特許第6972986号(P6972986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972986
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   B60C11/03 E
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-232468(P2017-232468)
(22)【出願日】2017年12月4日
(65)【公開番号】特開2019-98950(P2019-98950A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】小堀 秀慈
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第02114069(GB,A)
【文献】 中国実用新案第205553802(CN,U)
【文献】 中国特許出願公開第107415596(CN,A)
【文献】 特開2013−180664(JP,A)
【文献】 特開2017−081448(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/152692(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部の接地面がタイヤ半径方向外側に凸で円弧状に湾曲している自動二輪車用タイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ赤道と第1トレッド端との間に配された複数の傾斜主溝と、前記傾斜主溝よりも小さい溝幅の複数の副溝とが設けられ、
前記傾斜主溝は、タイヤ赤道側の一端からタイヤ周方向の一方側に向かって第1トレッド端側に傾斜して他端まで延びる内側主溝を含み、かつ、タイヤ赤道と前記内側主溝の前記一端との間には、他の溝が配されておらず、
前記副溝は、前記内側主溝からタイヤ赤道側に向かって前記内側主溝とは逆向きに傾斜して延び、かつ、タイヤ赤道の側で他の溝と連なることなく途切れる第1副溝を含み、
前記第1副溝のタイヤ周方向の長さは、前記内側主溝のタイヤ周方向の長さよりも大きい、
自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記トレッド部は、タイヤ回転方向が指定され、
前記内側主溝は前記一端から前記タイヤ回転方向の先着側に向かって第1トレッド端側に傾斜している、請求項1記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記副溝は、前記内側主溝から前記第1トレッド端側に向かって前記第1副溝と同じ向きに傾斜してのびる第2副溝を含む、請求項1又は2記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記第1副溝及び前記第2副溝は、それぞれ、前記内側主溝のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記第1トレッド端側の領域に連なっている、請求項3記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記第1副溝は、前記第2副溝よりもタイヤ周方向に対する角度が小さい部分を含む、請求項3又は4記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記第2副溝は、前記内側主溝を介して前記第1副溝と滑らかに連続している、請求項3乃至5のいずれかに自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記第1副溝のタイヤ赤道側の端から前記第2副溝の前記第1トレッド端側の端までのタイヤ周方向の距離は、前記内側主溝のタイヤ周方向の長さよりも大きい、請求項3乃至6のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記第1副溝は、0.3〜1.5mmの溝幅を有する、請求項1乃至7のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記第1副溝は、0.2〜1.5mmの溝深さを有する、請求項1乃至8のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記傾斜主溝は、前記第1副溝の前記第1トレッド端側に配されかつ前記内側主溝とは逆向きに傾斜する外側主溝を含む、請求項1乃至9のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項11】
