続された並列腕共振子p14の反共振周波数は、他のいずれの並列腕共振子の反共振周波数よりも高い。表1に、このときのそれぞれの並列腕共振子の反共振周波数の詳細を示す。以下では、それぞれの並列腕共振子の反共振周波数が表1に示される反共振周波数となっている例を、実施例とも呼ぶ。
【0035】
表1に示されるように、実施例では、少なくとも2つの並列腕共振子(並列腕共振子p11〜p14)は、入出力端子m11に近く接続された並列腕共振子p11から入出力端子m12に近く接続された並列腕共振子p14へ順に、反共振周波数が高くなっている。並列腕共振子の反共振周波数は、並列腕共振子がSAW共振子の場合には、IDT電極を構成する電極指の繰り返し周期で規定される。例えば、当該繰り返し周期を狭くすることで、反共振周波数を高くすることができる。
【0036】
また、フィルタ10は、少なくとも1つの直列腕共振子および少なくとも2つの並列腕共振子よりも入出力端子m11側において、少なくとも1つの直列腕共振子と直列に接続されたインダクタL1を備える。具体的には、
図1に示されるように、インダクタL1は、入出力端子m11とノードn1との間に接続されている。インダクタL1は、アンテナ素子に接続されるスイッチ回路等とフィルタ10との整合を取るためのマッチング素子である。
【0037】
ここで、
図1に示されるフィルタ10のようなラダー型フィルタの特徴について説明する。ラダー型フィルタは、通常、設計原理的に入力と出力のインピーダンスはほぼ同じとなる。例えば、フィルタ10におけるノードn1でのインピーダンスとノードn4でのインピーダンスとがほぼ同じとなる。ラダー型フィルタは、縦結合型フィルタのようなインピーダンス変換機能を有していないためである。
【0038】
縦結合型フィルタでは、入力IDTと出力IDTとが分かれているため、入力IDTのインピーダンスと出力IDTのインピーダンスとを異ならせることで、比較的自由に入力と出力のインピーダンスを調整できる。しかし、縦結合型フィルタは、ラダー型フィルタと比べて、IDTの対数が少ないため、ロスが大きくサージ破壊に弱いというデメリットがある。
【0039】
一方、ラダー型フィルタでは、入力と出力のインピーダンスは、それぞれ同じ一端子対共振子で構成されることから、大きく異ならせることが難しい。しかし、ラダー型フィルタは、縦結合型フィルタと比べて、低ロスでサージ破壊に強いというメリットがある。本発明では、詳細は後述するが、低ロスでサージ破壊に強いラダー型フィルタの入力と出力のインピーダンスを異ならせることができる。具体的には、入出力端子m11でのインピーダンスよりも入出力端子m12でのインピーダンスを大きくできる。
【0040】
フィルタ20は、例えば、LTEのBand25Tx(1850−1915MHz)を通過帯域とする送信フィルタである。フィルタ20は、例えば、ラダー型の弾性波フィルタである。送信フィルタであるフィルタ20の入出力端子m22には、PAが接続される。
【0041】
フィルタ20は、入出力端子m21と入出力端子m22とを結ぶ経路上に接続された直列腕共振子s21〜s28を備える。また、フィルタ20は、直列腕共振子s21およびs22の間のノードとグランドとの間に接続された並列腕共振子p21、直列腕共振子s23およびs24の間のノードとグランドとの間に接続された並列腕共振子p22、直列腕共振子s25およびs26の間のノードとグランドとの間に接続された並列腕共振子p23、直列腕共振子s27およびs28の間のノードとグランドとの間に接続された並列腕共振子p24を備える。並列腕共振子p21〜p23は、インダクタLaを介してグランドに接続され、並列腕共振子p24は、インダクタLbを介してグランドに接続されている。並列腕共振子p21〜p23に直列に接続されたインダクタLaは、並列腕共振子p21〜p23の共振周波数をシフトさせ、並列腕共振子p24に直列に接続されたインダクタLbは、並列腕共振子p24の共振周波数をシフトさせることができる。つまり、これらにより、フィルタ20の通過帯域の帯域幅や、通過帯域低域側の減衰帯域の帯域幅等を調整できる。
【0042】
[2.終端インピーダンスとフィルタ特性との関係]
次に、フィルタ10の終端インピーダンスとフィルタ特性との関係について
