特許第6972971号(P6972971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972971制御システム、機械学習装置、メンテナンス支援装置、及びメンテナンス支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972971
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】制御システム、機械学習装置、メンテナンス支援装置、及びメンテナンス支援方法
(51)【国際特許分類】
   F16N 29/00 20060101AFI20211111BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20211111BHJP
   F16N 29/04 20060101ALI20211111BHJP
   G06Q 10/00 20120101ALI20211111BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20211111BHJP
   F16H 57/01 20120101ALI20211111BHJP
【FI】
   F16N29/00 D
   F16N7/38 F
   F16N29/04
   G06Q10/00 300
   B25J19/06
   F16H57/01
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-227872(P2017-227872)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-100353(P2019-100353A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中西 光章
(72)【発明者】
【氏名】若松 剛
(72)【発明者】
【氏名】内田 雄太郎
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−226488(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0082188(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 17/00
B25J 19/00
F16N 7/38
F16N 29/00
F16H 57/01
G06Q 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機を含むアクチュエータにおける前記減速機の回転速度に関する第一情報と、前記減速機に作用するトルクに関する第二情報と、前記減速機のグリースの鉄粉濃度を示す第三情報とを対応付けて記憶したデータベースと、
前記データベースに記憶された情報に基づく機械学習により、前記第一情報及び前記第二情報と前記第三情報との関係を示す濃度予測モデルを構築する第一モデル構築部と、
前記濃度予測モデルに、前記第一情報及び前記第二情報を入力して、前記第三情報の予測値を導出する濃度予測部と、
前記第三情報の予測値の経時的推移に基づいて、前記第三情報の上昇予測モデルを構築する第二モデル構築部と、
前記上昇予測モデルに基づいて、前記減速機のメンテナンスの推奨時期を導出する第一メンテナンス支援部と、を備える、アクチュエータの制御システム。
【請求項2】
前記減速機の回転速度及び当該減速機に作用するトルクと前記減速機のメンテナンスの推奨時期との関係を示す予測式に基づき導出される前記減速機のメンテナンスの推奨時期を、前記第一メンテナンス支援部により導出される前記減速機のメンテナンスの推奨時期に近付けるように、前記予測式を修正する予測式修正部と、
前記減速機の回転速度及び当該減速機に作用するトルクと前記予測式修正部により修正された前記予測式とに基づいて、前記減速機のメンテナンスの推奨時期を導出する第二メンテナンス支援部と、を更に備える、請求項に記載のアクチュエータの制御システム。
【請求項3】
前記予測式は、前記減速機の軸受の寿命予測式である、請求項に記載のアクチュエータの制御システム。
【請求項4】
減速機を含むアクチュエータにおける前記減速機の回転速度に関する第一情報と、前記減速機に作用するトルクに関する第二情報と、前記減速機のグリースの鉄粉濃度を示す第三情報とを対応付けて記憶したデータベースと、
前記データベースに記憶された情報に基づく機械学習により、前記第一情報及び前記第二情報と前記第三情報との関係を示す濃度予測モデルを構築するモデル構築部と、
前記第一情報及び前記第二情報を前記濃度予測モデルに入力して前記第三情報の予測値を導出する濃度予測部を有するメンテナンス支援装置から、前記第一情報及び前記第二情報と、当該第一情報及び当該第二情報を前記濃度予測モデルに入力して導出された前記第三情報の予測値とを受信するデータ受信部と、を備え
前記データベースは、前記データ受信部によって受信された前記第一情報と前記第二情報と前記第三情報の予測値とを対応付けて更に記憶する、機械学習装置。
【請求項5】
減速機を含むアクチュエータにおける前記減速機の回転速度に関する第一情報と、前記減速機に作用するトルクに関する第二情報と、前記第一情報及び前記第二情報と前記減速機のグリースの鉄粉濃度を示す第三情報との関係を示す濃度予測モデルに、前記第一情報及び前記第二情報を入力して前記第三情報の予測値を導出する濃度予測部と、
前記第三情報の予測値の経時的推移に基づいて、前記第三情報の上昇予測モデルを構築するモデル構築部と、
前記上昇予測モデルに基づいて、前記減速機のメンテナンスの推奨時期を導出する第一メンテナンス支援部と、を備える、メンテナンス支援装置。
【請求項6】
前記減速機の回転速度及び当該減速機に作用するトルクと前記減速機のメンテナンスの推奨時期との関係を示す予測式に基づき導出される前記減速機のメンテナンスの推奨時期を、前記第一メンテナンス支援部により導出される前記減速機のメンテナンスの推奨時期に近付けるように前記予測式を修正する予測式修正部と、