前記トレッド部は、タイヤ回転方向が指定され、
前記第1副溝のタイヤ赤道側の一端は、前記外側主溝のタイヤ赤道側の一端よりも前記タイヤ回転方向の先着側に位置している、請求項10記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項12】
前記外側主溝は、前記内側主溝を長さ方向に延長した領域と交わる、請求項10又は11記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項13】
前記副溝は、前記内側主溝と前記外側主溝との間で前記第1副溝と同じ向きに傾斜してのびる部分を有する第3副溝を含む、請求項10乃至12のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項14】
前記第1副溝は、第1部分と、タイヤ周方向に対して前記第1部分よりも大きい角度で傾斜する第2部分とを含む、請求項1乃至13のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、トレッド部のタイヤ赤道付近に内側傾斜主溝が設けられた自動二輪車用タイヤが提案されている。上記内側傾斜主溝は、例えば、直進時及び比較的小さいキャンバー角での旋回時において、排水性を発揮する。
【0003】
しかしながら、内側傾斜主溝のみでは、ウェット性能を十分に高めることができないという問題があった。一方、トレッド部に幅及び/又は長さの大きい溝を追加すると、ライダーが旋回時に車体を倒し込むときの手応えが急に変化し易くなり、いわゆるロール特性が悪化するという傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−159207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題に鑑み案出されたもので、ロール特性を維持しつつ優れたウェット性能を発揮することができる自動二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部の接地面がタイヤ半径方向外側に凸で円弧状に湾曲している自動二輪車用タイヤであって、前記トレッド部には、タイヤ赤道と第1トレッド端との間に配された複数の傾斜主溝と、前記傾斜主溝よりも小さい溝幅の複数の副溝とが設けられ、前記傾斜主溝は、タイヤ赤道側の一端からタイヤ周方向の一方側に向かって第1トレッド端側に傾斜して他端まで延びる内側主溝を含み、かつ、タイヤ赤道と前記内側主溝の前記一端との間には、他の溝が配されておらず、前記副溝は、前記内側主溝からタイヤ赤道側に向かって前記内側主溝とは逆向きに傾斜して延び、かつ、タイヤ赤道の側で他の溝と連なることなく途切れる第1副溝を含む。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、タイヤ回転方向が指定され、前記内側主溝は前記一端から前記タイヤ回転方向の先着側に向かって第1トレッド端側に傾斜しているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記副溝は、前記内側主溝から前記第1トレッド端側に向かって前記第1副溝と同じ向きに傾斜してのびる第2副溝を含むのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記第1副溝は、前記第2副溝よりもタイヤ周方向に対する角度が小さい部分を含むのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記第2副溝は、前記内側主溝を介して前記第1副溝と滑らかに連続しているのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記第1副溝のタイヤ赤道側の端から前記第2副溝の前記第1トレッド端側の端までのタイヤ周方向の距離は、前記内側主溝のタイヤ周方向の長さよりも大きいのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記第1副溝は、0.3〜1.5mmの溝幅を有するのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記第1副溝は、0.2〜1.5mmの溝深さを有するのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記傾斜主溝は、前記第1副溝の前記第1トレッド端側に配されかつ前記内側主溝とは逆向きに傾斜する外側主溝を含むのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記外側主溝は、前記内側主溝を長さ方向に延長した領域と交わるのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記副溝は、前記内側主溝と前記外側主溝との間で前記第1副溝と同じ向きに傾斜してのびる部分を有する第3副溝を含むのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の自動二輪車用タイヤのトレッド部には、タイヤ赤道と第1トレッド端との間に配された複数の傾斜主溝と、傾斜主溝よりも小さい溝幅の複数の副溝とが設けられている。傾斜主溝は、タイヤ赤道側の一端からタイヤ周方向の一方側に向かって第1トレッド端側に傾斜して他端まで延びる内側主溝を含む。内側主溝は、直進時及び比較的小さいキャンバー角での旋回時のウェット性能を高めるのに役立つ。また、タイヤ赤道と内側主溝の一端との間には、他の溝が配されていないため、タイヤ赤道付近のトレッド剛性が十分に維持され、ひいては車体を倒し込むときの手応えがリニアになり、優れたロール特性が得られる。
【0018】
副溝は、内側主溝からタイヤ赤道側に向かって内側主溝とは逆向きに傾斜して延び、かつ、タイヤ赤道の側で他の溝と連なることなく途切れる第1副溝を含む。このような第1副溝は、そのエッジによって、ウェット路面上で内側主溝とは異なる向きの摩擦力を提供し、ひいてはウェット性能を高める。一方、第1副溝は、内側主溝よりも小さい溝幅を有し、かつ、タイヤ赤道の側で他の溝と連なることなく途切れるため、タイヤ赤道付近の陸部分の剛性を損ねず、優れたロール特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態の自動二輪車用タイヤの横断面図である。
図2図1のトレッド部の展開図である。
図3図2の傾斜主溝の拡大図である。
図4図2の副溝の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本発明の一実施形態を示す自動二輪車用タイヤ1(以下、単に「タイヤ」ということがある。)の正規状態における横断面図が示されている。図2は、タイヤ1のトレッド部2のトレッドパターンを示す展開図である。図1は、図2のA−A線断面図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、サーキット走行向けの後輪タイヤとして好適に用いられる。
【0021】
「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
【0022】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、前記正規状態において、トレッド部2の第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2との間の接地面2sが、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲している。このようなタイヤ1は、キャンバー角が大きい旋回時においても十分な接地面積を得ることができる。なお、第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2は、トレッド部2のタイヤ軸方向の両端に相当し、例えば、最大キャンバー角での旋回時にはこれらが接地し得る。
【0025】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、カーカス6及びベルト層7を具えている。これらには、公知の構成が適宜採用される。
【0026】
図2に示されるように、トレッド部2は、例えば、タイヤ回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。タイヤ回転方向Rは、例えば、サイドウォール部3(図1に示す)に、文字又は記号で表示される。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。なお、「タイヤ回転方向Rの先着側」とは、本明細書の各図では上方向に相当し、単に「先着側」という場合がある。「タイヤ回転方向Rの後着側」とは、本明細書の各図では下方向に相当し、単に「後着側」という場合がある。