図2から
図7を用いて説明する。
【0043】
図2は、Rx端の終端インピーダンスを振ったときのフィルタ10の通過特性を示すグラフである。Rx端の終端インピーダンスとは、入出力端子m12から見たインピーダンスのことである。
図2中の破線、点線、実線、一点鎖線は、Rx端の終端インピーダンスが順に50Ω、60Ω、70Ω、80Ωのときのフィルタ10の通過特性を示している。
【0044】
図3は、Rx端の終端インピーダンスを振ったときのRx端のVSWR特性を示すグラフである。
図3中の破線、点線、実線、一点鎖線は、Rx端の終端インピーダンスが順に50Ω、60Ω、70Ω、80ΩのときのRx端のVSWR特性を示している。
【0045】
図2および
図3では、それぞれフィルタ10の通過帯域(1930−1995MHz)付近の特性を示している。ここで、Rx端の終端インピーダンスを振ったときの各特性の良し悪しを判断するために、当該通過帯域における最悪値を比較する。
【0046】
図4は、Rx端の終端インピーダンスを振ったときのフィルタ10のRx通過域における挿入損失の最悪値を比較したグラフである。なお、フィルタ10は受信フィルタであるため、フィルタ10の通過帯域をRx通過域とも呼んでいる。
【0047】
図5は、Rx端の終端インピーダンスを振ったときのRx端のRx通過域におけるVSWRの最悪値を比較したグラフである。
【0048】
上述したように、入出力端子m12(Rx端)には、LNAが接続されており、LNAの入力インピーダンスは、一般的に50Ωより大きく、65Ω以上であることが多い。本実施の形態では、入出力端子m12に接続されたLNAの入力インピーダンスが70Ωであるとする。
【0049】
したがって、
図4および
図5に示されるように、フィルタ10の通過帯域におけるRx端の終端インピーダンスが70Ωのときに、当該通過帯域においてフィルタ10とLNAとのインピーダンス整合が取れて、挿入損失およびVSWRが最も小さくなっている。
【0050】
図6は、Ant端の終端インピーダンスを振ったときのAnt端のVSWR特性を示すグラフである。Ant端の終端インピーダンスとは、入出力端子m11から見たインピーダンスのことである。
図6中の破線、実線、点線は、Ant端の終端インピーダンスが順に40Ω、50Ω、60ΩのときのAnt端のVSWR特性を示している。
【0051】
図6では、フィルタ10の通過帯域(1930−1995MHz)およびフィルタ20の通過帯域(1850−1915MHz)付近のVSWR特性を示している。ここで、Rx端の終端インピーダンスを振ったときのフィルタ10についてのVSWR特性の良し悪しを判断するために、フィルタ10の通過帯域における最悪値を比較する。
【0052】
図7は、Ant端の終端インピーダンスを振ったときのAnt端のRx通過域におけるVSWRの最悪値を比較したグラフである。
【0053】
上述したように、共通端子m1(Ant端)には、スイッチ回路が接続されており、無線通信用のアンテナ素子に接続されるスイッチ回路の出力インピーダンスは、一般的に50Ωであることが多い。本実施の形態では、共通端子m1に接続されたスイッチ回路の出力インピーダンスが50Ωであるとする。
【0054】
したがって、
図7に示されるように、フィルタ10の通過帯域におけるAnt端の終端インピーダンスが50Ωのときに、当該通過帯域においてフィルタ10とスイッチ回路とのインピーダンス整合が取れて、VSWRが最も小さくなっている。
【0055】
このように、フィルタ10が受信フィルタでありLNAが接続される場合等には、LNAの入力インピーダンスに合わせて、フィルタ10の一方の入出力端子(入出力端子m11)側から見たインピーダンスよりも他方の入出力端子(入出力端子m12)側から見たインピーダンスを大きくする必要がある。
【0056】
[3.実施例におけるインピーダンス特性]
次に、実施例におけるフィルタ10のインピーダンス特性について
図8および
図9を用いて説明する。
【0057】