前記減速機の回転速度及び当該減速機に作用するトルクと前記予測式修正部により修正された前記予測式とに基づいて、前記減速機のメンテナンスの推奨時期を導出する第二メンテナンス支援部と、を更に備える、請求項に記載のメンテナンス支援装置。
【請求項7】
前記予測式は、前記減速機の軸受の寿命予測式である、請求項に記載のメンテナンス支援装置。
【請求項8】
前記第一情報と前記第二情報と前記第三情報を対応付けて記憶するデータベースと、前記データベースに記憶された情報に基づく機械学習により前記濃度予測モデルを構築する第一モデル構築部と、を有する機械学習装置から、前記第一モデル構築部によって構築された前記濃度予測モデルのデータを受信するモデル受信部を更に備える、請求項のいずれか一項に記載のメンテナンス支援装置。
【請求項9】
前記第一情報及び前記第二情報と、前記濃度予測部が前記濃度予測モデルに当該第一情報及び当該第二情報を入力して導出された前記第三情報の予測値とを対応付けて前記機械学習装置に送信するデータ送信部を更に備える、請求項に記載のメンテナンス支援装置。
【請求項10】
減速機を含むアクチュエータにおける前記減速機の回転速度に関する第一情報と、前記減速機に作用するトルクに関する第二情報と、前記第一情報及び前記第二情報と前記減速機のグリースの鉄粉濃度を示す第三情報との関係を示す濃度予測モデルに、前記第一情報及び前記第二情報を入力して前記第三情報の予測値を導出することと、
前記第三情報の予測値の経時的推移に基づいて、前記第三情報の上昇予測モデルを構築することと、
前記上昇予測モデルに基づいて、前記減速機のメンテナンスの推奨時期を導出することと、を含む、減速機のメンテナンス支援方法。
【請求項11】
前記減速機の回転速度及び当該減速機に作用するトルクと前記減速機のメンテナンスの推奨時期との関係を示す予測式に基づき導出される前記減速機のメンテナンスの推奨時期を、前記上昇予測モデルに基づいて導出される前記減速機のメンテナンスの推奨時期に近付けるように前記予測式を修正することと、
前記減速機の回転速度及び当該減速機に作用するトルクと修正された前記予測式とに基づいて、前記減速機のメンテナンスの推奨時期を導出することと、を更に含む、請求項10に記載の減速機のメンテナンス支援方法。
【請求項12】
前記予測式は、前記減速機の軸受の寿命予測式である、請求項11に記載の減速機のメンテナンス支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、機械学習装置、メンテナンス支援装置、データの生成方法、及びメンテナンス支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、減速機の定格寿命、定格速度、及び定格トルクと、当該減速機の平均トルク及び平均回転速度と、に基づいて減速機の寿命を導出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−144349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、アクチュエータの減速機のメンテナンスをより適切な時期に行うのに有効な制御システム、機械学習装置、メンテナンス支援装置、データの生成方法、及びメンテナンス支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る制御システムは、減速機を含むアクチュエータにおける減速機の回転速度に関する第一情報と、減速機に作用するトルクに関する第二情報と、減速機のグリースの鉄粉濃度を示す第三情報とを対応付けて記憶したデータベースと、データベースに記憶された情報に基づく機械学習により、第一情報及び第二情報と第三情報との関係を示す濃度予測モデルを構築する第一モデル構築部と、を備える。
【0006】
本開示の他の側面に係る機械学習装置は、減速機を含むアクチュエータにおける減速機の回転速度に関する第一情報と、減速機に作用するトルクに関する第二情報と、減速機のグリースの鉄粉濃度を示す第三情報とを対応付けて記憶したデータベースと、データベースに記憶された情報に基づく機械学習により、第一情報及び第二情報と第三情報との関係を示す濃度予測モデルを構築するモデル構築部と、を備える。
【0007】
本開示の他の側面に係るメンテナンス支援装置は、減速機を含むアクチュエータにおける減速機の回転速度に関する第一情報と、減速機に作用するトルクに関する第二情報と、第一情報及び第二情報と減速機のグリースの鉄粉濃度を示す第三情報との関係を示す濃度予測モデルに、第一情報及び第二情報を入力して第三情報の予測値を導出する濃度予測部と、第三情報の予測値の経時的推移に基づいて、第三情報の上昇予測モデルを構築するモデル構築部と、上昇予測モデルに基づいて、減速機のメンテナンスの推奨時期を導出する第一メンテナンス支援部と、を備える。
【0008】
本開示の他の側面に係るデータの生成方法は、減速機を含むアクチュエータにおける減速機の回転速度に関する第一情報と、減速機に作用するトルクに関する第二情報と、第一情報及び第二情報と減速機のグリースの鉄粉濃度を示す第三情報と、を対応付けた学習用データを取得することと、学習用データに基づく機械学習により、第一情報及び第二情報と第三情報との関係を示す濃度予測モデルを構築することと、を含む。
【0009】
本開示の他の側面に係るメンテナンス支援方法は、減速機を含むアクチュエータにおける減速機の回転速度に関する第一情報と、減速機に作用するトルクに関する第二情報と、第一情報及び第二情報と減速機のグリースの鉄粉濃度を示す第三情報との関係を示す濃度予測モデルに、第一情報及び第二情報を入力して第三情報の予測値を導出することと、第三情報の予測値の経時的推移に基づいて、第三情報の上昇予測モデルを構築することと、上昇予測モデルに基づいて、減速機のメンテナンスの推奨時期を導出することと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、減速機のメンテナンスをより適切な時期に行うのに有効な制御システム、機械学習装置、メンテナンス支援装置、データの生成方法、及びメンテナンス支援方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、制御システムの全体構成を示す模式図である。
