(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972985
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】RFタグ内蔵杭
(51)【国際特許分類】
G01C 15/04 20060101AFI20211111BHJP
H01Q 1/04 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
G01C15/04
H01Q1/04
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-232316(P2017-232316)
(22)【出願日】2017年12月4日
(65)【公開番号】特開2019-100866(P2019-100866A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100164987
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】緒方 哲治
(72)【発明者】
【氏名】今井 哲之
【審査官】
國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−180960(JP,A)
【文献】
特開2008−159036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/04
H01Q 1/04
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に露出させる部分になる地上露出部と地中に埋設させる部分になる地中埋設部を有し,前記地上露出部から前記地中埋設部に連なる空洞を内部に形成した杭本体と,
地上用アンテナ素子,ICチップを実装しているICチップ用アンテナ素子,および,前記地中埋設部に形成されている空洞の断面形状に応じた大きさで面状になっている地中用アンテナ素子を列状に接続した構成のRFタグを備え,
前記地上用アンテナ素子と前記ICチップ用アンテナ素子は,前記杭本体の内壁面と接しない状態で前記地上露出部の側に配置され,前記地中用アンテナ素子は,前記杭本体の内壁面と接する状態で前記地中埋設部の側に配置されている,
ことを特徴とするRFタグ内蔵杭。
【請求項2】
前記地上用アンテナ素子および前記ICチップ用アンテナ素子に加え,前記ICチップ用アンテナ素子と接続している面状の対極板素子をベースフィルムに実装したインレイと,前記地中用アンテナ素子として用いる導体板により前記RFタグを構成し,前記導体板の一部と前記対極板素子がコンデンサを形成するように,前記インレイと前記導体板を接着している,ことを特徴とする,請求項1に記載したRFタグ内蔵杭。
【請求項3】
金属箔膜を表面に形成した剛性のあるフィルムを前記導体板として用いた,ことを特徴とする,請求項2に記載したRFタグ内蔵杭。
【請求項4】
前記地上露出部と前記地中埋設部の境目を示す段差を前記杭本体の外壁面に設けた,ことを特徴とする,請求項1から請求項3にいずれか一項に記載したRFタグ内蔵杭。
【請求項5】
前記杭本体の頭部を覆う保護キャップを備え,前記保護キャップと前記杭本体の段差を前記地中埋設部の境目を示す段差とした,ことを特徴とする,請求項4に記載したRFタグ内蔵杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,RFタグを内蔵した杭であるRFタグ内蔵杭に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
地中に打ち込む杭にRFタグを内蔵させることが以前より検討されている。杭に内蔵させるRFタグそれぞれに異なるデータを記憶させれば,雑草が生い茂るなどして杭の上面が見えなくなっても,無線によりRFタグから読み出したデータから,杭を打ち込んだ地点に係る情報を得ることができる。
【0003】