図8は、実施例において、インダクタL1が接続された場合と未接続の場合におけるフィルタ10のAnt端のインピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図8中の破線は、インダクタL1が未接続の場合のインピーダンス特性を示し、実線は、インダクタL1が接続された場合のインピーダンス特性を示す。インダクタL1が未接続とは、入出力端子m11とノードn1とがインダクタL1を介さずに接続されることを意味する。また、
図8を含む以降説明するスミスチャートおよびアドミタンスチャートは、1930MHzから1995MHzにおけるインピーダンス特性を示し、中央を50Ωとしている。
【0058】
図8に示されるように、インダクタL1が未接続の場合、スミスチャート上でAnt端のインピーダンスが50Ωの等レジスタンス円を、リアクタンスが0の点から反時計回りに回転した位置(容量性となる位置:
図8中の破線)となるようにフィルタ10が設計される。これにより、インダクタL1が接続された状態では、フィルタ10の通過帯域におけるAnt端のインピーダンスが、スミスチャート上において50Ωの等レジスタンス円を時計回りに回転し、レジスタンスがほぼ50Ω、リアクタンスがほぼ0となる(
図8中の実線)。このとき、図示していないが、インダクタL1が接続された状態では、フィルタ10の通過帯域外(例えば、フィルタ20の通過帯域)におけるインピーダンスは大きくなる。インダクタL1により、フィルタ20の通過帯域におけるインピーダンスが、スミスチャート上において等レジスタンス円を時計回りに大きく回転するためである。このように、インダクタL1が未接続の状態でのインピーダンスが容量性となるように設計しておくことで、インダクタL1が接続された状態では、フィルタ10の通過帯域におけるAnt端のインピーダンスを50Ωにでき、フィルタ20の通過帯域におけるAnt端のインピーダンスを大きくできる(オープンに近づけることができる)。
【0059】
図9は、実施例において、並列腕共振子p14が接続された場合と未接続の場合におけるフィルタ10のRx端のインピーダンス特性を示すアドミタンスチャートである。
図9中の破線は、並列腕共振子p14が未接続の場合のインピーダンス特性を示し、実線は、並列腕共振子p14が接続された場合のインピーダンス特性を示す。並列腕共振子p14が未接続とは、ノードn4とグランドとの間に並列腕共振子p14が接続されていないことを意味する。
【0060】
図9に示されるように、並列腕共振子p14が未接続の場合、スミスチャート上でRx端のインピーダンスが50Ωの等レジスタンス円を、リアクタンスが0の点から反時計回りに回転した位置(容量性となる位置:
図9中の破線)となっている。上述したように、ラダー型フィルタでは、入力と出力のインピーダンスがほぼ同じとなり、具体的には、フィルタ10におけるノードn1でのインピーダンスとノードn4でのインピーダンスとがほぼ同じとなるためである。当該位置は、アドミタンスチャート上で、レジスタンスが50Ωよりも大きく、例えばレジスタンスが70Ω、リアクタンスが0の点を通過する等コンダクタンス円(以下、70Ωを通過する等コンダクタンス円と呼ぶ)上となる。
【0061】
これに対して、並列腕共振子p14が接続された状態では、
並列腕共振子が誘導性素子として機能するため、フィルタ10の通過帯域におけるRx端のインピーダンスが、アドミタンスチャート上において70Ωを通過する等コンダクタンス円を反時計回りに回転し、レジスタンスがほぼ70Ω、リアクタンスがほぼ0となっている。
【0062】
[4.実施例と比較例1とのインピーダンス特性の比較]
次に、実施例におけるフィルタ10のインピーダンスと、比較例1におけるフィルタのインピーダンスとの比較を
図10から
図12を用いて説明する。比較例1におけるフィルタは、実施例におけるフィルタ10と回路構成は同じであり、並列腕共振子の反共振周波数が異なる。
【0063】
表2に、比較例1におけるフィルタのそれぞれの並列腕共振子の反共振周波数の詳細を示す。
【0065】
表2に示されるように、比較例1では、少なくとも2つの並列腕共振子(並列腕共振子p11〜p14)のうち、並列腕共振子p13の反共振周波数が最も高くなっている。つまり、入出力端子m12に最も近く接続された並列腕共振子p14の反共振周波数は最も高くなっていない。
【0066】