図2図2は、アクチュエータを備えるロボットの構成を示す模式図である。
図3図3は、制御システムの機能上の構成を示すブロック図である。
図4図4は、制御システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図5は、機械学習処理手順を示すフローチャートである。
図6図6は、モデル更新処理手順を示すフローチャートである。
図7図7は、メンテナンス推奨時期の導出処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、メンテナンス推奨時期の導出処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0013】
〔制御システム〕
本実施形態に係る制御システムは、アクチュエータの制御システムであり、アクチュエータの減速機のメンテナンス時期の管理を行う。図1に示される制御システム1は、例えば、ワーク(不図示)に対して加工・組立等の作業を行う多軸ロボット10を使用している現場において適用される。制御システム1は、例えば、多軸ロボット10を制御するロボットコントローラ100と、ロボットコントローラ100に接続されたメンテナンス支援装置200と、学習用の機械学習装置300と、を備える。
【0014】
多軸ロボット10は、例えば、ワークに対して加工・組立等の作業を行う。図2に示されるように、多軸ロボット10は、例えばシリアルリンク型の多関節ロボットであり、複数(例えば6軸)の関節軸J1〜J6及び複数(例えば3つ)の腕部A1〜A3と、関節軸J1〜J6をそれぞれ駆動することにより腕部A1〜A3を揺動させる複数のアクチュエータ11〜16と、を有する。
【0015】
アクチュエータ11〜16は、それぞれ、モータ17と、減速機18と、センサ19とを備える(図3参照)。モータ17は、例えば電動モータであって、アクチュエータ11〜16の動力源として機能する。減速機18は、モータ17の回転トルクをモータ17の回転速度よりも低い回転速度で関節軸J1〜J6に伝達する。センサ19は、モータ17の位置(回転角度)及び回転速度に関する情報(すなわち、減速機18の入力軸側の回転角度及び回転速度に関する情報)を検出する。センサ19は、例えばエンコーダであり、モータ17の回転速度に比例した周波数のパルス信号を出力する。なお、センサ19は、減速機18の出力軸側の回転角度及び回転速度に関する情報を検出してもよい。
【0016】
(ロボットコントローラ)
ロボットコントローラ100は、多軸ロボット10のアクチュエータ11〜16のモータ17を制御する。ロボットコントローラ100は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、位置制御部101と、速度制御部102と、トルク制御部103とを有している。
【0017】
位置制御部101は、上位のコントローラ(例えばプログラマブルロジックコントローラ)等により設定された目標位置(目標回転角度)と、センサ19からフィードバックされたモータ17の実測位置(実測回転角度)とに基づいて、実測位置が目標位置に近づくように速度指令値を生成する。実測位置は、センサ19から出力されたパルス信号のカウントにより取得可能である。例えば、位置制御部101は、目標位置と実測位置との偏差(以下、「位置偏差」という。)に対して比例演算、比例・積分演算、又は比例・積分・微分演算等を施して速度指令値を生成する。
【0018】
速度制御部102は、位置制御部101により生成された速度指令値と、センサ19からフィードバックされたモータ17の実測回転速度とに基づいて、実測回転速度が速度指令値に近づくようにトルク指令値を生成する。実測回転速度は、センサ19から出力されたパルス信号の周波数を検出することにより取得可能である。例えば、速度制御部102は、速度指令値と実測回転速度との偏差(以下、「速度偏差」という。)に対して比例演算、比例・積分演算、又は比例・積分・微分演算等を施してトルク指令値を生成する。
【0019】
トルク制御部103は、速度制御部102により生成されたトルク指令値に応じたトルクをモータ17に発生させるように、モータ17に駆動電流を出力する。
【0020】
ここで、アクチュエータ11〜16の減速機18にバックラッシが発生した場合、このバックラッシによって減速機18及び多軸ロボット10の腕部A1〜A3が振動する。この振動において発生する慣性力が外乱となって、上述の位置偏差及び速度偏差に変動が生じ、当該変動を抑制するために速度指令値及びトルク指令値にも変動が生じる。すなわち、速度指令値及びトルク指令値の変動成分には、バックラッシに起因する変動成分も含まれる。
【0021】
(メンテナンス支援装置)
メンテナンス支援装置200は、減速機18を含むアクチュエータ11〜16における減速機18の回転速度に関する速度データ(第一情報)と、減速機18に作用するトルクに関するトルクデータ(第二情報)と、速度データ及びトルクデータと減速機18のグリースの鉄粉濃度を示す濃度データ(第三情報)との関係を示す濃度予測モデルに、速度データ及びトルクデータを入力して濃度データの予測値を導出することと、濃度データの予測値の経時的推移に基づいて、濃度データの上昇予測モデルを構築することと、上昇予測モデルに基づいて、減速機18のメンテナンスの推奨時期を導出することと、を実行する。
【0022】
メンテナンス支援装置200は、減速機の回転速度及び当該減速機に作用するトルクと減速機のメンテナンスの推奨時期との関係を示す予測式に基づき導出される減速機のメンテナンスの推奨時期を、第一メンテナンス支援部により導出される減速機のメンテナンスの推奨時期に近付けるように予測式を修正することと、減速機の回転速度及び当該減速機に作用するトルクと予測式修正部により修正された予測式とに基づいて、減速機のメンテナンスの推奨時期を導出することと、を更に実行するように構成されていてもよい。