【0027】
トレッド部2には、第1溝グループ10及び第2溝グループ20が形成されている。第1溝グループ10は、例えば、タイヤ赤道Cと第1トレッド端Te1との間の領域において、タイヤ周方向に複数設けられている。なお、溝の配置を理解し易いように、図2では、1つの第1溝グループ10が着色されている。第2溝グループ20は、例えば、タイヤ赤道Cと第2トレッド端Te2との間の領域において、タイヤ周方向に複数設けられている。第1溝グループ10と第2溝グループ20とは、タイヤ周方向に位置ずれして設けられている点を除き、実質的に線対称に構成されている。第1溝グループ10の各構成は、第2溝グループ20に適用することができるため、第2溝グループ20の詳細な説明は省略される。
【0028】
第1溝グループ10は、複数の傾斜主溝11及び傾斜主溝11よりも溝幅の小さい副溝12を含んでいる。
【0029】
傾斜主溝11の溝幅W1は、特に限定されるものではないが、例えば、トレッド展開半幅TWhの4.0%〜7.0%であるのが望ましい。トレッド展開半幅TWhは、タイヤ赤道Cから第1トレッド端Te1までのトレッド部2の接地面2sに沿った距離である。傾斜主溝11の溝深さは、例えば、4〜7mmであるのが望ましい。
【0030】
副溝12の溝幅W2は、例えば、2.0mm未満であるのが望ましい。副溝12の溝深さは、例えば、2.0mm未満であるのが望ましい。このような副溝12は、周囲の陸部分の剛性を適度に緩和するのに役立つ。このため、副溝12を適切に配置することにより、傾斜主溝11の周囲の陸部分と、それ以外の陸部分との剛性差を緩和し、ひいてはロール特性が向上し得る。
【0031】
傾斜主溝11は、内側主溝14を含んでいる。本実施形態の傾斜主溝11は、内側主溝14に加え、例えば、外側主溝15、第1短主溝16、第2短主溝17及び第3短主溝18を含んでいる。副溝12は、第1副溝21を含んでいる。望ましい態様として、本実施形態の副溝12は、さらに、第2副溝22及び第3副溝23を含んでいる。
【0032】
内側主溝14は、タイヤ赤道C側の一端14aからタイヤ周方向の一方側に向かって第1トレッド端Te1側に傾斜して他端14bまで延びている。かつ、タイヤ赤道Cと内側主溝14の前記一端14aとの間には、他の溝が配されていない。なお、本明細書において、特に断りのない場合、第1溝グループ10の各溝について、「溝の一端」は、溝のタイヤ赤道側の端を意味し、「溝の他端」は、第1トレッド端Te1側の端を意味する。
【0033】
内側主溝14は、直進時及び比較的小さいキャンバー角での旋回時のウェット性能を高めるのに役立つ。また、タイヤ赤道Cと内側主溝14の一端14aとの間には、他の溝が配されていないため、タイヤ赤道C付近のトレッド剛性が十分に維持され、ひいては車体を倒し込むときの手応えがリニアになり、優れたロール特性が得られる。
【0034】
第1副溝21は、内側主溝14からタイヤ赤道C側に向かって内側主溝14とは逆向きに傾斜して延び、かつ、タイヤ赤道Cの側で他の溝と連なることなく途切れている。
【0035】
このような第1副溝21は、そのエッジによって、ウェット路面上で内側主溝とは異なる向きの摩擦力を提供し、ひいてはウェット性能を高める。一方、第1副溝21は、内側主溝14よりも小さい溝幅を有し、かつ、タイヤ赤道Cの側で他の溝と連なることなく途切れるため、タイヤ赤道C付近の陸部分の剛性を損ねず、優れたロール特性を維持することができる。
【0036】
図3には、第1溝グループ10の各傾斜主溝11の拡大図が示されている。なお、図3において、副溝は省略されている。図3に示されるように、本実施形態の内側主溝14は、一端14aからタイヤ回転方向Rの先着側に向かって第1トレッド端Te1側に傾斜している。このような向きに傾斜する内側主溝14は、優れたロール特性が得られる一方、ウェット走行時に溝内の水がタイヤ赤道側に案内される傾向がある。このため、上述した第1副溝21の作用によって顕著にウェット性能が向上し得る。
【0037】
図2に示されるように、ロール特性とウェット性能とをバランス良く高めるために、内側主溝14は、例えば、タイヤ周方向に対して15〜30°の角度θ1で傾斜しているのが望ましい。
【0038】