図10は、実施例および比較例1におけるフィルタのAnt端のインピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図11は、実施例および比較例1におけるフィルタのRx端のインピーダンス特性を示すスミスチャートである。各図中の実線は、実施例におけるフィルタ10のインピーダンス特性を示し、破線は、比較例1におけるフィルタのインピーダンス特性を示す。
【0067】
図10に示されるように、実施例および比較例1ともにAnt端のインピーダンスは50Ωと最適になっている。一方、Rx端のインピーダンスは、
図11に示されるように、比較例1では実施例と比べて容量性となり60Ω程度と小さくなってしまっている。これは、各フィルタの通過帯域において、実施例では、並列腕共振子p14が誘導性素子として機能しやすくなり、比較例1では、並列腕共振子p14が容量性素子として機能しやすくなるためである。これについて、
図12を用いてより詳しく説明する。
【0068】
図12は、共振子が誘導性素子として機能する周波数帯域を説明するための図である。
図12の上側に示す図は、実施例および比較例1における並列腕共振子p14のインピーダンス特性を模式的に示すグラフである。
図12中の実線は、実施例における並列腕共振子p14のインピーダンス特性を示し、破線は、比較例1における並列腕共振子p14のインピーダンス特性を示す。
図12の下側に示す図は、実施例および比較例1におけるフィルタの通過特性を模式的に示すグラフである。
【0069】
ラダー型フィルタの通過帯域は、ラダー型フィルタを構成する直列腕共振子の共振周波数および並列腕共振子の反共振周波数によって形成される。したがって、実施例および比較例1では、並列腕共振子に着目すると、並列腕共振子p11〜p14の反共振周波数によって通過帯域が形成される。実施例では、並列腕共振子p11〜p14のうち、並列腕共振子p14の反共振周波数が最も高いため、
図12に示されるように、当該反共振周波数は、通過帯域の高域端に位置することになる。一方、比較例1では、並列腕共振子p11〜p14のうち、並列腕共振子p14の反共振周波数は最も高くはないため、当該反共振周波数は、実施例よりも通過帯域の低域側に位置している。
【0070】
共振子には、周波数に応じて、容量性素子として機能する帯域と誘導性素子として機能する帯域がある。具体的には、反共振周波数以上および共振周波数以下の帯域では、共振子は、容量性素子として機能し、反共振周波数から共振周波数の帯域では、誘導性素子として機能する。したがって、反共振周波数が通過帯域における高域側に位置する場合には、当該通過帯域において共振子が誘導性素子として機能しやすくなり、反共振周波数が通過帯域における低域側に位置する場合には、当該通過帯域において共振子が容量性素子として機能しやすくなる。
図12に示されるように、実施例では、通過帯域と反共振周波数−共振周波数間の帯域とが重複している部分が多いため並列腕共振子p14は当該通過帯域では誘導性素子として機能しやすくなり、比較例1では、通過帯域と反共振周波数−共振周波数間の帯域とが重複している部分が少ないため並列腕共振子p14は当該通過帯域では容量性素子として機能しやすくなる。
【0071】
これにより、
図11に示されるように、実施例では、反共振周波数が最も高く、パラレルインダクタの作用が生じ
やすい並列腕共振子p14が接続されることで、Rx端
から見たインピーダンス
は通過帯域内で誘導性となり、アドミタンスチャート上における70Ωを通過する等コンダクタンス円を反時計回りに回転し、レジスタンスがほぼ70Ω、リアクタンスがほぼ0となる。比較例1では、反共振周波数が低く、パラレルキャパシタの作用が生じ
やすい並列腕共振子p14が接続されることで、Rx端のインピーダンスがアドミタンスチャート上における70Ωを通過する等コンダクタンス円を時計回りに回転することになるため、実施例と比べて、容量性かつ低インピーダンスとなる。
【0072】