【0023】
メンテナンス支援装置200は、機械学習装置300から濃度予測モデルのデータを受信することを更に実行するように構成されていてもよい。メンテナンス支援装置200は、速度データ及びトルクデータと、濃度予測モデルに当該速度データ及び当該トルクデータを入力して導出された濃度データの予測値とを対応付けて機械学習装置300に送信することを更に実行するように構成されていてもよい。
【0024】
メンテナンス支援装置200は、本体20と、モニタ21と、入力デバイス22とを備える。モニタ21は、例えば液晶モニタ等を含み、ユーザに対する情報表示に用いられる。入力デバイス22は、例えばキーパッド等であり、ユーザによる入力情報を取得する。モニタ21及び入力デバイス22は、所謂タッチパネルのように一体化されていてもよい。また、本体20、モニタ21及び入力デバイス22の全てが一体化されていてもよい。
【0025】
本体20は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、速度・トルクデータ取得部201と、濃度データ取得部202と、データ記憶部203と、データ送信部204と、モデル受信部205と、モデル記憶部206と、濃度予測部207と、モデル構築部208(第二モデル構築部)と、メンテナンス支援部209(第一メンテナンス支援部)と、予測式修正部210と、メンテナンス支援部211(第二メンテナンス支援部)と、を備える。
【0026】
速度・トルクデータ取得部201は、上記速度データ及びトルクデータを取得してデータ記憶部203に保存する。例えば速度・トルクデータ取得部201は、速度データとして、ロボットコントローラ100の速度制御部102からモータ17の実測回転速度を取得し、トルクデータとして、ロボットコントローラ100のトルク制御部103に入力されるトルク指令値を取得する。速度・トルクデータ取得部201は、速度データ及びトルクデータをこれらの取得時刻に対応付けてデータ記憶部203に保存する。なお、速度・トルクデータ取得部201は、速度データとして、速度制御部102に入力される速度指令値を取得してもよく、トルクデータとして、トルク制御部103からモータ17の駆動電流を取得してもよい。
【0027】
濃度データ取得部202は、減速機18のグリースの鉄粉濃度に関する濃度データを取得する。濃度データは、減速機18に充填されたグリースから上記所定期間経過時に測定された鉄粉濃度の実測値(以下、「実測鉄粉濃度」という。)と、速度データ及びトルクデータに基づいて導出された鉄粉濃度の予測値(以下、「予測鉄粉濃度」という。)とを含む。
実測鉄粉濃度は、例えば減速機18からグリースを採取して測定することが可能である。実測鉄粉濃度は、所定時刻に作業者により測定され、濃度データ取得部202に入力される。予測鉄粉濃度の導出については後述する。濃度データ取得部202は、濃度データをその取得時刻に対応付けてデータ記憶部203に保存する。なお、濃度データの取得時刻は、実測鉄粉濃度の取得時刻及び予測鉄粉濃度の取得時刻の両方を含む。実測鉄粉濃度の取得時刻は、作業者がグリースを採取した時刻であってもよいし、実測鉄粉濃度を濃度データ取得部202が取得した時刻であってもよい。予測鉄粉濃度の取得時刻は、予測鉄粉濃度の導出完了時刻であってもよいし、予測鉄粉濃度の導出完了時刻よりも所定時間前の時刻であってもよい。
【0028】
データ送信部204は、濃度データと、当該濃度データの取得時刻に対応する一定期間の速度データ及びトルクデータとを一セットにして(以下、この一セットを「学習用データセット」という。)を機械学習装置300に送信する。なお、濃度データの取得時刻と上記一定期間との関係は、当該一定期間の速度データ及びトルクデータが濃度データに相関するように予め設定されている。例えば、上記一定期間は、濃度データの取得時刻の直前の期間であってもよいし、当該取得時刻を含む期間であってもよい。
【0029】
モデル記憶部206は、速度データ及びトルクデータと濃度データとの関係を示す濃度予測モデルを記憶する。濃度予測モデルは、速度データ及びトルクデータの入力に応じて、予測鉄粉濃度を出力するプログラムモジュールである。濃度予測モデルの具体例としては、速度データ及びトルクデータを含む入力ベクトルと、濃度データを含む出力ベクトルとを結ぶニューラルネットが挙げられる。
【0030】
モデル受信部205は、機械学習装置300から濃度予測モデルのデータを受信する。濃度予測モデルのデータは、濃度予測モデル自体であってもよいし、濃度予測モデルを特定するためのパラメータ(例えばニューラルネットのノードの重み付けパラメータ)であってもよい。モデル受信部205は、機械学習装置300から取得したデータによって、モデル記憶部206に記憶された濃度予測モデルを更新する。例えばモデル受信部205は、機械学習装置300から取得したパラメータをモデル記憶部206に上書き保存する。
【0031】
濃度予測部207は、データ記憶部203から一定期間の速度データ及びトルクデータ(以下、これらを「入力データセット」という。)を取得し、モデル記憶部206に記憶された濃度予測モデルに当該入力データセットを入力して上記予測鉄粉濃度を導出する。
【0032】
モデル構築部208は、予測鉄粉濃度の経時的推移に基づいて、予測鉄粉濃度の未来の経時的推移を含む上昇予測モデルを構築する。例えばモデル構築部208は、データ記憶部203に所定数の新たな予測鉄粉濃度(モデル構築部208において上昇予測モデルの構築に用いられていない予測鉄粉濃度)が蓄積されたか否かを判断し、所定数の新たな予測鉄粉濃度が蓄積されたと判断したときには、当該所定数の予測鉄粉濃度に基づいて濃度データの上昇予測モデルを構築する。上昇予測モデルは、例えば減速機の総駆動時間と予測鉄粉濃度との関係を示す関数である。例えば、モデル構築部208は、当該所定数の予測鉄粉濃度に対する多項式補間等により、上昇予測モデルを構築する。
【0033】