内側主溝14の一端14aは、タイヤ赤道Cよりも第1トレッド端Te1側に位置している。換言すれば、内側主溝14は、タイヤ赤道Cを跨っていない。これにより、本実施形態では、タイヤ赤道上に、傾斜主溝11及び副溝12並びに他の切れ込みが設けられていないプレーン領域がタイヤ周方向に連続して延びている。このようなプレーン領域は、タイヤ赤道C付近の陸部分の剛性を維持し、車体を倒し込むときの初期のロール特性を高めるのに役立つ。
【0039】
図3に示されるように、内側主溝14の一端14aからタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L1aは、例えば、トレッド展開半幅TWh(図2に示され、以下、同様である。)の0.03〜0.08倍であるの望ましい。なお、本明細書で示される各部の長さや距離は、特に断りの無い限り、トレッド部2の接地面2sに沿って測定されるものに相当する。
【0040】
内側主溝14の他端14bからタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L1bは、例えば、トレッド展開半幅TWhの0.35〜0.45倍であるの望ましい。このような内側主溝14は、ロール特性を維持しつつ、高い排水性を発揮することができる。
【0041】
外側主溝15は、例えば、内側主溝14のタイヤ回転方向Rの先着側に隣り合っている。本実施形態の外側主溝15は、内側主溝14をその長さ方向に延長した領域に交わる。また、外側主溝15は、例えば、第1副溝21(図2に示す)の第1トレッド端Te1側に配されているのが望ましい。
【0042】
外側主溝15は、例えば、内側主溝14とは逆向きに傾斜している。換言すれば、外側主溝15は、タイヤ赤道C側の一端15aからタイヤ回転方向Rの後着側に向かって第1トレッド端Te1側に傾斜して他端15bまで延びている。外側主溝15のタイヤ周方向に対する角度θ2(図2に示す)は、例えば、40〜50°であるのが望ましい。望ましい態様では、外側主溝15の上記角度θ2は、内側主溝14の上記角度θ1よりも大きい。
【0043】
外側主溝15は、例えば、内側主溝14よりも小さい長さで形成されている。外側主溝15は、例えば、溝のタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ赤道C側に溝の最大幅部分15mが形成されている。また、外側主溝15は、最大幅部分15mから第1トレッド端Te1側に向かって、溝幅が漸減している。これにより、車体を倒し込むときの手応えがキャンバー角の増加とともに大きくなり易く、ひいては優れたロール特性が得られる。
【0044】
外側主溝15のタイヤ赤道C側の一端15aは、例えば、内側主溝14の第1トレッド端Te1側の他端14bよりもタイヤ赤道C側に位置しているのが望ましい。外側主溝15の第1トレッド端Te1側の他端15bは、例えば、内側主溝14の他端14bよりも第1トレッド端Te1側に位置しているのが望ましい。
【0045】
ロール特性とウェット性能とをバランス良く高めるために、外側主溝15の一端15aから内側主溝14の他端14bまでのタイヤ軸方向の第1オーバーラップ長さL2は、例えば、トレッド展開半幅TWhの0.10〜0.25倍であるのが望ましい。
【0046】
外側主溝15の他端15bからタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L3は、例えば、トレッド展開半幅TWhの0.50〜0.65倍であるのが望ましい。
【0047】
外側主溝15の他端15bは、例えば、内側主溝14の他端14bよりもタイヤ回転方向Rの先着側に位置しているのが望ましい。換言すれば、外側主溝15と内側主溝14とは、タイヤ周方向においてオーバーラップしていないのが望ましい。外側主溝15の他端15bから内側主溝14の他端14bまでのタイヤ周方向の第1離間距離L4は、例えば、内側主溝14のタイヤ周方向の長さL5(図2に示され、以下、同様である。)の0.25〜0.35倍であるのが望ましい。このような外側主溝15及び内側主溝14の配置は、例えば、外側主溝15の他端15bが接地するキャンバー角での旋回時において、大きなトラクションを期待することができる。
【0048】
第1短主溝16は、例えば、外側主溝15のタイヤ回転方向Rの先着側に隣り合っている。第1短主溝16は、例えば、外側主溝15よりも小さい長さで形成されている。本実施形態の第1短主溝16は、例えば、外側主溝15と同じ向きに傾斜している。
【0049】
第1短主溝16のタイヤ周方向に対する角度θ3(図2に示す)は、例えば、45〜60°であるのが望ましい。