このように、少なくとも2つの並列腕共振子のうち、入出力端子m12(Rx端)に最も近く接続され、Rx端のインピーダンスに最も影響を与える並列腕共振子p14の反共振周波数が最も高いことで、Rx端のインピーダンスをAnt端のインピーダンスよりも大きくできる。よって、マッチング素子として簡易な構成であるインダクタL1を用い、Rx端に最も近く接続された並列腕共振子p14の反共振周波数を最も高くするだけで、入力インピーダンスが50Ωよりも大きいLNAとのインピーダンス整合が可能となる。
【0073】
[5.実施例のその他の特徴]
次に、実施例のその他の特徴について説明する。
【0074】
図1に示されるように、入出力端子m12に最も近く接続された並列腕共振子p14が接続されたノードn4と入出力端子m12とは、直列腕共振子を介さずに接続されている。直列腕共振子は、インダクタンス成分を有するため、ノードn4と入出力端子m12との間に直列腕共振子が接続されている場合には、スミスチャート上で、入出力端子m12側から見たインピーダンス(Rx端のインピーダンス)は、当該インダクタンス成分によって、等レジスタンス円上を時計回りに回転
し、
その分、入出力端子m12側から見たインピーダンスが低インピーダンス側にシフト
する。
これに対して、並列腕共振子p14が接続されたノードn4と入出力端子m12とが、直列腕共振子を介さずに接続され
ている
場合は、入出力端子m12側から見たインピーダンス
をより大きくすること
ができる。
【0075】
また、
図1に示されるように、入出力端子m11に最も近く接続された並列腕共振子p11が接続されたノードn1と入出力端子m11とは、直列腕共振子を介さずに接続されている。フィルタ10の通過帯域外(例えば、フィルタ20の通過帯域)におけるインピーダンスが大きいことで、フィルタ10とフィルタ20との干渉を抑制できる
。ノードn1と入出力端子m11との間に直列腕共振子が接続されている場
合は、フィルタ20の通過帯域におけるインピーダンスはより容量性に位相が回転する
のに対して、ノードn1と入出力端子m11とが、直列腕共振子を介さずに接続される
場合は、
位相が回転しない分、インダクタL1のインダクタンス値を
さらに小さくでき
るので、損失を抑制でき、さらには、フィルタ10の小型化が可能となる。
【0076】
また、表1に示されるように、並列腕共振子p11〜p14は、入出力端子m11に近く接続された並列腕共振子p11から入出力端子m12に近く接続された並列腕共振子p14へ順に、反共振周波数が高くなっている。並列腕共振子p11〜p14のうち、入出力端子m12に近い並列腕共振子ほど、フィルタ10の入出力端子m12側から見たインピーダンスに影響を与えやすい共振子となる。したがって、入出力端子m12に近い並列腕共振子ほど、反共振周波数が高くなるため、入出力端子m12側から見たインピーダンスをより大きくすることができる。
【0077】
[6.比較例2]
次に、比較例2について、
図13から
図15を用いて説明する。
【0078】
図13は、比較例2に係るマルチプレクサ1aの回路構成図である。比較例2では、マルチプレクサ1aは、インダクタL1aを備える。また、マルチプレクサ1aは、実施例に係るフィルタ10の代わりにフィルタ10aを備える。
【0079】
フィルタ10aは、インダクタL1を備えていない。つまり、マルチプレクサ1aは、インダクタL1の代わりにインダクタL1aを備える。また、実施例に係るフィルタ10では、ノードn1と入出力端子m11との間に直列腕共振子が接続されていなかったが、比較例2に係るフィルタ10aは、ノードn1と入出力端子m11との間に直列腕共振子s18が接続されている。上述したように、ノードn1と入出力端子m11とは直列腕共振子を介さず接続されることが好ましいが、フィルタ10aのように接続されていてもよい。
【0080】
表3に、比較例2におけるフィルタのそれぞれの並列腕共振子の反共振周波数の詳細を示す。
【0082】
表3に示されるように、実施例と同様、並列腕共振子p11〜p14のうち並列腕共振子p14の反共振周波数が最も高くなっている。上述したように、並列腕共振子p11から並列腕共振子p14へ順に、反共振周波数が高くなっていくことが好ましいが、比較例2のように、並列腕共振子p11から並列腕共振子p14へ順に、反共振周波数が高くなっていかなくてもよい。
【0083】