メンテナンス支援部209は、モデル構築部208から取得した上昇予測モデルに基づいて、減速機18のメンテナンスの推奨時期を導出する。減速機18のメンテナンスの推奨時期とは、例えば減速機18のグリースの鉄粉濃度が所定の閾値に達する時期である。当該閾値は、過去の実績に基づいて予め設定されている。例えばメンテナンス支援部209は、上昇予測モデルに基づいて、上記予測鉄粉濃度が所定の閾値に達するまでの総駆動時間を減速機18のメンテナンスの推奨時期(以下、「第一の推奨時期」という。)として算出する。なお、メンテナンス支援部209は、減速機18のグリースの鉄粉濃度の上昇速度が所定の閾値に到達するまでの総駆動時間を第一の推奨時期として算出してもよい。メンテナンス支援部209は、導出した第一の推奨時期を表示するための画像データを生成し、モニタ21に出力する。
【0034】
予測式修正部210は、予測式に基づき導出される減速機18のメンテナンスの推奨時期(以下、「第二の推奨時期」という。)を、メンテナンス支援部209により導出される第一の推奨時期に近付けるように予測式を修正する。予測式は、減速機18の回転速度及び減速機18に作用するトルクと、減速機18のメンテナンスの推奨時期との関係を示す数式であって、例えば減速機の軸受の寿命予測式が挙げられる。例えば予測式修正部210は、次の式(1)で示される予測式に基づき導出される第二の推奨時期を第一の推奨時期に近付けるように補正係数Aの値を修正する。なお、予測式修正部210は、第二の推奨時期と第一の推奨時期との関係を示すように予め設定された近似関数を修正(例えば係数を修正)してもよい。
【数1】

L :第二の推奨時期(h)
K :減速機18の軸受の定格寿命(h)
N0:減速機18の定格速度(rpm)
Nn:時間毎の減速機18の回転速度(rpm/h)
T0:減速機18の定格トルク(Nm)
Tn:時間毎の減速機18のトルク(Nm/h)
P :減速機の18の種類に応じて定められた定数
【0035】
メンテナンス支援部211は、減速機18の回転速度及び減速機18に作用するトルクの設定値と予測式修正部210により修正された予測式とに基づいて、第二の推奨時期を導出する。メンテナンス支援部211は、上記設定値を例えば入力デバイス22から取得する。メンテナンス支援部211は、第二の推奨時期を表示するための画像データを生成し、モニタ21に出力する。メンテナンス支援部211は、第一の推奨時期と第二の推奨時期とを併せて表示するための画像データを生成してもよく、第一の推奨時期と第二の推奨時期との差分と、第一の推奨時期及び第二の推奨時期の少なくとも一方とを併せて表示するための画像データを生成してもよい。
【0036】
(機械学習装置)
機械学習装置300は、アクチュエータ11〜16における減速機18の回転速度に関する速度データと、減速機18に作用するトルクに関するトルクデータと、減速機18のグリースの鉄粉濃度を示す濃度データとを対応付けて記憶することと、記憶した情報に基づく機械学習により、速度データ及びトルクデータと濃度データとの関係を示す濃度予測モデルを構築することと、を実行する。
【0037】
機械学習装置300は、メンテナンス支援装置200から、速度データ及びトルクデータと、当該速度データ及び当該トルクデータを濃度予測モデルに入力して導出された濃度予測データとを受信することと、を更に実行するように構成されていてもよい。
【0038】
機械学習装置300は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、データ受信部301と、データベース302と、モデル構築部303(第一モデル構築部)と、モデル評価部304と、モデル記憶部305と、を備える。
【0039】
データベース302は、減速機18の回転速度に関する速度データと、減速機18に作用するトルクに関するトルクデータと、減速機18のグリースの鉄粉濃度を示す濃度データとを対応付けて記憶する。例えばデータベース302は、濃度データと、当該濃度データの取得時刻に対応する一定期間の速度データ及びトルクデータとを一セットにした上記学習用データセットを蓄積する。
【0040】
データ受信部301は、メンテナンス支援装置200のデータ送信部204から上記学習用データセットを受信し、データベース302に保存する。
【0041】
モデル構築部303は、データベース302に記憶された情報に基づく機械学習により、速度データ及びトルクデータと濃度データとの関係を示す濃度予測モデルを構築する。例えばモデル構築部303は、上記学習用データセットに含まれる一定期間の速度データ及びトルクデータと、当該学習用データセットに含まれる実測鉄粉濃度との組み合わせを教師データとして、例えばディープラーニング等の機械学習処理により濃度予測モデルのパラメータ(例えばニューラルネットのノードの重み付けパラメータ)をチューニングする。
【0042】
モデル記憶部305は、モデル構築部303により構築された濃度予測モデルを記憶する。モデル評価部304は、モデル構築部303が構築した濃度予測モデル(以下、「新モデル」という。)を評価し、評価結果に応じてモデル記憶部305の濃度予測モデルを更新する。具体的には、モデル評価部304は、データベース302に記憶されている予測鉄粉濃度(以下、「旧予測結果」という。)を含む学習用データセットの速度データ及びトルクデータを新モデルに入力して新たに予測鉄粉濃度(以下、「新予測結果」という。)を算出し、新予測結果及び旧予測結果のいずれが実測鉄粉濃度(当該学習用データセットに含まれる実測鉄粉濃度)に近いかを評価する。モデル評価部304は、旧予測結果に比較して新予測結果の方が実測鉄粉濃度に近い場合には、新モデルのデータをモデル記憶部305に上書き保存する。
【0043】
図4は、制御システム1のハードウェア構成を示すブロック図である。図4に示されるように、ロボットコントローラ100は、回路121を有する。回路121は、一つ又は複数のプロセッサ122と、記憶部123と、通信ポート124と、ドライバ125と、タイマ126とを有する。
【0044】