【0050】
第1短主溝16は、例えば、溝のタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ赤道C側に溝の最大幅部分16mが形成されている。また、第1短主溝16は、最大幅部分16mから第1トレッド端Te1側に向かって、溝幅が漸減している。
【0051】
第1短主溝16のタイヤ赤道C側の一端16aは、例えば、外側主溝15の第1トレッド端Te1側の他端15bよりもタイヤ赤道C側に位置しているのが望ましい。第1短主溝16の第1トレッド端Te1側の他端16bは、例えば、外側主溝15の他端15bよりも第1トレッド端Te1側に位置しているのが望ましい。
【0052】
第1短主溝16の一端16aから外側主溝15の他端15bまでのタイヤ軸方向の第2オーバーラップ長さL6は、例えば、トレッド展開半幅TWhの0.05〜0.15倍であるのが望ましい。また、第2オーバラップ長さL6は、第1オーバラップ長さL2よりも小さいのが望ましい。このような第1短主溝16は、倒し込みの手応えをキャンバー角の増加に応じて大きくでき、ひいてはロール特性をさらに高めることができる。
【0053】
第1短主溝16の他端16bから第1トレッド端Te1までのタイヤ軸方向の距離L7は、例えば、トレッド展開半幅TWhの0.20〜0.35倍であるのが望ましい。
【0054】
第1短主溝16の他端16bは、例えば、外側主溝15の一端15aよりもタイヤ回転方向Rの先着側に位置しているのが望ましい。換言すれば、第1短主溝16と外側主溝15とは、タイヤ周方向においてオーバーラップしていないのが望ましい。第1短主溝16の他端16bから外側主溝15の一端15aまでのタイヤ周方向の第2離間距離L8は、例えば、内側主溝14のタイヤ周方向の長さL5の0.20〜0.30倍であるのが望ましい。このような外側主溝15及び内側主溝14の配置は、適度な排水性を発揮しつつ、旋回時のトラクションを高めることができる。
【0055】
第2短主溝17は、例えば、第1短主溝16のタイヤ回転方向Rの先着側に隣り合っている。第2短主溝17は、例えば、第1短主溝16よりも小さい長さで形成されている。本実施形態の第2短主溝17は、例えば、第短主溝16と同じ向きに傾斜している。
【0056】
第2短主溝17のタイヤ周方向に対する角度θ4(図2に示す)は、例えば、60〜70°である。望ましい態様では、第2短主溝17のタイヤ周方向に対する最大の角度が、第1短主溝16のタイヤ周方向に対する最大の角度よりも大きい。このような第2短主溝17は、付近の陸部分のタイヤ軸方向の剛性を確保し、ひいては大きなコーナリングフォースが発揮される。
【0057】
第2短主溝17は、例えば、溝のタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ赤道C側に溝の最大幅部分17mが形成されている。また、第2短主溝17は、最大幅部分17mから第1トレッド端Te1側に向かって、溝幅が漸減している。
【0058】
第2短主溝17のタイヤ赤道C側の一端17aは、例えば、第1短主溝16の第1トレッド端Te1側の他端16bよりもタイヤ赤道C側に位置しているのが望ましい。第2短主溝17の第1トレッド端Te1側の他端17bは、例えば、第1短主溝16の他端16bよりも第1トレッド端Te1側に位置しているのが望ましい。
【0059】
第2短主溝17の一端17aから第1短主溝16の他端16bまでのタイヤ軸方向の第3オーバーラップ長さL9は、例えば、トレッド展開半幅TWhの0.05〜0.10倍であるのが望ましい。また、第3オーバーラップ長さL9は、例えば、第2オーバーラップ長さL6よりも小さいのが望ましい。このような第2短主溝17は、ウェット性能及びロール特性をバランス良く高める。
【0060】
第2短主溝17の他端17bから第1トレッド端Te1までのタイヤ軸方向の距離L10は、例えば、トレッド展開半幅TWhの0.02〜0.07倍であるのが望ましい。
【0061】
第2短主溝17の他端17bは、例えば、第1短主溝16の一端16aよりもタイヤ回転方向Rの先着側に位置しているのが望ましい。換言すれば、第2短主溝17と第1短主溝16とは、タイヤ周方向においてオーバーラップしていないのが望ましい。第2短主溝17の他端17bから第1短主溝16の一端16aまでのタイヤ周方向の第3離間距離L11は、例えば、内側主溝14のタイヤ周方向の長さL5の0.30〜0.45倍であるのが望ましい。また、第3離間距離L11は、例えば、第2離間距離L8よりも大きいのが望ましい。このような第2短主溝17及び第1短主溝16の配置は、第1トレッド端Te1が接地する様な大きなキャンバー角での旋回時において、優れたトラクション性能を発揮することができる。