マルチプレクサ1aにおけるその他の点は、実施例に係るマルチプレクサ1と同じであるため説明を省略する。
【0084】
インダクタL1aは、共通端子m1と入出力端子m11およびm21との間に接続されている。インダクタL1aは、アンテナ素子に接続されるスイッチ回路等とフィルタ10および20との整合を取るためのマッチング素子である。実施例では、Ant端における整合は、インダクタL1により行われたが、比較例2のように、インダクタL1aによって行うこともできる。
【0085】
図14は、比較例2において、インダクタL1aが接続された場合と未接続の場合におけるフィルタ10aのAnt端のインピーダンス特性を示すアドミタンスチャートである。
図14中の破線は、インダクタL1aが未接続の場合のインピーダンス特性を示し、実線は、インダクタL1aが接続された場合のインピーダンス特性を示す。インダクタL1aが未接続とは、共通端子m1と入出力端子m11またはm21とを結ぶ経路とグランドとの間にインダクタL1aが接続されていないことを意味する。
【0086】
図14に示されるように、インダクタL1aが未接続の場合、アドミタンスチャート上でAnt端のインピーダンスが、レジスタンスが50Ω、リアクタンスが0の点を通過する等コンダクタンス円(以下、50Ωを通過する等コンダクタンス円とも呼ぶ)を、レジスタンスが50Ω、リアクタンスが0の点から時計回りに回転した位置(容量性となる位置:
図14中の破線)となるようにフィルタ10aが設計される。これにより、インダクタL1aが接続された状態では、フィルタ10aの通過帯域におけるAnt端のインピーダンスが、アドミタンスチャート上において50Ωを通過する等コンダクタンス円を反時計回りに回転し、レジスタンスがほぼ50Ω、リアクタンスがほぼ0となる(
図14中の実線)。
【0087】
図15は、比較例2において、並列腕共振子p14が接続された場合と未接続の場合におけるフィルタ10aのRx端のインピーダンス特性を示すアドミタンスチャートである。
図15中の破線は、並列腕共振子p14が未接続の場合のインピーダンス特性を示し、実線は、並列腕共振子p14が接続された場合のインピーダンス特性を示す。
【0088】
図15に示されるように、並列腕共振子p14が未接続の場合、アドミタンスチャート上でRx端のインピーダンスが、50Ωを通過する等コンダクタンス円を、レジスタンスが50Ω、リアクタンスが0の点から時計回りに回転した位置(容量性となる位置:
図15中の破線)となっている。上述したように、ラダー型フィルタでは、入力と出力のインピーダンスがほぼ同じとなり、具体的には、フィルタ10aにおけるノードn1でのインピーダンスとノードn4でのインピーダンスとがほぼ同じとなるためである。
【0089】
これに対して、並列腕共振子p14が接続された状態では、フィルタ10の通過帯域におけるRx端のインピーダンスが、アドミタンスチャート上において50Ωを通過する等コンダクタンス円を反時計回りに回転し、レジスタンスがほぼ50Ω、リアクタンスがほぼ0となっている(
図15中の実線)。
【0090】
[7.実施例と比較例2とのインピーダンス特性の比較]
次に、実施例におけるフィルタ10のインピーダンスと、比較例2におけるフィルタ10aのインピーダンスとの比較を
図16および
図17を用いて説明する。
【0091】
図16は、実施例および比較例2におけるフィルタのAnt端のインピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図17は、実施例および比較例2におけるフィルタのRx端のインピーダンス特性を示すスミスチャートである。各図中の実線は、実施例におけるフィルタ10のインピーダンス特性を示し、破線は、比較例2におけるフィルタ10aのインピーダンス特性を示す。
【0092】
図16に示されるように、実施例および比較例2ともにAnt端のインピーダンスは50Ωと最適になっている。一方、Rx端のインピーダンスは、