記憶部123は、メモリ127及びストレージ128を含む。ストレージ128は、コンピュータによって読み取り可能に構成され、ロボットコントローラ100の各機能モジュールを構成するためのプログラムを記録している。ストレージ128の具体例として、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等が挙げられる。メモリ127は、ストレージ128からロードしたプログラム及びプロセッサ122による演算結果等を一時的に記録する。プロセッサ122は、メモリ127と協働して上記プログラムを実行することで、各機能モジュールを構成する。
【0045】
通信ポート124は、プロセッサ122からの指令に応じ、メンテナンス支援装置200の通信ポート224(後述)との間で情報通信(例えば高速シリアル通信)を行う。ドライバ125は、プロセッサ122からの指令に応じてアクチュエータ11〜16を制御する。タイマ126は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。
【0046】
メンテナンス支援装置200の本体20は、回路221を有し、回路221は、一つ又は複数のプロセッサ222と、記憶部223と、通信ポート224,225と、入出力ポート226と、タイマ227とを有する。
【0047】
記憶部223は、メモリ228及びストレージ229を含む。ストレージ229は、上記データ記憶部203及びモデル記憶部206として機能し、且つ、上記メンテナンス支援装置200の各機能モジュールを構成するためのプログラムを記録している。ストレージ229の具体例として、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等が挙げられる。メモリ228は、ストレージ229からロードしたプログラム及びプロセッサ222による演算結果等を一時的に記録する。プロセッサ222は、メモリ228と協働して上記プログラムを実行することで、各機能モジュールを構成する。
【0048】
通信ポート224は、プロセッサ222からの指令に応じ、ロボットコントローラ100の通信ポート124との間で情報通信(例えば高速シリアル通信)を行う。通信ポート225は、プロセッサ222からの指令に応じ、機械学習装置300の通信ポート324(後述)との間で情報通信(例えば高速シリアル通信)を行う。入出力ポート226は、モニタ21及び入力デバイス22等との間で電気信号の入出力を行う。タイマ227は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。
【0049】
機械学習装置300は、回路321を有し、回路321は、一つ又は複数のプロセッサ322と、記憶部323と、通信ポート324と、タイマ325とを有する。
【0050】
記憶部323は、メモリ326及びストレージ327を含む。ストレージ327は、上記データベース302及びモデル記憶部305として機能し、且つ、機械学習装置300の各機能モジュールを構成するためのプログラムを記録している。ストレージ327の具体例として、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等が挙げられる。メモリ326は、ストレージ327からロードしたプログラム及びプロセッサ322による演算結果等を一時的に記録する。プロセッサ322は、メモリ326と協働して上記プログラムを実行することで、各機能モジュールを構成する。
【0051】
通信ポート324は、プロセッサ322からの指令に応じ、メンテナンス支援装置200の通信ポート225との間で情報通信(例えば高速シリアル通信)を行う。タイマ325は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。
【0052】
なお、ロボットコントローラ100,メンテナンス支援装置200,機械学習装置300のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えばロボットコントローラ100,メンテナンス支援装置200,機械学習装置300の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0053】
〔濃度予測モデルのデータ生成方法〕
続いて、濃度予測モデルのデータ生成方法の一例として、制御システム1の機械学習装置300及びメンテナンス支援装置200が実行する処理の内容を説明する。この処理は、機械学習装置300による機械学習処理と、メンテナンス支援装置200によるモデル更新処理とを含む。以下、各処理の手順を説明する。
【0054】
(機械学習処理手順)
図5は、機械学習処理手順を示すフローチャートである。図5に示されるように、機械学習装置300は、まずステップS01を実行する。ステップS01では、データ受信部301が、上記一定期間の速度データ及びトルクデータと当該一定期間に対応する時刻の実測鉄粉濃度とを含む一つの学習用データセットがメンテナンス支援装置200のデータ記憶部203に蓄積されるのを待機する。
【0055】
次に、機械学習装置300はステップS02を実行する。ステップS02では、データ受信部301が、メンテナンス支援装置200のデータ送信部204から学習用データセットを取得し、データベース302に保存する。
【0056】
次に、機械学習装置300は、ステップS03を実行する。ステップS03では、モデル構築部303が、データベース302に所定数の新たな学習用データセット(機械学習に使用されていない学習用データセット)が蓄積されたか否かを判定する。データベース302に蓄積された新たな学習用データセットの数が所定数に達していないと判定した場合、機械学習装置300は処理をステップS01に戻す。以後、所定数の新たな学習用データセットがデータベース302に蓄積されたと判定するまで、機械学習装置300は、学習用データセットの取得と保存を繰り返す。
【0057】
ステップS03において、所定数の新たな学習用データセットがデータベース302に蓄積されたと判定した場合、機械学習装置300はステップS04を実行する。ステップS04では、モデル構築部303が、データベース302に記憶された情報に基づく機械学習により上記濃度予測モデルを構築する。
【0058】