RFタグを内蔵した杭であるRFタグ内蔵杭の利用分野としては,測量,自動走行または埋設物管理などがある。測量に係る分野では,RFタグから読み出したデータから,RFタグ内蔵杭を打ち込んだ地点の位置情報を得ることができる。また,自動走行に係る分野では,RFタグから読み出したデータから,RFタグ内蔵杭を打ち込んだ地点の位置情報や走行方向を得ることができる。更に,埋設物管理に係る分野では,RFタグから読み出したデータから,RFタグ内蔵杭を打ち込んだ地点に埋設している埋設物(水道管やガス管など)の情報を得ることができる。
【0004】
RFタグ内蔵杭は,特許文献1で開示されている標識のように,RFタグの内蔵に用いる収納部を備え,この収納部にRFタグを内蔵する形態をなしている。また,RFタグ内蔵杭に内蔵させるRFタグの周波数帯としては,特許文献1に記載があるように,電磁誘導方式の周波数帯の一つである短波帯(13.56Mhz)も考えられるが,通信距離の観点からすると,電波方式の周波数帯の一つであるUHF帯(860〜960Mhz)を利用することが望ましい。
【0005】
RFタグ内蔵杭に内蔵するRFタグの周波数帯をUHF帯にすることで,通信距離が延びるが,RFタグの指向性が狭くなる問題がある。UHF帯を用いるRFタグをRFタグ内蔵杭に内蔵させても,RFタグの指向性を広くできる発明として,特許文献2で開示されている発明では,RFタ内蔵納杭の上面に設けられた直方形状の収納部に,同じデータを記憶させた複数の棒形状のRFタグを,RFタグが異なる方向に延びるように積み重ねて収納している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−251859号公報
【特許文献2】特開2011−180960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2で開示された発明のように,複数の棒形状のRFタグを,RFタグが異なる方向に延びるように積み重ねてRFタグ内蔵杭の頭部に収納することで,UHF帯を利用する場合であっても,RFタグ内蔵杭に係る指向性が狭くならないが,複数の棒形状のRFタグを一つのRFタグ内蔵杭に収納する都合上,RFタグ内蔵杭のコストがアップしてしまう。
【0008】
そこで,本発明は,コストがアップせずに,UHF帯を利用する場合であっても,RFタグ内蔵杭に係る指向性が狭くならないRFタグ内蔵杭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決する第1発明は,地上に露出させる部分になる地上露出部と地中に埋設させる部分になる地中埋設部を有し,前記地上露出部から前記地中埋設部に連なる空洞を内部に形成した杭本体と,地上用アンテナ素子,ICチップを実装しているICチップ用アンテナ素子,および,前記地中埋設部に形成されている空洞の断面形状に応じた大きさで面状になっている地中用アンテナ素子を列状に並べた構成のRFタグを備え,前記地上用アンテナ素子と前記ICチップ用アンテナ素子は,前記杭本体の内壁面と接しない状態で前記地上露出部の側に配置され,前記地中用アンテナ素子は,前記杭本体の内壁面と接する状態で前記地中埋設部の側に配置されていることを特徴とするRFタグ内蔵杭である。
【0010】
更に,第2発明は,第1発明において,前記線状放射素子および前記ICチップ用アンテナ素子に加え,前記ICチップ用アンテナ素子と接続している面状の対極板素子をベースフィルム上に実装したインレイと,前記地中用アンテナ素子として用いる導体板により前記RFタグを構成し,前記導体板の一部と前記対極板素子がコンデンサを形成するように,前記インレイと前記導体板を接着していることを特徴とする。
【0011】
更に,第3発明は,第2発明において,金属箔膜を表面に形成した剛性のあるフィルムを前記導体板として用いたことを特徴とする。
【0012】
更に,第4発明は,第1発明から第3発明のいずれか一つにおいて,前記地上露出部と前記地中埋設部の境目を示す段差を前記杭本体の外壁面に設けたことを特徴とする。
【0013】
更に,第5発明は,第4発明において,前記杭本体の頭部を覆う保護キャップを備え,前記保護キャップと前記杭本体の段差を前記地中埋設部の境目を示す段差としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るRFタグ内蔵杭に内蔵するRFタグは,中をRFタグの電波の伝搬経路として利用する地上用アンテナ素子と,地中をRFタグの電波の伝搬経路として利用する地中用アンテナ素子を有し,RFタグ内蔵杭に内蔵するRFタグの指向性を広くするために,空中に加えて地中をRFタグの電波の伝搬経路として利用できるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】RFタグ内蔵杭の内側に取り付けるRFタグを説明する図。