図17に示されるように、比較例2では実施例と同じようにリアクタンスはほぼ0となっているが、レジスタンスは50Ω程度と実施例の70Ωよりも小さくなってしまっている。これは、インダクタL1aが接続される前のフィルタ10aのインピーダンスが、50Ωを通過する等コンダクタンス円を時計回りに回転した位置(容量性となる位置)となるようにフィルタ10aを設計しているためである。当該位置は、レジスタンスが50Ωよりも小さい位置であり、反共振周波数が高い並列腕共振子p14を接続することによって、Rx端のインピーダンスが当該位置から等コンダクタンス円を反時計回りに回転したとしても、50Ωよりも大きくならない。
【0093】
このように、インダクタL1の代わりにインダクタL1aを用いた比較例2では、反共振周波数が最も高い並列腕共振子p14が接続されてはいるが、Rx端のインピーダンスをAnt端のインピーダンスよりも大きくすることが難しい。
比較例2では、Rx端のインピーダンスとAnt端のインピーダンスがほぼ同じになってしまうため、Rx端のインピーダンスが50Ωより大きくなるよう設計変更を行ったとしても、Ant端のインピーダンスも50Ωより大きくなり、Ant端とRx端のインピーダンスを両方とも最適に合わせることが困難となる。
【0094】
[8.まとめ]
以上説明したように、並列腕共振子p14は、フィルタ10を構成する並列腕共振子p11〜p14のうち、入出力端子m12に最も近く、フィルタ10の入出力端子m12側から見たインピーダンスに影響を与えやすい共振子となっている。また、並列腕共振子p14は、並列腕共振子p11〜p14のうち反共振周波数が最も高いため、フィルタ10の通過帯域における大部分において誘導性素子として機能する。
【0095】
そして、インダクタL1および並列腕共振子p14が接続される前のフィルタ10のインピーダンスが容量性となるように設計しておく。具体的には、スミスチャート上でインピーダンスが、例えば50Ωの等レジスタンス円を、リアクタンスが0の点から反時計回りに回転した位置となるように設計しておく。言い換えると、アドミタンスチャート上でレジスタンスが50Ωよりも大きくリアクタンスが0の点を通過する等コンダクタンス円上にインピーダンスが位置するように設計しておく。これにより、インダクタL1が接続された状態では、入出力端子m11側から見たインピーダンスは、スミスチャート上において50Ωの等レジスタンス円を時計回りに回転し、レジスタンスがほぼ50Ω、リアクタンスがほぼ0となる。また、並列腕共振子p14が接続された状態では、入出力端子m12側から見たインピーダンスは、アドミタンスチャート上においてレジスタンスが50Ωよりも大きくリアクタンスが0の点を通過する等コンダクタンス円を反時計回りに回転し、レジスタンスが50Ωよりも大きく(例えば70Ω)、リアクタンスがほぼ0となる。したがって、マッチング素子として、インダクタL1を用いるだけでよいため、マッチング素子の複雑化を抑制しつつ、一方の入出力端子m12側から見たインピーダンスを他方の入出力端子m11側から見たインピーダンスよりも大きくできる。具体的には、入出力端子m12側から見たインピーダンスにおけるレジスタンスを50Ωよりも大きくでき、リアクタンスをほぼ0にできる。これにより、例えば、フィルタ10とLNAとのインピーダンス整合が容易となる。
【0096】
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係る高周波フィルタ(フィルタ10)およびマルチプレクサ1について、実施の形態を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係るフィルタ10およびマルチプレクサ1を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0097】
例えば、上記実施の形態では、マルチプレクサ1は、デュプレクサであったが、トリプレクサ、クアッドプレクサ等であってもよい。
【0098】
また、例えば、上記実施の形態では、フィルタ10の通過帯域は、LTEのBand25Rx(1930−1995MHz)、フィルタ20の通過帯域は、LTEのBand25Tx(1850−1915MHz)であったが、これらは一例であり、要求仕様に応じて適宜決定される。また、フィルタ20は、送信フィルタであったが、受信フィルタであってもよい。また、フィルタ20は、ラダー型の弾性波フィルタであったが、LCフィルタ等であってもよい。