次に、機械学習装置300は、ステップS05を実行する。ステップS05では、モデル評価部304が、上記新たな学習用データセットのいずれかが、旧モデル(例えば現在206に記憶されている濃度予測モデル)を用いて導出された上記旧予測結果を含むか否かを確認する。
【0059】
ステップS05において、新たな学習用データセットのいずれかが旧予測結果を含むと判定した場合、機械学習装置300は、ステップS06を実行する。ステップS06では、モデル評価部304が、当該濃度予測データに対応する速度データ及びトルクデータを新モデル(モデル構築部303がステップS05において今回構築した濃度予測モデル)に入力して、上記新予測結果を算出する。
【0060】
次に、機械学習装置300はステップS07を実行する。ステップS07では、モデル評価部304が、旧モデルと比較して新モデルの濃度予測データの予測精度が向上しているか否かを確認する。具体的には、モデル評価部304は、新予測結果が旧予測結果に比較して実測鉄粉濃度に近いか否かを確認する。
【0061】
ステップS07において、新予測結果が旧予測結果に比較して実測鉄粉濃度に近いと判定した場合、機械学習装置300はステップS08を実行する。ステップS05において、新たな学習用データセットのいずれも予測鉄粉濃度を含まないと判定した場合、機械学習装置300はステップS06,S07を実行することなくステップS08を実行する。ステップS08では、モデル評価部304が、新モデルのデータをモデル記憶部305に上書き保存する。以上で機械学習処理が完了する。ステップS07において、旧予測結果が新予測結果に比較して実測鉄粉濃度に近いと判定した場合、機械学習装置300はステップS08を実行することなく機械学習処理を完了する。機械学習装置300は、以上の機械学習処理を繰り返し実行する。
【0062】
(モデル更新処理手順)
図6は、モデル更新処理手順を示すフローチャートである。図6に示されるように、メンテナンス支援装置200は、まずステップS21を実行する。ステップS21では、モデル受信部205が、所定期間が経過するのを待機する。所定期間は、モデルの更新期間に合わせてユーザにより適宜設定される。
【0063】
所定期間の経過後、機械学習装置300は、ステップS22を実行する。ステップS22では、モデル受信部205が、濃度予測モデルが更新されたか否かを確認する。具体的には、モデル受信部205が機械学習装置300のモデル送信部306を介してモデル記憶部305の濃度予測モデルの更新有無を確認する。
【0064】
ステップS22において濃度予測モデルが更新されたと判定した場合、メンテナンス支援装置200は、ステップS23を実行する。ステップS23では、モデル受信部205が、機械学習装置300のモデル送信部306から濃度予測モデルを受信し、受信した当該濃度予測モデルをモデル記憶部206に上書き保存する。以上でモデル更新処理が完了する。ステップS22において、濃度予測モデルは更新されていないと判定した場合、メンテナンス支援装置200はステップS23を実行することなくモデル更新処理を終了する。メンテナンス支援装置200は、以上のモデル更新処理を繰り返し実行する。
【0065】
〔減速機のメンテナンス支援方法〕
続いて、減速機のメンテナンス支援方法の一例として、制御システム1のメンテナンス支援装置200が実行する処理の内容を説明する。この処理は、上昇予測モデルによるメンテナンス推奨時期の導出処理と、予測式によるメンテナンス推奨時期の導出処理とを含む。以下、各処理の手順を説明する。
【0066】
(上昇予測モデルによるメンテナンス推奨時期の導出処理手順)
図7は、モデルによるメンテナンス推奨時期導出処理手順を示すフローチャートである。図7に示されるように、メンテナンス支援装置200は、まずステップS31を実行する。ステップS31では、濃度予測部207が、上記一定期間の速度データ及びトルクデータの新たな入力データセット(濃度予測に用いられていない入力データセット)がデータ記憶部203に蓄積されるのを待機する。
【0067】
次に、メンテナンス支援装置200はステップS32を実行する。ステップS32では、濃度予測部207が新たな入力データセットをモデル記憶部206の濃度予測モデルに入力し、予測鉄粉濃度を導出する。その後、濃度データ取得部202が当該予測鉄粉濃度をデータ記憶部203に保存する。
【0068】
次に、メンテナンス支援装置200は、ステップS33を実行する。ステップS33では、モデル構築部208が、データ記憶部203に所定数の新たな予測鉄粉濃度(上昇予測モデルへの入力に未使用の予測鉄粉濃度)が蓄積されたか否かを判断する。蓄積された新たな予測鉄粉濃度の数が所定数に達していないと判定した場合、メンテナンス支援装置200は処理をステップS31に戻す。以後、所定数の新たな予測鉄粉濃度がデータ記憶部203に蓄積されたと判定するまで、メンテナンス支援装置200は、予測鉄粉濃度の導出と保存を繰り返す。
【0069】
ステップS33において、所定数の新たな予測鉄粉濃度がデータ記憶部203に蓄積されたと判定した場合、メンテナンス支援装置200はステップS34を実行する。ステップS34では、モデル構築部208が、所定数の新たな予測鉄粉濃度に基づいて濃度データの上昇予測モデルを構築する。
【0070】
次に、メンテナンス支援装置200は、ステップS35を実行する。ステップS35では、メンテナンス支援部209が、上昇予測モデルに基づいて、上記第一の推奨時期(上昇予測モデルによる減速機18のメンテナンスの推奨時期)を導出する。
【0071】
次に、メンテナンス支援装置200は、ステップS36を実行する。ステップS36では、メンテナンス支援部209が、第一の推奨時期を表示するための画像データを生成し、モニタ21に出力する。
【0072】