【0062】
第3短主溝18は、例えば、内側主溝14の他端14bの先着側であり、かつ、外側主溝15の他端15bよりも後着側に位置している。また、第3短主溝18は、例えば、第1短主溝16の他端16bよりも第1トレッド端Te1側に位置している。これにより、第3短主溝18のタイヤ赤道C側の一端18aは、外側主溝15の他端15bと隣り合っている。
【0063】
第3短主溝18は、例えば、外側主溝15と同じ向きに傾斜している。第3短主溝18のタイヤ周方向に対する角度θ5(図2に示す)は、例えば、55〜65°である。望ましい態様では、第3短主溝18のタイヤ周方向に対する最大の角度は、外側主溝15のタイヤ周方向に対する最大の角度よりも大きい。このような第3短主溝18は、付近の陸部分のタイヤ軸方向の剛性を維持し、ひいては大きなコーナリングフォースが得られる。
【0064】
第3短主溝18のタイヤ赤道C側の端部は、例えば、外側主溝15が溝の長さ方向に延長した領域と交わるのが望ましい。このような第3短主溝18は、外側主溝15の排水性を補い、優れたウェット性能が得られる。
【0065】
第3短主溝18は、例えば、溝全体が第2短主溝17をタイヤ周方向に沿って延長した領域内に入るのが望ましい。
【0066】
第3短主溝18の第1トレッド端Te1側の他端18bから第1トレッド端Te1までのタイヤ軸方向の距離L12は、例えば、トレッド展開半幅TWhの0.03〜0.10倍であるのが望ましい。
【0067】
図4には、第1溝グループ10の各副溝12の拡大図が示されている。なお、図4において、傾斜主溝11の一部は省略されている。図4に示されるように、第1副溝21は、例えば、タイヤ赤道C側の一端21aから延びる第1部分26と、第1部分26に連なり、タイヤ周方向に対して、第1部分26よりも大きい角度で傾斜する第2部分27とを含む。第1部分26及び第2部分27は、上述した作用を発揮しつつ、タイヤ赤道C付近の陸部分のタイヤ周方向の剛性を維持し、優れたトラクション性能を提供し得る。
【0068】
第1部分26のタイヤ周方向に対する角度θ6は、例えば、5〜15°であるのが望ましい。第2部分27のタイヤ周方向に対する角度θ7は、例えば、20〜35°であるのが望ましい。
【0069】
第1副溝21のタイヤ赤道C側の一端21aからタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L13は、例えば、トレッド展開半幅TWhの0.03〜0.10倍である。本実施形態では、第1副溝21の一端21aが、外側主溝15の一端15aよりも先着側に位置している。このような第1副溝21は、ウェット性能をさらに高めることができる。
【0070】
第1副溝21は、例えば、内側主溝14のタイヤ軸方向の中心位置よりも第1トレッド端Te1側の領域に連なっているのが望ましい。このような第1副溝21は、ウェット走行時、内側主溝41内の水がタイヤ赤道C側に案内されるのを防ぎ、ウェット性能を高めることができる。
【0071】
第1副溝21は、例えば、0.3〜1.5mmの溝幅W3を有するのが望ましい。第1副溝21は、例えば、0.2〜1.5mmの溝深さを有するのが望ましい。なお、後述する第2副溝22及び第3副溝23も、第1副溝21と同様の溝幅及び溝深さを有している。
【0072】
第2副溝22は、例えば、内側主溝14から第1トレッド端Te1側に向かって第1副溝21と同じ向きに傾斜して延びている。
【0073】
第2副溝22は、例えば、内側主溝14のタイヤ軸方向の中心位置よりも第1トレッド端Te1側の領域に連なっている。本実施形態では、第2副溝22は、内側主溝14を介して第1副溝21と滑らかに連続している。なお、「滑らかに連続する」とは、一方の副溝をその長さ方向に延長したとき、他方の副溝の端部に連なる態様を含む。
【0074】
第2副溝22のタイヤ周方向に対する角度θ8は、例えば、20〜35°であるのが望ましい。第2副溝22の角度θ8は、第1副溝21の第1部分26の角度θ6よりも大きいのが望ましい。換言すれば、第1副溝21は、第2副溝22よりもタイヤ周方向に対する角度が小さい部分を含む。望ましい態様では、第2副溝22は、タイヤ周方向に対して第1副溝21の第2部分27と同じ角度で傾斜している。
【0075】