【
図5】地中に打ち込んだ状態のRFタグ内蔵杭を説明する図。
【
図8】通信距離を測定した時のRFタグ内蔵杭の状態を説明する図。
【
図9】RFタグ内蔵杭の最大通信距離の測定結果を説明する図。
【
図10】変形例に係るRFタグ内蔵杭を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここから,本発明の好適な実施形態を記載する。なお,以下の記載は本発明の技術的範囲を束縛するものでなく,本発明の理解を助けるために記述するものである。
【0017】
図1は,本実施形態に係るRFタグ内蔵杭1の構造を説明する図である。
図1で図示したRFタグ内蔵杭1は,無線による個体識別に用いるRFタグ3を内部に取り付けた杭で,RFタグ3の指向性を広くするために,空中に加えて地中をRFタグ3の電波の伝搬経路として利用できるように構成されている。
【0018】
本実施形態に係るRFタグ内蔵杭1は,地上に露出させる部分になる地上露出部20と地中に埋設させる部分になる地中埋設部21を有し,地上露出部20から地中埋設部21に連なる空洞22を内部に形成した杭本体2と,メアンダ状になっている地上用アンテナ素子31,ICチップ320を実装したICチップ用アンテナ素子32,および,地中埋設部21に形成されている空洞22の断面形状に応じた大きさの地中用アンテナ素子33を列状に接続した構成のRFタグ3を備え,RFタグ3は,空洞22を形成する杭本体2の内壁面に取り付けられている。RFタグ内蔵杭1の杭本体2の材質としては,プラスチック樹脂を用いることが好適であるが,木材やセラミックを杭本体2の材質に用いることもできる。
【0019】
本実施形態では,RFタグ内蔵杭1を地中に打ち込めるように,杭本体2の先端側を先鋭状にしているが,杭本体2の先端側の形状は任意でよい。また,本実施形態では,RFタグ内蔵杭1の杭本体2の頭部側が開口しているため,RFタグ内蔵杭1を地中に打ち込むときの衝撃に耐えるように設計された保護キャップ23により,RFタグ内蔵杭1の杭本体2の頭部側を覆っている。なお,RFタグ内蔵杭1の杭本体2の頭部側を覆う保護キャップ23の上面には,RFタグ内蔵杭1の利用目的(例えば,「基準地点」)などを標示できる。
【0020】
本実施形態に係るRFタグ内蔵杭1の杭本体2が,地上に露出させる部分になる地上露出部20と地中に埋設させる部分になる地中埋設部21を有するのは,空中に加えて,地中をRFタグ3の電波の伝搬経路として利用できるようにするためである。地上露出部20と地中埋設部21の境目がRFタグ内蔵杭1の外観から目視で判断できないと,作業者は,地上露出部20を地上に露出させた状態でRFタグ内蔵杭1を地中に打ち込むことができない。そこで,本実施形態では,RFタグ内蔵杭1の杭本体2の頭部側を覆う保護キャップ23の断面のサイズをRFタグ内蔵杭1の杭本体2よりも大きくし,杭本体2と保護キャップ23間の段差を地上露出部20と地中埋設部21の境目を示す目印にしている。
【0021】
図2は,RFタグ内蔵杭1の内側に取り付けるRFタグ3を説明する図である。本実施形態に係るRFタグ3が使用する周波数帯はUHF帯(860〜960Mhz)で,
図2(a)で図示したように,本実施形態では,地上用アンテナ素子31およびICチップ用アンテナ素子32に加え,ICチップ用アンテナ素子32と接続している面状の対極板素子330をベースフィルム30aに実装したインレイ30と,インレイ30のベースフィルム30aを介して対極板素子330と静電結合し,地中用アンテナ素子33として用いる導体板331によりRFタグ3を構成している。
【0022】
RFタグ3のサイズは,RFタグ3を取り付けるRFタグ内蔵杭1のサイズに依存することになるが,本実施形態において,インレイ30のサイズは幅20mm×長さ44mmで,導体板331のサイズは幅18mm×長さ55mmになっている。なお,導電性を有する金属板を導体板331に用いることもできるが,金属箔膜(例えば,アルミ箔)を表面に形成したPET素材のフィルムを導体板331に用いると,導体板331を安価にできる。