次に、メンテナンス支援装置200は、ステップS37,S38を順に実行する。ステップS37では、メンテナンス支援部211が、上記式(1)で示される予測式に基づき上記第二の推奨時期(予測式による減速機18のメンテナンスの推奨時期)を導出する。ステップS38では、予測式修正部210が、第二の推奨時期を、第一の推奨時期に近付けるように予測式を修正する。例えば予測式修正部210は、ステップS37において算出された第二の推奨時期と、ステップS35において算出された第一の推奨時期との比率を乗算して上記補正係数Aの値を修正する。以上により、上昇予測モデルによるメンテナンス推奨時期の導出処理が完了する。メンテナンス支援装置200は、以上のメンテナンス推奨時期の導出処理を繰り返し実行する。
【0073】
(予測式によるメンテナンス推奨時期の導出処理手順)
図8は、予測式によるメンテナンス推奨時期導出処理手順を示すフローチャートである。図7に示されるように、メンテナンス支援装置200は、まずステップS51を実行する。ステップS51では、メンテナンス支援部211が、減速機18の回転速度及びトルクの設定値が入力デバイス22に入力されるのを待機する。
【0074】
回転速度のデータ及びトルクのデータの変更後、メンテナンス支援装置200は、ステップS52を実行する。ステップS52では、メンテナンス支援部211が、入力された設定値と予測式修正部210により修正された予測式とに基づいて、上記第二の推奨時期を導出する。例えばメンテナンス支援部211は、上記の式(1)に基づいて第二の推奨時期を導出する。
【0075】
次に、メンテナンス支援装置200は、ステップS53を実行する。ステップS53では、メンテナンス支援部211が、第二の推奨時期を表示するための画像データを生成し、モニタ21に出力する。以上により、予測式によるメンテナンス推奨時期の導出処理が完了する。メンテナンス支援装置200は、以上のメンテナンス推奨時期の導出処理を繰り返し実行する。
【0076】
〔本実施形態の効果〕
アクチュエータの制御システム1は、減速機18を含むアクチュエータ11〜16における減速機18の回転速度に関する速度データと、減速機18に作用するトルクに関するトルクデータと、減速機18のグリースの鉄粉濃度を示す濃度データとを対応付けて記憶したデータベース302と、データベース302に記憶された情報に基づく機械学習により、速度データ及びトルクデータと濃度データとの関係を示す濃度予測モデルを構築するモデル構築部303と、を備える。
【0077】
この制御システム1によれば、機械学習により構築された濃度予測モデルに基づくことで、速度データ及びトルクデータから濃度データを高精度に予測することができる。このため、実測を伴わずに濃度データ(濃度予測データ)を経時的に蓄積することができる。経時的に蓄積された濃度予測データは、減速機18のメンテナンス推奨時期を適切に導出することに寄与する。
【0078】
アクチュエータの制御システム1は、濃度予測モデルに、速度データ及びトルクデータを入力して、濃度予測データを導出する濃度予測部207と、濃度予測データの経時的推移に基づいて、濃度データの上昇予測モデルを構築するモデル構築部208と、上昇予測モデルに基づいて、減速機18のメンテナンスの推奨時期(第一の推奨時期)を導出するメンテナンス支援部209と、を更に備えていてもよい。この場合、高精度の濃度予測データにより高精度の濃度データの上昇予測モデルを構築することができる。この濃度データの上昇予測モデルに基づくことで、減速機18のメンテナンスの推奨時期を適切に導出することができる。
【0079】
アクチュエータの制御システム1は、減速機18の回転速度及び当該減速機18に作用するトルクと減速機18のメンテナンスの推奨時期との関係を示す予測式に基づき導出される減速機18のメンテナンスの推奨時期を、第一の推奨時期に近付けるように、予測式を修正する予測式修正部210と、減速機18の回転速度及び当該減速機18に作用するトルクと予測式修正部210により修正された予測式とに基づいて、減速機18のメンテナンスの推奨時期(第二の推奨時期)を導出するメンテナンス支援部211と、を更に備えていてもよい。この場合、回転速度及びトルクと18のメンテナンス推奨時期との関係を適切に示すように予測式を修正できる。このため、回転速度及びトルクを含む動作条件の変更の際に、鉄粉濃度の予測値の蓄積を待つことなく、修正後の予測式に基づいてメンテナンスの推奨時期を適切に導出することができる。
【0080】
機械学習装置300は、メンテナンス支援装置200から、速度データ及びトルクデータと、当該速度データ及び当該トルクデータを濃度予測モデルに入力して導出された濃度予測データとを受信するデータ受信部301を更に備え、データベース302は、データ受信部301によって受信された速度データとトルクデータと濃度予測データとを対応付けて更に記憶してもよい。メンテナンス支援装置200は、速度データ及びトルクデータと、濃度予測部207が濃度予測モデルに当該速度データ及び当該トルクデータを入力して導出された濃度予測データとを対応付けて機械学習装置300に送信するデータ送信部204を更に備えていてもよい。この場合、メンテナンス支援装置200における濃度予測モデルの使用実績を濃度予測モデルのブラッシュアップに活用することができる。
【0081】
メンテナンス支援装置200は、機械学習装置300から、モデル構築部303によって構築された濃度予測モデルのデータを受信するモデル受信部205を更に備えていてもよい。この場合、機械学習装置300における機械学習の結果をメンテナンス支援装置200に転用することで、メンテナンス支援装置200の処理負担を軽減できる。
【0082】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…制御システム、11〜16…アクチュエータ、18…減速機、200…メンテナンス支援装置、204…データ送信部、205…モデル受信部、207…濃度予測部、208…モデル構築部(第二モデル構築部)、209…メンテナンス支援部(第一メンテナンス支援部)、210…予測式修正部、211…メンテナンス支援部(第二メンテナンス支援部)、300…機械学習装置、301…データ受信部、302…データベース、303…モデル構築部(第一モデル構築部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8