第2副溝22は、例えば、タイヤ回転方向Rの後着側で隣り合う第1溝グループの第1短主溝16と第2短主溝17との間を斜めに延び、第1トレッド端Te1の手前で途切れている。望ましい態様では、第2副溝22の第1トレッド端Te1側の他端22bは、例えば、第3短主溝18のタイヤ赤道C側の一端18aよりも第1トレッド端Te1側に位置している。
【0076】
ロール特性とウェット性能とをバランス良く高めるために、第1副溝21のタイヤ赤道C側の端から第2副溝22の第1トレッド端Te1側の端までのタイヤ周方向の距離L14(図2に示す)は、内側主溝14のタイヤ周方向の長さL5よりも大きいのが望ましい。上記距離L14は、内側主溝14の長さL5の2.0〜3.0倍であるのが望ましい。
【0077】
第3副溝23は、例えば、第1副溝21及び第2副溝22の第1トレッド端Te1側に配されている。第3副溝23は、例えば、第1副溝21と同じ向きに傾斜している。第3副溝23は、両端が陸部内で途切れている。このような第3副溝23は、比較的大きいキャンバー角での旋回時におけるロール特性及びウェット性能をバランス良く高めることができる。
【0078】
第3副溝23は、例えば、内側主溝14と外側主溝15との間で第1副溝21と同じ向きに傾斜してのびる部分を有する。本実施形態の第3副溝23は、例えば、タイヤ赤道C側の内側部28と、第1トレッド端Te1側の外側部29とを含んでいる。内側部28は、例えば、内側主溝14と外側主溝15との間を延びており、タイヤ周方向に対して第1副溝21の第1部分26よりも大きい角度θ9で傾斜している。内側部28のタイヤ周方向に対する角度θ9は、例えば、25〜35°であるのが望ましい。
【0079】
外側部29は、例えば、第3短主溝18と、タイヤ回転方向Rの後着側で隣り合う第1溝グループの第2短主溝17との間を延びており、タイヤ周方向に対して内側部28よりも大きい角度θ10で傾斜している。外側部29の角度θ10は、例えば、第2副溝22のタイヤ周方向に対する角度θ8よりも大きいのが望ましい。具体的には、外側部29の角度θ10は、例えば、35〜50°である。
【0080】
ロール特性をさらに高めるために、第3副溝23は、例えば、外側主溝15よりも大きくかつ内側主溝14よりも小さい長さを有しているのが望ましい。
【0081】
以上、本発明の一実施形態の自動二輪車用タイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0082】
図1の基本構造及び図2のトレッドパターンを有する自動二輪車用の後輪用タイヤが、表1の仕様に基づき試作された。また、比較例として、副溝が設けられていないタイヤが試作された。比較例のタイヤのトレッド部は、上記の点を除き、図2で示されるものと実質的に同一である。各タイヤについて、ロール特性及びウェット性能がテストされた。テスト車両及び各タイヤの共通仕様は以下の通りである。
テスト車両:排気量1000ccの自動二輪車
タイヤサイズ:180/55ZR17
リムサイズ:MT5.50×17
内圧:290kPa
テスト方法は以下の通りである。
【0083】
<ロール特性>
各テストタイヤを装着した車両でドライ路面のサーキットコースを走行したときの初期ロール特性、中・終期ロール特性が、運転者の官能により評価された。初期ロール特性は、キャンバー角が0°から、最大キャンバー角の30%以下の間のロール特性である。中・終期ロール特性は、キャンバー角が、最大キャンバー角の30%よりも大きい旋回時のロール特性である。結果は、それぞれ、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、各指標が優れていることを示す。
【0084】
<ウェット性能>
ウェット状態のサーキットコースを走行したときのウェット性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例のタイヤのウェット性能を100とする評点であり、数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。
テスト結果が表1に示される。
【0085】
【表1】
【0086】
テストの結果、実施例の自動二輪車用タイヤは、ロール特性を維持しつつ優れたウェット性能を向上させていることが確認できた。
【符号の説明】
【0087】
2 トレッド部
2s 接地面
11 傾斜主溝
12 副溝
14 内側主溝
21 第1副溝
C タイヤ赤道
Te1 第1トレッド端
図1
図2
図3
図4