【0023】
ICチップ用アンテナ素子32は,ICチップ320とのインピーダンスの整合をとるためのアンテナ素子で,地上用アンテナ素子31は,空中を電波の伝搬経路として利用するためのアンテナ素子になるため,地上用アンテナ素子31とICチップ用アンテナ素子32は,杭本体2の内壁面と接しない状態で地上露出部20の側に配置されている。また,地中用アンテナ素子33として用いる導体板331は,地中を電波の伝搬経路として利用するためのアンテナ素子になるため,地中用アンテナ素子33として用いる導体板331は,杭本体2の内壁面と接する状態で地中埋設部21の側に配置されている。
【0024】
本実施形態において,ICチップ用アンテナ素子32の形状はループ状になっている。ICチップ320の入力端子間には容量性リアクタンス(キャパシタンス)が存在するので,ICチップ320を実装するICチップ用アンテナ素子32の形状をループ状にし,ICチップ320の入力端子間に存在する容量性リアクタンスに対応した誘導性リアクタンス(インダクタンス)をICチップ用アンテナ素子32に持たせている。
【0025】
本実施形態において,空中を電波の伝搬経路として利用するためのアンテナ素子となる地上用アンテナ素子31はメアンダ状になっている。地上用アンテナ素子31をメアンダ状にしているのは,RFタグ3の共振周波数を,RFタグ3が使用する周波数帯であるUHF帯に合わせ易くするためである。地上用アンテナ素子31をメアンダ状にすると,導線が鉤状に折れ曲がっている部分が誘導性リアクタンスを有するので,RFタグ3の共振周波数がUHF帯(例えば,920Mhz)に合うようにRFタグ3を設計することが容易になる。
【0026】
地中を電波の伝搬経路として利用するためのアンテナ素子を面状の地中用アンテナ素子33にしているのは,地中にある土との静電結合の度合いを高めるためである。地中用アンテナ素子33は,一つの要素で構成することもできるが,本実施形態では,RFタグ内蔵杭1の製造を考慮し,インレイ30に実装した対極板素子330と,地中用アンテナ素子33として用いる導体板331により地中用アンテナ素子33を構成している。
【0027】
地中にある土と地中用アンテナ素子33との静電結合の度合いを高めるためには,地中用アンテナ素子33のサイズを大きくする必要がある。RFタグ3製造にはアルミ箔を利用することが一般的で,地中用アンテナ素子33のサイズが大きくなると,杭本体2の内壁面にRFタグ3を取り付ける際,地中用アンテナ素子33が折れ曲がるなどの不具合が発生し易くなる。そこで,本実施形態では,剛性のある導体板331を地中用アンテナ素子33に用いることで,RFタグ内蔵杭1の本体の内壁面にRFタグ3を取り付け易くしている。
【0028】
図2(b)で図示したように,本実施形態では,対極板素子330等を実装した面の反対側になるインレイ30の面に接着層30bを形成し,この接着層30bを利用して,インレイ30と導体板331を接着させている。このように,インレイ30と導体板331を接着させることで,対極板素子330と導体板331の一部は,インレイ30のベースフィルム30aおよび接着層30bを介して対向するので,インレイ30に実装した対極板素子330と導体板331の一部がコンデンサを形成し,対極板素子330と導体板331の電気的な接合は静電結合になる。
【0029】
ここから,RFタグ3の取り付け方について説明する。
図3は,RFタグ内蔵杭1の断面図,
図4は,RFタグ3を取り付けている部分の拡大図である。
【0030】
図3を参照しながら説明する。上述したように,杭本体2は,先鋭状になっている先端側を除く部分が空洞22になっており,地上露出部20と地中埋設部21の境目に従い,RFタグ内蔵杭1の杭本体2の内壁面にRFタグ3を取り付けている。
【0031】
図4を参照しながら説明する。
図4(a)で図示したように,杭本体2の内壁面に取り付ける接着層3aを導体板331にのみ設け,導体板331が杭本体2の内壁面と接する状態で,地中埋設部21側になる杭本体2の内壁面にRFタグ3を取り付けると,導体板331と接着していないインレイ30の部分と杭本体2の間に,導体板331の厚みに応じた隙間が生じてしまい,導体板331と接着していないインレイ30の部分の姿勢が不安定になってしまう。杭本体2の内壁面と接する状態で地中埋設部21の側になる杭本体2の内壁面に取り付けられている。
【0032】
このことを防止するには,導体板331と接着していないインレイ30の部分と杭本体2の間に生じる隙間を埋める工夫が必要になる。
図4(b)は,この工夫を施したときの図で,
図4(b)では,導体板331と接着していないインレイ30の部分と杭本体2の間に生じる隙間をなくすために,導体板331と接着していないインレイ30の部分に,導体板331の厚みに応じた絶縁体・誘電体34を設けている。
【0033】
図5は,地中に打ち込んだ状態のRFタグ内蔵杭1を説明する図である。
図5は,RFタグ内蔵杭1の杭本体2と保護キャップ23の境目までRFタグ内蔵杭1を地中4に打ち込んだときの図で,RFタグ内蔵杭1の杭本体2と保護キャップ23の境目まで地中4に打ち込むことで,地上露出部20側に配置されているICチップ用アンテナ素子32と地上用アンテナ素子31は地上に露出した状態になり,地上用アンテナ素子31に係る電波の伝搬経路は空中になる。
【0034】
これに対し,RFタグ内蔵杭1の杭本体2と保護キャップ23の境目までRFタグ内蔵杭1を地中4に打ち込むことで,地中埋設部21側に配置されている導体板331は,地中4に埋設した状態になる。地中4にある土は水分を含むため,杭本体2と保護キャップ23の境目まで地中4に打ち込むと,地中用アンテナ素子33として用いる導体板331は,RFタグ内蔵杭1の杭本体2を介して,地中4にある土と静電結合し,電波の伝搬経路として地中4を利用できる状態になる。
【0035】
図6は,地中4における電波の伝搬状況を説明する図である。インレイ30に実装した対極板素子330と導体板331は静電結合するため,RFタグ3の電波は対極板素子330を介して導体板331に伝搬される。また,導体板331と地中4にある土は静電結合するため,導体板331に伝搬された電波は地中4にある土に伝搬され,一部は地上に出ることになる。
【0036】
図7は,RFタグ内蔵杭1の指向性を示す概略図である。地上に近い地中4の層は,雨水や地下水の影響により導電性を有するため,導体板331から地中4に伝搬された電波は四方に広がるため,結果として,RFタグ内蔵杭1の指向性は,
図7のようになる。
【0037】
本実施形態に係るRFタグ内蔵杭1の通信距離について説明する。
図8は,通信距離を測定した時のRFタグ内蔵杭1の状態を説明する図である。ここでは,
図8(a)〜(c)の3通りの状態において,RFタグ内蔵杭1の通信距離を測定した。
【0038】
図8(a)の状態は,RFタグ内蔵杭1に導体板331を設けず,インレイ30の全てを地上に露出させた状態である。
図8(b)の状態は,RFタグ内蔵杭1に導体板331を設けず,インレイ30に実装されている対極板素子330のみを地中4に埋設させた状態である。
図8(c)の状態は,RFタグ内蔵杭1に導体板331を設け,インレイ30に実装されている対極板素子330と導体板331を地中4に埋設させた状態である。
【0039】
図9は,RFタグ内蔵杭1の最大通信距離の測定結果を説明する図である。
図9で図示した結果からわかるように,RFタグ内蔵杭1に内蔵するRFタグ3に地中用アンテナ素子33(ここでは,導体板331)を設け,地中用アンテナ素子33を地中4に埋設することで,最大通信距離が延びることを確認できた。
【0040】
図10は,変形例に係るRFタグ内蔵杭5を説明する図である。RFタグ内蔵杭1では,保護キャップ23を利用して,地上露出部20と地中埋設部21の境目を示す段差を杭本体2の外壁面に設けていたが,変形例に係るRFタグ内蔵杭5では,保護キャップ23aの長さを
図1よりも短くし,地上露出部20と地中埋設部21の境目を示す突起物24を杭本体2の外壁面に設けている。
【符号の説明】
【0041】
1 RFタグ内蔵杭1
2 杭本体
20 地上露出部
21 地中埋設部
22 空洞
23 保護キャップ
3 RFタグ
30 インレイ
31 地上用アンテナ素子
32 ICチップ用アンテナ素子
33 地中用アンテナ素子
330 対極板素子
331 導体板